シリコン量子ビット誤り修正を観測
2023.10.11
シリコン量子ビット誤り修正を観測 理化学研究所 東京工業大学

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループの樽茶 清悟 グループディレクター、量子システム理論研究チームのダニエル・ロス チームリーダー、東京工業大学 超スマート社会卓越教育院の米田 淳 特任准教授らの共同研究グループは、シリコン量子ビット[1]間に強い誤り相関[2]を観測しました。

本研究成果は、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータ[3]を実現する有力候補の一つである、シリコン量子コンピュータの将来設計と性能向上に大きく貢献することが期待されます。

大規模量子コンピュータで実用的な計算を行うには、量子ビットの誤りに対する耐性(訂正機能)が必要と考えられます。その際、量子ビット誤りの特性、とりわけ量子ビット間の誤り相関が、誤り耐性に大きく影響することが知られています。

今回、共同研究グループは、高密度集積の観点で有望なシリコン量子ビットを用い、量子ビット誤りをもたらす電子スピン[4]の位相回転速度のゆらぎ[5](時間的変動)を測定しました。このゆらぎの量子ビット間相関を評価することで、隣接するシリコン量子ビット間では誤り相関が強くなり得ることが分かりました。これは、シリコン基板に量子ビット列を高密度集積した際の量子誤り耐性、ひいてはシリコン量子コンピュータの将来設計に影響を及ぼす重要な知見です。

■誤り修正を観測

誤り耐性型汎用量子コンピュータは、あらゆる量子計算を実行できる量子コンピュータで、圧倒的な情報処理能力を持ち、社会に変革をもたらすと期待されています。特に従来の量子コンピュータとは異なり、量子ビットに生じる誤りに対して耐性(訂正機能)があるため、大規模集積化による情報処理能力の向上が可能です。

大規模な誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現する手法として注目されているのが、シリコン量子ドット[6]中の単一電子スピンを用いるシリコン量子ビットです。シリコン量子ビットは、現在の大規模集積回路技術との親和性が高く、大規模集積化に有利と考えられます。近年、その基本動作や特性の確認などを行う原理検証として、誤り耐性獲得に必要とされる、極めて高い精度での操作や量子非破壊測定[7]が示されるなど、目覚ましい進展が見られています。

今後の研究開発で集積化を推し進め、誤り耐性の獲得を目指すにあたり、量子ビットに生じる誤りの特性を理解しておく必要があります。シリコン量子ビットの誤りに関しては、主に単一の量子ビットを対象として、これまでに多くの詳細な測定がなされてきました。しかし、複数のシリコン量子ビットに生じる誤りの特性の評価は技術的に困難であり、とりわけ誤り耐性の獲得に大きな影響を与える量子ビット間の誤り相関に関して、精密な測定が待たれていました。

■研究手法と成果

共同研究グループは、高密度に集積されたシリコン量子ビット列において期待される誤りの特性を調べるため、100ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)程度離れたシリコン量子ビットのペアに対して、各量子ビットに誤りをもたらす、位相回転速度のゆらぎ(時間的変動)の同時測定を行いました。

シリコン量子デバイス中に隣接して電子スピンを二つ閉じ込め、金属電極(黄土色)に制御信号を与えることで、それぞれを量子ビットとして動作させた。これらの量子ビットのペアに対し、誤りをもたらす位相回転速度のゆらぎ(時間的変動)を同時に測定することで、量子ビット間の誤り相関を評価した。

このようにして同時測定されたゆらぎのデータを解析し、それらの間の相関の強さや位相関係を周波数ごとに評価しました(図2)。0.02Hz程度以下の低い周波数においては、量子ビット間に負の相関が観測された一方で、0.06Hz程度以上の周波数領域では、量子ビット間に正の相関が観測されました。1Hzにおけるゆらぎの量子ビット間相関の強さは0.7程度と、最大値1の70%に達しました。これらの結果から、100nm程度離れたシリコン量子ビット間では、強い誤り相関が観測され得ることが分かりました。

シリコン量子ビットに誤りをもたらす位相回転速度ゆらぎの、量子ビット間での相関の強さや、位相関係を周波数ごとに評価した結果。各データ点の色は、相関の位相を表す。低周波側では相関の位相が180°に近く、一方の量子ビットにおいて位相回転が速い場合には他方では遅いというような、負の相関が観測された。高周波側では相関の位相が0°に近くなっており、一方の量子ビットで位相が進んでいる場合には他方でも進んでおり、一方が遅れている場合には他方でも遅れているというような、正の相関が観測された。

