SLIM「逆さまに墜落」
2024.01.31
SLIM逆さまに墜落 JAXA小型ロボット「レブ2」が撮影したスリム。姿勢が計画から外れて転倒し、太陽電池を上でなく西(右)に向けて静止している。中央部の横線はノイズ


SLIMは逆さまにしたため軟着陸したが、損傷は軽微だったが太陽電池が発電しなかった 原因は着陸の際、主エンジンの1基が破損停止したため 

SLIMエンジン破損とは、日本初の月面着陸に成功した実証機「スリム」が、着陸直前に主エンジンの1基が異常で停止したことを指します1。スリムは自動で姿勢制御を続け、目標地点から約55メートルずれた場所に着陸しました1。このとき、スリムから脱落したエンジンノズルが月面に落ちている様子が航法用カメラに写っていました。スリムはエンジン故障にも堪えて、100メートル級のピンポイント着陸を実現し、計画の主目的を達成しました。

スリムは着陸後、太陽電池が発電しない状態になりましたが、28日に運用が再開され、通信が確立されました。スリムは分光カメラで月面の岩石を撮影し、月の起源の謎に迫る観測を行う予定です1。また、スリムとともに月面に降りた小型ロボット「レブ1」「レブ2」も月面で活動し、レブ2がスリムの撮影に成功しました。

スリムの月面着陸は、日本の宇宙開発の歴史に残る快挙です。スリムのチームには、心から敬意と感謝を表します。

SLIMの主エンジンの1基が破損停止した原因は、現在も調査中です。しかし、SLIMは自律制御で着陸を続け、目標地点から約55メートルずれた場所に逆さまに軟着陸しました。着陸時の速度や姿勢は仕様範囲を超えていましたが、機体の損傷は軽微であると考えられます。

SLIMは着陸後、太陽電池が発電しない状態になりましたが、28日に運用が再開され、通信が確立されました。

SLIMは分光カメラで月面の岩石を撮影し、月の起源の謎に迫る観測を行う予定です。また、SLIMとともに月面に降りた小型ロボット「レブ1」「レブ2」も月面で活動し、レブ2がSLIMの撮影に成功しました。SLIMの月面探査計画は、主目的であるピンポイント着陸の技術実証を達成したほか、科学的データの取得も可能であると見込まれます。

なお、SLIMの月面探査に関する詳細は以下の通りです。

SLIMの月面着陸の結果・成果等について

JAXA、小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸の結果・成果等について発表

実証機スリム活動再開 月が「昼」になり発電可能に 撮影も

小型月着陸実証機「SLIM」

JAXA変形型月面ロボットによる小型月着陸実証機(SLIM)の撮影およびデータ送信に成功

日本の月面探査機「SLIM」、月周回軌道へ投入成功…1月20日に着陸へ

スリム 探査の概要 月探査情報ステーション

小型月着陸実証機SLIM(ISAS)

月面機スリム「ピンポイント着陸」を確認 今後の“復活”へ高まる望み

会見でスリムの模型を示しながら説明する坂井氏=25日

日本初の月面着陸に成功した実証機「スリム」について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、当初の目標から約55メートルずれた場所に着陸しており、100メートル級の誤差を目指した世界初の「ピンポイント着陸」を達成していたと発表した。着陸直前に主エンジン1基が異常で停止したものの、機体は自動で姿勢制御を続けた。上空で分離した小型ロボットは、月面でスリムの撮影に成功した。スリムはいったん活動を終えたが、時間が経てば太陽電池に日光が当たり、再起動できる望みがあるという。

「新しい探査へ、扉を開いた」

高度50メートル付近で撮影した月面。中央に、スリムから脱落した円すい形のエンジンノズルが写っている(JAXA提供)

スリムは20日午前零時20分、世界5カ国目となる月面着陸を達成。ただ機体の太陽電池で発電できず、搭載したバッテリーが消耗したため同3時頃にいったん活動を終えた。活動中に地上で受信したデータを分析した結果、当初の目標地点から約55メートル東に着陸したことが判明。従来の月面着陸機で数キロ以上だった目標の誤差を大幅に下回る、100メートル級のピンポイント着陸に成功したことを確認した。

スリムは降下中の高度約50メートルで、月面の岩などの個々の障害物を自動で避けて着陸するよう作動し始めた。この時点での位置誤差は大きく見積もって10メートル、推定3~4メートルほどだったといい、これを実質的な誤差とみることができる。

25日、都内で会見した坂井真一郎プロジェクトマネージャは「信じられないほど、大きな飛躍のように思われる。ただわれわれの見込みでは、正常に着陸すれば10回中、7回くらいは10メートルの精度が出ると見込んでいた。3~4メートルなら(見込みより)少しよかったことになる。10メートルで特に驚くことはない」と説明した。

目標の着陸地点は低緯度の平原「神酒(みき)の海」にある「シオリクレーター」付近の、半径100メートルの円内の傾斜地だった。坂井氏は「安全な場所への着陸が考えられてきた従来なら、考えられないことだ。一方、スリムは100メートルないし10メートルの精度で着陸できた。スポーツ選手が記録を破るとその後、続けざまに(他の選手も)記録が伸びることがあるそうだ。同様にスリムの後、新しい探査をしようと思う人たちが現れるのでは。新しい扉を開いたのかもしれない」と話した。

エンジン故障も、異常対応モードで粘り抜く

高度約50メートルで、2基の主エンジンの1基が推力を喪失したことが分かった。航法用カメラが、スリムから脱落したエンジンノズルが月面に落ちている様子を捉えていた。直前まで正常に作動していたことなどから、スリムチームはエンジン以外の何らかの要因が異常を招いたとみて、解明を目指す。

主エンジン1基だけが作動する状態となったことを、搭載ソフトウェアが検知。すぐに異常対応モードに移行し、機体の位置のずれを抑えるよう姿勢を自動制御しながら降下を続けた。ただ、水平方向の速度や機体の姿勢が計画を外れてしまったため、計画通りに太陽電池のある面を上に向けて静止することはできなかった。

高度約5メートルで2体の小型ロボット「レブ1」「レブ2」を分離し、いずれも月面で活動した。このうち中央大学などが開発したレブ1は飛び跳ねて月面を移動し、地球との通信にも成功。タカラトミーなどのレブ2は計画通りに変形して移動し、さらに月面のスリムを撮影できた。画像には、スリムが転倒して静止している様子が明確に写っている。レブ1とレブ2により、日本初の月面ロボットが実現した。月面を飛び跳ねる移動、地上の指示によらない自律した動作などが、世界初になったという。

レブ2の愛称は「ソラキュー」。JAXAが科学技術振興機構(JST)から「イノベーションハブ構築支援事業(太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ)」を受託し、小型ロボット技術、制御技術について共同で行う契約をタカラトミーと結んで実現。今回の月面でのスリム撮影に結実している。

スリムが搭載した科学観測用の分光カメラも試験的に動作させ、月面の画像が地上に届いている。

スリムが着陸後、分光カメラで撮影した月面(JAXA提供)


「この成果をカタパルトに、惑星探査拡大へ」

 スリムは独自の「2段階着陸」を実施する計画だった。まず1本の「主脚」で月面に接地し、次に残り4本の足も使い、傾斜地に倒れ込んで静止するもの。しかし主エンジンの異常が引き金となって計画通りに着陸しなかったため、結果的にこの着陸方式は実証に至らなかった。

