マイナス営業で「行列話題店」
2023.09.28
接客しない、売上を重視しない、店内はわかりづらい…なぜ人気? 女性が行列する話題店の理由とは

ほかのショップでは在庫がある商品でも売り切れていたり、レジでも行列が珍しくないほど人気のセレクトコスメショップ「@cosme STORE(アットコスメストア)」。実は、「接客しない」「店は見渡しづらい」「売上を第一に求めない」と、企業からするとマイナスに思えそうな方針が功を奏している。どういう狙いなのかを取材した。

美容系総合ポータルサイト「@cosme」を運営する「アイスタイル」(東京都港区)グループによる同店は、2007年に1号店を新宿にオープン。現在国内に28店舗、海外では3店舗を展開している。

関西の人気商業施設「ルクア大阪」からのリクエストもあり、西日本最大規模となる旗艦店「アットコスメ大阪(以下、大阪店)」(大阪市北区)が9月1日にオープン。デパコス(デパートで販売されている化粧品、カウンターがあり高級志向のブランドが中心)の「シャネル」「スック」も同店として初めて加わり、「化粧品業界での見られ方が変わり、出来ることがグッと増えてきた」と代表取締役社長の遠藤宗さんが語るように、プチプラから高級ブランドまでが注目しているブランドへと成長している。

ちなみにプチプラと高級ブランドが同じ店内に並ぶというのは画期的だ。雑誌であれば、高級ブランドが、そのページで並ぶ商品に対して掲載可否を判断することも珍しくない。ましてや店舗であれば、そのハードルの高さはなおさら。しかも同店は、商品をテスターで試せるとあって、数百円と数万円の商品(ちなみに高額商品はスタッフへの声がけを)も、比べられ、品質が見極められる恐さもある。それを凌駕する魅力があるということなのだ。

はたして、どういった点が人気につながっているのか、遠藤さんに詳しく聞いた。

■お客さまのために…接客しない

関西の店舗はこれまで面積が限られ、混雑していたのもあるが、客側として見ていた限り接客の印象は薄かった。「お客さまが望まない限り、積極的な接客はいたしません。スタッフにも必ずしも今日売らなくていい、もしもお客さまが悩んでいたら、”今日は買わない”ことを勧めるようにと伝えています。気軽に入って、出られるお店であることを大事にしています」と遠藤さん。

そこで、気になるのは”買わなくていい”と言われた客側の反応だ。実際に、買わずに帰ることも多いらしいが、改めて来店する客も。特に印象的だったと話してくれたのが、翌日に戻ってきた客。悩んでいた商品は1点だけだったにも関わらず、5万円分も購入。その理由が「そんな言葉をこれまで言われたことなかったからだ」という。ほかにも買わなくていい気軽さを実感して、友だちを連れてくる客と顧客拡大へと結びついているそうだ。

■はたして、接客できるのか?

と、考えるとスタッフにコスメの知識が必要ないのではないのか?と思ってしまったが、「少なくとも2カ月に1回ペースでスタッフが本社で研修を受けるほか、取り扱いブランドの研修にも積極的に参加しています。また、当社は、他社の化粧ブランドの研修プログラムを組んでいる実績もあります。特定のブランドに所属すれば自社商品には精通していても、他社については詳しくないかもしれませんが、ここでは多様なブランドを取り扱うため、各ブランドの特徴などを把握した上で、お客さまにプチプラ、デパコス関係なく提案できます」とのことだ。

その結果、他店舗の接客でつい買ってしまった高級ブランドの使用法に困惑し、「これをどうやったら、手持ちのコスメと合うように使えるか」と常連が駆け込んできたこともあったそうだ。そんなスタッフの実力は、店舗でも落ちづらいと話題のリップをさらに落ちにくくさせる方法や、今トレンドとなっている中国風の「千金メイク」の肌の仕上げ方も、多種ブランドのアイテムを使って仕上げる方法などを聞いていると実感することができた。

■どこに何があるのか分からない!?

スーパーやドラッグストアなど多様なアイテムを扱う店では、どこに何があるのかわかりやすく、通路と棚も並行にまっすぐ並んでいるのが通例。しかし、ここはあえて什器もバラバラにして、入り組んだような店舗設計に。見やすさを重視するのではなく、どこに何があるのか分からない「テーマパークのような楽しさ」を目指したそうだ。

「化粧品を探す楽しさを体感してもらうために、あえて先が見渡せないお店に。コットンパフなどのアメニティを置く場所は、海外のコスメショップで発見した什器や、ランキングのコーナーはパリのデパート「ギャラリーラファイエット」のワインのディスプレイを参考にするなど、業界問わず参考にして、より楽しんでいただける空間を追求しました」

そんな遠藤さんはよく店内を歩き回っては気になる箇所を次々と指摘していると広報担当者。女性はどの高さが手に取りやすいか、鏡の位置が見えやすいか、通路は狭くないかなど。実際に、新店舗での開店日前日に、ある什器の鏡が、背伸びしないと見えづらいと感じ、変更することを決定されたとのこと。

「スタッフも改善点を見つけたら僕にすぐに指摘します。部門が違うと見えてくるものが違うこともあり、みんなの目線で伝えてくれますね。ちょっとしたことでも不便だと感じたことがお客さまの店の印象を決定づけてしまうので、常にお客さま側の気持ちでいたいと思います」。

■合計金額よりも合計点数が大事とは?

