F-16がロシアをビビらせる2つの理由
2023.05.31
■F-16がロシアをビビらせる2つの理由──元英空軍司令官
F-16戦闘機に最先端兵器がついてくるだろうことはもちろん、F-16が将来配備されるだろうと思うだけでこれまでのロシアの軍事計画すべてが狂い、それがロシアを削って敗北させる
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は以前から、西側諸国に戦闘機の供与を求めてきたが、G7広島サミットでついにジョー・バイデン大統領のお墨付きを得た。元イギリス空軍の上級司令官で中将だったグレッグ・バグウェルによれば、ウクライナがF-16戦闘機を持つ利点の第一は、優れた航空電子機器を搭載するより現代的な戦闘機を手にする「戦術的利点」だ。これには強力な兵器システムがついてくる可能性も高い。
「(F-16)戦闘機と共に兵器システムが導入されれば、ウクライナはまったく新しく高度で射程も長いさまざまな武器を持つことになる」と、バグウェルは述べた。
イギリス国防省は5月11日、空中発射巡航ミサイル「ストームシャドウ」をウクライナに搬送したことを認めた(数は明らかにしなかった)。これによりウクライナ軍は、現時点で最も射程が長いミサイルを手に入れた。ウクライナ軍がより長距離の攻撃能力を手に入れるということはそれだけで、「ウクライナ国内におけるロシア戦力の配置や作戦のあり方を変えることになる」とバグウェルは指摘する。
英ロンドン大学キングスカレッジ・フリーマン航空宇宙研究所の共同ディレクター、デービッド・ジョーダンは、F-16にはさまざまな空対地兵器を搭載することができると指摘する。中距離空対空ミサイル「AIM-120」や、統合直接攻撃弾(JDAM)、空対地の対レーダーミサイル「AGM-88 HARM」などだ。
■配備前からロシアの神経を削る
もちろん、ウクライナ空軍が直面する課題も少なくない。F-16の運用に必要な人員すべてを訓練するには時間がかかるうえ、輸送や整備についても考慮すべき点が多々ある。ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使は5月22日、テレグラムへの投稿で、「ウクライナには、F-16を使うためのインフラが存在しない。パイロットや整備要員も不十分だ」と書いた。
それでも、ウクライナにとってF-16は長期的な国家防衛のために必要だと、専門家たちは考えている。
F-16をもつもう1つの利点は、ウクライナ側が新たに手に入れる長距離攻撃能力に、ロシアが「配備前から神経を尖らせる」点だとパグウェルは言う。「ロシアは、F-16配備で起き得る変化や、それが戦闘にもたらす影響について、配備前から神経を尖らせるだろう」
もちろんF-16の供与は、それだけでウクライナ側の勝利を約束するものではない。それでも、ロシアはこれまでと同じ戦略は使えなくなる。計画変更を迫られたロシア政府は、最終的に「劣勢に陥る」だろう、とバグウェルは語った。
■ロシアのミグ31やスホーイ35に勝てるのか
1992年以前に製造された、ソ連製戦闘機で戦ってきたウクライナ。F16のパイロット訓練には時間がかかるが、これを機にF35ステルス戦闘機への切り替えも促進できる
ウクライナがF-16戦闘機を導入することにより、同国の「空の戦い」は大きく変わるでしょう。F-16はアメリカ合衆国の製造する戦闘機であり、ソ連製の戦闘機と比較していくつかの利点があります。
まず、F-16は高い機動性と優れた運動性を持っています。これにより、ウクライナのパイロットは敵機を追跡し、優位に立つことができます。また、F-16はモダンなエレクトロニクスとセンサーを搭載しており、目標の捕捉や情報収集に優れています。
さらに、F-16は多目的な戦闘機として知られており、空対空任務だけでなく、地上攻撃や偵察などの任務にも適しています。これにより、ウクライナの航空部隊はより幅広い任務を遂行することができ、戦力の柔軟性が向上します。
また、アメリカ製の戦闘機は国際的な信頼性があり、広範なサポートや補給が利用できることも利点です。これは、ウクライナがF-16を運用する際に、維持管理や修理において重要な要素となるでしょう。
ただし、ソ連製の戦闘機に比べて、F-16はより高価な機体となります。ウクライナがF-16を導入するには、予算の調達や訓練などの面で課題も存在するかもしれません。
総合すると、ウクライナがF-16戦闘機を導入することにより、同国の航空部隊の能力は向上し、戦闘能力の拡大が期待されます。
西側諸国がついに、ウクライナにアメリカ製のF16戦闘機を供給することに決めた。これまで主にソ連製の(つまり1992年以前に製造された)戦闘機で戦ってきたウクライナ空軍にとって、著しい戦力のアップグレードになる。
パイロットや整備士の訓練は数カ月かかるから、F16がウクライナの空に展開するのは、早くても2023年末になるだろう。また、ロシアには強力な地対空ミサイルがあるし、資源も豊富だから、ウクライナは依然として苦しい戦いを強いられるだろう。
それでも、F16を供給する意味がないわけではない。
ウクライナはまず、デンマークやオランダから、初代F16ともいえるF16A/Bの改良型を20機前後受け取るだろう。ただ、アメリカの計らいで、さらに能力を向上させたF16C/D型機が供給される可能性もある。
何より重要なのは、F16の改良型には最新の兵器を搭載できることだ。最新のレーダーであるAESA(アクティブ電子走査アレイ式)AN/APG-83レーダー(別名セイバー)を装備していないのが痛い(これがあればロシアの戦闘機や巡航ミサイルに対して優位に立てる)が、これもアメリカが特別に手配する可能性がないわけではない。
ウクライナ人パイロットの訓練には時間がかかるかもしれないが、初期の報道では、それほど大きな問題ではなさそうだ。
全くの新人パイロットには、イギリスやフランスでジェット戦闘機の基礎訓練を行った後、ポーランドやベルギーでF16に特化した訓練をするが、ベテランパイロットはもっと短期間で訓練を終えられるだろう。
整備士の訓練には、もっと時間がかかるから早く始める必要がある。そのための資金計画や、実際の整備をポーランドやドイツなどの外国でやるか、ウクライナでやるか(その場合はテレビ会議ツールなどで外国から助言を受けつつ行われるだろう)といった判断も必要だ。
■運用環境の整備も必須
これまで運用してきたミグ29戦闘機は、滑走路のコンディションが少々悪くても離着陸できるようにエンジンが頑丈に造られているが、F16は胴体下に大きなエアインテーク(吸気口)が配置されており、異物を吸い込みやすい。
このためウクライナは、F16の整備施設の確保だけでなく、滑走路から瓦礫などの異物を取り除く手配が必要だ。これが何より大きな課題だと指摘する専門家もいる。ただ飛ばすだけなら、11年の合同軍事演習でウクライナの基地からF16が飛んだことはある。
ロシアのミサイル攻撃で全滅などという事態にならないように、F16の配備場所は、一握りの基地以外の場所にも分散させるべきだ。
ロシア国境や前線に配置されたロシアの長距離レーダーや地対空ミサイルの発射装置は、ウクライナ領内を飛行する戦闘機を発見して破壊できる。このためウクライナのF16は、超低空飛行でレーダーを避けようとするだろう。
それでもロシアのA50早期警戒管制機や、スホーイ35やミグ31といった戦闘機が、下方のF16を探知して攻撃する能力(ルックダウン/シュートダウン能力)を持っていれば、撃墜される可能性が高い。
このためウクライナのF16パイロットたちは、なるべくレーダーを使わないようにして探知を回避しようとするかもしれない。だが、それは目隠しをして飛行するようなものであり、敵の動きを知ったり、ミサイル発射のためにレーダーをオンにしたりするタイミングを地上からの通信に頼らなくてはならない。
■F-16は、スペックで優るロシアのスホーイSu-35戦闘機に勝てるのか?
