【速報】紙の健康保険証「廃止」
2023.06.02



改正マイナンバー法など成立 紙の健康保険証は“廃止”→マイナカードに一本化 「特急発行・交付」の創設も

紙の健康保険証を廃止して、原則マイナンバーカードに一本化することなどを目的とした改正マイナンバー法などの関連法が参議院本会議で成立しました。

改正された法律は、▽紙の健康保険証を廃止して原則マイナカードに一本化するほか、▽マイナカードを速やかに交付する「特急発行・交付」の創設、マイナカードの利用促進を目的としています。

マイナカードをめぐっては、他人の情報が紐づけられるなどトラブルが相次いでいて、法案の成立が遅れていました。

法案は、参議院の本会議で採決が行われ、与党や日本維新の会の賛成多数で可決、成立しました。

一方、「適切な措置を講ずるべき」として、▽マイナカードの取得を強制しないことや、▽セキュリティ対策に十分配慮をすることなどの附帯決議がつけられました

■マイナカード最大の失敗はネーミング?

政府関係者が明かすマイナンバーカード“最大の失敗” 実質義務化背景に岸田総理の強い思い

「マイナンバーカード最大の失敗は、“マイナンバーカード”という名前をつけたことだ」

以前、ある政府関係者が私にこう語った。どういうことか。

政府関係者

「本来マイナンバーカードは、カードのICチップを利用した、全国民が持つ身分証明書となることが期待されていた。「デジタル時代のパスポート」と言われるのはそのためで、マイナンバーは使わないし関係がない。しかし、「マイナンバーというものは他人に漏らしてはいけない」「重要情報です」と事前に宣伝してしまったため、そんな大事なものが書いてあるカードは持ち運べないというイメージがついてしまった」

全国民が無料でICチップ付きの身分証明書を取得できる、というのは世界でもほとんど例がない取り組みであり、デジタル社会で優位に立てる、そんな思惑があったということだが、マイナンバーが足を引っ張った、という解説だ。

ちなみに現在、政府は「マイナンバーを他人に見られても大丈夫です」「マイナンバーだけ、あるいは名前とマイナンバーだけでは情報を引き出したり、悪用することはできません(河野デジタル大臣のブログより)」と強調している。

そんな“負のイメージ”からスタートしたマイナンバーカードだが、全国民にカードを取得させるべく汗をかいてきた2人の総理がいる。菅前総理と岸田総理だ。

■マイナカードと菅前総理

菅義偉前総理

「河野さんがデジタル大臣でよかったよね」

政府が打ち出した、2024年秋にも紙などの保険証を廃止し、マイナ保険証の取得を“実質義務化”する方針。感想を聞かれた菅前総理は周囲にこう漏らした。

菅氏は官房長官時代、マイナンバーカードと保険証の一体化を打ち出したことで知られる。

実は、その菅氏、カードの配布が始まる前は「全国民に配布するのは無理だ。普及は難しいだろう」などと否定的だった。

しかし、その数年後、マイナンバーカード事業を一からやり直すことも考えたものの、すでに事業に数千億円が費やされていることを知り、それならば有効活用しなければ、と考えを改めたのだという。

菅総理(当時)(2021年3月31日 衆院内閣委にて)

「特に設置の際は5000億ぐらいかかっていました。そうしたお金がかかっていて、たしか10数%の利用率だったんです。国民の皆さんに申し訳ない、そういう思いの中で、何が一番早く、また国民の皆さんにお役に立てるかと考えたときが、保険証だったんです」

総理大臣時代には、マイナンバーカードと運転免許証の一体化についても本格的に乗り出し、自身の秘書官だったこともある中村格・警察庁次長(当時)に「一体化の早期実現」を命じた。結果、当初は「2026年度中」とされていた一体化の目標時期が「2024年度中」と一気に2年前倒しされることになった。

しかし、その菅氏でさえも、現在使われている、紙などの保険証の廃止には踏み込まなかった。

関係者によると、「当時は医療機関にマイナンバーカード読み取り機がほとんど普及しておらず、現場からも強い反発の声があったから」だという。

こうした経緯があるだけに、冒頭の菅氏の発言は、発信力があり、多少の反発にひるむことなくマイナンバーカード普及の旗を振り続ける河野氏の行動を評価したものだ。

■“実質義務化”背景に岸田総理の強い思い

実際、岸田総理が8月の内閣改造で河野氏をデジタル大臣に起用したのは、マイナンバーカード普及促進をにらみ、その突破力に期待したからだった。

岸田総理

「マイナンバーカード普及は待ったなしだ。河野大臣の突破力に期待している」

岸田総理は、周囲にこう解説すると、組閣直後に河野氏に対してマイナカードと保険証との一体化促進と、紙の保険証廃止によるカード取得の“実質義務化”を指示したという。

菅前総理、岸田総理2人の仕事ぶりを間近で見てきた政府関係者は、「岸田さんにとってのマイナンバーカード普及と言うのは、菅さんにとってのワクチン接種。それくらいの熱意をもって総理は臨んでいる」と解説する。

