令和の怪物「わずか1場所で十両に」
2023.06.09



【大相撲】落合 師匠・元白鵬も絶賛する“令和の怪物”に強豪中学の初稽古で「恐怖でフリーズ」の“黒歴
史”

 まだ襟足もない「ざんばら頭」が、早くも番付の最上段に到達する――。

 2023年1月の初場所で、特例の幕下付出でデビューした落合哲也(19)は、同場所を全勝優勝すると、わずか1場所で十両に昇進。

 そして、五月場所は西十両八枚目で14勝1敗の成績を残したことで、遠藤に並ぶ史上最速の所要3場所、名古屋での七月場所からの幕内昇進が確実となっている。

「2年連続で高校横綱に輝き、卒業後は父親の会社に所属して実業団相撲へ。そこでも、19歳で全国優勝。

 争奪戦の末に宮城野親方(元横綱・白鵬)の弟子として、角界入りしました。

 快進撃から “令和の怪物” と呼ばれています。体の大きさによるパワーとスピードだけでなく、四つ相撲が取れる。宮城野親方も『相撲を知っている』と絶賛しているそうです」(相撲記者)

 来場所からは、四股名を「伯桜鵬(はくおうほう)」にあらためる落合。「伯」の字は地元・鳥取県倉吉市が、かつて「伯耆国(ほうきのくに)」だったことが由来だ。

 倉吉を離れて、強豪相撲部で知られる鳥取市立西中学校に進学した。落合の中学3年間で学年主任を務めた中尾ひとみ先生はこう語る。

「生徒たちも教員も『テツ』と呼んでいました。方言で言う『ぼっこい(きつい、乱暴な)』感じではなく、優しい子でしたよ。合唱コンクールのときも、クラスみんなを盛り上げてがんばっていました。

 相撲部の生徒をたくさん見てきましたが、テツが1年生のときは、体の大きさのわりに、給食をそんなに多く食べていないな、と思っていたんです。

 でも、学年が上がるにつれて量は増えていきました。1年のころまでは、相撲に対する闘志がそこまで湧いてなくて、だんだんと本気になっていったんじゃないかと思います」

 落合本人も、昔の “根性なし” ぶりを明かしていたそう。

「中学3年で少年相撲の親善大会『白鵬杯』に優勝したとき、地元・成徳地区の公民館の広報誌で、落合くんがそれまでの歩みを自ら語っていました。

 中学校で初めての本格的な稽古で相手にぶつかられ、『ゴーン』という音とともに、頭に大きな衝撃を受けたそうなんです。そのときは恐怖で、体がフリーズしたような状態だったと明かしていました。

 小学4年生のときにも、鳥取に遠征に来た同世代のわんぱく相撲チャンピオンに吹っ飛ばされて、逃げまわったことがあったそう。“怪物”といわれる出世ぶりの彼でも、そんな泣き濡れた過去があったんですよね」(地元住民)

 その後の華麗なる経歴に “物言い” がつくことはないはずだ。
2023.06.09 11:16 | 固定リンク | スポーツ
両手両足を縛られ「女性殺害」
2023.06.07
両手両足を縛られた状態 福岡・水巻の女性殺害事件

5日、福岡県水巻町のアパートの部屋で女性が殺害されているのが見つかった事件で、捜査関係者によりますと女性は両手両足を縛られた状態で居間のテーブルの下に上半身が隠れるようにして死亡していたということで警察は殺害された状況やいきさつを詳しく調べています。

5日の夜、福岡県水巻町二東のアパートの部屋で、ここに1人で住むパート従業員の辻つぐみさん(52)が死亡しているのが見つかり警察は殺人事件として捜査しています。

捜査関係者によりますと女性は居間で倒れているのが見つかった際、両手両足を縛られた状態で居間のテーブルの下に上半身が隠れるようにして死亡していたことです。

また、警察が遺体を調べたところ女性は今月2日から3日にかけて死亡したとみられ、死因は首を圧迫されたことによる窒息死だったことがわかっていますが、捜査関係者によりますと、体にはほかにもすり傷やあざなど、争ったような痕跡があったということです。

女性が倒れているのを見つけ警察に通報したという近所に住む男性は「室内は、散らかった状態であさられたような感じだった。優しい真面目な人でトラブルがあるような人ではなかった」などと話しています。

事件の前に女性から警察に対してトラブルなどの相談はなかったということで警察は殺害された状況やいきさつを詳しく調べています。

 県警によると、死因は首を圧迫されたことによる窒息だった。2~3日ごろ殺害されたとみられる。遺体発見時、玄関は施錠されていなかった。これまで辻さんが周囲とトラブルを抱えていたとの情報はない。県警は殺人事件として折尾署に捜査本部を設置した。

■アパートに女性の遺体、福岡 無施錠、事件視野に捜査

 5日午後8時半ごろ、福岡県水巻町のアパートの一室で、警察官が女性の遺体を見つけた。折尾署によると、この部屋に1人で暮らす50代の女性とみられる。玄関は無施錠で、現場の状況から事件に巻き込まれた可能性もあるとみて捜査している。署が6日、発表した。

 部屋の中を見た近くの住民によると、引き出しが開いたままで荒らされたような形跡があった。

 署によると、女性は目立った外傷はなく、司法解剖して死因を調べる。2日まで出勤していたが、土日を挟んで5日に出勤しなかった。同日午後4時半ごろ、同僚の男性が「連絡が取れない」と通報した。

 現場はJR東水巻駅から西に約750メートルの住宅街。
2023.06.07 16:20 | 固定リンク | 事件/事故
プーチン狂気の沙汰「別の巨大ダム標的」へ
2023.06.07



狂気のプーチン〟ロシア、別の巨大ダムも標的か!? 決壊したウクライナのダム以外も…「もっと爆破するよう指示している」衝撃の計画報道 「ダム破壊狂気の沙汰」世界へ震撼

ウクライナ南部ヘルソン州で6日に発生したカホフカ水力発電所の巨大ダム決壊をめぐっては、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いるウクライナと、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアが、相手の破壊工作だと非難し合っている。こうしたなか、ロシアが別のダムを狙っているという衝撃情報が報じられた。ICC(国際刑事裁判所)による捜査打診の動きや、国際調査委員会設置を提案する動きも出ている。

「(ロシア側は)ドニプロ川のダムをもっと爆破するよう指示している」

ウクライナ国防相顧問のユーリ・サク氏は、英BBCラジオ4の番組で、傍受した電話の内容をこう明かした。決壊したダム以外も、標的になっている可能性があるようだ。

ダムが決壊した原因はいまだに判然としていないが、西側諸国ではロシアの責任を追及する声が高まっている。

6日に開かれた国連安全保障理事会の会合では、日本や欧米が、ロシアのウクライナ侵攻がダム決壊につながったと批判し、ロシア軍の撤退を改めて要求した。英国のカリウキ国連次席大使はロシアが民間施設への攻撃を繰り返してきたと前置きし「ダム決壊の責任が証明されれば、品位の低さを新たに示すことになる」と強く非難した。

