光電融合「光半導体量子コンピューター革命」
2024.04.20
NTTは「光半導体」の実現を目指して光電融合技術の開発を加速しています。政府が452億円の支援を決定する中で、最終的に目指す“ゲームチェンジ”の戦略が見えてきました.

この「光半導体」は、データ通信や半導体で行うコンピューターの計算を電気ではなく光信号で処理する技術です。デジタル化の進展によりデータ処理量が増大し、電力消費も増えています。光電融合技術を普及させれば、大幅な消費電力の削減が期待されます。

NTTは2019年に、光電融合技術を通じて電力効率を100倍、伝送容量125倍、遅延時間を200分の1にする次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」構想を打ち出しています。共同プロジェクトにはNTTのほか、古河電気工業、新光電気工業、キオクシアホールディングス、富士通、NECが参加しており、実用化の段階で米インテル、米ブロードコムとも連携しています。

「光半導体」は、電子回路が担ってきた情報のやり取りを光回路に置き換えることで、超低消費電力と超高速処理を実現します。NTTの取り組みは、私たちの生活に革命的な変化をもたらす可能性があります。

日本は、光半導体の分野で先行しています。NTTが主導する光技術を使った次世代半導体の研究開発に、経済産業省が最大452億円を支援することが正式に発表されました。この技術は、**IOWN(アイオン)**構想の中核となるもので、電子処理を光に置き換えることにより、通信の高速化や消費電力の削減が期待されています。

2024年には、コンピューターの計算に使用するチップと周辺部品を光でつなぐ技術を確立する予定です。

2025年には、チップ同士の光による接続を目指しています。

最終的には、2030年に光で計算する「光電融合チップ」の実用化を目標としています。

これらの進展は、NTTが推進する「IOWN(アイオン)」構想の一環として行われており、2024年に仕様を確定し、2030年のIOWN実現を目指していることが報告されています。 この技術が実現すれば、データセンターの省エネ化や高速大容量通信など、多くの分野で革新的な変化が期待されています。

IOWN構想(Innovative Optical and Wireless Network)は、NTTが提唱する次世代の情報通信インフラです。この構想は、光を中心とした技術を活用して、現在のICT(情報通信技術)の限界を超えることを目指しています。具体的には、以下の3つの主要技術分野で構成されています。

オールフォトニクス・ネットワーク (APN: All-Photonics Network)

光信号のままで伝送・交換処理を行うことにより、低遅延かつ大容量の通信を実現します。

デジタルツインコンピューティング (DTC: Digital Twin Computing)

実世界とデジタル世界の融合により、未来予測などの新しいサービスやアプリケーションを創出します。

コグニティブ・ファウンデーション (CF: Cognitive Foundation®)

さまざまなICTリソースを最適に調和させ、一元管理することで、業界や地域ドメインを超えたリソース活用を可能にします。

IOWN構想は、2024年に仕様の確定を目指し、2030年の実現を目標に研究開発が進められています。この構想により、多様な価値観を持つ情報をリアルタイムで処理し、他者の視点や体験を共有することが容易になると期待されています。これにより、人と人、人と社会のつながりの質が向上し、個々人の価値観のアップデートが可能になると考えられています。

IOWN Global Forumは、この構想の実現・普及を促進するために、NTT、インテル、ソニーの3社が立ち上げた組織で、多様な業界からの参加パートナーと協力しています。技術仕様やフレームワーク、リファレンスデザインなどの検討を通じて、IOWN構想の実現に向けた取り組みが進められています。






消費電力の削減

光半導体は電気信号ではなく光信号を使用するため、エネルギー消費が少なくなります。これにより、データセンターなどの大規模な電力を消費する施設での省エネが可能になります。

高速処理

光は電気よりも速く伝わるため、データ処理の速度が向上します。これにより、通信速度の向上や計算処理の高速化が期待されます。

熱の発生抑制

電気信号を使用すると熱が発生しますが、光信号ではその発生が少ないため、冷却コストの削減や機器の耐久性向上に寄与します。

伝送容量の増加

光信号は高密度で情報を伝送できるため、より多くのデータを同時に送ることができます。これにより、データ通信の容量が大幅に向上します。

遅延時間の短縮

光信号は電気信号に比べて遅延が少ないため、リアルタイム性が要求されるアプリケーションでの利用が有効です。

これらの利点により、光半導体技術はデータセンターの効率化、エネルギーの効率的な利用、そして高速大容量通信の実現に大きく貢献すると期待されています。また、これらの技術が実用化されれば、IT業界だけでなく、自動車、医療、エンターテイメントなど多岐にわたる分野での革新が期待されます。

さらに、光半導体技術は、量子コンピューターの分野でも重要な役割を果たしています。光量子コンピューターは、光子を量子ビットとして使用し、量子もつれや重ね合わせといった量子力学の特性を利用して計算を行います。この技術は、従来の半導体に基づくコンピューターの限界を超える可能性があり、以下のような特徴を持っています。

