ダイハツ、新車全車種の販売停止
2023.12.20
■ダイハツ、新車全車種の販売停止へ 国交省検査検討 衝突試験不正

トヨタ自動車の子会社のダイハツ工業で車両の安全性を確認する衝突試験で不正があった問題を巡り、ダイハツがほぼ全車種の新車販売を停止する方針を固めたことが関係者への取材で明らかになった。

20日、国土交通省に第三者委員会の調査結果を報告し、記者会見で公表する。これを受け、国交省はダイハツに立ち入り検査するとともに、不正が確認された車種の安全性を自前の検査で確認する方向で検討している。

大手メーカーが全車種の販売を停止し、国交省が検査に入る異例の展開となる。

ダイハツはトヨタの完全子会社で、軽自動車市場で約3割のシェアを握る。2022年度の販売台数は国内60万3238台、世界で計110万2570台。小型車の開発・生産に強みを持ち、トヨタとの共同開発やOEM(相手先ブランドによる受託生産)を手掛けている。

■ダイハツの側面衝突試験不正とその背景・影響

はじめに

ダイハツ工業株式会社(以下、ダイハツ)は、2023年4月に海外市場向けの4車種で側面衝突試験の認証申請において不正行為を行っていたことを発表した。この不正行為は、認証する車両の前席ドア内張り部品の内部に不正な加工を行い、法規に定められた側面衝突試験の手順・方法に違反していたものである。この問題は、ダイハツの信頼と品質に大きな影響を与えたとともに、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)とのOEM供給や共同開発にも波及した。

本論文では、ダイハツの側面衝突試験不正の経緯とその背景・影響について分析する。まず、不正の発覚から調査・報告までの流れを概観する。次に、不正の原因として考えられる開発体制や組織文化、法規対応の問題点を指摘する。最後に、不正の影響として、ダイハツの販売・業績・ブランドイメージの低下、トヨタとの関係の悪化、法的・社会的な責任の追及などを検討する。

■不正の発覚から調査・報告までの流れ

ダイハツの側面衝突試験不正は、2023年4月に内部通報によって発覚した。不正を行った疑いのある担当部署や関連部署へのヒアリング調査、車両の現物調査、設計変更履歴や開発過程の試験結果などの開発経緯の調査を行ったところ、通報通りの不正行為があったことを確認した。

不正の対象となった車種は、トヨタの「ヤリスエイティブ」「アギヤ」、プロデュアの「アジア」、開発中の1車種の計4車種であった。これらの車種は、ダイハツが開発から必要な各種認証試験合格までを実施し、トヨタが当局に車両型式の認可の申請をし、必要な認可を受けた後、トヨタブランドで販売していた。ダイハツは、不正行為の事実が判明後、速やかに審査機関・認証当局に報告・相談の上、トヨタと協議し、認可対象国における出荷を停止した。

ダイハツは、側面衝突試験の不正を受けて、5月15日に第三者委員会を設置した。社内調査や再発防止策の策定を進めていたが、当初の夏ごろから11月末に延期となり、最終的には12月20日まで延びることになった2。12月20日には、ダイハツの側面衝突試験不正の全容と原因、再発防止策などを記した第三者委員会報告書が公表された3。報告書によると、不正の背景には、開発部門の組織体制や文化、法規対応の問題点などがあったとされる。

■不正の原因として考えられる開発体制や組織文化、法規対応の問題点

第三者委員会報告書によると、ダイハツの側面衝突試験不正の原因として考えられる開発体制や組織文化、法規対応の問題点は、以下のように指摘されている。

開発部門の組織体制の問題点

性能開発・評価・認証の各機能が1つの室の中で担当されており、チェック機能が働かなかった。

認証担当者の責任と権限が不明確であり、認証試験の実施や結果の報告に関するルールや手順が不十分だった。

認証担当者の人材育成や教育が不十分であり、法規の知識や技術力が低かった。

認証担当者の人員不足や業務量の増加に対応できなかった。

開発部門の組織文化の問題点

開発部門のトップダウン型の指示や評価が強く、現場の声が上に届かなかった。

開発部門の目標や方針が不明確であり、品質よりもスピードやコストが優先された。

開発部門のコミュニケーションや情報共有が不十分であり、不正行為に気づいても報告や対策ができなかった。

開発部門の倫理意識や法規遵守意識が低く、不正行為を正当化や容認する風潮があった。

法規対応の問題点

法規の変更や複雑化に対応できなかった。

法規の解釈や適用に関する基準や判断が不明確であり、認証当局との調整や確認が不十分だった。

法規の遵守を確保するための管理体制や監査体制が不十分だった。

■ダイハツの側面衝突試験不正が新車販売に与えた影響は

ダイハツ工業株式会社(以下、ダイハツ)は、2023年4月に海外市場向けの4車種で側面衝突試験の認証申請において不正行為を行っていたことを発表した1。この不正行為は、認証する車両の前席ドア内張り部品の内部に不正な加工を行い、法規に定められた側面衝突試験の手順・方法に違反していたものである。この問題は、ダイハツの信頼と品質に大きな影響を与えたとともに、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)とのOEM供給や共同開発にも波及した。

