アメリカの最大の脅威は「地政学」的に読み解く
2023.12.23
アメリカの「最大の脅威」は中国かロシアか…「地政学」的に読み解く

地政学とは、地理的条件が国際政治や戦争に与える影響を分析する学問です。地政学には、英米系と大陸系の二つの主要な流派があります。英米系地政学は、海洋によって結ばれた自由主義国家の連合が、大陸によって囲まれた専制主義国家の連合に対抗するという視点を持ちます。大陸系地政学は、大陸の中心部に位置する国家が、周辺部に位置する国家に対して優位に立つという視点を持ちます。

アメリカにとっての最大の脅威は、これらの地政学の視点から考えると、中国とロシアの二つの国家になります。中国は、経済、軍事、外交、科学技術などの分野で急速に発展し、アメリカに対抗する力を持つようになりました。

中国は、アメリカの同盟国や友好国との関係を損なうような行動をとったり、アメリカの政治や経済に干渉したり、アメリカの技術や知的財産を盗んだりすることで、アメリカの国益や安全保障に損害を与えています。

中国は、台湾や南シナ海などの地域での覇権を主張し、アメリカとの衝突の可能性を高めています。
中国は、英米系地政学の視点からは、ランド・パワーの陣営の代表格であり、シー・パワーの陣営に対する最大の挑戦者です。大陸系地政学の視点からは、大陸の中心部に位置する国家であり、周辺部に位置する国家に対する最大の脅威です。

ロシアは、旧ソ連時代の勢力圏を回復しようとしており、ウクライナやジョージアなどの国に対して武力行使やサイバー攻撃などの侵略的な行動をとっています。ロシアはまた、アメリカの選挙や民主主義に対して、偽情報やプロパガンダなどの手段で干渉し、アメリカの社会や政治に分断をもたらそうとしています。
ロシアは、アメリカの同盟国であるNATOやEUとの関係を悪化させることで、アメリカの国際的な影響力を弱めようとしています。

ロシアは、英米系地政学の視点からは、ランド・パワーの陣営の一員であり、シー・パワーの陣営に対する深刻な脅威です。大陸系地政学の視点からは、大陸の中心部に位置する国家であり、周辺部に位置する国家に対する競争相手です。

以上の比較から、アメリカにとっての最大の脅威は、中国とロシアの二つの国家であると言えます。
しかし、その中でも、中国の方がより直接的で広範な挑戦をしており、アメリカの世界的なリーダーシップに対抗する野心を持っていると言えます。

ロシアは、中国ほどの規模や能力は持っていませんが、アメリカの利益や価値観に反する行動をとることで、アメリカの安定や秩序に損害を与える可能性があります。アメリカは、中国とロシアの脅威に対処するために、同盟国や友好国との連携を強化する必要があります。

■アメリカの最大の脅威国はどこか

アメリカは世界の超大国として、多くの国との関係を持っています。しかし、その中にはアメリカの利益や価値観に反する国も存在します。アメリカにとって最大の脅威になる国はどこでしょうか。中国、ロシア、インドの3カ国を比較してみましょう。

■中国の台頭と挑戦

中国は近年、経済、軍事、外交、科学技術などの分野で急速に発展し、アメリカに対抗する力を持つようになりました。中国はアメリカの同盟国や友好国との関係を損なうような行動をとったり、アメリカの政治や経済に干渉したり、アメリカの技術や知的財産を盗んだりすることで、アメリカの国益や安全保障に損害を与えています。中国は台湾や南シナ海などの地域での覇権を主張し、アメリカとの衝突の可能性を高めています。中国はアメリカの「最大の長期的な脅威」だと米FBI長官は述べています。

米FBI長官、中国の脅威を強調

米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は、2020年7月と2022年7月に、中国政府によるスパイ活動と盗用行為が、アメリカにとっての「最大の長期的な脅威」になっていると述べた。レイ氏は、中国がアメリカの経済や国家安全保障に対して、多面的な挑戦をしており、アメリカの世界的なリーダーシップに対抗する野心を持っていると指摘した。

レイ氏は、中国政府がアメリカの同盟国や友好国との関係を損なうような行動をとったり、アメリカの政治や経済に干渉したり、アメリカの技術や知的財産を盗んだりすることで、アメリカの国益や安全保障に損害を与えていると語った。レイ氏は、中国が台湾や南シナ海などの地域での覇権を主張し、アメリカとの衝突の可能性を高めているとも警告した。

レイ氏は、中国による妨害行為や広範な経済スパイ活動、データおよび資産の窃取、違法な政治活動などを列挙した。レイ氏によると、中国政府は賄賂や脅迫によって、アメリカの政策に影響を及ぼそうとしていると述べた。レイ氏は、中国が天安門事件を批判する候補者を当選させないために、ニューヨークの議会選に直接介入したとも指摘した。