店舗にとっては大事なのは売上かつ購買率。しかし、先述の通り、望まれなければ接客しないという方針のもと、店舗が客に魅力的に映っているのかどうかを計るのに、「買い上げ点数」を指標としている。気になるものが試せるようにテスターの準備、テーマによって編集したディスプレイに注力。人気のコスメがひと目でわかる「ランキング」の棚は、大阪店であれば大阪バージョンと、歴代のものが並ぶエリアと2カ所設置し、興味・好奇心がわきやすいように。また、スタッフによる手書きの熱量がこもった推薦文もポイントとなっている。

ちなみに2020年にオープンした旗艦店「@cosme TOKYO(以下、東京店)」はコロナ禍とあって当初は1人あたり購入点数は2.5点だったが徐々に伸びて、現在3.5点に。こちらは店舗が約400坪と広く約2万点がそろうとあって、他店舗よりも点数が多くなっているそうだが、通常は2.3~2.5点が平均。「点数が多ければ、それだけこのお店を楽しめていただけた証拠です」。

その買わなくていいスタンスは、大阪店の会見で同社の弱点とも思える「ポイント制度の弱さ」を指摘することにもあらわれていた。百貨店であれば、買上げ積算額に応じて5・7・10%のポイントがつくことを挙げて、同店では通常は1%であることを取材陣に伝えていた。確かに1%と10%では大違いだ、ほかのポイントをためやすいお店に行く可能性が高くなる。

「アットコスメストアで試して気に入った商品を、他店で買ってもらっても大丈夫です。ここでは化粧品を探す楽しさ、出会う楽しさを味わってほしい。僕たちは、いかにそういう楽しい「体験」を作れるかを追求していきます。大量に在庫は確保しているものの売り切れているときもあるので、そういったときはお客さまが周辺の店舗に行って買われて、そのお店から感謝されたこともありました」と遠藤さんは笑う。

■実際の客の反応は?

大阪店のオープン日初日に訪れた大阪府吹田市の60代女性は「普段はドラッグストアで買っていることが多いです。デパートであれば買わないといけない雰囲気になるのですが、ここでは自由にたくさん試せるのがうれしいですね。気づいたら、いろいろ見ていて1時間経っていました」、大阪市の20代女性は「ランキングで展示されているのもわかりやすく、知らないコスメと出会えるきっかけにも。東京店はYouTubeで見ていて、大阪でも点数が増えて広くなったのがうれしいです」と話してくれ、同店の狙いや長所は、客側にもしっかりと伝わっているようだった。

ちなみに目立つのは女性客だが、男性客も増えてきているのだそう。カップルの場合は、女性が見ている間に自身の化粧水などを試す男性も少なくなく、今回の大阪店では男性向けコスメのコーナーも設置している。「今や男性がスキンケア用品に気をかけるのも当たり前に。アイライナーなどを試している男性も東京では珍しくありません」と遠藤さん。

実際に大阪店でのレジでの行列でも、ちらほらと国内外の男性が並んでいたので、今後行列するのは女性だけではなくなる可能性も高そうだ。
2023.09.28 08:42 | 固定リンク | 経済
王毅外相失脚「嘘か誠か」
2023.09.27
王毅外相は、2013年から2022年まで外相を務めていた経験豊富な外交官で、中国共産党中央外事工作委員会弁公室主任も兼任しています。中国と米国が様々な分野で対立する中、再び外相に就任することになりました。

王毅外相反省文とは、2023年7月25日に中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が決定した、秦剛国務委員兼外相の解任と、王毅政治局員の外相への再就任に伴う、王毅外相が習近平国家主席に提出したとされる文書のことです。

この文書は、王毅外相が2022年12月から2023年7月までの外交部長を解任された理由や、今後の対外政策について自己批判や反省を述べたものとされています。しかし、この文書は公開されておらず、その内容や存在自体が真実かどうかは不明です。

一部のメディアやネット上では、王毅外相が反省文を書いたという噂が流れていますが、それらは憶測やデマに基づくものであり、信憑性に欠けます。

王毅外相は、中国共産党中央政治局委員であり、党中央外事工作委員会弁公室主任も兼任しています。中国と米国が様々な分野で対立する中、再び外相に就任することになりました。王毅外相は、日本や韓国などの周辺国とも積極的に対話を行っており、地域の安定や協力に努めています。

王毅外相が習近平国家主席に反省文を提出したという話は、事実ではなく、中国の外交政策や王毅外相の地位を貶めるためのデマである可能性が高いです。

■デマ報道

通訳の孫寧さんが警備員に取り押せられて帯同できず、(英語が話せない)習近平さんはその後の会談がチンプンカンという事態(相手はインドのモディ首相)になったので、怒って出席しなかったのかもしれません。

で、割を食ったのが王毅外相という噂が出ています。「王毅外相が反省文を書くように命じられた」というのです。

この噂の真偽は不明ながら、中国のSNSでは「BRICsに帯同した王毅外相は不満げだった」「ストレスがたまっているように見えた」といった感想も出ています。

秦剛外相がどこかに行ってしまった後に急きょ外相に復帰した王毅さんですが、いきなり習近平総書記に叱責された。

デマ「更迭も」

国家元首の体を叩く/外相会談で大幅遅刻――中国・王毅外相の“上から目線”にわだかまる韓国世論

中国の王毅・国務委員(副首相級)兼外相に対し、韓国国内でわだかまりが生じている。王毅氏がかつて、文在寅大統領への親近感を表現するために体を強く叩いたり、最近訪韓した際に康京和外相との会談に大幅に遅刻したりと、その“上から目線”の行動を「非礼」と受け止めているためだ。

◇過去には大統領の腕を叩くシーン

 王毅氏は韓国訪問中の先月26日、康京和外相との会談に際し、予定時刻(午前10時)より約20分遅れて外務省庁舎に到着した。

 庁舎入り口で待ち構えていた韓国記者団が「なぜ遅れたのか」と聞くと、王毅氏は英語で「Traffic!」とだけ答え、交通渋滞が原因と示唆した。「王毅氏がホテルを出た時刻がそもそも10時を過ぎていた」と韓国メディアが報じたことから、「外交的欠礼」だとして批判が起こった。

