立て籠り「アパート放火」
2023.10.31
埼玉・蕨郵便局で銃を持った男がたてこもり、人質の有無を確認中 戸田市の病院の発砲事件、アパート火災との関連調べる

埼玉県戸田市の戸田中央総合病院で「爆発音のような大きな音がした」と110番通報がありました。医師と患者の男性2人がけがをしています。

一方、蕨郵便局で「拳銃を持っている男が来ている」と通報があり、たてこもりました。さらに戸田駅の近くではアパート火災が発生していて、警察は関連があるとみて詳しく調べています。

 午後1時10分すぎ、戸田中央総合病院で「病院の前で爆発音のような大きな音がした」と110番通報がありました。警察によりますと、男が病院の外から室内に向かって発砲したとみられ、窓ガラスはハチの巣状に割れていて、40代医師と60代患者の男性2人がけがをしました。けがの状況や容体はわかっていません。

 現場近くにいた女性によりますと、「大きな音がして、外に出ると拳銃のようなものを持った人がバイクで去った」ということです。男は年齢が50歳から70歳くらいで、身長が160センチほど、体格は中肉、服装は上下とも黒色でヘルメットをかぶりバイクに乗っていました。警察は、現場の状況から拳銃発砲事件して捜査しています。

 一方、午後2時15分ごろ、蕨郵便局で「拳銃を持っている男が来ている」と110番通報がありました。男は銃を持っていて、郵便局内にたてこもり、うろうろしているということです。人質がいるのか警察が確認を進めています。警察は半径300メートルに避難するよう指示し、誘導しているということです。

 また、午後1時ごろ、戸田駅近くのスーパーのそばのアパートで「1階から火が出ている」と119番通報がありました。消防が消火活動をしていて、逃げ遅れた人はいないということです。

 警察はたてこもりとアパート火災が病院の発砲事件と関連があるとみて、詳しく調べています。

 これを受け、戸田市は保育所などに外に出ないよう指示をしているということです。また、蕨市教育委員会は市内の小学校7校、中学校3校で、児童と生徒を下校させずに校内で待機させているということです。
2023.10.31 21:46 | 固定リンク | 事件/事故
李克強氏死去「新華社死亡前に想定記事」
2023.10.28
中国の李克強前首相が死去、68歳 突発性の心臓病、上海で休養中 新華社死亡前に想定記事 国民に衝撃

中国国営中央テレビによると、李克強前首相が27日午前0時10分(日本時間同1時10分)、死去した。

68歳だった。上海で休養中に突発性の心臓病にかかり、「全力で救命措置が行われたが効果がなかった」(同テレビ)という。

国営新華社通信は27日夜、公式の訃報を発表。「党を愛し、祖国を愛し、人民を愛した」と追悼した。首相として「複雑な国内外の情勢に直面し、習近平同志(国家主席)を中心とする党中央の強固な指導の下、安定の中で進歩を求める仕事の基本概念を堅持した」と振り返り、最高指導部を退いた後も習指導部を「断固支持した」と強調した。

李氏は今年3月、首相2期目の任期満了に伴い政界を引退したばかりで、突然の死去が報じられると国民に衝撃が広がった。インターネット上には「悲しみに堪えない」「国のため、人民のために身を尽くした首相だった」といった弔意のコメントが寄せられた。

李氏は2007年に最高指導部入りし、副首相に就任。習指導部で党序列ナンバー2となり、13年に首相に昇格した。北京大学で経済学博士号を取得した李氏は首相就任当初、手腕が期待され、特に経済政策は「リコノミクス」と呼ばれ国内外で注目された。

李氏は、エリート養成組織とされた共産主義青年団(共青団)のトップだった胡錦濤前国家主席に見いだされ、後に自身も共青団を率いた。習氏は共青団の影響力排除に力を入れ、李氏を人事で冷遇。路線対立による両氏の確執も指摘され、昨年10月の党大会で慣例的な引退年齢の68歳に達していなかったにもかかわらず、李氏は最高指導部から退いた。

経済に明るい李氏は対外関係を重視し、日本との関係も深かった。関係改善機運が高まっていた18年には日本を公式訪問。安倍晋三首相(当時)が同行し、北海道で自動車工場などを視察した。若手時代にもたびたび訪日し、立憲民主党の小沢一郎衆院議員の岩手県の自宅にホームステイした経験もある。

■李克強氏、存在感低下させ最後 暗殺

中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は11日、今年の国内総生産(GDP)の成長率目標を「5・5%前後」と設定した政府活動報告などを採択し、閉幕した。 李克強リークォーチャン 首相は閉幕後にオンライン形式で記者会見し、ウクライナ侵攻を巡る対ロシア制裁に反対する意向を示した。来年に2期10年の任期が終了する李氏にとって、最後の首相記者会見となった。

李氏は記者会見で、米欧などが強めている経済制裁は「世界経済の回復に打撃となる」と主張した。「平和に立ち戻るため、国際社会とともに積極的な役割を発揮したい」とも述べた。経済成長目標については、実現は「容易ではない」との認識を示し、税の還付や財政出動で下支えする意向を強調した。

