パレスチナのチェ・ゲバラ「ハマスのデイフ最高司令官を追跡」
2023.10.17
「デイフはパレスチナのチェ・ゲバラになるかもしれない」 ハマスのムハンマド・デイフ最高司令官

イスラエル奇襲攻撃の首謀者といわれるハマスのデイフ司令官は何度も暗殺の試みを潜り抜け、今や生きても死んでも厄介な大物テロリストだ。

イスラム武装組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃の報復として、イスラエル国防軍(IDF)がパレスチナ自治区ガザへの攻撃を強化するなか、ハマスの軍事組織の中枢にいる謎に包まれた人物に注目が集まっている。彼は最後の抵抗の準備を始めているのかもしれない。

ハマスのアル・カッサム軍事旅団を率いるムハンマド・デイフ最高司令官は、意図的に身を隠しており、彼についての情報はほとんど知られていない。通称のデイフには「客人」という意味があるが、それは一か所にとどまらず、頻繁に居場所を変えるからだ。

そのおかげでデイフは、命をねらうイスラエルの襲撃から逃れてきた。長い間生き延びてきたデイフだが、イスラエル軍が大規模なガザ侵攻を始めれば、30年以上も続いた血なまぐさい追跡劇は頂点を迎えるかもしれない。そのときデイフはどうするのか。

「デイフは優れた地位と名声、業績がありながら、不屈の精神と殉教の文化にどっぷり浸かっている男だ。イスラエル軍がきたからといって自分の土地や戦場を離れるとは思えない」と、カタールのノースウェスタン大学の教授で、ハマスの内情に関する著書があるハレッド・フルブは本誌に語った。

「地上侵攻が行われ、イスラエル軍の追跡の手が迫ったら、彼は命ある限り戦うだろう」

〇奇襲攻撃の首謀者

ハマスは、イスラエルを跡形もなく破壊し、その上にイスラム主義のパレスチナ国家を築くために戦っている。そのなかで、デイフは極めて重要な役割を担ってきた。特に彼が首謀した10月7日の陸、空、海からのイスラエルの攻撃では、少なくともイスラエル人1300人が死亡した(イスラエルの報復空爆でガザでは2000人近い犠牲者が出た)。

イスラエルは過去に何度もデイフを暗殺しようと試みた。そのせいでデイフはさまざまな怪我を負っており、眼球、腕の一部、脚を失ったと伝えられる。また、2014年にイスラエルがガザに本格的な地上侵攻を行なったときには、空爆で妻と生後7ヶ月の息子、3歳の娘を失ったという。

新たな報告によれば、現在進行中のイスラエル国防軍の攻撃で、デイフの兄と息子を含む、多くの親族が殺害されたという。おそらく、イスラエルは今回こそデイフを完全に排除しようとしているのだろう。

フルブは、デイフの死は短期的にハマスの軍事力に損害を与えるかもしれないとしながらも、支持者に広く敬愛され、敵からは忌み嫌われるデイフのような人物が殉教者としての地位を得ることは、ハマスの地位と威信を高めることにもなりかねないと主張する。

〇伝説を追いかけて

デイフが伝説上の英雄になるのは、イスラエルにとって厄介極まりない難題だ。イスラエル国防軍軍事諜報部門の研究部門の責任者およびイスラエル戦略問題担当省の長官を務めたヨッシ・クーパーワッサーによれば、デイフが他のハマス幹部、たとえばイスマイル・ハニェ政治局長やガザ地区の指導者ヤヒヤ・シンワルヤと違うのは、「彼が誰よりも象徴的な存在であること」だという。

クーパーワッサーは、デイフをイラン革命防衛隊クッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官や、レバノンのヒズボラの軍事部門を率いるイマド・ムグニエ、アルカイダによる9.11テロの立役者ハリド・シェイク・モハメドになぞらえる。「われわれがそう仕向けたわけではないが、彼は伝説的な人物になっている」

多くのイスラエル人にとって、デイフは9.11テロの象徴になったウサマ・ビンラディンのようなものだ。

ソレイマニは米軍による2020年の空爆で死亡し、ビンラディンは米軍の急襲で2011年に死亡した。ムグニエはCIAとモサドの合同作戦で2008年に殺害され、モハメドは米・パキスタン合同囮捜査で2003年に捕まった。しかしイスラエルの最重要指名手配犯であるデイフだけはまだ逃亡を続けている。

