ザポリージャ戦線「大規模な反転攻勢・防衛線突破!」クリミヤ包囲へ
2023.08.28


「ザポリージャ戦線」激戦地からウクライナ軍が進軍続ける…ロシア軍は地上戦で阻止できず 

ウクライナ国営通信によると、ウクライナ軍の報道官は27日、ロシア軍への大規模な反転攻勢としてザポリージャ州で南下を図る「ザポリージャ戦線」の激戦地ロボティネから、進軍を続けていると発表した。

同戦線は起点の同州オリヒウからロボティネ近郊の約15キロ・メートルまでの範囲が激戦地とみられており、一帯では、露軍が地雷原や 塹壕ざんごう などの防御陣地を築いている。ウクライナ軍は22日にロボティネを奪還した後、要衝トクマク方面に前進している。40回以上の戦闘があり、露軍は地上戦ではウクライナ軍の前進を阻止できないため、空爆の数を増やしているという。

一方、ウクライナ政府は27日、黒海経由でのウクライナ産穀物の輸出再開に向け、暫定的に設定した民間船舶用の新たな「人道回廊」を使った第2陣の船が、南部オデーサ港から出港したと発表した。出港したのは昨年2月の開戦前から足止めされていたリベリアの貨物船で、アフリカ諸国向けの金属製品を積んでいる。

英国防省の27日の発表によると、黒海では露軍とウクライナ軍の小規模な戦闘が起き、緊張が高まっている。先週には北西の海域で、露軍の戦闘機がウクライナ軍の船を攻撃した。

■ロボティネ、トクマク、メリトポリ攻略

ウクライナ軍、ザポリージャ戦線に精鋭部隊投入か…「チャレンジャー2」戦闘車両装備

米誌フォーブスは15日、ウクライナ軍が大規模な反転攻勢を展開する南部ザポリージャ州の戦線に、英国供与の「チャレンジャー2」など米欧の戦闘車両を装備する精鋭部隊を投入したと報じた。ロシア軍の補給拠点都市メリトポリの奪還に向け、攻勢を強める狙いとみられる。

投入されたのは2000人規模の第82空中強襲旅団。ドイツの歩兵戦闘車「マルダー」や米国の装甲車「ストライカー」も保有し、ザポリージャ戦線のロボティネ周辺に配置されたという。

メリトポリ攻略は、ロシアが一方的に併合したクリミアと露本土の分断につながり、ウクライナにとって戦略上、重要な意味を持つ。旅団は既に露軍陣地近くまで進軍したとの情報もある。

 一方、米紙ワシントン・ポストは17日、ウクライナ軍は年内にメリトポリに到達できないとする米情報機関の分析を報じた。

 要因として、地雷原と 塹壕ざんごう で強固な防衛線を築いた露軍が激しく抵抗していることを挙げている。米国防総省は大規模兵力を一つの戦線に集中させるよう勧告したが、ウクライナ軍は戦線の絞り込みをせず、三つの戦線に分散する戦術を採用したという。「メリトポリの近接都市の奪還さえ難しい」(軍事アナリスト)との見方もあると伝えている。

■ロボティネで国旗掲揚 全域奪還

ウクライナ軍は23日、同軍がロシア軍が支配していた南部ザポロジエ州ロボティネに国旗を掲げたとテレグラムで発表した。ただ、ロボティネ全域をロシア軍から奪還したかは不明。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官が公開した映像では、ウクライナの国旗が焼け焦げた木々に囲まれ、ひどく損傷した建物の屋根に掲げられている。

8月23日はウクライナで「国旗の日」の祝日にあたる。

同軍はテレグラムに「総司令官の署名入りの国旗が国旗の日に、ロシアの侵略者に破壊された学校に掲げられた」と投稿した。

■ザポリージャ州で最大な防衛線突破

ウクライナ軍 南部でロシア軍“最も強固な防衛線”一部突破か

領土奪還を目指すウクライナ軍は南部ザポリージャ州でロシア軍の最も強固な防衛線の一部を突破したとも伝えられ、今後、南部でのさらなる前進につなげられるかが焦点です

南部での反転攻勢を続けるウクライナ軍について、ロイター通信は26日、南部ザポリージャ州のロボティネを奪還したとする部隊の指揮官の話として、ウクライナ軍がロシア軍の最も強固な防衛線の一部を突破したという見方を伝えました。

部隊の指揮官はロイター通信の取材に対し「われわれは地雷が埋められた主要な道路を通過した。ここからはより早く進むことができる」と述べて進軍のスピードが今後、早くなると自信を示しました。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も26日に「ウクライナ軍は最も困難と考えられているロシア軍の防衛線を突破して前進している」と分析しています。

一方で「ウクライナ軍にとって次のロシア軍の防衛線もすでに射程圏内にある。ただ、次の防衛線はこれまでよりはぜい弱かもしれないがそれでもかなりの難関になる」として、ウクライナ軍は今後も対戦車用の障害物や地雷などによる防衛線を突破する必要があるとも指摘しています。

反転攻勢の遅れも指摘される中でロボティネを奪還したとするウクライナ軍が今後、南部でさらなる前進につなげられるかが焦点です。

ウクライナ南部で反転攻勢の作戦に参加しているウクライナ軍の指揮官がNHKのオンライン取材に応じ、一部の地点では、ロシア軍が構築した第1の防衛線を突破するなど少しずつ前進していると明らかにしました。その一方で「ロシア側は常に兵力を補充している」と述べて警戒感を示し、ウクライナ側としては消耗を抑えて兵力を温存しながら着実に作戦を進めていくと強調しました。

今月24日、NHKの取材に匿名で応じたのは、ウクライナ軍の「第71独立猟兵旅団」に所属する偵察部隊の指揮官で、この部隊は現在、反転攻勢の焦点となっている南部ザポリージャ州で戦闘に参加しているということです。

指揮官は、部隊の詳しい位置は明かせないとしつつ、前線の状況について「いくつかの地域で成功し、成果が増えている。ロシア軍の1つ目と2つ目の防衛線の間で戦闘が行われているところもある」と述べ一部の地点では、第1の防衛線を突破するなど、少しずつ前進していると明らかにしました。

ただ、ロシア軍の防御について「地雷が密集している。手薄な部分を探しているところだ」と述べたうえで「ロシア側は常に兵力を補充している」と述べ、ロシア軍は、適宜、兵士を入れ替えるなど戦力を維持、増強しているとして警戒感を示しました。

また「敵は、航空戦力において優勢であるだけでなく電子戦のシステムや無人機においても優位に立っている」として、ウクライナ軍の通信が妨害され、部隊間のコミュニケーションにも問題が生じていると明らかにしました。

一方、ウクライナ軍の戦い方に関して指揮官は、偵察や攻撃の手段として無人機が重要な役割を担っているとして「無人機なしでの作戦は考えられない。ただ、航続時間は20分ほどで機材の損失も激しい」と述べ、一層の無人機の確保が必要だと強調しました。

反転攻勢の遅れを指摘する声もあることについては「ロシア軍のように大きな損失を出すことは受け入れられない。装備をむだにできず、まずは兵士を大切にしなければならない。ことを急ぐことは望ましくない」としたうえで「作戦は必ず成功する」と述べ、勝利に向けて兵士や装備の消耗をおさえて兵力を温存しながら着実に作戦を進めていくと強調しました。

■ウクライナ、南東部の集落解放発表 掃討作戦続く

ウクライナ軍は28日、戦略的に重要な南東部の集落ロボティネを解放したと発表した。先週、ロボティネに国旗を掲げ、掃討作戦を継続しているという。

現地の同軍司令官は先週、ロイターに対し、南部で最も厳しいロシアの防衛線を突破したとみられると発言。今後、進軍のペースが速まると述べていた。

ロボティネはザポロジエ州の前線の町オリヒウの南10キロメートルに位置し、ロシアが占領する要衝トクマクに向かう重要な道路沿いにある。

ウクライナ軍はアゾフ海に向けて南下しており、トクマクを制圧すれば反転攻勢で大きな節目となる。

ロシアは、ウクライナによるロボティネの奪還を確認していない。

■防衛線突破で“膠着打開”クリミヤ包囲へ

ロシア軍が構築する強固な防御線に進軍が阻まれ、戦況膠着が続く中、ウクライナ軍は22日、南部ザポリージャ州の集落ロボチネに到達した。

ウクライナ軍による奪還成否は不明だが、ロボチネをほぼ制圧したとの見方が指摘されている。ミリー米統合参謀本部議長は「ウクライナ軍はロシア軍の主要な第1防衛線を突破することに成功した」と評価した。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、「ウクライナ軍は突破口を開きかけている」と大規模反転攻勢の着実な進展を明らかにした。