レイ氏は、中国がロシアのウクライナ侵攻から教訓を得ようとしており、科されたような制裁から将来的に身を守る方法も、その一つだと述べた。レイ氏は、もし中国が台湾を侵略すれば、経済的混乱は今回よりはるかに大きく、西側の対中投資は「人質」となり、サプライチェーンは破壊されるだろうと、警告した。

レイ氏は、中国の脅威に対処するために、アメリカは同盟国や友好国との連携を強化する必要があると強調した。レイ氏は、中国はあまりにも長い間、どの国の優先事項でも2番目であることに乗じてきたとし、こう付け加えた。「中国はもはや、気づかれないように行動しているわけではない」

■ロシアの侵略と干渉

ロシアは旧ソ連時代の勢力圏を回復しようとしており、ウクライナやジョージアなどの国に対して武力行使やサイバー攻撃などの侵略的な行動をとっています。ロシアはまた、アメリカの選挙や民主主義に対して、偽情報やプロパガンダなどの手段で干渉し、アメリカの社会や政治に分断をもたらそうとしています。ロシアはアメリカの同盟国であるNATOやEUとの関係を悪化させることで、アメリカの国際的な影響力を弱めようとしています。ロシアはアメリカにとって「深刻な脅威」だと米国防総省は位置づけています。
米国防総省、ロシアの脅威を強調

米国防総省は、2023年3月に国防の方向性などを示す戦略文書「国家防衛戦略」の概要をバイデン政権として初めて発表した。中国を「最重要の戦略的競争相手」と位置付けた上で、ロシアを中国に続く脅威とし、同盟国と連携して対抗するとした。

国家防衛戦略は、米大統領が策定する外交・安全保障の指針「国家安全保障戦略」に基づいて定めるもので、2023年の発表はロシアによるウクライナ侵攻への対応に追われる中での策定となった。発表された概要では、ロシアのウクライナ侵攻を「深刻な脅威」と指摘し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や友好国と連携し、さらなる侵略を防ぐための抑止力の整備を進めるとした。

ロシアは旧ソ連時代の勢力圏を回復しようとしており、ウクライナやジョージアなどの国に対して武力行使やサイバー攻撃などの侵略的な行動をとっている。ロシアはまた、アメリカの選挙や民主主義に対して、偽情報やプロパガンダなどの手段で干渉し、アメリカの社会や政治に分断をもたらそうとしている。ロシアはアメリカの同盟国であるNATOやEUとの関係を悪化させることで、アメリカの国際的な影響力を弱めようとしている。

米国防総省は、中国とロシアに対しては、「必要となれば紛争に勝つ用意をする」と明記した。同盟国や友好国との協力推進を掲げた。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮は、イランや過激派組織と同列に位置付け、「持続的な脅威に対処できるよう引き続き対応する」と強調した。

■中国が最大の脅威

以上の比較から、アメリカにとって最大の脅威になる国は中国であると言えます。中国はアメリカの国益や価値観に対して、最も直接的で広範な挑戦をしており、アメリカの世界的なリーダーシップに対抗する野心を持っています。ロシアはアメリカにとって深刻な脅威ですが、中国ほどの規模や能力は持っていません。インドはアメリカにとって脅威ではなく、協力する国です。アメリカは中国の脅威に対処するために、インドや他の国との連携を強化する必要があります。

英米の情報機関トップ、中国の「途方もない」脅威をそろって警告した。アメリカの「最大の脅威」は中国と 米FBI長官が説明。米の国家防衛戦略、ロシアは中国に続く「深刻な脅威」と位置づけた。米国民の半数が中国を最大の脅威と認識、シンクタンク調査。インドとの関係強化は不可欠であると、米国務長官が強調した。

■地政学の視点から「戦争の構造」を深く読み解いてわかることとは?

