G7「グローバルサウス」核脅威の位置付け→ゼレンスキー氏
2023.05.23


■G7対面出席、英首相が提案 ゼレンスキー氏に、英紙報道

英紙ガーディアンは22日までに、ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに出席した背景にスナク英首相の提案があったと報じた。サミット開催の約1カ月前に対面で出席するべきだと電話で伝えたという。

同紙は、ゼレンスキー氏の出席には、同氏が呼びかけるウクライナ和平を議論するサミットの実現を各国首脳に支持してもらう狙いがあったと分析。特にロシアへの非難を避けるインドが「最大のターゲット」で、ゼレンスキー氏はインドのモディ首相との会談でウクライナの和平案を説明して協力を求めたという。

■4月にウクライナ大統領から対面参加要望と首相

岸田文雄首相は22日の自民党役員会で、ウクライナのゼレンスキー大統領の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)対面出席は同氏の強い要望だったと明かした。「先月になってゼレンスキー氏から対面参加の強い要望があった。大統領の安全な来日を確保するため水面下での調整を集中的に行った」と説明した。

首相は「ゼレンスキー氏を交え、ウクライナ支援についてG7の連帯を強く発信することができた」と振り返った。

■ロシアの核使用…被爆都市・広島から強く牽制 ゼレンスキー大統領、訪日の目的とは

G7サミット広島が終わった。今回のサミットはこれまでの歴史の中で最も象徴的ものとなり、議長を務めた岸田総理は極めて重要な役割を果たした。そして、最大の象徴となったのは言うまでもなくゼレンスキー大統領の電撃的な訪日だ。

サミットが始まった当初、ゼレンスキー大統領はオンライン参加の予定だったが、急遽対面で参加するため、サウジアラビアのジッダから広島に向けて出発した。20日夕方前に広島空港に到着したゼレンスキー大統領は、すぐさまサミット会場に向かい、スナク首相やマクロン大統領、モディ首相などと相次いで会談した。

翌日にはサミットのウクライナ情勢や平和と安全に関するセッションに参加し、原爆資料館や平和公園を岸田総理と訪れ、最後に「戦争に勝利する」「広島のようにウクライナの復興を目指す」という決意を世界に向けて演説の中で発信し、帰国の途についた。

ゼレンスキー大統領も言及していたように、ウクライナ軍は不法占拠を続けるロシア軍に対する大規模な反転攻勢を開始するという。そのような過密なスケジュールの中、広島の訪問したゼレンスキー大統領の目的はどこにあったのだろうか。少なくとも大きく2つの目的があったように思う。

1つは、原爆投下の悲劇を受けた広島という存在だ。今日、ロシア軍は戦況で劣勢が続き、今後の反転攻勢によってさらなる弱体化を余儀なくされれば、プーチン大統領の脳裏には核という文字が鮮明になってくる。要は、今日ウクライナは核使用という現実的脅威にさらされており、ウクライナ軍優勢と核使用の脅威は皮肉にも比例的な関係にあるのだ。

それを十分に認識しているゼレンスキー大統領としては、このタイミングで世界唯一の被爆国の広島から反戦、核使用反対という強いメッセージを世界に向けて発信することで、ロシアを強くけん制する狙いがあった。被爆都市・広島から被爆の脅威にさらされている国の大統領が核使用反対を訴えるという、極めて象徴的な出来事が21日に現実のものとなった。

そして、もう1つの狙いはグローバルサウスの存在だ。今回のサミットにはG7諸国だけでなく、韓国やオーストラリアに加え、インドやブラジル、インドネシアやベトナムなどいわゆるグローバルサウスの国々が参加した。

ウクライナ侵攻以降、ロシアへ制裁を実施しているのは欧米日本など40カ国あまりにとどまり、グローバルサウスには欧米と中国ロシアのどちらにも寄らない国々が多い。グローバルサウスの盟主であるインドも、自由民主主義という価値観を欧米と共有する一方、ロシアとの経済関係を維持している。

今日、世界ではG7の影響力が薄まるなか、グローバルサウスの存在感が強まっており、ゼレンスキー大統領には第三国的立場を維持するグローバルサウスの国々に軍事、経済的支援を呼び掛けることで、自らの陣営に引き込みたい狙いがあった。そういう意味で、今回のサミットというタイミングを利用し、多くの国々の指導者と意見を交わせたことは同大統領にとって大きな成果となった。特に、大国として台頭しつつあるインドのモディ首相と会談できたことは、今後大きな意味を持つかもしれない。

当然のことだが、G7広島サミットとゼレンスキー大統領の訪日について、中国とロシアは早速反発している。中国は在中日本大使を呼び出して強く抗議するなど、対抗措置を辞さない構えだ。しかし、今こそ自由や人権、民主主義といった価値観を共有する国々の連携が求められている時はない。韓国のユン政権の誕生で日韓関係も劇的に改善し、今後はG7やクアッド、EUやNATOがグローバルサウスと如何に強固な関係を作れるかが最大の課題だろう。

■ロシア外務省、G7首脳声明を批判 「西側こそ核の脅威」 広島サミット

ロシアのリャプコフ外務次官は22日、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で発表された首脳声明に関して「(西側諸国は)現実をねじ曲げている」と批判した。

内容を検討し、必要な結論を出すとも述べた。タス通信が伝えた。

ロシア外務省は21日、核軍縮に関する「広島ビジョン」が問題視した「ロシアの核兵器の威嚇」に反論。G7の「作り話」と一蹴した上で「核の脅威は実際、モスクワではなくワシントン、ロンドンなど西側諸国の首都からもたらされている」と主張した。

■中国 G7首脳宣言に強く反発「中国の内政に干渉することに断固反対する」

G7広島サミットの首脳宣言で、台湾問題などへの懸念が示されたことを受けて、中国外務省は「中国の内政に干渉することに断固反対する」などとした談話を発表、強く反発しています。

G7広島サミットの首脳宣言を受け、中国外務省の報道官は20日、「G7のやっていることは国際平和を妨害し、地域の安定を損なうものだ」と批判する談話を発表しました。

サミットでは首脳宣言に「台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する」と明記されるなど、中国への懸念が示され、談話では「G7が中国を中傷し、中国の内政に干渉することに断固として反対する」としたうえで、台湾問題について「台湾は中国の台湾であり、中国人自身が決めることである。国家主権と領土保全を守る中国人民の強い決意を過小評価してはならない」と警告しています。

また、サミットの首脳宣言が香港や新疆ウイグル自治区、チベットなどの問題に触れたことについても、「中国の内政問題であり、人権を口実にした外部勢力の干渉に断固反対する」と反発しました。

さらに、「欧米の一部の先進国が恣意的に他国の内政に干渉し、世界情勢を操っていた時代は終わった」と指摘。「閉鎖的で排他的な『小さなグループ』が他国を封じ込め、抑圧することをやめるべきだ」と主張しました。

在日本中国大使館はG7議長国である日本に対し厳正な抗議を申し入れたことを明らかにしています。
2023.05.23 12:08 | 固定リンク | 戦争

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