プリゴジン氏とプーチン異例の会談「クレムリンで3時間」
2023.07.14



■プリゴジン氏とプーチン大統領異例の会談(29日クレムリンで3時間)

プーチン大統領とプリゴジン氏との会談の情報です。先月29日に、ワグネルの指揮官らも交えクレムリンで3時間近く会談したということです。

ウクライナ軍の反転攻勢が続く一方で、ロシア国内に目を向けると、依然その動向が注目されているのが民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏です。このプリゴジン氏への対応をめぐってプーチン政権は揺れ動いてきました。

先月24日に武装反乱が発生すると、プーチン大統領は「裏切りだ」と強く非難。軍に断固たる措置を取るように指示しました。

しかし、その2日後には、ワグネルの戦闘員に対し、国防省などと契約を結ぶか、あるいはベラルーシに行けば安全を保証すると選択肢を示したのです。そしてその翌日には実際に、“プリゴジン氏がベラルーシにいる”という情報も出てきました。

一方で、今月5日には、今度はプリゴジン氏の信用を失墜させるかのような情報を国営メディアが報じます。

こうした中で、日本時間の10日夜、飛び込んできたのが、こちら。プーチン大統領とプリゴジン氏との会談の情報です。先月29日に、ワグネルの指揮官らも交えクレムリンで3時間近く会談したということです。

なぜこのタイミングで会談の情報が明らかになったのか。そして大統領とプリゴジン氏の関係はどうなっているのか。旧ソビエト時代から長年ロシア取材を続けてきた石川一洋専門解説委員に聞きました。

6月の会談の情報 なぜこのタイミングで明らかに?
Q.プーチン大統領とプリゴジン氏との先月の会談の情報、このタイミングで発表された狙いはどこにあるのでしょうか?

会談が行われた29日は反乱終結からわずか5日後です。プーチン大統領はこの日、ロシアの起業家たちとの集会に参加して、絵を描くなどして反乱は収束したと余裕を見せていました。しかもその2日前に、大統領みずから反乱について裏切り者と非難していました。

しかし、プーチン大統領みずからが、その同じ日に3時間にわたって裏切り者と呼んだプリゴジン氏らワグネルの指導部と3時間もの時間をとって、会談するということは異例なことです。

プーチン大統領にとってのこの反乱の衝撃の大きさを示すとともに、大統領とプリゴジン氏およびワグネルの近さを示し、裏切り者と切って捨てたように見せながら、プーチン閥の身内として遇していることを示しています。

確かにロシアの国営メディアでは、プリゴジン氏の豪華な私邸を暴いたり、これまで褒めたたえていたワグネルの軍事的な功績は大きなものではないとしたり、手のひら返しのネガティブキャンペーンが続いています。
フランスの雑誌報道受けクレムリンが認める形に
しかし今回、会談の事実は、まずフランスの雑誌リベラシオンが報道したのを受けて、ペスコフ報道官がその報道を確認するという形で認めました。フランスの報道は欧米情報筋としていますが、おそらくクレムリンあるいはロシアの諜報機関によるリークで、それをクレムリンが公式に認めるという複雑な発表の形式をとっています。
ただ、クレムリンあるいはプーチン大統領としては、そのネガティブキャンペーンからは距離を置きたいということで、こうした複雑なリークの方式を取ったのではないかと思います。

伝えたいメッセージはただ一つ、ペスコフ報道官の口から「ワグネルの指揮官たちは、プーチン大統領支持のための行動で、これからも祖国のために戦う」と伝えている点です。クレムリンとしては、ワグネルを含めてプーチン大統領の周囲に国は結集していると強調したかったのだと思います。

合意事項は「再び裏方に戻る」か 今後への影響は

Q.この会談、何が中心に話し合われたのでしょうか?ワグネルの今後やロシア軍への影響をどう見ていますか?

A.合意事項は「ワグネルはロシアのために戦い続ける」ということに尽きるのではないでしょうか。

ロシア軍では、反乱以後動向が伝えられていなかったゲラシモフ参謀総長の映像を国防省が公開しました。

プリゴジン氏は、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長こそ裏切り者だと主張していたのですが、国防省はショイグ国防相およびゲラシモフ参謀総長の姿を積極的に公開することで国防省と軍は動揺していないと示したのでしょう。

ただ、3時間の会談でプリゴジン氏らは誰が裏切り者なのか自説を繰り返したのでしょう。

そのリークを今流すことは、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀長に対しても、クレムリンからのお前たちは勝者ではないという一種の警告だと思います。
プリゴジン氏については、彼がパブリックでこれだけの影響力を得たのは、ウクライナへの軍事侵攻に参加して、国防省への批判を繰り返したからです。それまでは、表で発言することはほとんどありませんでした。

合意事項としては、再び裏方に戻るということではないかと思います。

■トクマク露軍拠点壊滅「200人死亡」

ザポリージャ州トクマク露軍拠点攻撃、露軍兵士200人と指揮官が死亡した

ウクライナ南部ザポリージャ州メリトポリのイワン・フェドロフ市長は13日までに、ウクライナ軍がロシアの支配下にある同州トクマクのロシア軍基地を攻撃し、ロシア軍兵士最大200人と、トクマクの指揮官が死亡したと明らかにした。