李氏は「今年は首相を務める最後の年だ」と述べ、「国民が認めてくれる点もあれば、至らない点もあった」と、就任以来の中央政府の仕事ぶりを振り返った。

  胡錦濤フージンタオ 前国家主席の政治基盤「共産主義青年団」(共青団)出身のエースとされた李氏は首相就任当初、改革開放政策の一層の推進を表明し、その経済政策は「リコノミクス」(李克強経済学)と呼ばれた。その後、 習近平シージンピン 国家主席が自らへの権力集中の一環として、それまで首相が担当してきた経済分野などの権限を握ったため、李氏の存在感は相対的に低下していた。

 習氏が今年後半の共産党大会で発足させることが確実な3期目政権では、李氏は全人代常務委員長への転出が有力視されている。ここで早くも焦点となっているのが、来年の全人代で選任される後任首相人事だ。

 下馬評に挙がるのは、 汪洋ワンヤン 人民政治協商会議主席、 韓正ハンジョン 筆頭副首相、 胡春華フーチュンフア 副首相、 李強リーチャン 上海市党委員会書記、 李希リーシー 広東省党委書記の5人だ。

首相が副首相経験者から選ばれてきた通例からすれば、汪、韓、胡の3氏となる。ただ、韓氏は党大会時点で、最高指導部で慣習となってきた定年の68歳に達する。李克強氏と同様に共青団出身の色が強い胡氏は、習氏との関係に距離があるとされている。習氏に近いとされる李強、李希の両氏は副首相経験はないが、習氏が来年の全人代までの間に副首相に起用し、首相に昇格させるとの観測もある。

■李克強氏死亡前に新華社が死亡記事捏造

李氏は今年3月、習氏側近の李強リーチャン氏に首相の座を譲り、退任したばかりだった。国営新華社通信によると、李氏は上海で休養中で、「全力の救命措置も効果がなかった」という。党中央などは27日夜に訃告ふこくを出し、李氏を「党と国家の卓越した指導者」とたたえ、新型コロナウイルス禍に対策トップとして対応したなどの功績を挙げた。

 安徽省出身。北京大学を卒業し、党のエリート養成機関である共産主義青年団(共青団)でトップの第1書記を務めた。同じ共青団出身の胡錦濤フージンタオ前国家主席に目をかけられ、河南、遼寧両省のトップを経て、07年には党最高指導部の政治局常務委員に昇格した。一時は、習氏と並ぶ最高指導者候補と目された。
しかし、前首相が同日未明、突発的な心臓病のため上海で死去したと伝えた。68歳だった。2012~22年の習近平政権では共産党序列2位の地位にあり、今年3月に首相を退いたばかりだった。

李克強氏は習近平氏の路線と真っ向から対立、経済学の博士号を持つなど経済に明るい人材でもある。一時はNo2として支持者も多く胡錦涛政権の後継者習近平氏と争う一幕もあったが、江沢民氏の強い支持で後継者争いに敗れた。

 李氏は上海で休暇中だったといい、「全力の救命措置も効果がなかった」という。新華社の急死の発表記事は既に作成されていたのではないかと周辺では囁かれている。従って簡潔な内容で、公式の「訃告」は今後発表される。

 安徽省出身で北京大学に進み、党のエリート養成機関である共産主義青年団(共青団)で活動し、1993~98年にトップの第1書記を務めた。同じく共青団出身の胡錦濤(フージンタオ)前国家主席に引き立てられ、2007年に党最高指導部の政治局常務委員に昇格した。一時は習氏と並ぶ次世代の最高指導者候補と目された。

経済学の博士号を持つなどマクロ経済政策に明るく、13年の全国人民代表大会(全人代=国会)で首相に選出されると、自ら唱えた市場主導の構造改革は「リコノミクス」(李克強経済学)と呼ばれ、注目を集めた。だが、習氏への権力集中が進む中、首相としての権限が制限され、政権での存在感は徐々に低下した。

 昨秋の第20回党大会では、慣例の「68歳定年」に達していなかったにもかかわらず、党指導部から外れた。今年3月の全人代で首相の座を習氏側近の李強(リーチャン)氏に譲った。習氏が共青団出身の主要高官の排除を進める中で、確執も指摘された。死去に伴う政権への影響はほとんどないとみられる。

 首相在任中の18年には中国首相として8年ぶりに来日した。翌19年に安倍晋三首相(当時)が訪中し、日中間のハイレベルの相互往来につながった。
2023.10.28 10:54 | 固定リンク | 国際
本当にこれでいいのか「日本」
2023.10.27
G-セブン共同声明6ヶ国で発表「しかし議長国日本は含まれず」ということについて、「本当にこれでいいのか」という疑問について?