ウクライナ戦争の空の戦いは最新型戦闘機を投入しているロシア軍優位だが、戦いは必ずしもスペックだけでは決まらない
ロシアのスホーイSu-35戦闘機は、アメリカ製の戦闘機に優るとも劣らない高性能の戦闘機とみられている。だが、ウクライナ空軍兵士が操縦することになるとみられるアメリカ製のF-16戦闘機と対戦すれば、撃墜されるのはSu-35のほうだろうと専門家は語った。
ウクライナ政府は以前からF-16戦闘機などの欧米製戦闘機の供与を要請してきた。それが実現しようとしている今、ウクライナ戦争における空の戦いの焦点が絞られつつある。
専門家によると、欧米製の戦闘機のなかでいちばんの注目を集めているF-16は、ウクライナ空軍をアップグレードする最有力候補だ。F-16にはいくつかのバージョンがあり、ウクライナにどのモデルが送られるかは明らかではない。
ウクライナは現在、ロシア空軍と似た旧ソ連時代のジェット機を運用している。ウクライナにF-16を供与することは、ウクライナ空軍が技術的に欧米の軍用機に大きく転換するだけでなく、軍事ドクトリンそのものもNATO式に移行することを意味する。
■スペックはロシア軍機が上
イギリス軍のフランク・レドウィッジによれば、ロシアのSu-35がウクライナ戦争で、アメリカ製のF-16と直接対決する可能性は低い。だが、Su-35はロシアで最も先進的な4.5世代戦闘機の一つと考えられており、F-16のような第4世代の戦闘機を撃墜するために「特別に」設計されている、と彼は本誌に語った。
Su-35はSu-27戦闘機の近代化バージョンで、ロシア政府が大半を所有する航空宇宙・防衛企業、統一航空機製造会社(UAC)によれば、「空、陸、海の目標に対する交戦効果を著しく高める」ように設計されている。Su-35の初飛行は2008年2月に行われた。
「書類の上ではSu-35は、ウクライナに供与される可能性のあるF-16よりも優れていると言えるが、それだけでは話は終わらない」と、英キングス・カレッジ・ロンドンのフリーマン航空宇宙研究所で共同ディレクターを務めるデービッド・ジョーダンは言う。
「Su-35の仕様からすれば、多くの点でF-15より優れた航空機といえるかもしれない」と、元英国空軍上級司令官グレッグ・バグウェルは本誌に語った。だが実際には「仕様だけでは判断できない複雑な事情がある」
たとえば、航空機がパイロットにどのような状況認識のデータを与えることができるか、という点も重要だと、専門家は強調する。
「敵機の位置を正確に把握している側がその分有利になる。ロシア軍機がウクライナ軍機の位置をおおまかに把握しながら飛行している時に、ウクライナ軍機がロシア軍機の位置をほぼ正確に知っているとしたら、目視できる距離に近づく前からウクライナ軍機が優位になるだろう」と、ジョーダンは指摘した。「ウクライナのF16は、ロシアにとって手ごわい敵になる」
「F-16とSu-35の対決の行方は、ウクライナ側が空中で使える兵器や機器の種類にかかっている。空中戦となれば、F-16は今でも世界最強クラスの戦闘機だ」と、アンドリュー・カーティス元英国空軍司令官は語る。「しかし、ロシアのパイロットは中長距離ミサイルを使って、離れた位置からの戦いを挑む可能性がある。それがうまくいけば、戦いはSu-35に有利に運ぶかもしれない」。
オランダの防衛分析情報サイト「オリックス」によると、昨年2月にウクライナ侵攻が始まって以降、22日までにロシア軍は3機のSu-35を失っている。ただし、この集計に含まれているのは目視で確認された損失だけなので、実際の数値は異なるかもしれない。
■欧州はF35に切り替え
現状、ウクライナ機の攻撃の多くはこの段階で失敗している。彼らが使うR27レーダー誘導ミサイルは、目標に着弾するまで、発射機の機首にあるレーダーが、誘導のために目標に照準を合わせていなければならないからだ。
ロシア側の戦闘機が、より射程が長く、ミサイル自体が目標を追尾できる(つまり発射機は飛び去ることができる)R77-1ミサイルで反撃してきた場合、ウクライナ機は飛び去る(ミサイルは目標に到達できない)か、自滅する(目標は破壊するが、自らも逃げ遅れる)。
F16なら違う。搭載可能なAIM-120中距離ミサイルは、R77と同等の射程を持つ上に、自動追尾機能があるため発射後は飛び去れるのだ。
それでもロシアが、より高性能のレーダーと、著しく射程が長いR37Mミサイルを搭載したミグ31やスホーイ35を投入してきたら、ウクライナ機に勝ち目はない。
スホーイ35に搭載されているイールビスEレーダーは、F16ほどの大きさの標的を、約200キロ離れた所から探知できるとされる。これに対してF16の改良型に搭載されたAN/APG-66(V)2Aレーダーが探知できるのは80キロ程度だ。
従って、F16の獲得はウクライナにとって大きな進歩だが、依然としてロシアの空軍力に真っ向から対抗できるわけではない。
オランダ航空協会が発行するスクランブル誌の編集者であるメナ・アデルは、F16と地対空ミサイルを組み合わせた戦い方を提案している。
「ウクライナ機は、(地対空ミサイルの)射程内にロシア機をおびき寄せて、できるだけ迎撃を遅らせることができる。また、西側の電波妨害装置はシステムを破壊したり、応援を遅らせて、ウクライナ機が逃げるのを助けられる。あるいはロシア機に近づき、至近距離から攻撃することで敵をつぶす確率を高められる」
F16は敵機攻撃のほかにも、空対地ステルス性ミサイル、AGM88HARM対レーダーミサイル、ハープーン対艦ミサイル、レーザー誘導精密滑空爆弾、AN/AAQ-33照準ポッド、電子対抗システムなど多様な兵器のプラットフォームになる。
F16の機動性と敵のシステム外から攻撃できる兵器を組み合わせれば、黒海のロシア艦艇やクリミア半島のロシア軍基地を脅かすことも可能だ。
小規模なF16戦隊ではロシアには勝てないが、敵の空中戦術を混乱させ、巡航ミサイルに対抗し、空、海、陸で戦争のコストを大きくできる。
何より、ソ連時代の戦闘機は改良できないのだから、ウクライナ軍に西側の装備の「種」をまく必要がある。この切り替えは、できるだけ早く始めるべきだ。
それをF16から始めるのは、良い選択だ。F16は運用コストが比較的低く、保守整備のリソースも世界中にある。しかもウクライナにF16を供給することで、西欧諸国はF16からF35ステルス戦闘機への切り替えを促進できる。
台湾がやっているように、旧型のF16でも高性能レーダーのセイバーを組み込む改良は可能だ。軽量戦闘機として重宝されてきたF16だが、それがウクライナに重量級の勝利をもたらす日は、さほど遠くないかもしれない。
F-16戦闘機に最先端兵器がついてくるだろうことはもちろん、F-16が将来配備されるだろうと思うだけでこれまでのロシアの軍事計画すべてが狂い、それがロシアを削って敗北させる
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は以前から、西側諸国に戦闘機の供与を求めてきたが、G7広島サミットでついにジョー・バイデン大統領のお墨付きを得た。元イギリス空軍の上級司令官で中将だったグレッグ・バグウェルによれば、ウクライナがF-16戦闘機を持つ利点の第一は、優れた航空電子機器を搭載するより現代的な戦闘機を手にする「戦術的利点」だ。これには強力な兵器システムがついてくる可能性も高い。