フェドロフ氏は「ウクライナ軍がトクマクにある占領者の陣地への攻撃を成功させた」とSNS「テレグラム」で述べた。

トクマクの鍛造工場に置かれているロシア軍基地が攻撃を受けたと情報機関が報告。

親ロシア派のソーシャルメディアは11日、「空軍部隊がトクマクに大規模攻撃を行った。初期情報では攻撃6回が記録されている」と伝えた。

ロシアが任命したザポリージャ州の当局者、ウラジーミル・ロゴフ氏も同日、トクマクでの一連の爆発に言及し、空き地での火災の様子を映した動画を投稿した。撮影場所は特定できなかった。

ウクライナ軍はロシア軍の重要な防衛拠点であるトクマクを定期的に攻撃目標にしていた。

露軍が補給拠点として占拠する南部ザポリージャ州メリトポリやトクマクで、複数回の爆発があった。ウクライナ側が爆発物を仕掛けた可能性がある。メリトポリはウクライナ軍が大規模な反転攻勢で奪還を目指している。

■ロシアはいつまでも戦争を続けられない

バイデン米大統領は13日、フィンランドの首都ヘルシンキで記者会見し、ロシアによるウクライナ侵略を巡り「ロシアがいつまでも戦争を続けられるとは思わない」と述べた。

バイデン氏は記者から今後も戦争が続く可能性を問われ、「ロシアの資源や能力の観点」から永久に続くことはないとの考えを示した。また、「戦争を継続することが経済的、政治的にロシアの国益にならない」とプーチン露大統領が判断する状況が訪れる可能性を指摘。「戦争が何年も続くとは思わない」と述べた。

ただ、戦争が続く期間を「正確に予測することはできない」とした。

またバイデン氏は、「ウクライナが攻勢で大きな前進を果たし、交渉による決着がつくことを望む」とも述べ、和平交渉による終戦に期待を示した。
2023.07.14 09:03 | 固定リンク | 戦争
秦剛外相失踪か
2023.07.13
中国・王毅氏が出席へ ASEAN関連会合、秦剛氏は体調不良で欠席 実は失踪

中国外務省は11日、インドネシアのジャカルタで同日から始まった東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相級会議に、中国から共産党外交部門トップの王毅(ワンイー)政治局員が出席すると発表した。本来の担当の秦剛(チンカン)国務委員兼外相は体調不良により、欠席するという。

中国外務省の汪文斌副報道局長は11日の定例会見で、秦氏が「体調の理由により、今回の会議に出席できない」と説明した。秦氏は6月25日を最後に動静が伝えられていなかった。香港メディアは同氏が新型コロナウイルスに感染した可能性があると指摘していた。

王氏は昨秋に昇格するまで、秦氏の前任としてASEANの会合にも出席してきた。中国側は格上の王氏を「代理」として出席させることで、ASEANを重視する姿勢を示す狙いもあるとみられる。

ASEANの関連会合には日米中など主要国も参加する。日本からは林芳正外相が出席する。期間中、林氏と王氏が会談する可能性も
2023.07.13 22:04 | 固定リンク | 国際
岸田首相「NATO軍事協力できず」
2023.07.13
岸田首相、NATOと軍事協力できず NATOウクライナ加盟支える決意  ロシア、中国批判、北(ICBM)威嚇


■NATO、ウクライナ加盟支える決意

戦時中のジレンマ 苦渋の決断

北大西洋条約機構(NATO)首脳会議はウクライナに加盟時期を示さなかったが、長期的な支援計画や加盟手続きの短縮という「異例の処遇」で、ウクライナの実質的な統合を進める。ロシア軍への反攻成功に向けた支援や必要な国内改革への支援も継続し、加盟までの道のりを支えていく構えだ。

「これほど加盟に関して強い文言が示されたことはない。一筋縄ではいかない決断だ」。NATOのストルテンベルグ事務総長は11日の記者会見で強調した。

首脳らはウクライナに対し加盟の時期は明示しなかったが、「条件が整えば、加盟に向け招待する」と宣言。同時にNATO軍との相互運用性を確保する支援計画を策定し、共同で意思決定もできる協議枠組みとして理事会も設けた。実態としての統合を進めることで、加盟前の準備として必要な「加盟行動計画」は省略可能と判断もした。

ストルテンベルグ氏は将来的な加盟だけを謳(うた)った2008年の声明と「大きな違い」があり、「加盟への明確な道筋」と強調した。

首脳会議がウクライナに加盟時期などを明示できなかった背景には2つの理由がある。

ストルテンベルグ氏によると、1つはウクライナが戦時中にあること。戦争の終結後、ロシアの再侵略を抑止するためにはNATO加盟が最も効果的だ。だが、今、加盟に向けて具体的な措置をとり、ロシアが攻撃をエスカレートさせれば、NATOとの直接的な対決になりかねない。

加盟問題を巡ってはバイデン米政権やドイツが特に慎重で、とりわけロシアの脅威にさらされるウクライナ周辺の東欧諸国が積極的だった。だが、バルト三国の一つであるエストニアのカラス首相は11日、NATO加盟を切望するウクライナのゼレンスキー大統領について、「落胆は理解するが、私たちが今できるのは声明の内容までだ」と語った。声明内容はNATOとしてはジレンマを抱える中での苦渋の決断だった。