まず、G-セブン共同声明とは、2023年10月26日にイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、アメリカの6ヶ国が発表した、イスラエルとパレスチナの間で続く軍事衝突に関する声明です。 この声明では、ハマスによるテロ攻撃を非難し、イスラエルの自衛権を支持しつつ、両者に即時停戦と緊張緩和を求めています。 また、民間人や子どもたちの被害を悼み、人道支援や復興支援に取り組む意向も表明しています。

一方、日本はこの共同声明に参加していませんが、それは日本がイスラエル問題に無関心だからではないと思います。実際、日本はパレスチナ自治区ガザ情勢を巡ってエジプトで開かれた国際会議「平和サミット」に上川外相を派遣しました。 この会議では、日本はハマスによるテロ攻撃を断固として非難し、イスラエルとパレスチナの双方に対話と和平の道を探るよう呼びかけました。 また、日本はパレスチナの経済発展や人道支援にも積極的に貢献しており、これまでに約20億ドルの支援を行っています。

したがって、日本は6ヶ国の共同声明に参加しなかったとしても、イスラエル問題に対して自らの立場や責任を放棄したわけではないと言えます。むしろ、日本は中立的な立場から両者の信頼回復や対話促進に努めており、平和的な解決に向けた重要な役割を果たしていると考えられます。

ですから、「本当にこれでいいのか」という問いに対して、「はい」と答えます。日本は6ヶ国と同じくイスラエル問題に関心を持ち、平和的な解決を目指して行動しているからです。ただし、日本は6ヶ国と異なり、イスラエルやパレスチナと直接的な利害関係や歴史的な絆がないため、共同声明に参加する必要性や効果が低いと判断したのだと思います。 その代わりに、日本は自らの強みである中立性や仲介力を生かして、他の国際機関や会議でイスラエル問題に取り組んでいるのです。

また、まず、G-セブン共同声明の内容は、日本が基本的に賛成するものだと思います。日本はハマスのテロ攻撃を非難し、イスラエルの自衛権を支持しつつ、両者に即時停戦と緊張緩和を求めています。また、民間人や子どもたちの被害に対する人道支援や復興支援にも積極的に貢献しています。

しかし、日本が共同声明に参加しなかった理由は、以下のようなものだと推測できます。

日本はG-セブンの議長国として、他の6ヶ国と協調しながらも、自らの独自性や多様性を示すことを重視していました。そのため、イスラエル問題に関しても、6ヶ国と同じ立場をとるだけではなく、自分たちの考えやアプローチを表現することを望んでいました。

日本はイスラエルやパレスチナと直接的な利害関係や歴史的な絆がないため、共同声明に参加する必要性や効果が低いと判断した可能性があります。

また、イスラエルやパレスチナのどちらかに偏った印象を与えることを避けるためにも、共同声明に参加しない方が無難だと考えたかもしれません。

日本は6ヶ国の共同声明よりも、他の国際機関や会議でイスラエル問題に取り組む方が効果的だと考えた可能性があります。 例えば、日本はパレスチナ自治区ガザ情勢を巡ってエジプトで開かれた国際会議「平和サミット」に上川外相を派遣しました。 この会議では、日本は中立的な立場から両者の信頼回復や対話促進に努めており、平和的な解決に向けた重要な役割を果たしていると考えられます。
2023.10.27 07:20 | 固定リンク | 国際
ロシア、24時間で戦車55両・兵士1380人損失
2023.10.26
10月24日にロシアとウクライナの戦争に関する情報を扱っているテレグラムチャンネル「Karymat」に投稿され、ソーシャルメディア上で共有された動画には、ウクライナ空軍の旧ソ連製スホーイSu27らしき戦闘機が標的に向けてミサイルを発射して飛び去る様子が映っている。この戦闘機の標的が何だったかは不明だが、Karymatチャンネルは、「敵の空中目標」に向けて「空対空ミサイル」を発射したと説明している。

ロシアがウクライナに本格侵攻してから18カ月以上が経つが、両国は今も激しい空中戦を繰り広げている。ロシア軍にとって、侵攻後すぐにウクライナの制空権を掌握できなかったことは、最大の失敗のひとつだ。ロシア軍の巡航ミサイルやドローンは今も、ウクライナ上空を飛行して各地の標的を攻撃しているが、ロシア空軍の航空機が危険を冒してウクライナ内陸部深くに飛行していくことは滅多にない。米国製の地対空ミサイル「パトリオット」など、西側諸国が供与した防空システムがウクライナに到着していることで、ロシア側にとって危険は増す一方だ。

■ATACMSでロシアの損失拡大

戦争中の兵器類の損失を集計するオランダのオープンソース調査会社「Oryx」によれば、2022年2月24日の本格侵攻以降、ロシア軍の航空機85機が破壊され、さらに8機が損傷を受けた。この中にはスホーイSu25近接支援用攻撃機30機、スホーイSu30SM多用途戦闘機11機とスホーイSu34戦闘爆撃機21機が含まれている。

このほかにもヘリコプター102機が破壊され、28機が損傷し、2機が鹵獲された。この多くが、ウクライナ東部のルハンシクと南部のベルジャンシクにあるロシア軍の拠点に対して、ウクライナ軍が初めて米国製の陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)を使用した際のものだ。

ウクライナ側の報告によれば、ロシア軍の損失はさらに大きく、ウクライナ軍はロシア軍の軍用機320機とヘリコプター324機を破壊したとしている。

18カ月以上にわたる戦闘はウクライナ空軍にも被害をもたらしており、ウクライナ軍が敗北する運命にあるとみられていた侵攻開始当初に、多くの経験豊富なパイロットが犠牲になった。ウクライナ空軍は航空機やパイロットの数でロシア空軍に劣っており、それらを失うことは戦略的により大きな痛手となる。