さらに、量子ビット間に働くスピン交換相互作用[8]に観測されるゆらぎと、それぞれの量子ビットの位相回転速度のゆらぎの交差相関[9]に着目したところ、強い相関が観測されました。スピン交換相互作用は磁気的なノイズには鈍感であることから、そのゆらぎは電気的なノイズによってのみ生じると考えられます。従って、今回実験に用いたシリコン量子ビットに生じる誤りが、デバイス中の欠陥、不純物などに由来する電気的なノイズに支配されていることが、実験によって直接的に示されました。

■期待は

今回、シリコン量子ビットの隣接ペアに対して誤りをもたらすゆらぎを測定し、強い相関を観測しました。シリコン量子ビット間において誤り相関が強くなり得るという知見は、シリコン技術に立脚した誤り耐性型汎用量子コンピュータの将来設計と性能向上に大きく貢献すると考えられます。

また、本研究で確立した交差相関に基づくノイズ源の同定手法を用いることで、従来方法ではノイズ源の特定が困難な状況においてもノイズ源の特定が可能になり、より高品質な量子ビットデバイスの開発につながると期待されます。
2023.10.11 20:32 | 固定リンク | 化学
イスラエルの防空システム破りの主犯は、中国人民解放軍61398部隊か
2023.10.11
ハマスの進行を許した原因は、イスラエルがハマスの能力を過小評価し、ガザ地区への封鎖や分離フェンスで十分な防御ができると過信していたと思われる。さらにイスラエルはハマスのロケット弾攻撃に対して「鉄ドーム」ミサイル防衛システムで対処できると考えていたが、ハマスは大量かつ連続的にロケット弾を発射し、鉄ドームの限界を突いたのか。

イスラエルがハマスの越境攻撃に対して情報収集や警戒態勢に不備があった。イスラエルは中東で最も優秀な諜報機関を持っているとされるが、ハマスがガザ地区から数百人の戦闘員を送り込む計画を事前に察知できなかったか、あるいは対応できなかったのではないか。

一方、イスラエルがハマスの攻撃に対して迅速かつ効果的な反撃を行えなかったこともあり、イスラエルはガザ地区への空爆や地上戦でハマスのインフラや戦闘員を破壊しようとしたようだが、ハマスは市民やメディアなどを盾に抵抗し、それを攻撃すれば国際社会から非難される恐れもあったと言われる。

■イスラエルの集落で住民虐殺か 取材班が現地入り、焼け跡に遺体も

イスラム組織「ハマス」の攻撃を受けたイスラエル南部のキブツ(農業共同体)クファルアザに10日、CNNなど外国の取材班が入った。イスラエル軍によると、ここでは女性や幼児、高齢者らが虐殺された。焼け跡には住民やハマス戦闘員らの遺体が横たわっていた。

取材班を先導したイスラエル軍の部隊は、民家を1軒ずつ回って遺体を収容し、トラックに積み込んでいた。

ハマスは7日、イスラエル側の複数の集落に越境攻撃を仕掛けた。クファルアザもそのひとつだ。

軍将校はCNNに、ハマスは女性や子どもらを過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」のような手口で容赦なく虐殺したと語った。

軍は死者の数を確認できていない。殺害された状況など、詳細も今のところ不明だ。

クファルアザの民家は略奪されて放火され、地面には遺体とともに壊れた家具やマットレス、アクセサリー、不発弾が散乱していた。

軍将校はCNNとのインタビューで、「40年間のキャリアで見たことも、想像したこともない光景だ」と語った。

イスラエル軍はこの数時間前、クファルアザなどハマスが侵入した地域を制圧したばかりだった。同将校によれば、兵士らは丸2日、路上や周辺の集落で次々に襲い掛かるハマス戦闘員と戦い続けた。完全武装の戦闘員らはアパートや部屋を順に回って、寝室の乳児や父母らを殺害したという。

■音楽フェス会場に260人の遺体、ガザで人質にされた観客の映像拡散

ロケット弾の砲撃が始まったのは午前6時半ごろだった。イスラエルの音楽フェスティバル会場にいた数百人は、ガザ戦闘員の銃撃を受けて逃げ惑った。

この会場は、7日午前、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスによる一斉攻撃を受けた場所の一つだった。