ストルテンベルグ氏が挙げたもう一つの事情が政府や軍の「ガバナンス」だ。ウクライナではかねて汚職が深刻であり、過去に加盟した国も事前に対処を求められた。サリバン米大統領補佐官は11日、「われわれが改革の道筋を示し、ウクライナに取り組んでもらう」と強調。首脳会議も声明で、進捗(しんちょく)状況を定期的に評価しながら改革を後押しする方針を示した。

■岸田首相、NATOと軍事協力できず

岸田首相「日本とNATOは絆を深めている」 NATO事務総長と会談で“連携を深化したい”と強調するだけで、本筋は躊躇のようだ 日本の防衛も中途半端のママだ

岸田首相は日本時間12日午後、リトアニアの首都ビリニュスで、NATO・ストルテンベルグ事務総長と会談した。

岸田首相は「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分」として、「戦略的利益を共有する日本とNATOは絆を深めている」と述べた。

その上で岸田首相は、「インド太平洋への関心と関与を高めるNATOとの連携を一層深化していきたい」と強調した。

また、サイバーセキュリティ・偽情報対策等の分野での協力を盛り込んだ、日本とNATOの新たな枠組み協力文書「日・NATO国別適合パートナーシップ計画(ITPP)」を発表。

「ITPP」では、安全保障課題として、サイバーセキュリティ・偽情報対策・AI等新たな破壊技術・宇宙・海洋安全保障等、4つの優先課題と16の協力分野で、日本とNATOが協力するとしている。

■首相、NATOと「関係強化」

ウクライナに非殺傷性装備品供与

岸田文雄首相は12日、リトアニアの首都ビリニュスで開かれている北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席した。NATOとの更なる関係強化に意欲を示し、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対して、殺傷性のない装備品の供与を進めていく考えを表明した。

首相は「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、ウクライナ侵略がグローバルな問題であるとの認識は広く共有されている」と指摘。その上で「欧州大西洋の同志国の間でもインド太平洋への関心と関与が高まっていることを歓迎する」と述べた。

 ウクライナ情勢に関しては「一日も早くウクライナに公正で永続的な平和をもたらすべく、国際社会の連携を一層強化していく必要がある」と強調し、日本がNATO信託基金に拠出した3000万ドルを活用して、新たに対無人航空機検知システムなど殺傷性のない装備品の供与を進めていく考えを示した。

■ドローンなど検知する装備品」の供与を表明

岸田総理 ウクライナに「無人航空機=ドローンなど検知する装備品」の供与を表明

リトアニアで行われているNATO=北大西洋条約機構の首脳会議に出席した岸田総理は、ウクライナへの支援として、ドローンなど無人航空機の動きを把握する装備品の供与を進めると明らかにしました。

会議で岸田総理は、ロシアによるウクライナ侵攻はヨーロッパだけではなく「グローバルな問題である」と指摘し、「力による一方的な現状変更は世界のどこであっても許されない」と訴えました。

また、G7広島サミットでも、ウクライナへの支援とロシアに対する制裁を継続していくことを確認したと強調。NATOの基金に拠出した3000万ドル=およそ42億円を活用し、今後、ウクライナに対し、新たに無人航空機=ドローンを検知するシステムなど、殺傷性のない装備品の供与を進める考えを示しました。

■NATO声明にロシア反発

「国境に戦力、逃げ場ない」NATO首脳会議が将来的なウクライナの加盟を見据えた声明を発表したことに対して、ロシアは「対露敵視政策」だとして反発した。

タス通信によると、アントノフ露駐米大使は12日、「NATOの反露性が改めて示された」と指摘。「NATOは露国境にさらに多くの戦力を配備しようとしている。ロシアには逃げ場所がない」とし、ウクライナのNATO加盟阻止を目標の一つとした軍事作戦が「完遂」されなければならないとの認識を示した。

ペスコフ露大統領報道官も、ウクライナのNATO加盟は「欧州の安全保障にとって危険だ」と主張。北欧スウェーデンのNATO加盟が決定したことに関しても「ロシアは対抗措置を取る」と警告した。

一方、ショイグ露国防相は11日、ウクライナ軍が反攻作戦を開始した6月上旬以降の約5週間で2万6千人以上の死傷者を出し、戦車など3千以上の兵器を失ったとし、「反攻はどの方面でも目標を達成していない」と主張した。また、米国が殺傷能力の高いクラスター(集束)弾のウクライナへの供与を決定したことについて、実際に供与されれば「ロシアもクラスター弾を使う」と警告した。

ロシアはウクライナ軍の反攻が失敗したと印象付けることで、NATO諸国にウクライナ支援を躊躇(ちゅうちょ)させる思惑だとみられる。ただウクライナは、ロシアの戦果発表は虚偽だと指摘。露国内でも戦果の過大発表を疑う声が出ており、ロシアの主張の真偽は不明だ。

米シンクタンク「戦争研究所」は10日、反攻開始以降の約5週間でウクライナ軍が奪還した領土は計253平方キロメートルに達し、露軍が過去半年間超で占領した面積282平方キロメートルに匹敵するとの分析を公表した。

■中国「冷戦思考だ」批判 

NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議で採択された中国に対する共同声明について、中国外務省は「冷戦時代の考え方だ」と批判しました。

