アメリカの最大の脅威は「地政学」的に読み解く
2023.12.23
アメリカの「最大の脅威」は中国かロシアか…「地政学」的に読み解く

地政学とは、地理的条件が国際政治や戦争に与える影響を分析する学問です。地政学には、英米系と大陸系の二つの主要な流派があります。英米系地政学は、海洋によって結ばれた自由主義国家の連合が、大陸によって囲まれた専制主義国家の連合に対抗するという視点を持ちます。大陸系地政学は、大陸の中心部に位置する国家が、周辺部に位置する国家に対して優位に立つという視点を持ちます。

アメリカにとっての最大の脅威は、これらの地政学の視点から考えると、中国とロシアの二つの国家になります。中国は、経済、軍事、外交、科学技術などの分野で急速に発展し、アメリカに対抗する力を持つようになりました。

中国は、アメリカの同盟国や友好国との関係を損なうような行動をとったり、アメリカの政治や経済に干渉したり、アメリカの技術や知的財産を盗んだりすることで、アメリカの国益や安全保障に損害を与えています。

中国は、台湾や南シナ海などの地域での覇権を主張し、アメリカとの衝突の可能性を高めています。
中国は、英米系地政学の視点からは、ランド・パワーの陣営の代表格であり、シー・パワーの陣営に対する最大の挑戦者です。大陸系地政学の視点からは、大陸の中心部に位置する国家であり、周辺部に位置する国家に対する最大の脅威です。

ロシアは、旧ソ連時代の勢力圏を回復しようとしており、ウクライナやジョージアなどの国に対して武力行使やサイバー攻撃などの侵略的な行動をとっています。ロシアはまた、アメリカの選挙や民主主義に対して、偽情報やプロパガンダなどの手段で干渉し、アメリカの社会や政治に分断をもたらそうとしています。
ロシアは、アメリカの同盟国であるNATOやEUとの関係を悪化させることで、アメリカの国際的な影響力を弱めようとしています。

ロシアは、英米系地政学の視点からは、ランド・パワーの陣営の一員であり、シー・パワーの陣営に対する深刻な脅威です。大陸系地政学の視点からは、大陸の中心部に位置する国家であり、周辺部に位置する国家に対する競争相手です。

以上の比較から、アメリカにとっての最大の脅威は、中国とロシアの二つの国家であると言えます。
しかし、その中でも、中国の方がより直接的で広範な挑戦をしており、アメリカの世界的なリーダーシップに対抗する野心を持っていると言えます。

ロシアは、中国ほどの規模や能力は持っていませんが、アメリカの利益や価値観に反する行動をとることで、アメリカの安定や秩序に損害を与える可能性があります。アメリカは、中国とロシアの脅威に対処するために、同盟国や友好国との連携を強化する必要があります。

■アメリカの最大の脅威国はどこか

アメリカは世界の超大国として、多くの国との関係を持っています。しかし、その中にはアメリカの利益や価値観に反する国も存在します。アメリカにとって最大の脅威になる国はどこでしょうか。中国、ロシア、インドの3カ国を比較してみましょう。

■中国の台頭と挑戦

中国は近年、経済、軍事、外交、科学技術などの分野で急速に発展し、アメリカに対抗する力を持つようになりました。中国はアメリカの同盟国や友好国との関係を損なうような行動をとったり、アメリカの政治や経済に干渉したり、アメリカの技術や知的財産を盗んだりすることで、アメリカの国益や安全保障に損害を与えています。中国は台湾や南シナ海などの地域での覇権を主張し、アメリカとの衝突の可能性を高めています。中国はアメリカの「最大の長期的な脅威」だと米FBI長官は述べています。

米FBI長官、中国の脅威を強調

米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は、2020年7月と2022年7月に、中国政府によるスパイ活動と盗用行為が、アメリカにとっての「最大の長期的な脅威」になっていると述べた。レイ氏は、中国がアメリカの経済や国家安全保障に対して、多面的な挑戦をしており、アメリカの世界的なリーダーシップに対抗する野心を持っていると指摘した。

レイ氏は、中国政府がアメリカの同盟国や友好国との関係を損なうような行動をとったり、アメリカの政治や経済に干渉したり、アメリカの技術や知的財産を盗んだりすることで、アメリカの国益や安全保障に損害を与えていると語った。レイ氏は、中国が台湾や南シナ海などの地域での覇権を主張し、アメリカとの衝突の可能性を高めているとも警告した。

レイ氏は、中国による妨害行為や広範な経済スパイ活動、データおよび資産の窃取、違法な政治活動などを列挙した。レイ氏によると、中国政府は賄賂や脅迫によって、アメリカの政策に影響を及ぼそうとしていると述べた。レイ氏は、中国が天安門事件を批判する候補者を当選させないために、ニューヨークの議会選に直接介入したとも指摘した。

レイ氏は、中国がロシアのウクライナ侵攻から教訓を得ようとしており、科されたような制裁から将来的に身を守る方法も、その一つだと述べた。レイ氏は、もし中国が台湾を侵略すれば、経済的混乱は今回よりはるかに大きく、西側の対中投資は「人質」となり、サプライチェーンは破壊されるだろうと、警告した。

レイ氏は、中国の脅威に対処するために、アメリカは同盟国や友好国との連携を強化する必要があると強調した。レイ氏は、中国はあまりにも長い間、どの国の優先事項でも2番目であることに乗じてきたとし、こう付け加えた。「中国はもはや、気づかれないように行動しているわけではない」