イスラエル救助隊によると、フェスティバル会場では少なくとも260人の遺体が見つかった。観客の一部は人質に取られ、ガザから投稿された映像がSNSで拡散されている。

音楽フェスティバルに参加していたイスラエル人女性ノア・アルガマニさんと交際相手のアビナタン・オルさんも、武装集団に拉致された。

映像の中のアルガマニさんは、走り去るバイクの後ろに乗せられて助けを求めていた。近くにいたオルさんは数人の男たちにつかまり、後ろ手にしばられて歩かされていた。

家族や友人は、2人の居場所を突き止めて無事解放させるため、この映像が広く拡散することを望んでいる。

アルガマニさんの知人は、フェスティバル会場にいて行方が分からなくなった人を5~6人知っていると語った。

別の映像には、フェスティバル会場からガザに連れ去られた女性が意識を失った状態で映っていた。この女性はドイツとイスラエルの二重国籍をもつシャニ・ロークさんと判明。ロケット弾を手に持った男がロークさんの腰に足をかけ、別の男がロークさんの髪をつかんで、アラビア語で「神は偉大なり」と声を上げていた。

トラックの周りに集まった群衆からも声が上がり、1人の男はロークさんの頭につばを吐きかけた。

ロークさんの母はドイツのメディアの取材に対し、娘がツアーの一行と共にハマスに拉致され、意識を失った状態で車に乗せられた映像が送られてきたと訴えている。

■ハマスのイスラエル攻撃、外国人も犠牲に 「イスラム国」並みに野蛮で残酷と米高官が非難

パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム武装組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃で、外国人の犠牲者が相次ぎ報告されている。タイ外務省は9日、イスラエルでタイ人12人がハマスに殺害され、11人が連れ去られたと明らかにした。アメリカ政府も、イスラエルで少なくとも11人の自国民が死亡したと発表。その野蛮な残酷ぶりは武装勢力「イスラム国(IS)」に匹敵すると、ハマスを非難した。

7日朝、ガザ地区からイスラエルに向けてロケット弾が発射された。同時に、パレスチナ側の戦闘員が陸海空のルートに分かれて、一斉にイスラエル南部へ侵入。イスラエルはこれに空爆で応戦した。

タイ外務省によると、7日から続く暴力行為で、イスラエルにいるタイ人8人が負傷した。このほか、12人がハマスに殺害され、11人が連れ去られたという。

同省は、タイ市民を帰国させるための空軍機が待機していると明らかにした。

イスラエルでは、約3万人のタイ人が農業に従事している。その多くはガザとの境界付近で働いている。

ネパール政府も、イスラエルで自国民10人が死亡したと発表した。

このほか、アメリカやイギリス、ドイツなどが、イスラエルでの暴力行為で自国民が死亡したり、誘拐されたり、行方不明になっていると発表している。

イギリス政府筋は、イギリス人10人以上が死亡または行方不明になっている恐れがあると、BBCに話した。

インド政府は、イスラエルにいる自国民を帰国させるために「積極的に」取り組んでいるとしている。報道によると、イスラエルには約1万8000人のインド人が居住し、働いている。

イスラエルのタイ人労働者が巻き込まれる

タイのピパット・ラチャキットプラカーン労働相は、戦闘が起きている地域で約5000人のタイ人労働者が働いているが、イスラエル軍が安全な場所への労働者の移送を開始したと、AFP通信に述べた。また、労働者1099人が帰国を希望していると付け加えた。

ガザ地区に近いミヴタヒム町の農場で働く人々は、7日早朝にロケット弾が発射された後、ハマスの武装集団が農場を襲撃した時のことを語った。

「ハマスの武装集団はまずロケット弾を発射して、私たちの農場を襲撃した。私は走って自分の寝室に隠れなくてはならなかった」と、ウドムポーン・チャンパホムさんはBBCに話した。

チャンパホムさんはその後、イスラエル兵に助け出された。その時一緒にいた同僚のタイ人は、足に「瓶のふたほどの大きさ」の銃創を負ったが、回復しつつあるという。

別のタイ人労働者は、「走ってトラックの下に潜り込んだら、ハマス(の戦闘員)に引きずり出され、至近距離で銃を突き付けられた。(戦闘員は)地面に向けて発砲した」と、名前を伏せてBBCに語った。この労働者はその後、なんとか逃げ出したという。

