中国の停戦仲介「ロシアの手先」だった
2023.06.03
中国は「停戦仲介」で、ウクライナに領土放棄を迫っていた──米紙報道「ロシアの手先と断言」


李輝のヨーロッパ歴訪では中国の停戦案をちらつかせ「西側諸国の結束と団結を試していたのだろう。」ロシアに撤退を求めない停戦案は「仲介」ではなく「ロシアの手先」だったと断言できる。

ロシアとウクライナの仲介を買って出た中国は、西側諸国に対し、ウクライナ国内の占領地域をロシアに残す形で「即時停戦」を受け入れるよう迫っていたと、5月26日付の米ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた。中国は5月29日、この報道を否定した。

ウクライナのニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」によれば、同国のドミトロ・クレバ外相は週末に、中国側の提案は受け入れられないと拒絶。ソーシャルメディアへの投稿で国民に対し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領もウクライナ政府も領土問題での譲歩は一切受け入れないと確約した。

中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は、5月16日から26日にかけてヨーロッパを歴訪。ウクライナを皮切りに、ポーランド、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)、そしてロシアを訪れた。4月には習近平国家主席が、ウクライナ侵攻が始まって以来初めてゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ウクライナで続く戦争について、中国として停戦に貢献していく立場を表明していた。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、李がポーランド、フランス、ドイツとEUの当局者に対して、すぐに戦闘を終わらせるよう呼びかけたと報道。ウクライナにとって受け入れ難い「紛争凍結」(現状で領土を固定する)という結末を示唆したとしていた。

■クレバは国民に報道への「冷静な対応」を促す

李と西側当局者の会談に同席していたある外交官は同紙に対し、「我々はロシア軍が撤退しない限り、紛争凍結は国際社会の利益にかなわないと説明した」と語った。また別の外交官は同紙に対して、中国は「おそらく西側諸国の団結を試していたのだろう」と述べた。

中国外務省の毛寧報道官は、この報道を否定。李はウクライナでの紛争に関する中国政府の立場を伝え、意見の一致点を探るために「さまざまな当事者の意見や助言」に耳を傾けたのだと主張し、「中国が引き続き建設的な影響力を発揮していくことに、全ての当事者が期待を示した」と説明した。

クレバはウクライナ国民に向けたメッセージの中で、報道内容について確認するために、李が訪問したヨーロッパ諸国の当局者らに連絡を取ったと明かした。

その結果、「ロシアが占領しているウクライナの領土をロシアのものと認めるという発表や、それに関する話し合いがあったことを認めた者は一人もいなかった」と述べた。

クレバは国民に対して「冷静さと理性を保ち、報道に感情的な反応をしないように。我々はこのプロセスを管理している。ウクライナの知らないところで、何者かが我々の不利になるようなことをする事態は起きない」と述べ、中国が関与する話し合いは、ウクライナ政府が設定した条件に基づいて続けられるとつけ加えた。

2009年から2019年まで駐ロシア中国大使を務めていた李は、ロシア政府の当局者の手厚い歓迎を受けた。ロシア外務省によれば、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は「ウクライナ危機について、中国が偏りのない立場を取っていることに感謝し、仲裁への積極的な関与を称賛した」ということだ。

中国指導部はロシアによるウクライナ侵攻が始まってから1年以上にわたって、この「紛争」について、明確な立場を表明してこなかった。ただし中立の立場を強調する一方で、ロシア政府が西側諸国、とりわけアメリカに対して表明した不満の多くに同調してきた。

こうしたなか中国政府は2月、ロシアによるウクライナ侵攻から1年に合わせて、中国政府の立場を示す12項目の文書を発表。ロシア軍の撤退には触れずに停戦を呼びかけた。

中国政府は同文書の中で、「すべての当事者が対立を激化させず、ロシアとウクライナが同じ方向を目指して協力することを支持し、できる限り早い時期に直接的な対話を再開して全面的な停戦を達成するべきだ」と呼びかけたが、ウクライナは拒絶した。

