岸田首相「NATO軍事協力できず」
2023.07.13
岸田首相、NATOと軍事協力できず NATOウクライナ加盟支える決意  ロシア、中国批判、北(ICBM)威嚇


■NATO、ウクライナ加盟支える決意

戦時中のジレンマ 苦渋の決断

北大西洋条約機構(NATO)首脳会議はウクライナに加盟時期を示さなかったが、長期的な支援計画や加盟手続きの短縮という「異例の処遇」で、ウクライナの実質的な統合を進める。ロシア軍への反攻成功に向けた支援や必要な国内改革への支援も継続し、加盟までの道のりを支えていく構えだ。

「これほど加盟に関して強い文言が示されたことはない。一筋縄ではいかない決断だ」。NATOのストルテンベルグ事務総長は11日の記者会見で強調した。

首脳らはウクライナに対し加盟の時期は明示しなかったが、「条件が整えば、加盟に向け招待する」と宣言。同時にNATO軍との相互運用性を確保する支援計画を策定し、共同で意思決定もできる協議枠組みとして理事会も設けた。実態としての統合を進めることで、加盟前の準備として必要な「加盟行動計画」は省略可能と判断もした。

ストルテンベルグ氏は将来的な加盟だけを謳(うた)った2008年の声明と「大きな違い」があり、「加盟への明確な道筋」と強調した。

首脳会議がウクライナに加盟時期などを明示できなかった背景には2つの理由がある。

ストルテンベルグ氏によると、1つはウクライナが戦時中にあること。戦争の終結後、ロシアの再侵略を抑止するためにはNATO加盟が最も効果的だ。だが、今、加盟に向けて具体的な措置をとり、ロシアが攻撃をエスカレートさせれば、NATOとの直接的な対決になりかねない。

加盟問題を巡ってはバイデン米政権やドイツが特に慎重で、とりわけロシアの脅威にさらされるウクライナ周辺の東欧諸国が積極的だった。だが、バルト三国の一つであるエストニアのカラス首相は11日、NATO加盟を切望するウクライナのゼレンスキー大統領について、「落胆は理解するが、私たちが今できるのは声明の内容までだ」と語った。声明内容はNATOとしてはジレンマを抱える中での苦渋の決断だった。

ストルテンベルグ氏が挙げたもう一つの事情が政府や軍の「ガバナンス」だ。ウクライナではかねて汚職が深刻であり、過去に加盟した国も事前に対処を求められた。サリバン米大統領補佐官は11日、「われわれが改革の道筋を示し、ウクライナに取り組んでもらう」と強調。首脳会議も声明で、進捗(しんちょく)状況を定期的に評価しながら改革を後押しする方針を示した。

■岸田首相、NATOと軍事協力できず

岸田首相「日本とNATOは絆を深めている」 NATO事務総長と会談で“連携を深化したい”と強調するだけで、本筋は躊躇のようだ 日本の防衛も中途半端のママだ

岸田首相は日本時間12日午後、リトアニアの首都ビリニュスで、NATO・ストルテンベルグ事務総長と会談した。

岸田首相は「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分」として、「戦略的利益を共有する日本とNATOは絆を深めている」と述べた。

その上で岸田首相は、「インド太平洋への関心と関与を高めるNATOとの連携を一層深化していきたい」と強調した。

また、サイバーセキュリティ・偽情報対策等の分野での協力を盛り込んだ、日本とNATOの新たな枠組み協力文書「日・NATO国別適合パートナーシップ計画(ITPP)」を発表。

「ITPP」では、安全保障課題として、サイバーセキュリティ・偽情報対策・AI等新たな破壊技術・宇宙・海洋安全保障等、4つの優先課題と16の協力分野で、日本とNATOが協力するとしている。

■首相、NATOと「関係強化」

ウクライナに非殺傷性装備品供与

岸田文雄首相は12日、リトアニアの首都ビリニュスで開かれている北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席した。NATOとの更なる関係強化に意欲を示し、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対して、殺傷性のない装備品の供与を進めていく考えを表明した。

首相は「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、ウクライナ侵略がグローバルな問題であるとの認識は広く共有されている」と指摘。その上で「欧州大西洋の同志国の間でもインド太平洋への関心と関与が高まっていることを歓迎する」と述べた。

 ウクライナ情勢に関しては「一日も早くウクライナに公正で永続的な平和をもたらすべく、国際社会の連携を一層強化していく必要がある」と強調し、日本がNATO信託基金に拠出した3000万ドルを活用して、新たに対無人航空機検知システムなど殺傷性のない装備品の供与を進めていく考えを示した。

■ドローンなど検知する装備品」の供与を表明

岸田総理 ウクライナに「無人航空機=ドローンなど検知する装備品」の供与を表明

リトアニアで行われているNATO=北大西洋条約機構の首脳会議に出席した岸田総理は、ウクライナへの支援として、ドローンなど無人航空機の動きを把握する装備品の供与を進めると明らかにしました。

会議で岸田総理は、ロシアによるウクライナ侵攻はヨーロッパだけではなく「グローバルな問題である」と指摘し、「力による一方的な現状変更は世界のどこであっても許されない」と訴えました。

