衛星画像で捉える「ロシア軍艦撃沈」
2023.08.06



黒海軍港への無人艇攻撃、ロシアで憤りと懸念

黒海に面するロシア南部ノボロシスクの軍港が無人艇攻撃を受けたことに対し、ロシアの識者や軍事ブロガーの間では、憤りと懸念の入り交じった声が出ている。

攻撃の結果、黒海のロシア軍艦1隻が大きく傾いた。ウクライナ支配下の領土から数百キロ離れた場所で実施された大胆な攻撃だった。

ロシアのジャーナリスト、セルゲイ・マルダン氏はノボロシスクへの無人艇攻撃について、「端的に言って、紛争の地理的範囲が飛躍的に拡大した。ロシア政府省庁の庁舎に対するドローン攻撃をはるかに上回る」と指摘した。

そのうえで「今日の攻撃から言えることはただ一つ、我々は今後も戦いを迫られるということだ」とした。

ロシアの別のテレグラムチャンネルは、攻撃による被害は出ておらず、無人艇は破壊されたとのロシア国防省の声明に人々は「困惑」していると指摘した。

カプラル・ガシェトキンの筆名で執筆する別の識者は、テレグラムのチャンネルで、「大型揚陸艦の乗組員は攻撃に対する備えができていなかったようだ」と説明。「ウクライナのテレグラムで公開された無人艇からの映像には、無人艇が全く抵抗を受けずに揚陸艦の側面に接近する様子が映っている。誰ひとり無人艇に攻撃せず、気付いてもいないようだ」と指摘した。

ガシェトキン氏によれば、今回の戦争を通じてノボロシスクの海軍基地はロシア黒海艦隊の後方拠点になっており、比較的安全と考えられていたという。「だが、そろそろ気付かなくてならない。敵は『長い腕』を持っていて、その腕は非常に遠くまで届く」としている。

■ロシア〝補給路大打撃〟クリミア大橋

ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアに、大打撃となりそうだ。ウクライナ軍が6日、ロシアが実効支配するクリミア半島と、ウクライナ南部のヘルソン州を結ぶチョンガル橋とゲニチェスク橋を攻撃したと発表した。ロシアは通常よりも遠回りのルートに頼ることになる。重要な補給路を使えなくなることで物流に大きな影響が出るとみられ、ロシア側の輸送に遅延が起きるとの分析もある。

米シンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ軍は6日、ロシアの地上連絡線(GLOC)にある2つの主要な橋を攻撃した」と説明し、ロシア軍が、遠回りとなる半島西側からの別ルートを使った輸送に変更せざるを得なくなるとした。

ウクライナは7月、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ「クリミア橋」を攻撃するなど、ロシア側の補給路に狙いを定めている。

戦争研究所は、今回の攻撃を受けてロシアが迂回(うかい)ルートを取ることで、「物流に甚大な混乱をもたらし、遅延や交通渋滞が起きる可能性がある」と分析した。

米シンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ軍は6日、ロシアの地上連絡線(GLOC)にある2つの主要な橋を攻撃した」と説明し、ロシア軍が、遠回りとなる半島西側からの別ルートを使った輸送に変更せざるを得なくなるとした。

ウクライナは7月、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ「クリミア橋」を攻撃するなど、ロシア側の補給路に狙いを定めている。

ヘルソン州のロシア側行政府トップは、チョンガル橋の攻撃に、イギリスが供与した巡航ミサイル「ストームシャドー」が使われたとし、穴が開いた路面写真を公開した。

戦争研究所は、今回の攻撃を受けてロシアが迂回ルートを取ることで、「物流に甚大な混乱をもたらし、遅延や交通渋滞が起きる可能性がある」と分析した。

■ロシア軍艦撃沈はウクライナ保安局と海軍の合同作戦 衛星画像で捉える

ロシア南部の黒海沿岸にあるノボロシスク港で4日起きた同国海軍艦船への攻撃でウクライナの関係筋は同日、ウクライナ保安局と海軍の合同作戦だったことを明らかにした。

CNNの取材に、「大型の艦船であるオレネゴルスキー・ゴルニャクが打撃を受けた」とも指摘。攻撃に使われたのはTNT火薬の約450キロを積んだ水上ドローン(無人艇)で、同艦船にはロシア軍兵士約100人が乗船していたとした。