 王毅氏は19年12月に訪韓した際にも、昼食レセプションに予定より約1時間遅れて姿を現したという。

 王毅氏に関しては、文大統領との接し方をめぐって批判が起きている。

 17年7月にドイツで開かれた中韓首脳会談で、文大統領が習近平国家主席と握手したあと、中国側要人のあいさつを受ける際、王毅氏は文大統領と右手で握手したあと、大統領の右腕を、左手で「パーン」と音がするほど強く叩いた。その様子が韓国メディアに報じられて、批判の対象となった。

 同年12月に文大統領が中国を公式訪問した際にも、北京の人民大会堂で開かれた歓迎式典で、王毅氏が文大統領の腕を軽く叩いた。この時は文大統領がまず王毅氏の腕を軽く叩いて親近感を表し、これに王毅氏が応じた形だった。

 こうした王毅氏の行為に対して、韓国国内では「王毅氏は閣僚級にすぎないのに、国家元首である大統領の腕を叩いたのは、外交的欠礼ではないか」の声が上がった。

 ただ、韓国メディアによると、王毅氏はかのプーチン露大統領に挨拶する際にも軽く腕を叩いているといい、「王毅氏は行動パターンの持ち主だ」として許容する考えもあるようだ。

 また、「中国が極めて重要な隣国だとしても、韓国政府高官は韓国国民の自尊心も考慮しなければならない」(パク・ピョンファン元駐露韓国公使・12月6日付朝鮮日報コラム)と指摘する。パク氏は北朝鮮を例に取りながら、もし中国外相が金正恩朝鮮労働党委員長の腕を叩いたら、北朝鮮側がこれを放置しておくだろうか、と皮肉っている。

■王毅外相、国連人権高等弁務官と会談

「政治問題化に反対」中国外相、国連人権弁務官にクギ 王毅氏失脚説「反中勢力がデマ」 国連人権弁務官に不満示す。

中国の王毅国務委員兼外相は23日、バチェレ国連人権高等弁務官と広東省広州市で会談した。中国外務省の発表によると、王氏はバチェレ氏に対し「一部の国や反中勢力がデマをまき散らし、人権問題を政治化している」と不満を示した。しかし「今回の訪問が、そうした状況に対する根本的な処置を中国へ取り計らうよう促したいと述べた。

中国・新疆ウイグル自治区の経済発展の状況を考慮したうえで人権問題を視察すべきだと伝えた。

中国外務省が24日までに発表した。バチェレ国連人権高等弁務官は28日までの6日間の訪中期間に、中国当局による少数民族ウイグル族への人権侵害が懸念されている新疆ウイグル自治区を訪問する計画だ。人権高等弁務官の訪中は2005年以来約17年ぶりとなる。

王氏は「多国間の人権機構は分裂と対抗の新たな戦場ではなく、協力と対話の大きな舞台にならなければならない」と主張した。中国側は米欧が人権問題で再び中国に「内政干渉」を強めようとしていると警戒を強めている。

中国外務省によると、バチェレ氏の訪問日程は外部との接触を禁じる「隠ぺい方式」を採用し、記者団の同行はない。バチェレ氏は28日に記者会見をする見通し。
2023.09.27 06:15 | 固定リンク | 国際
来春ウクライナ勝利で戦争終了
2023.09.24
来春ウクライナ勝利確定、ロシアの敗北必至 国防省情報総局長 今年重要な勝利が...

ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノフ総局長(少将)は20日までに、ウクライナは今年末までに「重要な勝利」を収め、戦争は来年の夏までに「終わるであろう」との予測を示した。

情報総局が公表した発言内容で、ロシアの敗北は不可避であって止められないとし、ロシアの破壊につながるだろうとも主張。ウクライナが握るとする重要な勝利については「まもなくわかるだろう」とした。

この勝利に、ロシアが占領するウクライナ南部のヘルソン市が含まれることを期待するとも述べた。ウクライナ軍はここ数週間、同市などで大きな戦果を得ている。

総局長は「来年春の終わりには戦争は終わるであろうし、夏までには全てが終わるであろう」とも占った。

ウクライナが1991年時点での国境線を取り戻す意向も表明。2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ・クリミア半島と親ロシア派勢力が占領した東部のドネツク、ルハンスク両州の奪回を意味するとした。

また、ロシアはウクライナで核兵器の投入はしないだろうとの見方も表明。理論的には使うことができるだろうが、そうなればロシア連邦の崩壊への道のりを速めるだけとなると指摘。「彼らはこのことを十分に理解しているし、我々が望むほど愚かではない」とも説いた。

「ロシア大統領府の指導者たちはウクライナ戦争の主要な目標について一致しており、それは敗北を喫しないことだ」と強調。「ハト派」もいれば「タカ派」もいるが、共に情勢が非常に悪化していることは認識しているとし、現状から抜け出すための方途についての意見が若干異なっているだけだと説明した。

その上で、「一部の者は戦争をやめ、ある種の平和的な解決方法を模索すべきと明確に理解している」とし、「(侵攻を)続けなかったり、敗れたりしたら、ロシアは存在しなくなると判断している者もいる」と続けた。

ロシア大統領府内の現在の判断について「もはや勝利の問題ではなく、敗北しないことが問題になっている」と分析。ウクライナが勝利すれば、「非常に深刻な政治的なプロセスが、現在のロシア連邦の組織の変化と組み合わせた形で始まるだろう」とも締めくくった。

■ロシア黒海艦隊司令官ら重傷

ロシア海軍会合に合わせクリミアを攻撃

ウクライナ軍は23日、クリミアのロシア黒海艦隊司令部に対する前日のミサイル攻撃について、ロシア海軍当局者の会合に合わせて実施したと説明した。クリミアでは23日も攻撃が続いた。