ウクライナ軍のロボチネ到達に貢献をしたのは、兵士2000人で組織する「第82独立空中強襲旅団」で、英主力戦車「チャレンジャー2」やドイツの「マルダー歩兵戦闘車」を保有する最強部隊と高い評価を受けている。米戦争研究所の最新情報を基礎に戦況を詳報・解説する。
2023.08.28 18:54 | 固定リンク | 戦争
プリゴジン氏すでに死亡「アブラムシのようにたちまちつぶされる」
2023.08.24



プリゴジン氏すでに死亡説「プーチン氏の命令」で自家用機撃墜 米シンクタンク 「アブラムシのようにたちまちつぶされる」

 ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏が所有するビジネスジェット機が23日に墜落し、同氏を含む乗員乗客10人の死亡が確定的とみられているなか、米シンクタンク「戦争研究所」(ISW)は同日、「プーチン大統領がロシア軍司令部にプリゴジン氏の飛行機を撃墜し、死亡するよう命じたのは、ほぼ間違いない」と分析した。

 ISWは、「プーチン氏の許可なしにショイグ国防相ら軍の関係者がプリゴジン氏を処刑する可能性は、きわめて低い」と主張。その上で、「ワグネルのリーダーの暗殺は、独立組織としてのワグネルを排除するための最終段階だったとみられる」と指摘した。

 ジェット機が墜落する前日の22日には、プリゴジン氏に近いとされる、ウクライナ侵攻で軍の副司令官を務めたスロビキン航空宇宙軍司令官の解任が報道された。これについてISWは「偶然ではないだろう」とし、「クレムリン(ロシア政府)は、反乱に関与した者は処分され、ワグネルの挑戦は決着済みであるという明確なメッセージを送ろうとしたのだろう」との見方を示した。

 ISWはまた、プリゴジン氏らの「暗殺」は、「ワグネルの指揮系統とブランドに劇的な影響を与えるだろう」と述べた。ワグネルの指揮官や戦闘員らが身の危険を恐れたり、士気が低下したりする可能性にも言及した。

■目撃した女性「ドローン攻撃です」

 蛇行するように墜落していく飛行機のような物体。草原の中で燃え上がる様子も捉えられています。

 目撃している女性:「ドローン攻撃です。爆発が2回ありました。落ちていくの、見て」

 23日、ロシア北西部のトベリ州で墜落したジェット機には、乗客乗員合わせて10人が搭乗していて、全員死亡したということです。

 ワグネルはプリゴジン氏の死亡を発表しました。

 ジェット機はモスクワからロシア第2の都市・サンクトペテルブルクに向かう途中でした。

 プリゴジン氏は21日にビデオメッセージをSNSに投稿していました。

 プリゴジン氏:「ワグネルは偵察や捜索活動をし、すべての大陸においてロシアをより偉大にする」

 ただ、プリゴジン氏はアフリカにいるとしながらも、具体的な国名や撮影日時については明かしませんでした。

■墜落原因不明も…撮影者「撃ち落された」

 煙を出しながら、ジェット機が機体を制御できずにゆらゆらと落下していく。地上では黒い煙が上がっていた。

 辺り一帯が炎に覆われ、機体の一部だろうか、残骸らしきものも激しく燃えている。

 ロシア北西部のトベリ州。23日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者・プリゴジン氏が所有するビジネスジェット機が墜落したのだ。

 非常事態省によると、ジェット機には乗客乗員合わせて10人が搭乗していて、全員が死亡。ロシア航空輸送庁は、プリゴジン氏が搭乗していたと発表した。

 墜落の様子を撮影していた人はこう話している。

 撮影した人:「撃ち落された。爆音が2回聞こえた。見て見て、落ちていく」

 墜落の原因は分かっていない。

 ロシアメディアは、防空システムによる撃墜や機内で爆発が起こった可能性を指摘している。

直前に反乱後初SNS投稿も…場所や日時不明

 プリゴジン氏は6月の反乱後、目立った行動を避けていたが、21日に反乱後初めてビデオメッセージをSNSに投稿したばかりだった。

 プリゴジン氏:「ワグネル部隊は偵察と捜索活動を行っている。すべての大陸でロシアをさらに偉大にし、アフリカをさらに自由にする。アフリカの人々に正義と幸福を」

 プリゴジン氏は、アフリカにいるとしながらも具体的な国名や撮影日時については、明かしていなかった。

 墜落事故はなぜ起きたのだろうか。

■墜落機から黒煙 ワグネル系SNSに「訃報」

ロシアの首都モスクワの北西約300キロ 自家用機墜落 死亡確認「政敵粛清」

 夏の終わりで日が長い23日夕、ロシア中部トベリ州の集落クジェンキノに自家用ジェット機が墜落した。所有者は民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏。SNSに投稿された現場で撮影したとされる動画は、黒煙を上げる残骸を捉えていた。

各種報道によると、同機は午後5時54分(日本時間同11時54分)、モスクワの「空の玄関口」シェレメチェボ空港を出発。26分後にレーダーから消えた。向かう先はプリゴジン氏が事業の拠点を置く出身地サンクトペテルブルクだった。

主要メディアが惨事を伝えるや否や、同機とされる航空機が青空を真っ逆さまに墜落する動画がインターネットに掲載された。撮影した近隣住民とみられる女性は、ウクライナからの飛来が多発するドローンの撃墜と勘違いした様子で「爆発音が2回聞こえ、落下している」と実況中継した。

ワグネル系列メディアはSNSで、同機は上空でロシア軍の地対空ミサイルによって撃墜されたと主張した。さらに、プリゴジン氏らの死亡はまだ正式に確認されていないにもかかわらず、「訃報」を早々に発表。サンクトペテルブルクの拠点ビルには窓ガラスをライトアップして「十字架」を描いた。

この日はプリゴジン氏所有の別の自家用ジェット機もモスクワ周辺を飛んでおり、消息を巡って情報が交錯。同氏は「アフリカ諸国の一つ」で撮影したとされる動画メッセージを21日にSNSで公表しており、ロシアに帰国したばかりだったという証言もある。

■墜落機搭乗者リストにプリゴジン氏 10人死亡、連絡取れず―ロシア

ロシア当局は23日、中部トベリ州クジェンキノで自家用ジェット機が墜落し、搭乗者リストに民間軍事会社ワグネルの創設者エブゲニー・プリゴジン氏(62)が含まれていると発表した。乗っていた10人全員が死亡したもようだ。プリゴジン氏が実際に搭乗していたかどうかは確認されていないが、ワグネル系列メディアはSNSで、プリゴジン氏の「訃報」を伝えた。爆発物が仕掛けられていたという見方もあり、当局は捜査を開始した。

ジェット機は、モスクワのシェレメチェボ空港から北西部サンクトペテルブルクに向かっていた。墜落原因は不明。地元メディア「フォンタンカ」によると、関係者はプリゴジン氏と連絡が取れなくなっている。同氏の側近ドミトリー・ウトキン氏も一緒にいたという情報がある。

ウクライナ侵攻に協力していたワグネルは前線から撤退後の6月23~24日、武装反乱を起こした。首謀したプリゴジン氏は、プーチン大統領から免責を受けるのと引き換えに、反乱軍と共に隣国ベラルーシに渡ることを約束した。しかし、拠点とするサンクトペテルブルクなどとの間を行き来し、合意を守っていなかった。

反乱を事前に予見していたとされる国際的な調査報道機関ベリングキャットのロシア担当調査員は最近、英紙に対し「6カ月後、プリゴジン氏は死んでいるか、2度目の反乱を起こすかのいずれかだ」と予想。反乱時にプーチン氏が「裏切り者」という強い言葉を使ったことを根拠に挙げ、近くプリゴジン氏の身辺に異変が起きる可能性があると分析していた。

