ノルドストリーム
2023.04.28
バルト海・デンマーク領海内のノルドストリーム2付近で見つかった物体

■パイプライン爆発4日前、近海にロシア海軍船 デンマーク紙

天然ガスをロシアからドイツに輸送するパイプライン「ノルドストリーム(Nord Stream)」で昨年起きた爆発をめぐり、その数日前に近海でロシア海軍の潜水艦救助用の船が撮影されていたと、デンマークの日刊紙インフォマシオン(Information)が28日報じた。

同紙によると、爆発の4日前に、小型潜水艦を備えた潜水艦救助船SS750がバルト海(Baltic Sea)で撮影されていた。爆発の原因は依然、特定されていない。

同紙は「デンマーク軍は、2022年9月22日にボーンホルム(Bornholm)の東側海域に出ていた自国の巡視船から、当該のロシア船の写真26枚が撮影されたことを認めた」と伝えている。

デンマークのエネルギー監督当局は23日、昨年爆発があったロシアから欧州へ天然ガスを供給するパイプライン「ノルドストリーム(Nord Stream)」付近で謎の物体が見つかった問題で、ロシア企業が主要株主となっている同パイプラインの操業会社に対し、物体引き揚げに協力するよう要請したと発表した。

 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は今月先に、この物体が発見されたことを明らかにし、専門家の話では爆発物を起爆させるためのアンテナの可能性があると述べていた。

ノルドストリーム1と2で爆発が発生してから7か月が経過した。損壊箇所に面するドイツ、スウェーデン、デンマークの3か国では刑事事件として捜査が行われているが、いまだに犯行主体の特定に至っていない。

米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は先月、「親ウクライナ派集団」による破壊工作だったことを示す新たな情報を米当局が入手したと報じた。ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領が関与した証拠は出てきていないという。


■北海で不審なロシア船 エネルギー供給網の破壊準備か 4カ国で報道

英国、デンマークなどの洋上風力発電所の周辺に、ロシアのスパイ船とみられる船が接近し、不審な行動をとるケースが相次いでいる。北欧4カ国の公共放送が共同調査し、報じた。ロシアが西側諸国のエネルギー供給網の破壊を準備している可能性があるという。

共同調査したのは、デンマーク「DR」、ノルウェー「NRK」、スウェーデン「SVT」、フィンランド「Yle」の4公共放送。報道によると、トロール船や調査船を装った複数のロシアの船が北海上を航行し、位置を知らせる船舶自動識別装置(AIS)の発信装置の電源を切ったまま、沿岸国の洋上風力発電所に接近するなどしている。船には海中探査装置が積み込まれ、海底の送電線やパイプライン、通信ケーブルなどの位置情報の確認などに使われている可能性があるという。

 公式には海洋調査船とされる1隻は1カ月間発信機を切り、英国やオランダの7カ所の洋上風力発電所に近づいていた。傍受された通信内容から、航行中、継続的にロシアの海軍基地に位置情報を発信していたことが分かった。DRの記者がボートで接近したところ、船上に武装した兵士の姿が見られた。英BBCによると、この船は昨年、英スコットランド沿岸でも目撃されている。

 デンマークの情報当局は2月、ロシアの船が過去数カ月間にわたって北海の洋上風力発電所近辺を航行し、エネルギー供給網を破壊するための準備活動を行っている可能性があるとする異例の警告を発した。4カ国の公共放送は航行記録などを解析し、過去10年間に不審な行動をとったロシア船50隻を特定している。デンマーク情報当局は、ロシアと西側諸国との関係が悪化した場合、ロシアがエネルギー供給を寸断し、欧州経済をまひさせようとしている可能性があると見ている。一方、ロシアは4カ国の公共放送の報道について19日、「根拠がない」とした。

 一方、デンマーク政府は18日、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」が2022年9月に破壊された事件について、事件の数日前にデンマークの巡視船が複数のロシア船の写真計112枚を撮影していたことを明らかにした。独メディアによると、ロシア船はクレーンと小型潜水艦を搭載し、デンマークとスウェーデンのレーダーの捕捉範囲外で活動していたという。事件についてはデンマーク、スウェーデン、ドイツの3国による調査が続いているが、爆発物の特性などから、国家レベルの支援を受けたグループが関与しているとみられている。