これに対し、ロシア大統領府によると、プーチン氏は、ウクライナが西側の支援を受け、ロシア領内で破壊工作を行っていると強調。ダム破壊は「野蛮な行為の明白な例だ」と非難したという。

決壊原因の調査をめぐり、国際社会の関与を求める動きも出ている。

ロイター通信によると、ゼレンスキー氏は定例のビデオ演説で、同国の検察当局がダム破壊の捜査に国際司法を関与させるようICCの検察官に打診していると明らかにした。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は7日、ゼレンスキー氏、プーチン氏とそれぞれ電話会談し、ダム決壊に関する国際調査委員会の設置を提案した。

一方、ダム決壊に伴う被害は甚大なものになるとの見方が出ている。

ウクライナの検察庁幹部は6日、ダム下流域の約80カ所の都市や集落が洪水被害に遭う恐れがあり、4万人超の避難が必要とする推計を明らかにした。州都ヘルソンでは残された人がいるもようだが、被害の全容は不明。米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は6日、「死者が多数に上る可能性がある」と述べた。


ウクライナが反攻開始か 国防次官「攻撃に移行」戦闘激化、ダムなどインフラ被害

■ロシア軍移動不可能に、最重要橋「ハイマース」によって使用不能に

南部へルソンの元地方行政庁舎前に駐車する親ロシア勢力の装甲車

ウクライナ軍は13日、ロシア軍が占領する南部ヘルソン州で移動に欠かせない主要な橋をまたひとつ破壊したと発表した。ウクライナは、ロシアが侵略開始から間もなく占領したヘルソン州を奪還しようと、激しい戦闘を展開している。

ウクライナ軍によると、ノヴァ・カホフカのダムにかかる橋はもはや通行不能だという。この主張の客観的な検証はされていない。南部軍管区はフェイスブックに、「ノヴァ・カホフカのダムにかかる道路橋の破壊が確認され、使用できなくなった」と書いた。

ウクライナ軍は7月末にも、ヘルソン州を流れるドニプロ川の渡河に重要なアントニフスキー橋を通行不能にした。西側消息筋は、アメリカ製の高機動ロケット砲システム「ハイマース」によって、この橋は「使用不能になった」としている。

イギリス国防省は13日、連日定例の戦況分析で、ウクライナ軍による8月10日の精密攻撃で、重い軍用車両はノヴァ・カホフカの道路橋でドニプロ川を渡ることができなくなったと指摘した。ノヴァ・カホフカは、ヘルソン市から約55キロ北東にある。

イギリス国防省はさらに、アントニフスキー橋についてロシアは場当たり的な修復しかできておらず、橋は構造的に破損したままだと説明。先週にはヘルソン近くの主要な鉄道橋もさらに破壊された。このため、ロシア軍は7月末から、鉄道橋の近くで浮橋を設置して補給を運んでおり、ドニプロ川の西側にいる数千のロシア兵は、「わずか2カ所の浮橋を使った渡河ポイント」に「ほぼ完全に依存している」という。

「たとえロシアが各地の橋をかなり修復したとしても、重要な脆弱カ所であり続ける」と、イギリス国防省は指摘している。

また複数の軍事アナリストは、ドニプロ川の西にいるロシア軍部隊は、他の占領軍から切り離され孤立する恐れがあると指摘している。

ウクライナ軍は橋の破壊によって、各地のロシア軍部隊を孤立させ、究極的にはヘルソン州を奪還したい考え。開戦前には人口約29万人だった同州は現在、ロシアが後押しする行政官が統治している。

2月末の侵攻開始以降、ロシア軍が新たに制圧した州都はヘルソン市のみ。それだけに、その奪還はウクライナにとって大きな成果となる。

■破壊されたダムの下流、数千人が避難 ウクライナは4万人超が避難必要と

ウクライナ南部ヘルソン州のロシア支配地域にある水力発電所のダムが決壊したことで、ドニプロ川の下流では数千人が避難している。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ノヴァ・カホフカにあるカホフカ・ダムが6日未明に決壊した後、80町村が浸水する可能性があると述べると共に、ロシアがダムを決壊させたとした。

ドニプロ川に大量の水が流出しており、下流のヘルソン市は壊滅的な洪水の危険に直面しているとされる。

カホフカ・ダムを管理しているロシアは破壊行為を否定。ウクライナの砲撃によるものだとしている。

双方の主張ともBBCは検証できていない。

巨大なカホフカ貯水池の下流にあるカホフカ・ダムは、地域の農家や住民らに水を供給すると共に、欧州最大のザポリッジャ原発にも冷却水を供給している。また、ロシアが占拠しているクリミア半島への重要な水路の一部にもなっている。

ウクライナの原子力事業者エネルゴアトムは、下流への水の流出のピークは7日朝との見通しを示し、注意を呼びかけた。その後、「安定化」の期間となり、水は4〜5日間で急速に引くだろうとした。

■「原発に直ちにリスクない」

国際原子力機関(IAEA)は、ザポリッジャ原発の状況について、管理ができており、「直ちに原子力安全上のリスクはない」としている。

複数の映像によると、ダムの決壊部分から大量の水が噴き出ている。いくつかの町はすでに浸水しており、より下流の地域で暮らす人々はバスや電車での避難を余儀なくされている。

ウクライナのテレビでは、同国のヴィクトリヤ・リトヴィノヴァ副検事総長が、ドニプロ川の西側のウクライナ領で1万7000人、東側のロシア支配地域で2万5000人が避難の必要があると説明。イホル・クリメンコ内相は、これまでに約1000人が避難し、24の集落で浸水被害が出ていると述べた。

内相はまた、住民が非難しているヘルソン南部をロシアが砲撃したと非難。住民らに対しては、水位上昇で地雷がむき出しになっており危険だと注意を呼びかけた。

カホフカ・ダムの近くに住むアンドリイさんは、ロシアが街を「溺れ」させようとしていると語った。同ダムはロシアが昨年2月にウクライナに本格侵攻を始めた直後からロシア軍が押さえている。

ウクライナ管理下のヘルソン市では、リュドミラさんという女性が、洗濯機などを古い車に連結したトレーラーに積んでいた。「洪水が怖い。少し高いところに家の物を運んでいる」と言い、ロシア軍については「ここから追放してほしい。(中略)私たちに向けて銃撃している。私たちを水浸しにするなどしている」と話した。

同じくヘルソン市で暮らすセルヒイさんは、「ここですべてが死ぬ」のを恐れていると心境を説明。近くの家や庭を手で示しながら、「すべての生き物や人が流される」と言った。

ロシアが制圧しているノヴァ・カホフカの川岸では、ロシアが任命したウラジミール・レオンティエフ市長が、街が水没して900人が避難していると説明した。

市長によると、同市と近隣の2集落から住民を安全な場所に移動させるため、避難用のバス53台を当局が手配したという。水位は11メートルを超え、住民の中には病院に運ばれた人もいるという。