■バイデン米大統領「驚かない」 

プーチン氏主導を示唆―ロシア機墜落 バイデン米大統領は23日、記者団に対し、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏が搭乗機リストに記載されている自家用ジェット機が墜落し、乗員全員が死亡したとの情報に関し、「何が起こったのか、真相に関しては分からないが、驚きはない」と述べた。

バイデン氏は「ロシアで起きることでプーチンが関わっていないことは多くない」と述べ、プーチン大統領が関与していたとの見方を示唆した。ただ、「答えを知るほどには十分に分かっていない」として、詳細には触れなかった。

■プーチン氏周辺で40人が〝怪死〟

オルガルヒ、科学者、軍幹部、官僚…「アブラムシのようにたちまちつぶされる」ロシアのウラジーミル・プーチン大統領周辺で、不審死が相次いでいる。

特に顕著なのが昨年2月のウクライナ侵略開始以降で、オリガルヒ(新興財閥)や科学者、技術者、軍幹部、政治家、官僚ら約40人の死が「事故」や「自殺」として片付けられているという。政敵に暗殺を仕掛けたり重罪を科すなど粛清を強めている。識者は、プーチン政権内の混乱が背景にあると指摘する。

米政府は17日、ロシア反体制派のアレクセイ・ナワリヌイ氏毒殺未遂に関わったとして、ロシア連邦保安局(FSB)の職員4人に対する制裁を発表した。FSBはプーチン氏の出身母体であるソ連国家保安委員会(KGB)の流れをくむ諜報組織だ。

ナワリヌイ氏は2020年8月20日にロシア国内でお茶を飲んだ後、意識を失い救急搬送された。ドイツでの療養を経て21年1月に帰国した際、過去の経済事件で有罪判決を受けながら出頭を怠ったなどとして逮捕され、刑務所で服役。「過激派団体を創設した罪」などで新たに懲役19年の刑を言い渡された。

■「ガスプロム」科学者も

米CNNは、昨年だけで少なくとも13人の実業家が怪死したと報じた。ガスプロムやルクオイルなど石油大手企業の幹部らの遺体が「転落死」や「無理心中」とみられる状況で発見された。露独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ」は、ガスプロムの汚職疑惑について調査報道を展開していた。

航空研究所や造船所の所長、物理学者など科学者、技術者のほか、政界や行政関係者も怪死を遂げている。今年5月には科学・高等教育省のピョートル・クチェレンコ次官がキューバから帰国中の航空機内で体調を崩して死亡した。クチェレンコ氏は死の直前、ジャーナリストの友人との会話でウクライナ侵攻を批判していたという。友人が公開した会話では「抗うつ薬と精神安定剤を同時に飲んでいる。あまり役に立たない」「アブラムシのようにたちまちつぶされる」などと語っていた。

昨年12月には西部ウラジーミル州議員で、富豪としても知られるパベル・アントフ氏らが滞在先のインドのホテルで死亡しているのが見つかった。アントフ氏は「プーチン大統領の支持者だ」と強調していたが、ウクライナ侵略に批判的なメッセージを発信したとみられる。

■国防省幹部が転落死

さらに今年1月には、南部ダゲスタン共和国のナンバー2まで上り詰めたマゴメド・アブドゥラエフ氏が交通事故で死亡。2月にはプーチン氏の盟友とされた国防省幹部が転落死したとされる。

筑波大学の中村逸郎名誉教授は「オリガルヒや反体制派らの不審死は治安当局の関与をにおわせるものも多かったが、政権に近い政治家や官僚の不審死は侵略前はあまりなかった。周辺国が関与した可能性もゼロではないが、プーチン政権内部の権力闘争を反映しているとも考えられる。プーチン氏が政権内のバランスをとるのに苦心しているかもしれない」と分析した。

■クルスクとモスクワ「ドローン空爆」

クルスクとモスクワが夜間に無人機によって攻撃された

クルスクでは、ドローンが駅の屋根に衝突し、屋根が炎上し、窓が吹き飛ばされ、5人が負傷した。

モスクワ市長は、防空部隊がモスクワとその地域上空で「無人機を撃墜した」と述べた。一方、ドモジェドヴォ空港とヴヌーコヴォ空港は「カーペット」計画を再導入し、数十便が再び遅延した。

■ウクライナ軍、クリミア半島で防空ミサイルシステム「S400」を破壊

ウクライナ軍は23日、ロシア軍が実効支配するクリミア半島で、地対空防衛ミサイルシステム「S400」を破壊したと明らかにした。

ウクライナ国防省情報総局によれば、攻撃は現地時間午前10時ごろ、クリミア半島のオレニフカ近郊で行われた。

CNNは「ジオロケーション」と呼ばれる方法で、情報総局が公開した爆発を捉えた動画とクリミア半島の同じ地域とを特定した。

情報総局によれば、爆発によって、S400やミサイル、要員が完全に破壊された。

情報総局は、こうしたシステムはロシア軍でも数が限られており、ロシア軍の防空システムにとって打撃となるとの見方を示した。
2023.08.24 14:09 | 固定リンク | 戦争
クリミア橋攻撃「敗走の露軍そこにクラスター弾・ほぼ全滅」
2023.08.20


クリミアのケルチ橋に複数のミサイル攻撃 敗走のロシア軍そこにクラスター弾ほぼ全滅 ウ軍のへりキラー「Ka52」撃墜

ロシア国防省は12日、ロシアがウクライナから併合したクリミアと、ロシア本土を結ぶ主要交通路のケルチ大橋が、ウクライナのミサイル2発に攻撃されたと発表した。

ロシア国防省は、ウクライナが同日午後1時ごろ、S-200ミサイル2機をケルチ橋へ向けて発射したものの、どちらも迎撃したため、橋に損傷はなかったとしている。S-200は冷戦時代にソヴィエト連邦で開発された誘導型長距離高高度防空ミサイルシステムで、ウクライナが地上戦用に改良したものとみられる。

ソーシャルメディアに投稿された動画では、ケルチ橋の近くで煙が上っている様子が見える。

ウクライナはこの件についてコメントしていない。

ロシア外務省は、「このような野蛮な行為には必ず対応する」と述べた。

ロシアがクリミア知事に任命したセルゲイ・アクショノフ氏は、ケルチ海峡で3発目のミサイルが撃墜されたと述べた。

アクショノフ知事の顧問は、橋の通行は一時停止されたと明らかにした。立ち上った煙は、軍による意図的な「煙幕」だと話した。

これに先立ちロシアは同日、クリミア近くでウクライナのドローン(無人機)20機を撃墜したとしていた。

ウクライナは今回のケルチ橋攻撃や使用兵器について認めていないが、ウクライナが奪還を目指すクリミアをはじめウクライナ南部と、ロシア本土を結ぶ重要な輸送路なだけに、昨年から繰り返しケルチ橋を攻撃している。

ウクライナのニュースサイト「ユーロマイダン・プレス」は7月、改良型S-200ミサイルがケルチ橋のほか、ロシアのロストフ州とブリヤンスク州の軍事拠点を攻撃するために使用されたと伝えた。

7月12日には橋で起きた爆発で2人が死亡し、1人が負傷した。

ウクライナは当時、攻撃したことを認めなかったが、BBCロシア語が取材したウクライナ治安当局の関係者は、攻撃は自分たちによるもので、水上ドローン(無人機)を使ったと話した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は7月21日、ケルチ大橋は正当な軍事標的だと主張した。ゼレンスキー氏は米コロラド州アスペンで開かれた安全保障関連会議でオンライン演説し、「この戦争の弾薬を届けるのに毎日使われる」大橋を「無効」にする必要があると述べ、ウクライナ政府は大橋を「敵の施設」とみなしていると話していた。

昨年10月に起きた橋の爆発については、当事者はまだ判明していない。当時の監視カメラ映像には、上向きに傾斜する橋の路面を複数の車両が通行する間に、その後ろの片側で巨大な火の玉が発生する様子が映っていた。この爆発の影響でケルチ橋は部分的に閉鎖され、今年2月に全面通行が再開した。

ウクライナ軍は、ロシアが2014年に併合したクリミアをはじめ、2022年2月からの侵攻で制圧した東部や南部の地域を奪還しようと、春から反転攻勢を続けている。夏に入り、ケルチ橋周辺での軍事行動が歴然として頻度を増した。

ゼレンスキー大統領は6月下旬の時点で、反攻の進展が「望んだより遅い」とBBCに対して認めていた。ロシア軍が20万平方キロメートルのウクライナ領土に地雷を仕掛けて守りを固めているため、進軍は容易ではないと、ゼレンスキー氏は話していた。