イスラエルのアボカド農園で夫のアヌチャ・アンケオさんが2年近く働いているというワニダ・マールサさんは、夫も武装集団に捕らえられたと、BBCタイ語に話した。

ハマスが先週末に公開した動画には、アンケオさんが映っていた。「(動画の男性は)絶対に夫」だと、マールサさんは述べた。

そして、「バンコク時間の7日午前2時(イスラエル時間6日午後10時)以降、夫と連絡が取れていない。娘が寝る直前に、電話をかけたのが最後」だと付け加えた。

「イスラム国」に匹敵

アメリカのジョー・バイデン大統領は9日、ハマスによるイスラエルへの攻撃で少なくともアメリカ人11人が死亡したと明らかにした。

米国防総省高官は、ハマスによる前例のない攻撃について、「その野蛮な残酷ぶりは、ISに匹敵する」と非難した。

米当局は、殺害された人の身元は明らかにしていない。

バイデン大統領は、ハマスが人質として拘束している人の中に米市民が含まれている可能性は「高い」と述べた。

「非常につらい。許しがたい憎悪と暴力によって、家族が引き裂かれている」と、バイデン氏は声明で述べた。

さらに、アメリカはイスラエルによる人質発見を支援するため、専門家を派遣し、情報を共有しているとした。

国防総省高官は、防空と軍需品の支援を増やしているとしている。

行方不明者の中には、アメリカ系イスラエル人のハーシュ・ゴルバーグ=ポリンさん(23)も含まれる。武装集団に襲撃された、ガザ地区に近いイスラエル側の砂漠で開かれていた「スーパーノヴァ」音楽フェスティバルに参加していたという

ゴルバーグ=ポリンさんの両親は、イスラエル紙エルサレム・ポストに対し、息子から「愛している」と「ごめんね」という2つのメッセージを受け取ったと語った。

「息子に無事でいてほしい。ただそれだけだ」と、父親のジョナサン・ポリンさんは話した。

アメリカとイスラエルの二重国籍を持つイスラエル国防軍の兵士、イタイ・チェンさんは、7日から行方不明になっていると報じられている。

父親のルビー・チェンさんは米CNNに対し、息子を見つけるために国務省に助けを求めたが、アメリカは率先して捜索しようとはしていないようだと話した。

米オハイオ州シンシナティ出身で、イイスラエルで長く暮らしているハナ・カッツマンさんは、息子のハイムさんがガザ地区との境界に近いイスラエル南部のキブツ(農業共同体)で殺害されたと、フェイスブックに書いた。

イスラエル在住の米市民アビー・オンさんは米MSNBCに対し、親族5人が人質に取られたと語った。7日に親族から、ガザ地区に近い南部ニル・オズの自宅にハマスの戦闘員がいるというワッツアップ・メッセージが届いたという。

その後、インターネット上に投稿された動画に、親類の12歳男子が映っているのを見たという。

こうした中、カナダの国際関係省は、少なくとも1人のカナダ人が死亡し、2人が行方不明になっていると認めた。

音楽フェスティバルに参加していた、モントリオール在住のアレクサンドル・ルックさん(33)が死亡した。父親のハイムさんがCBCの取材で認めた。

「息子はごく普通のやり方で、日常のひとコマを楽しもうとしていた、普通の若者だった」

ネパール人学生10人が死亡

イスラエル国内では、50カ国以上の国民が働いていると考えられている。

ネパール政府は8日、イスラエルで農業を学ぶネパール人学生10人が死亡したことを認めた。

犠牲者の1人は、ネパール東部のマドゥワン村出身のラジェシュ・クマール・スワルナカルさん(27)。農学部の最終学年で、オーストラリアへ行くことを希望していたと、きょうだいのムケシュさんはBBCネパール語に語った。

スワルナカルさんを「イスラエルに送り出すことに、私は乗り気ではなかった」と、ムケシュさんは話した。「自分は奨学金をもらえたのだと彼は強調して、イスラエルでのプログラム終了後にオーストラリアへ行く手続きができるよう、お金を貯めるつもりだと言っていた」。

父親のラジ・クマール・スワルナカルさんは、紛争が起こりやすい地域での職業訓練に息子を送り込んだ、イスラエル当局の怠慢を感じているという。

ネパールによると、計265人の学生が、イスラエル国内の様々な農場で働いている。

同国のファーウェスタン大学の学生17人が、ガザ地区近郊でハマス戦闘員に襲撃された。10人が死亡し、4人が地元の病院で治療を受けている。2人はイスラエル・テルアヴィヴまで助け出されたが、1人が行方不明になっている。

在イスラエルのネパール大使館によると、200人以上の自国民が、帰国希望の書類に記入している。イスラエルでは農業従事者に加えて、4500人のネパール人が介護士として働いているとの報告がある。
2023.10.11 19:59 | 固定リンク | 戦争
習氏・米と関係改善「習主席プーチン見捨てた!」
2023.10.10
中露〝蜜月崩壊〟習主席がプーチン氏見捨てた!? 「ロシアの敗北は時間の問題」中国元大使が発言 インドの浮上で変わる世界の勢力図 習氏、関係改善に意欲 米議員団と会談

