モスクワ爆撃「CIAロシア破壊絶好の機会」
2023.07.04



ロシア、首都無人機攻撃 軍事施設も、空港一時発着停止 CIAロシア破壊絶好の機会

ロシア国防省は4日、首都モスクワと周辺モスクワ州への同日朝の無人機(ドローン)5機による攻撃を阻止したと発表し、ウクライナ政権の「テロ攻撃」と非難した。4機は防空システムで破壊し、1機は電波妨害で墜落させたとしている。

タス通信によると、1機はモスクワ州クビンカにある軍事施設内に墜落した。モスクワのソビャニン市長は死傷者はいないとしつつ「現場で救急隊が活動している」と明らかにした。周辺に位置するブヌコボ空港は一時発着を停止した。

ヴヌーコヴォ空港はモスクワの国際空港のひとつ。攻撃を理由にした発着制限は、すでに解除されている。トルコやアラブ首長国連邦(UAE)、エジプトからの便が影響を受けた。

ロシア国防省によると、モスクワに侵入したドローンのうち4機は防空システムで撃墜された。もう1機は衝突前に電子妨害されたという。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はメッセージアプリ「テレグラム」で、「ウクライナ政権が、国際便が発着する空港を含めて、民生インフラのある地域を攻撃しようとした。これは新たなテロ行為だ」と述べた。

ロシアの国営メディアによると、別のドローンがヴヌーコヴォ空港から約36キロ離れたクビンカに墜落した。

モスクワへのドローン攻撃はこれが初めてではない。ロシア国防省は今年5月、少なくとも8機のドローンによる軽微な損害があったと述べた。

ロシアが昨年2月にウクライナ侵攻を開始して以降、モスクワが複数のドローン攻撃に見舞われたのは、この時が初めてだった。ウクライナ政府は攻撃の責任を否定している。

一方、ウクライナ北部スーミに対するロシア軍のドローン攻撃では、死者数が3人になった。複数のけが人も出ているという。

■「まさか戦争?」モスクワ大騒ぎ…プーチン官邸周辺で確認された「武器」

ウクライナのロシア本土攻撃の可能性が高まり、ロシアのプーチン大統領が各滞在官邸の近くに防空ミサイルを配備している。これを目撃したロシア国民の間では「戦争が目の前まで来ていると考えると眠れない」という声が出てくるなど不安が広がっている。

24日(現地時間)、ロシアの独立メディア「モスクワタイムズ」によると、今月に入り、ロシアの首都モスクワの少なくとも5カ所で防空ミサイル体系が見つかった。特にプーチン大統領の執務室があるクレムリン宮の近くで最も多く確認された。

ロシア国防省の建物屋上と近隣2つの地下鉄駅(チミリャーゼフスカヤ・タガンスカヤ)、ロシニー・オストロフ国立公園などで短距離防御武器であるパーンツィリS-1と「ロシア版THAAD(高高度防衛ミサイル)」と呼ばれるS-400中長距離用対空ミサイルが配備されている様子がソーシャルメディア(SNS)を通じて急速に広がった。

これだけではなく、プーチン大統領が「故郷」と呼んで主に滞在しているモスクワ西側郊外周辺のノボ・オガリョボ官邸、プーチン大統領とその側近が時々立ち寄って余暇を楽しむヴァルダイ官邸の近くにもそれぞれ防空ミサイルが目撃された。

モスクワの地下鉄駅周辺で防空ミサイルを見つけたある地域住民は、モスクワタイムズとのインタビューで「初めてこの消息を聞いた時はフェイクニュースではないかと考えた」とし「ところが家のバルコニーから防空ミサイルを目にして驚き、睡眠をまともに取ることができなかった」と吐露した。ロシニー・オストロフ国立公園の近くに住んでいる住民も「みんな不安に思っている」とし「戦線が拡大しているのは明らかだが、政府から何の情報もなく腹が立つ」と同紙に話した。

このような状況に関連し、クレムリン宮のドミトリー・ペスコフ報道官は20日の記者会見で「ウクライナの攻撃に備えて政府が防空ミサイルを配備したのか」という質問に「国防省に問い合わせてほしい」として即答を避けた。

