露ミサイル艇を撃沈
2024.02.02
昨年12月、ウクライナ南部クリミア半島でウクライナ軍の攻撃を受けたロシア軍の大型揚陸艦ノボチェルカスク

露ミサイル艇を撃沈 ウクライナ発表、クリミア西部

ウクライナ国防省情報総局は1日、ロシアの実効支配下にあるウクライナ南部クリミア半島西部に位置するドヌズラフ湾で、露黒海艦隊のミサイル艇「イワノベツ」を撃沈したと交流サイト(SNS)で報告した。ウクライナ軍の水上ドローン(無人艇)がイワノベツに体当たりし、爆発する瞬間を撮影したとする動画も公開した。

同情報総局は「イワノベツの価格は6千万~7千万ドル(約87億~100億円)だ」と指摘。「露軍による乗組員の救助活動は成功しなかった」とも述べた。

露国防省は1日夕時点でドローン攻撃の有無についてコメントしていない。

海軍力で露軍に劣るウクライナはロシアの全面侵攻後、水上ドローンの開発・製造に着手。これまでに黒海海域で大型揚陸艦や哨戒艦など複数の露軍艦艇を破壊したり撃沈したりしている。ウクライナはロシアの海軍力に打撃を与えることで自国へのミサイル攻撃の脅威を低下させるとともに、制海権の奪取につなげたい思惑だとみられる。

■ドローン「応接間から操作」ウクライナ軍

応接間からロシア軍を攻撃……前線でドローンを駆使するウクライナ部隊を取材

ウクライナ南部ヘルソンの近くには、花柄の壁紙が残る民家の応接間から、ロシア軍を攻撃し続けるウクライナ軍のチームがいる。

2022年2月以来、ロシアの侵略に対抗するウクライナの戦いで重要な要素となっているのが、安価で手軽な攻撃用ドローンだ。

ウクライナ国家親衛隊の第11旅団で、ドローン攻撃を担当するチームを、ジェイムズ・ウォーターハウスBBCウクライナ特派員が取材した。

■ウクライナ保安庁、武器調達で大規模な汚職を指摘 国防筋が砲弾10万発を架空発注か


ウクライナ保安庁(SBU)は27日、国防関係者による15億フリヴニャ(約60億円)規模の武器架空発注を突き止めたと発表した。大規模な汚職にかかわった国防省幹部5人と武器製造業者の関係者を捜査しているという。欧州連合(EU)加盟を目指すウクライナにとって、政府関係者や議員の汚職は大きい障害となっている。

SBUによると、ウクライナ国防省の関係者は2022年8月に迫撃砲の砲弾10万発を発注し、代金を前払いしたものの、兵器は納入されなかった。代金の一部は国外へ送金されたという。

捜査の結果、国防省や東部リヴィウの武器業者の関係者が「砲弾購入と称して15億フリヴニャ近くを盗んだ」ことが発覚したと、SBUは説明している。

「調べによると、国防省の元職と現職の幹部や、関連企業の幹部が、横領にかかわっている」とSBUは明らかにした。

SBUによると、2022年2月24日に始まったロシアによる全面侵攻から6カ月たった時点での砲弾発注だったにもかかわらず、「砲弾は1発たりとも」納入されなかったという。

当局は容疑者の1人をウクライナを出国しようとしたところで逮捕し、現在も勾留しているという。

ウクライナの検事総長は、横領された資金はすでに差し押さえてあり、国防予算に戻されるとしている。

ウクライナでは、政府や議会内の汚職が長年にわたる根深い問題として続いている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は汚職撲滅を主要公約に掲げて、2019年4月に当選した。

ウクライナは現在、アメリカからの追加軍事支援を得る見通しがたたない状態にある。アメリカではウクライナ支援を続けようとするバイデン政権の取り組みを、野党・共和党が議会で阻止している。

ゼレンスキー大統領は昨年8月、全国の徴兵担当を解任した。徴兵逃れを希望するウクライナ人男性からわいろを受け取り便宜を図る汚職が、横行していたためとされる。

ゼレンスキー政権は汚職撲滅の取り組みを続けており、昨年1月には汚職の疑いを指摘された高官11人が辞職。2月には富豪や元内相を家宅捜索し、5月には国家反汚職局と反汚職専門検察が汚職の疑いで最高裁長官を拘束した。EU加盟を求めているウクライナにとって、汚職対策はEUから課せられている重要な要件のひとつ。他の西側機関も、ウクライナに汚職対策を要求している。

各国の腐敗・汚職に取り組む非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルがまとめた2022年の汚職国家ランキングでは、180カ国中116位だった(順位が低いほど、汚職度が高い)。前年は180カ国中122位だったため、近年の対策が評価されている様子がうかがえる。10年間でランキングの位置が28位も上がるなど、同組織のリストで一貫して評価が改善し続けている10カ国のひとつでもある(汚職度が最も低いと評価されている、1位の国はデンマーク。日本は18位)。

■ウクライナ軍、50万人の追加動員求める 「深刻な人数」とゼレンスキー氏

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日、同国軍が最大50万人の追加動員を望んでいると明らかにした。ロシアとの戦争は、開始から2年の節目を迎えようとしている。