小さな町オレシキーでも大規模な浸水が発生したと、ロシアが任命した町当局者らが明らかにした。

ロシア支配地域の川岸にあるカズコヴァ・ディブロワ動物園はフェイスブックに、同園が完全に浸水し、約300匹いたすべての動物が死んだと投稿した。

カホフカ・ダム決壊の原因について、ウクライナ軍の情報機関はロシアが意図的に爆破したとしている。

ロシア側は、ウクライナ軍が反転攻勢でダムの道路を通ってロシア支配地域に進入することを恐れていた節がある。そのことからすると、ウクライナ側の見方は理にかなっていると思われる。

ウクライナ南部の支配地域を死守したいロシアにとっては、カホフカ・ダムは明らかに問題だった。

ウクライナ軍は昨秋、ドニプロ川下流の道路や鉄道橋を攻撃し、ロシア軍をヘルソン周辺で孤立させるのに成功した。ロシアはウクライナによる多方面からの反撃を恐れており、ダムの破壊に踏み切ったのかもしれない。

一方、ロシア政府関係者は、ウクライナが反転攻勢と、クリミア半島に真水が届かないようにするのに「失敗」したことを目立たなくするため、ダムを攻撃したと主張している。

ウクライナの大規模な反撃はしばらく前から予想されている。ウクライナは予告はしないとしているが、ここ数日の軍事活動の増加は反撃の開始を示しているとみられている。

ゼレンスキー大統領は6日夜のビデオ演説で、ダムの破壊がウクライナを止めることはないと強調。「私たちはすべての領土を解放する」と述べた。

ウクライナ国防相顧問のユーリ・サク氏は、BBCラジオ4の番組で、ロシアが別のダムも狙っていることが、傍受された電話の内容からうかがえると説明。「(ロシア側は)ドニプロ川のダムをもっと爆破するよう指示している」と述べた。

ウクライナは、今回のダム攻撃を「エコサイド」(環境の大規模破壊)と呼び、エンジンオイル150トンがドニプロ川に流出したと明らかにした。

ウクライナの水力発電関連の事業者は、カホフカ・ダムとつながる発電所について、「完全に破壊された。(中略)水力発電の構造物が流されている」とした。

各国の指導者らは、今回のダム決壊はロシアの責任だと主張。戦争犯罪だとする人もいる。

イギリスのリシ・スーナク首相は、ロシアのせいだと判明すれば、「ロシアの侵略が新たなレベルへと悪化したのを示すことになる」と述べた。

北大西洋条約機構(NATO)イェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ダム破壊はウクライナでのロシアの戦争における残虐性を改めて示したと発言。欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は「前例のない攻撃に衝撃を受けている」と述べた。

戦争でダムを標的にすることは、民間人に危険が及ぶことから、ジュネーヴ条約で明確に禁止されている。

■ウクライナ反攻、開始の兆候 東部で戦闘が大幅に増加

欧米の当局者が、ウクライナによるロシアへの大規模な反転攻勢について、始まった兆候を目撃していると考えていることが分かった。北大西洋条約機構(NATO)当局者が6日、明らかにした。ウクライナ軍がロシア軍の防衛線の弱点を探っており、過去48時間の間に東部での戦闘が大幅に増加しているという。

「形成」作戦とも呼ばれる初期の攻撃は少なくとも2週間前から行われていたが、ウクライナ軍はこの数日、砲撃や地上攻撃でロシアの陣地を試し、突破が可能な脆弱(ぜいじゃく)な地域を見つけ始めたという。NATO当局者や欧州の情報当局者がCNNに明らかにした。

ウクライナ南部のロシア軍の占領下にあるダムが破壊され、洪水によって避難が始まったことで、ウクライナ側の計画の一部が複雑になる可能性があるという。

西側の当局者によれば、ダムの決壊によって、ウクライナ軍がドニプロ川を渡ってロシア軍の陣地を攻撃することが、より困難になる可能性がある。また、ダムの決壊によって、ウクライナ政府が対応して、人的・物的資源を投入する必要がある人道的な課題がすでに発生している。

米国に駐在している欧州の大使は、ダムの下流で計画していた作戦をすべて練り直さなければならない可能性があるとの見方を示した。最終的に水は引くものの、壊滅的な洪水が橋や道路に影響を与えており、以前の計画通りには使用できない可能性があるという。

西側諸国の情報機関はダム破壊の実行犯が誰なのか調べているものの、ロシアによるものとの見方に傾いているという。

NATO当局者によれば、専門家はここ数日、ザポリージャ州の南東部や、南部のヘルソン市とザポリージャ原発の間で、ウクライナ軍によるいくつかの顕著な軍事行動や探査の動きを目撃している。ウクライナ軍は、ドネツク市の南側でも軍事行動を行っており、これは新たな試みに見えるという。

米軍高官によれば、反攻作戦は複数の前線で実行される見通し。同高官は、大規模な地上戦を開始する前に「同期させなければならない多くの可動部品がある」と説明した。天候も影響を与えており、ロシアの防衛線に対するウクライナ軍の初期の攻撃が遅れている。

■ウクライナ軍、マリウポリでロシア軍の車列を急襲

ウクライナ軍の部隊が同国南東部のマリウポリでロシア軍の車列を急襲した場面を、ドローンで撮影した動画が、18日に公開された。

動画は超国家主義の民兵集団として結成され、現在はウクライナ軍に統合されている「アゾフ大隊」が投稿。CNNは位置と真偽を確認したが、襲撃の時期は特定できていない。

動画には、マリウポリ市内の道路を南下する6台の車列が映っている。車列はカフェの前で歩道にそれて止まった。

カメラがズームインすると、ウクライナ軍の兵士らが車列に忍び寄る様子が見え、次の場面では兵士らが車列に向かって発砲している。

動画はさらに、6台の車のうち少なくとも3台が炎上する場面に切り替わる。少なくとも2台の車には、ロシア軍の侵攻を象徴する「Z」の文字が書かれている。

続いてウクライナ軍の兵士らがれんがの壁越しに、1台の車と壁の間に隠れたロシア兵らの方向へ手投げ弾を放り投げている。

動画には手投げ弾がロシア兵らを直撃する場面も含まれるため、CNNは全編の放送を控えている。

■「まるで射撃場の七面鳥」、ドネツク州の激戦地で大損害被るロシア軍 今後の攻勢に向け暗雲も

ドネツク州の激戦地、ドローン映像が捉えたロシア軍の「混乱」

ウクライナ・キーウ(CNN) 現場は大混乱に陥っている。戦車は強引に向きを変えた後で爆発するか、一直線に地雷原へ突っ込んでいく。兵士らは四方八方に走り回り、中には体に火がついた者もいる。戦車にひかれた死体も見えている。