11日に開幕したNATO首脳会議では「中国の野心と威圧的政策はNATOへの挑戦だ」と明記された共同声明が採択されました。

これを受け、中国外務省の報道官は「冷戦時代の考え方とイデオロギー的な偏見に満ちていて、断固として反対する」と反発しました。

そのうえで「中国を歪曲して中傷し嘘をでっち上げることを直ちにやめ、平和と安定のために建設的な役割を果たすべきである」と述べました。

また、「中国は他国を侵略したこともなく内政干渉したこともない」と牽制(けんせい)したうえで、アジア太平洋を混乱させているのはNATOだと強く批判しました。

■北朝鮮、ICBM級ミサイル発射で 過去最長“74分間” 威嚇?妹・与正氏“発言”狙いは

北朝鮮が12日朝、発射したICBM級のミサイル。飛行時間は過去最長となる74分に及びました。このタイミングでのミサイル発射について妹・与正(ヨジョン)氏の発言が注目を集めています。

■北朝鮮 ICBM級ミサイル発射か

 現在、リトアニアで行われているNATO=北大西洋条約機構の首脳会議。対北朝鮮で結束を強める日・米・韓のトップも集まっていて、夜にも日韓首脳会談が予定されています。

 岸田総理大臣:「すでに(北朝鮮側へ)抗議も行いました。日米・日米韓等での緊密な連携を図り、平和と安全の確保に万全を期していきたいと思う」

 午前10時前、平壌近郊から発射されたICBM=大陸間弾道ミサイルは、高度6000キロ以上と推定され、北海道・奥尻島の西およそ250キロの日本の排他的経済水域の外に落下したとみられます。また、通常より角度を付けて打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射され、これまでで最も長い74分間飛翔(ひしょう)したということです。

 官邸関係者:「間違いなくNATO首脳会議に合わせて発射したのでしょう。国際社会に注目してもらいたいという意思表示だろう」

ミサイル発射を巡り注目されているのが、今週になって繰り返される金与正氏の発言です。

■撃墜も?威嚇の妹・与正氏 狙いは

12日朝、再び発射された北朝鮮の長距離弾道ミサイル。これに先立ち、11日と10日、金正恩総書記の妹・与正氏はアメリカ軍の偵察機が北朝鮮空域に侵入したとして、相次ぎ談話を出していました。

金与正氏の談話(朝鮮中央通信 きのう):「繰り返される無断侵犯の際には米軍が非常に危険な飛行を経験することになるだろう」

つまり、撃墜もあり得るという威嚇です。

与正氏は同じ談話のなかで、韓国の呼び方を従来の「南朝鮮」などではなく「大韓民国」と表現。北朝鮮側に政策変更があったのではないかとの見方も出ていました。

今回のミサイル発射は、アメリカの偵察行為への反発とともに、NATO首脳会議での日・米・韓の連携にくさびの打ち込みを図ったとみられます。
2023.07.13 05:43 | 固定リンク | 防衛
りゅうちぇるさんが自殺
2023.07.12



ryuchellさんはモデルのpeco(ぺこ=27)と2016年12月31日に結婚を発表し、18年7月に第1子となる男児が誕生したが、22年8月に離婚を発表していた。

◆ryuchell 1995年(平7)9月29日、沖縄県宜野湾市出身。本名・比嘉龍二。高卒後にアパレル関係の仕事に就くために上京。読者モデルとして活躍しながら原宿の古着屋「SUPER WEGO」に勤務。そこでpecoと出会い、14年5月から交際開始。16年12月31日に結婚し、18年7月に第1子の男児誕生。21年11月に芸名を、りゅうちぇるからryuchellに変更することを発表。22年8月にpecoと離婚した。テレビ等の露出が増え始めた当初から中性的なキャラクターで「ジェンダーレス男子」として注目を集めていた。

捜査関係者によりますとタレントのryuchell(りゅうちぇる)さんが12日午後、東京・渋谷区の事務所で亡くなっているのが見つかりました。現場の状況などから自殺をはかったとみられるということです。

事務所のホームページによりますと、ryuchellさんは原宿でショップ店員をするかたわら読者モデルとして活躍。

その後、テレビのバラエティ番組出演をきっかけに人気を集め、一児の父となったいまは、育児やダイバーシティに関する発信が注目されていました。

厚生労働省や自殺の防止活動に取り組む専門家などは、悩みを抱えていたら自分だけで解決しようとするのではなく、専門の相談員に話を聞いてもらうなどして欲しいとよびかけています。
2023.07.12 21:01 | 固定リンク | エンタメ
ウクライナ軍の「驚くべき攻撃力」
2023.07.10
ロシア軍のスホイ34戦闘爆撃機

■ロシア軍5機撃墜―ウクライナ軍


ウクライナと国境を接するロシアのブリャンスク州で13日にロシア軍の戦闘機など5機がほぼ同時に撃墜された

ロシア経済紙コメルサント(電子版)によると、ウクライナと国境を接するブリャンスク州で13日、ロシア軍のスホイ34戦闘爆撃機、スホイ35戦闘機、ミル8ヘリコプター2機の計4機が墜落した。同じ時間帯に撃墜されたもよう。保守系メディアの情報では、乗員計9人が死亡したという。

ウクライナが大規模な反転攻勢を予告する中、前線で戦闘が激化している。撃墜の可能性が高いとみられているが、それぞれのミサイルがウクライナ領とロシア領のどちらから発射されたかを巡り、情報が交錯している。