ゼレンスキー氏はキーウでの記者会見で、「45万人から50万人」を求めていると説明。デリケートで負担の大きい問題だと述べた。

また、「非常に深刻な人数」だとし、軍の要望に応えるには、計画の「詳細を知る必要がある」と主張。

「ウクライナの100万人強の軍隊はどうなるのか。私たちの国を2年間守ってきた兵士らはどうなるのか。ローテーションや休暇の問題もある。包括的な計画であるべきだ」と述べた。

女性を動員する案については否定した。
2024.02.02 11:56 | 固定リンク | 戦争
ウクライナ戦争長期化
2024.01.28
ウクライナ戦争は2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで勃発し、現在も続いています。2023年にはウクライナが反転攻勢をかけましたが、ロシアの抵抗に遭い、大きな成果は得られませんでした。2024年に入ってからは、両国ともに戦略的な攻勢を仕掛けることができず、前線はほとんど動いていません。しかし、両国の間には和平交渉の見通しも立っておらず、戦争は長期化の様相を呈しています。

ウクライナ戦争は、西側諸国とロシアの対立を深めるとともに、地域や国際社会にも多大な影響を及ぼしています。西側諸国はウクライナに経済的・軍事的な支援を行っていますが、ロシアの圧力により一部の国はその姿勢を変えています。また、ウクライナ戦争は北朝鮮やイランなどのロシアの支援国との関係にも影響を与えています。さらに、ウクライナ戦争は人道的な危機も引き起こしており、多数の死傷者や難民が発生しています。

ウクライナ戦争の今後の展開は、ロシアとウクライナの両政府の意思や、西側諸国の支援の継続性、そしてロシアの支援国の動向に左右されると考えられます。しかし、現時点では、戦争の終結に向けた決定的な動きは見られません。ウクライナ戦争は、今後も欧州大陸の安全保障にとって重大な課題となるでしょう。

ウクライナ戦争の今後の展開と西側諸国の支援
要約
ウクライナ戦争は2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで勃発し、現在も続いている。
2023年にはウクライナが反転攻勢をかけたが、ロシアの抵抗に遭い、大きな成果は得られなかった。
2024年に入ってからは、両国ともに戦略的な攻勢を仕掛けることができず、前線はほとんど動いていない。
しかし、両国の間には和平交渉の見通しも立っておらず、戦争は長期化の様相を呈している。
ウクライナ戦争は、西側諸国とロシアの対立を深めるとともに、地域や国際社会にも多大な影響を及ぼしている。
西側諸国はウクライナに経済的・軍事的な支援を行っているが、ロシアの圧力により一部の国はその姿勢を変えている。
ウクライナ戦争の今後の展開は、ロシアとウクライナの両政府の意思や、西側諸国の支援の継続性、そしてロシアの支援国の動向に左右されると考えられる。
しかし、現時点では、戦争の終結に向けた決定的な動きは見られない。
ウクライナ戦争は、今後も欧州大陸の安全保障にとって重大な課題となるでしょう。

背景
ウクライナは2014年に親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領が失脚した後、欧州連合(EU)との関係を強化しようとした。
しかし、ロシアはこれに反発し、同年にウクライナ南部のクリミア半島を不法に併合した。
また、ロシアはウクライナ東部のドンバス地方で親ロシア派の分離主義者を支援し、武装紛争を引き起こした。
2015年には、フランスとドイツの仲介で、ウクライナとロシアの間にミンスク協定が結ばれた。
この協定は、停戦や重火器の撤退、分離主義地域の特別な地位の承認などを定めたが、実施は遅々として進まなかった。
2022年2月には、ロシアがウクライナに大規模な侵攻を開始し、ウクライナ戦争が勃発した。
ロシアは、ドンバス地方のほかに、ウクライナ南部のヘルソン州やザポリージャ州、東部のハルキウ州やルハンスク州などを占領した。
ウクライナは、国際社会の支援を受けて、ロシアの侵略に抵抗した。

現状
2023年には、ウクライナが反転攻勢をかけたが、ロシアの抵抗に遭い、大きな成果は得られなかった。
ウクライナは、ヘルソン州やザポリージャ州の一部を奪還し、ドンバス地方の前線を若干西に押し戻した。
しかし、ロシアは、クリミア半島からの増援や、北朝鮮やイランからの支援で、ウクライナの攻勢を阻止した。
2024年に入ってからは、両国ともに戦略的な攻勢を仕掛けることができず、前線はほとんど動いていない。
しかし、両国の間には和平交渉の見通しも立っておらず、戦争は長期化の様相を呈している。
ロシアは、ウクライナの領土の一部を自らのものとすることを主張し、ウクライナのEUやNATOへの加盟を阻止しようとしている。
ウクライナは、ロシアの侵略を受け入れることを拒否し、自らの主権と領土の回復を求めている。
両国の立場は相容れないものであり、妥協の余地はほとんどない。

影響
ウクライナ戦争は、西側諸国とロシアの対立を深めるとともに、地域や国際社会にも多大な影響を及ぼしている。
西側諸国はウクライナに経済的・軍事的な支援を行っているが、ロシアの圧力により一部の国はその姿勢を変えている。
アメリカは、ウクライナに対する包括的防衛支援パッケージを提案したが、共和党の反対で上院で否決された。
EUは、ウクライナに対する経済援助のパッケージを決定したが、ハンガリーが拒否権を発動し、実施が遅れている。
一方、日本やインド、フィリピン、韓国、台湾、オーストラリア、カナダなどの国々は、ウクライナに対する支援を継続している。
これらの国々は、ロシアの侵略的な行動に対抗するために、ウクライナとの連携を強化しようとしている。
ウクライナ戦争は、北朝鮮やイランなどのロシアの支援国との関係にも影響を与えている。
北朝鮮は、ロシアに対する国際的な制裁を無視して、ロシアに武器や燃料を提供している。
イランは、ロシアとの核協議を利用して、ウクライナに対する圧力をかけようとしている。