高速化

光を使うことで、10テラヘルツの動作周波数を目指せるため、現在の半導体に比べて大幅な高速化が期待されます。

微細化の限界の克服

半導体の微細化に伴う物理的限界を克服し、新たな開発競争を促進することができます。

冷却・真空装置不要

光量子コンピューターは、他の方式で必要とされる冷却・真空装置が不要で、実用的な小型化が可能です。

量子ビット数の増加:時間的に連続的な量子もつれ状態を作ることで、装置の大型化なしに量子ビット数を増やすことができます。

これらの特徴により、光量子コンピューターは、複雑な計算を高速で解く次世代の計算機として期待されており、東京大学やNTT、理化学研究所が共同で開発を進めています3。今後、この分野の研究が進むにつれて、量子コンピューターの実用化に向けた大きな進展が見込まれます。




また、国策半導体会社ラピダスが鍵を握る存在として浮上しており、NTTは米国のインテルやブロードコムと連携し、実用化の段階を進めています。日本の産業力向上に大きく貢献する可能性があり、国際連携による開発が進んでいることから、日本が光半導体技術で世界をリードする可能性が高まっています。

NTT(日本電信電話)は、光半導体の実現を目指して光電融合技術の開発を加速しています。政府が452億円の支援を決定した中で、最終的に目指す「ゲームチェンジ」の戦略が見えてきました。

光電融合技術は、データ通信や半導体で行うコンピューターの計算を電気ではなく光信号で処理する技術です。デジタル化の進展によりデータ処理量が膨大になり、電力消費が増大しているため、電気の処理を光に置き換えることで大幅な消費電力の削減が期待されています。

NTTは光電融合技術を通じて電力効率を100倍、伝送容量125倍、遅延時間を200分の1にする次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」構想を打ち出しています。共同プロジェクトには古河電気工業、新光電気工業、キオクシアホールディングス、富士通、NECなどが参加しており、実用化の段階では米インテルや米ブロードコムとも連携しています。

NTTと米国の企業、特にインテルとブロードコムは、光電融合技術を活用して次世代の通信インフラの実用化を目指して協力しています。以下はその詳細です。

NTTとインテルの共同研究契約

NTTとインテルは、未来のコミュニケーション基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」技術の共創を目的に、2023年4月までの共同研究契約を締結しました。

両社はフォトニクス技術、デジタル信号処理(DSP)技術、コンピューティング技術、ネットワーク基盤運用技術などの専門知識を活用して、スマートでコネクテッドな世界の実現に向けた技術開発に取り組んでいます。

IOWN構想の具現化

IOWN構想は、光電融合技術を通じて電力効率を100倍、伝送容量125倍、遅延時間を200分の1にする次世代通信基盤を目指しています。

NTTは2028年度に伝送容量125倍、2032年度に電力消費100分の1を達成できると見込んでいます。

光電融合技術の具体的な展開

IOWN構想では、光技術を従来の長距離信号伝送だけでなく、電子回路と連携したプロセッサチップ内の信号処理部にも導入し、光電融合による新しいコンピューティング基盤を実現します。

また、高速分散コンピューティングやオープンフレームワークの開発も進められています。

これにより、光電融合技術はITの世界での電力消費削減と高速大容量通信の実現に寄与し、スマートな社会の実現に向けて重要な役割を果たすことが期待されています。

国際協力

NTTと国際協力

NTTは、光電融合技術の普及によって、2030年までに現在の最先端データセンターと比較しても、40パーセント以上の省エネが実現すると言われています。

この技術は、データセンターの消費電力問題を救う技術として注目されており、電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合することで、エネルギーの無駄遣いや処理の遅れを大幅に減らすことができます。

IOWN Global Forum

IOWN Global Forumは、NTT、インテル、ソニーの3社が立ち上げた組織で、光電融合技術の実現・普及を促進するために多様な業界からの参加パートナーと協力しています。

このフォーラムは、技術仕様やフレームワーク、リファレンスデザインなどの検討を通じて、IOWN構想の実現に向けた取り組みが進められています。

OFC2024での動態展示

NTTとNTTコミュニケーションズは、OFC2024で、IOWN APNを活用した400Gbps/800Gbps光電融合デバイスを用いたデータセンタエクスチェンジ(DCX)のマルチベンダでの動態展示を行いました。

この展示は、光のまま低遅延・低電力で分散型データセンタを接続する技術を示し、大容量サービスを遠隔地まで提供できる光電融合デバイス技術、監視技術が実現されたことを示しています。

日米韓の連携

NTTは、米インテルや韓国のSKハイニックスとも協力し、消費電力を大幅に抑える光電融合を組み込んだ機器の量産を目指しています。

日本政府はこのプロジェクトに約450億円の支援を行っており、中国を念頭に置いた日米韓の先端技術開発が進んでいます。

これらの国際協力プロジェクトは、光電融合技術の実用化と普及を加速させ、よりクリーンで便利な未来への道を切り開いています。
2024.04.20 12:13 | 固定リンク | 化学

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