 月の昼間は、地球の2週間ほどに相当する長さがあり、着陸地点では来月1日の日没まで続く。スリムの太陽電池は西を向いており、今後“昼過ぎ”となり太陽光が西から当たるようになれば発電し、スリムが再起動できる可能性があるという。ただ、仮に太陽電池が機能しても、他の搭載機器が昼の高温に耐えて生き延びているかは、未知数という。

 JAXA宇宙科学研究所の國中均所長は「ピンポイント着陸技術の獲得は大きなステップ。(資源として使える水の氷があるともいわれる)月の極域や、(JAXAの火星衛星探査計画の)MMXでの衛星フォボスへの着陸に応用できる。宇宙研はこの成果をカタパルト(射出装置)にして、惑星探査を拡大させたい」と強調した。

 20日の会見で着陸の点数を問われ「ぎりぎり合格の60点」とした國中氏。5日経ち、一連の状況説明に続いて再び同じ質問を受けると「分光カメラとレブ1、レブ2が動いたので、各1点加算して63点」と応じた。相変わらずの辛口評価だが、この日は安堵(あんど)がうかがえる笑顔もみられた。

スリムはエンジントラブルにも堪えてピンポイント着陸を実現し、計画の主目的を達成した。小型ロボットも作動し、既に画期的成果を上げたことは疑いない。今後もし太陽電池が復活すれば、分光カメラを本格作動させ、地下のマントルから月面にむき出しになった「かんらん石」の組成が分析できる。月の起源の謎に迫るという、この観測にまで到達できるだろうか。スリム復活の期待がいよいよ、膨らんできた。

会見後、撮影に応じる國中氏(左から2人目)、坂井氏(3人目)と、小型ロボットの担当者ら=25日


■小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸の結果・成果等について

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2024年1月20日午前0:20(日本標準時)に小型月着陸実証機(SLIM)を月面に着陸させ、地球との通信を確立させました。

しかしながら、SLIMの着陸時の姿勢等が計画通りではなかったことから、太陽電池からの電力発生ができず、同日午前2:57(日本標準時)に地上からのコマンドにより探査機の電源をオフにしました。

電源をオフにするまでに取得した各データの分析を行った結果、SLIMが当初の目標着地地点から東側に55m程度の位置で月面に到達していることが確認できました。また、ピンポイント着陸性能を示す障害物回避マヌーバ開始前(高度50m付近)の位置精度としては、10m程度以下、恐らく3~4m程度と評価しています。詳細データ評価は継続する必要があるものの、SLIMの主ミッションであった100m精度のピンポイント着陸の技術実証は達成できたものと考えられます。

探査機からは、今後のピンポイント着陸技術に必要な着陸に至る航法誘導に関する技術データ、降下中及び月面での航法カメラ画像データを全て取得できました。また、接地直前には小型プローブ(LEV-1・LEV-2)の放出を成功裏に実施しました。加えて、SLIMに搭載されたマルチバンド分光カメラ(MBC)についても、電源オフまでの間に試験的に動作し、撮像画像を取得できました。

他方、太陽電池が電力を発生しない姿勢で月面上に静定した経緯について、取得した技術データを分析したところ、高度50m時点で障害物回避マヌーバを開始する直前、2基搭載されているメインエンジンの1基の推力が失われた可能性が高いことが判明しました。

その状況下でSLIM搭載ソフトウェアは自律的に異常を判断し、徐々に東側に移動するSLIMの水平位置がなるべくずれないように制御しながら、もう1基のエンジンでの降下を継続しました。接地時の降下速度は1.4m/s程度と仕様範囲内より低速でありましたが、横方向の速度や姿勢などの接地条件が仕様範囲を超えていたため、結果として計画と異なる姿勢に落ち着くことになったと考えております。

メインエンジンの機能喪失原因については、メインエンジン自体ではない何らかの外的要因がメインエンジンに波及した可能性が高いと考えています。本事象の原因については現在も調査中であり、詳細判明した時点で、改めてご報告いたします。

今後については、取得できた技術・科学的データの更なる分析や、異常が発生した原因の調査を進めます。

同時に、現在SLIMの太陽電池は西を向いていると分析されることから、今後月面で太陽光が西から当たるようになれば、発電の可能性があると考えています。SLIMの月面上での活動はもともと数日程度以上と想定していましたが、更なる技術・科学データの取得を目指し、引き続き復旧へ向けて必要な準備を行ってまいります。

着陸後SLIM搭載航法カメラによる月面画像(クレジット:JAXA)

【注】 重力方向を加味して画像を回転させている


SLIMの着陸目標地点と、現状の位置の推定(クレジット:Chandrayaan-2:ISRO/SLIM:JAXA)

【注】 インド探査機Chandrayaan-2が撮影した月面地形に高度50m地点付近でのHV2(ホバリング2回目)でのSLIM航法カメラによる取得画像などを重ねたもの。2つの青枠がHV2中の障害物検知の際に取得された画像であり、その後は障害物回避動作に入る設計であることから、ピンポイント着陸性能はこの時点での位置精度で評価される。1回目・2回目の障害物検知時点の位置精度はそれぞれ3~4m程度、10m程度であった。なお、2回目の障害物検知時には既にメインエンジン機能喪失の影響を受けていた可能性が高い。赤枠のSLIMフットプリントはHV2の障害物検知機能に基づきSLIMが自律的に設定した着陸安全域。

■SLIM

宇宙航空研究開発機構 (JAXA)が開発中の日本の月着陸機

小型月着陸実証機、SLIMとは、JAXAによる日本の無人月面探査機・着陸機である。月面へのピンポイント着陸を目指すことから複数のメディアで「ムーンスナイパー」とも紹介される。高さ約2.4 m、重さは燃料を除き約200 kg。H-IIAロケット47号機で2023年9月7日午前8時42分11秒に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、2024年1月20日に日本初となる月面着陸を達成し、かつ史上初。

宇宙の過酷な環境で使うコンピュータは地上用に比べて約100分の1の低い処理能力しかない。 そこでSLIMでは専用の計算効率の高い画像処理アルゴリズムを開発。 「長年にわたり宇宙科学研究所で研究、大学にも協力してもらい実現した」(坂井プロマネ)。 こうして自分の位置を自分で知ることができる、賢い探査機ができあがった。
2024.01.31 21:52 | 固定リンク | 宇宙
中国本当の経済どうなってるの?
2024.01.30
中国の経済は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも、2023年には5.2%の成長率を達成したと政府が発表しました。しかし、この数字には疑問が残ります。なぜなら、中国の統計は政治的な圧力やデータの改ざんによって誇張されている可能性が高いからです。

中国の経済には深刻な構造問題があります。失業問題、不動産バブルの崩壊、過剰な債務、国有企業の非効率、民間企業の弾圧などが挙げられます345。これらの問題を解決するためには、政府の景気刺激策や金融緩和策ではなく、市場の自由化や制度改革が必要です。

しかし、中国の政治体制は、経済の質や効率よりも、成長率の高さや安定性を重視しています。そのため、中国の経済は、本当の回復や持続可能な成長を達成できるのか、不透明な状況が続いています。

■中国本当のGDP

中国の本当のGDPについては、さまざまな見方や推計があります。政府発表の統計には疑問が持たれており、人工衛星で光の量を測定したり、非公式のデータに基づいたりする方法もあります。