不審な動きのはモスクワを中心にした防空ミサイルの配備だけではない。ロシア国防省は21日、モスクワ一帯に軍人150人を動員してウクライナ軍の空襲に備えた撃退訓練をした。これに関連して、政府側志向のロシアジャーナリストのアレクサンダー・チョーク氏は「ロシア指導部はモスクワを狙った攻撃は時間の問題だということをすでに知っている」と主張した。

これに先立ってウクライナ軍は昨年12月から攻撃用無人機(ドローン)でロシア本土の軍事施設を打撃し始めた。ウクライナ軍ドローンは国境から約400~700キロ離れたロシア・リャザン州のデャギレヴォ基地、サラトフ州のエンゲルス-2基地などに浸透して攻撃した。

特にデャギレヴォ基地の場合、モスクワから200キロも離れていない。このためにモスクワも攻撃目標リストの中に入るのではないかとの懸念が提起された。

こうした中、ウクライナ軍はドローン攻撃を拡大する兆しだ。ウクライナの防衛産業企業ウクロボロンプロムが開発して先月最終試験飛行まで終えたドローンの場合、75キログラムの重さの弾頭をのせて最大1000キロメートルまで飛行することができる。

ウクライナの首都キーウからモスクワまでの距離が約700キロメートルなのでロシアの心臓部を狙うことができるというのがウクライナ軍の判断だ。そのためウクライナ軍が実戦配備を急いでいるという話が出ている。

ロシア軍事専門家のユーリ・フェドロフ氏は「ウクライナはもうモスクワに到達できるドローンを製作する技術を有している」とし「このような状況でモスクワ市内に防空ミサイルを配備したことはドローンがモスクワに来る前にまともに迎撃できないロシア防空網の穴を如実に示している」と話した。

ところで米国はウクライナが直接開発した武器でロシア本土を攻撃するのは反対しないとみられる。これに関連して、米国のロイド・オースティン国防長官は「(米国は)ウクライナが自らの能力を開発することを邪魔しない」と最近明らかにした。

一部ではロシアが防空ミサイルをこれ見よがしに配備したのは「ロシアの過度な宣伝」という分析も出ている。米国戦争研究所(ISW)は「人口が密集した都市地域に防空ミサイルを目に見えるように配備したのはウクライナがロシアの心臓部を威嚇するだろうと描写すること」としながら「これを通じてロシア国民を扇動して追加動員令などのような支援を受けるための戦略かもしれない」と分析した。


■ロシアの戦車を破壊するウクライナの「秘密兵器」

ウクライナで米国産ジャベリン対戦車誘導ミサイルがロシア軍の進撃を阻止する「抵抗の象徴」に浮上している。

ロイター通信・CNNなど海外メディアによると、現在ロシア軍はウクライナで予想外の強い抵抗を受け、進撃に困難があるという。

米国防総省の当局者は「ウクライナの抵抗が成功し始めている状況で、ロシアは過去24時間、勝利の決定的なきっかけを作れず、特に北側地域で苦戦している」とし「ロシア軍は総攻勢をかけたが、ウクライナの必死の抵抗に戸惑う雰囲気」と伝えた。別の関係者も「ロシアは空中を掌握し、機械化戦力で首都キエフを孤立させるという計画に失敗した」と指摘した。

こうしたウクライナの抗戦に大きな力を与えているのは西側の武器体系だ。特にウクライナ軍が2018年から米国から導入してきた対戦車ミサイルのジャベリンは「聖ジャベリン」(St.Javelin)と呼ばれる。ジャベリンは発射機を含めて長さ1.2メートル、重さ22.3キロの対戦車ミサイルで、目標物に照準を合わせて発射すればミサイルが自動的に打撃する「撃ち放し(fire&forget)」方式だ。

ジャベリンミサイルは発射後に強い爆風で位置が発覚しやすい他の対戦車武器とは違い、圧縮空気で発射し、一定高度に上がった後に点火して飛ぶため、開戦以前からロシアの戦車を脅かす最も強力な対応武器に挙げられていた。装甲車とタンクは上段部分が弱点だ。

