「なぜこの曲が優秀作品賞に?」=レコード大賞
2022.12.30
「レコード大賞」への強烈な違和感…「なぜこの曲が優秀作品賞に?」疑問続出の背景
開催64回を誇る日本音楽賞の先駆け
30日17時30分から今年の『第64回 輝く! 日本レコード大賞』(TBS系)が放送される。
1959年にはじまった日本音楽賞の先駆けであり、「柔」美空ひばり、「また逢う日まで」尾崎紀世彦、「喝采」ちあきなおみ、「勝手にしやがれ」沢田研二、「UFO」ピンク・レディー、「ルビーの指輪」寺尾聰、「DESIRE」中森明菜、「寂しい熱帯魚」Wink、「おどるポンポコリン」B.B.クイーンズ、「愛は勝つ」KAN、「君がいるだけで」米米CLUB、「CAN YOU CELEBRATE?」安室奈美恵、「TSUNAMI」サザンオールスターズ……その年を代表する楽曲とアーティストが受賞してきた。
しかし、いつからか受賞者が発表されたときから「レコード大賞」「最優秀新人賞」が発表される放送当日まで、人々から疑いの目を向けられることが常態化している。さらにSNSの浸透で違和感の声はますます目立つようになっているが、その理由にはどんなものがあるのか。放送前に違和感の内容を整理しておきたい。
今年の「優秀賞」10組は妥当なのか
まず11月15日に発表された今年の受賞者をあげていこう。
優秀作品賞に、「君を奪い去りたい」純烈、「CLAP CLAP」NiziU、「恋だろ」wacci、「甲州路」氷川きよし、「新時代」Ado、「スターマイン」Da-iCE、「ダンスホール」Mrs. GREEN APPLE、「なんでもないよ、」マカロニえんぴつ、「Bye-Good-Bye」BE:FIRST、「Habit」SEKAI NO OWARIの10組。
新人賞に、石川花、OCHA NORMA、田中あいみ、Tani Yuukiの4組。
最優秀歌唱賞に、三浦大知。
特別賞に、Ado、Aimer、男闘呼組、King Gnu、Kep1er、DA PUMP、ゆずの7組。
特別顕彰に、石川さゆり、天童よしみ、松任谷由実の3組。
特別国際音楽賞に、SEVENTEEN。
日本作曲家協会選奨に、藤井香愛。
特別功労賞に、新井満、彩木雅夫、西郷輝彦、佐々木新一、新川二朗、松平直樹、笠浩二(C―C―B)の7組。
主にネット上で疑いの声が向けられているのが優秀作品賞の10組について。最も多いのは「何でこれが選ばれた?」「何でこれが選ばれていない?」という当落に対する不満だが、今年は幅広い世代に浸透したヒット曲がないため、仕方がないかもしれない。
問題なのは、「なぜこの結果なのか」の説明が不十分で、審査過程や選考基準などがほとんどわからないこと。「売上のみで決定されるわけではない」ことはわかっても、「楽曲のどこを評価したのか」「歌唱力や大衆性はどのくらい加味されたのか」などが伝わってこないから、人々のフラストレーションはたまっていく。
その意味で、ジャンルこそ全く違うが、賞レースという観点から参考にしたいのが、18日に放送された『M-1グランプリ2022』(ABCテレビ・テレビ朝日系)。予選の選考基準は同じようにわからないが、準々決勝で見取り図やインディアンス、準決勝でオズワルドなどが敗退するなどの人気度外視の姿勢を見せ続けることで信頼を得てきた。
もともと『M-1グランプリ』がツイッターのトレンドランキングを独占するなど“日本一つぶやかれる番組”として成立しているのは、決勝の審査内容を視聴者に明示していることが大きい。売れっ子芸人がリスクを背負って審査員として出演し、事実上ほぼ全組へのコメントを義務づけることで、視聴者の納得感を上げている。
賞のわかりづらさと長い放送時間
一方の『日本レコード大賞』は、審査内容どころか、審査員の人選にすら疑いの目が向けられている状態。『M-1グランプリ』のように審査内容を発信しなければ、現在の“物言う視聴者たち”を納得させることは難しく、本来は賞レースの生命線であるガチンコ感を醸し出せないだろう。
過去を振り返ると『日本レコード大賞』は、1980年代から1990年代にかけて受賞辞退するアーティストが増え、多くの視聴者が納得できる大賞作ではなくなりはじめたことが大きかった。その後は同一アーティストや所属レコード会社の連続受賞が不自然なほど増え、複数にわたる週刊誌報道もあって、審査に疑いの目が向けられたまま放送が続いている。