しかし、これらの方法も完全に正確とは言えません。中国経済はサービス業や新技術などによって多様化しており、一つの指標で測るのは難しいのです。

中国のGDPが米国を超える日は来るのでしょうか。それは今後の政策や環境にもよりますが、現在のところ、中国の経済規模は米国の約7割に留まっています。

中国本土と香港の株式市場は2021年2月のピークから計6兆3000億ドル(約930兆円)相当の時価総額を失った。

株安中国株6兆ドル損失

中国当局によるテクノロジー、教育産業に対する締め付け強化や、不動産危機、人口減少、輸出の低迷など、中国経済が抱える構造的な問題がある。

中国当局は市場安定化策や預金準備率の引き下げなどを発表したが、海外の投資家や個人投資家はこれらの措置が持続的な株価回復を促すのに十分なのか懐疑的だ。

中国経済の先行きに対する見方は極めて厳しく、中国経済が米国を追い抜けるのか、それとも日本のような停滞に陥るのか、議論が激しくなっている。

時価総額885兆円失った中国株、習指導部にとって問題の深刻さ露呈

中国株の売り加速、当局措置でも下げ止まらず

中国株の時価総額、米国を38兆ドル下回る-構造的な問題

米中経済戦争は、2018年から続く両国間の貿易摩擦で、関税や輸入制限などの措置が相次いで発動されました。これにより、世界の貿易や投資、生産、消費などに大きな悪影響が及びました。国際通貨基金(IMF)は、2019年の世界経済成長率を0.8ポイント低下させたと推計しています。

また、ブルームバーグ通信は、2019年の米国の名目GDP増加率が6.3%で、中国(4.6%)を大きく引き離したと報じました。しかし、米国の企業と消費者には、関税や輸入税が1カ月あたり30億ドル(約3290億円)の負担をかけたことが算出されています。中国もまた、経済成長率の低下や物価の下落、不動産市場の不況などに直面しています。

コロナの影響は、2020年に世界経済に深刻な打撃を与えました。IMFは、2020年の世界経済成長率をマイナス4.9%と予測し、経済損失は2年間で12.5兆ドル(約1300兆円)に達すると試算しました。中国は世界の主要経済国で唯一、2020年に経済がプラス成長となりました。しかし、コロナの感染拡大を防ぐための厳格な封鎖政策は、経済の活力を落としました。

米国はコロナの感染者数や死者数が世界最悪で、経済も大きく縮小しました。ただし、金融政策や財政刺激策によって、経済の回復傾向が強まっています。

今後の見通しとしては、米中経済戦争は収束に向かう可能性があります。

両国は2020年1月に第一段階の貿易協定に署名し、関税の一部撤廃や貿易の拡大などを合意しました。また、バイデン政権は、トランプ前政権よりも対中関係の修復に積極的であると見られています。しかし、米中の対立は経済分野にとどまらず、安全保障や人権、技術などの分野でも続いています。そのため、両国の経済関係が完全に正常化するのは困難であると考えられます。

両国の経済規模の格差も、今後さらに拡大する可能性があります。米国はコロナのワクチン接種や財政支出によって、経済のソフトランディングを目指しています。中国は人口減少やデフレーションなどの構造的な問題に直面し、経済の成長力が低下しています。

■習近平の政権延命の施策とは

党内の反対派や政敵を粛清する反腐敗運動や綱紀粛正を続けることで、自らの権力基盤を強化した。

共産党の指導性を強調し、国家機関や民間企業、社会団体などに党の統制を浸透させることで、政治的な忠誠を要求する。

国内の経済や社会の不平等や不公正を是正する「共同富裕」の理念を掲げ、不動産税や相続税の導入、プラットフォーム企業の規制、学習塾の禁止などの施策を実施することで、庶民の支持を得る。

国際社会での発言力や影響力を高めるために、一帯一路やデジタルシルクロードなどの対外経済戦略を推進し、台湾や南シナ海などでの領有権主張や軍事的な示威行動を行うことで、国威を発揚する。

習近平政権の3期目は、中国の政治経済にとって多くの課題とリスクを抱えています。 経済政策では、新型コロナウイルスの影響で成長が鈍化し、少子高齢化や債務問題が深刻化しています。 また、米中対立やデジタル化の進展に対応するため、安全保障やセキュリティに重点を置いていますが、これは外資や民間企業の活動を制限し、経済の高度化や生産性の向上を阻害する可能性があります。

習近平政権は、経済回復と発展のために、外商投資の誘致や民営経済の保護などの対外開放の加速を打ち出しましたが、これが実効性を持つかどうかは不透明です。

政治面では、習近平政権は反腐敗運動や綱紀粛正と称して、党内の敵対派閥や政敵を粛清してきました。 これにより、習近平政権は権力を固めましたが、同時に潜在的な敵も増やしました。

また、習近平政権の周囲にはイエスマンばかりが集まり、集団思考や判断力の欠如が問題になっています。

習近平政権は、自らの権威を誇示するために、台湾や南シナ海などで強硬な姿勢をとっていますが、これは国際社会との対立や事故のリスクを高めています。

習近平政権は、3期目に入っても政治経済の崩壊を回避するために、以下のような対策をとる必要があると考えられます。

経済政策では、ゼロコロナ政策の見直しやワクチン接種の促進、国内消費の拡大、産業の高度化やイノベーションの推進、不動産市場の安定化、債務問題の解決などを行う。

政治政策では、反腐敗運動や粛清を抑制し、党内の民主化や法治化を進める。 また、外交政策では、米国や日本などとの対話や協調を強化し、台湾や南シナ海などの紛争の平和的解決を目指す。

■今後の政治経済対策は

中国経済は、新型コロナウイルスの影響や不動産市場の低迷、電力不足などにより、2023年は5.4%程度の成長にとどまると予測されています。しかし、政府は景気対策として、中小企業の支援やインフラ投資の拡大などを行っており、2024年は5.0%程度の回復が見込まれています。

中国経済の回復の鍵は、民間企業の活力を取り戻すことだと言えます。民間企業は、中国の経済成長や雇用創出に大きく貢献していますが、近年は国有企業に比べて政策の恩恵を受けにくく、資金調達や規制などの面で不利な状況にあります。このため、民間企業の信頼感や投資意欲が低下し、不動産市場や消費市場にも悪影響を及ぼしています。

政府は、民間企業への支援を強化するために、以下のような対策を施行する必要があります。

金融政策の緩和や税制の優遇などにより、民間企業の資金繰りやコスト負担を軽減する。

中国政府は、民間企業の経済活動を促進するために、金融政策の緩和や税制の優遇などを行っています。例えば、2023年12月には、中央銀行は利下げを実施し、民間企業の借入金利を引き下げました。また、2024年1月には、政府は減税や減免などの措置を発表し、民間企業の税負担を約2.6兆元(約43兆円)軽減しました。これらの政策は、民間企業の資金繰りやコスト負担を軽減するとともに、市場の信頼感や投資意欲を高める効果が期待されています。

不動産市場の安定化や住宅需要の喚起により、民間デベロッパーの業績や信用を回復する。

不動産市場の調整局面から脱するために、工事中断により物件引渡しが困難化した建設プロジェクトを対象とした特別融資枠を設定し、デベロッパーの資金繰りを支援する。

住宅価格の下落が3か月連続する都市では、住宅ローン金利の新たな調整メカニズムを導入し、所定のレンジを下回る金利設定が認められるようにする。

住宅購入者の権利保護を強化し、デベロッパーの債務問題による被害を防止するために、銀行に対し、住宅ローンの返済期限の延長や繰り上げ返済の免除などの措置を講じるよう要請する。

