プリゴジン氏とプーチン異例の会談「クレムリンで3時間」
2023.07.14



■プリゴジン氏とプーチン大統領異例の会談(29日クレムリンで3時間)

プーチン大統領とプリゴジン氏との会談の情報です。先月29日に、ワグネルの指揮官らも交えクレムリンで3時間近く会談したということです。

ウクライナ軍の反転攻勢が続く一方で、ロシア国内に目を向けると、依然その動向が注目されているのが民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏です。このプリゴジン氏への対応をめぐってプーチン政権は揺れ動いてきました。

先月24日に武装反乱が発生すると、プーチン大統領は「裏切りだ」と強く非難。軍に断固たる措置を取るように指示しました。

しかし、その2日後には、ワグネルの戦闘員に対し、国防省などと契約を結ぶか、あるいはベラルーシに行けば安全を保証すると選択肢を示したのです。そしてその翌日には実際に、“プリゴジン氏がベラルーシにいる”という情報も出てきました。

一方で、今月5日には、今度はプリゴジン氏の信用を失墜させるかのような情報を国営メディアが報じます。

こうした中で、日本時間の10日夜、飛び込んできたのが、こちら。プーチン大統領とプリゴジン氏との会談の情報です。先月29日に、ワグネルの指揮官らも交えクレムリンで3時間近く会談したということです。

なぜこのタイミングで会談の情報が明らかになったのか。そして大統領とプリゴジン氏の関係はどうなっているのか。旧ソビエト時代から長年ロシア取材を続けてきた石川一洋専門解説委員に聞きました。

6月の会談の情報 なぜこのタイミングで明らかに?
Q.プーチン大統領とプリゴジン氏との先月の会談の情報、このタイミングで発表された狙いはどこにあるのでしょうか?

会談が行われた29日は反乱終結からわずか5日後です。プーチン大統領はこの日、ロシアの起業家たちとの集会に参加して、絵を描くなどして反乱は収束したと余裕を見せていました。しかもその2日前に、大統領みずから反乱について裏切り者と非難していました。

しかし、プーチン大統領みずからが、その同じ日に3時間にわたって裏切り者と呼んだプリゴジン氏らワグネルの指導部と3時間もの時間をとって、会談するということは異例なことです。

プーチン大統領にとってのこの反乱の衝撃の大きさを示すとともに、大統領とプリゴジン氏およびワグネルの近さを示し、裏切り者と切って捨てたように見せながら、プーチン閥の身内として遇していることを示しています。

確かにロシアの国営メディアでは、プリゴジン氏の豪華な私邸を暴いたり、これまで褒めたたえていたワグネルの軍事的な功績は大きなものではないとしたり、手のひら返しのネガティブキャンペーンが続いています。
フランスの雑誌報道受けクレムリンが認める形に
しかし今回、会談の事実は、まずフランスの雑誌リベラシオンが報道したのを受けて、ペスコフ報道官がその報道を確認するという形で認めました。フランスの報道は欧米情報筋としていますが、おそらくクレムリンあるいはロシアの諜報機関によるリークで、それをクレムリンが公式に認めるという複雑な発表の形式をとっています。
ただ、クレムリンあるいはプーチン大統領としては、そのネガティブキャンペーンからは距離を置きたいということで、こうした複雑なリークの方式を取ったのではないかと思います。

伝えたいメッセージはただ一つ、ペスコフ報道官の口から「ワグネルの指揮官たちは、プーチン大統領支持のための行動で、これからも祖国のために戦う」と伝えている点です。クレムリンとしては、ワグネルを含めてプーチン大統領の周囲に国は結集していると強調したかったのだと思います。

合意事項は「再び裏方に戻る」か 今後への影響は

Q.この会談、何が中心に話し合われたのでしょうか?ワグネルの今後やロシア軍への影響をどう見ていますか?

A.合意事項は「ワグネルはロシアのために戦い続ける」ということに尽きるのではないでしょうか。

ロシア軍では、反乱以後動向が伝えられていなかったゲラシモフ参謀総長の映像を国防省が公開しました。

プリゴジン氏は、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長こそ裏切り者だと主張していたのですが、国防省はショイグ国防相およびゲラシモフ参謀総長の姿を積極的に公開することで国防省と軍は動揺していないと示したのでしょう。

ただ、3時間の会談でプリゴジン氏らは誰が裏切り者なのか自説を繰り返したのでしょう。

そのリークを今流すことは、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀長に対しても、クレムリンからのお前たちは勝者ではないという一種の警告だと思います。
プリゴジン氏については、彼がパブリックでこれだけの影響力を得たのは、ウクライナへの軍事侵攻に参加して、国防省への批判を繰り返したからです。それまでは、表で発言することはほとんどありませんでした。

合意事項としては、再び裏方に戻るということではないかと思います。

■トクマク露軍拠点壊滅「200人死亡」

ザポリージャ州トクマク露軍拠点攻撃、露軍兵士200人と指揮官が死亡した

ウクライナ南部ザポリージャ州メリトポリのイワン・フェドロフ市長は13日までに、ウクライナ軍がロシアの支配下にある同州トクマクのロシア軍基地を攻撃し、ロシア軍兵士最大200人と、トクマクの指揮官が死亡したと明らかにした。

フェドロフ氏は「ウクライナ軍がトクマクにある占領者の陣地への攻撃を成功させた」とSNS「テレグラム」で述べた。

トクマクの鍛造工場に置かれているロシア軍基地が攻撃を受けたと情報機関が報告。

親ロシア派のソーシャルメディアは11日、「空軍部隊がトクマクに大規模攻撃を行った。初期情報では攻撃6回が記録されている」と伝えた。

ロシアが任命したザポリージャ州の当局者、ウラジーミル・ロゴフ氏も同日、トクマクでの一連の爆発に言及し、空き地での火災の様子を映した動画を投稿した。撮影場所は特定できなかった。

ウクライナ軍はロシア軍の重要な防衛拠点であるトクマクを定期的に攻撃目標にしていた。

露軍が補給拠点として占拠する南部ザポリージャ州メリトポリやトクマクで、複数回の爆発があった。ウクライナ側が爆発物を仕掛けた可能性がある。メリトポリはウクライナ軍が大規模な反転攻勢で奪還を目指している。

■ロシアはいつまでも戦争を続けられない

バイデン米大統領は13日、フィンランドの首都ヘルシンキで記者会見し、ロシアによるウクライナ侵略を巡り「ロシアがいつまでも戦争を続けられるとは思わない」と述べた。

バイデン氏は記者から今後も戦争が続く可能性を問われ、「ロシアの資源や能力の観点」から永久に続くことはないとの考えを示した。また、「戦争を継続することが経済的、政治的にロシアの国益にならない」とプーチン露大統領が判断する状況が訪れる可能性を指摘。「戦争が何年も続くとは思わない」と述べた。

ただ、戦争が続く期間を「正確に予測することはできない」とした。

またバイデン氏は、「ウクライナが攻勢で大きな前進を果たし、交渉による決着がつくことを望む」とも述べ、和平交渉による終戦に期待を示した。
2023.07.14 09:03 | 固定リンク | 戦争

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