また、1989年に『NHK紅白歌合戦』の放送時間が前倒しされ、両番組がかぶってしまったこともターニングポイントの1つ。その結果、視聴率は下がり、2005年には世帯視聴率10.0%まで落ちたことで、翌年に「放送日を大みそかから30日に繰り上げる」というドタバタがさらなるイメージダウンにつながった。
その他で例年目立つのは、「多すぎて何の賞なのかわからない」などと困惑する声。なかでも優秀作品賞と特別賞の違いがわかりづらく、今年で言えばAimerやKing Gnuのファンの間には「なぜ特別賞? 優秀作品賞の10組より劣っているのか? それとも辞退したのか?」という疑問の声が見られた。
それ以外の賞も、どんな理由で設けられたものなのか、どれくらい名誉がある賞なのか、残念ながら視聴者サイドに伝わっていない。それどころか、賞の意義うんぬんではなく、「4時間30分という放送時間の長さを埋めるためではないか」などと疑われてしまう始末。「国民的番組」と言われた1970年代から1980年代にかけては2時間~2時間30分だったこともあり、「賞を発表する番組としては長すぎる」という印象を与えている。
時代の主流は音楽フェス型特番に
もともと一年の締めくくりである12月は『日本レコード大賞』に限らず多くの音楽特番が放送されている。
今年も3日の『日テレ系音楽の祭典 ベストアーティスト』(日本テレビ系)、7日と14日の『FNS歌謡祭 第1夜・第2夜』(フジテレビ系)、17日の『明石家紅白』(NHK)、19日の『CDTVライブ! ライブ! クリスマス4時間SP』(TBS系)、23日の『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE 2022』(テレビ朝日系)、28日の『発表! 今年イチバン聴いた歌 年間ミュージックアワード2022』(日本テレビ系)、31日の『第55回年忘れにっぽんの歌』(テレビ東京系)と『第73回NHK紅白歌合戦』(NHK)。
これらの多くが長時間放送される音楽フェス型特番であり、年の瀬ならではのお祭りムードで盛り上がる中、賞レースの『日本レコード大賞』は浮いてしまう。かつては他の賞レースも12月に放送されていたが、現在はないことから視聴者のニーズが音楽フェス型特番に変わった様子がうかがえる。
その他にも、18日の『これが定番! 世代別ベストソングミュージックジェネレーション』(フジテレビ系)、22日の『歌唱王2022~全日本歌唱力選手権~』(日本テレビ系)、24日の『ハモネプ2022クリスマスSP』(フジテレビ系)、29日の『この歌詞が刺さった! グッとフレーズ~私を支えた歌詞SP 2022~』(TBS系)などがあることから、12月に音楽特番のニーズがあることは間違いない。
しかし、だからこそ「長時間放送の賞レース」という旧態依然としたコンセプトの『日本レコード大賞』が時代に取り残されて浮いているように見えてしまうのではないか。
『FNS歌謡祭』や『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE2022』が放送されているとき、「紅白大丈夫」などのフレーズがトレンドランキングにあがっていた。『日本レコード大賞』が放送される前にいくつかの音楽フェス型特番を見た人は、「このアーティストはもう見たし、お腹いっぱい」という気持ちがあるのかもしれない。
「レコ大」か「アメトーーク」か
最後にもう1つあげておきたいのは、『日本レコード大賞』という番組名。かつてはレコードだったが、CDに変わり、現在は配信を含むさまざまな楽曲が対象となっている。つまり、すでにレコードではなく、CDですらなくなりつつある今、「看板に偽りあり」「時代遅れの賞レース」などとみなされている感は否めない。
これまで63回にわたって放送されてきた歴史の長い番組であっても、時代に合わなくなったところは調整が求められているではないか。ただこの点については、やはり歴史の長い『NHK紅白歌合戦』も同様で、「男女で紅白に分けるのは今の時代に合わない」「マイノリティを無視せず時代に合わせてアップデートすべき」などの声があがっている。
30日夜は、『日本レコード大賞』と同じ時間帯に、『アメトーーク! 5時間半SP』(テレビ朝日系)、『超ド級! 世界のありえない映像大賞15』(フジテレビ系)も放送される。いずれの特番も2022年の大賞が発表されるのだが、前者は12年連続、後者は3年連続で『日本レコード大賞』の裏番組として30日に放送されてきた。
