中国住宅価格規制・撤廃で「大暴落か」
2023.10.08
ロイター中国の住宅価格規制、撤廃で底値確認必要 住宅ローン金利下限引き下げ・撤廃

中国の不動産会社は資金難と販売難の双方に見舞われて経営存続に四苦八苦している。ではなぜ、物件を値下げして手元に残る大量の在庫を売り切らないのだろうか。それはやりたくてもできないからだ。2016年に起きた前回の不動産危機後に、住宅価格の一方的な動きを抑えるための規制が導入された。こうした措置がなお残り、中国経済の回復を妨げる要素になっている。

不動産価格の安定を実現させる上で役立ったのは、地方政府が設定した「ガイダンス」だった。そのおかげで、恒大集団(3333.HK)や碧桂園(2007.HK)といった業界最大手クラスの不動産会社が債務再編に苦闘する中でも、主要70都市の新築住宅の平均価格は1年余りにわたって毎月の変動率が2%程度にとどまった。

しかしこのような規制が価格の歪みを覆い隠した。市場が強気ムードに包まれていた局面では、主要都市の上限価格は、人々が喜んで支払おうとした価格よりもずっと低かった。そこで物件募集が始まると多数の買い手が殺到し、運良く住戸を手に入れられた向きは、供給が限られる中古市場で転売して相当な利益を得ることができた。

価格急落は需要を喚起する半面、政府はその大きな副作用に立ち向かう必要が出てくる。現在の住宅所有者は、自宅の価値が見る見る目減りしていくのを喜ばしくは思わないだろう。何しろ中国では持ち家率が2020年までに90%まで高まり、家計資産に占める不動産の割合は7割に達する。実体経済が低調な中で、歪んだ住宅価格の修正がどのように落ち着くか見通せない面もある。それでも市場の底値を見つけだすことこそが、不動産市場復活にとって重要ではないかと思われる。

●背景となるニュース

*財新が12日伝えたところでは、広州市は新築住宅プロジェクトの価格上限を撤廃した。不動産会社は引き続き当局に予定販売価格を知らせる必要はあるが、当局側はもはや価格の「ガイダンス」は提示しないという。

*価格上限は、中央政府が住宅不動産価格の安定化を呼号した2016年以降、多くの都市で導入された。

■南京市でも

中国南京市、住宅購入制限を撤廃 大都市で初

江蘇省南京市は中国の大都市として初めて住宅購入規制を全廃した。中国当局は不動産不況に歯止めをかけようと相次ぎ対策を打ち出している。

ロイターは先週、北京、上海、深センなどの都市が住宅関連規制を緩和する可能性について報じていた。 もっと見る

中国の10大都市の一つである南京は7日、4つの地区で購入要件を満たしたと証明しなくてもアパートを購入できるようにすると発表。これで全ての住宅購入制限が解除された。

易居研究院智庫センターのアナリスト、厳躍進氏は他の都市も追随する可能性が高いと指摘した。

南京市はまた、商業用不動産向けローンについて、1軒目の住宅購入額に占める頭金の最高比率を30%から20%に引き下げた。国営中央テレビ(CCTV)が7日報じた。他の大都市で同比率は30─35%となっている。

■住宅ローン金利下限引き下げも

中国、住宅ローン金利下限引き下げ・撤廃の動き広がる

中国の上海易居(イーハウス)房地産研究院は2日公表の報告書で、国内の多くの都市が過去数週間で相次ぎ、初回の住宅購入者向けに住宅ローン金利の下限を引き下げるか撤廃したと指摘した。当局が住宅需要喚起のために規制を緩和したことを受けた。

中国人民銀行(中央銀行)は先月、新築住宅価格が前月比と前年比で3カ月連続で低下した都市について、初回購入者向けの住宅ローン金利の下限を段階的に引き下げるか廃止することを認めると発表。

イーハウスの報告書によると、天津のようなや大都市や鄭州、福州など一部の省都を含む少なくとも26都市がこのような措置を取った。

同国の不動産部門は政府の一連の支援策や昨年12月の新型コロナウイルス規制の解除を受け、回復の兆しが見えている。しかし、需要が弱いままで、本格回復とはなっていない。