■ロシアの侵略と干渉

ロシアは旧ソ連時代の勢力圏を回復しようとしており、ウクライナやジョージアなどの国に対して武力行使やサイバー攻撃などの侵略的な行動をとっています。ロシアはまた、アメリカの選挙や民主主義に対して、偽情報やプロパガンダなどの手段で干渉し、アメリカの社会や政治に分断をもたらそうとしています。ロシアはアメリカの同盟国であるNATOやEUとの関係を悪化させることで、アメリカの国際的な影響力を弱めようとしています。ロシアはアメリカにとって「深刻な脅威」だと米国防総省は位置づけています。
米国防総省、ロシアの脅威を強調

米国防総省は、2023年3月に国防の方向性などを示す戦略文書「国家防衛戦略」の概要をバイデン政権として初めて発表した。中国を「最重要の戦略的競争相手」と位置付けた上で、ロシアを中国に続く脅威とし、同盟国と連携して対抗するとした。

国家防衛戦略は、米大統領が策定する外交・安全保障の指針「国家安全保障戦略」に基づいて定めるもので、2023年の発表はロシアによるウクライナ侵攻への対応に追われる中での策定となった。発表された概要では、ロシアのウクライナ侵攻を「深刻な脅威」と指摘し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や友好国と連携し、さらなる侵略を防ぐための抑止力の整備を進めるとした。

ロシアは旧ソ連時代の勢力圏を回復しようとしており、ウクライナやジョージアなどの国に対して武力行使やサイバー攻撃などの侵略的な行動をとっている。ロシアはまた、アメリカの選挙や民主主義に対して、偽情報やプロパガンダなどの手段で干渉し、アメリカの社会や政治に分断をもたらそうとしている。ロシアはアメリカの同盟国であるNATOやEUとの関係を悪化させることで、アメリカの国際的な影響力を弱めようとしている。

米国防総省は、中国とロシアに対しては、「必要となれば紛争に勝つ用意をする」と明記した。同盟国や友好国との協力推進を掲げた。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮は、イランや過激派組織と同列に位置付け、「持続的な脅威に対処できるよう引き続き対応する」と強調した。

■中国が最大の脅威

以上の比較から、アメリカにとって最大の脅威になる国は中国であると言えます。中国はアメリカの国益や価値観に対して、最も直接的で広範な挑戦をしており、アメリカの世界的なリーダーシップに対抗する野心を持っています。ロシアはアメリカにとって深刻な脅威ですが、中国ほどの規模や能力は持っていません。インドはアメリカにとって脅威ではなく、協力する国です。アメリカは中国の脅威に対処するために、インドや他の国との連携を強化する必要があります。

英米の情報機関トップ、中国の「途方もない」脅威をそろって警告した。アメリカの「最大の脅威」は中国と 米FBI長官が説明。米の国家防衛戦略、ロシアは中国に続く「深刻な脅威」と位置づけた。米国民の半数が中国を最大の脅威と認識、シンクタンク調査。インドとの関係強化は不可欠であると、米国務長官が強調した。

■地政学の視点から「戦争の構造」を深く読み解いてわかることとは?

冷戦の終焉とその後の世界

冷戦の終焉は、英米系地政学の視点から言えば、シー・パワー連合の封じ込めが成功しすぎて、ランド・パワーの陣営が崩れていってしまった現象だということになる。

大陸系地政学から見ても、いずれにせよソ連/ロシアが自国を覇権国とする生存圏/勢力圏/広域圏のような圏域の管理に失敗して自壊したことによって生じた事態であった。

フランシス・フクヤマが洞察した「自由民主主義の勝利」である「歴史の終わり」としての冷戦の終焉は、シー・パワー連合の封じ込め政策が完全な勝利を収めてしまった状態のことを、理念面に着目した言い方で表現したものだったということになる。

これに対して、冷戦終焉後の世界においてもなお大陸系地政学の視点を対比させようとするならば、サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」の世界観に行きつくだろう。圏域を基盤にした世界的対立の構図は残存する、という主張である。

一方では、「自由民主主義の勝利」が、自由主義の思潮の普遍化や、自由貿易のグローバル化を背景にして、圏域に根差した思想の封じ込めを図る。この傾向は、冷戦終焉後に、ある面では強まった。

しかし、他方では、「歴史の終わり」としての「自由民主主義の勝利」の時代であればこそ、「文明」のような人間のアイデンティティの紐帯を強調する動きも生まれやすくなるかもしれない。

グローバル化と呼ばれる普遍主義の運動が強まれば強まるほど、それに反発する動きも顕著になるかもしれない。そこでシー・パワー連合のグローバル化に対抗し、圏域思想の側が「文明の衝突」を助長する。

冷戦終焉後の世界は、「自由民主主義の勝利」と「文明の衝突」が絡み合い、やがて二つの異なる地政学の対立にも引火していく構図の時代であった。

■ソ連の崩壊と英米系地政学が直面した課題

ソ連を盟主とした共産主義陣営の崩壊によって、シー・パワー連合としての自由主義陣営は、冷戦時代の封じ込め政策の目的を達してしまったかのようであった。

マッキンダー地政学にしたがえば、ハートランド国家が拡張主義政策をとり、それに対してシー・パワー連合が封じ込め政策をとることによって、「歴史の地理的回転軸」が動いていく。

もしハートランドが拡張を止め、むしろ縮小するなら、「歴史の地理的回転軸」が止まった状態だ。マッキンダー理論では、これでは歴史が動かない。

冷戦の終焉という「歴史の終わり」としての「自由民主主義の勝利」は、マッキンダー地政学の理論からも語れることであった。

1990年代初頭の世界では、「新世界秩序」といった言葉が多用された。アメリカ一国の覇権、活発化する国連を中心にした世界、国境を越えて進展するグローバル経済、といった「自由民主主義の勝利」のイメージを表現するための言説も多かった。冷戦終焉直後の1990年代は、地政学への問題関心が著しく低下していた時期であった。