タス通信などによれば、スホイ34の乗員2人は緊急脱出できなかった。また、同機とヘリ1機の墜落現場は、約50キロしか離れていない

州内で「破壊工作員」が携行式地対空ミサイルを使った可能性も排除できず、警備が強化されたと伝えられる。これまでウクライナ軍がドローンでロシア空軍基地を攻撃したとみられる例はあるが、併合されたクリミア半島を除き、ロシア領内で飛行中の軍用機の撃墜が疑われるケースはほとんどなかった。

■「パトリオットで迎撃」

5月13日、ウクライナに近いロシア西部ブリャンスク州上空で、高性能攻撃機「Su-34」を含む複数のロシア軍機が相次いで撃墜されました。撃墜の事実が報じられた直後から、ウクライナ軍が地対空ミサイル(SAM)で迎撃したのではないかと言われていましたが、ウクライナ軍が公開した映像から、米国製パトリオットSAMによるものだったことが明らかになっています。

公表されている情報は多くはありませんが、撃墜の状況と合わせると、ウクライナ軍がかなり大胆で緻密な作戦を実行したことが分かります。

以下では、パトリオットの運用者(TD、TCO)だった筆者の経験を踏まえ、この迎撃作戦がどのようなものだったのか解説したいと思います。

■ロシア軍が行っていた攻撃

この迎撃作戦が実行された当時、ロシア軍が滑空爆弾を運用し、ウクライナ軍に被害を与えているとの情報が流れていました。ロシア軍が使用している滑空爆弾は、自衛隊も運用する米軍のJDAMに相当する「KAB-1500」だと見られています。

 KAB-1500には誘導方式や翼形状などにより複数のバージョンがありますが、この迎撃作戦時に使用されていたバージョンは不明です。一部の報道では、高高度から投下すれば40kmの滑空が可能な「UPAB-1500V」(KAB-1500のバージョンの1つ)だったとの情報もあります。

 5月13日の迎撃時、撃墜された機体は次の通りです。

・Su-34(戦闘爆撃機)×1
・Su-35(戦闘機)×1
・Mi-8MTPR-1(電子妨害ヘリ)×2
・Mi-8(汎用ヘリ)×1(おそらく、撃墜された際のパイロット救難用)

ヘリの撃墜数が2機だったのか3機だったのか議論がありましたが、撃墜時の動画が3種あった他、今回の動画公開で3機がカウントされていたため、3機で間違いないものと思われます。

ロシア側の攻撃がこの5機だけだったのか、もっと多かったのかは不明ですが、パトリオットが優先して攻撃するとは思えない汎用ヘリまで撃墜していることから推定すれば、この5機だけだったか、他の随伴機があったとしても少数だったと思われます。そのため、以下では、この5機により攻撃が実施されたことを前提に分析します。

各機の役割は、滑空爆弾を使用した攻撃役がSu-34、ウクライナが迎撃機を上げてきた場合に、その迎撃からSu-34を護衛するのがSu-35です。護衛はエスコートファイターと呼ばれる直接援護か、先行するエリアスイーパーですが、1機しかいないのであればエスコートファイターだった可能性が高いでしょう。電子妨害を行っていたヘリ、Mi-8MTPR-1は攻撃役の後方に位置しているため、スタンドオフジャマー(敵の射程圏外で活動する電子妨害機)です。ただし、ヘリの移動速度は遅いため、事前に進出し、Su-34とSu-35は、Mi-8MTPR-1を追い越すような形で進出したと思われます。

上記は、攻撃部隊の編成から考えられる動きですが、これを踏まえて各機の墜落地点を確認しておきます。

撃墜されたロシア軍機の墜落地点をプロットすると、下の地図のようになります。覚えておいていただきたいのは、Su-34でも国境から20kmほど、Su-35やMi-8は国境から40km以上も離れていたことです。

なお、ジャミングによって防護できる方位は限られるため、2機のMi-8とSu-34の墜落地点を結んだ南東方向への攻撃を意図していたと思われます。

不自然な点は、直援で近くにいなければいけないはずのSu-35の墜落位置ですが、パトリオットにとっての最優先目標であるSu-34が撃墜されたので、退避する途中で撃墜されたのではないかと思われます。

■パトリオット部隊の迎撃行動

ロシア軍機に対するウクライナ軍パトリオット部隊は、ブリャンスク州に近い国境付近に布陣していたと思われます。

パトリオットの射程は、対航空機では160kmにも及ぶため、国境から数十kmも離れた位置に展開していたとの見方もありますが、戦闘機や戦闘爆撃機のような高機動目標をそのような遠距離で射撃することはありません。160kmも離れていたら、旅客機が乗客に飲食を提供しながら行うような緩い旋回を行っただけでミサイルは命中できなくなります。

ロシア軍各機の墜落地点は、国境から20~40kmも離れていました。パトリオット部隊が国境まで進出したとしても、それだけの距離があったことになります。

当時、ウクライナにはパトリオット部隊が2個高射中隊しか存在しておらず、虎の子と言える存在だったことを考えれば、少なくとも迫撃砲で容易に攻撃できる距離は避けたはずです。最低でも国境から10kmは離れた位置に展開していたことでしょう。そうなると、Su-35やMi-8は、50km以上の距離で撃墜したことになります。ヘリのMi-8はともかく、Su-35は、ギリギリで撃墜できたのだと思われます。