■中国は「力の論理」でロシアとの連携を選んだ

その答えをはからずも当の中国の外交官が教えてくれていた。

「ウクライナ問題から銘記すべき一大教訓:弱い人は絶対に強い人に喧嘩を売る様な愚かをしては行けないこと!仮に何処かほかの強い人が後ろに立って応援すると約束してくれてもだ」(原文ママ)。

ウクライナ侵攻があった2月24日。在大阪の中国総領事が自身のツィッターに書き込んだ内容だ。

中国ウォッチャーの、ある国の外交官はこの総領事が「勇ましい発言をする『戦狼」外交官で有名な人」だと教えてくれた。「本来、外交官というのは任地の国との関係発展に力を尽くすものだが、この外交官は任地の日本のことなんかよりも、北京にアピールすることに余念がないのだろう」と解説する。

ちなみにウクライナ侵攻は「弱い人が強い人に喧嘩を売った」のではなく、強い人が弱い人に一方的に喧嘩を売ったものだが、中国は開戦前から「強い人」につくことを決めていたのかもしれない。

■中国の“裏切り”とアメリカの怒り

2月25日付のニューヨーク・タイムズはバイデン政権がウクライナを侵攻しないようロシアを説得することを中国に頼んでいたと報じている。この報道によれば、アメリカ側はロシア軍が集結していることを示す機密情報まで中国側に開示して複数回にわたって説得を依頼したが、ことごとく中国側はこれに懐疑的な姿勢を見せて拒否。この記事に出てくる米政府当局者の言葉を借りれば、中国はアメリカが提供した機密情報をロシア側に流すことすらしていたという。

ウクライナが大国ロシアに蹂躙されることがないよう、潜在的敵国である(刺激的な言い回しだが、実態を見ればそうだろう)中国に機密情報を開示してまで頭を下げる、という低姿勢はアメリカらしからぬ動きだ。それだけアメリカも必死だったのだろう。

中国はそうしたアメリカの、なりふり構わぬ必死の説得を袖にしただけでなく、受け取った機密情報を裏でロシアに流していたことになる。

中国による「裏切り」ともいえる態度がよほど腹に据えかねたのだろう。

アメリカの情報機関からのリークによる報道は続いた。今度は中国が「北京冬季五輪の開会前にウクライナ侵攻をするのはしないでくれ」とロシア側に求めていたというもので、またもやニューヨークタイムズが米欧の情報機関の報告書にある記載として報じた。当然これはアメリカ情報機関によるリークであろうし、軍事侵攻の食い止めよりも、大過ない五輪の開催という自己都合を優先させた中国に対するアメリカの怒りだと解釈していいだろう。

一方、中国側は「完全な偽情報」(中国外務省・汪報道官)だと、この報道を全面否定している。全面否定という中国リアクションのいつものパターンだ。インテリジェンス関係者と話をしていると「これは決してうまいやり方ではない」といつも話題にのぼる。

実際、日常生活においても全面否定はかえって嘘臭く聞こえることが多い。事実関係を認めるところは認めつつ、核心的な部分(譲れない部分)はエビデンスやディテールを添えて否定するのが説得力のある反論というものだ。ここは確かにこういうやり取りはあったが、こういう話をしていたもので、ご指摘の点などは話題にのぼっていない、といった具合だ。

「憶測だ、偽情報だ」、場合によっては「欧米の陰謀だ」といつもの通りに全面的に否定する強い防御反応はむしろ、一点の真実を含んでいるから激しく反応しているのでは、という疑問を呼ぶ。かえって間接的に報道内容を認めているようなものかもしれない、という議論は中国政府内でないのだろうか。いつも素朴な疑問をおぼえるのである。

■ウクライナ侵攻で浮かび上がる「台湾有事」

専制主義国家同士、世界からどう見られようとも連携を深める。ウクライナ侵攻が浮き彫りにした、もう一つの薄暗い現実だ。

「中国政府高官たちがこの陰謀論を振りまいていることをアメリカ政府はわかっている。」
3月9日、ホワイトハウスのサキ報道官はツィッターで公然と中国を批判した。「アメリカとウクライナが共同で化学、生物兵器をウクライナ国内で開発している」というロシアの駐英大使館によるツィッター投稿に対する反論だ。