2001年に「9.11テロ」が起こると、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は、「我々の側か、我々の反対側か」という二者択一を迫るブッシュ・ドクトリンと呼ばれるようになる立場を鮮明にする。
この単独主義とも称されたアメリカの唯一の超大国としての圧倒的な力を背景にした政策は、モンロー・ドクトリン以来のアメリカの外交政策が、ある種の頂点に達したものだったと言える。

ブッシュ・ドクトリンにおける善と悪の二元論的世界観は、伝統的なモンロー・ドクトリンにおける神の恩寵を受けた共和主義諸国の「新世界」と汚れた絶対主義王政諸国の「旧世界」の二元論を彷彿させた。

■再び台頭する二元論的世界観

冷戦期のトルーマン・ドクトリンでは、自由主義陣営と、共産主義陣営の二元論で、表現されていた。アメリカは自国の安全保障政策の関心対象である集団防衛の領域を、常に二元論的世界観にそって決定してきた。

 「対テロ戦争」の時代のブッシュ・ドクトリンでは、遂にこの二元論的世界観が、国際社会そのものと、非領域的に存在するテロ組織及びその支援者の間の分断となった。領域性のある政治アクターは、基本的に国際社会の側に立ち、国際社会に反した勢力は非領域的なものとして存在していることになった。

実際には、2003年のアメリカによるイラク侵攻は、同盟国を含めた諸国の反発を招いた。その後の占領統治の困難もあり、国際社会全体とテロリストとの闘いとしての対テロ戦争の構図は、頓挫していった。そしてアメリカでも、オバマ大統領の多国間協調主義と、トランプ大統領のアメリカ第一主義が登場してくることになる。

ただし、バイデン大統領の「民主主義諸国vs権威主義諸国」の世界観は、伝統的な二元論的世界観に通じるものだ。

超大国化した中国との競争関係の明確化、ウクライナに侵攻したロシアとの敵対姿勢などから、「民主主義諸国vs権威主義諸国」の構図に沿って、大きく国際政治が動いてきている面もある。

冷戦時代の自由主義陣営と共産主義陣営の対立の場合のような明確な線引きが「民主主義諸国vs権威主義諸国」の間に存在しているわけではない一方で、国家の間の対立が強まってきている現象もはっきりしてきている。
このような萌芽的あるいは過渡期の状況の中で、地政学理論への関心が復活してきているのが現代である。
2023.12.23 15:45 | 固定リンク | 国際
秦剛氏失踪死去「米紙WSJ暴露」
2023.12.15
秦剛氏の失踪と中国の外交システムの問題点 中国国内でも噂飛び交う 中国外相秦剛氏の失踪死去、米紙WSJ暴露

秦剛氏は、2022年12月に中国の外交部長(外相)に任命された若手の外交官である。しかし、2023年6月25日以降、公の場に姿を見せておらず、7月25日に解任された。その後、秦剛氏の消息は不明であり、中国国内ではさまざまな噂が飛び交っている。秦剛氏の失踪の背景と、それが中国の外交システムと指導部の意思決定システムに及ぼす影響について分析する。

■秦剛氏の失踪の背景

秦剛氏は、習近平国家主席の信頼の厚い側近と見なされていた人物である。イギリスを専門に担当していた外交官として、2019年に香港の反政府デモに対する中国の立場を強く主張したことで知られる。また、習近平国家主席の外遊の準備などを担当し、周到な仕事ぶりで高く評価されていた。2022年12月に外相に任命された際には、中国史上最も若く外相になった一人であった。

しかし、2023年6月25日に北京で開催された中国共産党創立100周年記念式典に出席しなかったことから、秦剛氏の失踪が注目されるようになった。その後、7月25日に外相から解任されたことが発表されたが、その理由については何も説明されなかった。中国国内では、秦剛氏の失踪に関して、健康不安説や不倫スキャンダル説、政治的失脚説など、さまざまな噂が流れている。しかし、中国政府はこれらの噂に対して、一切のコメントを出していない。秦剛氏の現在の状況や消息は、不明のままである。

■秦剛氏の失踪が中国の外交システムに及ぼす影響

秦剛氏の失踪は、中国の外交システムと指導部の意思決定システムの脆弱性を浮き彫りにしたという見方もありる。中国の外交システムは、習近平国家主席を中心とした集中的な体制であり、外相はあくまで習近平国家主席の意向を伝える役割に過ぎないとされる。そのため、外相の交代や失踪は、外交政策に大きな影響を与えないという見方もある。しかし、秦剛氏の失踪は、中国の外交システムにおける人事の不透明さや秘密主義、権力闘争の存在を示しており、外交政策の安定性や一貫性に疑問を投げかけている。

また、秦剛氏の失踪は、中国の指導部の意思決定システムにおける習近平国家主席の絶対的な権力を示しているという見方もある。

習近平国家主席は、2022年に開催された中国共産党第20回全国代表大会で、3期目の国家主席に再選された。これは、中国共産党の憲法に定められた2期10年の任期制を破ったことになる。

習近平国家主席は、自らの権力を強化するために、反対派や批判者を粛清したり、自らの思想を党の指導原理に採用したりしている。秦剛氏の失踪は、習近平国家主席の権力に逆らったり、不都合なことを言ったりした者は、容赦なく排除されるというメッセージを発しているとも言える。