2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府与党はすべての国民に一律10万円を配ることを決めた。しかし、給付を実施する自治体の窓口は処理しきれずに混乱し、給付が遅れるなどした。批判の矛先は当時、自民党の政調会長だった岸田総理にも向いたのだ。

総理周辺

「国民からの申請を待つことなく、政府から一律に給付する仕組みは日本にはない。これを実現させるためにはマイナンバーを完全普及させるしかない」

総理周辺は、岸田総理がすべての国民にプッシュ型でサービスを提供できるツールとしてのマイナンバーカードを強く意識しだしたのはこのころからだったと証言している。

その熱意はどこから来るのか。岸田総理には苦い記憶がある。

しかし、なぜ今、マイナカード”実質義務化”に踏み切ったのか。

■“これ以上の上積みは難しい”と判断

マイナンバーカードの交付率は、配布開始6年半あまりで50.9%(10月27日現在)に達した。申請数なら7200万枚を超えていて、年内に運転免許証の約8100万枚到達が視野に入ってきた。免許証を保有しているのは全国民の約64%(取得できるのは満18歳以上)。ちなみに新型コロナワクチンの3回接種率は約66%(10月27日現在・生後6か月以上が対象)である。ご存じのようにワクチン接種は義務ではない。

政府関係者によると、政府がマイナポイント付与という“アメ”から、紙などの保険証廃止=カード取得の実質義務化という“ムチ”へと舵を切ったのは「お願いベース」ではこれ以上の上積みが難しいと判断したところが大きいという。「どこかで退路を断たないとなかなか進まない(政府関係者)」という考えだ。

ただ、現行の法律上、マイナンバーカードの取得はあくまで任意となっている。実質義務化をするならばマイナンバー法の改正をすべきでは、という批判は免れない。また、安倍元総理の国葬と同様、突然、トップダウンで意思決定を下すのは乱暴だという声も出ている。
一方で、他の決定事項においては「検討使」とか「判断が遅い」などと非難されている岸田総理は、双方向から批判される珍しい政治家と言える。

■”誰一人取り残さない”デジタル社会は実現するか

「マイナンバーカードで、医療機関を受診することによって、健康・医療に関する多くのデータに基づいた、よりよい医療を受けていただくことができるなどのメリットがあるほか、現行の保険証には顔写真がなく、なりすましによる受診が考えられるなど課題もあります。こういったことを考慮して、保険証を廃止していくという方針を、明らかにした次第であります。」

岸田総理は、28日の記者会見でも”マイナ保険証”のメリットと紙の保険証廃止の意義をこう訴えた。カードを持たない人への対応などのため、関係省庁による検討会を設置する方針も表明した。

マイナカード“実質義務化”という岸田総理が踏み出した一歩が、将来的に「レガシー」と呼ばれるのか、「天下の愚策」と結論づけられるのか。今後の岸田総理の説明や行動ひとつひとつにかかっている。

■「マイナ保険証」でトラブル続出 「根本的に無理がある」その原因は?

他人の情報が紐づけられるなどトラブルが続出している「マイナ保険証」。「命に関わる重大な問題が発生する可能性も」との指摘もあがっています。一体、何が起きているのか?解説します。

■医療機関の6割超が「トラブルあり」と回答

そもそもマイナンバーカードを巡ってトラブルが相次いでいますが、健康保険証と一体化した「マイナ保険証」についても、トラブルが続出しています。

5月31日に公表された医師と歯科医師でつくる団体「全国保険医団体連合会」が、マイナ保険証を取り入れている医療機関の2440件から回答を得た中で、6割を超える1556件から“トラブルあり”と回答があったということです。具体的にどんなトラブルがあったのか。

■“血液型を間違えて輸血する”など「命に関わる重大な問題が発生する可能性も」

トラブル(1)

