第二次文革(社会主義の崩壊)
2023.07.23


コロナ起源を暗に批判した。中国の医師、李文亮氏はコロナ流行の初期に感染症の危険性について警告を発したが、当局から「デマ」扱いされ、自身は肺炎で亡くなった。李氏はこんな言葉を残している。「健全な社会には多様な声があるべきだ」

■習近平の「文化大革命」

日本人の評論家は、「第一次文革」について「思想闘争によって、新しい形を生み出すためである。革命ではあるが、血は流されない」と述べている。中国の若者らの行動を評価し「次の時代の後継者となる彼らを、そのままに成長させ、ブルジョワ意識に汚れさせないためにも、今日、文化大革命を行うことは必須なのである」こんな評論家もいた。

これは全く事実に反している上に、中国に勝手な幻想を抱いた悪い例だろう。その後の中国の悲惨な道を思えば、無責任な言論だ。

一方、作家で日中戦争での出征経験もある武田泰淳氏は、中国の知人たちの安否が分からないことを憂いつつ、こう訴えている。「変化がはげしければ、はげしいほど、著実に、たえまない結びつきが必要になる…知ったかぶりの、うまい言葉づかいや、性急な感情露出でない、まじめな心がけの青年や老人が手をつないで中国を知るために全力をそそがなければなるまい」

■習近平側近で固める(第二次文化大革命)

中国全人代の全体会議で首相に選出され、習近平国家主席(右)と握手する李強氏=3月11日、北京の人民大会堂

昨年10月の共産党大会で、習氏は党総書記の3期目を実現した。当時69歳を迎えていたが、「党大会時に68歳なら引退」という党内の不文律を破っての続投だ。同時に、最高指導部のメンバーは元上海市党委員会書記の李強氏をはじめ、自身の子飼いで固めた。次期首相に就くとの下馬評があった胡春華副首相は指導部入りできなかった。習氏が距離を置くエリート組織、共産主義青年団(共青団)の出身であることが影響したことは間違いない。

「みんな文革世代なので、権力闘争はごめんだと思っている」習氏。側近で固め「権力闘争を招かないための布陣」。米国との交渉も不文律で、意見対立があれば進まない。そこで反対派を排除した陣容といえる。

確かに習氏の父の故習仲勲元副首相は文革中に失脚し、自身も貧村に「下放」(都会の若者を農村に送り込んだ当時の政策)されて苦難を味わった。毛への個人崇拝をあおって権力を握り、次期後継者と目された林彪党副主席も1971年に謎の死を遂げた。クーデター未遂とされるが、真相は闇のままだ。政権内部が混乱すれば、民心の乖離を招くとの危機感が習氏にあったのだろう。

しかし「文革」は、最高指導者の判断の誤りで招いた事実である。独裁が行き過ぎれば誰も止められない。それを払拭するために、無知の若者を利用しただけだ。

猛威を振るった。2020年からの新型コロナ流行では、習近平の「ゼロコロナ」政策の方針に従い、白い防護服に身を包んだ防疫担当者「大白」(ダーバイ)たちが、ロックダウン(都市封鎖)、従わない市民に暴力を振るった。習近平はゼロコロナに対する異論は許さないと宣言。コロナ起源も何のその、異論を封殺した。

世界に向けても、コロナ対策で米国より死者数を低く抑えた。習近平は自信を強め、西側の「説教」は受け入れないと一層自信を深めた。

■「個人崇拝」の危険性(毛主席の誤り)

明らかに「毛主席」を継承した系譜を辿ろうとしている。本人は認識していないだろうが、外部から見れば全く同じ路を辿ろうとしか観えない。

辿るる路は、個人崇拝、専制主義、完全独裁、誰も止められず、何れ過ちを犯すのは推して知るべきだろう。

人々は文革の再来はごめんだと言いつつ、集団指導体制を堅持し専制主義体制が続いたのだ。習近平がそこにメスを入れるのは簡単だったのかもしれない。専制主義体制がある限り何も大きく変革する必要もなかったのだろう。

3期目を可能にする法律を加味するだけで十分だ。あとは反対派を封殺するだけでことは足りる。観えて来るのは、個人崇拝、専制主義、完全独裁、誰も止められない状況へ舵を切るだけでいい。

歴史は繰り返す言うが、1強体制を確立した。「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義」が金科玉条となり、言論統制が厳しくなった。自由や民主、人権といった「普遍的価値観」を語ることは難しくなり、それまであった政治改革を求める気運は鳴りをひそめた。

■第二の文革(その矛先は?)

1966年文革を指導したのは、江青・毛夫人ら幹部「四人組」だが、第二の文革は全く趣が違うだろう。周氏の政府はあらゆる経済活動を統制・管理する「計画経済」を目指す。しかし、市場経済を受け入れた現在の状況を変えるには無理がある。国民は市場経済を受け入れ豊かになったのだ。その豊かさを捨てて共産主義の統制・管理される「計画経済」へと大きく舵を切る、政府への反発は大きくなるばかりだ。

市場経済を享受し豊かになった中国の資本家は、ある者は一帯一路を隠れ蓑に、不動産を取得、またある者は海外で起業を起ち上げ、その子弟は海外の一流大学へ留学、取得した住宅から通学するという。

習近平外交が険悪に、最近米国で「OFAC規制・金融決済(対象国決済禁止)」が始まった。中国が経済的に追い込まれることに。中国の「元・決済禁止」に、現在は米国だけだが、何れは西側諸国が右に倣えということに。これは多くの子弟のための住宅取得は中国海外銀行決済で取得。殆どはローン決済のはずだ。当然学費も準ずることだろう。