まとめると

秦剛氏は、中国の外交部長(外相)であったが、2023年6月25日以降、公の場に姿を見せておらず、7月25日に解任された。その後、秦剛氏の消息は不明であり、中国国内ではさまざまな噂が飛び交っている。秦剛氏の失踪は、中国の外交システムと指導部の意思決定システムの脆弱性を浮き彫りにしたという見方もありる。また、秦剛氏の失踪は、中国の指導部の意思決定システムにおける習近平国家主席の絶対的な権力を示しているという見方もある。秦剛氏の失踪は、中国の不透明さや秘密主義に再び注目を集めている。

■秦剛氏死去の噂 ロシアの高官が反乱を暴露

中国共産党(中共)の秦剛前外相はかなり前にすでに死亡し、中共のロケット軍は大規模な粛清を受けたことがロシア上層部に密告されたと海外メディアが明らかにしました。

12月7日、米国の政治ニュースサイト「ポリティコ」に対し、中共高官と接触できる複数の人物が、6月25日にロシアのアンドレイ・ルデンコ外務次官が中国を訪問した本当の目的は、「当時の秦剛外相と数人の中共軍幹部が西側の諜報機関に利用された」ことを中共の党首に報告することだったと明かしました。

また、早くも7月末、秦剛氏は中共トップの治療を専門とする軍病院で自殺、あるいは拷問で死亡したといいます。彼が「フェニックステレビ」の記者、傅暁田氏との不倫や両者の間に息子がいるという噂は、真実を隠蔽するためのものだとされています。

公開されている情報によると、秦剛氏は6月25日以来行方不明となり、以降、ロケット軍は大規模な粛清を受けました。例えば、当時のロケット軍最高司令官であった李玉超氏とその副官であった劉光斌氏、元副官の張振中氏が失踪し、その他数名の現職または元軍幹部が拘束され、少なくとも1名の元副司令官が特定できない病気で死亡しました。また、元中共国防部長の李尚福氏も失踪しています。

この二つの説明を合体できると考える中国ウォッチャーもいる。つまり、中国共産党内のライバルが、不倫騒動を利用して秦氏の失脚を図ったというものだ。

不倫は違法ではないが、党規律違反の可能性があると解釈されかねない。

一方で、重大な健康上の緊急事態が原因となった可能性も否定できない。

さらに、中国共産党の統治は極めて不透明であるため、こうした可能性はどれも確認も、また否定もできない。

だが、秦氏解任で最も驚くべき点は、同氏が中国の最高指導者から明らかな支持を得ていたと思われていたことだ。

習国家主席は、駐米大使だった秦氏をワシントンから呼び戻し、外相に任命した。

アナリストらは当時、秦氏が新しい役割でどれだけ 「戦狼(せんろう)」になれるのかと、その行動を観察していた。戦狼とは、中国の攻撃的な外交アプローチを指す言葉で、外交官はソーシャルメディアで声高に中国政府を支持し、時には国家の苦境から目をそらす手段として、他者を罵倒することもあった。

外務省の報道官時代には、厳しい態度で知られた秦氏だったが、愛想よく振る舞うこともできる人物でもあった。

英語が堪能で熱心なスポーツファンの秦氏は、米プロバスケットボールNBAの試合でフリースローシュートを決めたり、イギリス派遣時にはサッカーチームのアーセナルに声援を送ったりする姿が見られていた。

こうした人物を十分に「戦狼」ではないと思う共産党員もいるかもしれない。

私は過去に何度も秦氏に会ってきたが、秦氏は熱心に中国を擁護し、中国のよさを最大限アピールしていた。

秦氏はまさに共産党が必要としていた、現代的で洗練された官吏のようだった。できることなら瓶詰めにして、繰り返し何回もつくり出したいと思わせるような人物だろう。

しかしいま、秦氏の命運は分からない。外務省のウェブサイトからはすでに、秦氏に関する情報が削除されている。

■秦剛氏に何があったのか?

中国政府で最も顔を知られた政治家の一人で、習近平国家主席自らが外相に登用した期待の新星が、解任された。

中国では、秦剛外相の解任は大ニュースだ。しかしいつも通り簡素に、ほとんど詳細なしで報じられた。

国営・新華社通信はわずか数行で伝え、夕方のニュース速報で読み上げられた。それが、中国外交の「顔」だった秦氏の劇的な最後だった。外相に就任してたった半年だった。

秦氏は1カ月ほど前から通常業務で姿が見られなくなった。当局はこれについて、何らかの健康上の理由だと説明した。

しかしそれから数週間がたっても、秦氏の動静は不明だった。そのため、秦氏が政治的に規律を乱し、その罰を受けているのではないかとの憶測が流れた。

ソーシャルメディアにはその後、秦氏と女性テレビ司会者との不倫のうわさがあふれた。この司会者はいつもはソーシャルメディアを活発に使っていたが、やはり突然「消息不明」となった。

この二つの説明を合体できると考える中国ウォッチャーもいる。つまり、中国共産党内のライバルが、不倫騒動を利用して秦氏の失脚を図ったというものだ。

不倫は違法ではないが、党規律違反の可能性があると解釈されかねない。

一方で、重大な健康上の緊急事態が原因となった可能性も否定できない。

さらに、中国共産党の統治は極めて不透明であるため、こうした可能性はどれも確認も、また否定もできない。

だが、秦氏解任で最も驚くべき点は、同氏が中国の最高指導者から明らかな支持を得ていたと思われていたことだ。

習国家主席は、駐米大使だった秦氏をワシントンから呼び戻し、外相に任命した。

アナリストらは当時、秦氏が新しい役割でどれだけ 「戦狼(せんろう)」になれるのかと、その行動を観察していた。戦狼とは、中国の攻撃的な外交アプローチを指す言葉で、外交官はソーシャルメディアで声高に中国政府を支持し、時には国家の苦境から目をそらす手段として、他者を罵倒することもあった。

