極刑「内臓えぐり」
2023.02.01
数々の処刑方法を載せた『処刑の文化史』の中で、「有史以来生み出された処刑のうち、間違いなく最も恐ろしい処刑方法」と形容されている「首吊り、内臓えぐり、仕上げに八つ裂き」

人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕上げに八つ裂き」

公開処刑はより良い社会を築くために行われた――。230点以上に及ぶ挿絵、絵画、写真が掲載された『処刑の文化史』は、人間の恐るべき本性を浮き彫りにする

人間はかくも残酷になれるのか。古代から現代にかけて人間が考え出し、工夫を凝らしてきた残虐極まりない処刑の数々――。

思わず目をそらしてしまうような挿絵、絵画、写真が満載の本書『処刑の文化史』(ジョナサン・J・ムーア著、筆者訳、ブックマン社)が完成したのを見て、昨年末、東京・上野で大盛況のうちに会期終了した「怖い絵」展を思い出した。人間は本来、残虐なものに惹きつけられてしまうものなのか。

そもそも公開処刑は社会秩序を維持し、より良い社会を築くための見せしめという刑法思想に基づいて行われた。オーストラリアの先住民社会では、部族のルールを破った者に与えられる最も厳しい刑は一族を集めた面前で行われる槍刺しであったし、古代ローマの処刑は、円形闘技場を使用して大々的なショーとして行われた。

また18世紀のロンドンでは、海賊行為などの海に関わる犯罪に携わった者は絞首刑にしたあと引き潮の海にそのまま放置され、その後満潮が3回繰り返すあいだ水夫たちへの恐怖の見せしめとされたという。

ロンドンではまた、法を犯した者は首を切り落とされ、その首は最も人々の目につきやすいロンドン橋の水門小屋の上や市内のテンプル門の上などに串刺しにされて並べられた。典型的な見せしめ行為だ。

見せしめの効果を増すために、処刑の形はおのずとその残虐性を増していく。一気にとどめを刺すことをせずに受刑者の苦痛を長引かせて見せつけるという発想だ。

アケメネス朝のペルシャ人はこの点に工夫を凝らした。囚人の命を奪うことなく、順番にまずは目玉をくりぬき、舌を抜き、耳を切り落とし、苦痛で囚人の感覚が麻痺してしまう前に手足を切断し、そのうえで体を串刺しにした。念が入ったことに、この段階に至っても串が内臓を貫通して囚人を絶命させてしまわないようにして、苦痛の時間を引き伸ばした。

火あぶり刑にしても、火がゆっくりとくすぶれば受刑者の苦痛は長く続くのだ。そのため重罪の囚人ほど時間をかけてあぶり焼きにする工夫がされた。逆に囚人に一縷の慈悲をかけるならば、囚人の股の付け根や脇の下に火薬袋を巻き付けて一気に焼死させてやるのだった。

ギロチンは「人道的」、ガス室は「健全」
受刑者の苦痛を最大限に引き伸ばす人類史上最も残虐な処刑は、本書の原題でもある「首吊り、内臓えぐり、仕上げは八つ裂き」(Hang, Drawn, and Quartered)の刑だろう。初めに囚人の首を吊る。そして絶命直前に首縄を外し、囚人の意識が戻ったところで腹を裂いて内臓をえぐり出す。最後に生きながらにして八つ裂きにする。

ここまでの猟奇的とも言える残虐行為を思いつき、処刑として実行する人間の恐るべき本性。人間は究極的にいったい何を求めているのだろうか。

フランス革命末期の恐怖政治の時代に多用され、同時代パリだけでも2500人以上の処刑に使用されたギロチンは、その視覚的な残虐性に反し、実は人道的な処刑装置として開発されたものである。

受刑者の苦痛を長引かせることなく、刃の落下で一息に受刑者の首を切断し絶命させるという点で、確かに故意に受刑者の苦痛を長引かせる処刑より人道的であるかもしれない。

その後時代は変わり、近代化や工業化が進み社会が成熟していくにつれ、人権への意識も高まった。「冷酷かつ非道な処罰の禁止」とアメリカ合衆国憲法にうたわれる通り、受刑者に痛み苦しみを与えず素早く処刑を実行する方法が発明されるようになった。

そこで生まれたのが電気椅子、ガス室、致死注射などである。受刑者に人道を外れるほどの苦痛を与えることのない「健全な」処刑方法として開発されたこれらの処刑だが、完全で洗練された処刑であるがゆえに、ひとたび不手際が起こるとそれまでに例を見ないほどの世にも恐ろしい惨状を生んでしまうことも事実である。

本書は上述したさまざまな処刑や、ほかに一般にはあまり知られていない処刑についても1つ1つ触れていく。処刑の細かい手順や受刑者の肉体への影響などが全て事実にのっとり、丁寧に、そして生々しく語られる。読者はその残虐性に息をのみ、230点以上に及ぶ恐ろしい挿絵や写真から思わず目をそらしながらも、普段見聞きすることのない処刑の世界に惹きつけられていくだろう。