ウクライナ軍は短い声明を発表。22日の攻撃でロシア側は「黒海艦隊の幹部を含む数十人が死傷した」と主張した。詳細は明らかにしなかった。

ウクライナ国防省のキリロ・ブダノフ情報総局長は、ロシア軍司令官2人が重傷を負ったと述べた。

ウクライナ軍関係者は、攻撃にはイギリスとフランスから供与されたミサイル「ストームシャドウ」を使ったとBBCに話した。

ロシア政府は22日、攻撃で兵士1人が行方不明になったと明らかにしている。

BBCは戦闘に関する双方の主張の多くを、独自に検証できていない。

港湾都市セヴァストポリに拠点を置くロシアの黒海艦隊は、同国海軍で最強の艦隊とみられている。

クリミアに連日の攻撃

セヴァストポリ周辺は23日も再び攻撃を受けた。ロシア側が任命したミハイル・ラズフォザエフ知事は、防空システムで撃ち落としたミサイルの破片が桟橋の近くに落下したと説明。防空シェルターに行きにくい、行っても状態が悪いなどの批判が出ているため、点検を命じているとした。

そして、「みなさんに心から願う。パニックの種をまいて敵を喜ばせるのをやめてほしい。パニックこそが向こうの主な狙いだ」と、ソーシャルメディア「テレグラム」に書いた。

こうした中、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は同日、米ニューヨークで開催中の国連総会で演説し、西側は自分たち以外の世界と交渉できない「うその帝国」だと非難。その後、記者団に対し、西側勢力は「ウクライナ人の手と体を使って事実上、私たちと戦っている」と述べた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年2月にウクライナへの全面侵攻を始め、国際的に非難されている。ロシアは、ウクライナのクリミア半島を2014年に不法に併合した。

クリミアの重要性

ウクライナ軍はこのところ、クリミア駐留のロシア軍に連日のように攻撃を繰り返している。

今月14日には、ロシアがクリミア半島の防衛に設置した防空システムS-400を、ウクライナ海軍が破壊したとされる。そのため、ロシアの防衛力は低下しているという。

その前日には、セヴァストポリでロシアの大型揚陸艦と潜水艦を損傷させた。ウクライナ側は、この攻撃にも「ストームシャドウ」ミサイルを使ったとしている。

クリミアへの攻撃は、戦略的にも象徴的にも重要だ。

黒海艦隊はロシアにとって、ウクライナを攻撃する際の基盤であると同時に、この地域における数世紀にわたる軍事的存在感を誇示する主要シンボルにもなっている。

ソヴィエト連邦崩壊後の1997年にウクライナは、黒海艦隊の大半の引き渡しとセヴァストポリ軍港の基地貸与で、ロシア側と合意した。そのため黒海艦隊はロシアによる2014年の併合前から、セヴァストポリを本拠地とし続けてきた。

■クリミアのケルチ橋に複数のミサイル攻撃

ロシア国防省は12日、ロシアがウクライナから併合したクリミアと、ロシア本土を結ぶ主要交通路のケルチ大橋が、ウクライナのミサイル2発に攻撃されたと発表した。

ロシア国防省は、ウクライナが同日午後1時ごろ、S-200ミサイル2機をケルチ橋へ向けて発射したものの、どちらも迎撃したため、橋に損傷はなかったとしている。S-200は冷戦時代にソヴィエト連邦で開発された誘導型長距離高高度防空ミサイルシステムで、ウクライナが地上戦用に改良したものとみられる。

ソーシャルメディアに投稿された動画では、ケルチ橋の近くで煙が上っている様子が見える。

ウクライナはこの件についてコメントしていない。

ロシア外務省は、「このような野蛮な行為には必ず対応する」と述べた。

ロシアがクリミア知事に任命したセルゲイ・アクショノフ氏は、ケルチ海峡で3発目のミサイルが撃墜されたと述べた。

アクショノフ知事の顧問は、橋の通行は一時停止されたと明らかにした。立ち上った煙は、軍による意図的な「煙幕」だと話した。

これに先立ちロシアは同日、クリミア近くでウクライナのドローン(無人機)20機を撃墜したとしていた。

ウクライナは今回のケルチ橋攻撃や使用兵器について認めていないが、ウクライナが奪還を目指すクリミアをはじめウクライナ南部と、ロシア本土を結ぶ重要な輸送路なだけに、昨年から繰り返しケルチ橋を攻撃している。

ウクライナのニュースサイト「ユーロマイダン・プレス」は7月、改良型S-200ミサイルがケルチ橋のほか、ロシアのロストフ州とブリヤンスク州の軍事拠点を攻撃するために使用されたと伝えた。

7月12日には橋で起きた爆発で2人が死亡し、1人が負傷した。

ウクライナは当時、攻撃したことを認めなかったが、BBCロシア語が取材したウクライナ治安当局の関係者は、攻撃は自分たちによるもので、水上ドローン(無人機)を使ったと話した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は7月21日、ケルチ大橋は正当な軍事標的だと主張した。ゼレンスキー氏は米コロラド州アスペンで開かれた安全保障関連会議でオンライン演説し、「この戦争の弾薬を届けるのに毎日使われる」大橋を「無効」にする必要があると述べ、ウクライナ政府は大橋を「敵の施設」とみなしていると話していた。

昨年10月に起きた橋の爆発については、当事者はまだ判明していない。当時の監視カメラ映像には、上向きに傾斜する橋の路面を複数の車両が通行する間に、その後ろの片側で巨大な火の玉が発生する様子が映っていた。この爆発の影響でケルチ橋は部分的に閉鎖され、今年2月に全面通行が再開した。

ウクライナ軍は、ロシアが2014年に併合したクリミアをはじめ、2022年2月からの侵攻で制圧した東部や南部の地域を奪還しようと、春から反転攻勢を続けている。夏に入り、ケルチ橋周辺での軍事行動が歴然として頻度を増した。