■ノルドストリーム爆破、「国家レベル」の行為=プーチン氏

ロシアのプーチン大統領は14日、昨年9月に起きたロシアと欧州を結ぶ天然ガスの海底パイプライン「ノルドストリーム」爆破は「国家レベル」で行われたとの見方を示した。

ロシア産ガスをバルト海経由で欧州に運ぶパイプライン「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」は昨年9月、相次いで破壊された。ロシアは「国際的なテロ」行為と非難している。

この事件を巡っては、デンマーク、ドイツ、スウェーデンが捜査を続けているが、ロシアは捜査結果について知らされていないとしている。

プーチン氏は、国営テレビ局ロシヤ1とのインタビューで「われわれはデンマーク当局に一緒に作業をするか、もしくは国際的な専門家グループを作るという要請をした」と述べ、「答えは、曖昧だった。簡単に言えば答えはなかった。待つしかないと言われた」と説明した。

スウェーデンや他の欧州捜査当局は、破壊は意図的に行われたと指摘しているが、誰による犯行だと考えているかは明らかにしていない。ロシア政府は、証拠を提示することなく欧米による破壊行為だと主張している。

プーチン氏は、親ウクライナの勢力が実行した可能性があるとする報道については「全くのナンセンスだ」と指摘。「素人がこうした行為を行うことはできないため、このテロ行為は極めて明確に国家レベルで行われた」と主張した。


■謎が謎を呼ぶ「ノルドストリーム」爆破事件の真相に、オープンソース情報を駆使する“デジタル探偵”が迫りゆく

ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」が人為的に爆破された事件を巡り、さまざまな“新情報”と称する真偽不明のニュースが続いている。その検証に役立っているのが、。一般公開されている情報を分析して独自の情報を読み取るオープンソース・インテリジェンス(OSINT)の手法だ。

ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」が爆発によって破壊され、大量のメタンが環境に漏れ出した事件が起きたのは2022年9月26日のことだった。この事件を受けて国際的な犯人探しが始まったが、ここ数カ月の間でロシア、米国、英国、そして名称不特定の親ウクライナ派グループのすべてが、このバルト海のパイプラインに爆薬を仕掛けた犯人として糾弾されている。しかし、破壊工作から半年が経過したいまも、謎は解明されていない。

そしていま、この謎解きに“デジタル探偵”たちが介入し、攻撃の背後に誰がいたのかを主張するそれらの衝撃的なニュースに明確な証拠を与えようとしている。一般公開されている情報を分析して独自の情報を読み取るオープンソース・インテリジェンス(OSINT)の調査員たちが公開されているデータを利用し、ノルドストリームの爆発に関する公表情報の細部を立証したり、誤りを指摘したりしようとしているのだ。その取り組みによって、秘密主義と国際政治に覆い隠された今回の事件の明確な事実が垣間見えるようになってきている。

■「新情報」を主張するニュースが相次いだが…

「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」への攻撃の“容疑者”については、新たな情報であると主張するニュースを複数のメディアが2月上旬以降に伝えている。しかし、それらの報道のほとんどは不特定の情報機関関係者や、攻撃に関する政府調査情報のリークなど、匿名の情報源に基づくものだった。

まず、米国人調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが「攻撃の首謀者は米国である」という主張をニュースレタープラットフォーム「Substack」への投稿で発表した。これに続いて『ニューヨーク・タイムズ』とドイツの全国紙『ディー・ツァイト』が、親ウクライナ派グループの犯行とする記事を掲載している(欧州の主要国は以前からロシアが攻撃の首謀者であると推測しており、一方でロシアは英国の関与を指摘してきた)。これまでのところ爆破行為の責任を認めた国はなく、公式な捜査が続いているところだ。

最近の報道は、どれも実際に起きたことを示す確かな証拠をほとんど提供することなく、ただ憶測をあおっただけだった。デンマークの情報機関に15年勤務した経験のあるThink Tank Europaのシニアアナリストのジェイコブ・カールスボによると、それらの主張は「驚くべき」ものではあるが「推測」の域を出ないという。

