水素燃料電池を搭載する航空機、エアバスが計画発表
2022.12.16
ロールスロイスとイージージェットが開発した液体水素燃料で動く航空機エンジン

欧州航空機大手エアバスはこのほど、水素を動力とする燃料電池エンジンを開発中だと発表した。史上最大の旅客機に搭載して試験を行う計画だ。

エアバスは先月30日のイベントで、A380「スーパージャンボ」の改造機の主翼と尾翼の間にこのエンジンを搭載すると明らかにした。二酸化炭素(CO2)を出さないゼロエミッション機を2035年までに導入する「エアバスZEROe」イニシアチブの一環として、26年に試験飛行を実施する見通し。

エアバスでZEROeの実証機と試験を統括するマシアス・アンドリアミセナ氏は、「A380は空力的に非常に安定した航空機だ。このため、胴体後部に短い支柱でポッドを取り付けても大した問題にはならない」と説明した。

エアバスは以前、液体水素燃料と燃焼エンジンを使用する航空機の概念設計を公開していたが、ゼロエミッション航空機担当副社長のグレン・ルウェリン氏は、より小型の民間機であれば燃料電池のみで十分な動力を得られる可能性があると示唆する。

開発中のエンジンは燃料電池を使って水素を電気に変換し、この電気でプロペラを駆動するというもの。「もし技術的な目標が達成されれば、燃料電池エンジンで航続距離約1850キロの100人乗り航空機を動かせるかもしれない」とルウェリン氏は期待を寄せる。

空の旅の脱炭素化に向けて
水素は長年、従来型のジェット燃料に代わる持続可能な代替物とうたわれてきた。可燃燃料として使うか、燃料電池によって電気を発生させる使い道がある。航空業界は世界のCO2排出量の2.8%を占めるが、他業界に比べて脱炭素化が難航しており、進歩のペースは遅い。

水素で動く航空機は20世紀半ばから開発が進められているものの、大きな壁に当たってきた。水素のエネルギー密度がケロシンに比べて低いこと、ケロシンは入手しやすく昔から低価格であることが主な障害となっている。

水素の生産や供給に必要なインフラの問題もある。エアバスのイベントでは、ギヨム・フォーリ最高経営責任者(CEO)がインフラは「大きな懸念材料だ」と警鐘を鳴らし、水素で動く航空機を35年までに導入する同社の計画に狂いが生じる可能性があると指摘した。

ただ、水素ベースの全く新しい航空機が開発される前であっても、水素は民間航空の分野の重要資源になる可能性がある。エアバスの発表の数日前、英ロールスロイスと英格安航空イージージェットは、通常の航空機エンジンを液体水素燃料で動くように改造することに成功したと発表。世界初だとしている。

この地上試験は民間機と軍用機の両方に搭載されているタイプのロールスロイスエンジンを使って行われ、すでに2回目の試験も計画されている。次回はボンバルディアの長距離ビジネスジェットに使用されているロールスロイスのエンジン「パール15」での試験も行われる見通しだ。

未来の燃料
ロールスロイスの試験で使われた燃料は風力や潮力をエネルギー源としており、「グリーン」水素の一例になる。

グリーン水素は通常、電気を使って水を水素と酸素に分解する電気分解を通じて得られ、その際には再生可能エネルギーによる電気を使用する。「グレー」水素は非再生可能エネルギーによる電気を使うもの。「ブルー」水素はグレー水素と似ているが、製造過程で排出された炭素の大半を回収するという特徴がある。グリーン水素が最も環境に優しい選択肢だと考えられている。

水素の利用方法によっても排出量は異なる。液体水素を屋外で燃焼させる場合、温室効果ガスである一酸化二窒素が少量放出される。一方、グリーン水素を使って燃料電池内で電気を発生させる方法なら、出るのは水と暖かい空気だけだ。

どちらの水素技術が軌道に乗るかは、次の10年間で明らかになるだろう。どちらも低炭素な空の旅の長期的実現性を確保するうえで前向きな一歩だ。
2022.12.16 12:20 | 固定リンク | エネルギー
米核融合「歴史的成果」
2022.12.14

核融合で投入上回るエネルギー生み出す「歴史的成果」 米エネルギー省

 米エネルギー省は13日、核融合の実験を行い、投入したレーザーのエネルギーを上回るエネルギーを生成することに初めて成功したと発表した。歴史に残る成果だとしている。

いわゆる「正味のエネルギー利得」は、核融合からクリーンで無限のエネルギーを得ることを目標とした何十年にもわたる取り組みにおける大きな成果だ。核融合反応は2つ以上の原子が融合して起きる。

実験では2.05メガジュールのエネルギーを供給し、出力は供給を50%超上回る3.15メガジュールだった。実験で出力が有意義なエネルギーの利得が得られたのは初めて。

今回の実験はカリフォルニア州にあるローレンスリバモア国立研究所の国立点火施設で今月5日に行われた。同施設は競技場ほどの大きさで、192個のレーザーを備える。

米エネルギー省のグランホルム長官は、リバモア国立研究所やその他の国立研究所の科学者が「気候変動と闘うためのクリーンエネルギーの供給や、核実験を伴わない核抑止力の維持など、人類が抱える最も複雑で差し迫った問題を解決する」のに役立つ仕事をしていると評価した。

リバモア国立研究所のキム・ブディル所長は、同研究所で核融合の点火を実現するという試みについて「人類がこれまでに取り組んだ科学分野における最も重要な課題の一つ」と位置付けた。

ブディル氏は声明で「この達成は科学、工学、そして何よりも人類の勝利だ」「この基準を超えることが60年にわたる献身的な追求を駆り立ててきたビジョンだ」などと述べた。

カリフォルニア州選出の民主党上院議員、アレックス・パディーラ氏は「この途方もない科学的な進歩はクリーンエネルギーの未来にとって快挙だ」と称賛した。

2022.12.14 09:08 | 固定リンク | エネルギー
原油先物が下落、下げ幅は数カ月ぶり
2022.12.11

米国時間の原油先物は、不安定の地合いの中で下落した。週間の下げ幅は数カ月ぶりの大きさを記録。中国、欧州、米国からの軟調な経済指標を受け、リセッション(景気後退)懸念が高まり、供給不安を上回った。

清算値は、米WTI先物が0.44ドル安の71.02ドルと、年初来安値を更新。北海ブレント先物は0.05ドル安の76.10ドルとなった。

みずほ証券のアナリスト、ロバート・ヨーガー氏は「経済に関する懸念に比べれば供給に関する懸念は二の次だ」と述べた。

2022.12.11 07:23 | 固定リンク | エネルギー

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