これらの対策は、民間デベロッパーの業績や信用を回復するとともに、住宅市場の安定化や住宅需要の喚起にも寄与する効果が期待されています。

規制や監督の緩和や透明化により、民間企業のイノベーションや競争力を高める。

会社法の改正により、民間企業の設立や持分譲渡の手続きを簡素化し、財産権の保護を強化する1。
独占禁止法の適用により、国有企業やプラットフォーム企業の市場支配力を抑制し、公平な競争環境を整備する。

データセキュリティ法や個人情報保護法の制定により、データの収集や利用に関する規範を明確にし、データの安全性や個人のプライバシーを保障する。

科学技術の発展に対応した法制度の改善や補完により、新興産業や新技術の発展を促進し、知的財産権の保護を強化する。

以上のような対策を実施することで、中国経済は緩やかながらも持続的な回復が可能だと考えられます。

しかし以上の対策は忌憚なく施行できるのか、習政権の実力が計られる。

■「共同富裕」とは

国民全体を豊かにすることを目指す習近平政権のスローガンです。 共同富裕は、所得格差や社会保障の不足など、急速な経済発展のもとで後回しにされてきた公平性の問題に対する取り組みを通して、共産党への信認を高める試みと解釈できます。

共同富裕を実現するための具体的な政策としては、以下のようなものがあります。

高額所得者や富裕層に対する課税や寄付の強化

低所得者や農村部の住民に対する所得補償や社会保障の拡充

不動産税の導入や住宅価格の抑制

教育や医療などの公共サービスの均等化や質の向上

ITや不動産開発、学習支援などの成長産業に対する規制や監督の強化

これらの政策は、中間層を厚くし、消費主導経済への移行や経済発展の質の向上に寄与すると期待されています。 また、社会の調和や安定にも貢献すると考えられています。

しかし、共同富裕には、経済の下押し圧力や「国進民退」のリスクも伴います。 一部の産業や企業が規制や寄付によって成長を阻害されることで、イノベーションや競争力が低下する可能性があります。 また、国有企業や政府の役割が強まることで、市場経済の原理や民間の自主性が損なわれる恐れがあります。

習近平政権が共同富裕を急ぐ背景には、SNSの普及によって格差を測る比較対象が広がり、格差に対する国民の許容度が低下したことがあるとみられます。 これは、「内巻」や「横たわり」といった厭世的な心情が若者の間に浸透していることからもうかがえます。

これらは、共産党が目指す社会から逸脱、あるいは、党の指導を拒絶する人が増えていることを意味し、経済成長とそれに伴う所得の上昇によって共産党への信認を高める、という従来の統治メカニズムが機能しにくくなったことを示しています。

共同富裕は、従来の統治メカニズムが機能しなくなったことを察知した習近平政権による新たな統治メカニズムの模索と解釈することもできます。 しかし、共同富裕を可能にするのはあくまで所得の再分配や公共サービスの充実などの2次分配であり、寄付や慈善などの3次分配ではありません。 中国が共同富裕に向けて前進できるか否かは、住宅価格がどのような軌道を描くかによって左右されると言えるでしょう。

「共同富裕」の寄付とは?

寄付というのは、習近平政権が富裕層や大企業に求めている社会還元の一つです。 共同富裕は、所得格差や社会保障の不足など、急速な経済発展のもとで後回しにされてきた公平性の問題に対する取り組みを通して、共産党への信認を高める手段と解釈できます。

具体的な寄付の内容としては、以下のようなものがあります。

テンセント(騰訊控股)は、教育、農村振興、医療、環境保護、災害救助などに計1000億元(約1兆7000億円)を強制されました。

バイトダンス(北京字節跳動科技)創業者の張一鳴は、教育基金として個人で5億元(約85億円)を強制されました。

アリババグループは、ギグワーカーや中小企業の支援、雇用促進のために5年間で計1000億元(約1兆7000億円)強制的に寄付しました。

その他にも、著名な俳優や歌手、起業家などが、教育や医療、貧困対策などとの名目で寄付させられました。

共産主義の土地革命と「共同富裕」の寄付との違い

共産党の目的と手段が異なります。

共産党の土地革命は、暴力や強制によって富を奪い、農民に分配することで、社会の階級を一掃することを目指していました。

「共同富裕」寄付は、富裕層や大企業に対して、道徳や法律に基づいて寄付や慈善事業を行うことを奨励し、低所得者や農村部の住民に対して所得補償や社会保障を拡充することで、社会の公平性を高めることを目指す。

しかし、習近平政権の「共同富裕」は、方法が異なるだけで、資本家の富を没収し貧富の格差を解消、真の共産主義社会「社会の階級を一掃する」その目的に変わりはありません。
2024.01.30 22:01 | 固定リンク | 経済
宇宙論原理に反する超巨大構造物
2024.01.28
ロペス氏によれば、現在の宇宙論では、ジャイアントアークやビッグリングほど大きな構造は説明されていないという。 彼女は、観測可能な宇宙全体で 1 つの大きな構造物が予想されるかもしれないが、2 つあることは「非常に魅力的」であると述べています。

ジャイアント・アークとは、2021年6月に発見された宇宙の超大規模構造の一つです。この構造は、銀河や銀河団、ガスや塵などからなり、直径は約33億光年にも及びます1。この大きさは、宇宙がどこでも同じように見えるという宇宙論原理に反すると考えられています。ジャイアント・アークは、観測可能な宇宙の半径の15分の1に相当する範囲に広がっており、もし夜空に見えたら、満月の20倍の大きさになると言われています3。

ジャイアント・アークは、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)のデータを用いて、イギリスの中央ランカシャー大学の博士課程の学生であるアレクシア・M・ロペス氏らのチームによって発見されました。ロペス氏は、ジャイアント・アークと同じ距離にある別の超大規模構造であるビッグリングとの関係性についても研究しています。ジャイアント・アークの存在は、宇宙の起源や進化に関する理論に新たな挑戦をもたらすと考えられています。


直径13億光年の巨大なリング構造を発見…現行モデルが予測する限界を超えた大きさ

天文学者たちは宇宙空間に巨大なリング状の構造を発見し、「ビッグリング」と名付けた。

この発見は、宇宙に対する我々の理解を覆すものだ。

発見したアレクシア・ ロペスは、この大発見をした後、「現実離れした出来事」のように感じたと話している。

博士課程学生アレクシア・ロペス

宇宙について我々の理解を揺るがすような巨大なリング状の構造を、天文学者たちが発見した。

「ビッグリング(Big Ring)」と名付けられたこの宇宙の巨大構造は、直径が約13億光年で、これまでに観測された中で最大級の構造物だ。地球から見ると、夜空に浮かぶ満月15個分の大きさに見える。

ビッグリングは、「宇宙原理」に挑戦するほど大きなものだ。この宇宙論の基本的な仮定は、宇宙は大きなスケールで見れば均質であり、どの方向から見ても同じように見えるというものだ。

地球から90億光年以上離れた場所で観測されたビッグリングは、この宇宙原理に反する最新の巨大構造物だ。

「現在の宇宙理論では、このようなスケールの構造はあり得ないと考えていた」と、ビッグリングを特定したセントラル・ランカシャー大学(University of Central Lancashire)の博士課程の学生、アレクシア・ロペス(Alexia Lopez)は、イギリスの新聞ガーディアン(The Guardian)に語っている。

「観測可能なすべての宇宙の中で、おそらくひとつだけ、非常に大きな構造が存在していると考えられる」

ロペスは2021年にも、33億光年の宇宙にまたがる構造物である「ジャイアント・アーク(Giant Arc)」を発見している。ジャイアント・アークはビッグリングの近くに見える「うしかい座」の近くに位置している。