9日の「戦勝記念日」でウクライナ侵攻の成果を誇示できなかったロシアのウラジーミル・プーチン大統領。国際社会からの孤立と存在感の低下が避けられないなか、専門家は「中国の習近平国家主席がプーチン氏を見限る」との見方を示す。中国の元駐ウクライナ大使からは「ロシアの敗北は時間の問題」とする発言も飛び出した。戦況の泥沼化で疲弊する「プーチン帝国」は、没落への道を歩むしかないのか。

中国の高玉生元駐ウクライナ大使(74)が研究機関のシンポジウムで、ロシアのウクライナ侵攻を巡り「ロシアの敗北は時間の問題だ」などと発言した。

中国語ニュースサイトによると、高氏は背景としてソ連解体後のロシアの衰退があると指摘。今後も、プーチン大統領指導下での復興は不可能だとの認識も示した。

関連記事はその後、ネットから削除されたが、中国側のロシアに対する本音をうかがわせる。

ウクライナ侵攻前は、北京冬季五輪開会式にプーチン氏が出席し、習氏と首脳会談を開くなど中露の蜜月ぶりが目立った。侵攻当初も中国国営メディアが責任の所在を北大西洋条約機構(NATO)を拡大した米国に求めるなどロシア寄りの姿勢は明確だった。

ところが中国の秦剛駐米大使は先月18日、米誌ナショナル・インタレスト(電子版)への寄稿で、「中露は同盟ではない」「〝中露枢軸〟と騒ぐのは危険な誤解だ」との認識を示すなど距離を置き始めた。

中国の趙立堅報道官も記者会見でロシアの戦勝記念日について問われても、直接の評価を避けている。

ヘインズ米国家情報長官は10日、上院軍事委員会の公聴会で、ロシアがウクライナ侵攻で苦戦するのを見て、中国は台湾への軍事侵攻に「自信が持てずにいる」との分析を示した。

米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は7日、英紙フィナンシャル・タイムズのイベントで「プーチンの行為が米国と欧州の結束を強めた」ことに中国が落胆していると指摘。ロシアの残虐行為により「習氏は中国の威信にも傷が付きかねないと不安に感じている」との見方を示した。

「習氏はプーチン氏を見限るだろう」とみるのは、筑波大学名誉教授の中村逸郎氏だ。

「軍事作戦が失敗で終わる中で、端的に演説では勝利宣言ができず、『敗北宣言』に近い内容だった。盟友であるベラルーシのルカシェンコ大統領も欠席している。習氏はプーチン氏の外交手腕を認めていたが、今回のつまずきは大きい。2人の蜜月は『強制終了』するのではないか」との見方を示す。

中国の張漢暉駐露大使は5日、タス通信に対し、科学技術分野に関しては中露が協力を引き続き推進していくと述べた。だが、G20(20カ国・地域)でも孤立必至のロシアに中国が手を差し伸べるかは疑問だ。

中村氏は「これまでロシアが中国より『やや上』の関係だったが、今後は、天然ガスなど資源供給国に成り下がってしまうこともあるのではないか。ロシアからの人口流出が続く中、労働力でも中国に頼らざるを得ず、ロシア極東部は中国になかば実効支配される可能性もある」とみる。

ロシアの地位低下に伴って注視されるのは、「G20の中で中国とインドが発言力を増す可能性がある」(中村氏)ことだという。

インドは日本と米国、オーストラリアの戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の一角を占めるが、旧ソ連時代から武器の提供を受けてきた経緯もあり、対露制裁には及び腰だ。

こうした中、中国の王毅国務委員兼外相は3月末、インドのジャイシャンカル外相と会談し、関係改善を模索したと伝えられる。

中村氏は「中印関係もプーチンの対欧米の『重し』だったが、今はロシアが完全に孤立化した。中国も経済衰退や巨大経済圏構想『一帯一路』の戦略上もインドの重要性が増してくる。インドはクアッドの一員でもあり、中印両国の関係が重要になってくる」と指摘する。

冷戦時代から「非同盟」を貫いてきたインドは、西側諸国だけでなく、中国やロシアにとっても一筋縄ではいかない相手だ。

ロシアの失敗を機に世界の勢力図が塗り替えられようとしている。プーチン氏自身が大国ロシアの幕引きを速めてしまったようだ。

■習氏、関係改善に意欲 米議員団と会談 「米中が人類の運命決める」

中国の習近平国家主席は9日、訪中した超党派の米議員団と北京の人民大会堂で会談した際、米中関係について「世界で最も重要な2国間関係だ。中米両国がどのように付き合うかは人類の前途と運命を決める」と述べた。中国国営中央テレビが伝えた。

習氏は、新型コロナウイルス禍からの回復や気候変動対応といった世界規模の重要課題の解決には、米中両国の「協調と協力が必要だ」とも訴え、関係改善に意欲を表明した。11月の国際会議に合わせた習氏とバイデン米大統領との首脳会談に向け米中両国の調整が加速する可能性がある。