ロシア政府は、首都モスクワのクレムリン(大統領府)や政府省庁の入る高層ビル群への相次ぐドローン攻撃も、ウクライナによるものと非難している。

モスクワへのドローン攻撃についてウクライナは自分たちによるものと認めていないものの、最初の高層ビル攻撃をロシアが発表すると、ゼレンスキー大統領は「戦争は徐々にロシア領に戻りつつある。ロシアにとって象徴的な中心地や軍の基地へ。これは不可避で自然で、まったく公平なプロセスだ」と発言している。

他方、ロシアはウクライナの民間施設への攻撃を続けている。ウクライナによると、今月5日には北東部ハルキウ州の輸血センターを破壊。南部ザポリッジャでも民間インフラの攻撃が続いているという。

■ウ軍スウェーデン製ミサイルで「露軍Ka52へり」撃墜

ウクライナ軍の旅団が6月4日夜にウクライナ南部と東部で待望の反攻作戦を開始したとき、ロシア空軍のヘリコプターが待ち構えていた。

ウクライナ軍は首都キーウなど主要都市周辺に防空網を集中させていたため、前線の旅団は上空からの攻撃にさらされることになった。ロシア軍はウクライナの計画の弱点を突いた。

それから10週間後、ウクライナ軍は反抗を率いる旅団の上空へと防空範囲を拡大したようだ。ウクライナ軍は8月17日、ロシア軍の攻撃ヘリ2機を撃墜した。

この撃墜はウクライナ軍第47独立機械化旅団にとっては特に喜びだった。同旅団は南部ザポリージャ州マラトクマチカの南方で6月8日夜に攻勢をかけた際、ロシア軍ヘリからの攻撃で大損害を受けた。

同旅団と、ともに戦っている第33独立機械化旅団は地雷や大砲に見舞われ、空からも攻撃を受けた。その夜、レオパルト2A6戦車やレオパルト2R地雷除去車、M2ブラッドレー歩兵戦闘車など優れた戦闘車両を少なくとも20両超失った。

ウクライナ軍は最終的にマラトクマチカに広がる地雷原を回避する方法を見つけ、6月8日に放棄した車両の多くを回収。これらの車両は修理されたと思われる。第47旅団と第33旅団の戦隊は数キロ南下し、最終的にロボティネに到達した。ロボティネは約72km南のメリトポリにのびるルート上に位置し、ロシア軍の拠点が置かれている。

第47旅団がロシア軍の攻撃ヘリKa52に報復したのは、ロボティネのロシア軍陣地のすぐ北の場所だった。Ka52の多くはロシアが占領している港湾都市ベルジャンスクを拠点としている。

第47旅団はスウェーデン製のサーブRBS70レーザー誘導ミサイルを発射してKa52を撃墜。ヘリの乗員2人のうち1人が死亡したと報じられた。同日、別の部隊も東部バフムート周辺でKa-52を撃墜した。

この2機の撃墜で、ロシアが18カ月におよぶウクライナとの戦争で失ったKa52の数は少なくとも計41機になった。ロシアの航空機メーカー、カモフがロシア空軍向けに製造したKa52のおよそ3分の1にあたる。

■ロシア軍が前線上空の制空権を失う可能性

Ka52は過酷な戦争を経験してきた。高度なVikhr(ヴィーフリ)対戦車ミサイルを使用するために、Ka52の乗員は数秒間、地上から数百百メートル弱ほどのところでホバリングしなければならない。攻撃を受けやすくなるその数秒間、Ka52の乗員は搭載の通信妨害装置で身を守る。

Ka52はレーザーや赤外線で誘導されるミサイルには対抗できるが、レーダー誘導ミサイルには対抗できない。そのためKa52は、レーダーを妨害する装置を搭載しているより重量のあるミルMi28と編隊を組んで飛ぶことが多い。

だが、この策が常に機能するとは限らない。特にRBS70に対してはそうだ。重量約86キロの2人で操作するこの防空システムは、超音速ミサイルを最大約9キロ先まで飛ばす。Vikhrの射程距離とほぼ同じだ。

RBS70は主にレーザーで誘導されるが、レーザーが偽装されても機能する。「地上のオペレーターは発射後いつでも手動で操作することができ、それにより目標地点を変更することができる」と開発元のサーブは説明している。

ロシア軍は41機のKa52に加えて少なくとも60機のヘリと74機超の固定翼機を失ってなお、前線上空をほぼ支配している。

ウクライナ軍の反攻に少しでも貢献し、生き残るためには、同軍のヘリはとんでもなく低空飛行しなければならない。一方、同軍の戦闘機は遠くから攻撃を仕かけ、西側製のさまざまな精密ミサイルや滑空爆弾を発射している。

最も激しい地上戦の真上に攻撃ヘリや戦闘爆撃機を自在に配備できるのはロシア空軍だけだ。

だがそれは今のところは、だ。ウクライナ軍のすべての旅団が、第47旅団のようにミサイル部隊を前方に配置することができれば、ロシア軍は最終的に前線上空の制空権を失う可能性がある。

■ウクライナ軍のM-55S戦車、想定外の激戦で奮闘

ウクライナ軍はロシアの占領軍に対する反転攻勢の準備を進めていた時期に、西側の支援国から寄付された重装備の大半を、新たに編制した旅団に配備した。

なかでも、陸軍の第47機械化旅団は多数の戦闘車両を与えられた。米国製M2歩兵戦闘車(IFV)90両のほか、フィンランドから供与されたレオパルト2R重地雷処理車全6両、スロベニアから供与されたM-55S戦車全28両などである。

第47機械化旅団はこの春、これら新しい車両の訓練に多くの時間を費やしていた。だが不可解なことに、ウクライナ軍が待望の反攻を6月上旬に始める少し前、第47機械化旅団が南部のザポリージャ州に展開したときには、M-55Sは同伴していなかった。

ただ今では、M-55Sの配備先ははっきりしている。それは、ロシア軍の占領下にある東部ルハンスク州西部の都市クレミンナのすぐ西側。運用しているのは、ウクライナ陸軍の別の新たな旅団、第67機械化旅団だ。

M-55Sはこの旅団に属する比較的規模の小さい大隊に配備され、同じ旅団の通常規模の戦車大隊に配備されているT-72戦車とともに戦っている。

証拠は徐々に積み上がっていた。7月12日、第67機械化旅団の医療要員として従軍しているアリーナ・ミハイロワは、クレミンナの西にある樹林帯の中に停められたM-55Sの写真を撮っている。数日後、M-55S1両がロシア軍の砲弾を食らい、イスラエル製の光学機器を破壊されている。クレミンナ郊外の所在地を監視で特定されたうえでの攻撃だった。

さらに7月22日ごろ、やはりクレミンナ郊外で別のM-55にロシア軍の砲弾が直撃し、大破している。

第47機械化旅団が、保有する唯一の戦車だったM-55Sを第67機械化旅団に譲った理由はよくわからない。M-55Sは旧ソ連のT-55戦車を大幅に改修し、英国製105mm砲などを搭載したものだが、ウクライナ軍参謀本部は、第47機械化旅団が南部トクマクの攻勢軸で持ちこたえてきたような戦闘に投入するには脆弱すぎると懸念したのかもしれない。

重量36トン、乗員4名のM-55Sは、たしかに爆発反応装甲(ERA)を何重にも備えてはいる。しかし、その下の鋼鉄は最も厚いところでもせいぜい数百mmしかない。現在の水準から見れば非常に心もとない防護だ。

ある意味、ウクライナ軍指導部の判断は正しかった。第47機械化旅団は南部の戦線で、ポルトガルとドイツから供与されたレオパルト2A6戦車21両をすべて運用する第33機械化旅団と組んでいる。重量69トンのレオパルト2A6は、場所によってはなんと1400mmの鋼鉄に匹敵する防御力を持つ。にもかかわらず、運用する大隊はすでにレオパルト2A6を少なくとも2両失っており、さらに9両が損傷を受けている。