「これらの奇妙なことは、これまで隠蔽され続けているが、発見が増えれば増えるほど、我々の標準モデルを再考しなければならないという事実に直面することになるだろう」と彼女は話す。

「少なくとも不完全であり、ともすれば、まったく新しい宇宙の定理が必要だ」

BBCによると、ロペスは知らず知らずのうちにビッグリングを発見しており、それは「本当に現実離れした」出来事だったと語っている。

遠い宇宙で宇宙を覆す第二の巨大構造物が発見されたことにより、天文学者たちは宇宙論に関する基本的な仮定のいくつかを再考させられている。 ビッグ リングは、博士課程の学生アレクシア ロペスによって発見されたこれらの超大型構造物の 2 番目です。

ビッグリングは地球から92億光年離れたところにあり、周囲は約40億光年です。 地球上にいて夜空を眺めると、約 15 個の満月が含まれることになります。 ロペスはまた、2年前にジャイアントアークと呼ばれる最初の超大型構造を発見した。この構造は直径33億光年で、ビッグリングと同じ距離、同じ宇宙時間に見られ、その差はわずか12度である。空の上で。

セントラル・ランカシャー大学の博士課程学生であるロペス氏は、「これら 2 つの超巨大構造はどちらも、現在の宇宙の理解では説明するのが簡単ではありません。」と説明しました。 さらに彼女は、「そして、その超巨大なサイズ、特徴的な形状、そして宇宙論的な近さは、確かに何か重要なことを私たちに伝えているに違いありません。しかし、正確には何を教えてくれるでしょうか?」と付け加えた。

ロペス氏が示唆する可能性の 1 つは、ビッグ リングがバリオン音響振動 (BAO) に関連している可能性があるということです。 ロペス氏は、これらは初期宇宙の振動から生じ、今日では銀河の配置の中で球殻として現れるはずだと説明する。 しかし、問題は、ビッグリングの詳細な分析により、それがBAOの提案と互換性がないことが示されていることです。 ロペス氏によると、それは単純に大きすぎて球形ではないという。

ロペスが提示した他の可能性の 1 つは、通過する宇宙ひもの影響によって引き起こされる可能性があるということです。 ノーベル賞受賞者のジム・ピーブルズは最近、これらの宇宙ひもが他の「銀河の大規模分布における特異性」の起源に役割を果たしている可能性があると仮説を立てた。 もう一つの可能​​性は、同じくノーベル賞受賞者であるロジャー・ペンローズ卿によるもので、宇宙のリングが CCC の信号である可能性があるため、共形周期宇宙論 (CCC) として知られています。

「宇宙原理では、私たちが見ることのできる宇宙の一部は、宇宙の残りの部分がどのようなものであると私たちが期待しているかの『公正なサンプル』として見なされると仮定しています」とロペス氏は説明します。 「宇宙を大きなスケールで見ると、物質は宇宙のどこにでも均等に分布していると予想されるため、一定のサイズを超えると目立った不規則性は存在しないはずです。」

ロペス氏によれば、現在の宇宙論では、ジャイアントアークやビッグリングほど大きな構造は説明されていないという。 彼女は、観測可能な宇宙全体で 1 つの大きな構造物が予想されるかもしれないが、2 つあることは「非常に魅力的」であると述べています。

※現在の宇宙論とは

現在の宇宙論は、宇宙の起源、構造、進化、運命などに関する科学的な理論です。現在の宇宙論の基礎は、ビッグバン理論と呼ばれる宇宙が約138億年前に高温高圧の状態から始まり、その後急激に膨張したという考え方です1。

ビッグバン理論は、宇宙マイクロ波背景放射やビッグバン元素合成などの観測的な証拠によって支持されています。しかし、ビッグバン理論だけでは、宇宙の初期の非一様性や物質と反物質の非対称性などの問題を説明できません。そこで、宇宙初期に指数関数的な膨張が起こったとするインフレーション理論や、宇宙に存在する正体不明のダークマターやダークエナジーという概念が導入されています2。

また、現在の宇宙論は、宇宙に存在する最も大きな天体(銀河、銀河団、超銀河団)や最も初期に形成された独特の天体(クエーサー)の形成と進化についても研究しています。宇宙の大規模構造は、階層的構造形成モデルと呼ばれる、より小さな天体が衝突・合体を繰り返すことで大質量の構造が形成されたとするモデルによって説明されています3。

現在の宇宙論は、物理学や天文学のさまざまな分野と関連しており、高エネルギー物理学の理論や実験、宇宙の観測やシミュレーションなどの手法を用いて、宇宙の謎に挑んでいます。現在の宇宙論の最前線には、超弦理論やブレイン宇宙論などの新しい物理学の理論や、我々の宇宙以外に無数の宇宙が存在するとするマルチバース理論などの斬新なアイデアがあります。

■現在の理論では説明できない「何か」が宇宙の成長を抑制している

何かが間違っているようです。

米国のミシガン大学(UM)で行われた研究によって、既存の宇宙論やアインシュタインの一般相対性理論が扱う重力の理解では宇宙の大規模構造の変化を説明できないことが示されました。

現在の宇宙論では、宇宙を膨張させる暗黒エネルギーと宇宙を収縮させる重力の作用が働いており、暗黒エネルギーの方が勝っているため、宇宙は成長(加速膨張)を続けているとされています。

そして銀河が連なる宇宙の網「大規模構造」の形状もこの理論に従って形を変化させていると考えられています。

しかし研究者たちが観測結果を分析したところ、大規模構造の変化速度は時間経過とともに減速しており、誤差では説明できないレベルに達していることが示されました。

物理学の歴史では、理論と観測結果が大きく乖離する場合、しばしば理論のほうが間違っており、観測結果を説明できる新理論誕生のきっかけになります。

では現行の宇宙論とその根拠となっているアインシュタインの一般相対性理論(重力理論)は、修正されることになってしまうのでしょうか?

■宇宙の大規模構造の変化は既存の理論では理解できない

全てがビッグバンによって誕生してから137億8700万年。

宇宙は光の速度を超える速さで膨張を続け、その直径とも言える「観測可能」な宇宙の広さは137億年よりも遥かに大きい、930億光年(28ギガパーセク)に及ぶと考えられています。

そしてこの広大な宇宙には、無数の銀河が網状に分布する「大規模構造」が構成されています。

ただこの大規模構造も不変の存在ではなく、時間が経過するにつれて銀河たちはお互いの重力で接近し合い、網の太さが圧縮され高密度化する一方で、網の目の部分からはますます物質が少なくなっていくと考えられています。

私たちの天の川銀河も隣にあるアンドロメダ銀河と重力で互いに引き合っており、40億年後には大規模な衝突を起こすとされています。

しかし引き付け合う重力がある一方で、宇宙全体の膨張速度は暗黒エネルギーによって加速し続けてていることが知られています。

そのため大規模構造の形状変化を予測するときは、重力による高密度化と暗黒エネルギーによる宇宙膨張の2つを考慮し計算を行うことになっていました。

大規模構造の時系列的な変化は既存の宇宙論を使って予測できないようです。

ただ近年になり、暗黒エネルギーと関連した、宇宙の膨張率を示すハップル定数が、観測ごとに大きく異なる値を記録することが明らかになってきました。

たとえば定期的に増光する星を基準に測定した場合と、宇宙マイクロ背景放射を基準に測定した場合には、10%ほども値に差が出てしまっていたのです。

日常世界では10%というと誤差のように思えます。

しかし測定が行われるたびに不一致が発生しており、もはやささいなエラーとして無視することはできません。

このような不一致は、宇宙論そのもの、特に暗黒エネルギーの理解について致命的な間違いが潜んでいると考えられています。

そこで今回、ミシガン大学の研究者たちは、マイクロ波背景放射や重力レンズ効果など異なる時期に異なる対称を観測した複数の探査機のデータを分析し、過去から現在にかけて宇宙の大規模構造がどのように変化してきたかを調べることにしました。