ウクライナが「すべて取り戻す」は難しい 停戦に向けたベターなシナリオすら困難な理由

2024.01.28 14:54 | 固定リンク | 戦争
【全容解説】イスラエル・ハマス・ヒズボラ戦争
2023.11.05
■イスラエル ガザ市街地に侵攻

イスラエルのガラント国防相は、地上部隊がガザの市街地に入ったと明らかにした。

ガラント国防相は4日、イスラエル軍の地上部隊が、ガザ地区の中心都市であるガザ市を南北から攻撃し、市街地に入ったと明らかにした。

一方、ハマス側はイスラエル軍の空爆により、60人以上の人質が行方がわからなくなっていると発表した。

イスラエル側は人質はおよそ240人としていることから、ハマス側の発表が事実であれば行方不明となっている人質は全体の4分の1に達する。

こうした中、アメリカのバイデン大統領は4日、ガザでの人道目的の戦闘の一時停止に向けた協議が進展しているという考えを示した。

アメリカ・バイデン大統領「(人道目的の戦闘の一時停止の進展は?)イエス」

人道目的の戦闘の一時停止をめぐっては、中東を歴訪中のブリンケン国務長官もアラブ諸国の外相らと協議を続けている。

即時停戦を求める大規模なデモは、この週末もアメリカの首都ワシントンをはじめ、ヨーロッパや中東など世界各地で行われている。

イスラエル軍による激しい攻撃が続くパレスチナ自治区ガザ地区で4日、避難所の学校や難民キャンプなどが被害を受け、数十人が死亡しました。

ロイター通信によりますと、ガザ地区北部のジャバリアで国連が運営する避難所の学校が4日、イスラエル軍の空爆を受けました。ガザ地区保健当局は、この空爆で15人が死亡したと発表しています。また、中東メディアは、中部にあるマガジ難民キャンプも空爆を受け、病院関係者の話として、30人以上が死亡したと伝えています。

連日激しい空爆が続く中、ハマス側はおよそ240人いるとみられる人質のうち、60人以上が行方不明になったと主張しています。

一方、攻勢を強めるイスラエル軍は、ガラント国防相が4日、「ハマスは大打撃を受けている。司令官12人が死亡した」と述べ、攻撃の成果を強調しています。

こうした中、アメリカのブリンケン国務長官が4日、サウジアラビアやエジプトなどアラブ諸国の外相らと会談しました。

アラブ諸国が即時停戦が必要と主張したのに対し、ブリンケン長官は「停戦はハマスに立て直しの機会を与えるだけ」として、人道支援を円滑化させる目的での戦闘の一時停止を主張しました。

双方の溝の深さが改めて浮き彫りになり、事態の収束につながる成果は打ち出せていません。

■【解説】 イスラエル・ガザ戦争 4週間たった今、五つの新しい現実=BBC国際編集長

イスラム組織ハマスが10月7日にイスラエルを奇襲攻撃して以来、大量の記事や分析やコメントがあふれ出している。しかし、この事態の全容を知る人は誰もいないのだと、まずはその点を理解しておく必要がある。戦争の霧を突破して、戦場で何が起きているのか把握するのは、いつもと同じように困難だ。そしてそれに加えて、イスラエルとパレスチナの紛争の新しい形が、まだ浮き彫りになっていない。

事態は今も猛スピードで動き続けている。この戦争が拡大するかもしれないという懸念は、依然として現実味のあることだ。中東での新しい現実はどこかにあるのだが、その形と仕組みがどうなるのかは、今のこの戦争が今年いっぱい、そしておそらくその先に至るまで、どう展開するか次第だ。

すでにわかっていることと、わかっていないことを、いくつか書き並べてみる。下に挙げた内容は、わかっていることとそうでないことの全てでは決してない。

2003年にアメリカがイラクに侵攻した際、当時のドナルド・ラムズフェルド米国防長官が「未知の未知」について語ったのは、一部の人に嘲笑された。しかし、世界のどこでもそうだが特にここ中東地域では、「未知の未知」、つまり「まだわかっていない、わかっていないこと」というのは存在する。そして、その未知の未知がいざ出現してくると、大きな変化をもたらす。



パレスチナ自治区ガザ地区でハマスと、ハマスと連携するイスラム聖戦機構の勢力を打破するため、軍事作戦を実施することを、イスラエル国民は支持している。これは確かだ。ハマスの攻撃で1400人以上が殺され、約240人が人質にとられ今なおガザで捕らわれていることの衝撃が、イスラエル人の怒りを突き動かしている。

私は、イスラエル陸軍の退役将軍ノアム・ティボン氏に会って話を聞いた。10月7日にハマスがガザ境界に近いキブツ(農業共同体)を襲撃したと知り、自ら運転する車で妻と共にナハル・オズへ急行したのだという。息子と息子の妻、そして2人の幼い娘は、家の外でハマス戦闘員が動き回るのを、自宅内のシェルターで聞いていた。ティボン氏は無事に、息子夫妻と孫たちを助け出した。