■ロシア軍の攻勢弱体化

ロシア軍の攻勢弱体化 損害拡大で再編成か 東部ドネツク州

ロシアによるウクライナ侵略で激戦が続く東部ドネツク州アブデーフカを巡る攻防に関し、ウクライナ軍のシュトゥプン報道官は25日までに露軍の攻勢が弱まっていると報告した。シュトゥプン氏はその理由を、露軍が過去1週間に同州だけで約3000人の死傷者を出し、部隊の再編成に着手したためだと指摘した。ウクライナメディアが伝えた。

ドネツク州全域の制圧を狙う露軍は今月、同州の州都ドネツク近郊の都市アブデーフカへの攻勢を強化。露軍は5月に同州バフムトを制圧した後、周辺でウクライナ軍に足止めされていることから、別の進軍ルートとしてアブデーフカの突破を狙っているとみられる。ただ、米シンクタンク「戦争研究所」や英国防省によると、露軍はアブデーフカ周辺でもウクライナ軍の抗戦に遭い、大きな損害を出して目立った前進を達成できていない。

一方のウクライナ軍も、反攻の主軸とする南部ザポロジエ州方面で8月下旬に集落ロボティネを奪還したものの、露軍の防衛線に直面。当面の奪還目標とする小都市トクマク方面に前進できておらず、戦局は南部・東部とも膠着(こうちゃく)状態が続いている。

■ロシア軍、アウジーイウカ周辺で1個旅団分の兵力失う

ウクライナ軍が南部と東部で待望の反転攻勢を開始してから4カ月後、ロシア軍は形勢の挽回を図った。

ロシア軍の第2諸兵科連合軍とそこに配属されている親ロシア派地支配地域「ドネツク人民共和国」の部隊は10日、東部ドネツク州ドネツク市の北西に位置するウクライナ軍の要衝アウジーイウカ周辺を攻撃した。1個2000~3000人規模の旅団少なくとも3個が参加した。

ロシア軍の部隊は、ウクライナ側がアウジーイウカの北と南に周到に設けたキルゾーン(撃破地帯)に直接進入した。以後2週間にわたり、ロシア側は次から次に攻撃を仕掛けた。だがその都度、ロシア軍の縦隊はウクライナ側の地雷やドローン(無人機)、砲撃によってつぶされた。

ロシア軍の損害はこれまでに、装甲車100両以上、戦死・戦傷者計数百人にのぼっている。死傷者は数千人規模に膨らんでいる可能性もある。ロシア軍がある区域で1日に出している車両や人員の損害としては、2022年5月に東部ルハンスク州でドネツ川の渡河に失敗した時や、その半年後、ドネツク州ブフレダールでウクライナ軍の守備隊を急襲しようとした時に並ぶ激しさになっている。

ウクライナの調査グループ「フロンテリジェンス・インサイト」は「1週間半の間にロシア軍は1個旅団規模の兵力を失った」と報告している。第2諸兵科連合軍が当初この攻撃に投入した人員・装備の3分の1が失われたということだ。

対照的に、ウクライナ側の守備隊は車両を数両しか失っていない。ただ、歩兵部隊は比較的大きな損耗を被っている可能性がある。ウクライナの映画監督で現在は兵士として前線で戦うオレフ・センツォフは、ある接近戦についてこう述べている。「オーク(編集注:ロシア軍のことを指す)どもからは歩兵・装甲部隊が次から次に波のように押し寄せてきた」

「自分たちは幸運だった。あの日は何度も幸運に恵まれた。(歩兵戦闘車のM2)ブラッドレー2両の掩護を受けて包囲から脱出できた時も。けれど、この作戦に参加した者が皆これほど幸運だったわけではない」

アウジーイウカ攻略戦はロシア軍の大失敗になっているわけだが、リソース不足が原因ではない。たしかに第2諸兵科連合軍はDIYの歩兵戦闘車や、試作品だった装甲兵員輸送車、博物館に展示してあってもおかしくないレベルの古い装甲兵員輸送車なども少なからず投入してはいる。

■ロシア軍精鋭旅団引き剥がす

その精鋭部隊だが、作戦で用いている装備の大半は近代的なものだ。たとえばT-80戦車、BMP-2歩兵戦闘車、BTR-82装甲兵員輸送車などである。地上部隊はかなりの規模の近接航空支援も得ている。独立した調査グループ「コンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)」によると、アウジーイウカのウクライナ軍陣地とされる場所に対して、ロシア軍の戦闘機がUMPK(汎用滑空修正モジュール)誘導爆弾を使って空爆を加えている。

重量が1350kg以上もあるこの強力な滑空誘導爆弾は、ウクライナ軍が駆使している小型の滑空爆弾ほどエレガントで精確ではないかもしれない。それでも、ウクライナの軍人オレクサンドル・ソロニコによれば、重たい弾薬が詰め込まれたこの爆弾はウクライナ軍部隊の間で「最大の恐怖のひとつ」になっているという。

とはいえ、ウクライナ側は壕を掘って身を隠し、爆薬を積んだ一人称視点(FPV)ドローンの装備も十分整えている。アウジーイウカへの主要な接近ルートに地雷を埋めている点も重要だ。さらに、火力支援を行う砲兵部隊は米国製やトルコ製のクラスター弾の供給も受けている。