CNNは中国の国営テレビCCTVもこのロシアの投稿を報じていることを伝え、中国の国営メディアはウクライナがアメリカの傀儡で、ロシアではなくむしろウクライナの方が脅威を与えているという印象を広めようとしていると指摘した。さらには中国メディアがウクライナ攻撃に参加しているロシア軍に同行取材していることも報じている。

これまではニューヨークタイムズなど大手メディアにリークすることでアメリカ政府の主張を非公式に発信する穏当なやり方をとってきたが、3月9日を境にアメリカ政府が公然と中国のロシアとの連携を批判し始め、主要メディアもこの流れに加わった形だ。

ウクライナ侵攻でも存在感を示す中国。そして警戒を強めるアメリカ。潮目の変化はこれだけではない。アメリカの安全保障アリーナでは将来の台湾有事に備えて、ウクライナ侵攻からどんな教訓を学ぶべきか、という議論がすでに始まっている。

■ウクライナ侵攻 背後の情報戦 ロシア軍の停滞のワケを読み解く

なぜか小規模の部隊で動き、ウクライナ軍の待ち伏せで犠牲を重ねたロシア軍。一方、なぜウクライナ軍はロシア軍を待ち伏せ攻撃できているのか。ウクライナ侵攻の裏側で繰り広げられていた情報戦について、圧倒的な戦力を誇るはずのロシア軍が停滞を余儀なくされている謎に迫る。

■アメリカによるインテリジェンス支援の実態

いくら作戦の初期段階において地上部隊を大規模に投入しない「手加減」をしていたとしても、ロシア軍は巡航ミサイルや弾道ミサイルをウクライナ軍の防空施設や指揮所に撃ち込んでいる。ロシア軍が発射したミサイルは700発以上にのぼる。

ロシア軍に詳しい現役の軍関係者は「全体像はわからないが、初期のミサイル攻撃、航空攻撃によってウクライナ軍のC4I(指揮・通信・統制・コンピューター、情報)システム、防空システム、司令部機能の多くは破壊されたと見るべき」だと指摘する。そのうえで「ウクライナ軍の神経機能と眼と耳の多くは失われ、ウクライナ軍は組織的な戦闘というよりも、生き残った部隊ごとに独立的に戦闘をおこなっていると見るべき」だという。

それにもかかわらず、ウクライナ軍はロシア軍の車列を対戦車ミサイルやドローンで待ち伏せ攻撃をしている。動画で明らかになっている範囲でいえば、ウクライナ軍の戦い方は進撃しつつロシア軍の陣地や拠点を正面から叩くという積極攻勢ではなく、あくまで道路上を進んでくるロシアの小規模の車列を後方に回り込んで待ち伏せて叩く、という守勢的な作戦だ。

待ち伏せには敵がやってくる位置とタイミングを正確に把握することが必須なのは言うまでもない。前述の軍関係者はアメリカのインテリジェンス支援があるのではないか、と疑う。

「たとえば市街地で待ち伏せをするにしても、ロシア軍の経路、車列の規模、先端の位置などがわかっていなければ準備のしようもないはず」と前述の軍事専門家は言う。「『マルチドメイン作戦』(陸海空、宇宙、サイバー空間を含む多角的で高度な作戦 )の支援が、間接的に行われているとしか思えない。今、それができる能力を持つのはアメリカだけ」だという。

この疑問は3月2日のホワイトハウスのサキ報道官の会見で氷解した。記者に問われるとサキ報道官はあっさりウクライナ側に「リアルタイムで」インテリジェンスの提供をしていることを明らかにしている。

CNNによれば、アメリカ軍はロシア軍の動きや位置に関する情報を入手して30分から1時間以内にウクライナ側に伝達しているという。おそらくこれは大まかな動き、たとえばロシア軍の輸送トラックの車列がどの道をどの方角に向かいつつある、という情報なのだろう。特定の戦車をミサイルで照準して撃破するのに使えるような、より精度の高い個別の目標に関するターゲティング情報まで提供しているかどうかはアメリカ政府はコメントを避けている。

