史上2番目の銀行の破綻「金融恐慌」なるか
2023.05.02


■米地銀ファースト・リパブリック・バンクが経営破綻、市場への影響は限定的か 史上2番目の銀行の破綻

 同行破綻は、リーマン・ショック後で最大、史上2番目の銀行の破綻となる。(SVB)、シグニチャーバンクの破綻に次ぐ3行目の破綻

 米連邦預金保険公社(FDIC)は1日、米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)が経営破綻し、公的管理下に置いたと発表した。同時に米銀最大手JPモルガン・チェースがFRCの預金と資産を買収するとも発表した。

 3月の米地銀シリコンバレーバンク(SVB)の破綻後、財務が脆弱だったファースト・リパブリック・バンク(FRC)の預金も急減。3月の預金流出の規模が1000億ドル規模に達していたことが分かり、経営不安が再燃していた。ファースト・リパブリック銀の株価も大きく下落。金融不安が起きる前と比べると株価が20分の1となっていた。

 このためファースト・リパブリック銀行の救済策が検討されており、JPモルガン・チェース、PNCフィナンシャル・サービシズ、シチズンズ・ファイナンシャル・グループなどが提案を出しており、JPモルガン・チェースがFRCの預金と資産を買収することになった模様。

 2008年のリーマン・ショック以降、銀行では米国で最大の経営破綻となるが、ファースト・リパブリック銀行に対し救済策を検討と報じられていたこともあり、ファースト・リパブリック・バンクの経営破綻はすでに織り込み済みとみられる。

 これによる市場への影響は限定的となっていた。東京時間の米10年債利回りは3.46%と28日の3.43%からむしろ上昇していた。ドル円は137円が目先の心理的な壁となっているが、リスク回避の円買いとはなっていない。米地銀ファースト・リパブリック・バンクが経営破綻、市場への影響は限定的か

■ファースト・リパブリックバンク破綻の見通し、破綻は3行目でリーマン・ショック後最大規模

米金融大手JPモルガン・チェースやPNCファイナンシャル・サービシズ・グループなど数社が、入札を通じてファースト・リパブリックバンクの買収を検討していると報じられているとしたが、JPモルガンが収容するとした。

月の2行破綻の余波と言えるものであり、米国の銀行システムが再び不安定の度を強めているとは言えないかもしれない。しかし、度重なる破綻回避の試みがうまくいかなかったとすれば、それは同行の問題を超えた米国銀行全体の問題の深刻さを裏付ける。

■決算では予想を上回る預金流出と収益悪化が確認されていた

サンフランシスコを拠点とするファースト・リパブリックバンクは、SVBが3月10日に経営破綻したことを受けて経営不安に陥った。顧客は数日のうちに約1,000億ドルの預金を引き出した。

その後、JPモルガンやPNCなど大手11行が、300億ドルの預金を同行に提供して救済を図ったが、うまくいかなかったのである。

4月24日には同行の1-3月期決算が発表されたが、純利益は前年同期比ー32.9%と予想以上に悪化した。

1-3月期の預金は前期比-40.8%と大幅に減少した。大手銀行による300億ドルの預金注入という救済策の影響を除けば、預金は前期比-57.8%とさらに大幅な減少となっていた計算だ。同行の株価は、25日の引け値で前日比-49.4%と一日でほぼ半減した。株価は、銀行不安が生じる前のわずか3%程度にまで下落し、経営不安が再び強まっていた。

自己資本比率の改善、流動性の確保を図るため、同行は最大で1,000億ドル(13兆4,000億円)相当の資産売却を模索している、と報じられた。これは、総資産2,330億ドルの4割以上の資産を売却するという大リストラ策であった。ただし資産売却で損失が生じないように、他行などに市場価格以上で資産を購入してもらう、一種の救済策であったと考えられる。そうした救済策に大手銀行などが応じなかったことで、ファースト・リパブリックバンクは破綻処理される方向になったと推察される。

■銀行経営不安が再燃する可能性

入札を通じた同行の買収に名乗りを上げている銀行は、破綻処理によって損失が削減された同行を、破綻前よりも安く購入することを考えているのではないか。FDICは、ファースト・リパブリックバンクを買収する金融機関に資金支援もするとみられている。

買収に前向きとされるJPモルガンとPNCは、ともにリーマン・ショック時にも大手金融機関の買収で注目された銀行である。JPモルガンは2008年に大手投資銀行ベア・スターンズとワシントン・ミューチュアルを買収した。またPNCは、2008年にナショナル・シティバンクを政府の支援の下で買収し、その結果、昨年末時点で6番目の資産規模の銀行にまで成長した。

ファースト・リパブリックバンクの破綻は、3月に生じた米国の銀行不安がなお終わっていないことを裏付けるものとなった。この先、米国経済が減速を強めていけば、銀行が保有する貸出債権、あるいは証券の価値が下落することで、再び資本不足懸念が高まり、銀行経営不安が本格的に再燃する可能性があるだろう。
2023.05.02 15:13 | 固定リンク | 経済
ロシア軍「主力部隊が撤退危機」クリミア半島
2023.05.01
クリミア半島 主力部隊が撤退危機


■ゼレンスキー大統領〝反攻宣言〟「まもなく重要な戦闘が始まる」クリミア半島で大規模火災 ロシア軍周辺の足並み乱れ…主力部隊が撤退危機

ロシアの侵略を受けているウクライナのゼレンスキー大統領は4月30日、「まもなく重要な戦闘が始まる」と述べ、大規模反攻の開始時期が近いことを示唆した。ロシアが実効支配する南部クリミア半島で発生した大規模火災も反攻の前触れとみられる。対するロシア側は、民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏が国防省への不満をあらわにし、東部戦線からの撤退の可能性があると指摘した。軍周辺の足並みの乱れは、プーチン政権の指導力の低下を浮き彫りにしている。