「攻撃で深刻な損傷を被り、任務遂行が出来なくなった」とも述べた。

SNS上に流れた動画や複数のロシア人ブロガーの説明では、曳航(えいこう)される船は戦闘艦船のオレネゴルスキー・ゴルニャクと特定しているようにみえる。

CNNには、船舶へ近づく無人艇を示す動画が提供された。この船舶は、ノボロシスク港で船体を傾けている海軍艦船と同一のもののようにみえる。動画の長さは36秒間で、無人艇から撮影されており、船舶への突進は夜だったこともわかる。動画は、無人艇が船舶に到達すると共に終わっていた。

CNNはこの船舶の名称を最終的に確認出来てはいない。

ロシア国防省は4日、無人艇2隻がクラスノダール地方にあるノボロシスク海軍基地を狙ったが、ロシア艦船に攻撃を阻止されたとの声明を発表していた。

■衛星画像で捉えたロシア揚陸艇撃沈「ぎりぎりでかわす」

米衛星運用会社マクサー・テクノロジーズが12日に撮影した新たな衛星画像には、ウクライナ南部の黒海に浮かぶスネーク島の近くの海上にミサイル1発が撃ち込まれる様子が写っている。

2筋の白煙の近くを航行する1隻の艦船について、マクサーはロシア軍のセルナ級揚陸艇と特定した。

同艦は急角度で向きを変えているように見える。ミサイルはその付近の海上に着弾している。

島の近くを写した別の画像には、重量物運搬用のクレーンが載った艀(はしけ)の隣で海中に沈んでいる艦船が見える。マクサーはこの艦船もセルナ級揚陸艇と特定した。

同艦がどのようにして沈没したのかは不明だが、オデーサ地域軍政の広報官は8日の時点で、揚陸艇1隻とラプター級哨戒艇2隻が攻撃を受けたと説明していた。

同広報官はまた、ウクライナ軍がロシア軍のヘリコプターをスネーク島で破壊したとも述べた。ウクライナ軍は8日、ヘリコプター1機がミサイルで破壊される動画を公開している。

上記の広報官は12日、ロシア海軍の補助艦「フセボロド・ボブロフ」で火災が起き、スネーク島の領域からクリミア半島南西部のセバストポリにえい航されていると発表した。同艦は今回の衛星画像に写っておらず、CNNはこの発表の信憑性を確認していない。

現時点でロシア側は、前出の艦船のいずれについても損失を確認していない。

■「フセヴォロド・ボブロフ」は、「多機能支援船」沈没

ウクライナ南部オデーサ地域軍政の広報官は、ロシア海軍の補助艦「フセボロド・ボブロフ」で火災が起き、黒海のスネーク島の領域からクリミア半島南西部のセバストポリにえい航されていると発表したが、沈没した模様。

■クリミア半島沖でロシアタンカー破壊

ロシアの占領下にあるウクライナ南部のクリミア半島とロシア本土を挟むケルチ海峡で5日未明、ロシアのタンカーがウクライナの無人艇(水上ドローン)による攻撃を受けた。ロシア側の当局者が明らかにした。

黒海に面するロシア南部ノボロシースク港の海難救助当局によると、タンカーは自力で航行できず、タグボートが派遣された。

タス通信は当局の話として、海峡の南側でタンカーが損傷していると報道。機械室が多少の被害を受け、現在停泊していると伝えた。

ロシアでは前日、ノボロシースク海軍基地がウクライナの無人艇による攻撃を受け、軍艦1隻が大きな被害を受けたばかり。

ロシア側の当局者は、5日の攻撃ではクリミアとロシア本土を結ぶケルチ橋とは無関係だと述べた。同橋はウクライナ侵攻開始後、攻撃により2度にわたり大規模な被害を受けた。