「わたしの考えでは、それらの主張は事実の全体像を変えるものではありません」と、カールスボは語る。さらに攻撃は非常に手が込んでいるように見え、「国家、あるいは少なくとも国家の後押しを受けた者でなければ、成功させることは非常に困難」だった可能性が高いだろうとも指摘した。

■公開情報に基づいて“証明”されたこと

公式な情報が存在しない状況のなかOSINTの調査員たちは、公開データを使って最近の新たな報道の主張を検証することで真実とのギャップを埋めようとしてきた。

OSINTによる分析は、ある出来事がどのように展開した可能性があるか判断するための強力な手法である。例えば、飛行・航行追跡データは世界中を移動する航空機や船舶の動きを明らかにし、衛星画像は地球の様子をほぼリアルタイムで映し出す。

また、写真や動画の背景に写る小さな手がかりから、撮影された場所を明らかにすることも可能だ。これまでにこの手法を使って、ロシアの暗殺者や北朝鮮の国際貿易制裁逃れの発見、戦争犯罪容疑者の特定、公害の記録などが進められてきた。

一方でノルドストリームの爆破事件に関しては、OSINTを利用できる余地はほとんどなかった。調査員たちは事件のあった海域で識別信号を出していない複数の「正体不明船」を確認したものの、パイプラインのある水中では利用できるデータソースが明らかに限られている。カメラやセンサーがパイプラインの隅から隅まで監視しているわけではないからだ。

「OSINTでこの事件の謎が解明されることはないでしょう。しかし、ほかの仮説を検証したり、補強したりするために使うことはできます」と、OSINTに力を入れているアナリストのオリバー・アレクサンダーは言う。アレクサンダーはノルドストリーム爆破事件を注意深く調査してきた。「どちらかというと、検証のためのツールと考えています」

実際にアレクサンダーらは、これまでに公表された主張を検証してきた。『ニューヨーク・タイムズ』と『ディー・ツァイト』は23年3月7日付の記事で、破壊工作の首謀者はウクライナ人グループであると主張している(ウクライナ側は一切の関与を否定している)。なかでもディー・ツァイトの記事はより詳細で、ドイツの捜査当局がポーランドのある会社からレンタルされたヨットを捜索し、そのヨットの出港地を把握したと主張している。記事によると、2人のダイバーを含む6人が作戦に関与し、全員が偽造パスポートを使用していたという。

この記事の詳細情報によってOSINTの調査員たちは、使用された可能性のあるヨットの追求を始めることができた。アレクサンダーとオープンソースの情報を用いる調査ジャーナリズム団体「Bellingcat」の協力者たちは、追跡データをたどり、可能性のある船の絞り込みを始めたのだ。

そして間もなく続報により、疑惑の船は全長15mのヨット「アンドロメダ号」であることがわかった。アンドロメダ号が停泊していたと思われる港のウェブカメラの映像には、各紙で報じられた時間帯に動きを見せる1隻の船が映っていた(報道によると、アンドロメダ号は小型船なので船舶追跡システムの使用は義務づけられていない)。この船の数年前の動画や写真も見つかった。調査によって明らかになったそれらの詳細な公開情報は、報道を裏付けるものである。

同様にOSINTは、米国が爆破の首謀者であると主張する米国人調査ジャーナリストのハーシュの記事の誤りの証明にも使われた(ハーシュが自分の記事を擁護する一方で、米当局は記事を誤りとしている)。アレクサンダーは特に船舶航行追跡データを用いることで、ノルウェーの船舶は「行動が証明されており」「ハーシュが主張するようなノルドストリームのパイプラインに爆発物を仕掛けられる位置」にはいなかったことを示した。同様にノルウェーのジャーナリストたちによる別の詳細な記事も、衛星データなどを用いてハーシュの主張に異論を唱えている。

■利用された欧州の人々の不安や怒り

この破壊工作を巡っては議論が巻き起こり、さまざまな噂が飛び交う可能性が常にあった。22年2月に始まったロシアによる本格的なウクライナ侵攻は世界の緊張を高め、世界中の外交官にプレッシャーを与えてきた。そしてこの爆破事件を巡る偽情報が渦巻いたことで、事態はさらに混乱を深めている。