もっとも、軍指導部がM-55Sを最も激しい戦闘にはさらしたくないと考えたのだとすれば、結果として大きな誤算になった。というのも、ロシア軍がウクライナ軍の反攻に対する反攻のために、使用できる最良の戦力を集中させることにしたのは、ほかならぬクレミンナの西方だったからだ。ロシア軍がここでの反・反攻によって、ウクライナ軍がはるか南で進める反攻作戦を頓挫させようという目論見なのは明らかだ。

ロシア軍はこれまでに、クレミンナの西へ数km前進している。それでも、M-55Sを擁する第67機械化旅団やスウェーデン製の最新鋭車両を装備する第21機械化旅団はロシア軍の大きな前進を食い止めている。反攻頓挫の試みを頓挫させているのだ。

ウクライナ軍は、M-55Sの戦車大隊がロシア軍の最良の部隊と直接衝突するのを避けようとしたのかもしれない。もしそうだったとすれば皮肉だが、結果としてこの大隊はロシア軍の最良の部隊と相まみえることになった。

■ロシア兵がウロジャイネから敗走、そこにクラスター弾

ウクライナ東部ドネツク州南部の集落、ウロジャイネを防衛するロシア軍守備隊の敗北はほぼ必至だった。南北に並行して走る3本の道路沿いに数百の建物が並ぶこの集落に対し、6月上旬以来、ウクライナ海兵隊の全4個旅団を含む強力な師団規模のウクライナ軍は波状的な強襲をかけながら前進し、側面から攻撃を加えてきたからだ。

ウロジャイネからずっと南下していくと、黒海に面しロシア軍の占領下にある港湾都市マリウポリに出る。ウロジャイネは、このライン上に数珠状に連なるロシア軍の重要な拠点の1つだ。ウクライナ軍はウロジャイネの東側と西側から前進し、第37自動車化狙撃旅団を含むロシア軍守備隊をじりじりと追い詰めてきた。そして、ロシア軍守備隊に残されたウロジャイネからの退路はとうとう1本だけになった。南側に隣接するサビトネ・バジャンニャ、スタロムリニウカ両集落に抜けるT0518という道路だ。

「ウロジャイネの奪還は時間の問題だった」と独立した調査組織コンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)は書いている。消耗したロシア軍守備隊は12日か13日、全面撤退もしくは部分撤退を余儀なくされることになった。ロシア兵らはT0518道路とそれに隣接する草地を白昼堂々、徒歩で退却した。

ウクライナ軍のドローンはその様子を上空から監視していた。そして砲兵部隊が照準を合わせた。あたりは血の海になった。

ウクライナ国防省が13日に公開した2本のドローン映像には、ロシア兵数十人が道路を走る様子が映っている。1本目の動画では榴弾(りゅうだん)が炸裂し、兵士らが地面に吹き飛ばされる。2本目の動画では、対人・対装甲用クラスター弾DPICM(二重用途改良型通常弾)が撃ち込まれ、退却するロシア兵の上に子弾がばらまかれる。

ロシア軍は、2022年2月にウクライナに全面侵攻した当初からクラスター弾を使用してきた。ウクライナ軍は2022年末にトルコ製クラスター弾を入手し、先ごろ北大西洋条約機構(NATO)式の155ミリ榴弾砲用に米国製M483A1型DPICMも手に入れた。

重量約47キログラムのM483A1は空中で破裂して子弾が放出される。子弾が撒かれる範囲は破裂時の高度で変わってくるが、フットボール場より広くなることもある。米陸軍の野戦教範(フィールドマニュアル)によれば、各子弾は「2.5インチ(約6.3センチメートル)超の均質圧延装甲を貫通し、(あるいは)人員を無力化できる」

つまり米国製DPICMは装甲車両にとっても危険なものであり、無防備な歩兵にとっては致死的なものになる。ウロジャイネやそこからの脱出路で何人のロシア兵が死亡したかは不明だ。数十人かもしれないし、数百人にのぼるかもしれない。いずれにせよ、ウロジャイネに現在、生存しているロシア兵がいるとすれば、それはウクライナ側の捕虜になった者だけである可能性が高い。

これには異論もある。ウクライナ側、ロシア側どちらのウォッチャーの中にもウクライナ軍がウロジャイネを解放したとみる向きがある一方、米首都ワシントンにあるシンクタンク、戦争研究所(ISW)は13日の戦況分析でこう注意を促している。「ISWはロシア軍がウロジャイネから完全に撤退したという確証を得ていない。ロシア軍は現在、少なくともこの集落の南部に陣地を保持している可能性が高い」

とはいえ、ウロジャイネ南部の陣地になお少数のロシア兵が残っていようがいまいが、この集落をめぐる戦いが近々どういう結果になるかについては争いの余地がない。ロシア側ではすでに責任の所在探しが始まっている。「ロシアの情報スペースではウロジャイネでのウクライナの前進を機に、この区域でのロシア側の士気の低さや指揮上の課題が強調されている」とISWは指摘している。

ロシアのある軍事ブロガーは、歩兵を支援する戦車を送らなかったとして第37自動車化狙撃旅団をやり玉に挙げ、旅団の部隊は酔っ払っていたとも主張している。別の軍事ブロガーは、ウクライナ南部に展開しているロシア軍の旅団や連隊の多くを統括する第58諸兵科連合軍の司令官を解任したのはロシア政府の失策だったと難じている。

ウロジャイネやその周辺で死亡したロシア兵にとっては誰に責任があろうがもはや関係ない。第58諸兵科連合軍や第37自動車化狙撃旅団、ロシア政府にはほどなくして、防御陣地を保持できると証明する新たな機会が与えられるだろう。ウクライナ軍がウロジャイネを解放すれば(まだ解放していないとしての話だが)、次に狙うのは必然的にサビトネ・バジャンニャとスタロムリニウカになる。マリウポリへの途上にあるロシア軍の次の拠点だ。
2023.08.20 19:00 | 固定リンク | 戦争
バイデン氏「中国と内通している政治家を排除しろ」
2023.08.14



異例の台湾訪問 麻生副総裁「戦う覚悟」発言の真意 中国の反発も“狙い通り” ワシントン・ポスト「中国と内通している政治家を排除しろ」

「ワシントン・ポストの報道は、米国の岸田首相に対する警告だ。米国と機密情報共有を可能にするサイバー・セキュリティーの強化とともに、『中国への機密情報漏洩を遮断しろ=中国と内通している政治家を排除しろ』という要求だ」

3日間にわたり台湾を訪問した自民党の麻生太郎副総裁。各国の政治家や有識者を相手にした講演にのぞむと、中国を念頭に「戦う覚悟を持つことが抑止力になる」と訴えた。この発言が中国の激しい反発を招くなど波紋を呼んでいる。しかし、こうした反応も“狙い通りだ”と、麻生氏周辺は強調する。
麻生氏はなぜ、このような発言をしたのか。同行した記者が、その真意に迫った。

■異例の訪台の背景 麻生氏のこだわり

自民党の麻生副総裁は、8月7日から台湾を訪問した。自民党によると、党のNO.2である副総裁が訪問するのは、日本が台湾と断交した1972年以降初めてだという。
断交後では、党の最高位となる麻生副総裁の異例の訪台。その背景について、自民党関係者は次のように明かしている。

「麻生氏は、台湾へのこだわりが昔から強い。本当は、もっと早い段階に行きたかったくらいだ」

1972年の日中国交正常化に伴い、日本との国交を断つこととなった台湾。政府間交流には制限があるため、自民党青年局が日台外交の主軸となってきた。青年局長の経験もある麻生氏は、長期的に台湾との人脈を築いてきており、副総裁になってからも訪台を模索していたことが、今回の訪問が実現した背景にある。

もう一つ背景にあるのが、緊迫する東アジアの安全保障環境だ。以前から麻生氏は、軍事的圧力を強める中国を念頭に、台湾海峡での戦争、いわゆる「台湾有事」が始まった場合「日本でも戦争が起きる可能性は十分に考えられる」と公言してきた。台湾海峡の安全保障環境について憂慮しているのだ。
そして、麻生氏に近い別の関係者は、訪台を前に、こう強調した。

「麻生氏が台湾に行くこと自体が、『抑止力』として中国に対するメッセージとなる」

■抑止力の強化「戦う覚悟」発言の経緯

「今ほど、日本・台湾・アメリカをはじめとした有志の国に、強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。こんな時代は無いのではないか。『戦う覚悟』です」(麻生副総裁)

