ザポリージャ戦線「大規模な反転攻勢・防衛線突破!」クリミヤ包囲へ
2023.08.28


「ザポリージャ戦線」激戦地からウクライナ軍が進軍続ける…ロシア軍は地上戦で阻止できず 

ウクライナ国営通信によると、ウクライナ軍の報道官は27日、ロシア軍への大規模な反転攻勢としてザポリージャ州で南下を図る「ザポリージャ戦線」の激戦地ロボティネから、進軍を続けていると発表した。

同戦線は起点の同州オリヒウからロボティネ近郊の約15キロ・メートルまでの範囲が激戦地とみられており、一帯では、露軍が地雷原や 塹壕ざんごう などの防御陣地を築いている。ウクライナ軍は22日にロボティネを奪還した後、要衝トクマク方面に前進している。40回以上の戦闘があり、露軍は地上戦ではウクライナ軍の前進を阻止できないため、空爆の数を増やしているという。

一方、ウクライナ政府は27日、黒海経由でのウクライナ産穀物の輸出再開に向け、暫定的に設定した民間船舶用の新たな「人道回廊」を使った第2陣の船が、南部オデーサ港から出港したと発表した。出港したのは昨年2月の開戦前から足止めされていたリベリアの貨物船で、アフリカ諸国向けの金属製品を積んでいる。

英国防省の27日の発表によると、黒海では露軍とウクライナ軍の小規模な戦闘が起き、緊張が高まっている。先週には北西の海域で、露軍の戦闘機がウクライナ軍の船を攻撃した。

■ロボティネ、トクマク、メリトポリ攻略

ウクライナ軍、ザポリージャ戦線に精鋭部隊投入か…「チャレンジャー2」戦闘車両装備

米誌フォーブスは15日、ウクライナ軍が大規模な反転攻勢を展開する南部ザポリージャ州の戦線に、英国供与の「チャレンジャー2」など米欧の戦闘車両を装備する精鋭部隊を投入したと報じた。ロシア軍の補給拠点都市メリトポリの奪還に向け、攻勢を強める狙いとみられる。

投入されたのは2000人規模の第82空中強襲旅団。ドイツの歩兵戦闘車「マルダー」や米国の装甲車「ストライカー」も保有し、ザポリージャ戦線のロボティネ周辺に配置されたという。

メリトポリ攻略は、ロシアが一方的に併合したクリミアと露本土の分断につながり、ウクライナにとって戦略上、重要な意味を持つ。旅団は既に露軍陣地近くまで進軍したとの情報もある。

 一方、米紙ワシントン・ポストは17日、ウクライナ軍は年内にメリトポリに到達できないとする米情報機関の分析を報じた。

 要因として、地雷原と 塹壕ざんごう で強固な防衛線を築いた露軍が激しく抵抗していることを挙げている。米国防総省は大規模兵力を一つの戦線に集中させるよう勧告したが、ウクライナ軍は戦線の絞り込みをせず、三つの戦線に分散する戦術を採用したという。「メリトポリの近接都市の奪還さえ難しい」(軍事アナリスト)との見方もあると伝えている。

■ロボティネで国旗掲揚 全域奪還

ウクライナ軍は23日、同軍がロシア軍が支配していた南部ザポロジエ州ロボティネに国旗を掲げたとテレグラムで発表した。ただ、ロボティネ全域をロシア軍から奪還したかは不明。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官が公開した映像では、ウクライナの国旗が焼け焦げた木々に囲まれ、ひどく損傷した建物の屋根に掲げられている。

8月23日はウクライナで「国旗の日」の祝日にあたる。

同軍はテレグラムに「総司令官の署名入りの国旗が国旗の日に、ロシアの侵略者に破壊された学校に掲げられた」と投稿した。

■ザポリージャ州で最大な防衛線突破

ウクライナ軍 南部でロシア軍“最も強固な防衛線”一部突破か

領土奪還を目指すウクライナ軍は南部ザポリージャ州でロシア軍の最も強固な防衛線の一部を突破したとも伝えられ、今後、南部でのさらなる前進につなげられるかが焦点です

南部での反転攻勢を続けるウクライナ軍について、ロイター通信は26日、南部ザポリージャ州のロボティネを奪還したとする部隊の指揮官の話として、ウクライナ軍がロシア軍の最も強固な防衛線の一部を突破したという見方を伝えました。

部隊の指揮官はロイター通信の取材に対し「われわれは地雷が埋められた主要な道路を通過した。ここからはより早く進むことができる」と述べて進軍のスピードが今後、早くなると自信を示しました。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も26日に「ウクライナ軍は最も困難と考えられているロシア軍の防衛線を突破して前進している」と分析しています。