米国ではローン決済が履行すれば、不良債権で即刻差し押さえに合う。学費、医療費、その他、生活必需品購入カード決済中止で、生活できなくなるのは必至だ。

帰国した人々は不満が鬱積。帰国した子弟らは、国内の失業率が最悪だと見せ付けられる。海外での学識経験の活用の場もないまま不満が鬱積するばかりだ。

中国の上流階級を敵に回した習近平体制。何も変わらないままの政治体制。不満は地方からの発信が先だろう。「ゼロコロナ政策」で不満を鬱積してる子弟たち。白紙デモにも現れたように、政府への抗議への方法が変わった。抗議デモが潜在化、新たに高度化された抗議デモ。政府も対応に窮じることになる。

「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を中華民族の偉大な復興に向けた行動指針と位置づけている。しかし、共産主義の破綻と崩壊が明らかになったいま。それを中国の知識人は知らないはずがない。習近平の政策はその共産主義を指針とした政策を掲げ中国全人民を導こうとしてる。

1959年毛沢東は国家主席の座を劉少奇に譲った。その理由は明らかなように毛主席の「人民公社」政策の失敗にある。しかし、毛主席の失敗を払拭するため、第一次文化大革命を江青ら4人組の指導のもと実行し、劉少奇実権派の右寄り政策を批判し、毛主席の権力奪回に成功したのだ。

習近平の「中華民族の偉大な復興に向けた行動指針」をもって、「社会主義国家建設の軌道に戻すことを目指す」としている。これが習近平の「第二次文化大革命」であるが、本当の文革の矛先は専制主義体制と習近平体制にあるのではないか。これらが否定されれば、中国共産党は瓦解し、その結果、民主化が行われ、民主主義体制の基で経済の活性化が行われる。従ってこれが本当の意味の中華民族の復興になるのであろう。
2023.07.23 08:24 | 固定リンク | 戦争
「中国指導部も動揺」プリゴジン氏生存説で反乱第二幕が
2023.07.20
プリゴジン氏〝生存説〟浮上 「彼はまだ生きている」 MI6長官はロシア国民にスパイ活動への協力を要請

ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアが混迷を深めている。武装蜂起後に消息不明となっていた民間軍事会社「ワグネル」の創設者、エフゲニー・プリゴジン氏が動画に登場したと19日、ロシアの独立系メディアが報じた。英秘密情報局(MI6)のリチャード・ムーア長官も同日、プリゴジン氏が生存しているとの情報を明かし、ロシア国民にスパイ活動への協力を要請した。「ワグネルの乱」で軍部が混乱するロシア国内の「亀裂」が拡大する可能性もありそうだ。

■プリゴジン氏、生存説も浮上

「われわれはしばらくの間ベラルーシに滞在することが決まった」

報道によると、プリゴジン氏は通信アプリに投稿した動画でこう、ベラルーシに入ったワグネルの戦闘員らに述べたという。

動画は薄暗い野外で撮影したとみられ、プリゴジン氏の姿は確認できず、信憑(しんぴょう)性は不明だ。ただ、プリゴジン氏とされる人物は、ウクライナ侵攻に関して「最前線で起きているのは恥ずべきことで、参加する必要はない」と国防省幹部批判を繰り返し、プリゴジン氏の過去の発言内容と一致する。

プリゴジン氏は6月下旬の反乱後、消息不明となっている。このため、「粛清説」も流れていた。

こうしたなか、プリゴジン氏とされる動画が報じられた19日、MI6のムーア氏がチェコの首都プラハで演説を行った。BBCは、「ムーア氏は彼らが知る限り、彼(プリゴジン氏)はまだ生きていると述べた」と伝えた。

ロシアでは、収束したはずの「ワグネルの乱」の余波が続いている。プリゴジン氏に近いとされるウクライナ侵攻の副司令官、セルゲイ・スロビキン航空宇宙軍総司令官の「拘束」情報が流れたほか、ほかのロシア軍幹部についても「拘束」や「解雇」されたとの報道があった。

ムーア氏は演説で、「ロシア軍がウクライナの都市を破壊し、多数の子供を連れ去る状況にがくぜんとしているロシア人がたくさんいる」と述べた。さらにウクライナ侵略後にMI6の活動に協力したロシア人の存在を明かし、「流血を終わらせるため、協力したいというロシア人へのドアはいつでも開いている」と〝内通〟を呼びかけた。

■「中国指導部も動揺」プリゴジン氏生存説で反乱第二幕が

ロシアのウラジーミル・プーチン政権が、民間軍事会社「ワグネル」による反乱の余波収拾に追われている。収束後初の演説に臨んだプーチン大統領は、反乱を国家に対する「裏切り」と糾弾したが、蜂起を主導したワグネルの創設者、エフゲニー・プリゴジン氏の名指しを回避した。ワグネルの戦闘員に対しては、ロシア兵としての任務も続けられるとして「低姿勢」が目立った。一方のプリゴジン氏は、音声メッセージで健在をアピール。国際社会は、「ワグネルの乱」による政権内の亀裂拡大に注目し、反乱の「第2幕」が起きる可能性も指摘されている。混乱の影響はロシアにとどまらず、ウクライナ侵略でプーチン政権に理解を示してきた中国の習近平政権に動揺を与えているとの見方も浮上している。