退役はしているものの、62歳の将軍は見たところ健康そのものだ。殺されたイスラエル兵の自動小銃とヘルメットを拝借し、当日の混乱の中でまとめあげた兵士の集団を指揮した。キブツの安全を確保し、自分の家族のほかに大勢の命を救った。

ティボン将軍は率直にありのままを話す、昔ながらの軍人だった。

「ガザはひどい目に遭う(中略)近所の人が赤ちゃんや女性や、ともかく大勢の人を大量に殺すなど、そんなことを受け入れる国などない。あなたがた(イギリス人)が第2次世界大戦で敵をつぶしたように。我々はガザでも、同じようにしなくてはならない。情け容赦なく」

罪のないパレスチナの民間人が殺されているが、それはどう思うかと、たずねてみた。

「残念ながら、それも起きている。私たちが暮らすここは、厳しい場所だ。生き延びなくてはならない。それにはタフでないと。ほかに選択肢がない」

イスラエル人の多くは、同じように反応する。パレスチナ人の民間人が死亡しているのは残念なことだが、殺されているのはハマスの行為のせいだと。



ハマスに対するイスラエルの攻撃が、ひどい流血を招いているのも、同様にはっきりしている。ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、これまでに9000人以上のパレスチナ人が死亡した。その約65%が子供と女性だという。

イスラエルの攻撃で殺された男性のうち、何人が民間人で、何人がハマスやイスラム聖戦機構のために戦っていたのかは、はっきりしない。ジョー・バイデン米大統領とイスラエルは、ハマスによる保健省の数字を信用していない。しかし、過去の紛争では複数の国際機関が、パレスチナ側が発表する死傷者数は正確だと認定している。

厳粛なマイルストーンがもうすぐそこまできている。国連によると、ロシアが21カ月前にウクライナ全面侵攻を開始して以来、ウクライナで殺された民間人は約9700人に上る。

パレスチナで殺された人の中には、ハマス関係者もいただろう。しかし、仮にその割合が10%だったとしても(しかもそれはあり得ない)、イスラエルがわずか1カ月余りで殺したパレスチナの民間人の数は近いうちに、ロシアが2022年2月からウクライナで殺した民間人と同じレベルに達してしまう(国連は、ウクライナでの死者数データは不完全で、実際に殺された民間人の数ははるかに多いだろうとしている。同様にガザでも、多くのパレスチナ人ががれきの下に埋まったままで、実際の死者数ははるかに多いだろうとされている)。

国連の人権当局は、イスラエルによる空爆であまりに多くの民間人が殺され、負傷しているため、攻撃は不均衡で、戦争犯罪にあたるかもしれないと述べている。

ハマスによる攻撃から間もなく、バイデン大統領はハマス掃討のために武力を使うというイスラエルの判断を支持している。しかし同時に、「正しいやり方」が必要だという条件をつけ足している。つまり、民間人は保護されなくてはならないという交戦法規をイスラエルが順守することを、バイデン氏は求めているのだ。

アントニー・ブリンケン米国務長官は3日、イスラエル・テルアヴィヴに到着した。ワシントンを出発する前には、「パレスチナ人の子供が、男の子や女の子が、崩れた建物のがれきの下から引き出されるのを目にすると、みぞおちを殴られたみたいな気持ちになる。イスラエルの子供でも、ほかのどこの子供でも同じだ」と述べた。

私は過去30年間、イスラエルが戦ったすべての戦争を取材してきた。イスラエルが交戦法規を順守しなくてはならないと、アメリカ政府がこれほど公然と言明したことは、記憶にない。ブリンケン長官の今回のイスラエル訪問は、イスラエルがバイデン氏の助言に従っていないという認識のあらわれだろうと思える。



もうひとつ確かなことがある。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、相当のプレッシャーにさらされている。

イスラエルの治安当局や軍隊のトップと異なり、10月7日に境界沿いの集落がほとんど無防備状態だったという、とんでもない数々の失態について、首相は個人的な責任を一切認めていない。

首相は10月29日に、情報当局を非難するツイートを投稿した。これを受けてイスラエル国内は騒然とした。のちに首相はツイートを削除し、謝罪した。

米外交専門誌フォーリン・アフェアーズに10月31日、3人のイスラエル人による記事が掲載された。元和平交渉担当者、イスラエルの国内情報機関シン・ベトの元責任者、そしてIT起業家が3人そろって、この戦争とその後の一切の展開にネタニヤフ首相は関与してはならないと主張した。ネタニヤフ首相には忠実な支持者もいるが、イスラエルの軍や治安当局で重要な人たちの信頼を失った。

家族を救うためにキブツ・ナハル・オズまで戦いながら進んだ前出のティボン退役将軍は、ネタニヤフ首相をイギリスのネヴィル・チェンバレン元首相と比較した。チェンバレン元首相は1940年に辞任に追い込まれ、ウィンストン・チャーチル氏と交代した。

「これはイスラエル国家の歴史において最大の失敗だ。軍事的な失敗だ。情報機関の失敗だ。そして政府の失敗だ。統括していたのは、そしてすべての責任を負うべきなのは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。イスラエルの歴史で最大の失敗の責任者は、首相にほかならない」