ロシア側の攻撃はほぼ毎回、同じパターンをたどっている。ウクライナ側のドローンが上空から監視するなか、縦隊が前進してきて地雷を踏み、混乱に陥る。そしてドローンが照準を合わせて攻撃し、クラスター弾が降り注ぐ。

アウジーイウカのウクライナ軍守備隊は持ちこたえている。「(ロシア側は)攻撃を続けているが、大きな戦果は得られていない」とCITは説明している。「(ウクライナ側)はこれまでどおり防御陣地を維持し、反攻は試みていない」

ウクライナ側が反攻に出ていないという点は非常に重要だ。第2諸兵科連合軍はアウジーイウカへの攻撃を通じて、ウクライナ軍の反攻の中心となっている南部の前線からウクライナ軍の旅団を引き剥がそうとしている可能性があるからだ。

これまでのところウクライナ側はその手に乗っていない。ウクライナ軍は南部に配置している第47独立機械化旅団の一部をアウジーイウカへの増援に回したとみられるが、現在の反攻を停止してまでアウジーイウカでの戦いにより多くのリソースを割こうとはしていない。ここでの戦いはドローンや地雷、大砲で制する構えだ。

「ウクライナの防衛者たちがみせた抵抗と技量は、ロシア側が作戦で想定していたものよりもはるかに手ごわかった」とフロンテリジェンス・インサイトは解説している。

もっとも、戦いは終わっていない。第2諸兵科連合軍も増援を得ており、攻撃の手を緩めていない。CITはウクライナ側にとって「状況は依然として非常に厳しい」とも指摘している。

■ロシア、24時間で戦車55両・兵士1380人損失

ウクライナ侵攻を続けるロシア軍はつい最近、4日間で戦車8両を含め、少なくとも68両の装甲車を失った。1年8カ月に及ぶウクライナ侵攻でロシア軍は苦戦しているが、そうした中でも今回の損失は特に大きい。同期間にウクライナ軍が被った損失は、ロシア軍の10分の1とみられている。

68両という損失車両の数は、オープンソースの情報を分析しているアンドルー・パーペチュアがソーシャルメディアに投稿された写真や動画で確認したもののみが含まれている。ロシア軍の実際の損失は、これよりもかなり大きいことはほぼ間違いないだろう。

この戦闘についてウクライナ軍参謀本部は、19日から20日にかけた24時間で戦車55両を含む175両もの装甲車を破壊したと発表した。昨年2月以来、ロシア軍が1日に失う戦車は平均してわずか3両だった。同軍はまた、アウジーイウカ上空で少なくとも戦闘機5機を失ったと報じられている。

兵士の死傷者数は車両の損失に比例している。ウクライナ軍参謀本部は、20日までの24時間でロシア兵1380人が死亡したと発表。ロシアの侵攻以来、双方における1日の犠牲者数としては最多規模だ。

ロシア側の犠牲者増加の要因は明らかだ。ここ数週間、各兵力最大2000人の7、8個の連隊と旅団が、ウクライナで最も防御が固められている都市のひとつであるアウジーイウカを包囲し、防御を切り崩そうと試み続けるも、失敗している。ウクライナ東部ドンバス地方にあるアウジーイウカは、ロシアの占領下にあるドネツクの北西に位置している。

ロシア軍は連日、戦車や戦闘車両の長い隊列を組んで挑んでいる。来る日も来る日も地雷原を突っ切り、ミサイルで狙われるキルゾーンに入り込み、大砲の砲撃を受け、そして爆発物を積んだドローンの餌食になっている。

それでもなお、ロシア軍は部隊を送り続けている。

これは、ウクライナ側のアウジーイウカ守備隊を側面から攻撃して切り崩し、最終的には撃破することを目指したものだが、失敗続きのこの作戦にロシア軍がなぜこれほどの兵力と車両を投入するのかは、はっきりしない。ウクライナ軍はアウジーイウカに少なくとも2個の旅団と連隊、付属の大隊を展開している。

ロシア軍の指揮官らは、ウクライナ軍が6月に始めた南部での反転攻勢の強化を阻止するために、ウクライナ軍の旅団を多大な犠牲を伴う戦いに引き込もうとしている可能性がある。ウクライナ軍はこの反攻作戦で、ロシアが占領しているメリトポリの北側に伸びる軸と、さらに東側のモクリヤリ川沿いに伸びる軸で、少なくとも約16km前進した。

ウクライナ軍はまた、ドニプロ川の左岸や東部バフムートの南でも前進している。

アウジーイウカの攻撃が本当にウクライナ軍の戦力を引き付けることを意図したものだとすれば、それはおそらく失敗している。「ウクライナ当局はすでに、アウジーイウカへの攻撃は戦力を引くための作戦だと認識しており、この軸にウクライナ軍が兵士を過度に投入することはないだろう」と米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は指摘した。

もしかするとこの攻撃は、引き付けの作戦ではないかもしれない。ロシアは単に、冬の到来を前にして、大規模な攻撃の機会が減少する中で勝利を収めようと必死になっているだけなのかもしれない。アウジーイウカの戦いで重要なのは、アウジーイウカ自体ではない可能性がある。