外務省の報道官時代には、厳しい態度で知られた秦氏だったが、愛想よく振る舞うこともできる人物でもあった。

英語が堪能で熱心なスポーツファンの秦氏は、米プロバスケットボールNBAの試合でフリースローシュートを決めたり、イギリス派遣時にはサッカーチームのアーセナルに声援を送ったりする姿が見られていた。

こうした人物を十分に「戦狼」ではないと思う共産党員もいるかもしれない。

私は過去に何度も秦氏に会ってきたが、秦氏は熱心に中国を擁護し、中国のよさを最大限アピールしていた。

秦氏はまさに共産党が必要としていた、現代的で洗練された官吏のようだった。できることなら瓶詰めにして、繰り返し何回もつくり出したいと思わせるような人物だろう。

しかしいま、秦氏の命運は分からない。外務省のウェブサイトからはすでに、秦氏に関する情報が削除されている。

■米紙WSJ暴露記事

中国の秦剛前外相がロシア高官らとの会談後に失脚したのは、ロシアの反乱を示唆する情報を持ち帰ったためだと報じました。記事によると、秦氏は2023年6月25日に北京でロシアのセルゲイ・ラブロフ外相やミハイル・フラトコフ国家安全保障会議書記らと会談し、その際にロシアの一部の高官がウラジミール・プーチン大統領に不満を持ち、中国との関係強化を模索しているという情報を入手したとされます。

この情報は、中国の習近平国家主席にとっては、ロシアとの同盟関係を利用して米国に対抗する好機と見なされたということです。

しかし、この情報は実はアメリカの諜報機関が仕掛けた罠であり、秦氏が駐米大使時代に不倫関係にあった女性ジャーナリストを通じて秦氏に流したものだったというのです。この女性ジャーナリストは、アメリカの情報機関とのつながりが疑われており、秦氏との間にアメリカ生まれの子供がいることが中国当局による調査で発覚したと報じられています。この不倫疑惑と偽情報の流入は、秦氏が中国の利益を代表する能力を損ねたとみなされ、失脚につながった可能性が指摘されています。

秦氏は2022年12月に外相に就任し、2023年3月には国務委員に選出されたが、6月末から動静が途絶え、7月25日に外相を解任されました。その後、10月24日には国務委員からも解任されました。秦氏の失脚は、中国の外交政策に影響を与えるとともに、習氏の権力基盤にも疑問を投げかけるものとなっています。

■中国の秦外相、6月末から動静不明 インターネットでうわさ飛び交う

中国の秦剛外相(57)が長い間、公の場に姿を見せておらず、インターネット上でさまざまな憶測が飛び交っている。こうした状況で、中国の秘密主義に再び注目が集まっている。

秦氏は6月25日を最後に、3週間以上、公の場に姿を現していない。

昨年12月に外相に任命された秦氏は、習近平国家主席の信頼の厚い側近と見なされてきた。

中国政府で最も顔の知られた一人でもあるため、この長期間の動静不明には外交官や中国情勢ウォッチャーだけでなく、一般の中国国民も注目している。

外交部(外務省)の毛寧報道官は17日、秦氏の居場所について提供できる情報はないと述べた。

中国の不透明なシステムにおいて、政府高官が突然姿を見せなくなるのは問題が起きている兆候といえる。毛報道官の空虚な返答が、すでに過熱している秦氏の動静をめぐる憶測や疑念に、新たな燃料を注いだ。

中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」では、毛氏の映像を見たあるユーザーが、「この人は答え方を知らないのか?」と投稿した。

「この回答は非常に気がかりだ」という投稿もみられた。

秦外相は6月18日には、アメリカのアントニー・ブリンケン国務大臣と北京で会談していた

中国では、著名な人物が説明なしに長期間姿を消し、後になって犯罪捜査の対象として浮上することは珍しくない。あるいは、消息を絶った後、一切の説明なしに再び姿を現すこともある。

習氏ですら、2012年に国家主席になる直前に2週間、公の場所に姿を現さなかった。この時には、健康上の理由や、中国共産党内での権力闘争の可能性がささやかれた。

外務省は先週、秦氏が健康上の理由でインドネシアでの外交会議に参加しないと発表した。しかしこの一文は、外務省のウェブサイトに掲載された公式声明にはなかった。秦氏の前任者で、現在は党中央外事工作委員会弁公室主任の王毅氏が、代理でインドネシアを訪問した。

欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表との外相会談も、2週間前に延期が決まった。中国からEUに当初の予定は不可能との連絡があったが、理由は示されなかった。

ロイター通信は関係筋の話として、EU側はボレル氏が北京に到着する2日前に延期を知らされたと伝えた。

17日には習国家主席とフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の会談があったが、秦氏の姿はなかった。中国国営メディアの映像には、王氏をはじめとする外務省高官の姿があった。

■中国内ネットでも

かつては厳しい外交官として知られた秦氏だが、近年は中国が追求してきた攻撃的な外交アプローチ「戦狼(せんろう)外交」とは距離を置いているとみられている。

秦氏の外相就任は、まさに流星のような出世だった。同氏は中国史上、最も若く外相に任命された人物の一人だ。

秦氏は2022年12月、駐米大使を2年ばかり務めた後、外相に就任した。

それ以前は外務省の報道官を務めたほか、習氏の外遊の手配を担当した。国家主席の近くで働く機会を得て、気に入られたとみられる。

だが、中国のシステムの不透明さを考えると、秦氏が今本当に面倒ごとに巻き込まれているのか、それとも近いうちに再び表舞台に姿を現す可能性があるのかを判断するのは難しいと、シンガポール国立大学の荘嘉穎氏は指摘する。