「(F-16)戦闘機と共に兵器システムが導入されれば、ウクライナはまったく新しく高度で射程も長いさまざまな武器を持つことになる」と、バグウェルは述べた。
イギリス国防省は5月11日、空中発射巡航ミサイル「ストームシャドウ」をウクライナに搬送したことを認めた(数は明らかにしなかった)。これによりウクライナ軍は、現時点で最も射程が長いミサイルを手に入れた。ウクライナ軍がより長距離の攻撃能力を手に入れるということはそれだけで、「ウクライナ国内におけるロシア戦力の配置や作戦のあり方を変えることになる」とバグウェルは指摘する。
英ロンドン大学キングスカレッジ・フリーマン航空宇宙研究所の共同ディレクター、デービッド・ジョーダンは、F-16にはさまざまな空対地兵器を搭載することができると指摘する。中距離空対空ミサイル「AIM-120」や、統合直接攻撃弾(JDAM)、空対地の対レーダーミサイル「AGM-88 HARM」などだ。
■配備前からロシアの神経を削る
もちろん、ウクライナ空軍が直面する課題も少なくない。F-16の運用に必要な人員すべてを訓練するには時間がかかるうえ、輸送や整備についても考慮すべき点が多々ある。ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使は5月22日、テレグラムへの投稿で、「ウクライナには、F-16を使うためのインフラが存在しない。パイロットや整備要員も不十分だ」と書いた。
それでも、ウクライナにとってF-16は長期的な国家防衛のために必要だと、専門家たちは考えている。
F-16をもつもう1つの利点は、ウクライナ側が新たに手に入れる長距離攻撃能力に、ロシアが「配備前から神経を尖らせる」点だとパグウェルは言う。「ロシアは、F-16配備で起き得る変化や、それが戦闘にもたらす影響について、配備前から神経を尖らせるだろう」
もちろんF-16の供与は、それだけでウクライナ側の勝利を約束するものではない。それでも、ロシアはこれまでと同じ戦略は使えなくなる。計画変更を迫られたロシア政府は、最終的に「劣勢に陥る」だろう、とバグウェルは語った。
■ロシアのミグ31やスホーイ35に勝てるのか
1992年以前に製造された、ソ連製戦闘機で戦ってきたウクライナ。F16のパイロット訓練には時間がかかるが、これを機にF35ステルス戦闘機への切り替えも促進できる
ウクライナがF-16戦闘機を導入することにより、同国の「空の戦い」は大きく変わるでしょう。F-16はアメリカ合衆国の製造する戦闘機であり、ソ連製の戦闘機と比較していくつかの利点があります。
まず、F-16は高い機動性と優れた運動性を持っています。これにより、ウクライナのパイロットは敵機を追跡し、優位に立つことができます。また、F-16はモダンなエレクトロニクスとセンサーを搭載しており、目標の捕捉や情報収集に優れています。
さらに、F-16は多目的な戦闘機として知られており、空対空任務だけでなく、地上攻撃や偵察などの任務にも適しています。これにより、ウクライナの航空部隊はより幅広い任務を遂行することができ、戦力の柔軟性が向上します。
また、アメリカ製の戦闘機は国際的な信頼性があり、広範なサポートや補給が利用できることも利点です。これは、ウクライナがF-16を運用する際に、維持管理や修理において重要な要素となるでしょう。
ただし、ソ連製の戦闘機に比べて、F-16はより高価な機体となります。ウクライナがF-16を導入するには、予算の調達や訓練などの面で課題も存在するかもしれません。
総合すると、ウクライナがF-16戦闘機を導入することにより、同国の航空部隊の能力は向上し、戦闘能力の拡大が期待されます。
西側諸国がついに、ウクライナにアメリカ製のF16戦闘機を供給することに決めた。これまで主にソ連製の(つまり1992年以前に製造された)戦闘機で戦ってきたウクライナ空軍にとって、著しい戦力のアップグレードになる。
パイロットや整備士の訓練は数カ月かかるから、F16がウクライナの空に展開するのは、早くても2023年末になるだろう。また、ロシアには強力な地対空ミサイルがあるし、資源も豊富だから、ウクライナは依然として苦しい戦いを強いられるだろう。
それでも、F16を供給する意味がないわけではない。
ウクライナはまず、デンマークやオランダから、初代F16ともいえるF16A/Bの改良型を20機前後受け取るだろう。ただ、アメリカの計らいで、さらに能力を向上させたF16C/D型機が供給される可能性もある。
何より重要なのは、F16の改良型には最新の兵器を搭載できることだ。最新のレーダーであるAESA(アクティブ電子走査アレイ式)AN/APG-83レーダー(別名セイバー)を装備していないのが痛い(これがあればロシアの戦闘機や巡航ミサイルに対して優位に立てる)が、これもアメリカが特別に手配する可能性がないわけではない。
ウクライナ人パイロットの訓練には時間がかかるかもしれないが、初期の報道では、それほど大きな問題ではなさそうだ。
全くの新人パイロットには、イギリスやフランスでジェット戦闘機の基礎訓練を行った後、ポーランドやベルギーでF16に特化した訓練をするが、ベテランパイロットはもっと短期間で訓練を終えられるだろう。
整備士の訓練には、もっと時間がかかるから早く始める必要がある。そのための資金計画や、実際の整備をポーランドやドイツなどの外国でやるか、ウクライナでやるか(その場合はテレビ会議ツールなどで外国から助言を受けつつ行われるだろう)といった判断も必要だ。
■運用環境の整備も必須
これまで運用してきたミグ29戦闘機は、滑走路のコンディションが少々悪くても離着陸できるようにエンジンが頑丈に造られているが、F16は胴体下に大きなエアインテーク(吸気口)が配置されており、異物を吸い込みやすい。
このためウクライナは、F16の整備施設の確保だけでなく、滑走路から瓦礫などの異物を取り除く手配が必要だ。これが何より大きな課題だと指摘する専門家もいる。ただ飛ばすだけなら、11年の合同軍事演習でウクライナの基地からF16が飛んだことはある。
ロシアのミサイル攻撃で全滅などという事態にならないように、F16の配備場所は、一握りの基地以外の場所にも分散させるべきだ。
ロシア国境や前線に配置されたロシアの長距離レーダーや地対空ミサイルの発射装置は、ウクライナ領内を飛行する戦闘機を発見して破壊できる。このためウクライナのF16は、超低空飛行でレーダーを避けようとするだろう。
それでもロシアのA50早期警戒管制機や、スホーイ35やミグ31といった戦闘機が、下方のF16を探知して攻撃する能力(ルックダウン/シュートダウン能力)を持っていれば、撃墜される可能性が高い。
このためウクライナのF16パイロットたちは、なるべくレーダーを使わないようにして探知を回避しようとするかもしれない。だが、それは目隠しをして飛行するようなものであり、敵の動きを知ったり、ミサイル発射のためにレーダーをオンにしたりするタイミングを地上からの通信に頼らなくてはならない。
■F-16は、スペックで優るロシアのスホーイSu-35戦闘機に勝てるのか?