複数のロシアの軍事ブロガーがこの惨状を失敗、さらにはそれ上回る言葉で形容した。

これらの場面はウクライナ軍のドローン(無人機)が過去2週間、東部ドネツク州の町ブフレダール周辺を上空から撮影したものだ。現地ではロシア軍による襲撃が立て続けに失敗している。

ブフレダールでのこのような失態は、ロシア軍の指揮系統や戦術が慢性的な機能不全に陥っていることを示唆する。同軍は春季の攻勢に向けた準備を進めているが、ドネツク州からルハンスク州にかけて伸びる前線の他の場所でも同様の苦戦を強いられれば、より多くの領土の掌握を図るクレムリン(ロシア大統領府)の計画は失敗に終わる可能性がある。

現場を特定した約20の動画には、基本的な戦術上の大失策が映っている。現場の地形は障害物のない平地で、高台にいるウクライナ軍の弾着観測者は砲撃についての指示を出すことができる。地雷原の存在もロシア側の被害に拍車をかける。

ある動画では地雷原に進入した戦車が爆発。その後、歩兵戦闘車とみられる車両も同じ運命をたどった。別の動画にはウクライナ軍のドローンが小型の爆発物を複数の戦車に向けて落とす様子が映っている。戦車は開けた場所で動かず、じっとしている。現場は放棄された装甲車両の墓場と化している。

動画はウクライナ軍が公開し、CNNと軍事の専門家が分析した。その内容によると、少なくとも二十数台のロシア軍の戦車及び歩兵戦闘車が数日のうちに無力化もしくは破壊された。衛星画像からは、現場の樹木限界線に沿って集中攻撃が行われたことが分かる。ロシア軍の戦車はこの地点で前進を試みていた。

ロシア国防省はブフレダールへの攻撃について、計画通り進んでいると主張。プーチン大統領は12日のテレビ放送のために記録した演説の中で、攻撃を主に担う第155海軍歩兵旅団の働きを称賛した。

ウクライナ軍の砲撃の跡が集中するブフレダール周辺の衛星画像

■「真正面から突っ込むのは愚か者だけ」

しかしウクライナ東部の親ロシア派「ドネツク人民共和国(DPR)」の首長を自称するデニス・プシリン氏は10日、当該地域を「激戦地」と認め、敵が予備軍を大量に送り込んでくるため「現地の解放に時間がかかっている」と明かしていた。

ブフレダールは近くの炭鉱のために建設された町で、周囲の平地より高い地点に存在する。高層階を有する複数の建物は、強固な地下施設と並んでウクライナ軍の守備隊に相当の優位性を与えている。

ブフレダールの戦闘を検証してきた軍事史家のトム・クーパー氏はこの町を、「何もない平らな砂漠の真ん中に立つ、巨大で高くそびえる要塞(ようさい)」と形容する。

ロシア軍は3カ月にわたりブフレダールの奪取を試みている。これが成功すれば、ウクライナ軍は近くの鉄道を遮断するのが難しくなる。この鉄道はドネツク州とロシアの占領下のクリミア半島とをつないでいる。

クーパー氏によれば、ロシア軍はブフレダール周辺に兵士約2万人、主力戦車90両、大砲約100門などを投入しているという。

しかし、1月の最終週に始まった攻撃は致命的な失敗に見舞われていると同氏は指摘。相当狭いルートを進むロシア軍の部隊は、ブフレダールの高い建物に陣取るウクライナ軍の視界に常に入る。同軍の砲撃は前進するロシア軍部隊に大損害をもたらすだけでなく、後方からの戦力の供給や退却ルートに対しても打撃を与えているという。

ロシアの有力な軍事ブロガーの多くも、ブフレダールへの自国の攻撃を厳しく批判している。DPRで国防相を務めたイーゴリ・ストレルコフ氏は兵士らが「射撃場の七面鳥のように撃たれている」と非難。テレグラムへの投稿で、多くの優れた戦車や精鋭ぞろいの落下傘兵、海軍歩兵隊員が失われていると述べた。

別の投稿では「同じ場所に真正面から突っ込むのは愚か者だけ。町は重度に要塞化され、攻撃側には極めて都合が悪い。何カ月もそうした状況が続いている」と、指摘した。

ロシアの軍事ブロガーらには、テレグラムのチャンネルの登録者が数万人から数十万人いるとされる。

ブフレダール近くで任務に就くウクライナ軍の砲兵隊

■兵士の練度に疑問の声

英国防省は12日の報告で、ブフレダールのような戦場でのロシア軍の損失拡大について、「様々な要因が絡んでいる公算が大きい。具体的には熟練の兵士や連携の欠如、前線一帯での資材の不足などだ」と分析した。

ウクライナの当局者によると、ブフレダール周辺に展開するロシア軍には職業軍人からなる部隊のほか最近動員された兵士、DPRの民兵、「パトリオット」と呼ばれる民間軍事会社の歩兵などが不規則に加わっているという。パトリオットはロシア国防省に近い会社と言われる。

ブフレダール周辺での苦戦は、より広範なロシア軍の攻勢にとっても良い兆しとはならない。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、こうした失敗がロシアの超国家主義者らの確信を一段と弱める公算が大きいと指摘する。これらの層は、ロシア軍に戦況を決定する攻勢をかける能力があるとの見解を示している。

しかし、ロシア軍が作戦のペースを上げる中、ウクライナ軍の部隊の一部では弾薬が不足しつつある。専門家らはウクライナ側の課題として、前線の部隊に砲弾や対戦車ミサイルなどを迅速に再供給することを挙げた。

■バフムートは「生き地獄」、ロシア戦力はワグネルから空挺兵に ウクライナの指揮官語る

バフムート近郊の前線でロシア軍の陣地へ自走式カノン砲を発射

ロシアの侵攻を受けるウクライナ東部の激戦地バフムートの内外では戦闘が絶えず「生き地獄」になっていると、ウクライナ国家親衛隊の指揮官の一人が30日、ウクライナのテレビのインタビューで語った。

国家親衛隊第4即応旅団スボボダ大隊の副大隊長ボロディミル・ナザレンコ氏は、生き地獄は「5~6カ月」続き、「兵士の戦闘能力や士気、生活状態に影響を与える天候の変化により気づくようになった」と語った。

ロシア軍が全面的な攻撃を仕掛けているのかや相手方の戦術の変化について確かなことを言えないとしつつ、ロシア側の兵力がワグネルから空挺(くうてい)部隊に置き換わったとの見方を示した。

ナザレンコ氏は、ロシア側が近隣のコンスタンチノフカとバフムートを結ぶ幹線道路を掌握しようとしていると指摘。ウクライナ軍と国家親衛隊は「素晴らしい仕事」をしていて、敵方には大きな損失が出ていると述べた。