そしてこれらが、作り上げられた恐怖物語でもなんでもなく、全て確固とした史実に基づくものであり、実際に人間の手により執り行われてきたのだと気づき呆然とするに違いない。今この瞬間にも世界のどこかで処刑は行われているのだ。

印象的なセンテンスを対訳で読む
●In France, Britain, and the United States, the public's appetite for the spectacle of execution had reached the point where riots broke out and bystanders were killed in the crush as increasingly rowdy crowds fought for the best viewing sites.
(フランス、イギリス、アメリカなどでは処刑を見ようと群衆が押し寄せ、興奮して特等席を奪い合い、それが暴動化して死者がでるほどであった)

――古代ローマでは劇場を使って行われる処刑に人々が大喜びで集まり、フランス革命時にはギロチンの処刑を一目見ようと詰め掛ける民衆目当てに、ワインやビスケットを売る行商人まで出る始末。残虐な見世物にいつの時代も人は集まる。

●For quicker executions, nails were hammered through the ankles so that the full weight of the body hung down on the rib cage and internal organs, leading to a relatively quick, but painful death.
(時間をかけずに死亡させるためには、足首に釘を打って支柱に固定する。すると全重力が腹部と内臓部分にかかり、比較的早くしかも苦しい死をもたらす)

――これは磔刑の効果を描写したものである。イエス・キリストの処刑として絵画や彫刻にこれでもかと繰り返されるテーマだが、キリストの足の甲に刺された釘が腹部に圧力をかけることになり苦しい死をもたらしているとは想像したこともなかった。

●While waiting to be taken to their deaths, they had been singing a hymn. Over the space of 24 minutes, as they were executed one by one, the harmony went from a choir to a solo, to be followed by a deathly silence.
(処刑を待つ間、彼女たちは賛美歌を歌い続けた。24分間の間に1人また1人と処刑は進み、賛美歌の合唱は最後には独唱になり、そして死の沈黙がおとずれた)

――いつの時代のどんな処刑においても、受刑者はその尊厳を完全に無視される。だがこのようなかたちで自らの尊厳を維持することができるのもまた人間なのだ。取り乱すことなく静かに賛美歌を歌い続ける修道女たちの凛とした姿が目に浮かぶ。

◇ ◇ ◇

著者はこれらの処刑について、ときに独特のシニカルなユーモアをまじえながら淡々と事実だけを語っていき、敢えて結びの文を添えていない。残虐な史実をどう受け止めるかは読者次第だ。
2023.02.01 06:40 | 固定リンク | 事件/事故
チェーンソーでバラバラに「告白」
2023.02.01

共犯者には切断された被害者を見て「人形みたいだろ」と話していたそうです。
主犯の「池田容之」は被害男性から1300万円を奪い2人を殺害。「2009年11月11日、強盗致死、死体遺棄、逮捕・監禁」の罪で逮捕された。

衝撃的な告白“チェーンソーバラバラ殺人事件”の共犯者が拘置所で告白した凄惨な一瞬…「人が死ぬ時って、静かなんすよ」

 各居室の鍵が開けられていく。いきなりドアがガチャンと開いた。

「さんぜんろっぴゃくさんじゅうろくばんっ、出まぁす」

 運動の時間だ。廊下にみなが揃うと、整列して屋上へと向かって歩いていく。雨の日は居室での運動となるが、天気の良い日は外に出る。外と言っても屋上だが、広い空が見えて、とても心地良い。屋上には、鉄柵と金網で囲われた4メートル四方ぐらいの大きな鳥カゴのようなスペースがいくつかあり、そこに2、3名ずつ放り込まれていく。鳥カゴには、しっかりと鍵がかけられ、20分から30分ぐらい自由に運動することができる。本気で筋トレをする者、ひたすら歩き回る者、他の者と話をする者、ここでは講談が許されている。オヤジから爪切りを借りて、爪を切ることもできた。そんな鳥カゴの中で、会話をするのは楽しみの一つだ。普段誰とも話すこともなく、独居房で1人静かに過ごす者たちにとって、会話はストレス発散となり、お互いを励ましあったり不安を取り除いたりすることができる唯一の時間となる。

 毎回、同じ者たちが鳥カゴに入れられる訳ではない。ローテーションで入れ替わっていくが、前回と同じ者と一緒に運動をすることもある。しかし、今日は初めて見る顔が鳥カゴの中にあった。1人は痩せた初老の人で、なぜか刑務服を着ている。ここにいる者たちは、まだ刑が確定していない未決収容者なので私服を着ているが、この人だけは刑務服を着ていた。薄着なので、とても寒そうだ。もう1人はガタイの良い兄ちゃんで、この寒い日に短パンで元気に運動をしている。ふくらはぎには筋彫りで、龍の刺青が入っていた。俺は、爪を切りながら2人に「おはようございます」と挨拶をしたが、初老の人は無視をして、ぼんやりと空を眺めている。兄ちゃんは、手足を開いたり閉じたりして飛び跳ねながら、元気良く「おはようございます」と言って、鼻水を垂らしている。なんだかとても楽しそうで、子供のように飛び跳ね続けている。