ウクライナ戦争の空の戦いは最新型戦闘機を投入しているロシア軍優位だが、戦いは必ずしもスペックだけでは決まらない
ロシアのスホーイSu-35戦闘機は、アメリカ製の戦闘機に優るとも劣らない高性能の戦闘機とみられている。だが、ウクライナ空軍兵士が操縦することになるとみられるアメリカ製のF-16戦闘機と対戦すれば、撃墜されるのはSu-35のほうだろうと専門家は語った。
ウクライナ政府は以前からF-16戦闘機などの欧米製戦闘機の供与を要請してきた。それが実現しようとしている今、ウクライナ戦争における空の戦いの焦点が絞られつつある。
専門家によると、欧米製の戦闘機のなかでいちばんの注目を集めているF-16は、ウクライナ空軍をアップグレードする最有力候補だ。F-16にはいくつかのバージョンがあり、ウクライナにどのモデルが送られるかは明らかではない。
ウクライナは現在、ロシア空軍と似た旧ソ連時代のジェット機を運用している。ウクライナにF-16を供与することは、ウクライナ空軍が技術的に欧米の軍用機に大きく転換するだけでなく、軍事ドクトリンそのものもNATO式に移行することを意味する。
■スペックはロシア軍機が上
イギリス軍のフランク・レドウィッジによれば、ロシアのSu-35がウクライナ戦争で、アメリカ製のF-16と直接対決する可能性は低い。だが、Su-35はロシアで最も先進的な4.5世代戦闘機の一つと考えられており、F-16のような第4世代の戦闘機を撃墜するために「特別に」設計されている、と彼は本誌に語った。
Su-35はSu-27戦闘機の近代化バージョンで、ロシア政府が大半を所有する航空宇宙・防衛企業、統一航空機製造会社(UAC)によれば、「空、陸、海の目標に対する交戦効果を著しく高める」ように設計されている。Su-35の初飛行は2008年2月に行われた。
「書類の上ではSu-35は、ウクライナに供与される可能性のあるF-16よりも優れていると言えるが、それだけでは話は終わらない」と、英キングス・カレッジ・ロンドンのフリーマン航空宇宙研究所で共同ディレクターを務めるデービッド・ジョーダンは言う。
「Su-35の仕様からすれば、多くの点でF-15より優れた航空機といえるかもしれない」と、元英国空軍上級司令官グレッグ・バグウェルは本誌に語った。だが実際には「仕様だけでは判断できない複雑な事情がある」
たとえば、航空機がパイロットにどのような状況認識のデータを与えることができるか、という点も重要だと、専門家は強調する。
「敵機の位置を正確に把握している側がその分有利になる。ロシア軍機がウクライナ軍機の位置をおおまかに把握しながら飛行している時に、ウクライナ軍機がロシア軍機の位置をほぼ正確に知っているとしたら、目視できる距離に近づく前からウクライナ軍機が優位になるだろう」と、ジョーダンは指摘した。「ウクライナのF16は、ロシアにとって手ごわい敵になる」
「F-16とSu-35の対決の行方は、ウクライナ側が空中で使える兵器や機器の種類にかかっている。空中戦となれば、F-16は今でも世界最強クラスの戦闘機だ」と、アンドリュー・カーティス元英国空軍司令官は語る。「しかし、ロシアのパイロットは中長距離ミサイルを使って、離れた位置からの戦いを挑む可能性がある。それがうまくいけば、戦いはSu-35に有利に運ぶかもしれない」。
オランダの防衛分析情報サイト「オリックス」によると、昨年2月にウクライナ侵攻が始まって以降、22日までにロシア軍は3機のSu-35を失っている。ただし、この集計に含まれているのは目視で確認された損失だけなので、実際の数値は異なるかもしれない。
■欧州はF35に切り替え
現状、ウクライナ機の攻撃の多くはこの段階で失敗している。彼らが使うR27レーダー誘導ミサイルは、目標に着弾するまで、発射機の機首にあるレーダーが、誘導のために目標に照準を合わせていなければならないからだ。
ロシア側の戦闘機が、より射程が長く、ミサイル自体が目標を追尾できる(つまり発射機は飛び去ることができる)R77-1ミサイルで反撃してきた場合、ウクライナ機は飛び去る(ミサイルは目標に到達できない)か、自滅する(目標は破壊するが、自らも逃げ遅れる)。
F16なら違う。搭載可能なAIM-120中距離ミサイルは、R77と同等の射程を持つ上に、自動追尾機能があるため発射後は飛び去れるのだ。
それでもロシアが、より高性能のレーダーと、著しく射程が長いR37Mミサイルを搭載したミグ31やスホーイ35を投入してきたら、ウクライナ機に勝ち目はない。
スホーイ35に搭載されているイールビスEレーダーは、F16ほどの大きさの標的を、約200キロ離れた所から探知できるとされる。これに対してF16の改良型に搭載されたAN/APG-66(V)2Aレーダーが探知できるのは80キロ程度だ。
従って、F16の獲得はウクライナにとって大きな進歩だが、依然としてロシアの空軍力に真っ向から対抗できるわけではない。
オランダ航空協会が発行するスクランブル誌の編集者であるメナ・アデルは、F16と地対空ミサイルを組み合わせた戦い方を提案している。
「ウクライナ機は、(地対空ミサイルの)射程内にロシア機をおびき寄せて、できるだけ迎撃を遅らせることができる。また、西側の電波妨害装置はシステムを破壊したり、応援を遅らせて、ウクライナ機が逃げるのを助けられる。あるいはロシア機に近づき、至近距離から攻撃することで敵をつぶす確率を高められる」
F16は敵機攻撃のほかにも、空対地ステルス性ミサイル、AGM88HARM対レーダーミサイル、ハープーン対艦ミサイル、レーザー誘導精密滑空爆弾、AN/AAQ-33照準ポッド、電子対抗システムなど多様な兵器のプラットフォームになる。
F16の機動性と敵のシステム外から攻撃できる兵器を組み合わせれば、黒海のロシア艦艇やクリミア半島のロシア軍基地を脅かすことも可能だ。
小規模なF16戦隊ではロシアには勝てないが、敵の空中戦術を混乱させ、巡航ミサイルに対抗し、空、海、陸で戦争のコストを大きくできる。
何より、ソ連時代の戦闘機は改良できないのだから、ウクライナ軍に西側の装備の「種」をまく必要がある。この切り替えは、できるだけ早く始めるべきだ。
それをF16から始めるのは、良い選択だ。F16は運用コストが比較的低く、保守整備のリソースも世界中にある。しかもウクライナにF16を供給することで、西欧諸国はF16からF35ステルス戦闘機への切り替えを促進できる。
台湾がやっているように、旧型のF16でも高性能レーダーのセイバーを組み込む改良は可能だ。軽量戦闘機として重宝されてきたF16だが、それがウクライナに重量級の勝利をもたらす日は、さほど遠くないかもしれない。
退耕還林→退林還耕(穀物増産)穀物以外廃棄へ
2023.05.31
実は食糧輸入大国の中国、「退林還耕」で食糧危機に備え始めた 「退耕還林→退林還耕(穀物増産)へ」 穀物以外は強引に廃棄(キューリー・トマト(野菜果物) 中国の農村総合執法隊は農民を虐げているSNSで拡散
90年代末に森林を保護する環境政策として始まった「退耕還林」。それを習近平が捨てて「退林還耕」に転換した背景には、国際情勢の変化がある。
福建省のとある村のスイセン畑70畝(ムー)以上が政府の命令で強行破壊され、耕地に改造へ「成都市政府がかつて341億元で建設した緑地帯10万畝を耕地に改造へ」全く毛沢東時代の再来 退林還耕で災害食料飢饉も
最近の中国SNSやネット上でこんなニュースが流れた。習近平(シー・チンピン)国家主席の「1000億斤の食糧生産能力建設」という重要談話をきっかけに、「退林還耕」という政策が始まったらしい。中国通にとって「退耕還林」はよく耳にしていた言葉だが、退林還耕は初耳だっただろう。
