DiDi(滴滴)が中国共産党の規制により最終赤字1兆円(500億元)
2023.08.19


■中国の配車アプリ最大手「滴滴出行(ディディ)」の2023年の財務状況 2023年12月期決算は最終損益が500億元(約1兆円)の赤字

滴滴出行は2023年1〜3月期決算(未監査)を発表しました。売上高は前年同期比19.1%増の427億元(約8400億円)、株主に帰属する純損失は前年同期の163億元(約3200億円)から12億元(約240億円)に縮小しました。

しかし、2023年12月期決算は最終損益が500億元(約1兆円)の赤字となり、前の期の5倍近くに拡大しました。

中国当局の規制強化などで運営コストが増加したことが原因とみられます。

滴滴出行は2022年6月に米国で上場しましたが、その直後に中国政府から個人情報保護や国家安全保障に関する調査を受けました。その結果、中国国内で新規ユーザー登録が停止されたほか、アプリストアから削除されるなどの影響を受けました。

滴滴出行は債務不履行に陥っているという報道は見当たりませんでしたが、上場後の株価下落や規制強化により、資金繰りや事業展開に困難が生じている可能性があります。

■DiDi(滴滴)が中国共産党の規制により最終赤字1兆円(500億元)になったということです。

売上高は23%増の1,738億元ということですから、3.5兆円程度です。主力の中国事業が20%増と全体を押し上げた、いわゆるウーバー的な配車サービスだけでなく、デリバリーサービスにもビジネスを展開しているということです。

これだけ伸びているのに、大幅減益の理由は、ここで働いている人への待遇改善などを実施した結果ということですが、それにしてもこれだけの赤字の説明にはなりません。

働いている人の待遇改善はもちろん必要ですが、ニューヨークの上場も取りやめ、23%増収でこんな赤字を出さなければならない事業は本当に継続できるのか、経済への影響は本当に吸収可能なのか、おおきなお世話ですが、心配になってきます。

■中国政府が滴滴出行に規制強化した理由は、主に以下の二つです。

滴滴出行が違法に個人情報を収集していたという疑いがあったこと。中国政府はインターネット安全法に基づいて、滴滴出行のアプリを新規ダウンロードや登録を停止させました。

滴滴出行は人々の移動に関する個人情報を最も詳細に把握しているIT企業であり、国家のデータ安全に関する管理はより厳格に行われるべきだという見方がありました。

滴滴出行が米国で上場したことで、中国のデータが外国に流出する可能性があったこと。中国政府は米国との対立を深めており、米国の証券取引委員会(SEC)が中国企業の監査資料の開示を求めていることにも警戒していました。

滴滴出行の最大株主はソフトバンク・ビジョン・ファンドで、2位はアメリカのUberでした。

■中国では、データ流出を防ぐために、個人情報保護法やサイバーセキュリティ法などの法制度を整備しています。

個人情報保護法は2021年11月1日から施行され、個人情報の収集、処理、共有、転送などに関するルールを定めています。サイバーセキュリティ法は2017年6月から施行され、重要なデータは国内に保存することや、海外へのデータ転送には政府の承認が必要であることなどを規定しています。

また、企業や研究機関も自主的にデータ流出を防ぐ対策を講じています。例えば、従業員に対して情報管理の教育や監査を行ったり、機密情報へのアクセス権限を制限したり、データの暗号化やバックアップを行ったりしています。

さらに、従業員との雇用契約において、情報漏洩の禁止や罰則を明記したり、退職時に機密情報の返還や削除を確認したりしています。

■中国の個人情報保護法は

2021年11月1日に施行された、中国で個人情報の保護を包括的に規定する初めての法律です。この法律は、個人情報の定義、取り扱いの適法性、本人への情報提供、委託先の管理・監督、共同利用、越境移転、本人の権利、保護措置、監査およびインシデント報告、DPO(データ保護責任者)の任命、代表者の設置、個人情報保護影響評価などについて規定しています。

この法律は、中国国内で個人情報を取り扱う企業だけでなく、中国国外で個人情報を取り扱う企業も対象としています。特に、中国国内の個人に対して商品またはサービスを提供することを目的とする場合や、中国国内の個人の行為を分析、評価することを目的とする場合は、この法律が適用されます。

この法律に違反した場合は、最大で5,000万元(約80億円)または前年度売上高の5%の罰金が科されるだけではなく、事業の停止や事業許可の取り消しが命じられる場合もあります。また、企業だけでなくその責任者に対しても罰則が科される可能性があります。

■中国2位に浮上のネット配車「T3出行」、約200億円を調達 王者DiDiの牙城を揺るがす

中国オンライン配車最大手の「滴滴出行(DiDi Chuxing)」は今年1月までの約1年半にわたり、サイバーセキュリティに関する法律に違反した疑いで当局の調査を受けていた。調査期間中、同社が新規ユーザーの登録を停止していた間隙を突き、競合他社が事業を拡大し、勢いを増した。