習氏と会談したのは米上院の民主党トップ、シューマー院内総務率いる超党派の議員団。習氏は、新興の大国が既存の大国に挑戦するという法則「トゥキディデスの罠(わな)」について「決して必然ではない」と強調。同時に「広い地球は中国、米国それぞれの発展、共同繁栄を完全に収容できる」と呼び掛けた。

中央テレビによると、シューマー氏は「中国と開放的で誠実、相互尊重の精神に基づいて対話や意思疎通を強化し、責任をもって両国関係を管理し、米中関係の安定的発展を促進したい」と表明。中国との2国間貿易や投資協力、気候変動対応などにおける協力の強化に期待を示した。
2023.10.10 08:44 | 固定リンク | 速報
燃料不要な「量子エンジン」新時代の幕開け
2023.10.09
OISTが燃料不要な「量子エンジン」の設計・製作に成功 エネルギー新時代の幕開けか

量子エンジンはどのような原理で動くのか。これまでに話題となった「熱を使わないエンジン」の開発史とともに紹介する

沖縄科学技術大学院大(OIST)とドイツの複数の大学による国際研究チームは、世界で初めて「量子力学の原理を用いたエンジン」の設計・製作に成功しました。

現在使われている熱機関(heat engine)は、熱をエネルギー源としています。熱源や燃料を装置外から取り込むものは外燃機関、装置内で生成した熱エネルギーを利用するものは内燃機関と呼ばれます。

18世紀半ばから19世紀に起こった産業革命では、石炭を利用した外燃機関である蒸気機関の開発で動力源が刷新され、社会構造が変わりました。その後、外燃機関は小型軽量化が難しいことから、自動車や飛行機などの輸送機関を中心にガソリンエンジンなどの内燃機関に取って代わられましたが、熱を動力に変換するという原理は同じでした。たとえば自動車のエンジンは、燃料と空気が混ざった気体に点火して熱膨張させ、シリンダー内の圧力を高めることでピストンを上下させ、それを動力として車輪を回転させます。

今回、OISTが開発した量子エンジンは、内燃機関と同様に圧力を発生させて動力を得ますが、熱を使わずにガス中の粒子の「量子的性質の変化」を利用しているといいます。研究成果は英科学総合誌「Nature」に先月27日付で掲載されました。

量子エンジンは、どのような原理で動くのでしょうか。最近話題となった「熱を使わないエンジン」の開発史とともに紹介しましょう。

■半永久的に動くとされ、世間を騒がせた「EMドライブ」

2000年代に入って「従来とは全く違う原理で動くエンジン」と話題になったものと言えば、イギリスの航空宇宙技術者のロジャー・ショーヤー氏が考案した「EMドライブ」です。

推進力を得るのに必要なのは「マイクロ波を密閉容器内で反射させること」のみ。つまり、既存のロケットエンジンのように推進剤を使わなくても推進力を得ることができます。マイクロ波は太陽光発電でも得られるため、装置が壊れない限り半永久的に動くと説明されていました。ただしショーヤー氏は、なぜ推進力を得られるのかの原理を十分に説明することはできませんでした。

もちろん、研究者たちは半信半疑どころか「眉唾もの」と見ていましたが、各国が追試をしたところ、10年に中国の西北工業大が2.5キロワットの電力を使用したシステムで720 ミリニュートンの推力を生み出すことに成功したと発表。さらに14年には米航空宇宙局(NASA)が中国チームと同じ装置を使って30〜50マイクロニュートンの推力を確認したと発表したことで世間は騒然としました。

けれど独ドレスデン工科大は18年に、EMドライブからわずか(4マイクロニュートン)な推力が観測されたものの、EMドライブでマイクロ波が発生しない状態にして実験装置のみを起動させても同じ推力が観測されたことから、EMドライブが生む推力と考えられてきたものは、地球の磁場と電源ケーブルの相互作用によって生じた力ではないかと結論づけました。

ドレスデン工科大ではその後も研究が続けられ、21年にはNASAの追試で発生した推力はエンジンの熱による装置の歪みによるものと考えられると発表しました。「高出力での追試がまだ行われていない」という声もありますが、「宇宙開発を促進する夢のエンジン」と期待されたEMドライブに対して実用化を信じる人は、今やほとんどいなくなりました。