退耕還林は洪水や土壌浸食など深刻な環境問題の緩和を目的として、1990年代末に始まった森林保護政策。一方、退林還耕は食糧危機を防止するため、緑地を農地に戻すことだ。
中国は農業大国だが、食糧輸入大国でもある。2021年だけでも、中国の食糧輸入総量は食糧総生産量の20%超に当たる1億6000万トン以上に達する。
西側諸国との関係の悪化や、特にロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナウイルス禍は人口大国の中国に強い危機感を与えた。いつの日か起きる台湾武力統一のための準備も、重要な目的と推測されている。
環境保護のための退耕還林から、食糧確保のための退林還耕へ。中国が政策を逆方向に急転換するのは初めてではない。毛沢東の独裁時代から鄧小平の改革開放政策へと、かつて政治は180度転換した。
そして今、再び習近平は政治を180度転換し終身独裁へと舵を切ろうとしている。共通するのは共産党政権を強化するという目的だ。
退耕還林は環境保護が目的だったが、本音としては砂漠化を防止しないと共産党政権、そして中国そのものの基盤が崩れるという危機感があった。
鄧小平が改革開放の時に西側に頭を下げて資本主義の教えを請うたのは、経済発展がないと政権の正統性が失われるからだった。今、習近平が独裁に戻り、退林還耕を始めたのも、共産党政権を守るためでしかない。
鄧小平はかつて「韜光養晦(能ある鷹は爪を隠す)」という言葉を残した。改革開放の鄧小平も独裁の毛沢東・習近平も、共産党指導者の本質は同じ。習近平が退林還耕で食糧を確保した時、中国は「爪」を誰かに突き立てるだろう。
■中国の「退林還耕」政策が超ヤバい
中国政府は前世紀末頃から「退耕還林」(退耕还林)という政策を実施していた。これは行き過ぎた農地拡大に歯止めをかけるもので、あまり生産効率のよくない畑や林や山に戻すことを指す。それによって洪水や土砂崩れなどの災害を抑えるという目論見だ。
中国政府がその方針を180度転換させ、退林還耕(退林环耕)を強力に推進している。
これは習近平主席のトップダウン政策で、食糧自給率を上げることで国力を強化するという狙いだ。世界各国で食糧安保が叫ばれる今日この頃、食糧自給率向上は急務だとは思うのだが、独裁国家ならではのトンデモ事件が頻発している。
一例
・四川省成都市中心部に近い緑地公園(多額の費用をかけて造成)を畑に変更
・バナナやショウガの畑(栽培中)を強制的に潰して主食の農地に変更
・植林した山を坊主にし、重機を使って頂上まで千枚田or段々畑を造成
この政策がどのくらいヤバいかというと、中国共産党政権を永年に亘りヨイショしまくっている中日新聞グループが「懸念のお言葉」を表明。
・農地に向いてない所に畑を作って食糧(主に米・麦・トウモロコシ)が生産できるのか
・こんな山の方に農地を作ったら誰が面倒を見るのか
・あぜがひび割れており、大雨が降ったら崩壊しそう
・野菜や果物の栽培をやめて食糧を生産するとして、穀物だけ食って満足できるのか
・1950年代の「大躍進」の二の舞になるのではないか
という内容である。
■山林を耕して農地を作る中国
1998年夏、中国に100年ぶりの大洪水が襲った。水害現場に駆けつけた首相の朱鎔基は波頭が立つ堤防に上り「抗洪(洪水に勝とう)」を叫んだ。雨を浴びながら濡れそぼった半袖姿の首相が抗洪を絶叫し、長江に散った涙は中国人民の心を動かした。崩壊する堤防を人間の鎖で守った。しかし被害は大きかった。約3000余人の死亡者に1500万人の水害民が発生した。
何が問題だったか。どしゃ降りの雨は明らかに天災だったが途方もない死傷者の背後には人災があった。もともと河川の両側には広い遊水池があったが、人々が住み着いて畑を作るなどしていつの間にか生活の拠点となった。洪水になると多くの人命被害が出ざるを得ない構造だった。そのため出てきたのが「退耕還林」政策だ。農地を放棄して再び森を作ろうというものだ。
ところが20年以上にわたり進められてきた退耕還林政策が最近、逆の方向に進んでいる。昨年、ウクライナ戦争が起きて食糧安保問題が台頭したことを受けて森を切り開き農地にする「退林還耕」措置が推進されている。昨年の春、習近平国家主席は各地方政府に農地を徹底して保護するよう厳命を下した。その間の退耕還林政策にも、産業化と都市化の影響で耕作地は右肩下がりだったためだ。
2009年から2019年までの10年間、中国の農地は1億1300万畝(1畝は約200坪)が消え、現在19億1800万畝程度だ。中国の目標は農地18億畝を死守し、年間6億5000万トン以上の食糧を生産することだが、このままでは危険だと判断した。そのため耕作地確保を「政治の任務」にすえて100億人民元(約1,950億円)を農家にバラまいて農地開墾を奨励している最中だ。
しかし問題が噴出している。多額の資金を費やして整えた山林と緑地が毀損されている。四川省成都は400億元を投じて都心郊外周辺循環道路周辺に作った緑地を耕して農地にした後、小麦など農作物を植えた。また、完工を控えた公園を撤去して農地に変えて住民の怒りを買っている。中国当局は衛星を利用して農地が十分に活用されているかどうかまで監視している。
食糧安保に総力を挙げる中国の姿はさまざまな想像の空間を提供している。過去8年間連続で目標値以上の食糧を生産したにも関わらず非常措置を取るということは、ひょっとして台湾海峡での武力衝突のような非常事態に備えているのではないか、という点でだ。
ルカシェンコ氏危篤「毒殺」
2023.05.30
ロシアによる「毒殺説」浮上 ベラルーシの大統領・ プーチン氏と〝密談〟後…モスクワで救急搬送
ルカシェンコ氏危篤か
たびたび「健康不安説」が浮上していた、ロシアの隣国ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領がモスクワで、救急搬送されたとの情報が駆け巡っている。ベラルーシの野党指導者、ヴァレリー・ツェプカロ氏が27日、SNSに投稿したと、ウクライナのメディアが伝えた。ルカシェンコ氏は、ウラジーミル・プーチン大統領と密室で会談後に急変したため、海外メディアでは、ロシアにとってより従順な指導者にすげかえるための「毒殺説」も浮上している。
「危機的と判断され、対応するため専門医が派遣された」
ツェプカロ氏は、ルカシェンコ氏の状況をこう伝えた。ただ、「さらに確認が必要」と説明し、信憑性は不明だ。
ルカシェンコ氏は30年近く権力を握り、「欧州最後の独裁者」と呼ばれる。欧米とロシアの中間に位置する地理的特性を生かし、米欧とロシアを競わせて双方から利益を引き出してきた。
しかし、2020年の大統領選では、ルカシェンコ氏「圧勝」との政権側の発表に対して起きた開票不正を訴える大規模デモを鎮圧するため、ルカシェンコ氏はプーチン氏の支援を受けた。このため、米欧との関係が極度に悪化。その後ロシアとの関係を強化し、今月にはロシアの戦術核兵器のベラルーシへの配備受け入れで正式合意した。
国際社会で孤立を深めるプーチン氏にとって、「盟友」ともいえるルカシェンコ氏だが、今年に入ってからはたびたび体調の不調が指摘されてきた。
ルカシェンコ氏は、今月9日にモスクワで行われたロシアの「戦勝記念日」の式典に右手に包帯が巻かれた状態で出席した。パレードではわずか約300メートルの距離を小型車で移動し、夕食会を欠席した。ベラルーシに帰国した後も主要行事を欠席しており、心臓に疾患があるのではとの憶測が飛び出していた。
一方で、ロシアによる「暗殺説」も消えない。
ベラルーシは、昨年2月に始まったウクライナ侵略で、ロシア軍の進撃拠点の一つとなったものの、ルカシェンコ氏は「挑発」を受けない限り参戦しないと主張した。ロシアとの関係についても「ベラルーシの主権は維持する」としており、プーチン氏にとってルカシェンコ氏は決して、都合のいいリーダーではなかった。