ミサイル1発あたり8万ドル(約9600万ウォン)という高い価格が問題だが、BBCによると、米国務省はジャベリンミサイルを含め、対空システム・防弾服など3億5000万ドル規模の武器を追加で支援する計画だ。

ウクライナ人は聖書の中の聖女マグダラのマリアがジャベリンミサイルを抱えている写真をSNSなどで共有し、「正義を信じて共にすれば私たちは克服できる」などのコメントを載せている。

現在ウクライナではこのように2014年のクリミア半島強制合併後に西側から購入または支援された武器を「ミーム(meme、インターネット流行コンテンツ)」にして抗戦の意思を固める人が多いが、ウクライナのための基金を集めるウェブサイトにはこのミームで作った服・旗・ステッカーが販売されている。

これに先立ちウクライナのネットユーザーは英国が支援した次世代軽対戦車武器NLAW(Next Generation Light Anti-tank Weapon)に関連しても、ビートルズの名曲「All You Need Is Love」に例えて「All We Need is NLAW」というパロディーを共有した。

ウクライナ軍当局はロシア軍が26日基準で軍人3500人・タンク102台、戦闘機14機、ヘリコプター8機の被害を受けたと発表した。ウクライナの国民も積極的に抗戦している。BBCは「教師、弁護士、主婦らが草むらに座って火炎瓶を作っている」とし「一部はハンマーや剣を持って戦うという意志を見せている」と伝えた。


■CIAに絶好の機会「ロシア混乱」

ウクライナでの戦争がプーチン氏の指導力を腐食、CIAに絶好の機会

ロシア国内でウクライナでの戦争に対して不満が募っている現状は、CIAの情報収集に新しい機会をもたらしていると、ウィリアム・J・バーンズ長官は話した。英米関係を主要テーマにするイギリスのディッチリー基金による、毎年恒例の集まりで講演した。

ロシアの雇い兵組織ワグネルとそのエフゲニー・プリゴジン代表による6月24日の反乱から1週間を経て、バーンズCIA長官は、プリゴジン氏による「武装蜂起」と、ワグネルが首都モスクワへと進軍する光景に、誰もが「釘付け」になっていたと述べた。

プリゴジン氏の行動は、「プーチンの行動が本人の社会と体制にいかに腐食的な影響をもたらしているか、まざまざと見せつける」ものだったと同長官は話した。

また、プリゴジン氏の行動だけでなく、ウクライナ侵略をロシア国内で正当化していた根拠そのものを否定し非難したプリゴジン氏の発言内容は、今後かなりしばらくの間、余波をもたらすだろうとの見方を示した。

「戦争への不満が今後も、ロシアの指導体制を侵食し続けるはずだ」、「その不満の高まりは、我々CIAにとって一世一代の絶好の機会を作り出す」と長官は述べ、ロシア国内で情報源となる人をCIAが複数採用するチャンスだと説明した。

聴衆が笑うと、長官は「この機会を無駄にするつもりはない」、「フル回転で営業している」と話した。

CIAは最近、ロシア国内に住む人たちにメッセージを届けようと、新しいソーシャルメディア・キャンペーンを開始。ロシアで広く使われているメッセージアプリ「テレグラム」に動画を投稿するなどしている。このキャンペーンを通じてCIAは、当局の監視を回避しながらダークウエブでCIAに連絡をとる方法を、説明している。

この動画は公開第1週で、250万回視聴された。

バーンズ長官はこの日の講演でさらに、プリゴジン氏の反乱にアメリカ政府は一切かかわっていないという、他の米政府関係者の発言内容を繰り返した。

米紙ワシントン・ポストは6月30日、ワグネルの反乱の少し前にバーンズ長官がひそかにウクライナ・キーウを訪れていたと伝えた。これについてバーンズ長官は、講演では言及しなかった。

ワシントン・ポストによると、バーンズ長官とウクライナ政府幹部との協議では、ウクライナの反転攻勢が成功し、ウクライナが相当の領土を奪還すれば、ウクライナが優位な立場で交渉に臨める状況が開けるかもしれないという内容が取り上げられた。

2005~2008年にアメリカの駐ロシア大使だったバーンズ氏は、プーチン大統領を理解しようと過去20年間の大部分を費やしてきたおかげで、「プーチンやロシアについて偉そうに何か語るのはやめておいた方がいいと、かなり謙虚になれた」とも話した。