一方で、このような高官に関するうわさが、完全な検閲なしに中国のインターネット上で語られていることも、極めて異例なことだという。

「検閲が働いていないからこそ、人々は権力闘争や汚職、権力や地位の乱用、恋愛関係などのうわさが真実なのかと疑問に思っている」と、荘氏は述べた。
2023.12.15 06:10 | 固定リンク | 国際
中国の王毅外相「急遽訪米」裏に真実が
2023.11.15
この背景には、「プーチン大統領の重病説」があると言われてるが...

中国の王毅外務大臣が訪米重要人物と会談さらにAPECへ急遽出席、米国と和解を模索中というのは、最近の米中関係の動向を表す見出しの一例です。実際に、王毅外相は10月26日から28日にかけて米ワシントンを訪問し、ブリンケン国務長官やサリバン大統領補佐官、そしてバイデン大統領と会談しました。この訪米の目的は、11月に米サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて、バイデン大統領と習近平国家主席との首脳会談の開催を調整することでした。

米中関係は、台湾問題や南シナ海問題、人権問題などで対立が深まっており、両国の対話は困難な状況にあります。しかし、両国は、世界の平和と安定に責任を持つ大国として、協力できる分野を探る必要があるという認識を共有しています。王毅外相は、米中関係を安定させ、健全で安定した軌道に戻すことが重要だと述べました。バイデン大統領も、王毅外相との会談を「対話を続けるよい機会」と評価しました。

王毅外相の訪米は、米中関係の改善に向けた一歩となるかもしれませんが、両国の立場の違いは依然として大きく、首脳会談の実現も容易ではありません。王毅外相自身も、首脳会談への道のりは「平たんでない」と認めました。

さらに、この背景には、「プーチン大統領の重病説」があると言われていますが、これは事実ではありません。プーチン大統領の健康状態に関する公式な発表はありませんが、ロシア大統領府は、心停止説が広まると、プーチン氏が会議をする写真を公開したり、プーチン氏がインドのモディ首相と電話会談を行ったりしたことを報告しています。これらの情報から、プーチン大統領が重病に陥ったという噂は、事実ではないと考えられます。

プーチン大統領の重病説は、ロシアの政治情勢や国際関係に関心が高い人々の間で注目を集めていますが、現時点では根拠のないデマであると言えます。
2023.11.15 15:58 | 固定リンク | 国際
中国政府「イスラエル人はゴミ!」
2023.11.01
中国ネット上で反ユダヤ主義拡大 イスラムを支援する北京政府の明確な理由 中国政府「イスラエル人はゴミだ。ユダヤ人は世界で最も恐ろしい人種だ!」

今月7日にガザ危機が勃発して以来、中国では露骨な反ユダヤ主義(アンチ・セミティズム)がインフルエンサーらによりインターネットで拡大している。検閲など当局の厳重な管理下にある中国のネットで、そのような活動が黙認されていることは、中国政府の姿勢を反映していると英紙デイリー・テレグラフは指摘。同国がイスラエルを敵に回してもイスラム諸国を支援するには明確な理由があった。

世界地図を前に中国の人気インフルエンサー、スー・リンさんは、ガザ危機が始まって以来、イスラム武装組織ハマスを支援し、反ユダヤ主義を掲げ、イスラエルを糾弾するライブ配信をほぼ連日続けている。

約100万人のフォロワーを持つスーさんは、ある時は「ハマスはまだ甘い、あまりに安直過ぎる」と同武装組織に奮起をうながし、イスラエル人は「植民地主義の手先」と呼び罵った。今月7日のハマスによる奇襲攻撃で人質に取られたイスラエル人らについては、「彼らは捕らえられるべきして捕らえられた」と発言し、「イスラエルは今やナチスや軍国主義のユダヤ版だ」と言い放った。

英紙デイリー・テレグラフ(電子版)によると、このような配信は7日以来、中国のインターネットに現れた反ユダヤ主義の波の一部に過ぎない。当局の厳重な検閲・管理下にある中国のネット上で、このような反ユダヤ主義を共有することが黙認されているということは、中国共産党がイスラエル・パレスチナ紛争に関し、どのような立ち位置にあるのかを示していると指摘。中国はハマスの攻撃を非難せず、イスラエルを怒らせ、両国の関係がこじれることは必至の状況だ。

中国政府はこれまでもパレスチナ独立を樹立するため、イスラエルとの「双方による解決」を求めてきたが、新たな紛争が勃発した今回も習近平指導部は同様のメッセージを繰り返し、それが「根本的な解決策」だと主張している。

同紙によると、中国にとってパレスチナ大義への支援は数十年前に遡り、中国政府がイスラム諸国との関係を築く基盤となっていると専門家は指摘する。

中国が初めてパレスチナを支持し、インドネシアのバンドン会議でアジア、アフリカ、中東からの参加29か国とともに「あらゆる植民地主義」を非難したのは1955年だった。当時の毛沢東指導部は、パレスチナ人団体への支援と訓練の提供を開始し、毛主席の死後も80年代まで一部の援助は続けられた。