英紙デイリー・メール(電子版)は28日、「より従順な指導者を求めているロシアの特務機関によって毒殺されたとの憶測がある」と伝えた。
■「やばいね。やっぱ、この国は」辛坊治郎 ベラルーシのルカシェンコ大統領、ロシアによる「毒殺説」浮上
キャスターの辛坊治郎が5月29日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。ロシアのプーチン大統領の「盟友」ともいえるベラルーシのルカシェンコ大統領を巡り、ロシアによる「毒殺説」が浮上していることについて、「やばいね。やっぱ、この国(ロシア)は」と指摘した。
辛坊)夕刊フジ、私の気になった記事が3面に掲載されています。
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「ルカシェンコ氏 危篤か プーチン氏と“密談”後 モスクワで救急搬送
『毒殺説』浮上」
~『夕刊フジ』2023年5月29日発行分(3面)より
―–
辛坊)ルカシェンコ氏は、ロシアの隣国で、ロシアとの数少ない“お友達国”であるベラルーシの大統領です。記事を読んでみます。
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「ルカシェンコ氏は、今月9日にモスクワで行われたロシアの『戦勝記念日』の式典に右手に包帯が巻かれた状態で出席した。パレードではわずか約300メートルの距離を小型車で移動し、夕食会を欠席した。ベラルーシに帰国した後も主要行事を欠席しており、心臓に疾患があるのではとの憶測が飛び出していた。
一方で、ロシアによる『暗殺説』も消えない。
ベラルーシは、昨年2月に始まったウクライナ侵略で、ロシア軍の進撃拠点の一つとなったものの、ルカシェンコ氏は『挑発』を受けない限り参戦しないと主張した。ロシアとの関係についても『ベラルーシの主権は維持する』としており、プーチン氏にとってルカシェンコ氏は決して、都合のいいリーダーではなかった。
英紙デイリー・メール(電子版)は28日、『より従順な指導者を求めているロシアの特務機関によって毒殺されたとの憶測がある』と伝えた。」
~『夕刊フジ』2023年5月29日発行分(3面)より
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辛坊)ルカシェンコ大統領の消息は、今のところ分かっていません。やばいね。やっぱ、この国(ロシア)は。やばいよ、やばいよって感じです。
独裁国家は政治ジョークが嫌いなようだ
2023.05.29
独裁国家は政治ジョーク(political jokes)が嫌いなようだ。「プーチンを揶揄」「ロシア軍をナチスドイツになぞらえ…」 ロシアのジョーク「アネクドート(anecdote)」から読み解く本当の民意
ウクライナ戦争が始まって約460日。対独戦勝記念日に勇ましい演説をぶったプーチンだが、国内では終わりなき戦いに不満が鬱積(うっせき)している。高止まりする支持率の陰でロシアン・ジョークに表れる「本当の民意」とは。拓殖大学の名越健郎・特任教授のレポート。
プーチン大統領が軍需工場を視察した。工場長が説明した。
「前線の兵士に必要な物資を届けるため、毎日休みなしにフル稼働しています」
「それで何を作っているのか」
「棺桶です」
ゼレンスキー大統領はウクライナ侵攻前、コメディアンだった。プーチン大統領はウクライナ侵攻後、ピエロになった。
ウクライナ戦争が始まって1年と3カ月。国際社会からの非難にもかかわらず、ロシアでのプーチンの支持率は高いままだ。国民はプーチン支持、戦争支持一色かに見える。しかし、そこに表れる数字は庶民の本心を反映しているのだろうか。
ロシアにはアネクドートと呼ばれる、政治小話の伝統がある。権力を嘲笑し、生活の不満を皮肉るアネクドートは、旧ソ連時代に異常な発展を遂げた。厳しい社会主義統制下、庶民はアネクドートで憂さを晴らし、欲求不満を解消したものだ。ソ連時代のすぐれた作品を紹介すると――。
ソ連の軍需工場で、3人の労働者が秘密警察に逮捕された。
一人は時間より30分早く出勤したために、スパイの疑いで。
一人は時間より30分遅く出勤したために、サボタージュの疑いで。
一人は時間通りに出勤したために、外国製腕時計を不正に入手した疑いで。
■台所はアネクドートのオンパレード
アネクドートの語源はギリシャ語の「アネクドトス」(地下出版)から来ている。ソ連時代の反体制作家、アンドレイ・シニャフスキーは「ロシアが世界に誇る民間口承文学」と呼んだ。
口コミ社会のロシアでは「台所会話」という表現があり、家族や親しい友人と狭い台所で本音のトークをする。筆者も通信社記者としてモスクワに駐在していた時、何度もロシア人の家庭に招かれ、台所会話に参加したが、興が乗ると、大抵アネクドートのオンパレードとなった。
長期化するウクライナ戦争で、活況を呈しているのが、そのアネクドートの世界だ。ロシアの台所では今も、国営テレビの勇ましい戦況報道とは裏腹に、かんかんがくがくの議論が展開され、アネクドートも飛び交っているはずである。
インターネット全盛の現代では、それは口承だけでなく、ネット上やSNSでも拡散される。
そこには、80%以上がプーチン大統領を支持する世論調査とは一風異なる世界が広がっている。
プーチン大統領が突然発作に襲われ、10年間意識を失った。病院で目が覚めた大統領は一人でモスクワのバーに出掛け、バーテンダーに尋ねた。
「クリミアは今もわれわれのものなのか」
「その通りです」
「ドンバスもそうか」
「もちろんです。キエフもです」
「それは良かった。……ところで、勘定はいくらだ?」
「100フリブナ(ウクライナ通貨)です」
■アネクドートの投稿サイトで目に付くのは、プーチンやロシア軍へのあざけりだ。戦争は短期決戦で終わるという楽観論はすぐに消え、1年以上たった今も、ロシア軍は苦戦を強いられ、泥沼の戦いが続く。想定外への自虐ジョークも溢れている。
ロシア政府が遂にNATO加盟を申請した。
ウクライナから自国の安全を守るためだ。
ロシアの将軍が戦場で意識不明に陥り、1年後に回復した。側近の将校が話しかけた。
「将軍、大統領がウクライナ侵攻を命令し、実質的にNATOとの闘いになり、これまでに10万人が戦死し、戦闘車両5千両、軍艦や戦闘機多数を失いました」
「それは恐ろしい。それでNATOの損害は?」
「NATO軍はまだ介入していません」
プーチンは昨年秋ごろから、この戦争はウクライナとの戦争ではなく、背後に控えるNATOとの戦いだと主張するようになった。2月の年次教書演説では、「この戦争は西側が始めた」と支離滅裂な発言をした。格下のウクライナより、NATOとの戦争と位置付けることで、国民の危機感を高める狙いのようだ。
■兵力不足も国民にはお見通し
しかし、大義名分のない戦争に駆り出されるロシア兵の士気は低く、兵器や銃弾も不足。欧米メディアでは、死傷者は20万人近いと報じられた。
兵力不足に陥ったプーチン政権は30万人の部分動員を発動したり、イランや北朝鮮に武器援助を要請したり、なりふり構わぬ対応に出ている。
その辺りの現実も、国民はとうにお見通しだ。
プーチン大統領の国民とのテレビ対話で、シングルマザーが質問に立った。
「私には2人の息子がいます。子育てで国に何を期待すればいいでしょう」
「2通の召集令状だ」
父親が、軍に動員された息子に電話した。
「キエフは確保したのか」
「まだです」
「ハリコフは?」
「まだです」
「では、ウクライナで何を確保したのだ」
「テレビ、冷蔵庫、高級ワイン、パソコン、靴下、下着……」
問=ロシア軍のウクライナ侵攻を内心、喜んでいる国はどこか?