戦争に関するネット上の会話を分析したネバダ大学ラスベガス校の偽情報研究者メアリー・ブランケンシップは、この事件の「不確実性とリスクの高さ」が偽情報の拡散に拍車をかけていると指摘する。「この問題の核心は、欧州の人々のなかに存在する不安、緊張、怒りを利用していることです」と、ブランケンシップは語る。

ブランケンシップによると、当初は陰謀論者たちがジョー・バイデン米大統領の侵攻前の声明を引用し、Twitter上で最も早期の偽情報を共有したという。その声明でバイデンは、もしロシアがウクライナに侵攻すれば、ノルドストリームに「終止符が打たれる」だろうと述べていた。それ以降、ロシアと中国が破壊工作に関する裏付けのない説を盛んに共有するようになったと、ブランケンシップは言う。

「偽情報の発信者だけでなく(ロシアの)政権を公式に代表する者たちも、この事件に関して公表されたあらゆるニュース記事を広める取り組みを強化しました。シーモア・ハーシュのブログ記事であれニューヨーク・タイムズの記事であれ、何でもです。ただし、それらの記事は爆発の原因について事実に反したものばかりです」と、欧州連合(EU)のピーター・スタノ広報官は語り、ほとんどの偽情報が伝えている話は「米国に責任がある」という考えが中心になっていると指摘する。

EUの偽情報監視プロジェクト「EUvsDisinfo」は、ノルドストリーム爆破事件に関連する150件以上の偽情報に警告を出してきた。なかにはハーシュの記事を基につくられた情報も含まれている。「EUvsDisinfoの専門家は、ロシア政権がドイツ語メディアに掲載された最近の資料を偽物とみなしていることも見つけました」と、EU広報官のスタノは言う。

■謎を解くパズルのピースの欠如

OSINTは、ノルドストリームへの攻撃に関する主張をちょっとした詳細情報を裏付けるうえで役立っている。一方で、怪しげな主張の嘘を暴く報告は、偽情報や検証が難しい主張よりも人々に届きにくい可能性が高い。

「同じレベルのエンゲージメントが得られることはほぼありません」と、ブランケンシップは言う。「1冊の本になるくらいの証拠を集められたとしても、人々はそれを無視する方法を見つけるでしょう」

また、OSINTによる調査はいくつかの疑問に答えることができるが、限界もあり、新たな疑問の提起につながる場合もある。元デンマーク情報当局関係者のカールスボやその他の専門家たちは、アンドロメダ号は比較的小型のヨットであり、パイプラインを爆破するために必要な量の爆薬を運ぶことはできなかった可能性があると指摘している。

「アンドロメダ号が事件の謎を解くパズルのピースのひとつである可能性はかなり高いものの、誰もがもっともらしく言っているほど大きなピースだとは思いません」と、OSINTに力を入れているアナリストのアレクサンダーは言う。「多くの大きなピースが欠けていると考えています」

破損したパイプの詳細なソナー画像があれば、水中で起きたことを理解するには役立つだろうとも、アレクサンダーは指摘する。

結局のところ、今回の攻撃を背後で企んだ可能性のある者に関して公になっている確かな証拠は、政府が発表したものにしろ、ネット上で公開されているものにしろ、まだほとんどない。水面下では情報機関が容疑者に関するより多くのデータや説をもっているものと思われるが、スウェーデンとデンマークの捜査当局は捜査の進捗状況についてコメントを拒んでいる。

一方で、ドイツの連邦検察庁はヨットの捜索を実施したことを認めたが、爆発物の有無に関する検証は現在も続いている。ドイツ当局は、ウクライナに罪をなすりつけるための「偽旗」作戦の可能性があるとも指摘している。そして各国が調査を終えても、調査結果やそれを裏付ける証拠が公表される保証はない。謎は続くことになる。
2023.04.28 21:58 | 固定リンク | 戦争
NATO「ウクライナへ戦闘車両1700両超提供」
2023.04.28

■NATO、ウクライナへ戦闘車両1700両超提供 約束の98%以上 中国がロシアの違法な侵略を非難できていないと牽制 ストルテンベルグ事務総

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は27日、ブリュッセルで記者会見し、NATO加盟国と友好国がこれまでに、ロシアの侵攻を受けるウクライナに提供した戦闘車両が1700両超に上ることを明らかにした。内訳は装甲車が1550両以上、戦車が230両。各国がウクライナに約束したうちの98%以上が引き渡されたことになるという。