「反乱の首謀者は国家を弱体化させる犯罪行為に手を染めた」「どんな場合でも反乱は鎮圧される」

プーチン氏は26日、ロシア国民向けの演説で、こう述べた。演説後には、軍や治安当局のトップらを集めた会議も開き、「現在進行中の状況を協議する」と表明した。

演説が同日午後10時過ぎに行われたにもかかわらず、終了後に会議まで招集するという「異例」の対応だった。

ただ、プーチン氏は演説で、首謀者が誰かを明言せず、プリゴジン氏を名指しもしなかった。ワグネルの戦闘員に対しては、その多くを愛国者だとし、流血の事態回避に謝意を述べた。そのうえで、今後について国防省と契約して任務を続けられるし、希望者はロシアの隣国ベラルーシに行くこともできると説明した。

一方、反乱を主導したプリゴジン氏は26日夕、通信アプリ「テレグラム」上で、約11分にわたる音声メッセージを公開した。反乱を「抗議の行進」だったとし、「現体制を転覆させる意図はなかった」と主張した。

頻繁な情報発信を続けてきたプリゴジン氏は24日、進軍停止を表明したのを最後に沈黙していた。その後の行方は分かっておらず、今回の音声メッセージの発信場所も明らかにしなかったが、ロシア軍やロシア防衛省の幹部を批判する従来の姿勢はまったく変わっていなかった。

ワグネル部隊の進軍に伴ってモスクワや首都郊外のモスクワ州に導入されていた対テロ作戦態勢は26日、解除された。「ワグネルの乱」は表面上こそ収束したかに見えるものの、主導したプリゴジン氏が再登場したことで、いろいろな憶測を呼んでいる。

イギリスのジェームズ・クレバリー外相は26日、下院への情勢報告で、反乱を「プーチン大統領に対する前代未聞の挑戦だ」とし、ロシア国内で「戦争支持のひび割れが表面化し始めた」と指摘。ベン・ウォレス国防相も別の会合で、プリゴジン氏が反乱を通じてウクライナ侵攻へのやり方に「真っ向から異議を唱えた」とし、ロシア国民に真実を語ったと指摘した。

ジョー・バイデン米大統領は26日、ホワイトハウスで記者団に対し、「事態の行方について最終判断を下すのは時期尚早だ」として、「さまざまなシナリオに備えるよう国家安全保障会議(NSC)に指示した」と明らかにした。

ロシアによる侵略に対峙(たいじ)するウクライナでは、ロシアに対してより厳しい見方が出ている。

米CNNによると、オレクシー・ダニロフ国家安全保障防衛会議書記は25日、プリゴジン氏について「集団の一部であり、計画の一部であり、不安定化の過程の氷山の一角に過ぎない」と述べた。

ダニロフ氏は、ロシアでは治安部隊や当局者、新興財閥(オリガルヒ)などの不満を持った人々の集団が形成されていると説明。今回の「ワグネルの乱」がプーチン政権にとって、即座に致命傷とはならないかもしれないが、そうなることは避けられず、「カウントダウンが始まった」と語った。

プーチン政権で広がり始めている「亀裂」の影響は、ロシアとの協力関係を維持する中国にも及ぶかもしれない。

米国家安全保障会議のカート・キャンベルインド太平洋調整官は26日、ワシントンのシンクタンクで行った講演で、ワグネルによる反乱が「中国の指導部を動揺させている」との見方を示した。
2023.07.20 13:45 | 固定リンク | 戦争
クリミア橋攻撃破壊「水上ドローン攻撃」
2023.07.17



ウクライナ南部ヘルソン州とクリミア半島を結ぶチョンハル橋が22日、ミサイル攻撃を受けた。ロシアはウクライナがイギリスから供与された長距離ミサイルを使って攻撃したとしている。

チョンハル橋は、並行する2本の橋からなる。ロシアが任命したヘルソン州トップのウラジミール・サルド氏によると、2本とも損傷した。負傷者はいなかった。

サルド氏は、イギリスがウクライナに供与した長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」が、「イギリス政府の命令」による攻撃に使われた可能性が高いと述べた。

チョンハル橋はクリミア半島からウクライナ本土南部の前線への最短ルート。ロシア占領下の都市メリトポリへと続く重要な連絡路でもある。メリトポリは今月初めにザポリッジャ州で始まったウクライナの反転攻勢の標的のひとつだと考えられている。

サルド氏が投稿した複数の画像では、2本の橋の片方にぽっかりと穴が開いていることがわかる。同氏は、すぐに修復作業が行われ、車両は一時的に別のルートを通ることになるとしている。ロシアに任命されたヘルソン州の別の当局者は、修復作業は数週間かかる可能性があるとしている。

ウクライナ軍のナタリア・フメニウク報道官は、ウクライナの国営テレビで、自軍の狙いはロシアの補給路の寸断だと述べた。ウクライナ軍情報当局のアンドリイ・ユソフ氏は、さらなる攻撃が続くだろうと述べた。

クリミア半島からの補給路

ウクライナはこれまでも、ロシア占領地にある橋を攻撃している。昨夏には、ロシアがクリミア半島から物資を運んでくるのを阻止するため、ドニプロ川を渡るための主要な経路であるアントニフスキー橋を繰り返し攻撃した。

昨年10月には、クリミア半島とロシアの間のケルチ海峡にかかるケルチ橋が、死者も出た攻撃で、数週間にわたり機能停止に追い込まれた。ウラジーミル・プーチン大統領はこの攻撃を「テロ行為」だと非難した。ケルチ橋は現在も、全面通行は可能になっていない。