CNNはロシア側の損失に関する主張を独自に検証できていない。

ナザレンコ氏は「ワグネルはほぼ完全に破壊された様子だ。今は空挺兵に置き換わっているが、その兵士らもほぼ毎日、人員だけでなく装甲車両で被害が出ている」とも語った。

■黒海のスネーク島周辺のロシアのセルナ級揚陸艇、ミサイル攻撃で沈没

ぎりぎりでミサイルかわす揚陸艇、衛星画像が捉えた黒海の攻防

米衛星運用会社マクサー・テクノロジーズが12日に撮影した新たな衛星画像には、ウクライナ南部の黒海に浮かぶスネーク島の近くの海上にミサイル1発が撃ち込まれる様子が写っている。

2筋の白煙の近くを航行する1隻の艦船について、マクサーはロシア軍のセルナ級揚陸艇と特定した。

同艦は急角度で向きを変えているように見える。ミサイルはその付近の海上に着弾している。

島の近くを写した別の画像には、重量物運搬用のクレーンが載った艀(はしけ)の隣で海中に沈んでいる艦船が見える。マクサーはこの艦船もセルナ級揚陸艇と特定した。

同艦がどのようにして沈没したのかは不明だが、オデーサ地域軍政の広報官は8日の時点で、揚陸艇1隻とラプター級哨戒艇2隻が攻撃を受けたと説明していた。

同広報官はまた、ウクライナ軍がロシア軍のヘリコプターをスネーク島で破壊したとも述べた。ウクライナ軍は8日、ヘリコプター1機がミサイルで破壊される動画を公開している。

上記の広報官は12日、ロシア海軍の補助艦「フセボロド・ボブロフ」で火災が起き、スネーク島の領域からクリミア半島南西部のセバストポリにえい航されていると発表した。同艦は今回の衛星画像に写っておらず、CNNはこの発表の信憑(しんぴょう)性を確認していない。

現時点でロシア側は、前出の艦船のいずれについても損失を確認していない。
2023.06.07 14:59 | 固定リンク | 戦争
脱中国・資本家の本音
2023.06.06



アングル:米進出目指す中国ハイテク企業家、国外脱出企てる本当の理由

野心的な中国のハイテク起業家にとって、米国での事業拡大は難しさが増す一方になっている。

2019年以前は、中国本土にいながら米国で事業を行う企業を運営する上で大きな問題はほとんどなかった。しかし、米中貿易摩擦がエスカレートする中で、特に米政府が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に制裁を科して以降は、幾つかの中国企業は本社機能を海外に移し始めた。それが米政府の厳しい視線をそらす手だてになり得るとみられたからだ。

そして今、中国本土の複数のハイテク企業オーナーは、さらに踏み込んだ対応が必要だと話す。米国における各種規制や中国企業への偏見を避けるには、経営者が中国以外の国・地域の永住権ないし市民権を取るべきだという。

ロイターは、中国本土で7人のハイテク起業家に話を聞くことができた。その大半は国外で教育を受け、米国での事業拡大を望んでいる。7人全員が国外の永住権か市民権の取得を目指していて、検討先は香港、カナダ、日本、米国、シンガポールなど。

このうち3人は取材に際して英語のファーストネームのみの匿名、残る4人は完全な匿名を求め、全員が自分たちの事業を詳しく描写しないで欲しいと要望した。いずれも中国当局による処罰を恐れているためだ。

こうした中で深センを拠点としているライアンさんは、3年前に立ち上げたソフトウエア関連のスタートアップ企業が世界最大の市場である米国進出を果たす段階に達したと明かした。この企業は、既に東アジアでは100万人のユーザーを抱えている。

ただ、ライアンさんは、米中貿易摩擦や、米議会で実際に制裁を発動されたり発動を提案されたりしている中国企業がどんどん増えていく状況には落胆している。米国に進出しようとしている他の国の競争相手には全く関係がない問題を背負わされているのは「非常に不公平だ」と嘆く。

では、どうするかについて、ライアンさんが選んだのはアジアの別の国で永住権を得る方法だ。

■風当たり

米中の緊張は、トランプ政権下で幅広い分野に対中関税が導入され、ファーウェイへの制裁が科されたことで高まったが、現在のバイデン政権になってからも一向に和らぐ気配はない。

主な対立点は、米国による対中半導体輸出規制とデータ保護を巡る問題。後者に関して、米政府は中国系短編動画投稿アプリのTikTok(ティックトック)を公用の端末で使用するのを禁止した。

一方で中国も最近、国内重要産業に米半導体大手マイクロン・テクノロジーの製品調達を禁じるなど報復に動いている。

ロイターが取材した起業家やコンサルタントの話では、このような対立関係を反映し、米国で資金調達ないし事業展開をしたがっている中国本土企業への風当たりは、以前よりずっと強まった。

米コンサルティング会社・APCOワールドワイドの広域中華圏チェアマン、ジェームズ・マクレガー氏は「ワシントンや多くの州都に出回っている政治的な言説は、全ての中国企業が政府と共産党と深くつながり、直接指示を受けているという誤解に基づいている」と述べた。

■脱中国色

ただ、ロイターが話を聞いた起業家のほとんどは、米国進出の難易度が上がってもなお、それを最終的な目標としている。いくら規模が大きいといっても中国本土市場に事業を専念するのは魅力的な選択肢ではない、と彼らは言い切る。

習近平指導部の中国に起業家らが幻滅したのは、かつて自由に活動できたハイテク分野に対して2020年終盤から2年間続いた締め付けだった。これは新型コロナウイルスのパンデミックに際して感染を徹底的に封じ込めるために打ち出された「ゼロコロナ」政策の時期と重なる。

習氏が昨年、指導者3期目を務めることが承認された後、ソフトウエア関連スタートアップ企業を国外に移す方法を模索し始めた起業家のウィルソンさんは「パンデミック期間に何もかもが変わってしまった」と語る。

中国本土を足場に事業をすることは不可能ではないが、米中相互の不信感がここまで強まった以上、国外に脱出できるなら、その方が従業員や株主のためにも楽になると付け加えた。

深センを拠点にコンサルティング会社ノース・アメリカン・エコシステム・インスティテュートを運営するクリス・ペレイラ氏は、中国で本社の国外移転や、企業の中国色そのものを消すことさえ模索する動きが、トレントになってきたとみている。

実際、ファストファッションの電子商取引(EC)プラットフォームを展開するSHEIN(シーイン)はシンガポール企業を事実上の持ち株会社化した。ネット通販大手の拼多多(ピンドゥオドゥオ)の持ち株会社も、5月初めに本社を上海からダブリンに移した。

ペレイラ氏の会社には今年初め以来、中国本土企業100社前後から、国外への事業拡大についての支援要請が舞い込んでいる。これに対して同氏は、単に中国色を薄めるだけではなく、いかに進出先の国・地域で効果的にサービスや製品を最適化し、社会の一員になれるか助言しているという。