そして、これまでの物事のあり方が、粉々に破壊されてしまったことも、また明確だ。これまでの常態は、不快で危険だったが、厳しくおなじみの一定の安定性も、ある意味で備えていたようだ。パレスチナ側から起きた前回の武力闘争が2005年ごろに終わって以来、双方の関係性にはパターンが生じていて、ネタニヤフ氏はその繰り返しをいつまでも維持できると考えていた。それは全当事者にとって、危険な幻想だった。パレスチナ人にとっても、イスラエル人にとっても。

つまり、パレスチナ人はもはやイスラエルにとって脅威ではなく、代わりに管理して対応すべき問題なのだというのが、その言い分だった。問題を管理するために使う道具は、飴(あめ)と鞭(むち)。そして、「分割して統治せよ」という古くからの戦術だった。

ネタニヤフ氏は1996年~1999年にいったん首相を務めた後、2009年以降はほとんど常に、イスラエルの首相だった。そしてその間、常に、イスラエルには和平のパートナーがいないと主張し続けた。

しかし、パートナーになれるかもしれない相手はいた。ハマスの最大のライバルはパレスチナ自治政府だ。自治政府にはひどい組織的欠陥があり、支持者の多くは高齢のマフムード・アッバス大統領は辞任すべきだと考えいてる。それでも、自治政府は1990年代に、イスラエルと共存するパレスチナ国家の樹立という案を、受け入れていた。

「分割統治」とはネタニヤフ氏にとって、パレスチナ自治政府を犠牲にして、ガザ地区におけるハマスの権力拡大を認めることを意味した。

イスラエルで最も長く首相を務めてきたネタニヤフ氏は、常に公の発言については慎重だが、その長年にわたる行動が示していることがある。彼は、パレスチナ人に独立国家を持たせたくないのだ。パレスチナ国家が建国されてしまえば、イスラエルは東エルサレムを含むヨルダン川西岸の土地を手放すことになる。しかし、イスラエルの右派は、東エルサレムはユダヤ人のものだと信じている。

ネタニヤフ首相の発言は、これまで折に触れてリークされてきた。2019年には、与党リクード党の議員団に対して、パレスチナ国家に反対するならば、(主にカタールが提供する)資金をガザにつぎ込む案を支持するべきだと話していたことが、複数のイスラエル消息筋によって明らかになった。ガザ地区のハマスとヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治政府の分断が深まれば、パレスチナ国家の建国は不可能になると、首相は与党議員たちに話していたのだという。



加えて、アメリカの後押しを得ているイスラエルが、ハマスが権力を握り続けることを認める取引を受け入れないことも、はっきりしている。そしてその場合、ますます大量の流血が続くことは確かだ。そして、ならばいったい何が、あるいは誰が、ハマスの代わりになるのかという大問題に、今のところ答えは出ていない。

ヨルダン川と地中海の間の土地について、その支配権をめぐるアラブ人とユダヤ人の紛争は、もう100年以上続いてきた。血にまみれたその長い歴史の中で、一つの教訓が得られている。つまり、軍事的解決は絶対にありえないという教訓だ。

1990年代のオスロ和平プロセスは、東エルサレムに首都を置くパレスチナ国家を樹立し、イスラエルと共存させることで、紛争を終わらせようとするものだった。いったん合意した後は何度も交渉が立ち消えになり、アメリカのバラク・オバマ政権が協議を復活させようとしたのを最後に、約10年前に破綻した。そして以来、パレスチナとイスラエルの紛争はそのまま、悪化を続けるまま放置された。

バイデン大統領をはじめ大勢が口をそろえて言うように、これ以上の戦争を回避するための唯一のチャンスは、イスラエルの隣にパレスチナ国家を樹立することだ。イスラエルもパレスチナもお互いに、現在の指導部ではそれは不可能だ。イスラエルとパレスチナの双方にいる過激主義者は、1990年だからずっとそうしてきたように、二つの国家共存というこの計画を台無しにしようとするだろう。中には、自分は神の意志に従っているのだと信じる者たちもいる。その場合、世俗的な妥協案を受け入れるよう説得するのは不可能だ。

しかし、根深い偏見を打破するだけの衝撃をこの戦争によって受けないなら、今のこの戦争の衝撃によってさえ「2国家共存」の和平案が復活しないなら、もはや何をもってしても不可能だ。そして、双方が受け入れられる紛争終結の方法がないまま、パレスチナ人とイスラエル人は今後何世代にもわたり、戦争を繰り返すしかなくなってしまう。
2023.11.05 13:37 | 固定リンク | 戦争
ハマス虐殺許可「何時間にもわたって執拗に」
2023.11.03
半裸状態でハマスに虐殺されたシャニ・ルークさん(22)の発見場所 イスラエルが公開した「犠牲者マップ」が示すこと

「残念ながら、昨日、娘がもう生きていないという情報を聞きました」──イスラム組織ハマスに拘束されたドイツ系イスラエル人女性、シャニ・ルークさん(22)の母親であるリカルダ・ルークさんは、10月30日、ドイツのニュースチャンネル「n-tv」でそう報告した。イスラエル国防軍(IDF)を通じ、娘の死を知ったという。DNA鑑定により、発見された頭がい骨の一部がシャニさんのものであることが確認されたようだ。

シャニさんは、ハマスの攻撃対象となった音楽フェスに参加していた。彼女が裸に近い状態でトラックの荷台に乗せられ、ハマスの戦闘員に連行される映像は、世界中の人々に強いショックを与えた。映像がネット上で拡散されるなか、母親のリカルダさんは、シャニさんがガザ地区の病院に入院しているとの生存情報を得たことを明かしていた。