近年、中国はイラクのインフラプロジェクトや、イランの南部ジャスク港の石油ターミナルなど、地域全体に多額の投資を行い、中東での影響力を拡大。エジプトではカイロ郊外に新首都さえ建設中だ。外交面でも、内戦で荒廃したシリアの復興努力への支援を申し出ており、今年初めには地域の長年のライバルであるイランとサウジアラビアの間の国交再開のために介入し、世界を驚かせた。

テレグラフ紙によると、中国が最終的に望んでいるのは、中東全域の投資を守るため、イスラエルとパレスチナの緊張を緩和し、同地域からの石油輸入が滞りなく継続されるようにすることだという。中国は石油の70%以上を輸入しており、そのほとんどはサウジアラビアとイランから来ている。

中国がイスラム側に立つ、もう一つの理由は単純だ。「それは算数だ」とイスラエル国家安全保障研究所の中国担当・トゥヴィア・ゲーリング研究員は指摘する。

「小さなイスラエルは一つで、支援する国も一つだけ。それは米国」とし、その一方で「イスラム協力機構(OIC)の加盟国は57あり、これは国連総会で多くの票を意味する」と説明。OIC加盟国の多くは、「イスラエルは植民地主義の前哨基地であり、戦争を扇動し、中東での覇権を永続させるために西側によって建国された」との見解を持ち、中国はその考えを共有していると述べた。

OICは1969年に発足し、71年に正式な国際機構として設立。イスラム諸国の政治的協力、連帯を強化すること、イスラム諸国に対する抑圧に反対し、解放運動を支援することを目的とする。

中国国営メディアはこの見解を強調して報じ、イスラエルとパレスチナの紛争を中国と米国の広範な対立の構図として位置付けている。その主張は、米国が「ユダヤに支配され、世界に混乱をもたらしている」というものだ。

中国の反西感情は、中国政府が「屈辱の世紀」と呼ぶ時代、つまり中国が英国を含む西洋列強に支配された1839年から1940年代にまで遡る。ゲーリング氏によると、中国政府の解釈では、当時糸を引いていたのは「カーテンの後ろの黒い手…ユダヤ人だった」というのだ。

それでも中国政府は、反ユダヤ主義と名指しで非難されることに対し、「ナチスに追われた何千人ものユダヤ人はビザなしで上海への入国が許可され、ホロコーストを逃れた」という事実を強調して反論する。だが同紙は、中国政府=中国共産党が政権を取ったのは戦後の1949年で、ユダヤ人受け入れとは無関係だと指摘する。

中国政府はユダヤ教を宗教として認めていない。河南省東部・開封市には、1000年以上前に黄河沿いに定住したユダヤ人たちの子孫が住む小さな村落がある。ユダヤ人の血を引くとされる住民約1000人のうち、信仰を実践しているのはわずか100人程度。しかも、中国政府による広範な宗教弾圧から逃れるため、〝隠れユダヤ〟として暮らしている。

反米国感情と混ざり合った反ユダヤ主義が現在の中国でまん延しているが、パレスチナ問題に関する当局の執拗なプロパガンダを誰もが受け入れるわけではない。

中国北部のある大学生は同紙に、「この紛争は深刻な人道的大惨事だと思う」と語った。続けて、「中国国営メディアは正義や人権について何も話していない」とし、「反西洋的、反民主的、そして中国共産党に有利なものは全て支持されているだけだ」と主張した。

しかし、そんな意見は中国のネット上で増幅され、より扇動的なコメントによってかき消されつつある。ある掲示板の書き込みには、「イスラエル人はゴミだ。ユダヤ人は世界で最も恐ろしい人種だ!」 と事実誤認したものや、「今世紀にはユダヤ人を神の元に送ってくれるヒトラーが必要だ」など、ヘイトコメントがまん延している。
2023.11.01 08:52 | 固定リンク | 国際
李克強氏死去「新華社死亡前に想定記事」
2023.10.28
中国の李克強前首相が死去、68歳 突発性の心臓病、上海で休養中 新華社死亡前に想定記事 国民に衝撃

中国国営中央テレビによると、李克強前首相が27日午前0時10分(日本時間同1時10分)、死去した。

68歳だった。上海で休養中に突発性の心臓病にかかり、「全力で救命措置が行われたが効果がなかった」(同テレビ)という。

国営新華社通信は27日夜、公式の訃報を発表。「党を愛し、祖国を愛し、人民を愛した」と追悼した。首相として「複雑な国内外の情勢に直面し、習近平同志(国家主席)を中心とする党中央の強固な指導の下、安定の中で進歩を求める仕事の基本概念を堅持した」と振り返り、最高指導部を退いた後も習指導部を「断固支持した」と強調した。

李氏は今年3月、首相2期目の任期満了に伴い政界を引退したばかりで、突然の死去が報じられると国民に衝撃が広がった。インターネット上には「悲しみに堪えない」「国のため、人民のために身を尽くした首相だった」といった弔意のコメントが寄せられた。

李氏は2007年に最高指導部入りし、副首相に就任。習指導部で党序列ナンバー2となり、13年に首相に昇格した。北京大学で経済学博士号を取得した李氏は首相就任当初、手腕が期待され、特に経済政策は「リコノミクス」と呼ばれ国内外で注目された。

李氏は、エリート養成組織とされた共産主義青年団(共青団)のトップだった胡錦濤前国家主席に見いだされ、後に自身も共青団を率いた。習氏は共青団の影響力排除に力を入れ、李氏を人事で冷遇。路線対立による両氏の確執も指摘され、昨年10月の党大会で慣例的な引退年齢の68歳に達していなかったにもかかわらず、李氏は最高指導部から退いた。