■当局への不信感

起業家らは、民間企業オーナーを応援すると表明した中国政府が信じられないと打ち明け、市民の自由が失われる事態への不安を口にしている。

さらに中国で積極的に事業を手がけるなら、必然的に共産党との関係を築かなければならず、これは気が進まないとの声も聞かれた。

起業家の1人で既に中国を離れたトミーさんは、中国で企業を経営していた際に、製品に関する検閲要求があまりにもたび重なり、政府の介入がひどくなったため、事業をたたんだと当時を振り返った。

トミーさんは今、新たな起業を進めている。最近の米国出張時には税関でなぜ米国の銀行口座を持っているのかしつこく聞かれる経験をしたが、それでも最終的には米国に進出したい考えだ。

■脱中国加速

ダイキン、青山商事、アップル…「脱中国」リスク分散のため脱中国を急ぐ企業の急増

ここにきて、生産拠点を中国から他のアジア新興国などに分散する企業が増えている。わが国のアパレル業界では脱中国が一段と鮮明だ。象徴的な企業に、ビジネススーツなどを手掛ける青山商事がある。2014年からインドネシアで生産を開始した同社は、今後も対中依存を低下させる方針だ。

 なお、財務省の貿易統計で2017年と2021年を比較すると、わが国の「スーツの輸入」は、中国からの割合が47%から41%に低下している。一方、ベトナムからは10%から11%、インドネシアからは12%から15%に増加している。

脱中国の動きは、アパレル以外にも広がる。空調大手のダイキンは、中国からの原材料調達に頼らずフッ化水素酸を生産する技術を生み出した。同社は中国製の部品が調達できなくてもエアコンを生産する体制も構築している。

海外企業も生産拠点の脱中国を進めている。象徴的な企業は、米国のアップルだ。アップルは、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンが河南省鄭州市で運営する工場にてiPhoneやiPadを生産してきたが、近年インドやベトナムにシフトしている。また、米ナイキはスニーカーの生産を中国からベトナムやインドネシアなどに移管している。

このように、つい最近まで「世界の工場」としての地位にあった中国の存在感が、急速に低下している。1978年に始まった「改革開放」以降、中国は経済特区を設けて海外企業を誘致し、効率性の高い、あるいは先端分野の生産技術の移転に取り組んだ。加えて、農村部から沿海部の工業地帯へ、安価かつ豊富な労働力が供給された。それらが、中国への直接投資の増加を支えていた。

また、共産党政権は国有企業などに低コストで土地を供給し、急速にサプライチェーンも整備した。こうして世界の企業は最もコストが低い場所でモノを生産し、世界全体の需要動向に応じて迅速に供給する体制を確立できた。一時は、「世界にデフレを輸出している」といわれたほど、中国の輸出競争力は強かった。

■脱中国を加速する重大なファクター

しかし近年、中国の経済構造は急激に変容し始めている。その一つに、中国の生産年齢人口(15~64歳)は2013年にピークに達して以降、減少している。1979年から2014年まで「一人っ子政策」が実施された影響は大きい。

経済全体で労働投入量が減少すると、賃金には上昇圧力がかかる。JETROが公表した「新型コロナ禍2年目のアジアの賃金・給与水準動向」によると、21年、中国の製造業の作業員の月額基本給(平均値)は651ドル(1ドル=135円換算で約8万8000円)だった。

それに対して、インドネシアは360ドル(約4万9000円)、インドは316ドル(約4万3000円)、ベトナムは265ドル(約3万6000円)。バングラデシュは105ドル(約1万4000円)とさらに低い。世界情勢の影響もあり当面、エネルギー資源は高止まりが予想される。企業がコストカットを進めるためには、労働コストが低いASEAN地域などでの事業運営体制の強化が、これまで以上に重要となっている。

また、地政学リスクも懸念される。米軍内部では、「想定よりも早い時期に中国が台湾に侵攻する」との見方が高まっている。経済安全保障の観点から、各国企業にとって台湾リスクへの対応は急務だ。

加えて、半導体などの先端分野における米中の対立も先鋭化している。米国は中国への最先端の半導体、その製造装置などの禁輸措置を強化している。人権問題においても、新疆ウイグル自治区やチベット、香港、ゼロコロナに抗議する「白紙運動」への対応をめぐって中国への懸念は高まっている。米国の対中制裁を順守し、社会の公器としての責任を果たすためにも、脱中国の重要性は増しているといえる。

そうした中で、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が発効し、ASEANとわが国などの連携が強化されたことは大きい。各国の企業がコスト削減と地政学リスクに対応しつつ収益率を高めるために、RCEPなど多国間の経済連携はまさに「渡りに船」の役割を果たしている。また、海外企業の誘致を進めて雇用・所得環境を強化するために、主要先進国はこれまで以上に産業補助金政策を強化し始めている。

■中国への直接投資と株式投資それぞれの展開

今後、海外企業の対中投資は不安定に推移するだろう。工場建設などの直接投資に関しては、中国から他の国や地域へのシフトが増えることは間違いない。ただし、共産党政権は「中国製造2025」を推進するために、海外企業と中国企業の合弁事業をより重視し、「技術の強制移転」のリスクが高まるのではとの見方も増えている。加えて、ゼロコロナ政策による個人消費の停滞、不動産市況の悪化などによって、販売面でも海外企業への逆風は強まるだろう。

また、中国企業にとっても事業運営コストの引き下げは大きな課題になっている。ユニクロなどの生産拠点の移管に伴って、中国の縫製大手である晶苑国際集団(クリスタル・インタナショナル)は、ベトナムなどでの生産能力強化に取り組んでいる。企業戦略としては、デジタル技術などを用いて中国の個人消費を取り込みつつ、いかに生産コストを引き下げるかが問われている。

一方、株式投資の観点で考えると、直接投資とは異なった展開が予想される。台湾問題の緊迫化や個人消費のさらなる減少懸念が高まった場合には、リスク回避の動きが鮮明化し、中国本土株や香港株は下落するだろう。その場合、海外投資家は短期目線で押し目の買いを入れやすい。ポートフォリオ投資は周期的に減少と増加を繰り返す展開が予想される。

いずれにしても、共産党政権の経済・社会政策がどう運営されるかが命運を握る。現時点では、共産党政権は情報統制のためにIT先端企業への締め付けを一段と強める公算が大きい。また、台湾に対する圧力への懸念は増すばかりだ。今後、中国への直接投資は徐々に減少していくと考えられる。世界経済を下支えするというよりも、下振れ要因として、中国経済の存在感はこれまで以上に無視できなくなっている。

■アップル「脱中国」は達成間近

消えた中国の世界的輸出増、サプライヤーの9割がインド・ベトナム移転へ

中国の担うサプライチェーンは危機を迎えている。アップルのサプライヤーのほぼ9割が、大挙してインドやベトナムへ移転する打診を受けているという。これが現実化すれば、中国経済には大きな打撃となろう。産業空洞化の始まりである。

中国は、3年に及ぶゼロコロナ政策とその間に進んだ米中対立によって、経済は思わざる展開になっている。ゼロコロナの中で、政策見通しがつかないという「予測不能性」。ウクライナ侵攻が、連想させる地政学的リスクも重なって、中国の担うサプライチェーンは危機を迎えたのだ。