サルド氏は今回の攻撃を受け、ウクライナと隣国モルドヴァとルーマニアを結ぶ橋を標的に報復を行うと警告している。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるルーマニアとモルドヴァは、サルド氏の発言は容認できないと反発している。

戦況は

ウクライナによる南部と東部での反転攻勢は、遅々として進んでいない。同国はこれまでに南部ザポリッジャ州と東部ドネツク州で八つの村を取り戻したとしている。

今月上旬に、ヘルソン州のロシア支配地域にあるカホフカ水力発電所のダムが決壊したことで、反転攻勢はより困難な状況に陥っている。ダムの下流地域は洪水に見舞われ、ドニプロ川を渡るのもはるかに難しくなった。数十人が死亡し、農場は破壊され、水の供給にも影響が出ている。ダムの決壊は、ロシアの破壊工作だとの見方がある。

ロシア軍はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の故郷クリヴィー・リフの住宅地や、南部のオデーサ港を含むウクライナの都市を、夜間に狙い続けている。

ゼレンスキー氏は22日、ロシアが昨年の侵攻開始直後に占拠した、欧州最大のザポリッジャ原発に対する「テロ攻撃のシナリオ」を用意しているとの情報を、諜報機関が入手したと述べた。

同氏は「放射能に国境はない」と警告した。

ロシア政府は即座にゼレンスキー氏の発言に反応し、「またうそをついている」と一蹴した。

ザポリッジャ原発にある原子炉は6基すべてが停止されている。しかし、国際原子力機関(IAEA)は21日、同原発の安全性をめぐる状況は「極めてぜい弱」だと警告した。

原子炉の冷却に使用する水路の水位は、カホフカ・ダムが破壊されて以来低下している。ウクライナの反攻が報じられる中、IAEAは原発周辺はますます緊張が高まっているとしている。

■クリミア橋破損はウクライナ特別作戦と報道

ウクライナメディア「ウクラインスカ・プラウダ」は17日、クリミア橋の破損について、ウクライナ海軍と保安局による特別作戦だったと治安当局者の話として報じた。無人ボート(水上ドローン)が使われたという。

■クリミア橋、通行止め-当局が「緊急事態」を宣言

ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアとロシアをつなぐ橋が、当局による「緊急事態」が宣言されたことを受け、通行止めとなった。

クリミア半島で「首長」を名乗る親ロシア派幹部セルゲイ・アクショノフ氏はテレグラムの投稿で、ケルチ海峡に架かるロシアとクリミアを結ぶ橋の145番目の支柱付近で17日未明に発生した事件を巡り、調査官が現地に派遣されたと説明した。

当局者は詳細についてほとんど語っていないが、ロシアはクリミアに対する激しい無人機攻撃が16日にあったことを報告。ロシア国防省は7機の無人機などが破壊されたと発表し、「テロ攻撃 」だとウクライナを非難していた。


■クリミア橋「非常事態」で通行止め、親ロシア派が投稿 爆発の情報も

ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島で「首長」を名乗る親ロシア派幹部セルゲイ・アクショノフ氏は17日未明、同半島とロシアを結ぶクリミア橋で「非常事態」が発生し、橋が通行止めになったとSNSに投稿した。

アクショノフ氏は詳細を明らかにしていないが、100万人以上の読者が登録するロシアのSNS上の軍事情報チャンネル「バザ」は「暫定的な情報」としてクリミア橋で爆発が起き、「少なくとも2人が死亡した」と伝えている。
2023.07.17 16:29 | 固定リンク | 戦争
「プリゴジン死亡」プーチン・プリゴジン会談は「でっち上げ」だった
2023.07.15


「プリゴジン死亡」プーチン・プリゴジン会談は「でっち上げ」だった 「嘘八百のプロバガンダ」

■仏暴動で使われた武器はウクライナから送られた

最近フランスで起きた暴動では、誤解を招く多くの投稿がオンラインで共有された。先週、一気に広がったものの一つは、アメリカのウクライナへの軍事支援に関するものだった。

その投稿は、ニュースサイトの見出しと思われるスクリーンショットと、ライフル2丁の画像でできていた(下の画像)。

見出しは、「フランスの警察、ウクライナから届いた可能性のあるアメリカ製ライフルで撃たれる」というものだった。

ツイッターの「青いチェックマーク」付きのアカウントのいくつかが、この投稿をシェア。以来、100万回以上閲覧されている。

BBCヴェリファイ(検証チーム)は、この投稿がメッセージアプリ「テレグラム」の、親ロシアのチャンネルが発信元であることを突き止めた。投稿に使われた画像は、2012年にモスクワ近郊の射撃場で開かれた射撃競技会に関する、ロシアの軍事ブログの記事に出ている。

同じ見出しと画像を使った記事は、オンラインでは他に見当たらなかった。また、アメリカがウクライナに供与した武器が、最近のフランスでの暴動で使われたことを示す証拠もない。

■ウクライナに「赤ちゃん工場」

ロシアがウクライナで 「赤ちゃん工場」を発見したという投稿を、ツイッターの「青いチェックマーク」付きのアカウントが最近、広めている(下の画像)。

2~7歳の子どもたちが「工場で育成」され、「児童売春宿」に送られるか、臓器を摘出されて西側諸国で売られている――という内容だ。

BBCヴェリファイは、この投稿の出所が、「The People's Voice」の3月公開の記事だと突き止めた。「The People's Voice」は、ファクトチェック団体からインターネットで最大の偽ニュース製造者だとされる「YourNewsWire」の別名だ。