それはある意味、筋が通っているものの、実際には無意味な行為だ。ISWは「仮にアウジーイウカを掌握したとしても、ドネツク州の他の地域へ進軍する新たなルートが開かれることはない」と説明している。

だが、ロシアがアウジーイウカを象徴的な価値のために狙ったのだとすれば、それはひどい誤算だった。多くの血が流れた作戦が始まって2週間が経過した今、アウジーイウカが象徴しているのは、ロシア兵の死と大破した戦車だけだ。

攻勢の初日にロシア軍は撤退することもできただろう。ISWの推定では、ロシア軍は少なくとも45両の戦車や装甲車両を失った。だが、ロシア軍は攻勢を続けた。中隊や大隊が全滅しても、指揮官たちは気にしなかったようだ。

その意味で、ロシア軍のアウジーイウカでの作戦は、今年初めの東部ドネツク州ブフレダールでの作戦と不気味なほど類似している。ドネツクの南西約40kmに位置するブフレダールでは、ロシア軍の海兵隊が数週間、ひっきりなしにウクライナ軍の守備隊に猛攻撃をかけた。

ウクライナ側は、突撃隊を砲撃。ある交差点には、ロシア軍がウクライナ軍の攻撃に対応できなかった痕跡が残されていた。ウクライナ軍が数週間にわたってロシア軍に対する待ち伏せ攻撃を繰り返したこの交差点には、破壊された十数両の戦車や戦闘車両の残骸が散らばっていた。

激戦を経たブフレダールはいま、ウクライナ側にある。ロシア軍が制圧しようとできる限りの攻勢をかけているにもかかわらず、アウジーイウカも同様だ。

この戦いがどうなるかは分からない。ロシア軍は昨冬、ブフレダールの占領に失敗し、2つの海兵隊旅団の大部分を無駄に失った。だが春には、ドネツクの北約48kmに位置するバフムート周辺での戦いで、それより多くの犠牲を払いつつも、勝利を収めた。ウクライナ軍の旅団は時間を稼ぎ、ロシア軍に死傷者を出しながらバフムートから撤退したため、ロシア側にとってこの勝利は割に合わないものとなった。

キルゾーンが待ち受けるアウジーイウカに連隊を投入し続ければ、ロシア軍は最終的には同市を制圧できるかもしれない。だが、大きな損失を被った状態では、約970kmに及ぶ前線での作戦に支障をきたしかねない。

「この速い死傷ペースが続く限り、ロシア軍は効果的な攻勢をかけるのに必要とされる水準を満たせるよう、新兵を十分に訓練することができなくなる」と英王立防衛安全保障研究所は指摘している。
2023.10.26 21:17 | 固定リンク | 戦争
ウクライナ戦場・今「陸戦」で何が?
2023.10.21
今、ウクライナ戦争では、ウクライナ・ロシア両軍が南部と東部で激しい戦闘を繰り広げている。しかし冬季を前に地面は泥濘となり、戦車が使えず膠着状態となる。「そんなの時に最適な『七人のサムライ』作戦があります」と、元・陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍氏(元陸将補)が語った。

今年の6月、ウクライナ軍がロシアへの反攻に転じた。NATOに教わった通りに、地雷除去ド―ザ―をフロントに付けた戦車を先頭に突撃。しかし、ロシア軍による無人偵察機の正確な着弾誘導で、攻撃前進したウクライナ軍の戦車は榴弾砲の餌食になった。

これは、去年3月にウクライナ軍が行った防御のやり方だ。ロシア軍はそれを真似て見事に成功したのだ。そして今、南部はロシア空軍の航空優勢下にある。

しかし、ウクライナ軍は無人機を効果的に使用し、ロシア空軍のジェット戦闘機の力が及ばない低高度空域で戦闘開始。ウクライナ軍は夜間にサーマルカメラを搭載する無人偵察機を飛ばし、ロシア軍防御陣地前のすさまじい数の地雷源を把握。そこを米軍から供与されたクラスター砲弾で徹底的に叩いた。そして、少しずつ前進したのだ。

この10月現在、両軍の兵士は塹壕に籠り、その上を毎日数百機の無人機、ドローンが飛び交っている。月に数万機が撃墜されるすさまじい空戦消耗戦だ。

これらのドローンは双方の電波戦でバタバタと落ちていく。しかし、辛うじて生き残ったドローンは、手榴弾や迫撃砲弾を落として攻撃。自爆ドローンはそのまま目標に突っ込んで爆発する。

こうして6月の反抗開始以来、ウクライナ軍はウクライナ中南部のトクマクを少しずつ進撃している。ロシア軍は電波戦でドローンを安易に落としているものの、スターリンクの衛星経由で5G回線を使用したドローンに手を焼いているのだ。

ただし、総司令官のゼレンスキー大統領はポーランドを怒らせ、9月の国連総会で「供与武器は出さない」と言われた。西側連合は今、ギクシャクしている。そして、もし来年11月の米大統領選挙でトランプが勝てば、2025年1月に大統領に就任した翌日、米国からの供与も完全に止まる。さらに、秋の「泥濘期」になれば地面はぬかるみ、「全ての戦闘は止まる」と識者たちは言う。

時間がないウクライナは、いったいどうすればいいのか?