アップルのサプライヤーのほぼ9割が、大挙してインドやベトナムへ移転する打診を受けているという。これが現実化すれば、中国経済には大きな打撃となろう。産業空洞化の始まりである。詳細は、後で取り上げる。

国営中央テレビ(CCTV)によれば、習近平国家主席は江蘇省の全人代代表団に対し3月5日、次のように発言している。「中国にとって、食料確保と製造業の強化が重要である。人口14億人の大国として、この問題を解決しなければならない。国際市場に頼り、われわれを救うことはできない」

この発言は、習氏がかねてから主張する「双循環モデル」(国内市場を重視し、貿易は補足手段)への実行を示唆したものである。いわば、「籠城経済」を志向し始めている点に注目すべきだ。中国が、ここまで追い詰められていることを言外に示したと言えるだろう。

■疲労困憊の地方経済

中国が、突然の「ゼロコロナ」打ち切り策に出た背景について今、明らかになってきたことが多い。

地方政府の財源難が、顕著になっていた結果だ。住民10万人を超える北京のある区画の指導者は、ロイターの取材に対して、「昨年後半に入るころ、PCR検査会社や住民の外出を規制する警備会社に支払う資金が底を突いていた。地方政府レベルでは、単純にもうゼロコロナ政策を執行できなくなっていた」と述べている。

要するに、北京ですら財政的に困窮していたわけで、他の地方政府になれば、言わずもがなの事態に突入していたであろう。地方政府の有力財源である土地売却収入は、不動産バブル崩壊で減り続けている。こうした事態では、もはやゼロコロナを打ち切らざるを得なかったのだ。ゼロコロナを打ち切った後に、各地で公務員の給料遅配に対する抗議デモが起こっている。ここまで、財政危機が進んでいたと言える。

中でも衝撃的だったのは、税務署職員による給料未払いを訴えたデモである。税務署と言えば、最も資金の豊富な部署と見られている。そこが、「現金不足の事態」に陥ったことに、一般市民までが財政危機の深刻さを認識させられたほどである。

こうした環境下だけに、ゼロコロナ打ち切り後の経済が、直ぐに活発化するとは予想し難い。1~2月のPMI(購買担当者景気予測指数)は、好不況分岐点の50を大きく上回っているが、比較するベースが余りにも低かったので、表面的に高い水準になったと見るべきだろう。つまり、「見せかけ」の好況感に過ぎないのだ。

中国が、23年のGDP成長率目標を発表したが、「5%前後」と22年の「5.5%前後」を下回る控え目な数字となった。事前予測では、「5%台」という強気目標が報じられていた。それが、5%前後に後退した理由は、1~2月の実績が芳しくなかった結果である。

内需からみれば、産業構造の牽引役は住宅と自動車である。この2業種が、力強い回復力を見せなければ、中国経済に明るさは戻らないのだ。住宅は、不動産バブル崩壊の渦中にある。住宅を購入しても、新居に住めない人たちが180万人もいる状況だ。この状況が改善されない限り、安心して購入契約を結べるはずがない。それほど、不動産開発企業への信頼感が失われているのである。

自動車(EVなど新エネルギー車)は、昨年一杯で取得税(10%)半減策が、すでに終了している。だが、1~2月の新車販売不振であったので、再度の取得税半減が議論されていると報じられた。優遇策がなければ、今年の販売台数は伸び率ゼロが予測されているほどだ。自動車優遇の裏には、半導体産業テコ入れも絡んでいる。中国半導体は、米国からの厳しい輸出規制によって苦しむトップ企業に対し、政府支援が行われている。こうして、EV(電気自動車)の生産増が、半導体支援になるという期待感が滲み出ている。

■消えた世界的輸出増

中国が内需振興へ力を入れている裏に、輸出不振という大きなプレッシャーが存在する。1~2月の輸出(ドルベース)は、前年同月比で6.8%減になった。輸入(同)は、輸出減を反映して10.2%減とさらに落ち込んでいる。

この輸出入の不振には、世界的なサプライチェーンの供給圧力が減り正常化したことが大きく影響している。その意味で、「パンデミック特需」は終了したのだ。

米ニューヨーク連銀は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)宣言から約3年を経て、グローバルサプライチェーンが通常に戻ったと分析した。NY連銀のグローバルサプライチェーン圧力指数は、2月の数字がマイナス0.26となり、2019年8月以降で初めてゼロを下回り、全世界の供給圧力が標準値未満に低下したのである。『ブルームバーグ』(3月7日付)が報じた。

これは、重大なシグナルである。中国のサプライチェーンにかかっていた超過需要圧力が解消されたことを示すのだ。中国輸出が、減少している背景がこれである。

習氏が、前述のように「国際市場に頼り、われわれを救うことはできない」という意味は、輸出で稼ぎ食糧などを輸入するというこれまでのパターンを警戒しているのであろう。中国のサプライチェーンが、世界へ与える影響度はすでにピークを過ぎたのだ。米中対立によるデカップリング(分断)が、これをプッシュしていると見るべきだろう。

■アップルの「脱中国」はもう止まらない

中国外への生産移管は、観測筋の多くが見込むよりもはるかに速く進む公算が大きい。米中の緊張悪化で被る影響を未然に防ぐ狙いだと、アップルの大手サプライヤーの一社が明らかにした。

これによると、ワイヤレスイヤホン「エアポッド」を製造する中国の電子部品メーカー、ゴアテック(歌爾)は、中国外の生産拠点を模索している1社だ。歌爾のようなメーカーに対し、米国のテクノロジー企業が強く代替の生産拠点を探すよう働き掛けているという。企業は、「2月からほぼ毎日のように、多くの顧客企業の訪問を受けている」と述べ、決まって話題になるのは「いつ生産を移管できるのか」だと明らかにした。

アップルは、中国で生産システムを作り上げ、全体で数百万人を雇用している。その舞台裏では、アップルの最も重要なサプライヤー10社のうち9社が、インドなどに大規模な生産移管準備をしている可能性がある。中国側が知ったら仰天するであろう。

■西側が中ロを警戒へ

米中対立激化の背景には、ロシアのウクライナ侵攻がある。米国を中心とする西側諸国は、ロシアに対して不退転の決意で臨んでいる。ウクライナ侵攻がロシアの勝利に終われば、高い確率で中国の台湾侵攻が現実化することを危惧しているからだ。

2月に開催された「ミュンヘン安全保障会議」で、米国はこれまでの最大級となる代表団を送った。副大統領、国務長官、中央情報局(CIA)長官のほかに、約50人の連邦議員も加わった。米国が発信したメッセージは2つとされる。第1に、ロシアが敗北するまで、決してウクライナへの軍事支援を緩めない。第2に、民主、共和両党とも、この政策では一枚岩であるというのだ。