アメリカ軍はさらに開戦前まで首都キエフ西方でウクライナ軍に訓練を施してきた。米陸軍特殊部隊グリーンベレーとフロリダ州軍の兵士が教官として教育した数は延べ2万7千人にのぼるという。

「ロシア軍と事を構える気はない」として地上部隊のウクライナ派遣など直接介入を早々に否定しているバイデン政権だが、武器の提供、訓練の提供、そしてインテリジェンスの提供など間接介入の範囲で最大限できる支援をしている。

■軍事大国アメリカの「冷静と情熱」

どんなに美しい外交的レトリックで飾ったとしてもアメリカがウクライナの直接支援のために軍を派遣しないのは、そこに戦略的利益がないからである。

戦略的利益があると判断すればアメリカはもっとリスクをとって軍事的対抗策を打ち出すこともあったかもしれないが、今のところ変化の兆しは見られない。ヨーロッパに派遣している軍の増強もバルト三国やポーランド、ルーマニアといった東欧のNATO加盟国に対する安心供与のためであり、ウクライナ防衛のためではない。

ロシア軍の爆撃やミサイル攻撃に苦しむウクライナ政府が再三、求めているウクライナ上空の飛行禁止空域の設定でもアメリカ政府は拒否の姿勢を崩さない。そんなことをすれば「NATO軍機がロシア軍を撃墜する展開となり、第三次世界大戦に発展してしまう」からだ。ロシアと事を構えることになるようなリスクは一切とらない、それがアメリカ政府の戦略的目標だ。

どんなに非人道的な破壊行為がおこなわれていて、心を痛める光景があろうとも、できないことはできないし、しないことはしない。国際政治が冷徹な国益の計算に基づいていることに気づかされる。

だが、そのアメリカも冷徹な国益計算だけ、というわけではない。利益だけではない、情熱(感情)で動いている側面ももちろんある。

武器の提供がいい例だ。ウクライナへの武器の輸送は主にポーランド、ルーマニアから陸路でおこなわれているが、ロシア軍からの攻撃を受けるリスクと隣り合わせだ。

流れはこうだ。アメリカをはじめ各国が提供する武器は一度、ウクライナと隣接するポーランドとルーマニアにある非公表の飛行場に空輸されたのちに陸路でウクライナに搬入される。基地をホストしているポーランドが果たしている役割はロシア軍から見れば敵対行為であり、場合によっては当該飛行場に攻撃が加えられることもあり得る。

実際、ロシア軍の作戦はポーランドとの国境に近いところにも及んでいて国防総省が強い懸念を示している。またポーランドとウクライナが接している国境付近の空域はベラルーシに配備されたS-300地対空ミサイルの射程に収まっており、ロシアがその気になれば空輸に対して妨害や攻撃を加えることもできる。

■なぜ小国・中立国までがリスクを冒すのか(NATO)

武器の提供と一言でいっても、やっている側も相当のリスクをとってやっていることなのである。実際、NATO各国は大国から小国までリスクをとってウクライナ支援に動いている。ロシア侵攻があった翌日には早速、アメリカ、カナダ、スロバキア、リトアニア、ラトビア、エストニアなどの各国が共同で武器弾薬をポーランド経由で送っている。

GDPや国防予算が日本よりも圧倒的に小さいような国々もリスクをとって責任と役割を果たしている姿からは冷徹な国益計算とともに、何か心意気のようなものさえ感じさせる。オランダは数少ない輸送機を使って、対戦車ミサイル400発、スティンガー携帯型対空ミサイル200発を輸送しているし、デンマークも自ら輸送機を飛ばして対戦車ミサイルを空輸している。最終便がデンマーク本国に帰還したのはロシア軍による攻撃が本格化している3月1日のことだった。持っている輸送機の数も稼働数も少ない、これらの国にとっては決して楽なオペレーションではなかったはずだ。