既存の宇宙論に問題があるならば、宇宙論をもとに予測される大規模構造の変化についても、理論値と観測結果の間に大きなズレが生じる可能性があったからです。

すると予想通り、宇宙の大規模構造の形状変化が、理論で予測されているよりもかなり遅いことが示されました。

そして変化の遅延は過去から現在に近づくほど大きくなっていることも判明。

また研究者たちは自らの測定値の確かさを評価したところ、標準的な宇宙理論が正しい場合に、今回のようなデータパターンが現れるのは4600分の1(3.7σ)であることがわかりました。

つまり観測結果が正しい場合、既存の宇宙論が正しい確率は4600分の1でしかないのです。

この結果は、現在の重力と暗黒エネルギーをもとにした既存の宇宙論では、実際に宇宙に起きている変化を説明できない可能性を示しています。

アインシュタインの相対性理論も間違っている可能性がある?

アインシュタインの一般相対性理論は大規模構造の変化を説明できません。

しかし研究者たちはデータの分析を続ける中で、より衝撃的な発見をしました。

分析結果は、このズレを引き起こしている原因が、大規模構造の変化において重力の果たす役割が思っていたほど強くなく、暗黒エネルギーの影響のほうが高いためであることを示していたからです。

また暗黒エネルギーそのものに、大規模構造の変化を抑制する効果がある可能性がみつかりました。

宇宙空間にある物体は全て重力の影響を受けており、惑星や銀河が回転する仕組みはアインシュタインの一般相対性理論に従って重力で説明することが可能だと考えられています。

そのため宇宙論ではアインシュタインの一般相対性理論(重力理論)をベースに、暗黒エネルギーによる宇宙膨張の影響を加味するという方法がとられています。

(※暗黒エネルギー自体がアインシュタインの理論の副産物とも言えます)

しかし大規模構造の変化においては重力の影響は限定的であり、暗黒エネルギーによる膨張と、暗黒エネルギーによる構造変化抑制が主な役割を担っていたのです。

そうなると問題はより深刻になります。

研究結果が正しいならば、この結果は、大規模構造レベルになると宇宙論だけでなく、その基礎となるアインシュタインの一般相対性理論(重力理論)も上手く機能しなくなっていることを示しています。

アインシュタインの一般相対性理論はニュートン物理学の上位互換であり、物理学の基礎として、私たちが世界を認識するための基本的な手段となっています。

もしこの理論が通用しない場面が存在するとしたら、私たちは現実の構造を理解するために、代わりの物理法則を1から設計しなおさなければならないでしょう。

研究者たちは宇宙の大規模構造がどのように変化してきたかを正確に説明する理論ができれば、重力と暗黒エネルギーの知られていない性質を解き明かすヒントになると述べています。

■ニュートンとアインシュタインの重力理論が崩壊している連星を発見! / Credit:NASA

どんなに優れた理論も限界があるようです。

韓国の世宗大学(SJU)で行われた研究によって、遠距離で回転している連星のように重力が弱い領域では、標準的な重力理論が崩壊していることが実証されました。

ニュートンの運動法則やアインシュタインの一般相対性理論によれば、重力の影響が弱い世界でも強い世界でも同じ方程式に従うとされています。

しかし新たな観測では、2000au(天文単位)以上離れている連星など、互いに与える重力が極めて弱い場合には、標準的な重力理論で予想されるよりも重力加速度が強くなっていることが示されました。

量子の世界では日常的な世界の物理法則が通じなくなることが知られていますが、重力でも同じように小さな数値では法則が異なってくるのでしょうか?

既存の重力理論は暗黒物質に頼っている

これまでニュートンの運動法則とアインシュタインの一般相対性理論は、私たちが宇宙を理解するにあたり、大きな役割を果たしてきました。

特に「重力の強い場所では時間がゆっくり進む」ことや「光も重力によって曲げられる(時空が歪む)」ことを示した一般相対性理論は非常に強固であり、GPSや重力レンズなど多くの応用技術の根底となっています。

しかし他の多くの法則と同じように、ニュートンやアインシュタインの法則も万能ではありませんでした。

ニュートンとアインシュタインの重力理論が崩壊している連星を発見!

たとえば銀河を回る星々の動きの場合、ニュートンやアインシュタインの法則に従えば上の図の点線ように、中心から距離が離れるにつれて回転速度はゆっくりになるはずです。

しかし実際の観測結果は赤い線が示すように、外縁部であっても内縁部と同じような回転速度をしていることが示されました。

よく言われる暗黒物質は、このような予測値と実測値の違いを説明するための存在として認識されています。

暗黒物質が存在すると仮定すると、このような値のズレも説明でき、ニュートンとアインシュタインの重力理論は守られ、一安心というわけです。

ニュートンとアインシュタインの重力理論が崩壊している連星を発見!

ただ値のズレを説明するには、通常の物質の6倍近くの暗黒物質が存在する必要があり、宇宙のほとんどは暗黒物質と暗黒エネルギーに満たされていることになってしまいます。

暗黒物質は通常の物質とは異なり、光と相互作用せずに重力の影響のみを受けるとする極端な性質を持つとされます。

ただ先に述べたように、暗黒物質の性質は測定によって確かめられたものではなく、ニュートンとアインシュタインの法則を守るという目的のもとに、想定されているに過ぎません。

またこれまで暗黒物質を検出しようとするあらゆる試みがなされてきましたが、全て失敗に終わっています。

そのため近年では、暗黒物質に頼らず、物理法則を観測結果に合わせて微調整しようとする「修正ニュートン力学(MOND)」などが盛んに研究されるようになってきました。

(※修正ニュートン力学でも観測できない物質による影響があるとされていますが、その量は2倍ほどと少なくなっています。またその物質もいわゆる暗黒物質ではなく、あくまで未発見の通常物質であると考えられています)

しかしどちらの理論が正しいかを判別するには、暗黒物質の影響が少ない天体などの運行パターンを調べなければなりません。

ニュートンとアインシュタインの重力理論が崩壊している連星を発見!

そこで今回研究者たちは「対決の舞台」として連星系を選びました。

これまでの研究では太陽のように恒星が1つだけの星系は少数派であり、多くの星系は複数の恒星が互いの周りを回っている連星であることが示されています。

実際、太陽から最も近いプロキシマ・ケンタウリは3重連星を構成していることが知られています。

ですが連星が選ばれたのは沢山あるからではありません。

銀河規模では考慮すべき暗黒物質が膨大な量となるため、星々の動きに大きな影響を与えていると考えられています。

しかし連星レベルでは密度の問題から、暗黒物質の影響をほとんど考慮する必要がありません。

(※実際、地球と太陽、あるいはプロキシマ・ケンタウリが含まれる3重連星などでは暗黒物質を考慮せずに運航を予測できます)

そしてニュートンの運動法則やアインシュタインの一般相対性理論によれば、重力の影響が弱い連星でも強い連星でも同じ方程式に従うとされています。

一方で修正ニュートン力学では、離れた連星のように重力が非常に弱い場合には、既存の重力理論の予測より重力加速度が大きくなると予想されていました。

つまり離れた連星の重力加速度を測定できれば、修正ニュートン力学と既存の重力理論(暗黒物質の助けなし)のどちらが正しいかを、文字通り、白黒つけられるわけです。

低い重力加速度では既存の重力理論が成り立たない

離れた連星のように重力が弱いときでも既存の重力理論が当てはまるのか、それとも修正ニュートン力学(MOND)のほうが正しいのか?

