中国共産党「宗教はアヘン」取壊しへ
2023.05.03
マルクスは「宗教はアヘンだ」全面禁止


■中国共産党、宗教の規制を強化 キリスト教の教会が「違法建築物」として取り壊しに

カール・マルクスはかつて、宗教は「人類にとってのアヘンだ」と言ったが、中国共産党は今、依存の可能性があるものを禁ずるように、宗教をすべて禁止しようとしているようだ。

宗教を信仰している人は、これまでも中国共産党に入党することが禁じられていたが、この禁止事項はこれまでは緩やかにしか適用されていなかった。しかし2015年1月、中国の浙江省の共産党指導部が、今後はこの規則を厳格に適用すると公表した。

この浙江省の動きは、中国各地の大学で思想的な締め付けが強まっている中で起きた。報道によれば、現在中国のさまざまな大学で、共産党を批判する意見を述べた教授が解雇されているという。そして先週、中国の教育大臣が「欧米的な価値を奨励する教科書を教室に持ち込むこと」を禁じることを表明した。


また2014年には、浙江省の温州市で、学校でクリスマスを祝うことを禁じる命令が出され、大きな話題となった。このときには、複数の大学のキャンパスで、クリスマスのお祝いを中止するよう求める学生のデモも散発的に起こされたが、このデモは、当局に支持されたものだったとされている。

浙江省温州市で、違法建築物として破壊されたキリスト教会。

温州市は中国最大のキリスト教徒コミュニティを抱えており、キリスト教の教会が数多く存在するが、2014年には200を超える教会が「違法建築物」として取り壊しの対象にされたとも報道されている。

浙江省の党委員会は、公表した規則の中で、すべての入党希望者に対して、宗教上の信仰を持っているかどうか、また宗教へ関与があるかどうかを調査し、そのことを示す証拠が見つかった場合には入党を拒否すると明言している。さらに、党員が宗教を信仰していないことを調査するシステムを作るよう、共和党のグループに対して要求した。

中国共産党機関誌の国際版「環球時報」によると、共産党が運営する大学の教授は、宗教信仰者の党への参加を禁じるという浙江省の動きは、「欧米の敵対的な勢力が侵入すること」を防ぐことが目的だとの見方を示したという。

中国共産党には現在、8400万人を超える党員がいるが、その多くは学生時代に入党しており、政治的な活動への関与は、あるとしてもごくわずかだ。党に入るための競争率は高く、ただ忠誠を誓えばいいというものではなくて自分の履歴などを入党申請書に詳しく箇条書きして申請しなければならない。

中国共産党の政治思想はマルクス・レーニン主義に根ざしているが、この思想では宗教を、大衆を欺くものだとして非難している。

中国が「公式に」認めている宗教は、仏教、道教、イスラム教、プロテスタント、カトリックの5つで、政府が認可した宗教機関や施設でなければ、宗教活動を行うことは許されておらず、国の認可を受けていない施設で祈りを捧げている信者たちは定期的な取り締まりの対象となる。

仏教と道教は、中国文化に深く根ざしていることから国民に大きな支援を得ているものの、1960年代から70年代にかけて続いた文化大革命の時期には、これらの宗教の寺院でさえ、「迷信」や「封建主義的」考えの名残だとしてが荒らされたり壊されたりした。

■少林寺武校の校名から「寺」の文字を消し去る 道教寺院の外観の変更を命じる

政府は寺院の外観の変更を命じ、宗教的な言葉や伝統的な儀式を禁止している。その結果、一部の信者は警察に拘留された。

キリスト教への 中国共産党 の弾圧は「脱西洋化」の名の下に行われ、イスラム教への弾圧は「テロ及び急進主義」と戦うために行われている。しかし、中国伝統の宗教、つまり仏教と 道教 に対する強化中の弾圧の明確な理由は存在しない。宗教に関するものは全て排除するという普遍的な目標のために、現在、弾圧が行われていると見られる。

■「寺」という言葉を禁止

中国中央部、河南 省 登封 市 の住民によると、地元で有名な「少林寺塔溝武校」から「寺」の文字が消えたようだ。以前の制服の背中の部分に記された校名も赤い布や中国の国旗で隠されている。新たに配布された制服には、校名の「寺」が記されていない。

「校長と師範から隠すよう指示を受けました。隠していないことが判明すると、私たちは非難されてしまいます」と生徒は説明した。この措置は、国が全ての宗教関連の言葉を排除する要求を出した5月に講じられた。師範も同様のことを生徒に伝えていた。生徒は「国は宗教の信仰を完全に排除したいのです」と話した。