小国といえばバルト三国の本気度はさらに高い。リトアニアはロシアによる侵攻がはじまった2日後の2月26日、早速、陸路でウクライナに武器を届けている。忘れてはいけないのはフィンランドやスウェーデンといったNATOに加盟しない、歴史的に中立的立場をとってきた国々もウクライナ支援の列に加わったことだ。フィンランドは1500のロケットランチャー、2500丁のライフル、15万発の弾を提供したほか、スウェーデンも7700発の対戦車ミサイルを送っている。

なぜ、ヨーロッパの小国や中立国がこれほどの支援をするのだろうかー。

それはロシアに近い位置にある国々にとってウクライナ侵攻は「明日は我が身」だからだ。

まずは自分達に累が及ぶ前にウクライナで食い止めてもらいたい。それが偽りのない本音だろう。そこには当然、小国なりの冷静な国益計算と自己防衛本能がある。

だが、彼らを動かしているのはそれだけではない。それはウクライナが本気と勇気を世界に示しているからだ。

■ウクライナの「クリエイティブな戦い」

「ウクライナ軍、そして人々は勇敢に、そしてクリエイティブに戦っている」(アメリカ国防総省)。まさにウクライナが見せている抵抗は勇気にあふれ、創造的な戦法がとられている。

アメリカの情報機関はロシア軍が数日で首都キエフを陥落させられると考えていたと分析している。その電撃的短期決戦の先兵として首都キエフに投入されていたのが、ゼレンスキー大統領の暗殺を狙った工作員だ。

ウクライナ兵に身分偽装した工作員の数は100人とも200人とも言われ、開戦6日前の2月18日からキエフ市内で活動をしていたという未確認情報もある。

SNS上にはウクライナ軍に身分を見破られて捕らえられた工作員たちとされる写真が出回っている。ウクライナ側はロシア人には発音しにくいウクライナの方言を合言葉にして、それを言えなかった工作員たちを次々に見破っていったとも言われている。

ウクライナ軍はロシア軍の進軍を少しでも遅らせるために道路標識を書き換えたり、非武装の一般市民がグループで道をふさぐ形でロシア軍の進軍の前に立ちはだかったりしている。18歳から60歳の男性の出国を禁じているウクライナ政府だが「前線で罪を償える」(ゼレンスキー大統領)として軍務経験のある受刑者を急遽、釈放して戦力にしている。

クリエイティブな戦い方といえば、極めつけはウクライナ軍がロシア軍パイロットに呼び掛けている懸賞金だ。航空機であれば100万ドル、ヘリコプターであれば50万ドルの懸賞金を渡すので投降を呼びかけているのだ。懸賞金目当てで機体ごとパイロットが投降すれば、ロシア軍にこちらの犠牲なしで実質的なダメージを与えられるという、合理的でユニークな発想だ。ウクライナ国防省が作った動画には連絡先の電話番号もある。さて、ホットラインが鳴ることはあるだろうか。

■立ち上がった「普通の人々」

SNSや報道ではウクライナのごく普通の人たちが戦いに加わっていることが伝えられている。

「自分の孫のために戦う」と入隊を希望しに来た80歳のおじいさん、火炎瓶作りに精を出す車椅子の人たち、銃を手に取ったバレリーナ、戦うため子供に別れを告げる夫婦。侵攻後の混乱の中で出会い結婚したカップル、立ち上がる女性たち。

写真に映る彼ら、彼女らからは強さと弱さがない混ぜになったようなものがにじみ出る。勇気、覚悟、忍耐と同時にどこか、ごく普通の人たちが持つ柔らかい気持ち、いたわりや優しさのようなものを隠しきれていないところに、この戦いの不条理と非情さがある。

軍人だけではなく、ごく普通の一般市民たちが銃を取り、火炎瓶を作り、自分がやれることをやり抵抗しようとしているウクライナ。そのウクライナは一時期、アジアの大国に停戦の仲介を期待したことがあった。
中国だ。しかし、その期待は最初から裏切られていたのであった。
2023.06.03 16:09 | 固定リンク | 戦争

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