この迎撃作戦は、パトリオット部隊にとっても国境に近づく必要性があり、リスクが高い作戦です。そのため、当時私はS-300やブーク(Buk)など、ウクライナが以前から使用していたSAMを使用し、国境間近まで進出して迎撃を行ったのだろうと思っていました。それだけに、今回の動画は衝撃だったのですが、この動画の衝撃は、迎撃手段がパトリオットだったというだけに留まらないものでした。

■公開動画から分かる衝撃の事実

今回の動画で注目の場面は、このシーンです。透過になっているため見づらいですが画面の左下に“PATRIOT”との文字があり、黒い大きな器材の側面に描かれたいくつものキルマーク(兵器のシルエット)が、このパトリオット部隊によるものだと分かります。

5月13日の戦果は、左から順にSu-35、Su-34、Mi-8×3が並んでいます。

ここまでは、この5月13日の戦果について述べてきましたが、実は他の部分にこそ、重要な情報があります。

まずは左の3つのキルマークです。

このキルマークは、形状がKAB-1500のものとなっており、滑空爆弾を表しているようです。また、キルマークは、左上から付けられるため、このパトリオット部隊が活動を始めた直後の戦果が、この3つの滑空爆弾だったということになります。文字部分を拡大してみましたが、5月の初旬と思われるものの、日付ははっきりとは分かりません。

滑空爆弾は、ミサイルと違い推進力を持たないため、滑空できるとは言っても滑空可能距離は数十kmに留まります。

ロシア軍機がウクライナ領内に長駆侵入できる状況ではなくなっているため、ロシア軍機は、国境からほど近いウクライナ軍拠点を滑空爆弾によって攻撃していたと思われます。それを防ぐため、このパトリオット部隊は、ウクライナ到着後、キーウ周辺に布陣することなく、この目標となっている拠点付近に布陣し、3発の滑空爆弾を迎撃していたことになります。

その上で、滑空爆弾を投下する母機を迎撃するため、若干前進し、5月13日の迎撃に至ったと思われます。

さらに、もう1つ注目すべきな戦果があります。5月21日のものです。

キルマークは、この日、Su-34×1、滑空爆弾×1を迎撃したことを示しています。5月13日の攻撃が失敗に終わったにもかかわらず、ロシアは21日に再攻撃を行い、返り討ちにあったようです。

ただし、13日と違い、迎撃される前に滑空爆弾を投弾したのか、パトリオットは母機であるSu-34と滑空爆弾の両方を迎撃しています。同日にドローンも撃墜していようなので、ドローンと連携した攻撃だった可能性もあります。

この21日のSu-34撃墜は、情報が明らかになっていないものでした。ロシア領内の情報統制が厳しくなっていたと思われます。そうした情報がなかったため、「Oryx」(オランダの軍事情報サイト)でのカウントにも入っていません。

これ以後のキルマークには、戦闘機や誘導爆弾が描かれておらず、弾道ミサイルや巡航ミサイル、それにドローンとなっています。ロシア軍が滑空爆弾による攻撃を断念したか、パトリオット部隊がキーウ方面などに移動した結果だと思われます。

■キンジャール迎撃、ロシア人部隊による攻撃との関係

このパトリオット部隊は、5月13日だけでなく21日にもSu-34などを迎撃していますが、5月16日には別のパトリオット部隊がキーウで6発のキンジャール(ロシア軍の航空機発射弾道ミサイル)を迎撃しています。

ウクライナ軍は、2つしかないパトリオット高射中隊の1つでキーウ防空を行い、もう1つの部隊をウクライナ北東部において、滑空爆弾による攻撃を行っていた戦闘爆撃機編隊を迎撃していたことになります。

ウクライナ北東部にどのような部隊が展開し、パトリオットが防護していたのか不明ですが、ウクライナ軍にとって重要で、ロシア軍にとっては脅威となる部隊が所在していたのでしょう。

ウクライナがこの動画を公開したことから、この部隊については既に伏せる必要がなくなっているはずです。もしかすると、5月22日に発生した、ウクライナ支援のロシア人部隊「自由ロシア軍団」と「ロシア義勇軍団(RVC)」によるロシア・ベルゴロド州への攻撃と関係があるかもしれません。滑空爆弾による攻撃は、ロシア・ブリャンスク州からでしたが、ロシア義勇軍団は3月に、このブリャンスク州に侵入し攻撃した実績があります。5月22日のロシア人部隊による攻撃は、ベルゴロド州へのものでしたが、同時にブリャンスク州への攻撃も計画されていた可能性が考えられるのです。ロシア側に察知され、重火器を滑空爆弾によって破壊されたため、ベルゴロド州への攻撃だけに絞ったのかもしれません。

■パトリオットによる迎撃はなぜ成功したのか?