ただし、これまでの経験から学んだことだとして、ウクライナ支配を目指すプーチン氏のこだわりを、低く見積もるのは絶対に間違いだ――ともバーンズ長官は述べた。

ウクライナなくしてロシアは大国になれないし、自分自身も偉大な指導者になれないと、プーチン氏はそう信じているのだと、バーンズ氏は述べた。

「そのこだわりは悲劇的かつ野蛮で、すでにロシアに屈辱をもたらし、その弱点をさらけだした」

「プーチンの戦争はすでに、ロシアにとって戦略的な失敗となっている。その軍事的弱点があらわになり、経済は今後何年間も続く大打撃を受けている。プーチンの過ちのせいで、中国の格下のパートナー、中国の経済的植民地という未来が作られ、ロシアを待ち受けている」
2023.07.04 19:30 | 固定リンク | 戦争
円安で「実質GDP押し上げ」経済成長へ
2023.07.04

円安の今こそ日本経済は成長できる...円高はデフレと失業をもたらす 日銀は円安によるGDPへの影響を試算

■円高でなく、円安の時にこそ日本経済は成長してきた。日銀は自国の物価や景気を見極めて行動すべきだ

日銀は19日、円安が日本の経済成長を押し上げるとの試算を公表した。2010~19年の経済情勢をもとに推計したところ、円安が10%進めば実質国内総生産(GDP)を年間で0.8%ほど押し上げる。輸出企業の収益改善や訪日観光の増加が寄与する。円安は輸入品の価格上昇で内需企業や家計の負担を高める面があるが、「全体では景気にプラスの影響を及ぼす」とした。

日銀は円安が輸出の数量を押し上げる効果が弱まってきているとの分析も示した。生産拠点を海外に移す企業が増えているためだ。かつてのように円安により輸出企業の国内生産や雇用が増えるといった波及効果も弱まっている可能性がある。

一方、スマートフォンなど家電を中心に輸入品の比率が高まっており、円安が家計の負担増につながりやすい面がある。最近はエネルギー価格の上昇もあいまって、消費心理に逆風にもなりうる。20年以降は新型コロナウイルスの影響で訪日観光が急減し、円安のプラスの効果が落ちている面もある。

第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは10%の円安による実質GDPの押し上げは0.5%と試算する。新型コロナ前と比較すれば、波及経路は変わったものの、円安が経済に与える押し上げ効果は10年前、20年前からあまり変わらないとみる。

米連邦準備理事会(FRB)は金融政策の正常化を進める一方、日銀は金融緩和を粘り強く続ける構えだ。この1年ほど、日米金利差の拡大を背景に円安・ドル高が進んだ。日銀の黒田東彦総裁は18日の記者会見で円安は日本経済にプラスとしつつも、「影響が経済主体によって不均一であることには十分留意しておく必要がある」と述べた。
2023.07.04 12:07 | 固定リンク | 経済
罠に嵌った中国
2023.07.01


■「中所得国の罠」発展途上国が一定規模(中所得)にまで経済発展した後、成長が鈍化し、高所得国と呼ばれる水準には届かなくなる。中国がまさにそうとも言える。

脱却するには経済構造の転換が必要だとされる。産業の高度化及び「規模の経済」や中産階級の拡大による内需や購買力の上昇も重要視される。また、そのためにはインフラや教育への投資も必要となる。1990年代末に中所得国の罠に陥った韓国や台湾は電機やIT分野で産業の高度化を行い、高所得国入りを果たした。

中国は「中所得国(中進国)の罠」に嵌り脱却できずにいる。理由はあきらかで「自由がない経済圏」ではむりもない。ネット通販「618商戦」も盛り上がらず(アリババ国有化)、国民の不満も高まる一方。

ゼロコロナ政策解除後の中国の景気回復は、サービスを中心とする個人消費が牽引してきたが、その勢いが失われつつある。先鋭化する共産主義へ真っしぐら。

6月中旬に行われた恒例のネット通販セール「618商戦」では、電子商取引(EC)サイト各社が大幅な値引きを実施したにもかかわらず、消費者の節約志向のせいで盛り上がりに欠ける結果に終わった。

