第二次文革(社会主義の崩壊)
2023.07.23


コロナ起源を暗に批判した。中国の医師、李文亮氏はコロナ流行の初期に感染症の危険性について警告を発したが、当局から「デマ」扱いされ、自身は肺炎で亡くなった。李氏はこんな言葉を残している。「健全な社会には多様な声があるべきだ」

■習近平の「文化大革命」

日本人の評論家は、「第一次文革」について「思想闘争によって、新しい形を生み出すためである。革命ではあるが、血は流されない」と述べている。中国の若者らの行動を評価し「次の時代の後継者となる彼らを、そのままに成長させ、ブルジョワ意識に汚れさせないためにも、今日、文化大革命を行うことは必須なのである」こんな評論家もいた。

これは全く事実に反している上に、中国に勝手な幻想を抱いた悪い例だろう。その後の中国の悲惨な道を思えば、無責任な言論だ。

一方、作家で日中戦争での出征経験もある武田泰淳氏は、中国の知人たちの安否が分からないことを憂いつつ、こう訴えている。「変化がはげしければ、はげしいほど、著実に、たえまない結びつきが必要になる…知ったかぶりの、うまい言葉づかいや、性急な感情露出でない、まじめな心がけの青年や老人が手をつないで中国を知るために全力をそそがなければなるまい」

■習近平側近で固める(第二次文化大革命)

中国全人代の全体会議で首相に選出され、習近平国家主席(右)と握手する李強氏=3月11日、北京の人民大会堂

昨年10月の共産党大会で、習氏は党総書記の3期目を実現した。当時69歳を迎えていたが、「党大会時に68歳なら引退」という党内の不文律を破っての続投だ。同時に、最高指導部のメンバーは元上海市党委員会書記の李強氏をはじめ、自身の子飼いで固めた。次期首相に就くとの下馬評があった胡春華副首相は指導部入りできなかった。習氏が距離を置くエリート組織、共産主義青年団(共青団)の出身であることが影響したことは間違いない。

「みんな文革世代なので、権力闘争はごめんだと思っている」習氏。側近で固め「権力闘争を招かないための布陣」。米国との交渉も不文律で、意見対立があれば進まない。そこで反対派を排除した陣容といえる。

確かに習氏の父の故習仲勲元副首相は文革中に失脚し、自身も貧村に「下放」(都会の若者を農村に送り込んだ当時の政策)されて苦難を味わった。毛への個人崇拝をあおって権力を握り、次期後継者と目された林彪党副主席も1971年に謎の死を遂げた。クーデター未遂とされるが、真相は闇のままだ。政権内部が混乱すれば、民心の乖離を招くとの危機感が習氏にあったのだろう。

しかし「文革」は、最高指導者の判断の誤りで招いた事実である。独裁が行き過ぎれば誰も止められない。それを払拭するために、無知の若者を利用しただけだ。

猛威を振るった。2020年からの新型コロナ流行では、習近平の「ゼロコロナ」政策の方針に従い、白い防護服に身を包んだ防疫担当者「大白」(ダーバイ)たちが、ロックダウン(都市封鎖)、従わない市民に暴力を振るった。習近平はゼロコロナに対する異論は許さないと宣言。コロナ起源も何のその、異論を封殺した。

世界に向けても、コロナ対策で米国より死者数を低く抑えた。習近平は自信を強め、西側の「説教」は受け入れないと一層自信を深めた。

■「個人崇拝」の危険性(毛主席の誤り)

明らかに「毛主席」を継承した系譜を辿ろうとしている。本人は認識していないだろうが、外部から見れば全く同じ路を辿ろうとしか観えない。

辿るる路は、個人崇拝、専制主義、完全独裁、誰も止められず、何れ過ちを犯すのは推して知るべきだろう。

人々は文革の再来はごめんだと言いつつ、集団指導体制を堅持し専制主義体制が続いたのだ。習近平がそこにメスを入れるのは簡単だったのかもしれない。専制主義体制がある限り何も大きく変革する必要もなかったのだろう。

3期目を可能にする法律を加味するだけで十分だ。あとは反対派を封殺するだけでことは足りる。観えて来るのは、個人崇拝、専制主義、完全独裁、誰も止められない状況へ舵を切るだけでいい。

歴史は繰り返す言うが、1強体制を確立した。「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義」が金科玉条となり、言論統制が厳しくなった。自由や民主、人権といった「普遍的価値観」を語ることは難しくなり、それまであった政治改革を求める気運は鳴りをひそめた。

■第二の文革(その矛先は?)

1966年文革を指導したのは、江青・毛夫人ら幹部「四人組」だが、第二の文革は全く趣が違うだろう。周氏の政府はあらゆる経済活動を統制・管理する「計画経済」を目指す。しかし、市場経済を受け入れた現在の状況を変えるには無理がある。国民は市場経済を受け入れ豊かになったのだ。その豊かさを捨てて共産主義の統制・管理される「計画経済」へと大きく舵を切る、政府への反発は大きくなるばかりだ。

市場経済を享受し豊かになった中国の資本家は、ある者は一帯一路を隠れ蓑に、不動産を取得、またある者は海外で起業を起ち上げ、その子弟は海外の一流大学へ留学、取得した住宅から通学するという。

習近平外交が険悪に、最近米国で「OFAC規制・金融決済(対象国決済禁止)」が始まった。中国が経済的に追い込まれることに。中国の「元・決済禁止」に、現在は米国だけだが、何れは西側諸国が右に倣えということに。これは多くの子弟のための住宅取得は中国海外銀行決済で取得。殆どはローン決済のはずだ。当然学費も準ずることだろう。

米国ではローン決済が履行すれば、不良債権で即刻差し押さえに合う。学費、医療費、その他、生活必需品購入カード決済中止で、生活できなくなるのは必至だ。

帰国した人々は不満が鬱積。帰国した子弟らは、国内の失業率が最悪だと見せ付けられる。海外での学識経験の活用の場もないまま不満が鬱積するばかりだ。

中国の上流階級を敵に回した習近平体制。何も変わらないままの政治体制。不満は地方からの発信が先だろう。「ゼロコロナ政策」で不満を鬱積してる子弟たち。白紙デモにも現れたように、政府への抗議への方法が変わった。抗議デモが潜在化、新たに高度化された抗議デモ。政府も対応に窮じることになる。

「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を中華民族の偉大な復興に向けた行動指針と位置づけている。しかし、共産主義の破綻と崩壊が明らかになったいま。それを中国の知識人は知らないはずがない。習近平の政策はその共産主義を指針とした政策を掲げ中国全人民を導こうとしてる。

1959年毛沢東は国家主席の座を劉少奇に譲った。その理由は明らかなように毛主席の「人民公社」政策の失敗にある。しかし、毛主席の失敗を払拭するため、第一次文化大革命を江青ら4人組の指導のもと実行し、劉少奇実権派の右寄り政策を批判し、毛主席の権力奪回に成功したのだ。

習近平の「中華民族の偉大な復興に向けた行動指針」をもって、「社会主義国家建設の軌道に戻すことを目指す」としている。これが習近平の「第二次文化大革命」であるが、本当の文革の矛先は専制主義体制と習近平体制にあるのではないか。これらが否定されれば、中国共産党は瓦解し、その結果、民主化が行われ、民主主義体制の基で経済の活性化が行われる。従ってこれが本当の意味の中華民族の復興になるのであろう。
2023.07.23 08:24 | 固定リンク | 戦争

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