このグループはこれまでも、反ワクチン陰謀論や、2017年の米ラスヴェガス銃乱射事件に関するデマなど、さまざまな虚偽や誤解を招く記事を広めてきた。

ロシア政府と、同政府が掌握しているメディアには、ウクライナで違法な臓器摘出がなされているとする根拠のない主張を展開してきた過去がある。

■クラマトルスクのミサイルはウクライナ製

ウクライナ東部クラマトルスク中心部で6月末、ロシアのミサイル攻撃により8人が死亡した。

攻撃直後、まっとうな情報源だと自称する、ツイッターの「青いチェックマーク」を付けたアカウントが、攻撃はウクライナが誤って実施したと投稿。北大西洋条約機構(NATO)軍と外国の雇い兵らを収容する軍兵舎を直撃したと主張した(下の画像)。

その投稿は、「(イギリスがウクライナに供与した)ストームシャドウミサイルが突然、軌道を大きく変え、クラマトルスクに命中し、外国兵と雇い兵を収容するウクライナ軍の兵舎を壊滅させた」とした。

この投稿の閲覧回数は100万回を超えた。

クラマトルスクの攻撃はウクライナ軍が発射したミサイルが原因だとする証拠も、軍兵舎が爆撃されたという証拠もない。

■ゼレンスキー氏は選挙を中止

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が選挙を「中止した」とする投稿が、ツイッターで最近、拡散された。

その投稿では証拠として、ゼレンスキー氏が6月下旬に応じたBBCのインタビューでの発言を挙げている。

ゼレンスキー氏はそのインタビューで、ウクライナで来年、選挙があるかと尋ねられ、「(戦争に)勝てばある。戒厳令も戦争もなくなっていたら、ということだ。選挙は、戦争がない平時に、法律に従って実施しなくてはならない」と答えた。

この発言について、米FOXニュースの元司会者で、アメリカのウクライナ支援に批判的なタッカー・カールソン氏は、最近スタートさせた自らのツイッターの番組で、ゼレンスキー氏がウクライナの民主主義を終わらせたことを証明するものだと述べた。

ツイッターでは、これに似た内容の「青いチェックマーク」付きのアカウントの投稿が、何十万回とシェアされている(下の画像)。

ウクライナの憲法は、戒厳令下での議会解散と国政選挙を禁じている。そのため、戒厳令が終了するまで、現在の大統領と議会が政権を維持する。

ウクライナ国家安全保障防衛会議のオレクシイ・ダニロフ書記は最近、戒厳令が敷かれている間は、憲法の定めにより、「選挙は行われない」と認めた。

BBCヴェリファイは、この記事で取り上げた虚偽や誤解を招くツイッターの「青いチェックマーク」付きの投稿について、ツイッターに質問した。ツイッターの広報は、問い合わせを受けたことは認識しているとしたが、コメントはしないとした。

■「休養中」、解任、恐らく死亡 ロシアの消えた将官たちが明らかにする軍内の亀裂

将官1人を失うことは、首尾よく進まない戦争の最中であれば不運な出来事とみなせるかもしれない。しかし24時間で2人を失うとなると、さすがに迂闊(うかつ)な話に思える。ただこれこそが、ウクライナ南部のロシア軍司令部で起きていることだ。2つの事例が描き出すのは、ロシア軍の上層部に蔓延(まんえん)する機能不全と意見対立に他ならない。

11日、ウクライナ軍のミサイルが同国南部の港湾都市ベルジャンスクにあるホテルを直撃した。ベルジャンスクはロシア軍によって占拠されていた。

死亡が伝えられた多くのロシア人の1人に、オレグ・ツォコフ中将がいた。ツォコフ氏はロシア軍南部軍管区の副司令官で、ウクライナ南部の占領地域の防衛に当たる主要人物だった。これまでウクライナでの戦闘ではロシア軍の将官が10人前後死亡しているとされるが、同氏はこのうちの最高位の階級と考えられている。

当該のホテルをロシア軍の第58諸兵科連合軍が司令部にしていたことは伏せられていなかったようだが、それでもツォコフ氏はホテル内に入った。昨年秋にはルハンスク州のスバトボ近くでウクライナ軍の攻撃に遭い、ひどく負傷してもいた。

第58諸兵科連合軍は、中南部ザポリージャ州の西側で前線を守る重要な役割を果たしている。そこは反転攻勢に出たウクライナ軍が突破を試みている地域だ。

しかしこれよりも格段に悪い事例が、続いて起きることになった。

12日遅く、第58諸兵科連合軍の司令官イワン・ポポフ少将による4分間の音声メッセージが浮上した。その中でポポフ氏は、ロシア軍上層部の対応を裏切りと呼んで非難。支援不足のために大勢の部下を失ったと訴えた。

ポポフ氏はロシアの防衛態勢の大きな欠陥を指摘した。ウクライナ側はロシアの後方陣地に長距離砲撃を仕掛ける新たな作戦で、ロシア側の状況悪化を招こうとする姿勢を鮮明にしている。

ポポフ氏はメッセージを通じ「対砲兵射撃の不足や砲兵偵察所の欠如、敵の火砲により我が軍に大量の死傷者が出ている状況」について疑問を呈したと説明。「他にも複数の問題を提起し、その全てを最高レベルで率直かつ厳重に伝えた」と述べた。

