バフムト「ワグネル包囲され殲滅」か
2023.05.22
■ウクライナ軍報道官「ワグネルを包囲し全滅させるだろう」 米軍元司令官「今週酷い目に遭うだろう」
  バフムト陥落を改めて否定



ロシアによるウクライナ侵略で、露国防省が制圧したと主張した最激戦地の東部ドネツク州バフムトに関し、ウクライナ軍東部方面部隊のチェレバティ報道官は21日、市内の南西部をなおウクライナ軍が保持しているとし、バフムトの陥落を改めて否定した。ウクライナ軍のシルスキー陸軍司令官は21日、「バフムト郊外でウクライナ軍が前進している」と述べた。ウクライナメディアが伝えた。

チェレバティ氏は、バフムト市内には露民間軍事会社「ワグネル」の部隊が展開しているが、同市郊外で前進しているウクライナ軍が「ワグネルを遅かれ早かれ包囲し、全滅させるだろう」とも述べた。

一方、ワグネルトップのプリゴジン氏は21日、「バフムト制圧の任務は完了した。25日にワグネルは戦闘地域を離れる」と改めて表明。今後、ワグネルは確保した陣地を露正規軍に引き渡した上で撤退し、部隊の再編成に着手するとし、今後2カ月間は戦闘に参加しない予定だと主張した。

ただ、米シンクタンク「戦争研究所」は、バフムト郊外にウクライナ軍が展開する中、ワグネルが無傷で撤退できる可能性は低いとの見方を示している。

■ウクライナ軍、最前線から100キロの露軍部隊本部を攻撃…長射程兵器を使用か

ウクライナ軍は21日、ロシア軍の占領下にある南部ザポリージャ州の港湾都市ベルジャンシクの露軍部隊の本部を攻撃し、損害を与えたと発表した。ベルジャンシクは戦闘の最前線から約100キロ・メートル離れており、長射程兵器を使った模様だ。ベルジャンシクはウクライナ軍が大規模な反転攻勢で奪還を目指す候補地として取りざたされている。

ウクライナ軍は使用した兵器については明らかにしていない。露軍側はウクライナ軍が英国から供与された長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」(射程250キロ・メートル超)を使ったと主張している。

ウクライナ軍は英国がストームシャドーの供与を正式発表した11日以降、米国が供与した高機動ロケット砲システム「HIMARS」(射程約80キロ・メートル)で届かない距離にある露軍拠点への攻撃を活発化させている。

東部ドネツク州の港湾都市マリウポリでは19日夜に露軍が基地として使用している空港で大規模な爆発があった。露軍側は20日、マリウポリがストームシャドーによる攻撃を受けたと発表した。マリウポリもウクライナ軍による反攻の候補地の一つに浮上している。

一方、ウクライナ陸軍の司令官は21日、露国防省が「全域制圧」を宣言したドネツク州の要衝バフムト周辺の最前線を視察したとSNSで発表した。司令官はバフムト周辺での反撃で成果を上げており、奪還の機会がくると強調した。ウクライナ側はバフムトの陥落を認めていない。

■ワグネルは今週、酷い目に遭う――米軍元司令官

バフムトを「完全制圧」と主張したばかりだが、まもなくウクライナ軍に包囲される?

ロシアの民間軍事組織ワグネルは来週、ウクライナで「悲惨な状況」に直面するだろう――アメリカ欧州・アフリカ陸軍のマーク・ハートリング元司令官が21日、そんな見方を示した。東部の激戦地、バフムトがウクライナ側に包囲されているからだという。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年2月、「特別軍事作戦」の名の下にウクライナ侵攻を開始。短期間で勝利を収めるはずが兵士たちの士気の低さなどさまざまな問題に見舞われ、開戦後1年以上経っても戦いは続いている。中でも激しい戦闘が続いているのはウクライナ東部のドネツク州バフムトだ。

ワグネルは実業家のエフゲニー・プリゴジンが創設した。戦闘員の多くは元受刑者だ。バフムトでロシア軍とともに戦ってきたワグネルは、かつてはロシアの勝利の鍵を握ると見られていた。

バフムトを巡る戦況は数カ月間、膠着状態が続いていたが、ここを落とせばプーチンにとっては象徴的な勝利となるはずだった。だが激しい戦いの結果、どちらの勝利とも言いにくい状況になっている。

■バフムート攻防戦はまだ終わらない

プリゴジンは20日、メッセージアプリのテレグラムに、ワグネルがバフムトを完全制圧したと投稿し、ロシア側の勝利を主張した。だがウクライナはこれを否定。激しい戦闘はまだ続いており、今後の形勢のカギを握っているのは自分たちだと主張した。

ウクライナ陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は21日、ウクライナ軍は近くバフムトの「戦術的包囲」を行うと述べた。本誌はウクライナとワグネルのどちらの主張についても真偽を確認できていない。

ハートリングはウクライナの発表を受け、21日にプリゴジンに警告するこんなツイートを投稿した。

「われわれが何度も言ってきたように、プリゴジンもワグネル戦闘員もプロの兵士ではない」「エフゲニー、おめでとう。バフムトの中心に旗を立てたんだね。だが、その君たちは包囲されている」

米シンクタンクの軍事研究所は21日、バフムトの一部地点がワグネルに制圧されたものの、いずれも「戦術的もしくは作戦上、重要な場所ではない」との見方を明らかにした。また、同研究所ではワグネルが勝利したという主張を裏付ける位置情報データは得られていないという。

一方でウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は20日夜、メディアに対し、ロシア軍とワグネルの部隊はバフムトの「すべてを破壊した」と述べたが、21日の記者会見で制圧を否定した。
2023.05.22 14:29 | 固定リンク | 戦争

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