次に、パトリオット部隊による迎撃が、なぜ成功したのか考えてみたいと思います。

戦術としてはSAMによるアンブッシュ(待ち伏せ)攻撃だったことが明らかです。これ自体は珍しいものではありません。攻撃編隊の予想経路にSAMを配置することで、防護目標への接近自体を阻止します。映画『トップガン マーヴェリック』で、接近経路周辺の山頂部に配備されていたSAMがこれです。

当然、攻撃側は対抗手段を準備した上で対地攻撃を行います。今回、ロシア側が迎撃を避けるために講じていた手段は次の2つです。

■滑空爆弾の使用

滑空可能距離は長くないものの、ある程度のアウトレンジが可能で、高高度から投弾する場合は、長射程、高高度対応能力を持つSAMでなければ母機を迎撃できません。また、滑空爆弾は、高速・急角度で落下してくるため、滑空爆弾自体を迎撃可能なミサイルが限られます。

ウクライナ軍が使用しているSAMの内、滑空爆弾およびその母機の迎撃に十分な性能があるのはパトリオットとS-300のみです。ただし、S-300はミサイル弾が枯渇していると言われています。

従来から保有しているブーク、新たに供与されたNASAMS、IRIS-Tは、国境ギリギリまで進出すれば、カタログ上は射程が届くことになりますが、性能限界近くでの射撃となるため、パトリオットを160km先に射撃する場合と同様に、目標が少しでも機動すると命中は期待できません。

■「Mi-8MTPR-1」によるジャミング(電子妨害)

短射程ミサイルには、レーダーを全く使用せずに射撃可能なシステムもありますが、中距離以上の対空戦闘ではレーダーが必須です。ロシア軍の攻撃部隊は、そのレーダーを妨害することで、目標の捕捉、ミサイルの誘導を妨害していました。

ただし、このMi-8MTPR-1のジャミング性能に関しては疑問を持っています。

Mi-8MTPR-1は、「Rychag-AV」と呼ばれる電子戦機器を機体後部の左右に2機搭載しています。妨害方位に機体側面を向け、左右どちらか一方のRychag-AVを作動させることで妨害を行います。国籍標章である赤い星の前にある小さな四角形の物体が、Rychag-AVのアンテナです(下の写真)。

効果に疑問を抱くのには、複数の理由があります。

まず、電子妨害では、妨害する対象のアンテナに十分な電力密度となる電磁波を照射しなければ効果を及ぼせません。Mi-8がヘリとしては大型とはいえ、Rychag-AVに十分な電力を供給できているか疑問なのです。

護衛する機体に随伴するエスコートジャマーや、もっと前方に出るスタンドインジャマーであれば、妨害対象との距離が近いため、出力が小さくとも効果を及ぼせるのですが、Mi-8MTPR-1は、それが可能な機体ではありません。

また、Rychag-AVのアンテナが平面形状であるため、フェーズドアレイレーダーだと思われます。フェーズドアレイレーダーでは、各アンテナ素子が放射できる電波の出力に限界があるため、高出力レーダー=大面積となります。しかし、Rychag-AVのアンテナは非常にコンパクトであるため、やはり出力が低い可能性があります。

さらに、公開されている内部写真を見る限り、Rychag-AVはアクティブ式のフェーズドアレイレーダーではなく、パッシブ式、あるいはロットマンレンズ式のようです。

パッシブ式であれば、対応できる周波数が少なく、同時に妨害を行うSAMの種類が限定されている可能性があります。その反面、必要となる電力が少なくて済みます。ロットマンレンズ式であれば、広帯域の送信が可能であり、同時に多種のSAMに妨害が可能となりますが、反面、出力の点ではさらに厳しくなります。

また、Mi-8の飛行性能も、ジャミング性能に悪影響を及ぼしている可能性があります。前述したとおり、ジャミングは、防護できる方位が限られますが、これは水平方向だけに留まりません。

防護したいSu-34は、Mi-8MTPR-1よりも前方に進出しているため、たとえ同高度を飛行していたとしも、迎撃するSAMから見るとSu-34は上方に見えることになります。滑空爆弾を投下するためには高高度から投弾することが望ましいですが、Mi-8の実用上昇限度は4500mしかありません。SAMから見た場合に、Mi-8MTPR-1は水平線に近く、Su-34は見上げる位置にあった可能性が濃厚です。対応可能な高低角から外れるため、十分なジャミングができなかった可能性があるのです。

以上の点から考えると、滑空爆弾の迎撃を行っていたウクライナ軍としては、S-300を持ってくる、あるいはパトリオットを前進させ、Mi-8MTPR-1によるジャミングを回避すれば、Su-34を迎撃できる状況だったのでしょう。

S-300については、残弾が枯渇している上、システムも大型で衛星などで察知されやすい装備です。さらに、使用している周波数などの電波諸元もロシア側が熟知しており、電波によっても察知、対応されやすいため、パトリオットが使用されたものと思われます。

パトリオット自体も、決して新しいシステムではないため、ロシアも電波諸元等はある程度承知していると思われます。滑空爆弾を迎撃していた時点で、存在は察知していたため、Mi-8MTPR-1を2機も飛行させ、攻撃を支援していた可能性が大です。

それでも、前述したとおりジャミングとしては不十分だったため、レーダーで捕捉、追随し射撃可能だった可能性があります。

また、5月13日以前の滑空爆弾のみを迎撃していた際も、パトリオットが母機であるSu-34に対しても射撃を行っていた可能性は高いと考えられます。攻撃は行ったものの、命中していなかったと考える方が妥当です。

攻撃を受けたSu-34は、パトリオットのレーダーに捕捉されていることをレーダー警戒装置で判断できるはずです。ただし、パトリオットは、TVM(Track Via Missile)と呼ばれる特殊な誘導方式を採っており、ミサイルが命中する少し前まで、Su-34は、いわゆる「ロックオン」と呼ばれる状態を感知することができません。中間誘導の段階では、ただ単にレーダーに捕捉されている場合と同様に電波が照射されているからです。