8日、台北市内で開かれた国際フォーラムで講演した麻生氏は、対中国を念頭にこう力強く訴えた。この発言に対して、中国側はすぐさま反発。国内でも、立憲民主党の岡田克也幹事長が同日の記者会見で「台湾有事になったとしてもアメリカははっきりと軍事介入するとは言っていない。非常に軽率だ」と批判するなど、波紋を呼んだ。

なぜ、麻生氏は中国側の反発が予想される中、あのような発言をしたのか。その経緯について、麻生氏の訪台に同行した鈴木馨祐元外務副大臣が、9日、BSフジの番組内で解説した。

「今回、実は麻生太郎衆議院議員個人の発言ということではなくて、自民党副総裁という立場での講演。当然、これは政府の内部も含めて、調整をした結果のことですから。少なくともこのラインというのは『日本政府としてのライン』」(鈴木元外務副大臣)

また、鈴木氏は「岸田総理と極めて密に連携をした。今回もいろいろ訪問前にやっている」とも明らかにしている。

しかし、ある政府関係者は、「戦う覚悟」は政府として公式にすり合わせたラインではないと明言した。さらに、麻生氏の発言を聞いた外務省高官は「『戦う覚悟』といっても、色んな戦い方がある」と火消しに走った。言葉の解釈をうやむやにすることで、事態の鎮静化を図りたい意図が透けて見える。

いずれにせよ、麻生氏は「戦う覚悟」という言葉を使うことを、事前に周辺には伝えていた。「岸田総理の口から言えないからこそ、麻生氏自身の思い入れが強い言葉だった」と、周辺は語っている。

■中国が「台湾有事」で日米壊滅計画 外事警察関係者、米は岸田首相に「中国と内通している政治家を排除しろ」と要求

ジョー・バイデン米大統領が10日、西部ユタ州の選挙イベントで語った「中国は時限爆弾だ」という発言が注目されている。習近平国家主席率いる中国経済への深刻な懸念を伝えたとされる。中国国家外貨管理局も同時期、外国企業による4~6月期の対中直接投資は49億ドル(約7100億円)で、前年同期比87・1%減と過去最大となったと発表した。ただ、岸田文雄政権の動向も含めて、別の見方をする情報当局関係者もいる。ジャーナリスト、加賀孝英氏が最新情報に迫った。

「悪い人たち(=習主席以下、中国共産党幹部)が問題を抱えると、悪いことをする」

バイデン氏は10日の選挙イベントで、冒頭の「時限爆弾」発言に続き、中国をこう激しく批判した。

米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は翌日、「中国国内のあつれきが世界に及ぼす影響を指摘したものだ」と説明した。だが、バイデン氏の本音はまったく違う。

「バイデン氏は、中国のサイバー攻撃などに、ブチ切れている。米国は、中国による『台湾侵攻極秘作戦計画』の詳細を握っている。第1戦闘作戦がサイバー攻撃だ。次が武力総攻撃だ。米中はすでにサイバー戦闘状態に突入している」

中国のサイバー部隊について、防衛省関係者は「最強だ。総員17万人超。中核は約3万人の攻撃専門部隊だ。さらに、政府が司令塔となる民間サイバー部隊があり、日本への攻撃も行っている。中国は『台湾有事』の際、台湾と日本、米国をサイバー攻撃で壊滅状態にする計画を立てている」と語った。

対立激化は、次の事実で明らかだ。

①7月中旬、中国当局とつながりのあるハッカー集団が、米国の国務、商務両省を含む約25組織のメールアカウントに不正侵入していたことが発覚した。ジーナ・レモンド商務長官や、ニコラス・バーンズ駐中米国大使、ダニエル・クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)など、対中政策要人が標的とされていた。

②7月29日、米紙ニューヨーク・タイムズが、米領グアムの米軍基地を支える水道、通信など基幹インフラ深部にマルウェアが仕掛けられていたと報じた。米政府は、中国のハッカー集団の仕業と断定し、撤去に乗り出した。「台湾有事」直前に起動し、米軍の出動を妨害する目的とみられる。

③8月初め、米連邦捜査局(FBI)は、中国の情報機関に軍事機密を提供した疑いで、海軍兵士2人(中国系米国人)を逮捕した。漏洩(ろうえい)した情報は、米海軍艦船の設計図や、兵器システム、「台湾有事」を想定した大規模軍事演習の作戦計画、在沖縄米軍基地のレーダーシステムの電気系統図や設計図…などだった。

こうしたなか、米紙ワシントン・ポスト(電子版)が7日、米国が2020年以降、中国軍のハッカーが日本の防衛機密を扱うネットワークに侵入していたことを複数回通報・警告していたと報道した。

米国側は「近年で最も深刻なハッキング」と日本側に指摘したというが、日本側は情報漏洩を否定している。

何が起きていたのか。この連載「スクープ最前線」は次の事件を報告している。

□20年8月、防衛省は「中国軍が海上民兵の乗る漁船1万隻に『(沖縄県)尖閣諸島へ出撃せよ』と命令を出したという極秘情報を入手した。急遽(きゅうきょ)、米国と協議し、周辺海域で日米軍事演習を実施して、尖閣強奪を阻止した。

□21年4月、警視庁公安部は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など約200の団体・組織がサイバー攻撃を受けた事件で、中国人2人を書類送検した。バックに中国軍サイバー部隊「61419部隊」がいた。

□21年12月、共同通信が「台湾有事で(日米)共同作戦計画の原案策定」というスクープ記事を報じた。台湾有事の際、「米軍は南西諸島に臨時拠点を築く」というものだが、米国は「日本の政府関係者が漏らした」とみている。

前出の外事警察関係者は「ワシントン・ポストの報道は、米国の岸田首相に対する警告だ。米国と機密情報共有を可能にするサイバー・セキュリティーの強化とともに、『中国への機密情報漏洩を遮断しろ=中国と内通している政治家を排除しろ』という要求だ」と語った。

さらに、中国軍が暴走する危険がある。

「軍強硬派の一部が、習氏に『台湾侵攻の早期決断』を進言している。自民党の麻生太郎副総裁が8日、台湾の講演で、台湾有事を念頭に『日本、台湾、米国をはじめとした有志国には戦う覚悟が求められている』『いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使う』と語り、中国側を激怒させた」

事態は深刻だ。岸田首相の「国家と国民を守る」断固たる決意が求められている。機密情報漏洩の放置は同盟国への裏切りだ。米国は、岸田首相の覚悟、決意を疑っている。




■台湾の次の総統が重要 与党候補に注文も

「戦う覚悟」発言の同日、蔡英文総統と会談した麻生氏は、記者団に次のように話した。

「来年の1月に行われる(台湾総統選の)選挙の結果は、日本にとっても極めて大きな影響が出ますから、そういった意味で『次の人を育ててもらいたい』と蔡英文総統に申し上げました」(麻生副総裁)

会談の出席者によると、麻生氏は「来年5月に迫る蔡英文総統の任期中は、台湾有事が起こる可能性が低い」と見ていて、次の総統が台湾有事を起こさせないためには重要であると訴えたというのだ。

また、来年の総統選に立候補する与党民進党の頼清徳副総統との昼食会の冒頭、麻生氏はこう注文をつけた。

「選挙で選ばれて台湾の総統となる方の、この種(台湾有事)の問題に対する見識、いざとなった時に“台湾政府が持っている力”を台湾の自主防衛のために、きっちり使うという決意・覚悟というものが、我々の最大の関心です。」(麻生副総裁)

その後の昼食会の中で、麻生氏と頼氏は、台湾有事が起きた際の対応について認識をすり合わせた。初対面だった2人は「抑止力」を機能させるための議論を深めた。

■中国「内省干渉」と反発も 麻生氏周辺“中国の反応は狙い通り”

9日、在日中国大使館は「身の程知らずで、でたらめを言っている」と、麻生氏の発言に激しく反発した。加えて、こう牽制している。

「日本の一部の人間が執拗に中国の内政と日本の安全保障を結びつけることは、日本を誤った道に連れ込むことになる」

中国外務省も「台湾海峡の緊迫した状況を誇張し、対立をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した」と、同様に批判を強めた。