■灰色に塗られた道教の寺院

中国北西部、陝西省漢中市城固 県 に位置する道教の寺院、上元観はかつて朱色であったが、灰色に塗り替えられた。

色の変更に関して政府は2点の理由を挙げていた。まず、寺院が目立ち過ぎており、「政府の影を薄くする」ためだ。そして、この寺院は原形に基づいてレプリカとして2018年に改築されたため、朱色ではなく、灰色でなければならないというものであった。この措置は、当局の担当者曰く、宗教への現在の弾圧を規定する規則と一致するようだ。

「寺院が目立ち、人目につくなら、大勢の人々が拝観するようになります。そのため、上級機関は、色を変更するよう求めてきました。私たちにはどうすることもできませんでした」と現地の政府の情報筋は語った。

色を変更したことで寺院の安全が確保されるわけではない。当局の担当者は、強制的な取り壊しの可能性を否定していない。

現地の住民によると、複数の道教の寺院が近郊の地域で取り壊されているようだ。住民は政府の決定を理不尽だと非難し、「道教のこの寺にちなみに、この地域は上元観 鎮 と名付けられました。上元観は鎮の入り口に位置し、鎮のイメージの一部です。現在、この寺院は灰色に塗られ、活気がありません。どうみても道教の寺院には見えません」と述べた。住民たちは、信教を制限するために色が塗り替えられたと考えている。

中国南東部の沿岸の福建省では、省都の福州市のオリンピックスポーツセンターの近郊に位置する文昌宮と隆興庵、そして、同市の倉山 区 にある三聖宮と尊王廟の外観が、政府の強制的な命令により変えられた。

文昌宮と隆興庵は明朝の時代(1368年-1644年)に建てられ、500年の歴史を持つ。5年前、収用が行われ、新たな場所で建直されていた。新しい寺院は敷地外からは道教の寺院には見えない。

現地の信者は「倉庫みたいです。しかし、外観を変えることは禁じられています。少しでも変えれば、都市管理局がやって来ます。また、外観を変えたかどうかを確認するために警察が頻繁に巡回しており、何か変わったことがあれば報告されてしまいます。一般市民には何もすることができません。黙って苦しむしかないのでしょう」と不満を漏らした。

現地の別の道教の信者は「誰も政府を訴えようとはしません。政府がその気になれば、重機を送り、寺を取り壊すことができるのです」と話し、さらに「そのうち、改修された寺院ですら姿を消すでしょう。私たちは 中国道教協会 の会員ですが、協会がこのように私たちを弾圧しているのです。道教は中国の宗教ですが、政府は認めてくれません」と付け加えた。

尊王廟の道教の信者は、当局がこれは国政の問題だと主張し、伝統的な寺院の様式を維持することを許さず、灰色に塗ることを要求したと非難した。現在、この寺の存在を知らない者には、この施設が寺院だとは分からない。さらに、周りを木々に囲まれているため、存在すら気づいてもらえない。

■信者によるあらゆる集会は「違法活動」と見なされる

昨年11月、中国北東部、遼寧省の遼陽市の仏教徒は、入院時に支えてくれたことに感謝するため、仲間の信者をレストランに招待した。しかし、食事中、突然、大勢の警官に囲まれ、「違法な集会」を行っていると告げられた。その後、少なくとも7人が逮捕され、家宅捜索が行われた。さらに、捜索中に宗教に関連する物品が見つかったため、一部の仏教徒は3日から15日間に渡り拘留された。

今年の3月、中国北東部、黒竜江省では7人の仏教徒が伝統的な漢族の衣装に身を包み、観音の誕生を祝福した。仏教徒たちは仏教徒が経営する店の前で踊り、その後、近くの川に向かい、捕まえた魚を解放した。これは慈悲の心を示すための伝統的な仏教の儀式である。通行人がこの活動を動画に撮影し、その後、インターネット上に公開すると、瞬く間に視聴回数が増え、7,000回を超えた。

この件は現地の宗教事務局と県政府の職員の注意を引き、当局の関係者は、仏教徒が過剰な注目を集め、住民に「悪影響」を与えたと主張した。その結果、現地の仏教徒に対し、今後、同様の宗教的な活動を行うことを禁じ、インターネットから動画を削除するよう求めた。

「文化大革命 時のように、とても厳しい規制が現在敷かれています。政府から犯罪の嫌疑をかけられると、自動的に有罪と見なされます。政府は集団が集まることを恐れているのです」と現地の住民は話した。
2023.05.03 13:29 | 固定リンク | 宗教

- -