〇象徴になった影の男

イスラエル情報機関の元職員でアラブ問題担当上級顧問だったアビ・メラメッドは本誌の取材に対し、イスラエル国防軍にとって今は、デイフの捜索に焦点を当てないほうが得策だと語った。最後には逃げおおせるかもしれない「影の男」としての評判をさらに高める可能性があるからだ。

「イスラエルの目下の戦略目標は、ハマスの軍事・組織能力を破壊することだ。やるべきことはそれしかない」と、メラメッドは言う。「個人を追いかけても話は終わらない。捕らえることができるかもしれないし、決して捕らえることができないかもしれない。永遠にわからないどこかの場所に埋葬されるかもしれない。だが、そんなことはほとんど意味がない」

「これ以上、伝説を膨らませる必要はない。彼は残忍な殺人者であり、非常に危険で世故にたけた人物であり、精神的に異常すれすれの人格だ」

だが、多くのハマス支持者にとっては、影から戦争を仕掛けるデイフの謎めいた能力は、長い間、彼が掲げる大義への支持を煽るのに役立ってきた。

ガザのアル・アズハル大学で政治学を教えるムハイマール・アブサダ教授が本誌に語ったように、「彼の存在はハマスの軍事部門にとって重要だ。彼らはデイフを賞賛し、彼のリーダーシップによって刺激を受けている」。

〇謎に包まれた正体

ガザにある地域研究センターのアイマン・アル・ラファティ理事は、デイフは「パレスチナの抵抗の象徴となっており、パレスチナ人の間で絶大な人気を誇っている」と本誌に語った。デイフは現在「新世代のパレスチナ人に刺激を与える存在と考えられている。その証拠に、パレスチナ人が唱える祈りのなかには常に彼の名前が組み込まれている」。

デイフの顔がわかる写真は2枚しかなく、いずれも数十年前に撮影されたものだ。そのため、今回のハマスの攻撃の開始と同時期に録音された演説と共に、珍しくデイフのシルエットの画像が登場したとき、パレスチナの闘士たちはさらに活気づいた。

デイフは現在、さらに多くの戦士を結集させようとしており、「レバノン、イラン、イエメン、イラク、シリアのイスラム抵抗勢力の兄弟たち」に対イスラエル戦争への参加を呼びかけている。この呼びかけはこの5カ国の全域で活発に議論されている。

メラメッドによれば、文字通り影に隠れたデイフの正体は、1965年頃にガザ南部のハーン・ユニス難民キャンプで生まれたムハンマド・ディアブ・イブラヒム・アルマスリ、またの名をアブ・カレドとも呼ばれる人物だ。

デイフの家族はヘブロン北西の村アル・クバイバに住んでいたが、1948年のイスラエル建国時の戦争が勃発したため、他のパレスチナ人住民同様、逃げ出してガザ南部の難民キャンプハーン・ユニスに移り住んだ。このときの戦争が、その後数十年に渡る中東紛争の幕開けとなった。

ロイターによれば、デイフは「ガザのイスラム大学で物理学、化学、生物学を学び、理学士の学位を取得した。芸術にも親しみ、大学のエンターテインメント委員会を率いて、喜劇の舞台への出演も経験した」。演劇の経験は、彼の演説の劇的効果を与えている、とメラメッドは言う。
2023.10.17 10:24 | 固定リンク | 戦争
中国ハマス擁護「中国人3人殺害認めるも見捨てる」
2023.10.17
■中国、突然パレスチナ側に立つ ハマス擁護 中国人3人殺害認めるも見捨てる

中国が突然「イスラエルバッシング」に出た理由は何か。これを巡り西側メディアは「中国の中東に対する野望と関連がある」という分析を次々と出している。親パレスチナ路線でアラブ諸国とさらに密着し、中東での影響力拡大を狙っているというものだ。また、パレスチナの武装組織ハマスのイスラエル奇襲攻撃の背後といわれて注目を集めているイランを対米国交渉カードとして利用しようとする腹積もりもあるとの観測も出ている。

15日、中国外交部によると、王毅外交部長兼共産党中央政治局委員は前日、サウジアラビアのファイサル外相と電話会談を行い、イスラエルのガザ地区攻撃が「度を越した」と猛非難した。王部長は「中国は民間人を害するあらゆる行為に反対して糾弾する」とし「イスラエルの行為はすでに自衛の範囲を超えている」と話した。このような中国の反応は今回の事態が起きて以来、初めてだ。