ストルテンベルグ氏は「ウクライナに膨大な量の弾薬も提供し、同国の9つ以上の旅団を訓練した。占領地奪還を続けるための強力な態勢を保持することになる」と成果を強調した。

25日付米紙ニューヨーク・タイムズは、ウクライナが5月にも大規模反攻に出る準備を進めていると報道。今月末までに12旅団を編成する予定で、うち9旅団はNATO加盟国が訓練などを支援していると伝えていた。

AP通信によると、NATO加盟国だけでなく、スウェーデンやオーストラリアなどの友好国も装甲車を提供している。

(NATO)のストルテンベルグ事務総長は27日、ブリュッセルで記者会見し、NATO加盟国と友好国がこれまでに、ロシアの侵攻を受けるウクライナに提供した装甲車は1550両以上、戦車は230両に上ると明らかにした。各国がウクライナに約束したうちの98%以上が既に引き渡されたことになるという。

ストルテンベルグ氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領と中国の習近平国家主席が26日に電話会談したことについて「歓迎するが、中国がロシアの違法な侵略を非難できていない事実に変わりはない」とけん制した。

■ウクライナ、装甲車1550台と戦車230両受領 NATO総長

北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長は27日、NATOの加盟国およびパートナー国はこれまでに装甲車1550台と戦車230両をウクライナに供与したと明らかにした。

 ストルテンベルグ氏は記者会見で、これは昨年2月のロシアによる侵攻開始以降の累計で、ウクライナに供与を約束した「戦闘用車両の98%以上」に当たると述べた。

 また、「これまでに九つのウクライナ軍機甲旅団を訓練し、装備を提供した。失地奪還に向け優位に立てるだろう」と語った。

 ストルテンベルグ氏は一方で、「ロシアを見くびってはならない」とも警告。侵攻の長期化が予想される中、NATO加盟国は「ウクライナが勝利するために必要なものを提供し続ける必要がある」と訴えた。

 7月にリトアニアで開催されるNATO首脳会議では、ウクライナへの「複数年にわたる支援プログラム」が協議される見通しだと明かした。


■ウクライナ、米製迎撃ミサイル「パトリオット」を初受領

ウクライナのオレクシー・レズニコフ(Oleksiy Reznikov)国防相は19日、米国製の地対空迎撃ミサイルシステム「パトリオット(Patriot)」を初めて受領したと発表した。パトリオットは米軍の最新鋭の防空システムの一つとして知られている。

 レズニコフ氏はツイッター(Twitter)に「きょう、防空システムのパトリオットがウクライナに到着した。ウクライナの美しい空がより安全になった」と投稿し、米国、ドイツ、オランダが「約束を守ってくれた」と謝意を表した。

 ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は先に、ロシアの攻撃に対する防衛能力はパトリオットによって「大きく」向上すると期待を示していた。

 米政府は昨年末、ウクライナへのパトリオット供与を発表。これに反発したロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、「解毒剤(対抗手段)」を見つけると述べていた。

 さらに今年に入り、ドイツがシステム一式を、オランダも発射台2基とミサイルなどの供与を発表していた。

 またウクライナ軍は19日、フランスが供与した装輪装甲車「AMX10RC」がすでに配備されていることも明らかにした。

■ドイツ政府は、同国製の主力戦車「レオパルト(Leopard)2」をウクライナに供与すると決定した。

 独「レオパルト2」 ウクライナが熱望した戦闘力ある戦車

 ドイツ政府は、同国製の主力戦車「レオパルト(Leopard)2」をウクライナに供与すると決定した。戦車の供与は、ロシアに対する反転攻勢を強めるウクライナを強力に援護する可能性がある。

 ただ、課題もある。戦車を実戦稼働させるための迅速な訓練と保守管理だ。

 欧州諸国は、近代化させた旧ソ連時代の戦車を数百両供与してきたが、ウクライナ政府は西側諸国が保有する、より先進的な戦車が必要だと訴えてきた。

 レオパルト2は、機能的に最も優れた戦車の一つと世界的に認識されている。欧州各国で運用されていることから、部品や弾薬の調達も容易だ。

■世界が認めた「万能選手」

 レオパルトの製造は、米国製戦車「M48パットン(M48 Patton)」と入れ替えるため1970年代後半に始まり、改良型のレオパルト1やレオパルト2は、強力な火力や機動性、強固な装甲で知られてきた。