一方で「ウクライナ軍にとって次のロシア軍の防衛線もすでに射程圏内にある。ただ、次の防衛線はこれまでよりはぜい弱かもしれないがそれでもかなりの難関になる」として、ウクライナ軍は今後も対戦車用の障害物や地雷などによる防衛線を突破する必要があるとも指摘しています。

反転攻勢の遅れも指摘される中でロボティネを奪還したとするウクライナ軍が今後、南部でさらなる前進につなげられるかが焦点です。

ウクライナ南部で反転攻勢の作戦に参加しているウクライナ軍の指揮官がNHKのオンライン取材に応じ、一部の地点では、ロシア軍が構築した第1の防衛線を突破するなど少しずつ前進していると明らかにしました。その一方で「ロシア側は常に兵力を補充している」と述べて警戒感を示し、ウクライナ側としては消耗を抑えて兵力を温存しながら着実に作戦を進めていくと強調しました。

今月24日、NHKの取材に匿名で応じたのは、ウクライナ軍の「第71独立猟兵旅団」に所属する偵察部隊の指揮官で、この部隊は現在、反転攻勢の焦点となっている南部ザポリージャ州で戦闘に参加しているということです。

指揮官は、部隊の詳しい位置は明かせないとしつつ、前線の状況について「いくつかの地域で成功し、成果が増えている。ロシア軍の1つ目と2つ目の防衛線の間で戦闘が行われているところもある」と述べ一部の地点では、第1の防衛線を突破するなど、少しずつ前進していると明らかにしました。

ただ、ロシア軍の防御について「地雷が密集している。手薄な部分を探しているところだ」と述べたうえで「ロシア側は常に兵力を補充している」と述べ、ロシア軍は、適宜、兵士を入れ替えるなど戦力を維持、増強しているとして警戒感を示しました。

また「敵は、航空戦力において優勢であるだけでなく電子戦のシステムや無人機においても優位に立っている」として、ウクライナ軍の通信が妨害され、部隊間のコミュニケーションにも問題が生じていると明らかにしました。

一方、ウクライナ軍の戦い方に関して指揮官は、偵察や攻撃の手段として無人機が重要な役割を担っているとして「無人機なしでの作戦は考えられない。ただ、航続時間は20分ほどで機材の損失も激しい」と述べ、一層の無人機の確保が必要だと強調しました。

反転攻勢の遅れを指摘する声もあることについては「ロシア軍のように大きな損失を出すことは受け入れられない。装備をむだにできず、まずは兵士を大切にしなければならない。ことを急ぐことは望ましくない」としたうえで「作戦は必ず成功する」と述べ、勝利に向けて兵士や装備の消耗をおさえて兵力を温存しながら着実に作戦を進めていくと強調しました。

■ウクライナ、南東部の集落解放発表 掃討作戦続く

ウクライナ軍は28日、戦略的に重要な南東部の集落ロボティネを解放したと発表した。先週、ロボティネに国旗を掲げ、掃討作戦を継続しているという。

現地の同軍司令官は先週、ロイターに対し、南部で最も厳しいロシアの防衛線を突破したとみられると発言。今後、進軍のペースが速まると述べていた。

ロボティネはザポロジエ州の前線の町オリヒウの南10キロメートルに位置し、ロシアが占領する要衝トクマクに向かう重要な道路沿いにある。

ウクライナ軍はアゾフ海に向けて南下しており、トクマクを制圧すれば反転攻勢で大きな節目となる。

ロシアは、ウクライナによるロボティネの奪還を確認していない。

■防衛線突破で“膠着打開”クリミヤ包囲へ

ロシア軍が構築する強固な防御線に進軍が阻まれ、戦況膠着が続く中、ウクライナ軍は22日、南部ザポリージャ州の集落ロボチネに到達した。

ウクライナ軍による奪還成否は不明だが、ロボチネをほぼ制圧したとの見方が指摘されている。ミリー米統合参謀本部議長は「ウクライナ軍はロシア軍の主要な第1防衛線を突破することに成功した」と評価した。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、「ウクライナ軍は突破口を開きかけている」と大規模反転攻勢の着実な進展を明らかにした。

ウクライナ軍のロボチネ到達に貢献をしたのは、兵士2000人で組織する「第82独立空中強襲旅団」で、英主力戦車「チャレンジャー2」やドイツの「マルダー歩兵戦闘車」を保有する最強部隊と高い評価を受けている。米戦争研究所の最新情報を基礎に戦況を詳報・解説する。
2023.08.28 18:54 | 固定リンク | 戦争

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