ゼレンスキー大統領は6月下旬の時点で、反攻の進展が「望んだより遅い」とBBCに対して認めていた。ロシア軍が20万平方キロメートルのウクライナ領土に地雷を仕掛けて守りを固めているため、進軍は容易ではないと、ゼレンスキー氏は話していた。

ロシア政府は、首都モスクワのクレムリン(大統領府)や政府省庁の入る高層ビル群への相次ぐドローン攻撃も、ウクライナによるものと非難している。

モスクワへのドローン攻撃についてウクライナは自分たちによるものと認めていないものの、最初の高層ビル攻撃をロシアが発表すると、ゼレンスキー大統領は「戦争は徐々にロシア領に戻りつつある。ロシアにとって象徴的な中心地や軍の基地へ。これは不可避で自然で、まったく公平なプロセスだ」と発言している。

他方、ロシアはウクライナの民間施設への攻撃を続けている。ウクライナによると、今月5日には北東部ハルキウ州の輸血センターを破壊。南部ザポリッジャでも民間インフラの攻撃が続いているという。
2023.09.24 14:55 | 固定リンク | 戦争
李強首相退任
2023.09.24
習政権ナンバー2に蔡奇氏台頭

全人代では習主席に次ぐ党内序列2位の李強氏が首相に、序列6位の丁薛祥・党中央弁公庁主任が筆頭副首相に転じ国務院(政府)を固めた。2人とも習氏の元秘書官を務めた習近平派なので、習総書記と李克強前首相が対立した時代が終わり、党と政府が一体の習近平・李強体制が生まれると思われていた。

党に従属する「政府」
 はたして李首相は就任後、最初の国務院常務会議(閣議)で「国務院は政治機関である」と宣言した。政府は党の指導を受ける機関であり、党から独立した行政権力ではないという意味で、例のない動きだ。

 改革派の鄧小平時代は党が行政機関や国有企業経営に介入しない「党政分離」「党企分離」が基本だった。だが、習政権では、党がすべてを決め、政府はそれを忠実に執行するという毛沢東時代への回帰が色濃くなった。

 李首相は2度目の閣議で「国務院工作規則」を改定し、「重大な決定事項は、すべて、ただちに、党中央に報告して指示を仰ぐ」と国務院の権限を自ら縮小した。

 さらに、毎月1回、国務院で習近平思想の学習会を開き、習総書記が党中央政治局で行った重要演説を全官僚に学習させることも決めた。序列2位は名ばかりで、李首相の存在感は薄い。

 李首相に代わって急に台頭したのが序列4位の蔡奇・党中央書記処筆頭書記(政治局常務委員)だ。3月20日から22日まで習主…

■中国共産党“新指導部” 序列5位・蔡奇氏とは

新しい最高指導部で序列5位に入った蔡奇氏は、福建省出身の66歳で、現在は北京市トップを務めています。

蔡氏は地方勤務時代に習近平国家主席と接点があり、習氏の側近の一人に位置付けられています。

蔡奇氏は今年の北京冬季五輪も北京市トップとして取り仕切り、習主席の2期目政権のレガシーづくりに貢献したほか、新型コロナウイルス対策では、地方から北京への移動を厳しく制限するなど、習主席がこだわるゼロコロナ政策の下で首都防衛を徹底してきました。

蔡奇氏はまた、北京五輪の開会式のあいさつでは習主席を礼賛する言葉を述べたほか、今回の党大会を前にした会合でも、習主席について「我々が心から敬愛する人民の領袖だ」と絶賛するなど、習主席への絶対忠誠を常にアピールしていて、忠誠心を買われて最高指導部入りを果たしたとみられます。
2023.09.24 13:05 | 固定リンク | 国際
江沢民一派の巻返し「暗殺におびえる習近平」
2023.09.22
江沢民の妻、王冶坪氏存命か? 「江沢民ファミリーの海外資産は1兆ドル」郭文貴氏が暴露 江沢民一派の巻き返し 暗殺におびえる習近平 香港も敵だらけ。

米国に亡命した中国の富豪・郭文貴氏はこのほど、自身のSNSで江沢民一族が海外で1兆ドル(107兆円)もの資産を有していると述べた。

そのうち、5000万ドルはすでに洗浄された。郭氏が4月13日にユーチューブで発表した動画によると、江沢民ら複数の共産党上層部は、上海実業集団、上海銀行、上海信託、平安、海通、万科、順豊、華為、太平洋保険などの大手企業の株を保有している。郭氏によれば、江沢民の孫・江志成(33)氏の資産は5000億ドルにのぼり、江沢民家族は海外では少なくとも1兆ドル以上の資産を持つという。

一族は千以上の企業を支配しており、国有企業、金融機構、保険などの方法で、「海外で5000億ドルの資金を洗浄した」「その一部はすでに米の金融ファンド、大手ハイテク会社に投資された」と述べた。郭氏は、腐敗幹部が「全中国人の資産を奪った」と形容した。

郭氏の予想として、近く、西側諸国は江沢民一家に前例のない制裁を加えることになり、「国賊が海外へ移した資金が公式に明らかになる」と述べた。

江志成氏は江沢民の長男、上海科学技術大学の学長江綿恒の息子で、2010年9月、香港で博裕投資コンサルタントを設立した。わずか25歳だった。すぐにアジア大富豪の李嘉誠、 シンガポールの政府系投資機関であるテマセク・ホールディングスらの協力を得て、第1回目の資金調達で10億ドルを集めた。

ロイター通信2014年の報道によると、博裕投資コンサルタントは2011年、北京や上海の空港で免税店を展開する「日上免税行」の株式40%を約8000万ドルで取得することで合意した。