答=ドイツだ。ナチスの記憶が薄れるからだ。
プーチンの女性関係に引っ掛けたアネクドートもある。
■物騒なジョーク
プーチンは2013年、当時のリュドミラ夫人と離婚した。現在は、新体操の五輪金メダリスト、アリーナ・カバエワが愛人ともいわれているが……。
プーチン大統領とリュドミラ夫人の離婚が公表された。
報道官は、「リュドミラ夫人には、住宅とクルマが与えられる」と発表した。
プーチン大統領には、クリミアとドンバス地方が与えられる。
ロシアによるクリミア併合後、カバエワが友人にこぼした。
「私は3月8日の国際婦人デーのプレゼントにクレム(クリーム)を頼んだだけなのに、彼はクルィム(クリミア)と勘違いしたようだわ。これではもう、カリャスカ(乳母車)は頼めない」
カリャスカはアリャスカ(アラスカ)のかけ言葉で、ロシアがクリミアに続いて米アラスカ州の奪還に動くのでは、という物騒なジョークだ。そんな事態になれば、第3次世界大戦は確実だろう。
クリミアとアラスカは微妙にリンクしている。帝政ロシアは19世紀半ば、英仏両国とクリミア戦争を戦い、敗れたものの、クリミアを死守した。しかし、戦費の急増で財政赤字に陥り、1867年、当時領土だったアラスカを720万ドルでアメリカに売却した。
資源の宝庫、アラスカの売却は「世紀の愚行」と教科書にも書かれ、ロシア人のトラウマとなっている。
■プーチン自身もアネクドートを
実は、プーチンも記者会見やテレビ対話で好んでアネクドートを口にする。昨年10月、内外の専門家を集めて行う「バルダイ会議」でこんなアネクドートを披露した。
ドイツ人一家の会話――。
息子「パパ、なんでこんなに寒いの」
父「ロシアがウクライナを攻撃したので、ロシアに制裁を科したからだ」
息子「なぜ制裁したの」
父「ロシアを苦しめるためだ」
息子「僕たちはロシア人なの?」
このバルダイ会議では、もう一つサプライズがあった。司会者が「核戦争が起これば、われわれは殉教者として天国に行く。西側は死ぬだけだ」というプーチンの過去の恫喝発言をただすと、会場は沈黙に包まれた。プーチンは「この沈黙は、発言が効果的だったことを示した」と述べて会場の笑いを取ったが、笑えないジョークだ。
プーチン大統領が「核戦争が起これば、われわれは殉教者として天国に行く」と述べた。
これを聞いた天国の神は、NATO加盟を申請した。
ロシア人1億4千万人が一斉に亡くなり、天国に送られた。
天国の管理人が「これほど人が多いと、群衆をまとめる指導者が必要だ。誰がいいか」と尋ねると、群衆から「プーチン、プーチン」のシュプレヒコールが沸き上がった。
管理人が言った。
「プーチンはここにはいない。彼は地獄に送られたはずだ」
■歴代指導者を非難し皇帝を称賛
KGB(ソ連国家保安委員会)の将校だったプーチンは、ソ連に思い入れがあると見られがちだが、実際にはソ連指導者を酷評し、18世紀の帝政ロシア皇帝、ピョートル大帝やエカテリーナ女帝を称賛する。
プーチンは、「レーニンはロシア人の住む地にウクライナ共和国という人工国家を作った」「スターリンはドイツから奪った領土をウクライナに与えた」「フルシチョフはロシア固有のクリミアをウクライナに帰属させた」などと歴代ソ連指導者を非難。返す刀でツァーリ(皇帝)を称賛する。
特にトルコとの戦争でウクライナ南東部やクリミアを奪ったエカテリーナ女帝を称え、「ピョートル大帝より効果的な君主だった。女帝の時代にロシアは領土を拡大した」と評価した。国民対話で、「今読んでいる本は、エカテリーナ女帝時代の歴史書だ」と明かしたこともある。
新型コロナ禍の隔離生活で帝政時代についての歴史書を読みあさって形成されたゆがんだ歴史観が、ウクライナ侵攻につながったとの見方もある。それを皮肉ったのがこんなジョークだ。
問=ピョートル大帝とプーチン大統領の共通点は何か?