他人の情報が紐づけられていたトラブル。23年の4月以降少なくとも49件あったということで、中には複数の他人の情報が紐づけられていたケースもありました。

例えば南波キャスターのマイナ保険証に、井上キャスターやホランキャスターの情報が紐づけられていたパターンがあったということです。

そして、血液型を間違えて輸血するなど「命に関わる重大な問題が発生する可能性もある」と指摘しています。

この他にも「全国保険医団体連合会」は、他人がマイナポータルなどのアプリを使って、別の人の薬剤や診療情報を閲覧した可能性も捨てきれない。

非常に大事な個人情報が閲覧されていた可能性もあるのではないかと指摘しています。

■半年以上「資格無効」のケースも

トラブル(2)

マイナ保険証は読み取り式です。機械自体は正常ですが、実際に読み取った際に「資格無効」とか「該当無し」と出た例が、トラブルがあった中で最も多い62.2%ということで、中には半年以上「資格無効」だったケースもあったということです。

“無保険者”扱いだと、医療費が10割負担で徴収されます。その例が393件もあって、全国保険医団体連合会は「経済的な負担により受診困難になる恐れもあるのでは」という指摘があります。

■マイナ保険証のトラブルに医療現場ではどう対応?

医療現場ではこういったトラブルにどうやって対応しているのでしょうか。

トラブルに対する医療現場での対応

(1)別人と紐付け→保険証を持参していれば保険診療可

(2)マイナ保険証のみの持参、無資格は10割負担→後日、保険証を持っていって7割返金

全国保険医団体連合会は「保険証がなくなった時の医療崩壊が目に見えている。なんとしても保険証を残してほしい」としています。

■「人がやるのは根本的に無理がある」という指摘も

トラブルが起きている要因があります。

そもそもマイナンバーと健康保険証の紐付けの作業ですが、健康保険組合などが手作業でやっている。だから確認不足や情報更新の遅れなどが生じやすい。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長は「人がやるのは根本的に無理がある。最先端のデジタル技術を使うべきだ」と指摘をしています。

情報がきちんと紐付けられているか確認する方法ですが、マイナポータルのアプリを開いて、ログインをすると画面右下に「最新の保険証情報の確認」という項目があります。

もし誤登録があった場合は、マイナンバー総合フリーダイヤルや、加入している医療保険の保険者に問い合わせをすることが大事になってきます。

機械側のトラブルもあるということで、カードリーダーやパソコンの不具合で読み取りができなかった例も46.2%あって、コールセンターなどに連絡しても、すぐに対応してもらえない患者とのトラブルが続いている。

全国保険医団体連合会は、「医療現場の訴えを無視し、きちんと稼働するか検証せず見切り発車した」と話しています。
2023.06.02 19:33 | 固定リンク | 政治
スマホメーカーここまで弱体化か
2023.06.02
https://news.yahoo.co.jp/articles/29ace08948d8f4e5124eefd5088d9bc49b14cc25?page=1
“ボロボロ”の国内スマホメーカー ここまで弱体化してしまった「4つの理由」とは

 2023年5月、バルミューダと京セラが相次いで個人向けスマートフォン事業からの撤退を発表し、FCNTが民事再生法を申請するなど、国内スマートフォンメーカーの撤退・破綻が相次いだ。一連の出来事に大きく影響しているのは国内スマートフォン市場を取り巻く“四重苦”というべき現状であり、今後も国内外問わず、スマートフォンメーカーの撤退・縮小が続く可能性がある。

バルミューダと京セラは撤退、FCNTは経営破綻
 夏商戦を控え、メーカー各社からスマートフォン新機種が相次いで発表されている2023年5月。だがその一方で、スマートフォン市場に激震をもたらす出来事も相次いでいる。

 口火を切ったのは家電メーカーのバルミューダだ。同社は2021年に「BALMUDA Phone」でスマートフォン市場へ参入、バルミューダらしい強いこだわりを盛り込んだことで注目された一方、それゆえにコストがかさみ性能と価格のバランスを大きく欠いたことで多くの批判にさらされることにもなった。

 それだけに同社も新モデルの開発には意欲的に取り組んでいたようだが、2023年5月12日に突如スマートフォン事業からの撤退を表明。参入からわずか2年足らずでの撤退とあって驚きをもたらした一方、参入から日が浅く、傷が浅いうちの撤退として妥当との見方も少なからずなされていた。