中国では、免税業界は国営企業に独占経営されていたが、1999年に当時の国家主席江沢民の指示により上海浦東国際空港に入る免税店の入札で外国企業の参入が許可された。

そのとき落札に成功したのが江沢民と親しい米国在住の実業家江世乾だった。江世乾氏はその後、浦東国際空港と北京国際空港で免税店・日上免税行を展開し、年間売り上げは10数億ドルを超えるなど一気に業界ナンバー2に躍り出た。博裕投資の資産も3年で、投資額の3倍に当たる2.4億ドルの収益を得た。〈佐渡道世〉氏より引用 (親の7兆光の威光が無くなればゼロとなる)

江沢民派はスイス銀行に巨額の隠し資産がある。江沢民政権時代の幹部1000人以上はスイスに総額10兆円の預金がある。江沢民の家族はスイスに1兆円以上の隠し資産がある。

その他の共産党幹部(習近平政権幹部も含む)の隠し資産、遂にスイス銀行までが中国共産党幹部100名総額1200兆円の資産を預金拒否した。11月にスイスで国民投票が行われ、資産をどうするかを決める。スイス政府はスイスの「武漢ウイルス」の被害者たちに賠償金としてこれを使うことを考えている。

■江沢民一族の乱舞

江沢民一族乱舞とは、元中国共産党総書記である江沢民とその家族や側近が、政治や経済において権力や利益を私物化し、腐敗や不正を行ったことを批判する言葉です。

江沢民は、1989年の天安門事件後に党トップに抜擢され、2004年まで党総書記や国家主席、中央軍事委員会主席などの要職を歴任しました。その間、江沢民は自らの出身地である上海や電子工業部などの人脈を活用して、党や軍の幹部を多数登用しました。

これらの人々は「上海閥」や「江派」と呼ばれ、江沢民の後継者である胡錦濤政権や習近平政権にも影響力を持ち続けました。

しかし、江沢民一族は、権力を背景に巨額の資産を蓄積し、海外に隠匿したり、不動産や金融などの事業に関与したりするなど、腐敗や不正の温床となりました。特に江沢民の長男である江綿恒は、中国の通信産業における最大手企業である華為(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などに出資し、巨利を得ていたとされます。

また、江沢民の側近である曽慶紅や周永康は、反対派の弾圧や司法介入などの人権侵害に加担しました。これらの行為は、中国国内外から強い非難を受けました。

習近平政権は、2012年以降、「反腐敗闘争」という名目で江沢民一族や江派の幹部を次々と逮捕・処分しました。周永康は2015年に無期懲役判決を受け、曽慶紅も2018年に同じく無期懲役判決を受けました。

江沢民自身は2022年11月30日に死去しましたが、その追悼式は習近平が欠席するなど冷遇されました。これらのことから、江沢民一族乱舞は終止符を打たれたと言えるでしょう。

■暗殺におびえる習近平国家主席の胸算用 関係最悪の北朝鮮には震える?

ただ、長年、中国共産党でその香港を支配してきたのは習一派の敵、江沢民派である。「江派二号人物」の曽慶紅元国家副主席(二〇〇二年十一月の第十六回党大会で序列五位)の流れを引き継いできたのは、前政権でチャイナセブン(中央政治局常務委員七人)の序列三位だった張徳江・全国人民代表大会常務委員会委員長だ。

北朝鮮エキスパートで吉林幇の彼は、香港を主管する中国政府の最高機関「中央香港マカオ工作協調小組」の組長である。「香港・中国経済貿易緊密化協定」(CEPA)が施行された二〇〇四年、広東省書記として香港を初めて訪れた彼は汎(拡大)珠江デルタ区域フォーラムの呼びかけ人となり、香港の中国化工作の先陣を切った。

香港が江沢民派に掌握されているジレンマなのか、習主席は返還二十年の行事に合わせて、昨年六月二十九日から七月一日まで、九年ぶりに同地を訪問したが、複数のメディアは、「江沢民派と表裏一体で張徳江と近い」行政長官の梁振英との握手を、習主席が二度、拒んだことを報じた。新たに行政長官に就任した林鄭月娥(キャリー・ラム)も、「張徳江が推した人物」とされる。

 ただ、その張徳江も今年三月に開催予定の全国人民代表大会(全人代)で、年齢により全人代常務委員会委員長を退職するはずで、中央香港マカオ工作協調小組の組長には、習主席の側近中の側近で、プーチン大統領とのホットラインを構築してきた栗戦書(現序列三位)が就任すると専門家らは見ている。

 とすれば、香港は徐々に江一派から習一派の牙城になる? いずれにせよ、国際社会が香港を「自由と民主と健全な資本主義が栄えた地域」と勘違いしていないことを祈りたい。同地は所詮、中国など権力者が牛耳る闇利権のホットスポットなのだ。

■北朝鮮の「千年の敵」は中国

米韓関係の分断や、核ミサイルの実戦配備に向けた時間稼ぎなのだろう。北朝鮮から韓国への呼びかけにより、二年一ヵ月ぶりに開催された南北会談の議題は、二月の平昌冬季五輪に代表団などを派遣する話だったが、米中露そして日本も、その暫定的な雪解けムードを歓迎した。

 南北会談が始まった一月九日についてだが、たまたまこの日だったのだろうか? というのも昨年九月、北朝鮮による六回目の核実験を受けて国連安全保障理事会で決定した制裁決議に便乗した中国商務部(省)は、「制裁決議の採択日から百二十日以内に、北朝鮮の個人・団体が中国に設立した合弁企業や全額出資企業の閉鎖を命じる」「中国企業が北朝鮮の個人・団体と共に、中国以外で設立した合弁企業も閉鎖対象」との通達を出した。

 この「百二十日以内」のデッドラインは一月九日だった。金正恩・朝鮮労働党委員長は「習政権との決別」「朝鮮半島のことは我々朝鮮人で決める」との主体思想で、南北会談を同日に決めたのかもしれない。北朝鮮メディアは「民族自主」「わが民族同士」の原則と「外国勢力排撃」を連日、主張している。