答えを得るため、研究者は欧州宇宙機関の Gaia 宇宙天文台から採取された2万6500ペアの連星の挙動を調査し、互いに及ぼしている重力加速度を算出しました。

2000auから5000auを境に標準的な重力理論は成り立たなくなっていきます / Credit:Kyu-Hyun Chae . Robust Evidence for the Breakdown of Standard Gravity at Low Acceleration from Statistically Pure Binaries Free of Hidden Companions . The Astrophysical Journal
2024.01.28 18:43 | 固定リンク | 化学
ウクライナ戦争長期化
2024.01.28
ウクライナ戦争は2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで勃発し、現在も続いています。2023年にはウクライナが反転攻勢をかけましたが、ロシアの抵抗に遭い、大きな成果は得られませんでした。2024年に入ってからは、両国ともに戦略的な攻勢を仕掛けることができず、前線はほとんど動いていません。しかし、両国の間には和平交渉の見通しも立っておらず、戦争は長期化の様相を呈しています。

ウクライナ戦争は、西側諸国とロシアの対立を深めるとともに、地域や国際社会にも多大な影響を及ぼしています。西側諸国はウクライナに経済的・軍事的な支援を行っていますが、ロシアの圧力により一部の国はその姿勢を変えています。また、ウクライナ戦争は北朝鮮やイランなどのロシアの支援国との関係にも影響を与えています。さらに、ウクライナ戦争は人道的な危機も引き起こしており、多数の死傷者や難民が発生しています。

ウクライナ戦争の今後の展開は、ロシアとウクライナの両政府の意思や、西側諸国の支援の継続性、そしてロシアの支援国の動向に左右されると考えられます。しかし、現時点では、戦争の終結に向けた決定的な動きは見られません。ウクライナ戦争は、今後も欧州大陸の安全保障にとって重大な課題となるでしょう。

ウクライナ戦争の今後の展開と西側諸国の支援
要約
ウクライナ戦争は2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで勃発し、現在も続いている。
2023年にはウクライナが反転攻勢をかけたが、ロシアの抵抗に遭い、大きな成果は得られなかった。
2024年に入ってからは、両国ともに戦略的な攻勢を仕掛けることができず、前線はほとんど動いていない。
しかし、両国の間には和平交渉の見通しも立っておらず、戦争は長期化の様相を呈している。
ウクライナ戦争は、西側諸国とロシアの対立を深めるとともに、地域や国際社会にも多大な影響を及ぼしている。
西側諸国はウクライナに経済的・軍事的な支援を行っているが、ロシアの圧力により一部の国はその姿勢を変えている。
ウクライナ戦争の今後の展開は、ロシアとウクライナの両政府の意思や、西側諸国の支援の継続性、そしてロシアの支援国の動向に左右されると考えられる。
しかし、現時点では、戦争の終結に向けた決定的な動きは見られない。
ウクライナ戦争は、今後も欧州大陸の安全保障にとって重大な課題となるでしょう。

背景
ウクライナは2014年に親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領が失脚した後、欧州連合(EU)との関係を強化しようとした。
しかし、ロシアはこれに反発し、同年にウクライナ南部のクリミア半島を不法に併合した。
また、ロシアはウクライナ東部のドンバス地方で親ロシア派の分離主義者を支援し、武装紛争を引き起こした。
2015年には、フランスとドイツの仲介で、ウクライナとロシアの間にミンスク協定が結ばれた。
この協定は、停戦や重火器の撤退、分離主義地域の特別な地位の承認などを定めたが、実施は遅々として進まなかった。
2022年2月には、ロシアがウクライナに大規模な侵攻を開始し、ウクライナ戦争が勃発した。
ロシアは、ドンバス地方のほかに、ウクライナ南部のヘルソン州やザポリージャ州、東部のハルキウ州やルハンスク州などを占領した。
ウクライナは、国際社会の支援を受けて、ロシアの侵略に抵抗した。

現状
2023年には、ウクライナが反転攻勢をかけたが、ロシアの抵抗に遭い、大きな成果は得られなかった。
ウクライナは、ヘルソン州やザポリージャ州の一部を奪還し、ドンバス地方の前線を若干西に押し戻した。
しかし、ロシアは、クリミア半島からの増援や、北朝鮮やイランからの支援で、ウクライナの攻勢を阻止した。
2024年に入ってからは、両国ともに戦略的な攻勢を仕掛けることができず、前線はほとんど動いていない。
しかし、両国の間には和平交渉の見通しも立っておらず、戦争は長期化の様相を呈している。
ロシアは、ウクライナの領土の一部を自らのものとすることを主張し、ウクライナのEUやNATOへの加盟を阻止しようとしている。
ウクライナは、ロシアの侵略を受け入れることを拒否し、自らの主権と領土の回復を求めている。
両国の立場は相容れないものであり、妥協の余地はほとんどない。

影響
ウクライナ戦争は、西側諸国とロシアの対立を深めるとともに、地域や国際社会にも多大な影響を及ぼしている。
西側諸国はウクライナに経済的・軍事的な支援を行っているが、ロシアの圧力により一部の国はその姿勢を変えている。
アメリカは、ウクライナに対する包括的防衛支援パッケージを提案したが、共和党の反対で上院で否決された。
EUは、ウクライナに対する経済援助のパッケージを決定したが、ハンガリーが拒否権を発動し、実施が遅れている。
一方、日本やインド、フィリピン、韓国、台湾、オーストラリア、カナダなどの国々は、ウクライナに対する支援を継続している。
これらの国々は、ロシアの侵略的な行動に対抗するために、ウクライナとの連携を強化しようとしている。
ウクライナ戦争は、北朝鮮やイランなどのロシアの支援国との関係にも影響を与えている。
北朝鮮は、ロシアに対する国際的な制裁を無視して、ロシアに武器や燃料を提供している。
イランは、ロシアとの核協議を利用して、ウクライナに対する圧力をかけようとしている。

ウクライナが「すべて取り戻す」は難しい 停戦に向けたベターなシナリオすら困難な理由

2024.01.28 14:54 | 固定リンク | 戦争
政府は万博の説明責任を
2024.01.27
関西万博の開催延期の是非について議論が巻き起こってます。 政府の透明性や効率性が適切なのか 説明責任が不可欠

政府が万博の開催延期に動いている背景には、以下のような要因が考えられます。

万博の開催は、国際社会からの日本への信頼やイノベーションの発信に関わる重要な課題であり、政府の責任が重大である。

■政府は万博に関する説明責任を

はじめに

2025年に大阪・関西で開催される予定の国際博覧会(関西万博)は、日本の技術力や文化力を世界に発信する絶好の機会です。しかし、万博に関する政府の費用や対策について、透明性や効率性が十分に確保されているのか、疑問や不安が指摘されています。

政府の透明性

政府の透明性とは、政府が行う政策や事業に関する情報を、国民に対して公開し、説明責任を果たすことを意味します。政府の透明性が高いほど、国民は政府に対する信頼や理解を深めることができます。しかし、万博に関する政府の透明性には、以下のような問題が指摘されています。