■量子熱機関を模擬的に再現

一方、量子テクノロジーの進展とともに期待が高まっているのが、量子エンジンです。この分野で日本は世界を先導しています。

理化学研究所を中心とする国際研究チームは2020年、スピン量子ビットで量子熱機関を模擬的に再現することに成功しました。

通常のデジタル回路では「0か1か」で情報が保持されるのに対し、この研究で用いたスピン量子ビットは「0でありかつ1でもある」という量子重ね合わせの状態を任意の割合で組み合わせることで情報を表現します。

また、熱機関は、熱エネルギーから動力を生み出す「エンジン」と、その逆過程で動力を用いて高温部分から熱を奪う「冷凍機」に大別されます。研究チームによると、スピン量子ビットでは、エンジンと冷凍機の機能を高速で切り替えるなど、従来の古典熱機関では実現し得ない技術の開発につながると期待できるといいます。

この研究では、本来ならばスピン量子ビットを高温部分及び低温部分と選択的に相互作用させて量子熱機関を作るのですが、現代の技術では難しいため、代わりにエネルギー差が大きい、あるいは小さいスピン状態と磁気共鳴により相互作用するようなマイクロ波をスピン量子ビットに照射しました。つまり、エンジンと冷凍機の間に量子干渉効果が現れるかに主眼を置きました。

その結果、ゆっくりとした方形波変調(0.05MHz)の下では現れなかった、複雑な干渉パターンが速やかな方形波変調(2MHz)の下で観察されました。これは、模擬的な量子熱機関の成功を示唆する「量子重ね合わせ」が現れたためと解釈できました。

今回のOISTの研究チームは、極低温下の条件のもと実験室内で動作する超小型の量子エンジンを製作して概念実証を行いました。

自然界に存在する粒子は、量子的性質に基づいて、フェルミオン(フェルミ粒子)かボソン(ボース粒子)のどちらかに分類されます。フェルミオンに属する粒子には、電子や陽子、中性子があります。一方、ボソンに属する粒子には光子や質量を担うヒッグス粒子、湯川秀樹博士に予言された中間子などがあります。

絶対零度に近い極低温の世界では、粒子は量子力学的な効果が重要となります。ボソンはフェルミオンよりも低いエネルギー状態にあり、両者のエネルギー差をエンジンの動力に利用することができます。つまり、ボソンをフェルミオンに変化させ、また元に戻すことが、量子エンジンの動力になります。

ボソンとフェルミオンの違いは、スピン角運動量がディラック定数の整数倍か半整数倍かです。なので、フェルミオンをボソンに変えるには、2つのフェルミオンを組み合わせて分子にします。この新しい分子はディラック定数の整数倍のスピン角運動量なので、ボソンになります。

研究を主導したOISTのトーマス・ブッシュ教授は、新しくできた分子を分解することで、フェルミオンを再び取り出すことができて、これを繰り返し行うことで熱を使わずにエンジンを動かせると説明します。さらに、ドイツの共同研究チームが構築した現在の実験の設定では、エンジンの効率を最大25%高められることが分かったといいます。

■動力源の概念を抜本的に変える可能性

もっとも、今後、自動車などに使える実用的な量子エンジンを作るためには、いくつかのステップを乗り越えなければなりません。たとえば、量子エンジンはフェルミオンとボソンのエネルギー差を用いるため、極低温状態を保たなければなりません。冷却のためには、かなりのエネルギーが必要となります。それでも、実用化されれば、動力源の概念を抜本的に変えてエネルギー革命を起こす可能性があります。

研究チームは、今後、基礎的な研究を進めて性能を高めたり、バッテリーやセンサーなど、他の機器への応用の可能性について調査したりする予定だといいます。

SFやファンタジー小説には「スチームパンク」と呼ばれる、イギリスのヴィクトリア朝やエドワード朝の雰囲気をモチーフとして蒸気機関が動力のベースとなっている世界観が1ジャンルとして認知されています。日本の作品では、映画「ハウルの動く城」やゲーム「ファイナルファンタジーⅥ」が代表例です。

今、学問の世界では、量子エンジンのような19世紀の熱力学と現代の量子論を融合した研究分野に対して「量子スチームパンク」という言葉が浸透しつつあります。小説や映画の題材になる日も近いかもしれません。
2023.10.09 11:46 | 固定リンク | 化学
ウクライナの特殊部隊、クリミア上陸
2023.10.09
ノーベル平和賞モハンマディ氏「刑務所で最も光栄に満ちた日だった」…獄中から父親に電話報告

ウクライナ国防省情報総局のユソフ報道官は、南部クリミア半島にウクライナの特殊作戦部隊が上陸し、ロシア軍を攻撃した上で撤収したと明らかにした。ウクライナメディア「ウクラインスカ・プラウダ」が4日伝えた。クリミアは2014年にロシアが併合しており、ゼレンスキー大統領は奪還への決意を繰り返し表明している。