冷戦の終焉とその後の世界

冷戦の終焉は、英米系地政学の視点から言えば、シー・パワー連合の封じ込めが成功しすぎて、ランド・パワーの陣営が崩れていってしまった現象だということになる。

大陸系地政学から見ても、いずれにせよソ連/ロシアが自国を覇権国とする生存圏/勢力圏/広域圏のような圏域の管理に失敗して自壊したことによって生じた事態であった。

フランシス・フクヤマが洞察した「自由民主主義の勝利」である「歴史の終わり」としての冷戦の終焉は、シー・パワー連合の封じ込め政策が完全な勝利を収めてしまった状態のことを、理念面に着目した言い方で表現したものだったということになる。

これに対して、冷戦終焉後の世界においてもなお大陸系地政学の視点を対比させようとするならば、サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」の世界観に行きつくだろう。圏域を基盤にした世界的対立の構図は残存する、という主張である。

一方では、「自由民主主義の勝利」が、自由主義の思潮の普遍化や、自由貿易のグローバル化を背景にして、圏域に根差した思想の封じ込めを図る。この傾向は、冷戦終焉後に、ある面では強まった。

しかし、他方では、「歴史の終わり」としての「自由民主主義の勝利」の時代であればこそ、「文明」のような人間のアイデンティティの紐帯を強調する動きも生まれやすくなるかもしれない。

グローバル化と呼ばれる普遍主義の運動が強まれば強まるほど、それに反発する動きも顕著になるかもしれない。そこでシー・パワー連合のグローバル化に対抗し、圏域思想の側が「文明の衝突」を助長する。

冷戦終焉後の世界は、「自由民主主義の勝利」と「文明の衝突」が絡み合い、やがて二つの異なる地政学の対立にも引火していく構図の時代であった。

■ソ連の崩壊と英米系地政学が直面した課題

ソ連を盟主とした共産主義陣営の崩壊によって、シー・パワー連合としての自由主義陣営は、冷戦時代の封じ込め政策の目的を達してしまったかのようであった。

マッキンダー地政学にしたがえば、ハートランド国家が拡張主義政策をとり、それに対してシー・パワー連合が封じ込め政策をとることによって、「歴史の地理的回転軸」が動いていく。

もしハートランドが拡張を止め、むしろ縮小するなら、「歴史の地理的回転軸」が止まった状態だ。マッキンダー理論では、これでは歴史が動かない。

冷戦の終焉という「歴史の終わり」としての「自由民主主義の勝利」は、マッキンダー地政学の理論からも語れることであった。

1990年代初頭の世界では、「新世界秩序」といった言葉が多用された。アメリカ一国の覇権、活発化する国連を中心にした世界、国境を越えて進展するグローバル経済、といった「自由民主主義の勝利」のイメージを表現するための言説も多かった。冷戦終焉直後の1990年代は、地政学への問題関心が著しく低下していた時期であった。

2001年に「9.11テロ」が起こると、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は、「我々の側か、我々の反対側か」という二者択一を迫るブッシュ・ドクトリンと呼ばれるようになる立場を鮮明にする。
この単独主義とも称されたアメリカの唯一の超大国としての圧倒的な力を背景にした政策は、モンロー・ドクトリン以来のアメリカの外交政策が、ある種の頂点に達したものだったと言える。

ブッシュ・ドクトリンにおける善と悪の二元論的世界観は、伝統的なモンロー・ドクトリンにおける神の恩寵を受けた共和主義諸国の「新世界」と汚れた絶対主義王政諸国の「旧世界」の二元論を彷彿させた。

■再び台頭する二元論的世界観

冷戦期のトルーマン・ドクトリンでは、自由主義陣営と、共産主義陣営の二元論で、表現されていた。アメリカは自国の安全保障政策の関心対象である集団防衛の領域を、常に二元論的世界観にそって決定してきた。

 「対テロ戦争」の時代のブッシュ・ドクトリンでは、遂にこの二元論的世界観が、国際社会そのものと、非領域的に存在するテロ組織及びその支援者の間の分断となった。領域性のある政治アクターは、基本的に国際社会の側に立ち、国際社会に反した勢力は非領域的なものとして存在していることになった。

実際には、2003年のアメリカによるイラク侵攻は、同盟国を含めた諸国の反発を招いた。その後の占領統治の困難もあり、国際社会全体とテロリストとの闘いとしての対テロ戦争の構図は、頓挫していった。そしてアメリカでも、オバマ大統領の多国間協調主義と、トランプ大統領のアメリカ第一主義が登場してくることになる。

ただし、バイデン大統領の「民主主義諸国vs権威主義諸国」の世界観は、伝統的な二元論的世界観に通じるものだ。

超大国化した中国との競争関係の明確化、ウクライナに侵攻したロシアとの敵対姿勢などから、「民主主義諸国vs権威主義諸国」の構図に沿って、大きく国際政治が動いてきている面もある。

冷戦時代の自由主義陣営と共産主義陣営の対立の場合のような明確な線引きが「民主主義諸国vs権威主義諸国」の間に存在しているわけではない一方で、国家の間の対立が強まってきている現象もはっきりしてきている。
このような萌芽的あるいは過渡期の状況の中で、地政学理論への関心が復活してきているのが現代である。
2023.12.23 15:45 | 固定リンク | 国際

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