万博に直接関係する国費の総額は、政府が2023年12月に公表した試算では約1647億円となっていますが、これは当初の予算から約1000億円も増加しており、その理由や根拠が十分に明らかにされていません。

万博に間接的に関係する国費として、政府はインフラ整備や各省庁の事業などに約13兆円を挙げていますが、これらの経費は「万博のための新規・追加的なものではない」と説明しており、万博との関連性や必要性が不明確です。

万博に関する政府の情報公開は、遅れや不十分さが指摘されており、国民の関心や理解を得るための努力が不足していると言えます。

政府の効率性

政府の効率性とは、政府が行う政策や事業に関する費用や成果を、最適化し、無駄や損失を最小化することを意味します。政府の効率性が高いほど、国民は政府に対する評価や支持を高めることができます。しかし、万博に関する政府の効率性には、以下のような問題が指摘されています。

万博の会場建設費は、国と大阪府・大阪市、経済界が3分の1ずつ負担することになっていますが、建設資材や労務費の高騰により、当初の予算の約1.9倍の2350億円に上昇しており、税金の無駄遣いになっていると言えます。

万博の運営費は、日本国際博覧会協会(万博協会)が入場券収入や施設使用料で賄うことになっていますが、新型コロナウイルスの感染状況やワクチン接種率によっては、来場者が減少する可能性があり、収支の赤字が懸念されています。

万博の準備や実施には、多くの省庁や組織が関与しており、その調整や連携には膨大な時間やコストがかかっており、効率的な運営ができているとは言い難いです。

政府の透明性や効率性に問題が

万博に関する政府の透明性や効率性については、様々な観点から問題や課題があることが分かりました。政府は、万博の成功に向けて、国民の信頼や支持を得るためには、透明性や効率性を高めるための改善や対策を行うべきでしょう。私は、政府が万博に関する情報を公開し、説明責任を果たすことを期待しています。

政府の介入が不可欠

万博の開催準備には、能登半島地震の影響や建設資材や人手の不足など、多くの困難が伴っており、政府の介入が必要である。

万博の開催費用には、国と地元自治体、経済界が3分の1ずつ負担しており、国民の理解や支持を得るためには、政府の透明性や効率性が求められる。

2025年に大阪・関西で開催される予定の国際博覧会(関西万博)は、世界各国が自らの文化や技術を紹介する場として、多くの人々の関心を集めています。しかし、2024年1月に発生した能登半島地震の影響や、建設資材や人手の不足などの課題により、開催準備が遅れているという報道があります。このような状況の中で、関西万博の開催延期についての議論が起こっています。

2025年に大阪・関西で開催予定の国際博覧会(万博)は、世界各国が自国の文化や技術を紹介する大規模なイベントになる。

万博のテーマは「人類の知恵と技術の共創」で、持続可能な社会の実現に向けた取り組みやイノベーションを展示する。

万博の会場は大阪湾の人工島である夢洲に設定され、世界最大級の木造建築物である「大屋根(リング)」や各国のパビリオンなどが建設される。

万博の入場目標は2820万人で、運営費は約4000億円、会場建設費は約2350億円と見込まれている。

万博の開催期間は2025年4月13日から10月13日までの185日間である。

しかし問題点が

万博の準備には様々な問題が発生している。主な問題点は以下の通りである。

会場建設の遅れ:各国が独自に建設するタイプAのパビリオンは、施工事業者が決まっていない国が多く、着工していない国もある。建設資材や労務費の高騰や人手不足も影響している。日本側が建設を代行するタイプXに移行する国も少ない。

建設費の膨張:会場建設費は当初の1250億円から約1.9倍の2350億円に増額された。これに加えて、政府が負担する日本館や発展途上国の出展支援などの費用も800億円を超えると見られる。

集客の不安:大人の1日券が7500円という高額な料金設定に批判が出ている。また、開催意義や内容が国民に十分に伝わっていないことも集客に影響する可能性がある。

地震の影響:2024年1月に発生した能登半島地震は、万博の開催にも影響を及ぼす可能性がある。地震による被災地の復興を優先すべきだという声が出ており、万博の延期や中止を求める動きもある。

対策

万博の開催に向けて、政府や日本国際博覧会協会は以下のような対策を講じている。

会場建設の加速:政府は経済産業省や財務省の幹部を協会に送り込むなど、人事でてこ入れを行った。また、各国との契約交渉や進捗管理を強化し、建設しやすい構造にしたり自国で一部を組み立てたりする対策を促している。

建設費の抑制:政府や協会はこれ以上の建設費の引き上げは避ける方針である。また、会場建設費の3分の1を負担する地元自治体や経済界にも協力を求めている。

集客の促進:協会は割引率が高い前売り券の発売や企業や学校への呼びかけを行っている。また、万博の意義や見どころをわかりやすく説明して、国内外の関心を高める努力をしている。

地震の対応:政府や協会は地震による被害が万博の開催に影響しないことを強調している。また、万博の開催は被災地の復興にも貢献するというメッセージを発信している。

関西万博の開催延期は、現時点では政府や協会の方針としてはないが、会場建設の遅れや建設費の膨張などの問題が解決されなければ、開幕に間に合わない可能性もある。

万博の成功には、政府や協会のみならず、地元自治体や経済界、参加国や国民の協力が不可欠である。万博の開催は、日本の文化や技術の発展や世界との交流にとって重要な機会であるという認識を共有することが必要である。

延期の是非

関西万博の開催延期については、賛否両論があります。延期すべきだと主張する人々の主な理由は以下の通りです。

能登半島地震の被災地では、復旧・復興に向けて資材や人手が不足しており、関西万博の開催によってさらに状況が悪化する恐れがある。

建設資材や労務費の高騰により、会場建設費が当初の予算を大幅に上回っており、税金の無駄遣いになる。

各国が独自に建設するパビリオンの工事が遅れており、開幕までに完成しない可能性が高い。

新型コロナウイルスの感染状況やワクチン接種率によっては、海外からの来場者が減少する可能性がある。

一方、延期すべきでないと主張する人々の主な理由は以下の通りです。

関西万博は、日本の技術力や文化力を世界に発信する絶好の機会であり、開催を見送ることは国際的な信頼を失うことになる。

関西万博は、関西地域の経済活性化やインフラ整備に大きな効果をもたらすと期待されており、開催を延期することは地元の利益を損なうことになる。

関西万博は、持続可能な社会を目指す「SDGs」をテーマに掲げており、開催を延期することはその理念に反することになる。

関西万博は、国際博覧会局(BIE)との契約に基づいて開催されるものであり、開催延期にはBIEの承認が必要であるが、その可能性は低い。

開催延期の影響

関西万博の開催延期には、様々な影響が考えられます。ここでは、主なものを以下に示します。

開催延期により、関西万博に参加する予定だった各国や企業、団体などの計画や予算が狂うことになり、参加の取りやめや規模の縮小などのリスクが高まる。

開催延期により、関西万博に関連する事業やイベントなどのスケジュールや内容の変更が必要になり、関係者に多大な負担や損失が発生する。

開催延期により、関西万博に期待していた関西地域の住民や事業者などのモチベーションや関心が低下し、集客や消費の減少などの影響が出る。

開催延期により、関西万博のテーマやコンセプトが時代にそぐわなくなり、魅力や競争力が低下する。

関西万博の開催延期については、様々な観点からメリットとデメリットがあることが分かりました。開催延期の判断は、関係者の意見や状況の変化を踏まえて慎重に行われるべきでしょう。私は、関西万博が成功裏に開催されることを願っています。
2024.01.27 19:51 | 固定リンク | 経済

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