当局の審査終了、中国配車最大手「DiDi」 1年半ぶり新規登録再開が意味するもの

そのうちの1社、「T3出行(T3 Mobility)」がこのほど、シリーズA+で洪泰基金(Hongtai Aplus)などから10億元(約200億円)超を調達した。同社は現在、プレIPO(新規株式公開)の資金調達を進めているという。香港市場や上海・深圳のA株市場への上場を計画しているとみられる。

T3出行は、2019年4月に自動車大手の「中国第一汽車集団(FAW Group)」「東風汽車集団(Dongfeng Motor)」「長安汽車(Changan Automobile)」が共同設立したオンライン配車プラットフォームで、本社を南京市に置く。21年10月に実施したシリーズAでは、中信集団(CITIC Group)やアリババグループ、テンセントなどから77億元(約1500億円)を調達した。中国のオンライン配車企業が2018年以降に実施した資金調達としては最高額だった。

アリババ支援のネット配車「T3出行」が1360億円調達 近年業界最高額

T3出行は23年6月、設立後4年間の実績を披露した。現在は、中国118都市で事業を展開しており、1日当たりの配車件数は300万件余り、登録ユーザー数は累計2億人を突破、登録ドライバー数は110万人を超えているという。22年の累計配車件数の伸び率は業界トップ、市場シェアは2位だった。

*2023年8月12日のレート(1元=約20円)で計算しています。

■自由がある国と自由がない国の経済活動とは

一般的には自由がある国の方が経済成長率や所得水準が高く、貧困や不平等が低い傾向があります。これは、自由がある国では市場経済や民主政治が発展し、個人や企業の権利や自由が保障されることで、イノベーションや競争力が高まり、社会的な安定や公正さが促進されるからです。

一方、自由がない国では計画経済や権威主義政治が支配し、個人や企業の権利や自由が制限されることで、イノベーションや競争力が低下し、社会的な不安や不公平が増大することが多いです。

また、自由がない国では政府の介入や腐敗が激しく、資源の効率的な配分や環境保護にも支障をきたすことがあります。

例えば、世界の自由度指数3で自由と評価された国々の平均GDP成長率は2019年に3.0%でしたが、自由がないと評価された国々の平均GDP成長率は1.4%にとどまりました。

また、世界銀行のデータによると、2019年に自由と評価された国々の平均一人当たりGDPは約4万ドルでしたが、自由がないと評価された国々の平均一人当たりGDPは約1万ドル以下でした。

さらに、2018年に自由と評価された国々の平均ジニ係数(所得格差を表す指標)は32.6でしたが、自由がないと評価された国々の平均ジニ係数は38.7でした。

■国内需要と外需のバランス

中国は2020年から2021年にかけて、世界的な需要回復やサプライチェーンの優位性によって、輸出入が急速に拡大しました。

特に半導体や医療品などの高付加価値製品やオンラインサービスなどの新興分野で競争力を高めました。

しかし、2022年に入ってからは、世界的な感染再拡大や物流混乱、資源価格高騰などの要因により、輸出入の伸び率が減速しています。

特に米国との貿易摩擦や欧州連合(EU)との投資協定(CAI)交渉の停滞など、国際関係の緊張も外需に影響を与えています。

一方、国内需要は感染症の影響や不動産規制などの要因により、消費や投資が低迷しています34。特に不動産市場の低迷は、建設業や金融業など関連する業種にも波及し、経済全体に悪影響を及ぼしています。

今後は、国内需要を拡大するために、消費の回復やインフラ投資の促進などの政策が重要になります。

特に消費者の信頼感や発展への確信を高めることが必要です。

■構造改革とイノベーション

中国は2020年から2021年にかけて、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて加速されたデジタル化や在宅需要に対応するために、イノベーション駆動による発展戦略を推進しました。

特に情報通信・情報技術サービスや医薬品などのハイテク分野では、生産や投資が高い伸びを示し、新たな経済成長の原動力となりました。

また、企業や研究機関も自主的にイノベーションを行い、特許出願数や科学論文数などで世界トップレベルに達しました。

しかし、イノベーションを促進するためには、市場経済や民主政治などの制度的な基盤が必要です。中国では、政府の介入や腐敗が激しく、知的財産権や法治などの保障が不十分であることが、イノベーションの障害となっています。

今後は、市場の競争力や公正さを高めるために、国有企業改革や金融改革などの構造改革が必要です。また、人材育成や国際協力などの方策も重要です。
2023.08.19 09:01 | 固定リンク | 経済

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