端午節連休(6月22日から24日)の国内旅行支出も、新型コロナのパンデミック前の2019年に比べて5.1%の減少となった。さらに、6月の乗用車販売台数も前年比5.9%減となる見通しだ。

個人消費が低迷し始めている要因は、不動産市場の悪化にある。住宅が売れないと付随するモノやサービスの消費も伸びないからだ。

住宅市場は今年2月から3月にかけて回復基調にあった。しかし、4月に入ると早くも息切れし、4月の主要50都市の新築取引面積は前月に比べて25%減少。5月も1割落ち込んでいる

不動産市場の悪化のそもそもの原因は「家余り」にある。中国の1家庭当たりの住宅保有数は先進国並みの水準となりつつある

■不動産バブルの崩壊が露呈させた“作りすぎ”の問題

気になるのは中国で「不動産神話」が崩壊しつつあることだ。

6月19日付ブルームバーグは「住宅所有者や関係者などへのインタビューから、不動産が常に中国で最も安全な投資先の1つだという信頼が薄れ、景気減速に拍車をかけていることが浮き彫りになった」と報じた。

住宅所有者は「不動産ブームで現金化できる最後の機会だ」と考えており、中国の金融センターである上海の不動産市場でも売り圧力が日に日に強まっているという。

投機的な購入の抑制を目指す政府にとって、こうした意識の変化は歓迎すべきことだが、政府の当初の予想を超えて不動産市場が深刻な不振に陥るリスクが生じつつあるのではないだろうか(不動産バブルの崩壊)。

不動産バブルの崩壊は、中国の過剰生産能力の問題も露呈させている。

世界最大の鉄鋼生産国である中国で、生産抑制の動きが広がっている。不動産投資の低迷で鋼材需要が落ち込み、在庫の余剰感が強まっているからだ。多くの雇用を生む製造業の中核を成す鉄鋼業の不振は、中国経済へのさらなる打撃となるだろう。

不動産バブルの崩壊がもたらす金融システムへの悪影響も

30年前の日本と同様、中国でも不良債権問題が長期にわたって経済の重しとなり、大規模な金融危機が勃発する可能性も排除できなくなっている。

■中国経済にとっての頼みの綱はハイテク産業

このような状況を受けて、中国ではこのところ政府に対して景気刺激策を求める声が高まっている。しかし、筆者は「期待外れに終わる」と考えている。経済対策を担う地方政府の財政が火の車だからだ。

政府をあてにできないのであれば、成長の新たな源泉を見つけるしかない。中国経済にとっての頼みの綱はハイテク産業だ。

中国経済にとっての朗報は、今年第1四半期の中国の自動車輸出台数が日本を抜いて世界第1位になったことだろう。中国の輸出台数は前年比58%増の107万台となり、日本の輸出台数(95万台)を上回った。電気自動車(EV)など新エネルギー車の輸出が伸びて全体の4割弱を占めた。

中国は2009年に新車販売台数で米国を抜いて世界最大の市場となったが、今やEVの分野でも最大の市場規模を誇っている。

だが、手放しでは喜べない状況だ。中国の自動車市場の過剰生産能力は年間約1000万台となっており(昨年の北米地域の全生産台数の3分の2に相当)、EVを巡る環境も同様だ。

競争の激化で中国のEV企業は共倒れの状態になりつつある。

米EV大手テスラは中国・上海工場の増強を目指しているが、国内の過当競争を危惧する中国政府はEV工場の新規承認に後ろ向きだ

■中国のハイテク産業は「張り子の虎」か?