経済に明るい李氏は対外関係を重視し、日本との関係も深かった。関係改善機運が高まっていた18年には日本を公式訪問。安倍晋三首相(当時)が同行し、北海道で自動車工場などを視察した。若手時代にもたびたび訪日し、立憲民主党の小沢一郎衆院議員の岩手県の自宅にホームステイした経験もある。

■李克強氏、存在感低下させ最後 暗殺

中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は11日、今年の国内総生産(GDP)の成長率目標を「5・5%前後」と設定した政府活動報告などを採択し、閉幕した。 李克強リークォーチャン 首相は閉幕後にオンライン形式で記者会見し、ウクライナ侵攻を巡る対ロシア制裁に反対する意向を示した。来年に2期10年の任期が終了する李氏にとって、最後の首相記者会見となった。

李氏は記者会見で、米欧などが強めている経済制裁は「世界経済の回復に打撃となる」と主張した。「平和に立ち戻るため、国際社会とともに積極的な役割を発揮したい」とも述べた。経済成長目標については、実現は「容易ではない」との認識を示し、税の還付や財政出動で下支えする意向を強調した。

李氏は「今年は首相を務める最後の年だ」と述べ、「国民が認めてくれる点もあれば、至らない点もあった」と、就任以来の中央政府の仕事ぶりを振り返った。

  胡錦濤フージンタオ 前国家主席の政治基盤「共産主義青年団」(共青団)出身のエースとされた李氏は首相就任当初、改革開放政策の一層の推進を表明し、その経済政策は「リコノミクス」(李克強経済学)と呼ばれた。その後、 習近平シージンピン 国家主席が自らへの権力集中の一環として、それまで首相が担当してきた経済分野などの権限を握ったため、李氏の存在感は相対的に低下していた。

 習氏が今年後半の共産党大会で発足させることが確実な3期目政権では、李氏は全人代常務委員長への転出が有力視されている。ここで早くも焦点となっているのが、来年の全人代で選任される後任首相人事だ。

 下馬評に挙がるのは、 汪洋ワンヤン 人民政治協商会議主席、 韓正ハンジョン 筆頭副首相、 胡春華フーチュンフア 副首相、 李強リーチャン 上海市党委員会書記、 李希リーシー 広東省党委書記の5人だ。

首相が副首相経験者から選ばれてきた通例からすれば、汪、韓、胡の3氏となる。ただ、韓氏は党大会時点で、最高指導部で慣習となってきた定年の68歳に達する。李克強氏と同様に共青団出身の色が強い胡氏は、習氏との関係に距離があるとされている。習氏に近いとされる李強、李希の両氏は副首相経験はないが、習氏が来年の全人代までの間に副首相に起用し、首相に昇格させるとの観測もある。

■李克強氏死亡前に新華社が死亡記事捏造

李氏は今年3月、習氏側近の李強リーチャン氏に首相の座を譲り、退任したばかりだった。国営新華社通信によると、李氏は上海で休養中で、「全力の救命措置も効果がなかった」という。党中央などは27日夜に訃告ふこくを出し、李氏を「党と国家の卓越した指導者」とたたえ、新型コロナウイルス禍に対策トップとして対応したなどの功績を挙げた。

 安徽省出身。北京大学を卒業し、党のエリート養成機関である共産主義青年団(共青団)でトップの第1書記を務めた。同じ共青団出身の胡錦濤フージンタオ前国家主席に目をかけられ、河南、遼寧両省のトップを経て、07年には党最高指導部の政治局常務委員に昇格した。一時は、習氏と並ぶ最高指導者候補と目された。
しかし、前首相が同日未明、突発的な心臓病のため上海で死去したと伝えた。68歳だった。2012~22年の習近平政権では共産党序列2位の地位にあり、今年3月に首相を退いたばかりだった。

李克強氏は習近平氏の路線と真っ向から対立、経済学の博士号を持つなど経済に明るい人材でもある。一時はNo2として支持者も多く胡錦涛政権の後継者習近平氏と争う一幕もあったが、江沢民氏の強い支持で後継者争いに敗れた。

 李氏は上海で休暇中だったといい、「全力の救命措置も効果がなかった」という。新華社の急死の発表記事は既に作成されていたのではないかと周辺では囁かれている。従って簡潔な内容で、公式の「訃告」は今後発表される。

 安徽省出身で北京大学に進み、党のエリート養成機関である共産主義青年団(共青団)で活動し、1993~98年にトップの第1書記を務めた。同じく共青団出身の胡錦濤(フージンタオ)前国家主席に引き立てられ、2007年に党最高指導部の政治局常務委員に昇格した。一時は習氏と並ぶ次世代の最高指導者候補と目された。

経済学の博士号を持つなどマクロ経済政策に明るく、13年の全国人民代表大会(全人代=国会)で首相に選出されると、自ら唱えた市場主導の構造改革は「リコノミクス」(李克強経済学)と呼ばれ、注目を集めた。だが、習氏への権力集中が進む中、首相としての権限が制限され、政権での存在感は徐々に低下した。

 昨秋の第20回党大会では、慣例の「68歳定年」に達していなかったにもかかわらず、党指導部から外れた。今年3月の全人代で首相の座を習氏側近の李強(リーチャン)氏に譲った。習氏が共青団出身の主要高官の排除を進める中で、確執も指摘された。死去に伴う政権への影響はほとんどないとみられる。

 首相在任中の18年には中国首相として8年ぶりに来日した。翌19年に安倍晋三首相(当時)が訪中し、日中間のハイレベルの相互往来につながった。
2023.10.28 10:54 | 固定リンク | 国際

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