ウクライナは、今回の攻撃について公式声明は発表していない。

■ロシア南部サマラの石油精製所ミサイル攻撃

ロシア軍は28日、ロシア南部ロストフ州のタガンログの上空でウクライナのミサイルを迎撃したと発表した。ミサイルの破片が民間人が負傷し、建物を損壊したとしている。

ロストフ州はウクライナとの国境に近い。同州のゴルベフ知事によると、博物館のほか、カフェが被害を受け、住宅の窓ガラスも吹き飛んだ。9人が負傷して病院に搬送されたが、死者は出ていないという。

この件に関してウクライナは今のところ反応していない。

これとは別に、ロシア南西部サマラ州の州都サマラで、国営石油会社ロスネフチが保有する石油精製所で爆発が発生。アレクサンドル・ヒンシュテイン議員は対話アプリ「テレグラム」への投稿で、爆発は爆弾によるものとの見方を示した。大きな被害はなく、死傷者も出ていないという。
タス通信は、爆発に関与したと疑われる人物が拘束されたと報じた。

ウクライナとの国境に近いロシアの地域では、エネルギー施設や武器庫などを標的とした攻撃がこれまでも発生している。

■米CIA長官も情報提供呼びかけ

ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアが、西側情報機関の「草刈り場」となっている。英秘密情報局(MI6)のリチャード・ムーア長官が、ロシア国民にスパイ活動への協力を呼びかけたのに続き、米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官が、情報収集の好機だとみている趣旨の発言を行ったのだ。「ワグネルの乱」で混迷を深めるプーチン政権は、さらに窮地に追い込まれそうだ。

■250万回視聴

CNNによると、バーンズ氏は20日、米コロラド州で行われたアスペン安全保障フォーラムで、ロシアには多くの不満がたまっているとして「情報機関としてこのチャンスを生かす機会を無駄にはしない」と表明。「一世代に一度」の情報収集の機会だとの見方を示した

CIAは5月、SNSでウクライナ戦争に不満を持つロシア人に機密共有を呼び掛ける動画を投稿した。バーンズ氏はこの件についても最新情報として、動画が最初の1週間で250万回視聴されたことを明らかにした。

ロシアに対しては、MI6のムーア氏が19日、チェコの首都プラハでの講演で、「流血を終わらせるため、協力したいというロシア人へのドアはいつでも開いている」と情報提供を呼びかけていた。

■プリゴジン氏〝粛清〟情報

プリゴジン氏〝粛清〟情報 プーチン大統領と会談後、6月末から消息不明に「クレムリン招待は罠だった可能性」

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による「断末魔のあがき」が続いている。ウクライナ侵略による軍事的、経済的、政治的負担に加え、民間軍事会社「ワグネル」の創設者、エフゲニー・プリゴジン氏による反乱の余波が収まらないのだ。プーチン氏は事態収拾後、プリゴジン氏らワグネル幹部と面会したとされるが、その発信内容には食い違いが見られる。プリゴジン氏に急遽(きゅうきょ)浮上した「暗殺・粛清」情報。苦境を脱するためか、ロシアはウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する「穀物合意」からの一時的離脱を発表した。世界的な食料危機を引き起こすつもりなのか。ジャーナリストの加賀孝英氏による最新リポート。

「プーチン氏は、すでに戦争に負けている」

ジョー・バイデン米大統領は13日、訪問先のフィンランドの首都ヘルシンキで行われた記者会見で、こう断定した。

事実、プーチン氏はいま、崖っぷちに立たされている。

ウクライナ軍による大規模な反転攻勢に加え、6月下旬に勃発した、プーチン氏の最側近、プリゴジン氏によるクーデター未遂事件「ワグネルの乱」が、プーチン氏の権威を失墜させ、地獄に突き落とした。