戦争勃発以降、中国は表向きは中立的な立場を堅持してきた。だが、この日王部長は決心したように「中国はサウジなどアラブ諸国と共に、パレスチナが民族の権利を回復する正義あふれる事業を引き続き支持する」とあからさまにパレスチナの肩を持った。王部長は同日、イランのアブドラヒアン外交長官と行った電話会談でも、「(独立したパレスチナ建国を通じて)歴史的不公正は早期に終結させなくてはならない」とし、同じ論旨を展開した。

◇「米国のせいで品行が良くなくなった」

中国官営メディアも一斉にイスラエル批判に加勢した。

特に「中国共産党のラッパ吹き」役を自任してきた環球時報元編集者の胡錫進氏は14日、ソーシャルメディア(SNS)にガザ地区空襲を批判して「イスラエルは米国のせいで品行が悪くなった」と書くなど過激な発言を投稿した。胡氏のSNSはフォロワーが2500万人に達するだけにその批評は大衆への影響力が強い。

このような扇動に対する反響も大きかった。「中国オンライン上で反ユダヤ主義感情の掲示物が急増している」(米国NGO「フリーダム・ハウス」)という懸念が出ている。

これに先立ち、在中国イスラエル大使館側はハマスが攻撃を加えた翌日の8日、SNSに中国系イスラエル女性がハマスに拉致される映像を掲載して支持を訴えた。だが、中国内の雰囲気はこのように正反対に流れる様相だ。大使館側が悪質なコメントを除去するためにSNSアカウントをフィルタリングしている状況だ。

◇ネタニヤフ首相を国賓として中国に招待したが…

西側専門家は中国の態度変化の流れを注視している。中国は今回の事態が発生する直前まで、イスラエルとの関係強化に動いていたためだ。今年6月には習近平国家主席がイスラエルのネタニヤフ首相に国賓訪問を要請し、今月末には北京での首脳会談も予定されていた。

だが、中国はイスラエルのガザ地区空襲以降、態度を変えた。対中東戦略上、親パレスチナ路線が有利だという判断のためと分析している。専門家は「パレスチナに対する中国の確かな支持がアラブ世界で中国の地位を高め、地域内での立場を強化することができる」と中国の本音を突いた。米シンクタンク「スティムソン・センター」中国プログラムディレクターのユン・ソン上級研究員はフィナンシャル・タイムズ(FT)に「(イスラエルのガザ地区攻撃で)パレスチナに対するアラブ諸国の支援が増えるだろう」としながら「これは中国とアラブ国家を再び同じ方向に向かせるため、中国の利益と合致する」と説明した。

中国の立場ではイスラエルを全面的に支援する米国の対中東ヘゲモニーに揺さぶりをかけることができる局面でもある。米国は中東全域で事態を拡散させないように、一国の海・空軍全体戦力を凌ぐ2個の空母打撃群をイスラエル周辺海域に急派した状況だ。このために「これまで米国と軍事的に協力してきたが、今回の事態で不満を抱くことになったアラブ諸国に中国製武器の販売を拡大できる機会」(エクセター大学国際関係学のマリア・パパゲオルギウ講師)という観測もある。

◇イランとの関係は対米交渉カード

ハマスの攻撃を支援したといわれているイランとの関係も中国には重要だ。実際に中国は戦争の渦中にもイランとの高官接触を継続している。また、中国官営メディアはイランメディアを引用してイスラエル軍の不法な「白リン弾」使用を批判した。白リン弾は人体に付着する場合、骨や肉が溶けるほど深刻な火傷を負わせる致命的な武器だ。

これに対して中国安保が専門の英国ギングス・カレッジ・ロンドンのAlessandro Arduino准教授はFTとのインタビューで「中国が米国と中東政策で交渉するためにはイランを圧迫できる数少ない行為者の一つということを強調しなければならない」とし「中国の立場で、イランは対米交渉の重要なカードになるだろう」と話した。