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)によると、ポポフ氏の主張はロシア軍が抱える重大な問題を露呈している可能性がある。具体的には作戦に動員できる予備兵の不足から、兵士を交代させながらウクライナの反転攻勢を防衛することができていない事態が想定される。この状況はロシア軍の防衛線を脆弱(ぜいじゃく)なものにしかねないという。

しかし、ポポフ氏の批判はこれで終わらない。 ゲラシモフ参謀総長に向けたとみられるメッセージの中で、「ウクライナ軍が我が軍を正面突破することはできなかったが、身内の上級指揮官が我々を後方から攻撃し、最も困難かつ緊迫した局面で卑劣にも軍を切り捨てた」と指摘。さらにショイグ国防相にも矛先を向け、危険を感じた上官らが仕組んだ命令によって自分を解任、排除したと主張した。

■プリゴジンはすでに死んだ(粛清)

プリゴジンは今、どういう状態にあるのか。情報が錯綜するなか、元米軍陸軍大将は「彼を見ることはもうないだろう」と語った

6月下旬にロシア政府に対する「反乱」を起こした民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンは、「すでに死んでいる可能性が高い」と元米陸軍大将が語った。ロシア大統領府は、反乱後の6月29日にウラジーミル・プーチン大統領とプリゴジンを含むワグネル幹部が面会したと発表しているが、これについても「演出」だという見方を示した。

元米陸軍大将のロバート・エイブラムスは今週、ABCニュース・ライブに出演し、プリゴジンとプーチンの会談は、ロシア政府がでっち上げたものだと主張した。そのうえで、反乱後のプリゴジンは、二度と公の場所に姿を現すことはないかもしれないと述べた。

在韓米軍司令官だったエイブラムスは、「まず、プーチンとプリゴジンが本当に会談したという証拠が出てきたら、私は驚くだろう。あれは高度な『演出』だったと思う」と語った。「私の見立てでは、プリゴジンを公の場で見ることはもうないだろう。彼は身を隠すか、投獄されるか、何らかの処分を受けることになると思うが、二度と彼を見ることはないだろう」

ではプリゴジンはまだ生きていると思うか、という質問に対してエイブラムスは、「すでに死んでいると思う」と答え、もし生きているとしたら「どこかの刑務所」にいる可能性が高いと言い添えた。

プーチンの盟友でもあるプリゴジンは6月23日、ロシア国防省に対する武装反乱を起こした。ロシア国防省が、ウクライナにあるワグネルの拠点を爆撃し、自身の兵士数十人を殺害したと主張してのことだ。

ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が仲介した結果、プリゴジンがベラルーシに亡命すれば、ロシア政府はすべての嫌疑を取り下げる、という取引が成立し、武装反乱は終結した。

ロシアに戻ったとされるが目撃情報なし

以来、プリゴジンは所在不明だ。ロシアとベラルーシを行き来するワグネルの航空機は目撃されており、反乱の数日後にはプリゴジンがプライベートジェットでベラルーシに到着したとルカシェンコは述べている。一方でロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は7月10日、プーチンが6月29日にロシアでプリゴジンと会談したと発表した。これはプリゴジンがベラルーシに到着したとされる翌日にあたる。

「プーチン大統領が会談を主催し、35人を招待した。ワグネルの指揮官とプリゴジン本人を含む幹部全員だ。この会談は6月29日にクレムリンで行われ、ほぼ3時間に及んだ」とペスコフは述べた。

会談が報告され、プリゴジンはロシアに戻ったと報道されているにもかかわらず、生きているプリゴジンの目撃情報はまだない。

■兵士から絶大な支持

ロシアの軍事ブロガーらが示唆するところによると、ツォコフ氏とポポフ氏はどちらも有能な軍人で、部下からの信頼も厚い。51歳のツォコフ氏はロシア軍の期待の星だったようで、2021年にはプーチン大統領も出席したクレムリン(ロシア大統領府)での士官候補生のための式典で演説している。

軍事ブロガーのライバー氏はポポフ氏について、兵士から絶大な支持を得ていたと説明。前線の兵士らは解任の知らせを受け、大変にやる気を失っているとした。「気取らない性格で頭脳明晰(めいせき)、誠実に職務に当たるポポフ将軍」というのが彼らの評価だという。

ポポフ氏が司令官として最後に発した言葉は自分の部隊に向けたものだった。「さようなら、私の最愛の戦士、最愛の親族、一つの家族よ。私はいつでもあなた方の手の届く所にいる。同列になってあなた方を支持することは自分にとって名誉だ」

忠誠心をかき立てる司令官を失うことは、迂闊であるだけでなく危険な場合さえある。

6月末には民間軍事会社ワグネルが武装反乱を起こし、一部の軍高官の能力と忠誠に疑義を投げかけた。このうちの何人かは、その後公の場に姿を見せていない。

ロシア航空宇宙軍の司令官で、ウクライナ侵攻の総司令官を一時務めたセルゲイ・スロビキン上級大将は、ワグネルのトップ、エフゲニー・プリゴジン氏から支持され、同氏と良好な関係を築いていた。反乱が進む最中には、幾分乱れたような格好で動画に登場し、反乱をやめるように訴える姿も見せていた。

スロビキン氏は総司令官に就任後の昨年11月、ヘルソン州からの「秩序ある撤退」を進めた人物だが、今年1月には任を解かれた。ワグネルの反乱後は姿を見せていない。

スロビキン氏の状況に臆測が渦巻く中、ロシア下院のカルタポロフ国防委員長は12日の動画で同氏が「休養中」のため姿を見せないと説明した。難航する戦争のただ中では興味深い状況と言える。クレムリンは、スロビキン氏に関する質問には国防省が答えるとの立場を取る。