上陸したとする日時など詳細は不明。情報総局は、数隻の小型ボートが岸に近づき、上陸した複数の兵士がウクライナ国旗を掲げる動画を公開した。ユソフ氏は「多くのロシア兵が死傷した。ウクライナ兵にも犠牲が出たが、ロシア側ほど多くはない」と説明している。

一方、タス通信によると、ロシア連邦保安局(FSB)は、ウクライナ軍によるクリミア侵入を阻止して部隊の1人を拘束したと発表した。

ゼレンスキー氏は、東部と南部の4州とともに、クリミアも「占領から脱する」と強調するなど、クリミア奪還を譲れない目標に掲げる。

クリミア攻撃には無人機(ドローン)のほか、英国がフランスと共同開発した射程250キロ超の巡航ミサイル「ストームシャドー」(フランス名スカルプ)やウクライナ国産の巡航ミサイル「ネプチューン」を使用しているとの分析がある。米政権が供与すると報じられた射程約300キロのミサイル「ATACMS(エータクムス)」も使用する意向とみられる。

ただ、ウクライナでは兵器の不足も指摘されており、西側の支援がどこまで継続するかも焦点となっている。

■ウクライナ侵攻「終わりが見えてきた」 プーチン氏に、本当は肝が小さく・・・

島根県大田市長久町出身で、ロシア政治が専門の中村逸郎筑波大名誉教授(66)が16日、大田市内でロシアのウクライナ軍事侵攻について講演した。故郷を失い子どもが歩いて国外に避難するなどウクライナの人々が苦しむ実情を伝えたほか、プーチン大統領が戦争に突き進んだ背景を解説した。

中村氏はウクライナの人口の40%に当たる1650万人が出国した現状とともに、家族を失った5歳児が隣国ポーランドまでの約400キロを歩いている様子を動画で紹介。「そこに住んでいる人がいる」と述べ、戦況やどのようにウクライナが反転攻勢をするのかだけに注目するのではなく、戦禍で苦しむ人々を思い続ける心の重要性を訴えた。

戦争の発端は、プーチン大統領の個人的な死生観が引き起こしたのではないかと推測。本当は肝が小さく、自分を大きく見せようとした結果だと語った。

ロシアでは9月に統一地方選、来年3月に大統領選が控えており、クーデターの可能性にも言及。長引く戦争について「終わりが見えてきた」とも発言した。

軍事侵攻後、中村氏はかつて自身が住んだロシアから入国を禁止され「正直、最初はショックだった」と明かした。

■領土一部奪還でロシア軍増援阻止 英分析、ウクライナ反攻

英国防省は8日、反転攻勢を進めるウクライナ軍が今夏に東部ドネツク州の激戦地ウグレダルの周辺で少なくとも125平方キロの領土を奪還したと分析した。ウクライナ軍はこの作戦でロシア軍部隊を引き付け、ロシア側が他地域に増援することを阻止したとしている。

ただ、ロシア軍はウクライナ側のさらなる攻勢に備えて防御態勢を維持するとみられ、今後1カ月半の間に大規模な撤退が起きる可能性は低いとした。

ウクライナ空軍のイグナット報道官は8日、ロシア軍が秋から冬にかけてエネルギー施設を狙った大規模な無人機攻撃を準備していると述べた。地元メディアが伝えた。

■ノーベル平和賞モハンマディ氏「刑務所で最も光栄に満ちた日だった」…獄中から父親に電話報告

今年のノーベル平和賞受賞が決まったイラン人ジャーナリストで人権活動家のナルゲス・モハンマディ氏(51)=写真、AP=の公式SNSは7日、同氏が収監されている刑務所で、受賞決定の報に接した際の様子を伝えた。モハンマディ氏が同日、獄中から父親に電話で報告した内容で、「ナルゲス・モハンマディの家族」と署名されている。

投稿によると、モハンマディ氏は受賞について、「私たち全員にとって、刑務所で最も光栄に満ちた日だった」と語った。受賞決定後、初めての本人の喜びの声だ。

モハンマディ氏は首都テヘランにあるエビン刑務所の女子房に収監されているという。授賞発表当日の金曜日は外部との電話が禁じられ、一報は男子房から女子房に漏れ伝わった。

女子房では午後8時30分のニュース番組を視聴でき、否定的に論じるイランのニュースを見て、受賞を確信したという。受刑者たちは手をとって輪を作り、歌いながら昨年のヘジャブ抗議デモのスローガンにもなった「女性、命、自由」を連呼した。泣き出す受刑者もいたという。
2023.10.09 10:20 | 固定リンク | 戦争

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