■「ハマスに襲われた後に路上に捨てられた」…中国人3人、自国民が亡くなったのに消極的対応

今月7日にパレスチナの武装組織ハマスの無差別攻撃を受けて現地中国人3人が殺害され、2人が行方不明だと中国外交部が12日、確認した。

汪文斌報道官はこの日の定例会見で「現在までのところ3人の中国国民が衝突中に不幸にも亡くなり、2人は行方不明となった。また多数が負傷した」とし「犠牲者に深い哀悼を表し、遺族と負傷者にお見舞いを申し上げる」と話した。

10日(現地時間)、イスラエルに進出した中国企業組織「中華商会」は7日、ハマス攻撃当時に江蘇省出身の35歳の鄒氏と万氏、曹氏がトラックに移動中に武装したハマスに襲われた後、道路に捨てられ、少なくとも中国人2人が死亡したと発表していた。だが、中国当局が関連情報を遮断してSNSで検索できないようにするなど報道を統制したとラジオ・フリー・アジア(RFA)が11日、報じた。

中国時事評論家の胡平氏は「中国のこのような態度はハマスの罪状を軽くしようとする試み」とし「中国人死亡者発生を認めてしまえばハマス非難世論が高まるためだ。中国の従来の方針はできるだけパレスチナに対していかなる非難もしないこと」と指摘した。

◇ 「中国式『ゼロエナミー』政策、試験台にのせられた」

今回のイスラエル・パレスチナ事態でウクライナ戦争など国際紛争で一方的に片方を非難しない中国特有の「ゼロエナミー(中国の敵を作らない外交)」政策が試験台にのせられたという指摘が出ている。英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)のAhmed Aboudouh研究員は「中国外交部のこのような態度はイスラエル・パレスチナの間で危険を管理するヘッジ平衡を維持しようとする試み」とし「ただしイスラエルの反応を見ると北京が中東と一帯一路フレームの下で維持してきた『ゼロエナミー』政策が現実の検証を受けることになった」と独メディア「ドイチェ・ヴェレ(DW)」に語った。

一歩遅れて中国人被害を認めた中国はイスラエルの報復による人命被害を特に印象付けながら伝えた。中国新京報のSNSアカウント「政事児」は12日午前、ガザ地区で活動した国連要員11人がイスラエル軍の爆撃で亡くなったというコメントを爆撃映像と共に掲載したが、中国人死亡者には言及しなかった。

◇中国の中東特使「パレスチナ人道主義危機懸念」

中国はイスラエルの報復による被害を強調しながらパレスチナの被害を防ぐために国際社会が出なければならないと求めた。元フランス大使を歴任した中国の中東問題特使の翟雋氏は10日のエジプトに続き11日にパレスチナ第1外務次官と相次いで電話会談を行い、パレスチナに人道主義的支援を求めたと中国外交部が発表した。翟特使はエジプトのウサマ・パレスチナ担当外務次官補と10日の電話会談で「イスラエル・パレスチナ衝突が悪循環している原因はパレスチナ問題を依然として公正に解決することができないところにある」と指摘した。

翟特使は11日にパレスチナのアマル・ジャドー第1外務次官と話をして「罪のない民間人死傷が発生していることに対して深い遺憾を感じている」とし「パレスチナの安全と人道主義情勢の重大な悪化に深い懸念を表する」と話した。彼は「即時休戦と民間人保護が急務」とし「国際社会は実質的な役割を発揮して共に情勢の安定化を成し遂げ、パレスチナ人民に人道主義的援助を提供しなければならない」と求めた。

■「どうか娘だけは…」映像の中のハマス人質、中国北京生まれだった ハマスロシア人も殺害

イスラエルを攻撃したハマス武装隊員が拉致および殺害した民間人の中にはロシア・中国国籍者などもいることが明らかになった。

10日(現地時間)、ロシアのアナトーリ・ヴィクトロフ・イスラエル大使は自国国営放送とのインタビューで「不幸にもロシア人1人の死亡が確認されたという情報を伝える」とし「死亡した若い男性はロシアとイスラエルの二重国籍者で現地に常駐していたことが把握された」と話した。

ヴィクトロフ大使は7日、ハマスのイスラエル攻撃以降、連絡が途絶えたロシア人が9人になると付け加えた。ヴィクトロフ大使は「連絡が途絶えたロシア人のうち4人はイスラエル側の行方不明者名簿に入っている。彼らの所在を把握するためにイスラエル当局と連絡を取っている」と伝えた。