そのためネット上には「30日はレコード大賞よりアメトーーク大賞」なんて声も多いだけに、“大賞”の主役をめぐる特番同士の戦いにも注目してみてはいかがだろうか。
中国政府の無謀な「コロナ撤廃」世界が困惑
2022.12.30
中国の「国境再開」発表を受け、これまでに、イタリア、日本、マレーシア、台湾、インドも、入国する中国人乗客に対するより厳しい検査措置を発表しました。アメリカも今回、これに追随したかたちとなった。
これに対して中国政府は、新型ウイルス対策ルールは「科学的」根拠に基づいて導入されるべきで、一部の国やメディアが中国の感染状況について「誇張」していると非難した。
固定金利をみずほ銀行が0.3%引き上げ
2022.12.30
【解説】2023年5つの展開「ウクライナ戦争」
2022.12.30
ウクライナでの紛争が2年目に入ろうとしている。2023年にはどんな展開が予想されるのか。軍事アナリスト5人に聞いた
「ロシアの春季攻勢が鍵」
マイケル・クラーク(英戦略研究所アソシエイト・ディレクター)
ユーラシア大陸の大草原を越えて他国を侵略しようとする者は、いずれその草原で冬を越さざるを得なくなる。
ナポレオンもヒトラーもスターリンも、大草原に冬が訪れると軍隊を動かし続けた。そして今、侵略が後退しているウラジーミル・プーチンは、軍隊を冬ごもりさせ、春に新たな攻勢を仕掛けようとしている。
双方が小休止を必要としているが、ウクライナのほうが優れた装備と戦意を持っている。そして、少なくともドンバス地方では、ウクライナが圧力をかけ続けると予想される。
クレミンナとスヴァトヴェの周辺では、ウクライナが大きな進展をみせようとしている。ロシア軍を約65キロメートル後退させるもので、ほぼ侵攻を始めた場所まで押し戻すことになる。
ウクライナは、大きな戦果が目前にあれば、停戦には消極的になるだろう。しかし、ヘルソンを奪還したウクライナが、南西部での攻撃を一時停止させる可能性はある。
ドニプロ川の東側に渡り、クリミアへと続くロシアの脆弱な道路や鉄道網に圧力をかけるというのは、ウクライナにとっては過大なシナリオかもしれない。しかし、ウクライナが奇襲攻撃を仕掛ける可能性は排除できない。
2023年は、ロシアの春の攻勢が鍵を握るだろう。プーチンは、新たに動員された兵士のうち約5万人はすでに前線におり、25万人は来年に向けて訓練中だと認めている。
これらロシアの新たな部隊の命運が戦場で決するまでは、戦争は続くだけだ。
それ以外に考えられるのは、短期間の不安定な停戦だけだ。プーチンは侵攻をやめないと明言している。そしてウクライナは、生存をかけてなお戦っていると表明している。
「ウクライナが国土を奪還」
アンドレイ・ピオントコフスキー(米首都ワシントン在住の科学者・アナリスト)
ウクライナは遅くとも2023年春までに、領土の一体性を完全に回復して勝利する。2つの要因から、この結論に至っている。
ひとつは、ウクライナ軍とウクライナ国民全体の意欲、決意、勇気だ。これらは近代の戦争史上、類を見ないものだ。
もうひとつは、長年にわたってロシアの独裁者をなだめてきた西側諸国が、ようやく目の前の歴史的課題の重大さを認識するに至ったという事実だ。これは、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長による、最近の次の発言によく表れている。
「私たちが払う代償はお金だ。一方、ウクライナ人が支払う代償は血だ。もし権威主義の政権が、武力は報われると考えるようになれば、私たちはもっと高い代償を払うことになる。そして世界は、全員にとってさらに危険な世界になる」
ウクライナの必然的な勝利が実現する正確な時期は、NATOがどれだけ早く、形勢を一転させる新たな兵器(戦車、航空機、長距離ミサイル)のパッケージを提供できるかで決まるだろう。
私は今後数カ月(もしかすると数週間)以内にメリトポリが重要な戦地になるとみている。ウクライナはメリトポリを制圧した後、難なくアゾフ海へと移動し、ロシアのクリミアへの補給線と通信線を実質的に断つだろう。
ウクライナの壊滅的な前進を受け、ロシアは形式的な協議の場で、正式に降伏することになる。