本論文では、ダイハツの側面衝突試験不正が新車販売に与えた影響について分析する。まず、不正の発覚から販売・出荷停止までの流れを概観する。次に、販売・出荷停止が及ぼした影響として、販売台数や納期の減少、ユーザーの不満や不信感の増加、競合他社との差別化の失敗などを指摘する。最後に、販売・出荷停止の解除や再開の見通しについて考察する。

■不正の発覚から販売・出荷停止までの流れ

ダイハツの側面衝突試験不正は、2023年4月に内部通報によって発覚した。不正を行った疑いのある担当部署や関連部署へのヒアリング調査、車両の現物調査、設計変更履歴や開発過程の試験結果などの開発経緯の調査を行ったところ、通報通りの不正行為があったことを確認した。

不正の対象となった車種は、トヨタの「ヤリスエイティブ」「アギヤ」、プロデュアの「アジア」、開発中の1車種の計4車種であった。これらの車種は、ダイハツが開発から必要な各種認証試験合格までを実施し、トヨタが当局に車両型式の認可の申請をし、必要な認可を受けた後、トヨタブランドで販売していた。ダイハツは、不正行為の事実が判明後、速やかに審査機関・認証当局に報告・相談の上、トヨタと協議し、認可対象国における出荷を停止した。

不正の発覚から販売・出荷停止までの流れは、以下の図のようになる。

![不正の発覚から販売・出荷停止までの流れ]

■販売・出荷停止が及ぼした影響

ダイハツの側面衝突試験不正による販売・出荷停止は、ダイハツとトヨタの新車販売に大きな影響を与えた。以下に、その影響として考えられる点を挙げる。

販売台数や納期の減少

ダイハツは、不正の対象となった4車種のほかにも、同じハイブリッドシステムを搭載する「ロッキー」「ライズ」のハイブリッド車も出荷停止とした。これらの車種は、ダイハツの主力商品であり、2022年の販売台数は合計で約7万8000台に達していた。これらの車種の販売・出荷停止は、ダイハツの販売台数や収益に大きなマイナスとなった。

トヨタは、不正の対象となった4車種のほかにも、ダイハツからOEM供給を受けている「ルーミー」「タンク」「トール」「パッソ」などの車種も出荷停止とした。これらの車種は、トヨタのコンパクトカーの中核を担っており、2022年の販売台数は合計で約28万台に達していた。これらの車種の販売・出荷停止は、トヨタの販売台数やシェアに大きなマイナスとなった。

ダイハツとトヨタは、販売・出荷停止となった車種の受注残分について、注文の取り消しや車種の変更をお願いするなどの対応を行った。しかし、その対応には限界があり、多くのユーザーは納車の遅延や不確実性に直面した。特に、ハイブリッド車は部品不足の影響で納期が長期化しており、ユーザーの不満や不安が高まった。

ユーザーの不満や不信感の増加

ダイハツとトヨタのユーザーは、販売・出荷停止によって納車の遅延や不確実性に苦しめられた。特に、ハイブリッド車を注文していたユーザーは、燃費性能や環境性能を重視していたため、他の車種に変更することに抵抗を感じた。また、不正行為によって車両の安全性や性能に疑問を持ったユーザーも少なくなかった。

■ダイハツ、新車全車種の販売停止へ 衝突試験不正で国交省立ち入り

 トヨタ自動車の子会社のダイハツ工業で車両の安全性を確認する衝突試験で不正があった問題を巡り、ダイハツがほぼ全車種の新車販売を停止する方針を固めたことが関係者への取材で明らかになった。20日、国土交通省に第三者委員会の調査結果を報告し、記者会見で公表する。これを受け、国交省はダイハツに立ち入り検査するとともに、不正が確認された車種の安全性を自前の検査で確認する方向で検討している。

■ダイハツ、衝突試験不正の調査結果 近日中に公表 20日にもサプライヤー対象に説明会

ダイハツ工業が、側面衝突試験の認証問題について、第三者委員会による調査結果や再発防止策などを近く公表することがわかった。12月20日にも一部のサプライヤーを対象に説明会を開く予定。ディーラーには、発表日同日に公表するとみられる。

側突試験の不正を受け、同社は5月15日に第三者委員会を設置。社内調査や再発防止策の策定を進めていた。当初、夏ごろに不正の要因などを報告する予定だったが、11月末に延期となり、最終的には12月20日まで延びることになった。

同社は4月28日に海外向け車両での側突試験認証申請で不正があったと公表した。対象車種はタイとマレーシア、インドネシアで発売済みの2車種と、6月に発売予定の1車種、開発中の1車種の計4車種で、対象台数は8万8123台に上った。

さらに5月19日にはダイハツ「ロッキー」とトヨタ自動車にOEM(相手先ブランドによる生産)供給する「ライズ」のハイブリッド車(HV)でポール側突試験の認証試験手続きで不正が発覚。同試験では、電柱などを模擬したポールを運転席と助手席それぞれ衝突させ、乗員の安全性や燃料漏れなどを確認する必要があるが、運転席側のデータを助手席側のデータと同じものを提出していた。

その後の社内試験で安全性は確認したが、不正の全容がわからず、生産・販売を停止。調査が長期化していることもあり、受注取り消しも開始した。
2023.12.20 12:50 | 固定リンク | 経済

- -