一方で、“狙い通りの効果が出ている”と麻生氏周辺は強調する。

「中国が反応しているということは『抑止力』になっているということだ。今回の麻生氏の『戦う覚悟』発言で台湾での戦争リスクは下がる」

また、麻生氏自身も講演でこう主張している。

「台湾海峡の安定のために、それ(防衛力)を使うという明確な意思を相手に伝える。それが『抑止力』になる」(麻生副総裁)

「伝える」という意味では、麻生氏の発言は成功したのかもしれない。しかし、中国に一定の刺激を与えたことで「抑止力」に繋がるのかは、いまだ不透明だ。

麻生氏周辺も「2027年の夏までに、台湾有事が起こる可能性がある」と警戒する。

他方、日中両国は、9月上旬のASEAN関連首脳会議に合わせ、岸田総理と中国の李強首相との首脳会談の調整に入った。対話再開に向けた中国側の“シグナル”とも受け取れる。習近平国家主席との会談は予定されていないが、双方の外交当局が模索を続けている最中だ。

「戦う覚悟」発言が、日本・中国・台湾、この3者の関係にどう変化をもたらすのか。揺れ動く台湾をめぐる情勢は、今後も目が離せない。
2023.08.14 10:35 | 固定リンク | 戦争
衛星画像で捉える「ロシア軍艦撃沈」
2023.08.06



黒海軍港への無人艇攻撃、ロシアで憤りと懸念

黒海に面するロシア南部ノボロシスクの軍港が無人艇攻撃を受けたことに対し、ロシアの識者や軍事ブロガーの間では、憤りと懸念の入り交じった声が出ている。

攻撃の結果、黒海のロシア軍艦1隻が大きく傾いた。ウクライナ支配下の領土から数百キロ離れた場所で実施された大胆な攻撃だった。

ロシアのジャーナリスト、セルゲイ・マルダン氏はノボロシスクへの無人艇攻撃について、「端的に言って、紛争の地理的範囲が飛躍的に拡大した。ロシア政府省庁の庁舎に対するドローン攻撃をはるかに上回る」と指摘した。

そのうえで「今日の攻撃から言えることはただ一つ、我々は今後も戦いを迫られるということだ」とした。

ロシアの別のテレグラムチャンネルは、攻撃による被害は出ておらず、無人艇は破壊されたとのロシア国防省の声明に人々は「困惑」していると指摘した。

カプラル・ガシェトキンの筆名で執筆する別の識者は、テレグラムのチャンネルで、「大型揚陸艦の乗組員は攻撃に対する備えができていなかったようだ」と説明。「ウクライナのテレグラムで公開された無人艇からの映像には、無人艇が全く抵抗を受けずに揚陸艦の側面に接近する様子が映っている。誰ひとり無人艇に攻撃せず、気付いてもいないようだ」と指摘した。

ガシェトキン氏によれば、今回の戦争を通じてノボロシスクの海軍基地はロシア黒海艦隊の後方拠点になっており、比較的安全と考えられていたという。「だが、そろそろ気付かなくてならない。敵は『長い腕』を持っていて、その腕は非常に遠くまで届く」としている。

■ロシア〝補給路大打撃〟クリミア大橋

ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアに、大打撃となりそうだ。ウクライナ軍が6日、ロシアが実効支配するクリミア半島と、ウクライナ南部のヘルソン州を結ぶチョンガル橋とゲニチェスク橋を攻撃したと発表した。ロシアは通常よりも遠回りのルートに頼ることになる。重要な補給路を使えなくなることで物流に大きな影響が出るとみられ、ロシア側の輸送に遅延が起きるとの分析もある。

米シンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ軍は6日、ロシアの地上連絡線(GLOC)にある2つの主要な橋を攻撃した」と説明し、ロシア軍が、遠回りとなる半島西側からの別ルートを使った輸送に変更せざるを得なくなるとした。

ウクライナは7月、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ「クリミア橋」を攻撃するなど、ロシア側の補給路に狙いを定めている。

戦争研究所は、今回の攻撃を受けてロシアが迂回(うかい)ルートを取ることで、「物流に甚大な混乱をもたらし、遅延や交通渋滞が起きる可能性がある」と分析した。

米シンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ軍は6日、ロシアの地上連絡線(GLOC)にある2つの主要な橋を攻撃した」と説明し、ロシア軍が、遠回りとなる半島西側からの別ルートを使った輸送に変更せざるを得なくなるとした。

ウクライナは7月、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ「クリミア橋」を攻撃するなど、ロシア側の補給路に狙いを定めている。

ヘルソン州のロシア側行政府トップは、チョンガル橋の攻撃に、イギリスが供与した巡航ミサイル「ストームシャドー」が使われたとし、穴が開いた路面写真を公開した。

戦争研究所は、今回の攻撃を受けてロシアが迂回ルートを取ることで、「物流に甚大な混乱をもたらし、遅延や交通渋滞が起きる可能性がある」と分析した。

■ロシア軍艦撃沈はウクライナ保安局と海軍の合同作戦 衛星画像で捉える

ロシア南部の黒海沿岸にあるノボロシスク港で4日起きた同国海軍艦船への攻撃でウクライナの関係筋は同日、ウクライナ保安局と海軍の合同作戦だったことを明らかにした。

CNNの取材に、「大型の艦船であるオレネゴルスキー・ゴルニャクが打撃を受けた」とも指摘。攻撃に使われたのはTNT火薬の約450キロを積んだ水上ドローン(無人艇)で、同艦船にはロシア軍兵士約100人が乗船していたとした。

「攻撃で深刻な損傷を被り、任務遂行が出来なくなった」とも述べた。

SNS上に流れた動画や複数のロシア人ブロガーの説明では、曳航(えいこう)される船は戦闘艦船のオレネゴルスキー・ゴルニャクと特定しているようにみえる。

CNNには、船舶へ近づく無人艇を示す動画が提供された。この船舶は、ノボロシスク港で船体を傾けている海軍艦船と同一のもののようにみえる。動画の長さは36秒間で、無人艇から撮影されており、船舶への突進は夜だったこともわかる。動画は、無人艇が船舶に到達すると共に終わっていた。

CNNはこの船舶の名称を最終的に確認出来てはいない。

ロシア国防省は4日、無人艇2隻がクラスノダール地方にあるノボロシスク海軍基地を狙ったが、ロシア艦船に攻撃を阻止されたとの声明を発表していた。

■衛星画像で捉えたロシア揚陸艇撃沈「ぎりぎりでかわす」

米衛星運用会社マクサー・テクノロジーズが12日に撮影した新たな衛星画像には、ウクライナ南部の黒海に浮かぶスネーク島の近くの海上にミサイル1発が撃ち込まれる様子が写っている。

2筋の白煙の近くを航行する1隻の艦船について、マクサーはロシア軍のセルナ級揚陸艇と特定した。

同艦は急角度で向きを変えているように見える。ミサイルはその付近の海上に着弾している。

島の近くを写した別の画像には、重量物運搬用のクレーンが載った艀(はしけ)の隣で海中に沈んでいる艦船が見える。マクサーはこの艦船もセルナ級揚陸艇と特定した。

同艦がどのようにして沈没したのかは不明だが、オデーサ地域軍政の広報官は8日の時点で、揚陸艇1隻とラプター級哨戒艇2隻が攻撃を受けたと説明していた。

同広報官はまた、ウクライナ軍がロシア軍のヘリコプターをスネーク島で破壊したとも述べた。ウクライナ軍は8日、ヘリコプター1機がミサイルで破壊される動画を公開している。

上記の広報官は12日、ロシア海軍の補助艦「フセボロド・ボブロフ」で火災が起き、スネーク島の領域からクリミア半島南西部のセバストポリにえい航されていると発表した。同艦は今回の衛星画像に写っておらず、CNNはこの発表の信憑性を確認していない。

現時点でロシア側は、前出の艦船のいずれについても損失を確認していない。

■「フセヴォロド・ボブロフ」は、「多機能支援船」沈没

ウクライナ南部オデーサ地域軍政の広報官は、ロシア海軍の補助艦「フセボロド・ボブロフ」で火災が起き、黒海のスネーク島の領域からクリミア半島南西部のセバストポリにえい航されていると発表したが、沈没した模様。

■クリミア半島沖でロシアタンカー破壊

ロシアの占領下にあるウクライナ南部のクリミア半島とロシア本土を挟むケルチ海峡で5日未明、ロシアのタンカーがウクライナの無人艇(水上ドローン)による攻撃を受けた。ロシア側の当局者が明らかにした。