そもそも、北朝鮮にとっての「千年の敵」は、米国や日本ではなく民族浄化を続ける中国なのだ。朝鮮民族は満州人、ウイグル民族、モンゴル民族、チベット民族、そして在中国の同胞の悲劇や差別を熟知している。

 しかも、核・ミサイル開発に心血を注ぐ北朝鮮への資金源を断つべく、中国を含む国際社会は厳格な制裁に乗り出しているが、「完全な遮断」は無理難題である。年末にも(中国外交部は否定したが)、中国の船舶が海上で北朝鮮の船舶に石油を供給していたことが報じられ、国籍を偽装した船の存在も指摘されている。中国東北三省の市場には、輸入規制をしたはずの北朝鮮産のカニなども出回り、瀋陽にある北朝鮮系レストランの営業は依然、続いているという。

 順法精神のカケラもない中国社会では、規制が強まれば、「上に政策あれば下に対策あり」の慣習から、抜け穴を見つけての裏技、裏経済のスキームが発展する。北朝鮮も同じで偽装、闇ルートが常態化し拡大していく。ロシアも似たり寄ったりである。

挙げ句、皮包公司も暗躍している。事務所・資本・人員がおらず事業活動の実態がない幽霊会社(ペーパー・カンパニーやダミー会社などと言う)のことで、英語ではその他シェル・カンパニー(空殼公司)やフロント・カンパニーなどとも記される。その存在自体は合法だが、不法資金の助成やマネーロンダリング(租税回避)、所有権隠蔽など悪用されていることが多い。

 米国の複数のシンクタンクは、北朝鮮との間で緊密に連携する企業は、中国に三百社以上、香港にも百社以上あると推測している。米ワシントンD.C.の金融制裁分析の専門会社サヤリ・アナリティックスも、「百社を超える香港企業が北朝鮮の制裁対象と関連がある」とし、専門家らは「これらの企業は社主や役員を共有するなど、大規模な北朝鮮ネットワークの一部として運営されている」「香港が北朝鮮の中心的な資金流入の経路」「正体と国籍を隠そうとする北朝鮮にとって香港はうってつけ」と解析している。

■香港をめぐる権力闘争

北朝鮮との違法取引により、二〇一六年九月に摘発され、馬暁紅董事長兼総経理らが金融制裁を受けた、「丹東市百強企業」の超有力企業の鴻祥実業発展は「十三社のペーパー・カンパニーを香港に設置」と報じられている。中朝の一部は、中国が統治する「一国二制度」の香港を重要な拠点としてきたことが分かる。

内外の有識者らは「中国共産党がこの二十年来、香港行政にたえず介入し、今や全面的に管理統治権を握っている」と解析しており、中国政府に批判的な香港の民主活動家らの拘束も続く中、中国当局が北朝鮮の核・ミサイル開発に関与する闇企業の存在を知らないはずがない。それどころか幇助や公安がみかじめ料を徴収するなど、表裏で連動していると考えられる。

ただ、長年、中国共産党でその香港を支配してきたのは習一派の敵、江沢民派である。「江派二号人物」の曽慶紅元国家副主席(二〇〇二年十一月の第十六回党大会で序列五位)の流れを引き継いできたのは、前政権でチャイナセブン(中央政治局常務委員七人)の序列三位だった張徳江・全国人民代表大会常務委員会委員長だ。

 北朝鮮エキスパートで吉林幇の彼は、香港を主管する中国政府の最高機関「中央香港マカオ工作協調小組」の組長である。「香港・中国経済貿易緊密化協定」(CEPA)が施行された二〇〇四年、広東省書記として香港を初めて訪れた彼は汎(拡大)珠江デルタ区域フォーラムの呼びかけ人となり、香港の中国化工作の先陣を切った。

香港が江沢民派に掌握されているジレンマなのか、習主席は返還二十年の行事に合わせて、昨年六月二十九日から七月一日まで、九年ぶりに同地を訪問したが、複数のメディアは、「江沢民派と表裏一体で張徳江と近い」行政長官の梁振英との握手を、習主席が二度、拒んだことを報じた。新たに行政長官に就任した林鄭月娥(キャリー・ラム)も、「張徳江が推した人物」とされる。

 ただ、その張徳江も今年三月に開催予定の全国人民代表大会(全人代)で、年齢により全人代常務委員会委員長を退職するはずで、中央香港マカオ工作協調小組の組長には、習主席の側近中の側近で、プーチン大統領とのホットラインを構築してきた栗戦書(現序列三位)が就任すると専門家らは見ている。

 とすれば、香港は徐々に江一派から習一派の牙城になる? いずれにせよ、国際社会が香港を「自由と民主と健全な資本主義が栄えた地域」と勘違いしていないことを祈りたい。同地は所詮、中国など権力者が牛耳る闇利権のホットスポットなのだ。

■北朝鮮をダシに体制転換

この五年ほどの間、金王朝との関係が密接だった石油閥の周永康(元序列九位で終身刑)や軍人元2トップ、郭伯雄と徐才厚らを次々と獄中や鬼籍に送り、習独裁への布石を着々と打ってきた習政権にとって、国際社会からの北朝鮮への制裁の動きは渡りに船でもあった。

米財務省が北朝鮮との商取引に関与した中国人や遼寧省丹東市などの中国企業、船舶などに対する制裁を発表したが、「敵陣=江沢民派の制裁」になるためだ。米国内の資産の凍結、米国人との取引が禁止となれば、江沢民派の弱体化と無力化に拍車をかける。とすれば習一派としては、我慢と忍耐でこの機会をフル活用したいはずだ。