■「七人のサムライ」作戦とは?
元・陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍氏(元陸将補)はこう言う。

「ウクライナ軍は西側から供与されるF16が来るまでの御膳立てを、地上でしなければなりません。作戦計画は泥濘期、来年の凍結期、泥濘期、乾燥期を通して作成されています。

泥濘期が来るのは避けられないので、それで戦闘が止まると言うのは、短期間の作戦計画しかないことであり、歩兵の特性を活かしておりません。

泥濘では戦車が一度通り過ぎ、ギュンと方向転換するだけで1m以上の深さの溝ができます。そのため、戦車が何度も通ると泥濘になり、走行不能となります。そのため、戦車を使わず歩兵の力を発揮して攻めます。または歩兵戦闘車が何度も同じ所を通らなければ泥濘にはなりにくいでしょう」

では、どんな歩兵の作戦があるのだろうか?

「まず、ロシア軍の第一線陣地の地雷原は『活性化地雷原』といって、対戦車地雷の処理を妨害するため、ワイヤーに引っかかると空中で爆発する跳躍式対人地雷や、踏むと爆発する圧力式対人地雷がセットされているので地雷の処理を難しくしています。

この第一線地雷原は、今、無人偵察機のサーモセンサーで位置評定し、クラスター弾で対戦車地雷を破壊し活性化地雷を誘爆させることができます。第二線地雷原にロシア軍はそれほど手間をかけられません。だからここで、『七人のサムライ』作戦を遂行します」(二見氏)

どこかで傭兵を集めるのだろうか?

「いいえ。夜間、ロシア軍陣地に歩兵戦闘車一台を接近させます。そこから暗視装置と、ウクライナ軍が"透明マント"と呼ぶ装備(※)を着用した七人のサムライ、すなわち一個分隊の歩兵が散開します。まず対人地雷を無力化し、対戦車地雷の周りを掘り対戦車地雷をひとつずつ隠密処理して、当初、歩兵用の通路、逐次車両用へ拡幅していきます。

ウクライナ軍はレベルの高い訓練を受けているので、ロシア軍兵士と強さが全然違います。歩兵同士の戦いになれば、ウクライナ軍が圧倒的に強いです」(二見氏)(※断熱素材で作られ、露軍赤外線カメラに探知されない)

では、具体的にどんな歩兵戦闘になるのだろう。

「夜間、ウクライナ軍歩兵は、優れた性能の米軍の暗視装置を装着しています。これで七人のサムライが地雷原に作られた歩兵用通路により隠密にロシア陣内へ潜入し、偵察用無人航空機が発見した塹壕内のロシア兵を倒していきます。

10~20mでロシア兵と銃撃戦になれば一度引き返し、爆撃ドローンを呼んで手榴弾を投下して無力化します。そして、塹壕に入れば今度は塹壕内の掃討をします。

後方にいるロシア軍はウクライナ軍から夜間襲撃をされたと分かれば、まず偵察兵と増援を出します。ナイトビジョンを装着したウクライナ軍の狙撃兵銃とライフルによりロシア歩兵を狙撃していきます。次にロシア軍は地雷原の空いている経路を使用した機動打撃へ移行し、戦車と装甲車を送り込んで来ます。

この経路は事前に偵察で分かっています。ウクライナ軍砲兵火力を指向発揮し、戦車が機動力を発揮できない状態にしたところをジャベリンミサイルにより破壊します。こうしてロシア軍戦力を削り込んでいきます」(二見氏)

ウクライナ軍歩兵の「七人のサムライ」の一個分隊が、次々とロシア軍の塹壕に入り陣内のロシア兵を処理していく。やがて戦場は明け方を迎える。

「昼間は砲兵の時間です」

■昼間の泥濘戦争

24時間戦闘で泥濘期の戦争をする。地上は泥濘になっても、空は無人機ドローンが飛べる。さらに、後方にいる砲兵部隊は泥濘とは無関係だ。

「まず、上空を飛んでいるロシア軍無人機をEW電子戦でどんどん落します。次に上空を飛ぶウクライナ軍偵察ドローンからの情報で、砲撃を開始します。射程が数kmならば、隠蔽された120mm迫撃砲で上から砲弾を落します。距離十数キロならば、連続速射の可能な105mm榴弾砲を、精密誘導が必要ならば155mmM777を叩き込みます。 

最初に狙うのはドローンの操縦者たち。次に、予備のドローンが集積してある場所を潰します。それからロシア軍の対無人機ドローン電子戦部隊を叩き潰し、ロシア軍無人機部隊を壊滅させます。

そして、偵察ポイント、歩兵のいる塹壕、最前線司令部、その後ろの兵站施設、反撃用戦車、装甲車待機所を次々と砲撃で潰します」(二見氏)

今、砲兵部隊はウクライナを1とすると、ロシア軍の砲兵部隊は3と、3倍の数が毎日やられていると言う。

「米軍から供与されたウクライナ軍の砲迫レーダーは、ロシア軍が撃った瞬間にその発射位置を割り出します。それを砲弾ウーバーと言われる指揮統制システムによって、ちょうど砲撃できる部隊に瞬時に情報が伝わるので、砲撃して潰します。

その成果が1対3以上のキルレシオ(空中戦における自軍と敵軍との撃墜比)に出ています。ウクライナ軍は6月から高価値目標として、砲兵狩りをしていますから。

使う砲弾は全て、クラスター弾でよいと思いますが、もしコンクリート陣地を発見したならば貫通弾で破壊します。高機動ロケット砲システム・ハイマースで、その後方にいる電子戦、砲兵部隊、指揮所、補給場所、兵站部隊を叩きます。こうして、ロシア軍歩兵は毎日2個大隊ずつやられています」(二見氏)

現在、ロシア軍の最前線に開いた地・トクマクを目指す突破口は、横に広げていかなくてよいのだろうか?