中国外交部も自国国籍者の行方不明、負傷に関連した事態把握に乗り出した状況だ。

中国外交部の汪文斌報道官は10日の会見を通じて「外交部は関連大使館・領事館に対して、全力を尽くして行方不明者を探して負傷者を助けるように指示をする一方、対外的には有効な措置を取って中国人と機関の安全を保障するように求めた」と明らかにした。

報道官は「けがをしたり拉致されたりした中国公民(国民)に関する新しい情報はあるか」という記者の質問には「現地の安全状況が時々刻々と変化していて関連情報は引き続き検証・把握中」と回答した。香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、現在行方不明の中国国籍者は4人、負傷者は3人であることが分かった。

特にハマス隊員にバイクで拉致される様子がソーシャルメディア(SNS)を通じて伝えられた25歳女性のノア・アルガマニさんも中国北京生まれのイスラエル人であることが分かった。アルガマニさんの父親は娘を拉致した人に言いたいことはないかと聞かれると、泣きながら「どうか、どうかこのようにお願いするから娘を傷付けないでくれ」と哀願した。ただしアルガマニさんが中国国籍を有しているかはまだ確認されていないとSCMPは伝えた。

ハマス側もロシア・中国国籍人を抑留中であることを認めた。これに先立ってハマス側報道官のアブ・ウバイダ氏は「イスラエル人捕虜の中に二重国籍者が数十人いて、その中にはロシア人や中国人もいる」と話した。

問題はハマス側が「イスラエルの新しい空襲が加えられるとイスラエル人質から1人が処刑される」としながら人質を盾にしているということだ。ネタニアフ首相は「ハマスは恐ろしいことを経験することになり、これは中東全体を変えることになるだろう」と報復を公言した状態だ。

英国エコノミストは「交渉を通じて人質を連れてくることになればハマスの前例ない侵攻に誤った先例を残すことになるので、救出作戦をしようとしても人質がどこにいるのか分からない状況」と指摘した。

この他にもハマスの攻撃で米国・カナダ・英国・フランス・タイ・ネパール・ドイツ・カンボジア・ブラジル・パラグアイ・メキシコ・アイルランド・タンザニア国籍者らが死亡あるいは行方不明になっていることが分かった。韓国人の場合、まだ届け出られた被害はない。

■中国、ハマスを擁護

パレスチナ武装政派ハマスのイスラエル奇襲攻撃に対し、中国が直接的な批判を拒否して中立の立場を繰り返すと、西側メディアの苦言が続いている。

外交専門誌ディプロマットは10日、「中国は完全な中立を維持しようと努力しているが、結果的にはハマスの肩を持つものとみられる」と指摘した。ディプロマットのシャノン・ティエッジ編集長は、「イスラエル・ハマスの戦争に対する中国の『歯の欠けた(Toothless)』対応」と題したコラムで、中国が各国の自制を求めて中立を表明しているが、ハマスの民間人攻撃に対する批判を拒否するのは事実上、この武装集団を保護しようとする試みに読まれる」と批判した。

シャノン氏は「中国は民間人を残忍に殺害したハマスの初期攻撃に対して糾弾することを完全に回避し、これを『テロ攻撃』に分類することも強く拒否した」と述べた。また、過去に西側諸国がウイグル人の抵抗をテロと呼ぶことを拒否した時、中国が発作的な反応を見せたことを例に挙げ、現在の中国の態度は矛盾していると指摘した。

政治専門誌ポリティコも12日、「中国はハマスをかばうことでいかなる批判を受けるといっても、大きな世界的な影響力を持つ道はパレスチナにあると判断したとみられる」とし、中国の中立的な態度を長期的な戦略の一部と解釈した。すなわち、中国が米国に代わるパートナーを探している中東だけでなく、アフリカやラテンアメリカなどパレスチナ解放運動に同調する国の好意を得ようとしているという分析だ。

外交専門誌フォーリン・ポリシーは、中国国営メディアのニュース報道の偏向性にも言及した。フォーリン・ポリシーは「中国国営メディアは不確実な政治的問題に対しては普段のように『米国のせいにする』ようなアプローチをとっている」と報じた。現在、中国国営メディアは中東地域に対するワシントンの「悪意的な」介入を最も強調している。