北朝鮮貿易で長年、主役の地位にあった丹東港集団だが、昨年十一月に中期債券債務不履行(デフォルト)が報じられた。東北アジア経済圏の中心、北朝鮮との国境に位置する丹東港の管轄権を持つ同集団の王文良会長は、クリントン財団の元幹部で選対幹部も務めた「クリントン夫妻の側近中の側近」バージニア州のテリー・マコーリフ知事への違法な選挙資金提供の疑いで、二〇一六年六月、米連邦捜査局(FBI)と米司法省によって調べられていることが報じられた人物である。

北朝鮮との合弁による服飾工場の経営、鉱山、石炭、鉄、非鉄金属の採掘、重油の販売など、北朝鮮とのビジネスを幅広く手掛けてきた四十代の馬暁紅董事長兼総経理(前出)は、「中共中央対外連絡部所属の工作員」と噂され、一説には北朝鮮取引の二割を牛耳っていたらしいが、彼女と王会長は密接な関係にあった。親北朝鮮の江沢民派、旧瀋陽軍区(北部戦区)の中核企業を担ってきた彼らも、すでに虫の息である。

 トランプ陣営にとっても、不透明なチャイナマネーで、表裏で繋がる米中関係を斬る上で好都合な流れにある。トランプ大統領が訪中した十一月、習主席は「中米関係の新たな歴史の起点に立っている」と述べ、環球時報の論説は「中国は北朝鮮との関係を犠牲にして、最大限の努力をした」などと記したが、北朝鮮問題をダシに体制転換と武器売買などの利益追求に走っているのだろう。

ただ、北朝鮮情勢の今後について、「平昌五輪閉幕後に、米国が斬首作戦を実行」などの説も飛び交う一方で、「奇襲攻撃は非現実的」との論調も目立つ。とすれば、袋小路に迷い込まれた感があるのは米中なのかもしれない。

金委員長は、国営メディアを通じて「新年の辞」を発表。「核のボタンが私の事務室の机上に常に置かれている」「米国はわが国を相手に戦争を起こせない」と牽制し、「核弾頭と弾道ミサイルを量産し、実戦配備に拍車を掛けるよう指示した」という。

国際社会の厳しい制裁を受けながらも、金委員長が強気の姿勢を崩さないのは、様々な錬金術を会得したことも背景にありそうだ。「北朝鮮のハッキング能力は、世界七位内に入る」と、昨年十月、米インターネットメディア「vox」が報じた。七カ国とは北朝鮮、米国、ロシア、中国、英国、イラン、フランスだ。

かつては、偽札や武器・覚醒剤の密売などが主な資金源だった北朝鮮は、今や最先端技術の悪用による「錬金」も可能となっているのだ。 

また、北朝鮮から四十カ国前後に派遣される出稼ぎ労働者の賃金の九割も、北朝鮮政府に送られる。昨年は年間二十三億ドルの奴隷輸出売上があったと見積もられ、中国による締め出しは痛手だが、国連が決めた制裁決議を履行しなくても罰則はなく、派遣先がマレーシアやベトナムにシフトしていくだけ、との話もある。

■暗殺に怯える習近平

さらに金王朝には、いざという時の奥の手--亡命という道も残されている。核シェルターのみならず、中露の国境につながる複数の「秘密の地下通路」の存在が、以前から噂されている。これに対し、北京の中南海にも核シェルターがあることは周知の事実だが、大国の中国では、一党独裁とはいえ習主席とその一族だけが亡命する選択肢はないに等しい。

その上、真偽は別としても習主席の暗殺未遂事件は、この五年で九回ほど報じられている。二〇一二年三月には、周永康らが胡錦濤国家主席、習副主席らに対し、武装警察を使い暗殺計画を実行したことが報じられた。さらに同年九月上旬、ヒラリー・クリントン米国務長官が訪中した際に、国家主席への昇格が決まっていた習副主席はヒラリー長官との会談をドタキャンした。

雲隠れした謎の十数日……。習副主席はプールで泳いでいて背中を痛め、中国人民解放軍総医院(通称、北京301病院)に入院したとされるが、「周永康らによる暗殺未遂」との説が依然、飛び交っている。「入院先で毒入り注射による殺害未遂もあった」という情報のおまけ付きだ。

前述の香港滞在時は、保安当局や警察当局が安全保障レベルを最高級の反テロ厳戒態勢に引き上げ、機動部隊や特別警務部隊など、八千人から一万人規模の精鋭部隊が投入された。香港も習主席にとって危険極まりない地域といえる。

昨年六月には武装警察の幹部らの大幅入れ替えが行われたが、元旦からは武装警察の指揮権を習主席がトップを務める中央軍事委員会に一本化する体制に変わった。周永康に近い武装警察が多数を占めていたことから、組織を信用できないのだろう。

十二月二十四日には、腹痛を訴えた習主席が、物々しい厳戒態勢の中で検査のため301病院に緊急入院したことも報じられた。「度重なる暗殺未遂への心労」「中南海に専門医を呼ばず入院したのは腹部の負傷など、シリアスな理由があるのでは?」など、様々な憶測を呼んでいる。事情通は、「この度は、中南海の車寄せで習主席の近くに止まっていた別の車が爆発した」という。つまり、習主席は、中南海にも暗殺を試みる敵が入り込んでいることに怯え、301病院への入院を決めたというのだ。

反腐敗運動の名目で親北朝鮮の江沢民派の大物を次々と粛清し、「兄弟関係」だった金王朝とは史上最悪の関係になった習主席。隣国の核ミサイルや生物・化学兵器の脅威にも震えているはずだ。暗殺を最も恐れているのは、外遊もせずモグラ生活を送る金委員長ではなく、大国で独裁が機能せず国内外に「敵」だらけの習主席ではないのか。
2023.09.22 23:51 | 固定リンク | 国際

- -