それでも、終末誘導のTVMの電波を捉えて回避する。あるいはこのTVMの電波をMi-8MTPR-1で妨害することで、命中を避けていたと思われます。

■PAC-3弾が使用された可能性

5月13日と21日に、パトリオットによる迎撃が成功した理由には、前述のようにパトリオットを前進させた可能性が考えられますが、もう1つ、パトリオット部隊が別の戦術をとった可能性があります。それは、PAC-3弾を使用した可能性です。

PAC-3弾は、言わずと知れた弾道ミサイル迎撃用のミサイルです。ですが、決して対弾道ミサイル専用ではありません。パトリオットの後継として計画されている中距離拡大防空システム(MEADS)では、対航空機を含め、PAC-3の改良型ミサイルが選択される見込みです。

PAC-3弾は、航空機など翼によって揚力を発生させるABTと呼ばれる目標に対しては、PAC-2弾ミサイルよりも射程が短くなります。しかし、もともと弾道ミサイル対処を念頭に開発されたミサイルであるため、サイドスラスターを装備し、高高度での機動性能はPAC-2弾よりも高くなっています。

Su-34は、滑空爆弾の射程を伸ばすため、米空軍のF-22が中国の気球を迎撃した時のように、ズーム機動で高高度まで上昇し、滑空爆弾を投下していたと思われます。ズーム機動は、通常の飛行が可能な高度で高速に達した後、強力なエンジンのパワーを用いて急角度で上昇する機動です。

投弾高度は1万5000mを超えていたでしょう。その場合、距離にもよりますがPAC-3弾の方が命中率を高くできた可能性があるのです。

さらに、PAC-3弾を使用した場合には、他にもメリットがあります。

PAC-3弾は、PAC-2弾と終末誘導の方式が異なり、シーカー(目標を捜索・探知・追尾するためのミサイルの構成装置)が使用している電波の周波数も異なります。Su-34の搭載するレーダー警報装置が、スレットテーブルと呼ばれる脅威と判断するための電波データベースに、PAC-2弾のTVM波しか登録していなかった場合、PAC-3弾が終末誘導の際に使用するKaバンドのレーダー波に対して警報を発することができません。

ロシア軍は、PAC-2弾のTVM波については、データベースに登録できていると思いますが、PAC-3弾のkaバンドレーダー波は、データを入手できていないと思われます。Su-34は、レーダー警戒装置が反応せず、ミサイルの接近に気付かないまま撃墜された可能性があるのです。

また、主目標であるSu-34にPAC-3弾を使用したことで、後方にいたMi-8MTPR-1や護衛役のSu-35の迎撃にも効果を及ぼした可能性が考えられます。

詳細は伏せますが、Su-34にPAC-2弾で迎撃していた場合、同時にMi-8MTPR-1などをPAC-2弾で攻撃することは困難ですが、PAC-3弾を選択していた場合は、PAC-2弾を使用し、これらを同時に攻撃することが可能なのです。

PAC-3弾が使用されたと推測するのは、このMi-8MTPR-1などを含めた迎撃戦闘が、わずか2分の間に行われたと言われており、PAC-2弾だけで戦闘が行われたとは考え難いということも理由です。なお、この2分間で複数機が一気に撃墜されたとの情報は、テレグラムで発信されたロシアサイドのものです。

また、PAC-3弾が使用されたと見る別の理由もあります。この動画は、迎撃されたSu-34が落下している際の映像です。機首が破壊されており、前方からミサイルが命中したように見えます。しかしながら、PAC-2弾が命中したのであれば、翼を含めた機体全体が、もっと激しく損傷しているはずです。

PAC-2弾は、高性能炸薬を備えた弾頭による破片効果で目標を破壊しますが、PAC-3弾は金属ペレットを拡散させることで、ミサイルの見かけ上の大きさを拡大することで命中確率を上げるものの、目標の破壊自体は、ミサイルの速度による運動エネルギーだけで目標を破壊する方式です。落下するSu-34の損傷状態からは、PAC-3弾が命中したように見えるのです。

■極めて高いウクライナ軍のパトリオット運用能力

今回、ウクライナ軍が公開した動画では、次のことが確定的に明らかです。

・ウクライナに到着した2つのパトリオット高射中隊は、1つがキーウでキンジャールやイスカンデル迎撃を担当し、もう1つがウクライナ北東部に進出し、滑空爆弾による攻撃に対処していた。

・滑空爆弾攻撃に対処していたパトリオット部隊が、5月上旬に3発の滑空爆弾迎撃を行った後、13日に滑空爆弾母機のSu-34、護衛のSu-35、電子妨害を行っていたMi-8などを撃墜した。その後、21日にもSu-34と滑空爆弾を迎撃していた。

この事実と5月13日の迎撃では、ロシア側からも多くの情報(周辺住民による動画のネット公開など)があったため、パトリオット部隊はPAC-3弾を使用してSu-34などの迎撃を行った可能性があると推測されます。

PAC-3弾の使用は推測ですが、いずれにせよ、ウクライナ軍は導入したばかりのパトリオットを極めて高いレベルで使いこなしていることは間違いありません。

各国が今後も兵器の供与を続けなければ、量的には対処が難しいと思われますが、質的にはウクライナ軍は精強で、最後には侵略者を撃退することができるでしょう。
2023.07.10 13:48 | 固定リンク | 戦争

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