中国の航空機産業も存在感を高めつつある。6月中下旬に仏パリ近郊のル・ブルジェ空港で開かれたパリ航空ショーでは、中国国有の航空機製造会社「中国商用飛機(COMAC)」の展示ブースに多くの航空関係者が訪れた。COMACが開発した中国初の大型国産ジェット旅客機C919は、5月末から商用便として運航が始まっている。

中国政府は、この旅客機こそ「中国製造2025」政策(2025年までに製造強国の一員となることを目指す)の「旗頭的な存在」と胸を張るが、「中国産とは言えないのではないか」との声も上がっている。商用機に使われている部品の大多数が海外製(大半が欧米製)だからだ(6月8日付CNN)。

中国は「5G(第5世代移動通信)大国」としても知られている。国内の5G基地局数は2023年4月時点で273万基(全世界の5G基地局数の約6割)を超え、ユーザー数も6億3400万人(全世界の約6割)に達した。

しかし、中国の3大通信事業者(中国電信、中国聯通、中国移動)の業績向上につながっていない。5Gの特性を生かしたキラーアプリがないことが災いしている(6月19日付東洋経済オンライン)。

このように、中国のハイテク産業は「張り子の虎」だと言わざるを得ない。バブル崩壊で金回りが悪くなれば、「化けの皮」が剥がれるのは時間の問題だろう。

■経済破綻で米中逆転はない

23年も半ばを過ぎようとしている今、中国経済は多くの問題に見舞われている。個人消費の低迷や危機的な不動産市場、輸出不振に加え、若年層の失業率は20%を突破し過去最悪を更新。地方政府の債務も膨らんでいる。こうしたひずみは世界中に波及し始めており、商品相場や株式市場などあらゆる面でその影響が見られる。

インフレ抑制を図る米連邦準備制度の利上げで米国がリセッション(景気後退)入りするリスクもあり、世界1、2位の経済大国が同時に低迷するとの見通しも強まっている。

さらに悪いことには、中国指導部は状況を好転させる大きな選択肢を持ち合わせていない。

大型の景気刺激策で需要を押し上げるという中国政府がこれまで採ってきた典型的な手法は、不動産や産業における大規模な供給過剰を招き、地方政府の債務残高を急増させている。

そのため、約30年にわたり前例のない経済成長を遂げた後、沈滞から抜け出せなくなった日本のような状況に、中国も陥るのではとの議論も浮上。

これに拍車をかけているのが、中国共産党の習近平総書記(国家主席)が取る米国と対決スタンスだ。将来の経済成長をけん引するはずの先端半導体やその他テクノロジーの供給から中国を切り離そうとする米国の動きが強まっている。

こうした力学を踏まえれば、中国経済の成長が今年は期待外れに終わるばかりではなく、経済規模で米国を追い越そうという中国の勢いもそがれる可能性がある。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のチーフエコノミスト、トム・オーリック氏は「数年前までは、中国がハイペースで米国を追い抜き、世界最大の経済大国にならないとは考えにくかった」が、「地政学が焦点となった今、米中逆転はほぼ確実に遅れるだろうし、全く起こらないシナリオも想像し得る」と述べる。

BEは不動産不況の深刻化や改革ペースの遅れ、米中デカップリング(切り離し)の劇的な進展といった下振れシナリオでは、中国の成長率は30年までに3%まで減速するとみている。

■「ベース効果」

中国政府が3月に示した今年の成長率目標(5%前後)は、発表時は控えめとみられていたが、今では現実的と思えない。ゴールドマン・サックス・グループは6月、今年の中国成長率予測を5%から2.4%に引き下げた。

世界経済の成長率が2.8%と予想される中で、一見するとそれほど悲観的な数字ではない。しかし実際には中国は22年もロックダウン(都市封鎖)など厳格なコロナ対策を続けていたため、今年の比較対象となる昨年の水準は低い。

こうした見かけ上、成長率を押し上げるいわゆる「ベース効果」を差し引くと、23年の成長率はパンデミック前平均の半分にも届かない3%に近くにとどまるとBEは想定している。

政府がこのまま手をこまねいていれば、事態がさらに悪化する恐れもある。不動産建設が急減し、土地売却収入が減少して公共財政に打撃を与え、米国のリセッションで世界需要が弱まり、中国市場が「リスクオフ」モードに移るというシナリオでは、BEの予想モデル「SHOK」は成長率がさらに1.2ポイント下がることを示す。

「中国は今、工業化からイノベーションに基づく成長への移行期にある。イノベーションを基盤とする成長はそれほど速いペースではない。中国の経済成長が今後さらに鈍化していくことに備える必要がある」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスの金刻羽教授(経済学)は話している。
2023.07.01 14:36 | 固定リンク | 経済

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