「しかし、生存情報を得てから進展がなく、リカルダさんは10月20日、『私たちは生存情報を疑い始めています。1週間以上、何も連絡がありません……』とドイツのタブロイド紙『ビルト』で涙ながらに語っていました。

 海外報道によると、シャニさんの死亡が確認された今、両親たちは、“娘は音楽フェスでハマスの戦闘員に頭を撃たれて死亡した”と考えているといいます。シャニさんの妹であるアディ・ルークさんは、追悼の意を込めて、姉の似顔絵をInstagramにアップしていました」(全国紙の国際部記者、以下同)

 イスラエルは、10月7日に行われたハマスの攻撃によって犠牲者1400人以上がどこで亡くなったかを示す地図を公開した。音楽祭が開催されたエリアには、死亡者を表す赤い丸が集まっており、シャニさんが命を落とした場所についても記載されている。さらに“音楽フェス虐殺事件”として、〈何時間にもわたって執拗に狩られ、実弾銃やロケット推進手榴弾ランチャーで撃ち抜かれて人々が殺されたり、武装した捕虜に連れ去られたりするのを無力に見守った〉と、フェス参加者が味わった地獄についても描写されている。

さらにイスラエルが、ハマスによる残虐行為を集めた映像を公開したとの報道もある。

「イギリスのタブロイド紙『デイリー・メール』は、イスラエル国防軍が一部のジャーナリストたちを集め、約45分間の映像を上映したと報じています。ハマスが民間人を殺害する様子をとらえた映像で、ある者は斬首され、ある者は撃たれ、少女が犠牲になる瞬間もあったといいます。

 親子に手榴弾が投げつけられて、父親は即死し、生き残った息子が血まみれで『なぜ自分は生きているの?』と泣く場面もあり、参加したジャーナリストが『もうやめろ』と泣き叫ぶほどの残虐な映像だったという情報です」

 一方で、イスラエル側も民間人を巻き込んだ報復攻撃を行い、国際的批判が集まっている。

ガザ地区北部にあるジャバリア難民キャンプは、11万人を超える難民が登録されており、ガザで最大規模の難民キャンプです。10月31日、イスラエル軍はここに空爆を行い、少なくとも50人以上が死亡したとされています。

 イスラエル軍の報道官は、空爆を認めた上で、『この攻撃によってハマスの指揮官を殺害した』と主張しています。しかし、ハマスの報道官は、『ジャバリアに指揮官はおらず、民間人を攻撃するための口実だ』と反論しています。

 それぞれの思惑のもと、イスラエルもハマスも意図的なメディア露出をしている可能性があり、情報が錯綜している状況が続いていますが、双方の無数の民間人が犠牲になっていることは確かな事実です。

ガザとの境界から約5キロほどのエリアで行われていた野外音楽フェスも、襲撃の場となった。国際ジャーナリストが語る。

「ブラジルで行われている人気音楽フェスのイスラエル版として開催され、アメリカやドイツ、タイなどさまざまな国から若者を中心に最大4000人が集まったとみられています。ガザからも近いイスラエル側の砂漠で行われたため、ハマスの標的となってしまいました」

 ハマス戦闘員は逃げ遅れた観客を次々と襲い、会場周辺に残された遺体の数は少なくとも260を超えていると報告されており、そのほか人質として連れ去られた観客もいるという。

 ネット上では現地の惨状をとらえた動画や写真が拡散されている。意識不明と見られる女性が、ほぼ裸体のままトラックに乗せられ運ばれるものや、泣き叫びながらバイクで連行される女性を撮影した映像などが出回っている状況だ。

 イスラエルとハマスの軍事衝突に世界的な注目が集まる中、〈音楽フェスを開催することが、パレスチナへの挑発行為に相当したのではないか〉という憶測がSNSで広がっている。パレスチナでは、多くの人々がイスラム教を信仰している。アフガニスタンで活動するイスラム原理主義組織「タリバン」は音楽を不道徳なものとみなし、同組織が政権を握っていた1996年~2001年は音楽が禁止されていた。そのため“イスラムは音楽禁止”というイメージを持つ人々が多く、上記の憶測に繋がったのだろう。

そのように解釈する信徒も一部いるというだけで、実際のところ、明確に音楽を禁止する記述はコーランにありません。イスラム教徒が多数を占める国にも歌手や音楽イベントは存在し、ほかの宗教と同じように音楽が楽しまれています。

音楽フェスが『ハマス』を刺激してしまったという説は、間違っていると思います。私は、『ハマス』の構成員が自ら公開したBGMつきの動画を見たことだってありますよ。音楽フェスがハマスの標的になった理由としては、ガザの近くで多くの国からの参加者が集まったことが可能性として考えられます。さまざまな国の人質を取ることで国際社会から注目され、ハマスの要求を交換条件として突きつけることができます。自分たちの主張を世界に発信することも、テロリストの目的なんです」

 世界の4人に1人はイスラム教徒といわれている。自身もイスラム教徒であるフィフィは、「イスラムへの誤解が広がっている」と苦言を呈する。

「ハマスのような過激派の主張は、イスラムを代表するものではありません。“イスラムは危険なテロリストだ”というイメージが広がって困るのは、善良に暮らす大半のイスラム教徒です」