カルタポロフ氏は13日にはポポフ氏にも言及。「当事者たちが問題を解決すると確信している」とした上で、有望な将軍であるポポフ氏は軍で仕事をするべきだとの見解を示した(カルタポロフ氏自身も、過去に第58諸兵科連合軍の司令官を務めた経歴を持つ)。

カルタポロフ氏は国防省に向けたように見られるメッセージも残した。「どのボスにも共通する最も重要なスキルは、問題を把握し、部下の話を聞く力だ。これを実行することが想定される人々が、既に話を聞き、把握し、これから行動を取ると思う」

■不確実性と混乱

軍事ブロガー界隈(かいわい)からの発言はより直接的だ。彼らはかねて、軍の権力層が仕返しに血道をあげているとして懸念を表明してきた。

最も有力な軍事ブロガーの一人のライバー氏は、ポポフ氏の運命にこそプリゴジン氏の武装反乱以降始まった「魔女狩り」の実態が表れているとの見方を示す。

非公式の情報発信メディア「VChK-OGPU」も12日、国防省内部の「戦争」が依然として継続しているとし、ポポフ氏の解任を要求したのはゲラシモフ参謀総長だったと主張した。

VChK-OGPUによれば、ポポフ氏がプーチン氏に直接抗議する姿勢を見せたため、「ゲラシモフ氏がその任を解き、前線に送った」という。

ポポフ氏が現在どこにいるのかは不明。

不確実性と混乱が渦巻く中で、国防省は完全な沈黙を守っている。ツォコフ氏の死亡やポポフ氏の解任、スロビキン氏の現在の居場所に関するコメントは一切出てこない。

一方で、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長は、高度に演出された形で公の場に登場している。前者は武装反乱直後にウクライナ国内を視察(映像の正確な撮影時期は疑問の余地がある)、後者はスロビキン氏の副官と電話会議を行う様子が確認されている。

ランド研究所に所属するロシア軍の専門家、ダラ・マッシコット氏は、スロビキン氏の所在への臆測が続く中で同氏の率いる航空宇宙軍の最新状況にあえてスポットライトを当てる行為は恐らく意図があると指摘する。

さらに10日にはツイッターで、ショイグ氏による前触れなしでの訓練施設の訪問に言及し、「万事順調」で自分が適任者だとアピールする取り組みがなおも続いているとの見方を示唆した。

ブロガーのライダー氏も同様の見方を示す。「ロシア国防省の指導部が主に明るい報告に依拠している事実は否定しがい状況にある。そうした状況は否定的な報告を阻害する」と指摘する。

さらに「ポポフ氏とゲラシモフ氏の対立で浮き彫りになったように、ロシア軍には結束が欠如している。敵は間違いなくその点を利用するだろう。そして当然ながらロシアはそこから痛手を被る。これこそが最も悲しいことだ」ともつづった。

西側の専門家らは、狭量な対立の文化が国防省をはじめとするロシア軍の多数の組織に浸透していると指摘。慢性的な腐敗も一因となっているこうした風土は、ウクライナでの戦況が差し迫った中でも変わっていない。

いかなる軍事作戦でも後退を余儀なくされ、混乱に陥ることはある。しかしロシアによるウクライナ侵攻では、機敏な統率や一貫した指導力が発揮された事例がほとんど確認できないのが実情だ。

有能な司令官たちの喪失は、ロシアの「特別軍事作戦」が週を追うごとに特別なものでなくなりつつあるということを改めて示している。
2023.07.15 09:01 | 固定リンク | 戦争
プリゴジン氏とプーチン異例の会談「クレムリンで3時間」
2023.07.14



■プリゴジン氏とプーチン大統領異例の会談(29日クレムリンで3時間)

プーチン大統領とプリゴジン氏との会談の情報です。先月29日に、ワグネルの指揮官らも交えクレムリンで3時間近く会談したということです。

ウクライナ軍の反転攻勢が続く一方で、ロシア国内に目を向けると、依然その動向が注目されているのが民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏です。このプリゴジン氏への対応をめぐってプーチン政権は揺れ動いてきました。

先月24日に武装反乱が発生すると、プーチン大統領は「裏切りだ」と強く非難。軍に断固たる措置を取るように指示しました。

しかし、その2日後には、ワグネルの戦闘員に対し、国防省などと契約を結ぶか、あるいはベラルーシに行けば安全を保証すると選択肢を示したのです。そしてその翌日には実際に、“プリゴジン氏がベラルーシにいる”という情報も出てきました。

一方で、今月5日には、今度はプリゴジン氏の信用を失墜させるかのような情報を国営メディアが報じます。

こうした中で、日本時間の10日夜、飛び込んできたのが、こちら。プーチン大統領とプリゴジン氏との会談の情報です。先月29日に、ワグネルの指揮官らも交えクレムリンで3時間近く会談したということです。

なぜこのタイミングで会談の情報が明らかになったのか。そして大統領とプリゴジン氏の関係はどうなっているのか。旧ソビエト時代から長年ロシア取材を続けてきた石川一洋専門解説委員に聞きました。

6月の会談の情報 なぜこのタイミングで明らかに?
Q.プーチン大統領とプリゴジン氏との先月の会談の情報、このタイミングで発表された狙いはどこにあるのでしょうか?