また、G7広島サミットでも、ウクライナへの支援とロシアに対する制裁を継続していくことを確認したと強調。NATOの基金に拠出した3000万ドル=およそ42億円を活用し、今後、ウクライナに対し、新たに無人航空機=ドローンを検知するシステムなど、殺傷性のない装備品の供与を進める考えを示しました。

■NATO声明にロシア反発

「国境に戦力、逃げ場ない」NATO首脳会議が将来的なウクライナの加盟を見据えた声明を発表したことに対して、ロシアは「対露敵視政策」だとして反発した。

タス通信によると、アントノフ露駐米大使は12日、「NATOの反露性が改めて示された」と指摘。「NATOは露国境にさらに多くの戦力を配備しようとしている。ロシアには逃げ場所がない」とし、ウクライナのNATO加盟阻止を目標の一つとした軍事作戦が「完遂」されなければならないとの認識を示した。

ペスコフ露大統領報道官も、ウクライナのNATO加盟は「欧州の安全保障にとって危険だ」と主張。北欧スウェーデンのNATO加盟が決定したことに関しても「ロシアは対抗措置を取る」と警告した。

一方、ショイグ露国防相は11日、ウクライナ軍が反攻作戦を開始した6月上旬以降の約5週間で2万6千人以上の死傷者を出し、戦車など3千以上の兵器を失ったとし、「反攻はどの方面でも目標を達成していない」と主張した。また、米国が殺傷能力の高いクラスター(集束)弾のウクライナへの供与を決定したことについて、実際に供与されれば「ロシアもクラスター弾を使う」と警告した。

ロシアはウクライナ軍の反攻が失敗したと印象付けることで、NATO諸国にウクライナ支援を躊躇(ちゅうちょ)させる思惑だとみられる。ただウクライナは、ロシアの戦果発表は虚偽だと指摘。露国内でも戦果の過大発表を疑う声が出ており、ロシアの主張の真偽は不明だ。

米シンクタンク「戦争研究所」は10日、反攻開始以降の約5週間でウクライナ軍が奪還した領土は計253平方キロメートルに達し、露軍が過去半年間超で占領した面積282平方キロメートルに匹敵するとの分析を公表した。

■中国「冷戦思考だ」批判 

NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議で採択された中国に対する共同声明について、中国外務省は「冷戦時代の考え方だ」と批判しました。

11日に開幕したNATO首脳会議では「中国の野心と威圧的政策はNATOへの挑戦だ」と明記された共同声明が採択されました。

これを受け、中国外務省の報道官は「冷戦時代の考え方とイデオロギー的な偏見に満ちていて、断固として反対する」と反発しました。

そのうえで「中国を歪曲して中傷し嘘をでっち上げることを直ちにやめ、平和と安定のために建設的な役割を果たすべきである」と述べました。

また、「中国は他国を侵略したこともなく内政干渉したこともない」と牽制(けんせい)したうえで、アジア太平洋を混乱させているのはNATOだと強く批判しました。

■北朝鮮、ICBM級ミサイル発射で 過去最長“74分間” 威嚇?妹・与正氏“発言”狙いは

北朝鮮が12日朝、発射したICBM級のミサイル。飛行時間は過去最長となる74分に及びました。このタイミングでのミサイル発射について妹・与正(ヨジョン)氏の発言が注目を集めています。

■北朝鮮 ICBM級ミサイル発射か

 現在、リトアニアで行われているNATO=北大西洋条約機構の首脳会議。対北朝鮮で結束を強める日・米・韓のトップも集まっていて、夜にも日韓首脳会談が予定されています。

 岸田総理大臣:「すでに(北朝鮮側へ)抗議も行いました。日米・日米韓等での緊密な連携を図り、平和と安全の確保に万全を期していきたいと思う」

 午前10時前、平壌近郊から発射されたICBM=大陸間弾道ミサイルは、高度6000キロ以上と推定され、北海道・奥尻島の西およそ250キロの日本の排他的経済水域の外に落下したとみられます。また、通常より角度を付けて打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射され、これまでで最も長い74分間飛翔(ひしょう)したということです。

 官邸関係者:「間違いなくNATO首脳会議に合わせて発射したのでしょう。国際社会に注目してもらいたいという意思表示だろう」

ミサイル発射を巡り注目されているのが、今週になって繰り返される金与正氏の発言です。

■撃墜も?威嚇の妹・与正氏 狙いは

12日朝、再び発射された北朝鮮の長距離弾道ミサイル。これに先立ち、11日と10日、金正恩総書記の妹・与正氏はアメリカ軍の偵察機が北朝鮮空域に侵入したとして、相次ぎ談話を出していました。

金与正氏の談話(朝鮮中央通信 きのう):「繰り返される無断侵犯の際には米軍が非常に危険な飛行を経験することになるだろう」

つまり、撃墜もあり得るという威嚇です。

与正氏は同じ談話のなかで、韓国の呼び方を従来の「南朝鮮」などではなく「大韓民国」と表現。北朝鮮側に政策変更があったのではないかとの見方も出ていました。

今回のミサイル発射は、アメリカの偵察行為への反発とともに、NATO首脳会議での日・米・韓の連携にくさびの打ち込みを図ったとみられます。
2023.07.13 05:43 | 固定リンク | 防衛

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