 正しい知識を身につけることが大切だという。

「ハマスのやり方が正しいとは思えませんし、彼らを擁護するわけではありません。しかし、今回の攻撃に至るまでに、イスラエルによるパレスチナへの弾圧もありました。物事には必ず背景があり、今だけを切り取って考えても仕方ありません」

イスラエル建国から75年続くパレスチナ問題。世界中がその行方を見守っている──。

■音楽フェス襲撃後に拷問

半裸でハマスに連行されたドイツ人女性シャニ・ルークさんはどのように最期を迎えたのか 両親がコメント「苦しむことはなかった」

ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスに拘束されたドイツ系イスラエル人女性、シャニ・ルークさん(22)の死亡が確認された。シャニさんは、10月7日にハマスに襲撃された音楽フェスに参加していた。

 10月30日、シャニさんの母親のリカルダ・ルークさんは、「残念ながら、昨日、娘がもう生きていないという情報を聞きました」とドイツのニュースチャンネル「n-tv」で報告。イスラエル国防軍(IDF)を通して、娘の死亡を知ったという。頭がい骨の一部が発見され、DNA鑑定でシャニさんのものであることが確認されたようだ。

 シャニさんの両親は、娘は音楽フェスでハマスの戦闘員に頭を撃たれて死亡したと考えているという。父親であるニッシム・ルークさんも、イギリスのタブロイド紙「デイリー・メール」の取材に応え、「(娘は)撃たれて即死した。苦しむことはなかった」と推察した。

■「斬首された」証言も

方で、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、「彼女は斬首された」と語っている。またイスラエル外務省も拉致後にシャニさんが「テロリストらによる拷問を受け、街頭を連れ回された」と報じている。

シャニさんがどのように命を落としたのか、はっきりした経緯は明らかになっていない状況だ。

シャニさんがほぼ裸の状態でトラックの荷台に乗せられ、ハマスの戦闘員に連れ去られる現場をとらえた映像は、世界中に衝撃を与えた。シャニさんの手足は不自然な方向に折れ曲がり、微動だにしないため、すでに彼女は死亡しているものとして受け止めた人々も多かった。

しかし、母親のリカルダ・ルークさんは、シャニさんは頭部に重症を負い、ガザ地区にある病院に入院しているとの情報を得たことを明かしていた。ハマスによる人質の解放が始まると、家族たちは、「なぜアメリカはカタールと接触して捕虜を解放できたのに、ドイツは解放できなかったのか?」とドイツのタブロイド紙『ビルト』で自国の対応を批判していた。

「リカルダさんは、10月8日夜にシャニさんのクレジットカードがガザ地区で使われたという報告を銀行から受けたとも伝えていました。ただ、イスラエル側もハマス側もそれぞれの思惑のもとで意図的なメディア露出をしている可能性があり、情報が錯綜している状況が続いています。

 娘の生存情報を得てから進展がなく、10月20日、リカルダさんは『ビルト』に再び登場し、『私たちは生存情報を疑い始めています。1週間以上、何も連絡がありません……』と涙ながらに語っていました」(全国紙の国際部記者)

 イスラエルの都市テルアビブのドイツ大使館前には、横断幕を持った人々が集まり、「ドイツのオラフ・ショルツ首相は、シャニさんを救わなければならない」と訴えていた。

「大使館前に集まった人々の中には、シャニさんの友人たちもおり、タトゥーアーティストだったシャニさんが彫ったタトゥーを入れた若者もいました。シャニさんの友人たちは、『ビルト』の取材に『彼女はとても自由な魂を持っている』や『彼女は自分の芸術を広めたかっただけ』と語っていました」(前出・国際部記者)

「芸術を広める」という夢を抱いた若者は、無惨な最期を迎えた。
2023.11.03 08:47 | 固定リンク | 戦争
ドニプロ川東岸でロシア軍を蹂躙
2023.11.03
ウクライナ軍が「奪還」したドニプロ川東岸でロシア軍を蹂躙

ウクライナ軍が、攻撃型ドローンでロシアの複数の装甲兵員輸送車(APC)を破壊する様子を捉えたとする新たな動画が浮上した。戦火に引き裂かれたウクライナの中で、ロシアが併合を宣言したヘルソン州南部で撮影されたという。

このXの動画は、YouTube画像の一部で、ウクライナ軍がロシア軍の複数のAPCを標的にしている。撮影場所は、ロシアが実効支配するドニプロ川東岸にあるクリンキー村の近くとされている。もしそうだとすれば、ウクライナ軍が今まさにロシアから奪還しようとしている戦場だ。

攻撃型ドローンを駆使する航空偵察部隊「マジャールの鳥」を率いるロベルト・ブロブディ(コールサイン「マジャール」)が10月29日にYouTubeに投稿した動画では、さらに多くのロシア軍車両が、ウクライナのドローンの餌食になっているように見える。

ウクライナが反転攻勢を開始して以降の数カ月、激戦地はおおむね、同国東部ドネツク州および南部ザポリージャ州に集中している。ロシアは2022年9月、ドネツクとザポリージャ、ルハンシク、ヘルソンの4州を公式に「併合」したが、ウクライナ南部および東部に位置するこれらの地域を完全に掌握しているわけではない。