中国外務省は8日、イスラエルとパレスチナの双方に「落ち着き」と「自制」を求め、敵対行為の中止を促したが、具体的な批判や糾弾は控えた。中国は9日、外交部の定例ブリーフィングで民間人死傷者について言及したものの、主体を省略したまま原論的な立場だけを繰り返した。同日の声明に関連して、中国が最悪の逆風を避けるためにメッセージのバランスを取ろうと努力したが、結局は中国の仲裁者の地位を浮き彫りにすることにさらに集中しているという評価が出ている。

■イスラエル外交官の家族が中国で襲われる 中国当局一切公表せず

13日午後に北京で発生した中国駐在中のイスラエル外交官の家族の襲われた事件を捜査中の中国警察が逮捕した犯人を外国国籍としか明かしておらず、背後に何かあるのではないかと疑う声が高まっている。

北京警察はこの日、「13日午後2時(現地時間)ごろ、北京朝陽区左家荘のあるスーパーマーケットの前でイスラエル人外交官の家族(男性、50)が外国国籍の男に刃物で刺された」とし「犯罪容疑者はすでに警察に逮捕された。初期捜査の結果、該当の外国容疑者(53)は北京で小売経営に従事している。事件は現在追加調査中」と発表した。具体的な犯行動機や犯人の国籍などは一切公開しなかった。

この日の事件は在北京イスラエル大使館から3.5キロほど離れた比較的治安の安定している外交団地で発生した。事件直後、微博やX(旧ツイッター)に投稿された映像には白い上着を着た白人男性が歩道で被害者と激しくもみ合いながら、凶器で被害者の首の辺りなどを数回切りつける場面が映されている。事件現場が見下ろせる建物で撮影されたと見られる映像には被害者が安全なところに移動すると犯人が逃げる様子も含まれている。路上で撮影された別の映像には通行人や警察補助員(輔警)が被害者を助ける場面も見える。該当の映像には「私はイスラエル大使館から来た」という中国語、「救急車がすぐに来る」という別の英語の声も聞こえる。

在北京イスラエル大使館の報道官によると、この日午後に自国の大使館職員が刃物で攻撃を受けたが、病院で治療を受けて容態は安定しているとブルームバーグ通信が14日、伝えた。

中国官営メディアは警察の発表だけを報じた。これとは違って元「環球時報」編集長の胡錫進氏が13日午後、微博を更新して「最近パレスチナ・イスラエルの重大な衝突によって今回の事件を関連付けて考えることが自然だ」としながら「犯人が誰なのか、攻撃原因が同地域の情勢と関連しているのか、当局の追加詳細情報の提供を待つ」と綴った。だが、胡氏の書き込みはすぐに検閲によって削除された。中国当局は今回の事件に関連したSNS検索語の露出をさせないようにしている状態だ。

中国と違って海外ではパレスチナの武装組織ハマスが聖戦を訴えた当日に北京でテロが発生したことの関連性に注目している。イスラエル住在の論客・張平氏は「ハマスの指導者が金曜日に世界各地にジハード(聖戦)を訴えた後、現在までフランス北部で1件、北京で2件目の事例が発生した」とし「今回攻撃した犯人と背後にいる指示者を厳しく処罰しない場合、今後より多くの攻撃が中国で起きる可能性がある」と懸念した。

◇在中国米国大使館「日程を変更して繁華街では注意を」

在中国米国大使館は自国民に安全注意報を発令した。米国大使館はこの日午後、微博やXに「前職ハマス指導者が『怒りの日(day of rage)』と宣言した日に事件が発生した」とし「周期的な日程をすべて変更して、他人の注目を引くような行動を避け、繁華街を通る時には注意するように」など不測の事態に備えるよう求めた。

一方、北京全域ではものものしい警戒とあわせて検問・検索が始まった。17~18日に140カ国と30カ所余りの国際機構代表が出席する第3回一帯一路(陸・海上新シルクロード)国際協力首脳フォーラムを控えているためだ。15日午前、北京都心国貿CBDでは私服警察十人余りが警察犬を連れて道路で行進している様子が目撃された。幹線道路には10余メートル間隔で哨所が立てられたほか、バス停留所と陸橋にも万一の事態を備えて公安要員が警備に立つ姿が目撃された。大使館が密集する地下鉄亮馬橋駅の出入り口では小銃を所持した警察が通行人の身分証を検問していた。
2023.10.17 08:57 | 固定リンク | 戦争

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