「幅が20kmありますから、今の状態で十分ですが、さらに広げることができれば有利になるでしょう。11~12月の泥濘期になれば、トクマク陥落を追求するために夜間は歩兵分隊の『七人のサムライ』、昼間は砲兵中心で作戦を進めます。そうすれば、今度はウクライナ軍の砲兵が有利です」(二見氏)

しかし、上空はロシア空軍の航空優勢だ。

「もちろんロシア空軍が1日40~80機は飛んで来るため、ウクライナ軍は戦車を出せません。なので、歩兵の『七人のサムライ』分隊を夜間に出し、地対空ミサイルで守られた後方に砲兵部隊を展開して攻撃します。

ロシア空軍は、ウクライナ軍地対空ミサイルの射程外から、精度の悪い誘導爆弾を落していく形を維持します。ここで戦車、地対空ミサイル部隊、砲兵部隊をガーンと前に出せば、瞬間にロシア空軍の爆撃で相当な数がやられます。泥濘期は、『七人のサムライ』が夜間に動き回り、静かにロシア兵を漸減していくのです」(二見氏)

ロシア軍の予備兵力は潤沢なのか?

「ロシア軍は砲兵が少なくなり、守備部隊は逆襲ばかりしているので、予備兵力は枯渇しています。この状態で、射程距離300kmの地対地ミサイル・ATACMSを航空基地へ打ち込めば、叩き続けられます。両軍が四つに構えている状態から、ある時に分水嶺が崩れ、一挙にウクライナ側有利に傾くでしょう」(二見氏)

■射程300kmのATACMS投入

F16の前に、射程300kmに達するハイマースから撃てるATACMS弾各種(ブロック I・射程165km・搭載子弾950個、ブロック IA・最大射程248km・搭載子弾 275個、ブロック II・最大射程140 km・搭載子弾13発、ブロック IIA・最大射程300 km・搭載子弾 BAT無動力滑空型誘導式子爆弾6発)がはいれば、また最前線は変化するのであろうか。

「冬場は寒さが敵です。その場合、補給が効いていて、暖かい待機所と温かい食事が食べられれば、士気も高い。もし、ロシア軍にそれらの弾薬、燃料、食料などの補給物資が入らなくなれば、部隊の士気が低下します。だから、この兵站を徹底的にATACMSで叩きます」(二見氏)

ロシア軍の補給インフラは鉄道と船だ。鉄道はロシア本土からクリミア大橋を通り、クリミア半島経由で南部に届く。しかし、今その南部に繋がる橋が空中発射巡航ミサイル・ストームシャドウで破壊された。なので、トラックで運んでいる。

南部は全てトクマクまで繋がる一本の鉄道に頼っている。しかし、その鉄道は海岸から約50~60kmの内陸を通っているので、戦況が進むと使えなくなる。その場合は、アゾフ海のベルジャンスクにある港湾施設から海岸沿いの陸路で運ぶ。

「まず、最前線から110kmのベルジャンスクを、遥か後方からATACMSで撃って、そこの鉄道と港湾施設を潰します。そして、ここのうるさい航空基地も叩きます。ロシア軍の頼みの綱は航空攻撃だからです。次に、海岸沿いのメリトポリに続く十数か所の橋梁を落とします。兵站線をとにかく破壊するのです」(二見氏)

残りは、クリミア大橋だ。

「これは緒戦で、ハイマース発射機が4両しかない時と同じように、慎重に使います。

まず、トクマクへの突破口の真ん中に機動路を整備します。それでチャンスを窺い、ハイマースをクリミア大橋に向けて一気に発射、30秒以内に撤収させます。クリミア大橋を奇襲すれば、ロシア軍は反撃をおこなうからです。

これは、せっかく諸事情をクリアして渡したのにすぐに破壊されたら、『虎の子をなんてことするのだ』と西側諸国から確実にクレームがあり兵器支援に影響を受けます。ウクライナは思った以上に難しい戦争をしています。そのため、『懸命に戦っている結果、事態は好転を続けています』と米国や西側諸国に納得させなければなりません」(二見氏)

地上戦での「F16が来るまでの御膳立て」とは、どこまでを指すのだろうか?

「クリミア大橋を落せる体制が取れたら、御膳立てができたことになると思います」

デンマークはF16を19機、ウクライナに供与すると明言している。年明け前後にまず6機を供与する見通しだ。年明けまでに地上の「七人のサムライ」分隊たちと長距離砲兵火力、ドローン攻撃が、どの程度の戦果を上げているのか......。御膳立ては、いまこの瞬間も続いている。
2023.10.21 05:45 | 固定リンク | 戦争

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