このミュンヘン安全保障会議で、米国は侵略を許さないという強い姿勢を見せた。これは同時に、中国に対しても台湾侵攻を排除するというメッセージである。これに対して中国は、米国へ強い対抗心を見せている。

中国の秦剛外相は3月7日、米中間の緊張を高めているのは米国だと非難した。米国が進路を変えなければ、「衝突と対立」が起こると警告したのである。また「米国が自国を再び偉大な国にしたいという野心を持つなら、他国の発展にも広い視野を持つべきだ」と指摘した。『ロイター』(3月7日付)が報じた。

この秦氏の発言からも分かるように、中国は経済的にかなり米国から追い込まれていることを示している。

中国は、台湾を自国領であるとしている。台湾には、独自の主権を保持してきたという厳然たる事実が存在する。中国は、この台湾主権を戦争によって奪おうとしているのだ。国際社会が、それを受け入れられるはずもない。

まさに、中国の知恵が問われている。同じ中華民族である以上、「共存共栄」という道を選べなければ、中国が西側諸国から包囲されるのも致し方ないであろう。包囲は、中国の衰退を意味する。

既述の通り、アップルのサプライヤーは、大挙してインドへ移転する圧力を受けている。数百万人の雇用が、インドへ移る危険性が高まっているのだ。中国の産業空洞化は確実に進むであろう。世界的ハイテク企業の生産部門を失うことは、関連産業の発展を阻止するのだ。

■サッカー弱体が示唆

習近平氏は、自らの手で台湾を統一すると力説している。歴史に名前を刻みたい。そういう個人的な欲望が、中国国内を一糸乱れぬ統一下に組み入れさせている。これが、成功する確率は極めて低いのだ。その好例として、中国サッカーがなぜ弱いかという例を取り上げたい。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月6日付)が報じた。

習氏は、無二のサッカーファンとされる。中国を「サッカー強国」にしたいと号令を発したのだ。だが、未だにその夢は実現しないどころか、国内で八百長ゲームが横行するという腐敗ぶりである。中国の男子代表チームは、2002年に一度だけサッカーワールドカップ(W杯)に出場したが、グループステージでまったく得点できずに3戦全敗に終わった。その後は、W杯出場とは無縁な存在だ。

この原因について、習氏が細かく指示を出し過ぎているという指摘がある。習氏は、50項目からなる計画を立て、2025年までに中国各地に約5万校のサッカースクールを開設。男子代表チームをまずアジアの強豪へ、次に世界の強豪へと育てる高い目標が設定されたのだ。問題は、官僚がこの計画を金儲けに利用して汚職の温床にしたことだ。これでは、結果が出なくて当然であろう。

このサッカー狂騒曲は、サッカーの発展に必要な自発性やイノベーションを阻害していると指摘されている。日本サッカーは、地方でサッカーファンを増やしながら、チームを強化する道を辿って成功した。これに対して、中国は上からの指示である。自発性もイノベーションも育つはずがない。

中国サッカー問題は、習氏の中央集権的統治スタイルの弱点を知る手がかりとなろう。産業育成でも大量の補助金を出して、汚職を蔓延させている。半導体もその例から洩れない。

習氏は、今回の全人代において「治安・金融・ハイテク」を共産党指揮下に組み入れる。これによって、中国の弱点部門を習氏の直轄下に入れて監督しようというものだ。サッカーの二の舞いになろう。
2023.06.06 17:43 | 固定リンク | 経済
ウ軍・東部バフムートで反転攻撃
2023.06.06



ウクライナ軍、東部バフムートの前線で前進=ウクライナ政府

ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は5日、東部バフムート周辺でウクライナ軍の部隊が前進したと明らかにした。次官はバフムートが現在、戦闘の中心地になっているとも話した。これに対してロシア軍は、5日のこの攻勢は押し返したと反論している。どちらの主張についても、客観的な検証はされていない。

マリャル国防次官はソーシャルメディアで、「位置を維持しようとする敵軍の強硬な抵抗に遭いつつ、我が軍の部隊は戦闘中に複数方面に前進した」と書いた。バフムートから数キロに位置する4つの村で、ウクライナの部隊が100メートルから1600メートル前進したという。

ウクライナ政府は、この日の攻撃がかねて注目されてきた反転攻勢の開始かどうかは、言明しなかった。

これに先立ちウクライナ軍の消息筋はBBCに対して、装甲車部隊による小規模な攻勢が始まっていると明らかにしていた。

5日深夜のビデオ演説で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はウクライナの兵士をたたえ、バフムート方面で「期待している知らせ」をもたらしてくれたと感謝した。

ロシアの雇い兵集団「ワグネル」は、5月末にバフムートを攻略したと主張していた。

このところ軍事アナリストの間では、ウクライナ軍がバフムートを包囲してロシア兵を捕虜にしようとしている可能性を指摘する声が出ていた。


ウクライナによる本格的な反転攻勢の開始がかねて注目されているものの、ウクライナ政府はこれまでに、開始を事前通知したりしないと述べている。

ウクライナ軍の活動は顕著に活発化しており、前線の随所でわずかながら前進しているとウクライナは主張している。バフムート周辺で前進したという5日の発表も、反攻開始の一端なのではないかとみられている。

ウクライナ軍が公表した動画。バフムート近郊クリシュチイウカの近くで、ロシア軍の位置を攻撃する様子

ロシア国防省は5日、ドネツク州におけるウクライナ軍の新規攻撃を押し返したと述べた。ウクライナ側に大損害を与え、ドイツ製「レオパルト」を含む戦車28両を破壊したという。

ロシアは前日の4日には、ドネツクでウクライナの「大規模攻勢」が始まったものの、失敗に終わったと述べていた。ウクライナ軍は、そのような攻撃があったという情報は得ていないと否定していた。

ドネツクでの戦闘の様子だとロシアが主張する動画には、野原で激しく砲撃される軍用車両が映っていた。ロシアは、その先頭で兵300人を死亡させ、戦車16両を主張した。これについてウクライナ軍報道官はロイター通信に、「そのような情報は得ていないし、偽情報についてコメントもしない」と答えていた。

ウクライナは反転攻勢について数カ月前から準備してきたが、西側諸国から武器を入手し、兵を訓練するための時間を必要としていた。

ロイター通信によると、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は反攻に必要な武器はすでに集まったとしつつ、反攻がすでに始まったのかについてはコメントしなかった。

ウクライナ防衛省は4日、「計画は沈黙を好む。開始の発表はしない」とする動画を公表。重装備の兵士たちが、立てた人差し指を口にあてて沈黙を促す姿が映っている。

ゼレンスキー大統領はキーウで5日、イギリスのジェイムズ・クレヴァリー外相と会談した。ゼレンスキー氏によると、リトアニア・ヴィルニウスで7月に予定される北大西洋条約機構(NATO)首脳会談や、ウクライナによる和平案などを協議したという。
2023.06.06 12:45 | 固定リンク | 戦争

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