答=ともにロシアを19世紀に導こうとしている。
■アネクドート・サイトを規制
西側諸国の厳しい対露経済制裁の苦境を笑い飛ばそうとするアネクドートも生まれた。
米国の対露経済制裁に伴い、マクドナルドなどのファストフード、コカ・コーラ、ペプシコーラ、アップルやフェイスブック、ツイッターがロシアから撤退した。医師がコメントした。
「ロシア人はこれで、心身ともに健康になれる」
プーチン政権は国民を西側の情報から遮断するため、インターネットやNetflixを統制した。
新しいサービスは、「インターニエット」、「Nyetflix」と呼ばれる。
ロシア語で「ニエット」は「ノー」を意味する。
戦争が長期化する中、プーチン政権は指導者がジョークで揶揄されることを恐れ、アネクドート・サイトを次第に規制し始めたようだ。昨年秋以降、ネットやSNSへの政治ジョークの投稿も減ってきた。
■罰金3万ルーブル
今年3月、リャザン州の男性が大統領とショイグ国防相を皮肉るこんなアネクドートをSNSに投稿した。
昨年11月、ロシア軍がウクライナ南部のヘルソン市から撤退すると、プーチン大統領がショイグ国防相を叱責した。
「なぜヘルソンから撤退するのだ」
「ネオナチからウクライナを解放せよとのあなたの命令に従ったのですが……」
ロシア軍をナチス・ドイツになぞらえたユニークな作品ながら、この男性は後に地元の裁判所から3万ルーブル(約5万円)の罰金刑を言い渡された。軍の名誉を失墜させる行為には最高15年の刑を科すとする、侵攻後に採択された改正刑法に抵触したとされた。
スターリン時代には、スターリンを揶揄するジョークを口にして収容所送りになったケースがあった。
ペスコフ報道官は記者団の問い合わせに、「ジョークの編集権には介入しない」と弾圧を否定したものの、アネクドートの規制は、「プーチンのスターリン化」を思わせる。
■“あなたの命日が…”
一方で隆盛が目立つのが、ウクライナのジョークサイトだ。同じスラブ系のウクライナにも、政治ジョークの伝統がある。首都キーウのお笑い劇場ではロシアを揶揄するアネクドートがあふれ、笑いが絶えない。
以下は、ウクライナのSNSやジョークサイトから拾ったが、プーチンを揶揄する作品が圧倒的に多い。
プーチン大統領が占星術師に占ってもらった。
「1年後の今、私はどこにいるか?」
「あなたはキエフにいます。戦争は終わり、あなたの乗る車の周辺は歓声を上げる市民であふれています」
「私も彼らに手を振っているのか」
「それはできません。棺(ひつぎ)は密閉されています」
プーチン大統領が占星術師に占ってもらった。
「私はいつ死ぬのか?」
「あなたはウクライナの祝日に死ぬことになります」
「祝日はいつだ」
「あなたの命日がウクライナの祝日です」
夜中の3時、ロシア大統領公邸で執事がプーチン大統領を起こした。
「夜分に失礼します。ウクライナ側が降伏について大統領と交渉したいそうです」
「遂にきたか。電話を回してくれ」
「それには及びません。武装したウクライナ兵がドアの外で待っています」
■中国もアネクドートに登場
戦争が長期化するにつれ、ロシアの国力は弱体化しそうで、漁夫の利を狙っているのが中国だ。西側からの経済制裁にあえぐロシアの資源を買い支え、着実に影響力を増している。いずれロシアは中国に飲み込まれる。そんな不安は国民にも根強いようで、ウクライナ戦争の起こる前から、こんなアネクドートがあった。
100年前のロシア指導者はラスプーチン。
現在のロシア指導者はプーチン。
100年後の指導者は陳(チン)。
戦争が始まった後も、同様の小話が生まれている。
22世紀、強力な新型コロナウイルスがまた世界を襲った。
アメリカでは、米大統領が国民に自宅待機を訴えた。
フランスでは、EU大統領が国民に自宅待機を訴えた。
旧ロシアでは、中国共産党総書記が国民に自宅待機を訴えた。
長引く戦争で、今後もアネクドートの傑作は生まれ続けるだろう。それらはインターネットに乗って世界中に広がっていく。
アネクドートはスラブの民の心の叫びであり、ささやかな抵抗の手段なのだ。
PAC-3で破壊措置命令
2023.05.29
■【速報】自衛隊に破壊措置命令 北朝鮮の「人工衛星」打ち上げ予告受けて
北朝鮮が今月31日から来月11日の間に「人工衛星」を打ち上げると予告したことを受け、浜田防衛大臣が自衛隊の部隊に破壊措置命令を出しました。沖縄県の与那国島など4島にPAC-3の部隊を展開し、迎撃態勢をとります。
海上保安庁によりますと、北朝鮮当局から、あさって31日の午前0時から来月11日の午前0時の間に「衛星ロケット」を打ち上げると通告がありました。北朝鮮側は、黄海、東シナ海及びルソン島の東方の3か所に危険区域を設けるとしていて、部品などの落下が予想されます。
政府は「人工衛星」と称する弾道ミサイルの発射だとして、浜田防衛大臣は自衛隊の部隊に迎撃態勢をとらせる破壊措置命令を出しました。
日本の領域内への落下に備え、陸上自衛隊の那覇駐屯地のほか、与那国島、宮古島、石垣島に地対空誘導弾PAC-3の部隊を展開します。また、東シナ海に迎撃ミサイルSM-3を搭載したイージス艦を展開させ警戒にあたります。
浜田防衛大臣は先月、自衛隊に破壊措置の準備を命令していて、地対空誘導弾PAC-3の部隊がすでに沖縄県に展開するなどしていました。
一方、岸田総理は、▼アメリカや韓国などと連携し、北朝鮮が発射を行わないよう強く自制を求めることなどを指示しました。
■北朝鮮がミサイル発射予告 31日から東シナ海方向 自衛隊に迎撃命令
北朝鮮は29日、日本政府に対し、「衛星」を31日午前0時から6月11日午前0時までの間に打ち上げると通告した。
政府は事実上の弾道ミサイルと判断。浜田靖一防衛相は迎撃のため、自衛隊法に基づく破壊措置命令を関係部隊に出した。
北朝鮮が人工衛星として長距離弾道ミサイルを発射すれば、2016年2月の「光明星4号」以来となる。政府によると、ミサイルやその破片などは黄海と東シナ海、フィリピン・ルソン島の東側周辺海域に落下する可能性がある。
岸田文雄首相は首相官邸で記者団に、「衛星と称したとしても、弾道ミサイル技術を用いた発射は国連安全保障理事会決議違反で、国民の安全に関わる重大な問題だ」と指摘。その上で「情報収集と警戒監視に全力を挙げ、日米、日米韓の緊密な関係を通じて連携を図っていく」と述べた。
松野博一官房長官は臨時に記者会見を行い、「南西諸島を含め、わが国の領域を通過する可能性はある」と説明。「ミサイル発射の強行は、わが国の安全保障に対する重大な挑発行為だ」と非難した。発射予告に関し、北朝鮮の水路当局から海上保安庁に「メール」で連絡があったことも明らかにした。
首相は北朝鮮の通告を受け、(1)情報の収集・分析に万全を期し、国民に適切に情報提供する(2)米国や韓国と連携し、発射を自制するよう北朝鮮に強く求める(3)不測の事態に備え、万全の態勢を取る―ことを指示。関係省庁は局長級会議を開いて対応を協議した。
■6月1日に会談、日米防衛相 反撃能力の運用協議
浜田靖一防衛相は26日の記者会見で、米国のオースティン国防長官が来日し、6月1日に防衛省で会談すると発表した。「日米同盟の抑止力・対処力の強化に向けた具体的な取り組みを協議する」と説明。日本が保有を決めた反撃能力(敵基地攻撃能力)に関し、自衛隊と米軍の連携を話し合う予定だ。
この他、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射に対処するための日米韓3カ国の連携強化、東・南シナ海で海洋進出を強める中国の軍事動向について意見を交わす見通し。
■北朝鮮、「衛星」打ち上げ予告 浜田防衛相が破壊措置命令
日本政府は29日、北朝鮮当局から人工衛星の打ち上げ予告があったと発表した。防衛省は、北朝鮮が「衛星」と称して弾道ミサイルを発射する可能性があるとしており、浜田靖一防衛相は弾道ミサイル発射に備えて自衛隊に破壊措置に関する行動命令を出した。
海上保安庁によると、北朝鮮が連絡してきた危険区域の設定期間は5月31日午前0時から6月11日午前0時までで、対象は黄海、東シナ海、ルソン島の東。ロケットの残骸などが落下する可能性があるとして注意を呼び掛けている。
岸田文雄首相は官邸で「衛星と称したとしても、弾道ミサイル技術を用いた発射は(国連)安保理決議違反であり、国民の安全にかかわる重大な問題だ」と記者団に語った。
松野博一官房長官は記者会見で、弾道ミサイルが日本に飛来する可能性について問われ「南西諸島を含めてわが国の領域を通過する可能性はあると認識している」と述べた。
発射を強行すれば「我が国の安全保障に対する重大な挑発行為」とした。
岸田首相は関係省庁に対し、情報収集と分析に万全を期すこと、米国や韓国などと連携して北朝鮮に自制を求めること、不測の事態に備え万全の態勢を取ることを指示した。