そして、戦勝国のウクライナ、イギリス、アメリカが、新たな国際安全保障を構築する。
「終わりが見えない」
バーバラ・ザンチェタ(英キングス・コレッジ・ロンドン戦争研究学部)
ウラジーミル・プーチンは、ウクライナが強力な隣国ロシアの行動を消極的ながら受け入れ、他の国々は大した関与はしないだろうと予想していた。この深刻な誤算により、紛争は長期化し、終わりが見えない状況となっている。
この冬は厳しいものとなるだろう。ロシアはウクライナのインフラを攻撃し、すでに粉々になったウクライナ国民の士気と忍耐をくじこうとする。だが、ウクライナの回復力が驚異的なことは明らかになっている。人々は断固、立ち向かうだろう。そして戦争は、どんどん長引く。
交渉の見通しは暗い。和平交渉を可能にするには、少なくとも一方の側が核心的な要求を変える必要がある。そうしたことが起きたことを示す証拠も、今後すぐに起こることを示す証拠もない。
では、どのように終わるのか。
物的および人的な戦争の代償が、ロシアの政治エリートのやる気をそぐかもしれない。鍵はロシアの国内情勢にある。
アメリカのヴェトナム戦争や、ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻など、誤算が決定的となった過去の戦争は、そうした流れでしか終わっていない。誤算をした国で政治状況が変化し、撤退が唯一の現実的な選択肢となった。撤退は「名誉ある」ものの場合もあれば、そうでない場合もある。
ただしこれは、西側諸国がウクライナ支援を堅持した時だけ実現可能となる。戦争の代償をめぐる圧力は、各国で高まっている。
悲しいことに、この戦いは政治的、経済的、軍事的な決意の戦いとして長期化し続けるだろう。そして、2023年の終わりになっても、おそらくまだ続いているだろう。
「ロシアの敗北しかない」
ベン・ホッジス(元米陸軍駐欧州司令官)
キーウでの勝利パレードを計画するには時期尚早だが、現在はすべての勢いがウクライナ側にあり、この戦争にウクライナが勝つと確信している。おそらく2023年内に勝利するだろう。
冬の間は動きが鈍くなる。だが、ウクライナ軍にはイギリス、カナダ、ドイツが提供した防寒装備があり、ロシア軍より対応力があるのは間違いない。
来年1月までに、ウクライナがクリミア解放作戦の最終段階に入ることもあり得る。
歴史から、戦争で試されるのは意志と兵たんだとわかっている。ウクライナ国民と兵士の決意、そしてウクライナの物流状況の急速な改善を見れば、ロシアの敗北以外の結末は考えられない。
この結論は、ロシアがヘルソンから撤退したことも根拠の一部となっている。ロシアの撤退はまず、ウクライナ国民を心理的に後押しした。第二に、ロシア政府にとって大きな失態となった。そして第三に、ウクライナ軍に戦略上重要な優位性をもたらした。クリミアに入るすべての道が、ウクライナの兵器システムの射程内に収まった。
2023年末には、ウクライナはクリミアに対する主権を完全に回復しているだろう。ただ、ロシアがセヴァストポリ駐留の海軍の一部を段階的に撤退させるといった、何らかの合意はなされるかもしれない。撤退が完了するのはおそらく、ロシアがクリミアを不法併合する前の条約で定められていた時期(2025年ごろ)の終わりごろになるのではないか。
マリウポリやベルディヤンスクなどアゾフ海沿岸の重要な港で、ウクライナによるインフラの復興が進むだろう。ドニプロ川からクリミアに水を送る北クリミア運河の再開も、重要プロジェクトとして注目される。
「同じことの繰り返し」
デイヴィッド・ゲンデルマン(イスラエル・テルアビブ在住の軍事専門家)
「どのように終わるか」ではなく、双方が次の局面で何を成し遂げたいかを考えてみよう。
ロシアの動員兵士30万人のうち、すでに戦闘地域に入っているのは半数ほどでしかない。それ以外の兵士と、ヘルソン撤退で動けるようになった部隊が、ロシアの攻勢のチャンスをつくっている。
ロシアによるルハンスク州とドネツク州の占領は続くだろう。しかし、南部からパヴログラードまで制圧し、ドンバスのウクライナ軍を包囲するといったロシアの大躍進は、可能性が低いだろう。
それより現実的なのは、現在の戦術が続くことだ。ウクライナ軍は、バフムートやアヴディフカ地域でそうしたように、狭い範囲でゆっくり前進するかもしれない。スヴァトヴェ・クレミンナ地域でも同じ戦術をとる可能性がある。