 だがバルミューダの撤退は、国内メーカー撤退・破綻ドミノの序章に過ぎなかった。その4日後となる2023年5月16日には、高耐久スマートフォン「TORQUE」シリーズで知られる老舗のスマートフォンメーカーの京セラが、コンシューマー向けスマートフォン事業の終息を表明。高耐久端末やIoT向けなどの法人向け端末事業は継続するというが、同社の通信事業はスマートフォンなどの端末事業から、企業向けのソリューションやインフラ事業へと主軸を移すことが明らかにされている。

 そしてより一層、大きな驚きをもたらしたのが2023年5月30日。やはり国内メーカー大手の一角を占めるFCNTが民事再生手続きの申し立てをすると発表し、事実上経営破綻したことが明らかになったのである。各種調査会社の情報によると、民事再生法の申請をしたFCNTら3社の負債総額は1431億600万円とされており、規模の大きさにも驚かされるのだが、同社の生い立ちを考えると携帯電話業界に与えた衝撃は一層大きなものだったといえる。

 なぜならFCNTの前身は富士通の携帯電話事業だからだ。2016年に富士通から分離して設立された後、ファンドに株式が譲渡され現在は独立系のメーカーとなっているが、富士通時代から考えれば30年近く携帯電話やスマートフォンを開発してきた老舗中の老舗なのである。

 しかも同社は「らくらくホン」「らくらくスマートフォン」などシニア向け端末の定番というべき商品も持っており、長年安定した端末開発を続けてきたことでも知られていた。それだけに、同社の経営破綻が非常に大きな驚きを与えたことは間違いない。

■日本メーカーに襲いかかる“四重苦”とは

 わずか1カ月のうちに国内メーカー3社が撤退・破綻するというのはかなりの異常事態といえるが、なぜ各社がそのような状況に追い込まれたのだろうか。

そもそも日本のスマートフォン市場は、スマートフォン普及期に携帯大手3社によるiPhoneの値引き合戦が激化して一時はiPhoneが最も安く買えるスマートフォンとなったこと、それを機としてiOSのエコシステムに多くの人が取り込まれ継続的にiPhoneに買い替えるようになったことで、アップルが圧倒的なシェアを獲得。それ以外のメーカーには非常に厳しい環境となっていた。

 だがそれでも従来は、アップル以外のメーカー同士で残りのシェアを分け合い、事業を継続することができていた。それがなぜできなくなったのかといえば、2023年、さらにいえば2022年半ばごろから、国内のスマートフォン市場が“四重苦”というべき状況に陥っていることが見えてくる。

 順を追って説明すると、1つ目はスマートフォンの進化停滞と市場の飽和である。2008年に日本でアップルの「iPhone 3G」が販売されてからすでに15年近い年月が経っており、スマートフォン自体の進化も停滞傾向にある。それゆえ最新機種に買い替えても大きな進化が見られないことから買い替えサイクルも長期化しており、スマートフォンの販売が伸び悩んでいるのだ。

 そして市場の飽和は日本などの先進国だけでなく、これまで市場の伸びを支えてきた中国などでも急速に広がっている。それゆえ中国市場を基盤として低価格モデルを主体に急成長を遂げたOPPOやXiaomiなどの中国新興メーカーも、最近では販売が伸び悩み苦戦を強いられているのだ。

 2つ目は国内特有の事情である。具体的には政府によるスマートフォンの値引き規制だ。2014年ごろまで非常に過熱していた携帯各社のスマートフォンの大幅値引き販売合戦に業を煮やした総務省が、通信サービスの契約とセットで端末を大幅値引きする従来の販売手法を問題視。結果として2019年の電気通信事業法の改正により、通信契約と端末の販売を明確に分離することが義務付けられるに至った。

 それに加えて、通信契約にひも付く端末の値引きも税別で2万円に制限され、スマートフォンの値引きは現状非常に困難な状況にある。最近になって誰でもスマートフォンを安く買えるよう大幅値引きすることで、「一括1円」などの価格を実現する手法が編み出されたが、これに関しても現在総務省で議論が進められ、2023年中にも規制されるものと見られている。

 この値引き規制が直撃したのが値段の高いハイエンドモデルで、一連の法規制以降、10万円を超えるモデルの販売が急減。ハイエンドモデルはメーカーにとっても利益が大きいだけに、その販売が落ち込み利益が少ないミドル・ローエンドモデルの販売が増えていることは、各社の業績を落ち込ませる大きな要因となっている。

■さらに追い打ちをかけた2つの“苦”とは

 これら2つの“苦”によって、日本市場は以前から国内メーカーにとって厳しい環境となっていたのだが、そこに突如2つの“苦”が加わったことが、3社を撤退・破綻に追い込んでいる。その1つが半導体の高騰だ。