ゼレンスキー氏は「国境警備隊の日」に合わせた演説で、「侵略者が私たちの平和を奪うことは絶対にない」とも述べた。ただ、欧州メディアなどのインタビューではロシアとの戦争が「数年もしくは数十年続く可能性がある」としており、厳しい戦いが続くとの見方を示した。

ウクライナ軍のフメニュク報道官は同日、クリミア半島セバストポリで29日に起きた石油備蓄施設の火災は無人機(ドローン)による攻撃で、ウクライナ軍が計画する大規模な反転攻勢の「準備の一環」だと述べた。「ロシア軍は浮足立ち、家族を半島外に移動させている」とも発言、大規模反攻の準備が進んでいることを示してロシア側の動揺を狙ったとみられる。

大規模火災が発生したセバストポリにはロシア黒海艦隊が司令部を置く。けが人は出なかったが、ウクライナ軍当局者は同艦隊用の計4万トン超の容量を持つ10以上の石油タンクが破壊されたと述べた。

ロシア国防省は30日の戦況説明で、激戦が続く東部ドネツク州バフムトの西部で新たに4つの街区を支配下に置いたと表明した。だが、バフムトでのロシア側の主力部隊であるワグネル創設者のプリゴジン氏は「弾薬の供給問題が解決されなければ、バフムトを放棄し、前線を明け渡す」と宣言、ショイグ国防相に対し、最後通告を突きつけた。プリゴジン氏はウクライナの反転攻勢が5月15日までに始まるとの見方も示し、「ロシアにとって悲惨な結果をもたらす」と指摘した。

筑波大学名誉教授の中村逸郎氏は「ワグネルはスーダン情勢に関与しているとの情報も浮上した。民間軍事会社である以上、資源もあるスーダンの方が『カネになる』と考え、ウクライナ戦線から離脱する可能性があるのが現状だ。プーチン氏にとっては、官僚的な正規軍よりも戦争のプロ集団であるワグネルを頼りにせざるをえない。軍事組織の対立を統制できず、反攻に抵抗できる態勢が十分に整っていないのではないか」と分析した。

■「ロシアは力でウクライナに交渉を迫ろうとしている」

ロシアによるウクライナ侵略で、ウクライナ国防省メディアセンターは26日、現時点で露軍が約36万9千人の軍人をウクライナに派遣していると発表した。同センターは、露軍の目下の目標は東部ドネツク州全域を制圧することだとした上で、「ロシアは独立国家としてのウクライナを破壊するという最終目標を放棄しておらず、そのために力でウクライナに交渉を迫ろうとしている」と指摘した。

露軍は現時点で、ドネツク州の面積の約6割超を支配下に置いているとされる。同センターは、露軍が同州内で制圧を狙っている主な都市として、最激戦地のバフムトや、親露派武装勢力が支配下に置く州都ドネツク市近郊のアブデエフカやマリインカを挙げた。また、露軍が48個の旅団、122個の連隊、戦車など5900の兵器を戦線に投入しているとした。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、中国の習近平国家主席と同日に行った電話会談に関し、「公正で安定的な平和を確立するための相互協力」について協議したと交流サイト(SNS)で説明。「領土を代償とした平和はあってはならず、(ウクライナが旧ソ連から独立した)1991年の国境線に基づく領土が回復されなければならない」とし、2014年にロシアが一方的に併合を宣言した南部クリミア半島を含む領土の奪還を実現する考えを改めて示した。

前線の戦況を巡り、ウクライナ軍参謀本部は26日、バフムト市内で激しい戦闘が続いていると発表。アブデエフカやマリインカ周辺などで前進を図った露軍を撃退したとした。

■クリミアの燃料タンクで火災 ウクライナ「神罰だ」

ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島の港湾都市セバストポリのラズボジャエフ首長は4月29日、市内の燃料タンクで大規模火災が起きたと交流サイト(SNS)で発表した。同氏は、火災で1千平方メートル以上が延焼したが、死傷者はないと指摘。「火災の原因はドローン攻撃だとみられる」と主張した。セバストポリは、ウクライナへのミサイル攻撃を続ける露黒海艦隊の本拠地。

この火災について、ウクライナ国防省情報総局のユソフ報道官は29日、同国中部チェルカスイ州ウマニの集合住宅にミサイル攻撃を行ったロシアに対する「神罰」だとし、報復攻撃だったことを示唆した。ユソフ氏はまた、「火災により露黒海艦隊用の燃料4万トンが失われた」との見方を示した。ウクライナメディアが伝えた。28日のウマニへのミサイル攻撃では、子供6人を含む民間人23人の死亡が確認され、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアを非難していた。

クリミアでは昨年8月、露軍施設で相次いで爆発が発生。同年10月にも露本土とクリミアを結ぶ橋で爆発が起きた。一連の爆発を巡り、ウクライナ側は関与を明言していないものの、ウクライナ南部に展開する露軍の補給路となっているクリミアを攻撃することで、将来的な反攻を有利に進めるためのウクライナ軍の作戦だとの見方が強い。

一方、ゼレンスキー氏は29日、複数の欧州メディアのインタビューに応じ、「われわれは確実にクリミアを解放する」と強調。東・南部の被占領地域に加え、クリミアも奪還する意思を改めて示した。

前線の戦況を巡り、ウクライナ軍参謀本部は29日、最激戦地の東部ドネツク州バフムトやアブデエフカ、リマン方面などで激戦が続いていると発表した。
2023.05.01 19:42 | 固定リンク | 戦争

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