なかでも最近になって注目が集まっているのがヘルソン州だ。アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は10月28日付のレポートで、ドニプロ川東岸の河岸から約2キロのクリンキ村にウクライナ軍が「拠点を維持している」と述べた。ISWによれば、ウクライナ軍は10月中旬にロシア側が支配する東岸への渡河作戦を行った。難しいと言われた渡河が成功した上、対岸に拠点を築きつつあるようだ。

ウクライナ南部ではドニプロ川が、現在の戦闘の最前線だ。ロシア側は川の東側を支配しているが、それも2022年11月にここまで撤退させられた結果だ。

ウクライナ軍は、東岸地域に対する渡河作戦を複数回実施したと考えられている。ロシアが実効支配する村々に、より確実な足がかりを得ることを目指した行動だ。

10月20日付のニューヨーク・タイムズが伝えたところによると、ウクライナ軍が取り返したヘルソン市当局の広報を担当するオレクサンドル・トロコニコウは、ウクライナ軍部隊は、東岸に「海兵隊員などの兵員を上陸させるべく、絶え間なく努力を続けている」と述べたという。

ロシアの軍事ブロガーも、ウクライナが橋頭堡をドニプロ川東岸に築いたことを認めていると、戦争研究所は29日の報告で指摘していた。

ウクライナがロシア軍のT-90戦車をFPV(一人称視点)ドローンで破壊する劇的な瞬間を捉えた新たな動画が公開され、注目を集めている。ウクライナの戦場では、低コストで乗組員不要のドローンを使った攻撃が主流となっている。

開戦から18カ月以上が経つ今も、ロシアとウクライナの間では激しい制空権奪取戦が続いている。その一端をのぞかせる珍しい映像が浮上した。

10月24日にロシアとウクライナの戦争に関する情報を扱っているテレグラムチャンネル「Karymat」に投稿され、ソーシャルメディア上で共有された動画には、ウクライナ空軍の旧ソ連製スホーイSu27らしき戦闘機が標的に向けてミサイルを発射して飛び去る様子が映っている。この戦闘機の標的が何だったかは不明だが、Karymatチャンネルは、「敵の空中目標」に向けて「空対空ミサイル」を発射したと説明している。

ロシアがウクライナに本格侵攻してから18カ月以上が経つが、両国は今も激しい空中戦を繰り広げている。

ロシア軍にとって、侵攻後すぐにウクライナの制空権を掌握できなかったことは、最大の失敗のひとつだ。

ロシア軍の巡航ミサイルやドローンは今も、ウクライナ上空を飛行して各地の標的を攻撃しているが、ロシア空軍の航空機が危険を冒してウクライナ内陸部深くに飛行していくことは滅多にない。米国製の地対空ミサイル「パトリオット」など、西側諸国が供与した防空システムがウクライナに到着していることで、ロシア側にとって危険は増す一方だ。

■ATACMSでロシアの損失拡大

戦争中の兵器類の損失を集計するオランダのオープンソース調査会社「Oryx」によれば、2022年2月24日の本格侵攻以降、ロシア軍の航空機85機が破壊され、さらに8機が損傷を受けた。この中にはスホーイSu25近接支援用攻撃機30機、スホーイSu30SM多用途戦闘機11機とスホーイSu34戦闘爆撃機21機が含まれている。

このほかにもヘリコプター102機が破壊され、28機が損傷し、2機が鹵獲された。この多くが、ウクライナ東部のルハンシクと南部のベルジャンシクにあるロシア軍の拠点に対して、ウクライナ軍が初めて米国製の陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)を使用した際のものだ。

ウクライナ側の報告によれば、ロシア軍の損失はさらに大きく、ウクライナ軍はロシア軍の軍用機320機とヘリコプター324機を破壊したとしている。

18カ月以上にわたる戦闘はウクライナ空軍にも被害をもたらしており、ウクライナ軍が敗北する運命にあるとみられていた侵攻開始当初に、多くの経験豊富なパイロットが犠牲になった。ウクライナ空軍は航空機やパイロットの数でロシア空軍に劣っており、それらを失うことは戦略的により大きな痛手となる。

Oryxによれば、2022年2月以降にウクライナ軍の航空機75機が破壊され、1機が損傷し、1機が捕獲された。この中にはミグ29戦闘機22機、スホーイSu27戦闘機12機とスホーイSu25近接支援用攻撃機17機が含まれている。

ウクライナ空軍が保有する航空機は多くがソビエト時代のものだが、ウクライナは近いうちに、NATOの戦闘機導入による航空隊の強化が実現することを期待している。アメリカ、デンマークなど11カ国による国家連合が、ウクライナに米国製F16戦闘機の訓練を提供。10月からアリゾナ州のモリス州兵空軍基地で訓練を開始した。

■東部でロ軍に多大損害「ゼレンスキー大統領」

ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、ロシア軍が攻勢を仕掛けている東部ドネツク州でロシア側に多大な損害を与えたと明らかにし、南部戦線では攻撃を続けていると主張した。オランダのオロングレン国防相と首都キーウ(キエフ)で会談し、各国が重要兵器の供与を決断する後押しをしたとして、謝意を示した。大統領府などが発表した。

英国防省は2日、ウクライナ軍の攻撃でロシアが先週、長距離地対空ミサイルの発射装置を少なくとも4基失った恐れがあるとの分析を発表。損失により、ロシア側の防空が弱まる可能性があるとの考えを示した。クリミア半島でも地対空ミサイル関連設備が損傷したと指摘。
2023.11.03 08:13 | 固定リンク | 戦争

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