 独日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(Frankfurter Allgemeine Zeitung)はレオパルト2を、ドイツの戦車製造業界における自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の「ゴルフ(Golf)」のような存在だと形容し、「世界が認めた万能選手だ」と評している。

 重量約60トンに及ぶレオパルトは、ドイツの武器産業企業クラウス・マッファイ・ベクマン(KMW)が開発し、これまでに約3500両が造られた。

 120ミリ滑腔(かっこう)砲を搭載し、走行しながら敵と交戦することが可能。最高速度は最大で時速70キロ、航続距離は約450キロ。

 メーカーの説明によると、レオパルトは地雷や対戦車砲、即席爆発装置(IED)などに対して部隊を守る「全方位防御」機能を有している。また、4人の乗員が広範囲にわたって敵を探知して攻撃を可能にする技術が搭載されている。

 現在運用が続けられているのは、レオパルト2A4からA7の型。英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)によると、2000年代初めに生産されたA6型は、旧型モデルに比べてより強力な主砲を搭載している。ドイツは、レオパルト2のA5からA7までのモデル計320両前後を保有している。

 ドイツ政府に対して戦車をウクライナに送るよう圧力を強めてきたポーランドは、レオパルト2A4型を、ウクライナに14両供与する意向を示している。IISSによると、A4型は1980年代中盤に生産され、装甲や火力の電子制御システムに改良が施されている。

■2個の戦車大隊

 ドイツ政府報道官は25日の発表に際して、ウクライナ軍がレオパルト2による戦車大隊2個を速やかに編成できるようにするのが狙いだと説明し、当初の14両の供与は「最初の一歩」だと述べた。

 ドイツ政府は、戦車大隊2個が何両の戦車で編成されるのかについては明言していないが、ドイツ連邦軍においては戦車大隊1個は44両で編成されている。

 独誌シュピーゲル(Der Spiegel)は電子版で、ウクライナに対する今後の供与は、兵器産業が保有している分が割り当てられる可能性があると伝えている。

 ただ、しばらく稼働していなかった戦車は修理や整備を要するため、ウクライナへの供与には時間がかかりそうだ。

■訓練は速やかに開始

 ドイツ政府は、ウクライナ軍に対する戦車運用の訓練が「速やかに開始される」としている。

 軍事専門家は、旧ソ連時代の戦車よりも複雑な機構を有するレオパルト2の装備に関する基礎的な訓練には、数週間を要するとの見方を示している。

 専門家は、レオパルトが戦局を変えることになる可能性があると予測。IISSは最近の報告で、もしウクライナ軍が約100両のレオパルト2を受領すれば、前線での効果は「絶大」だとの分析を示している。

 レオパルトの砲身を供給する兵器メーカー、ラインメタル(Rheinmetall)のアーミン・パッパージャー(Armin Papperger)最高経営責任者(CEO)は、独メディアに対し、「(ウクライナ)軍は敵のラインを突破できるようになり、長期にわたる塹壕(ざんごう)戦に終止符が打たれるだろう」との見方を示した。「レオパルトがあれば、部隊は一度に数十キロ前進することが可能だ」

■今後は捕虜取らず「全員殺す」 ワグネル創設者発言

 ロシアの民間軍事会社ワグネル(Wagner)の創設者エフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏は23日、ウクライナ東部激戦地バフムート(Bakhmut)をめぐり、同市で戦闘任務に当たっている自社戦闘員は今後、敵兵を全員殺害し、捕虜は取らないと発言した。

 ワグネルと関連のあるテレグラム(Telegram)チャンネルがこれに先立ち、ウクライナ兵2人がロシア兵捕虜を撃ち殺そうと話す様子を映した動画を投稿していた。チャンネルは動画の出所には触れておらず、AFPも裏付けを取れていない。
2023.04.28 12:26 | 固定リンク | 戦争

- -