会談が行われた29日は反乱終結からわずか5日後です。プーチン大統領はこの日、ロシアの起業家たちとの集会に参加して、絵を描くなどして反乱は収束したと余裕を見せていました。しかもその2日前に、大統領みずから反乱について裏切り者と非難していました。

しかし、プーチン大統領みずからが、その同じ日に3時間にわたって裏切り者と呼んだプリゴジン氏らワグネルの指導部と3時間もの時間をとって、会談するということは異例なことです。

プーチン大統領にとってのこの反乱の衝撃の大きさを示すとともに、大統領とプリゴジン氏およびワグネルの近さを示し、裏切り者と切って捨てたように見せながら、プーチン閥の身内として遇していることを示しています。

確かにロシアの国営メディアでは、プリゴジン氏の豪華な私邸を暴いたり、これまで褒めたたえていたワグネルの軍事的な功績は大きなものではないとしたり、手のひら返しのネガティブキャンペーンが続いています。
フランスの雑誌報道受けクレムリンが認める形に
しかし今回、会談の事実は、まずフランスの雑誌リベラシオンが報道したのを受けて、ペスコフ報道官がその報道を確認するという形で認めました。フランスの報道は欧米情報筋としていますが、おそらくクレムリンあるいはロシアの諜報機関によるリークで、それをクレムリンが公式に認めるという複雑な発表の形式をとっています。
ただ、クレムリンあるいはプーチン大統領としては、そのネガティブキャンペーンからは距離を置きたいということで、こうした複雑なリークの方式を取ったのではないかと思います。

伝えたいメッセージはただ一つ、ペスコフ報道官の口から「ワグネルの指揮官たちは、プーチン大統領支持のための行動で、これからも祖国のために戦う」と伝えている点です。クレムリンとしては、ワグネルを含めてプーチン大統領の周囲に国は結集していると強調したかったのだと思います。

合意事項は「再び裏方に戻る」か 今後への影響は

Q.この会談、何が中心に話し合われたのでしょうか?ワグネルの今後やロシア軍への影響をどう見ていますか?

A.合意事項は「ワグネルはロシアのために戦い続ける」ということに尽きるのではないでしょうか。

ロシア軍では、反乱以後動向が伝えられていなかったゲラシモフ参謀総長の映像を国防省が公開しました。

プリゴジン氏は、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長こそ裏切り者だと主張していたのですが、国防省はショイグ国防相およびゲラシモフ参謀総長の姿を積極的に公開することで国防省と軍は動揺していないと示したのでしょう。

ただ、3時間の会談でプリゴジン氏らは誰が裏切り者なのか自説を繰り返したのでしょう。

そのリークを今流すことは、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀長に対しても、クレムリンからのお前たちは勝者ではないという一種の警告だと思います。
プリゴジン氏については、彼がパブリックでこれだけの影響力を得たのは、ウクライナへの軍事侵攻に参加して、国防省への批判を繰り返したからです。それまでは、表で発言することはほとんどありませんでした。

合意事項としては、再び裏方に戻るということではないかと思います。

■トクマク露軍拠点壊滅「200人死亡」

ザポリージャ州トクマク露軍拠点攻撃、露軍兵士200人と指揮官が死亡した

ウクライナ南部ザポリージャ州メリトポリのイワン・フェドロフ市長は13日までに、ウクライナ軍がロシアの支配下にある同州トクマクのロシア軍基地を攻撃し、ロシア軍兵士最大200人と、トクマクの指揮官が死亡したと明らかにした。

フェドロフ氏は「ウクライナ軍がトクマクにある占領者の陣地への攻撃を成功させた」とSNS「テレグラム」で述べた。

トクマクの鍛造工場に置かれているロシア軍基地が攻撃を受けたと情報機関が報告。

親ロシア派のソーシャルメディアは11日、「空軍部隊がトクマクに大規模攻撃を行った。初期情報では攻撃6回が記録されている」と伝えた。

ロシアが任命したザポリージャ州の当局者、ウラジーミル・ロゴフ氏も同日、トクマクでの一連の爆発に言及し、空き地での火災の様子を映した動画を投稿した。撮影場所は特定できなかった。

ウクライナ軍はロシア軍の重要な防衛拠点であるトクマクを定期的に攻撃目標にしていた。

露軍が補給拠点として占拠する南部ザポリージャ州メリトポリやトクマクで、複数回の爆発があった。ウクライナ側が爆発物を仕掛けた可能性がある。メリトポリはウクライナ軍が大規模な反転攻勢で奪還を目指している。

■ロシアはいつまでも戦争を続けられない

バイデン米大統領は13日、フィンランドの首都ヘルシンキで記者会見し、ロシアによるウクライナ侵略を巡り「ロシアがいつまでも戦争を続けられるとは思わない」と述べた。

バイデン氏は記者から今後も戦争が続く可能性を問われ、「ロシアの資源や能力の観点」から永久に続くことはないとの考えを示した。また、「戦争を継続することが経済的、政治的にロシアの国益にならない」とプーチン露大統領が判断する状況が訪れる可能性を指摘。「戦争が何年も続くとは思わない」と述べた。

ただ、戦争が続く期間を「正確に予測することはできない」とした。

またバイデン氏は、「ウクライナが攻勢で大きな前進を果たし、交渉による決着がつくことを望む」とも述べ、和平交渉による終戦に期待を示した。
2023.07.14 09:03 | 固定リンク | 戦争

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