外事警察関係者は「プーチン氏は狂乱状態だ。自身の暗殺におびえ、プリゴジン氏と通じた裏切り者の捜索、大粛清を開始した。治安当局が入手した『ワグネル秘密VIPリスト』には、ロシア軍幹部や治安当局者ら30人の名前が書かれていた。しかし、プリゴジン一派はその1000倍ともいわれ、治安当局はパニック状態だ」と語った。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は13日、「ワグネルの乱」で、「少なくとも13人のロシア軍将校らが一時的に拘束された」「約15人が停職や解雇の処分を受けた」と報じた。

この中には、「ハルマゲドン将軍」と呼ばれ、ウクライナ侵攻の副司令官を務めるセルゲイ・スロビキン航空宇宙軍総司令官や、スロビキン氏の副官であるアンドレイ・ユーデン氏、軍参謀本部情報総局のウラジーミル・アレクセーエフ副長官が含まれている。

こうしたなか、衝撃情報が飛び込んできた。

前出の外事警察関係者は「プリゴジン氏の粛清情報が浮上している。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は10日、ワグネルの乱から5日後の6月29日、プーチン氏がクレムリンに『プリゴジン氏とワグネル指揮官ら35人を招待して面会した』『彼らは今後も祖国のために戦うと誓った』ことを発表し、全世界を驚かせた。これ以降、プリゴジン氏の消息は途絶え、生きている姿は誰も見ていない。西側情報当局はいま、確認に走っている」と語った。

さらにロシア有力紙「コメルサント」が13日、突然掲載したプーチン氏のインタビュー記事が、混乱に拍車をかけている。

プーチン氏はここで、プリゴジン氏らワグネル幹部らとの6月29日の面会について、内務省出身のアンドレイ・トロシェフ大佐を新たなトップにして、ワグネルがロシア軍の指揮下で軍務を続ける選択肢を提案した。多くの指揮官はうなずいたが、プリゴジン氏が「いや、皆はその決定に同意しない」と拒否、決裂した事実を明らかにした。

以下、日米情報当局関係者から入手した情報だ。

「プーチン氏はもともと、ワグネルの乱に激怒して、連邦保安庁(FSB=旧KGB)に『プリゴジン氏の暗殺・粛清』を命令していた。ペスコフ氏は『プーチン氏がクレムリンに招待した』と説明したが、クーデター未遂犯をなぜ招待するのか。プーチン氏はコメルサントのインタビューで、プリゴジン氏を排除しようとした事実を口にした。ペスコフ氏の説明にはなかった事実だ。口が滑ったのか。招待が罠だった可能性がある」

「ゼレンスキー暗殺」申し出
プーチン氏は、ワグネルの乱の一報を聞くや、モスクワから逃げ出し、世界の嘲笑をかった。それを払拭するために、ロシアはさまざまな情報工作を仕掛けていた。続く日米情報当局の情報はこうだ。

「ロシア情報当局は、プーチン氏を大物に見せるため、プリゴジン氏らとの面会情報を流した。プリゴジン氏は面会で、プーチン氏の歓心を買おうと、自分から新しい任務を申し出たという。『ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の暗殺』だった。プーチン氏は『ヤツの頭をクレムリンに持ってこい』と命令した。英タブロイド紙などが報じた。ウクライナを脅す効果もあるが、狙いは1つだ。プリゴジン氏が殺された場合、『犯人はウクライナだ』とする偽旗作戦だ」

米情報当局は「プリゴジン氏が(暗殺者から)自分の行動、居場所を隠すため、『ボディーダブル』(替え玉・影武者)を使用していた」という情報をつかんでいる。

バイデン氏は13日、冒頭で紹介したヘルシンキでの記者会見で、プリゴジン氏の消息について、こう語った。

「神のみぞ知る」「仮に、私が彼なら食事の内容には気をつけるだろう」

バイデン氏は、ロシア情報機関の常套手段、毒殺を警告した。
2023.08.06 21:14 | 固定リンク | 戦争

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