「いやぁ~、うれしいっすよ」

 鼻水を垂れ流したまま、それを気にすることなく笑顔で言った。関西弁だ。

「どうしたんですか?」

 まだ飛び跳ねている。ちょっと精神的にヤバい系なのかもしれない。

「いやぁ~、1年以上ずっと運動も1人やったんで。ここに来てから面会以外で他の人と会うの初めてなんすよ」

「えっ! ずっと1人?」

「はい。それと、裁判で無期やと思ってたら求刑15年で、うれしくてうれしくて」

「ムキ! ジュウゴネン!?」

 無期が15年になって大喜びをしている。俺なんか3年か4年か5年か、と絶望していたのに。

「まさか、殺すなんて思ってなかったんすよ」
「自分、殺人の共犯で、主犯が2人殺ってもうたんです」

 この兄ちゃんは、バラバラ殺人事件の共犯者だった。主犯は生きたままの人間を、チェーンソーで首を切断して殺してしまったという。

「なんで、殺してもうたん」

 初老の人は、鳥カゴの端の方で空をずっと見ている。オヤジもいない。俺たちは、周りを気にせずに話をすることができた。

「まさか、殺すなんて思ってなかったんすよ」

 ある日、姫路少年刑務所で知り合った友人から連絡があり、金になる仕事があると話を持ちかけられた。シャブ以外の仕事なら引き受けてもいいと返事をして、関西の地元の連中と東京に向かった。仕事の内容は、タタキ(強盗)ということだった。ある店に強盗に入るのだ。その店では、闇でシャブを扱っているので、タタキに入っても警察は出てこない。店の人間を脅して、なんなら殴りつけて、店にある金をすべてかっさらっていく。ただそれだけの仕事のはずだった。東京で友人から、この計画に参加する者を紹介された。それが主犯の男だった。

 店の金を奪い、店の人間2人をホテルに監禁し、気がつけば主犯が風呂場で2人を殺していた。結局シャブの利権でトラブルになっていたと、彼は後から知ったのだと言う。

「それ、殺すの止められなかったんですか」

「一瞬やったし、めちゃくちゃ怖かったんすよ。止められるような状況じゃなかったです」

「2人も殺してるのに、ホテルの人とか周りの人も気づかなかったんですか」

「人が死ぬ時って、静かなんすよ。叫んだりしない。チェーンソーの音だけ鳴り響いてました。それも一瞬です」

 彼は、2人ぐらいなら軽く殴り殺してしまいそうな貫禄があるが、実際の殺人の現場では怖くて、その行為を止めることさえできなかったのだろう。バラバラになった2人分の死体を袋に詰め込み、海や山に投げ捨てた。強盗致死、死体遺棄、逮捕・監禁の罪で、ここに放り込まれた。裁判までの1年以上を、面会以外誰とも話をすることなく、ここで過ごしてきたという。

空を眺める初老の男性は…「あのおっさん、たぶん死刑囚ですよ」
「あのおっさん、たぶん死刑囚ですよ」

 兄ちゃんが顎で、初老の人の方を指して言った。

「えっ! ほんまに?」

 小声で言って、顎の指す方を見た。初老の人は、空の向こうに何があるのか探すかのように、ずっと空の一点を眺めている。

「刑務服着てるでしょ。長いこといて服ないんすよ、たぶん」

「死刑囚おるんや、ここに」

 この時初めて知った。死刑囚は刑が執行されるまでの間、拘置所で死ぬまでの一生を過ごすことになる。

「うちの主犯も、ここの3階にいるんすよ」

「なんで知ってんの?」

「手紙でやりとりしてますから」

「そうなんや。おとなしくしてるの?」

「おとなしいどころか、手紙の文面が神様仏様みたいな感じなんですよ」

 人間2人を殺して、おそらく自分は死刑になる。懺悔の日々を繰り返し、自分の死を受け入れ、苦しい日々を通り過ぎ、覚悟へと変わり、達観してしまうのだろうか。

「で、兄さんは何したんですか?」

 軽く足踏みをしながら尋ねてきた。

 俺は、自分のあまりにもショボい罪に恥ずかしさを感じていたが、ここまで話してくれたのに言わない訳にはいかない。

「シャブをね、ちょっといじってね、捌いてアウトです」

 この屋上から見えるグラウンドを見下ろすと、横浜刑務所の受刑者たちが、大きな掛け声を出して行進していた。

2023.02.01 06:02 | 固定リンク | 事件/事故

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