黒海に面するロシア南部ノボロシースク港の海難救助当局によると、タンカーは自力で航行できず、タグボートが派遣された。

タス通信は当局の話として、海峡の南側でタンカーが損傷していると報道。機械室が多少の被害を受け、現在停泊していると伝えた。

ロシアでは前日、ノボロシースク海軍基地がウクライナの無人艇による攻撃を受け、軍艦1隻が大きな被害を受けたばかり。

ロシア側の当局者は、5日の攻撃ではクリミアとロシア本土を結ぶケルチ橋とは無関係だと述べた。同橋はウクライナ侵攻開始後、攻撃により2度にわたり大規模な被害を受けた。

ウクライナは、今回の攻撃について公式声明は発表していない。

■ロシア南部サマラの石油精製所ミサイル攻撃

ロシア軍は28日、ロシア南部ロストフ州のタガンログの上空でウクライナのミサイルを迎撃したと発表した。ミサイルの破片が民間人が負傷し、建物を損壊したとしている。

ロストフ州はウクライナとの国境に近い。同州のゴルベフ知事によると、博物館のほか、カフェが被害を受け、住宅の窓ガラスも吹き飛んだ。9人が負傷して病院に搬送されたが、死者は出ていないという。

この件に関してウクライナは今のところ反応していない。

これとは別に、ロシア南西部サマラ州の州都サマラで、国営石油会社ロスネフチが保有する石油精製所で爆発が発生。アレクサンドル・ヒンシュテイン議員は対話アプリ「テレグラム」への投稿で、爆発は爆弾によるものとの見方を示した。大きな被害はなく、死傷者も出ていないという。
タス通信は、爆発に関与したと疑われる人物が拘束されたと報じた。

ウクライナとの国境に近いロシアの地域では、エネルギー施設や武器庫などを標的とした攻撃がこれまでも発生している。

■米CIA長官も情報提供呼びかけ

ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアが、西側情報機関の「草刈り場」となっている。英秘密情報局(MI6)のリチャード・ムーア長官が、ロシア国民にスパイ活動への協力を呼びかけたのに続き、米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官が、情報収集の好機だとみている趣旨の発言を行ったのだ。「ワグネルの乱」で混迷を深めるプーチン政権は、さらに窮地に追い込まれそうだ。

■250万回視聴

CNNによると、バーンズ氏は20日、米コロラド州で行われたアスペン安全保障フォーラムで、ロシアには多くの不満がたまっているとして「情報機関としてこのチャンスを生かす機会を無駄にはしない」と表明。「一世代に一度」の情報収集の機会だとの見方を示した

CIAは5月、SNSでウクライナ戦争に不満を持つロシア人に機密共有を呼び掛ける動画を投稿した。バーンズ氏はこの件についても最新情報として、動画が最初の1週間で250万回視聴されたことを明らかにした。

ロシアに対しては、MI6のムーア氏が19日、チェコの首都プラハでの講演で、「流血を終わらせるため、協力したいというロシア人へのドアはいつでも開いている」と情報提供を呼びかけていた。

■プリゴジン氏〝粛清〟情報

プリゴジン氏〝粛清〟情報 プーチン大統領と会談後、6月末から消息不明に「クレムリン招待は罠だった可能性」

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による「断末魔のあがき」が続いている。ウクライナ侵略による軍事的、経済的、政治的負担に加え、民間軍事会社「ワグネル」の創設者、エフゲニー・プリゴジン氏による反乱の余波が収まらないのだ。プーチン氏は事態収拾後、プリゴジン氏らワグネル幹部と面会したとされるが、その発信内容には食い違いが見られる。プリゴジン氏に急遽(きゅうきょ)浮上した「暗殺・粛清」情報。苦境を脱するためか、ロシアはウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する「穀物合意」からの一時的離脱を発表した。世界的な食料危機を引き起こすつもりなのか。ジャーナリストの加賀孝英氏による最新リポート。

「プーチン氏は、すでに戦争に負けている」

ジョー・バイデン米大統領は13日、訪問先のフィンランドの首都ヘルシンキで行われた記者会見で、こう断定した。

事実、プーチン氏はいま、崖っぷちに立たされている。

ウクライナ軍による大規模な反転攻勢に加え、6月下旬に勃発した、プーチン氏の最側近、プリゴジン氏によるクーデター未遂事件「ワグネルの乱」が、プーチン氏の権威を失墜させ、地獄に突き落とした。

外事警察関係者は「プーチン氏は狂乱状態だ。自身の暗殺におびえ、プリゴジン氏と通じた裏切り者の捜索、大粛清を開始した。治安当局が入手した『ワグネル秘密VIPリスト』には、ロシア軍幹部や治安当局者ら30人の名前が書かれていた。しかし、プリゴジン一派はその1000倍ともいわれ、治安当局はパニック状態だ」と語った。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は13日、「ワグネルの乱」で、「少なくとも13人のロシア軍将校らが一時的に拘束された」「約15人が停職や解雇の処分を受けた」と報じた。

この中には、「ハルマゲドン将軍」と呼ばれ、ウクライナ侵攻の副司令官を務めるセルゲイ・スロビキン航空宇宙軍総司令官や、スロビキン氏の副官であるアンドレイ・ユーデン氏、軍参謀本部情報総局のウラジーミル・アレクセーエフ副長官が含まれている。

こうしたなか、衝撃情報が飛び込んできた。

前出の外事警察関係者は「プリゴジン氏の粛清情報が浮上している。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は10日、ワグネルの乱から5日後の6月29日、プーチン氏がクレムリンに『プリゴジン氏とワグネル指揮官ら35人を招待して面会した』『彼らは今後も祖国のために戦うと誓った』ことを発表し、全世界を驚かせた。これ以降、プリゴジン氏の消息は途絶え、生きている姿は誰も見ていない。西側情報当局はいま、確認に走っている」と語った。

さらにロシア有力紙「コメルサント」が13日、突然掲載したプーチン氏のインタビュー記事が、混乱に拍車をかけている。

プーチン氏はここで、プリゴジン氏らワグネル幹部らとの6月29日の面会について、内務省出身のアンドレイ・トロシェフ大佐を新たなトップにして、ワグネルがロシア軍の指揮下で軍務を続ける選択肢を提案した。多くの指揮官はうなずいたが、プリゴジン氏が「いや、皆はその決定に同意しない」と拒否、決裂した事実を明らかにした。

以下、日米情報当局関係者から入手した情報だ。

「プーチン氏はもともと、ワグネルの乱に激怒して、連邦保安庁(FSB=旧KGB)に『プリゴジン氏の暗殺・粛清』を命令していた。ペスコフ氏は『プーチン氏がクレムリンに招待した』と説明したが、クーデター未遂犯をなぜ招待するのか。プーチン氏はコメルサントのインタビューで、プリゴジン氏を排除しようとした事実を口にした。ペスコフ氏の説明にはなかった事実だ。口が滑ったのか。招待が罠だった可能性がある」

「ゼレンスキー暗殺」申し出
プーチン氏は、ワグネルの乱の一報を聞くや、モスクワから逃げ出し、世界の嘲笑をかった。それを払拭するために、ロシアはさまざまな情報工作を仕掛けていた。続く日米情報当局の情報はこうだ。

「ロシア情報当局は、プーチン氏を大物に見せるため、プリゴジン氏らとの面会情報を流した。プリゴジン氏は面会で、プーチン氏の歓心を買おうと、自分から新しい任務を申し出たという。『ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の暗殺』だった。プーチン氏は『ヤツの頭をクレムリンに持ってこい』と命令した。英タブロイド紙などが報じた。ウクライナを脅す効果もあるが、狙いは1つだ。プリゴジン氏が殺された場合、『犯人はウクライナだ』とする偽旗作戦だ」

米情報当局は「プリゴジン氏が(暗殺者から)自分の行動、居場所を隠すため、『ボディーダブル』(替え玉・影武者)を使用していた」という情報をつかんでいる。

バイデン氏は13日、冒頭で紹介したヘルシンキでの記者会見で、プリゴジン氏の消息について、こう語った。

「神のみぞ知る」「仮に、私が彼なら食事の内容には気をつけるだろう」

バイデン氏は、ロシア情報機関の常套手段、毒殺を警告した。
2023.08.06 21:14 | 固定リンク | 戦争

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