 コロナ禍に入って以降、複数の要因から深刻な半導体不足が起き、価格が高騰するなどしてその影響がIT製品だけでなく給湯器など身近な機器にまで及んだことは覚えている人も多いだろう。その後半導体不足は解消されてきている一方、価格高騰はまだ収まっていない。それゆえ国内メーカーのように、市場シェアが小さく半導体の調達力が弱い、ボリュームディスカウントが働きにくいメーカーほど、価格高騰の影響を強く受け苦戦している状況にある。

 そしてもう1つは、ロシアによるウクライナ侵攻や、米国でのインフレなどによって2022年の半ば頃から急速に進んだ円安だ。半導体などの調達にはドルを使うことが多いことから、円安が日本メーカーに不利に働きやすいのに加え、スマートフォンは海外で製造して国内に輸入して販売することが多いので、円安によりスマートフォン自体の価格が高騰、販売を一層落ち込ませる要因となっているのだ。

 実際2022年には、円安の影響からアップルがiPhoneを突如値上げしたことが多くの人を落胆させたが、2023年に入ると各社が投入するハイエンドモデルが軒並み20万円、あるいはそれを超える価格を記録するなど、もはや一般消費者が購入するのが困難なレベルにまで高騰してしまっている。

 そしてバルミューダやFCNTの発表内容を見ると、撤退・破綻に至った直接的な理由としていずれも半導体の高騰と円安を挙げている。市場成熟と端末値引き規制で市場が冷え込んでいた所に、突如半導体高騰と円安が直撃したことで、規模が小さい国内メーカー3社がギブアップしたというのが正直な所であろう。

■海外メーカーが日本市場から撤退する日も……?

 ただこれらの“四重苦”は3社に限ったものではなく、国内メーカーだけでなく海外メーカーも苦しめている。そのことを象徴しているのがXiaomiの動向だ。

 日本市場で後発のXiaomiは市場での存在感を高めるべく、2019年の参入以降コストパフォーマンスの高いスマートフォンを積極投入。2022年の前半にはソフトバンクからも販売された「Redmi Note 10T」や、日本初の「POCO」ブランドの端末「POCO F4 GT」などスマートフォンを相次いで投入したのに加え、後半にもソフトバンクから「神ジューデン」をうたう「Xiaomi 12T」が販売されるなどして注目を集めていた。

 だが2023年に入るとその状況が一転、執筆時点(5月31日)までに同社が日本で投入したのはローエンドの「Redmi 12C」のみで、価格は安いがパフォーマンスには疑問の声が挙がっていた。端末値引き規制を機として日本市場に参入したXiaomiだが、その値引き規制にハイエンドモデルの販売が阻まれているのに加え、円安で強みとしていたコストパフォーマンスも発揮できなくなるなど、苦しい状況にあると見て取れる。

■残る2社はソニーとシャープ

 しかも先に挙げた4つの問題は、いずれも容易に解決できないので影響が長く続く可能性が高く、日本のスマートフォン市場の冷え込みは長く続くと考えられる。そこで多くの人が気になるのは、他の国内メーカーは大丈夫なのか? ということだろう。

 シャープはすでに台湾の鴻海精密工業の傘下にあり、部材調達や製造など多くの面で同社の支援を得ることができていることから、他の国内メーカーと比べれば規模の面で強みがある。また以前からスマートフォンだけでなく、フィーチャーフォンやWi-Fiルーターも手掛けるなど端末開発の柔軟性も高いことから、京セラやFCNTの撤退でシニア・子供向けなどニッチ市場向け端末の受注が増え、“漁夫の利”を得やすいことも予想される。

 またソニーは2014年にモバイル事業の赤字で経営を揺るがす事態となり、現在のソニーグループ代表取締役社長である十時裕樹氏が徹底したコストカットで事業規模を大幅縮小した経験を持つ。それゆえ現在はカメラを軸としたハイエンドモデルに集中、確実な利益を出すことに重点を置いてあまり無理をしない体制を取り、生き残りを図っている。

 とはいえ両社とも、現在以上に環境が悪化すれば先行きは分からないし、それは他の多くの海外メーカーも同様だ。現在の日本市場で生き残ることが確約できるのはアップルくらいなもので、今後国内メーカーだけでなく海外メーカーからも、成長が見込めない日本市場に見切りをつけて撤退する所が出てきてもおかしくない。
2023.06.02 19:17 | 固定リンク | 経済

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