民間不動産調査大手、中国指数研究院(チャイナ・インデックス・アカデミー)が1日公表したデータによると、先月の住宅販売(床面積ベース)は前年比約20%減となった。

ムーディーズのシニアアナリスト、ケリー・チェン氏はリサーチノートで、「今後数カ月で需要喚起のための追加支援が行われる可能性が高く、そのタイミングと効果が販売成約の回復軌道を決定づけるだろう」と分析した。

■不動産市場の落ち込み加速

中国不動産市場の落ち込み加速、景気回復見通しに影

中国不動産セクターは8月も不振が続いた。このところの支援策にもかかわらず、新築住宅価格、不動産投資、販売が一段と落ち込み、経済に圧力をかけている。

中国国家統計局が15日発表したデータによると、8月の新築住宅価格は過去10カ月で最も大幅な下落となった。

統計局のデータを基にロイターが算出した新築住宅価格は前月比0.3%下落。前年比でも0.1%下落した。

7月は前月比0.2%、前年比0.1%、それぞれ下落していた。

8月の不動産投資は前年比19.1%減少。7月は17.8%減だった。減少は1年6カ月連続。データに基づくロイターの算出によると、住宅販売は2年2カ月連続で減少した。

中国はここ数週間、借り入れ規則の緩和や一部都市での住宅購入規制緩和などの支援策を打ち出してきた。

北京など主要都市では新築住宅販売の押し上げにつながっているが、効果が持続しないとの見方や、中小都市の需要を枯渇させる可能性があるとの懸念も浮上している。

オックスフォード・エコノミクスの中国担当エコノミスト、ルイーズ・ルー氏は「われわれは依然として今後数カ月で住宅販売がやや持ち直すと期待しているが、景気刺激策は結局、このセクターをリフレにするには至らないだろう」と語った。

中国人民銀行(中央銀行)は14日、銀行預金準備率(RRR)を0.25%引き下げると発表した。RRR引き下げは今年2回目。 もっと見る

野村は15日のリサーチノートで「短期的に、より重大なリスクは一部の不動産開発業者と金融機関から生じることから、小幅なRRR引き下げはほとんど支援にならないだろう」と指摘。

当局は住宅取引の制限をほぼ全て撤廃し、都市再生計画への投資を増やし、インフラ支出を加速させ、地方政府の債務を再編する可能性があると述べた。

■住宅購入規制を撤廃 大連など主要3都市

中国遼寧省の大連市など複数都市が相次いで住宅購入規制を撤廃している。

大連市と瀋陽市は市内の大半の地域を対象に購入物件の数を制限しないと発表。江蘇省の南京市は市内4地区について、資格証明なしで物件購入が可能になると明らかにした。

中国当局は、不動産セクターを下支えするため、住宅ローン金利の引き下げなど全国的な支援策を打ち出している。

不動産セクターは国内経済の約4分の1を占めるが負債が膨らんでいる。
2023.10.08 08:36 | 固定リンク | 経済
FSB・鈴木宗男氏「不利な停戦案」プーチン激怒!
2023.10.06
維新、FSB鈴木宗男氏「除名」を検討 ロシア「勝利」期待発言が問題に

日本維新の会が、党に無断でウクライナを侵略中のロシアを訪問した国会議員団副代表の鈴木宗男参院議員の処分をめぐり、「除名」も検討していることが6日、分かった。同日の国会議員団の党紀委員会で出た意見や鈴木氏の主張などを踏まえ、持ち回りの党常任役員会を開いた上で10日に最終判断する方針だ。党内では無断の訪露にとどまらず、露メディアの動画でロシアの勝利を期待するとの趣旨の発言をしていたことが問題視されているという。

鈴木氏は国会内で、記者団に対して動画は切り取られたものだと主張した。一方、「私はロシアが勝つと思っている。皆さん、ウクライナが勝つと思うか? 政治経験のない人たちはどうしても印象論や感情論で判断する」と持論を展開。「政治家としての信念を持って、ぶれずに発言・行動していけば分かってくれる」とも訴えた。

藤田文武幹事長は6日の記者会見で、動画に関して「映像を取り寄せて精査する」と説明した。その上で「非常に厳しい対応をせざるを得なくなるかなと思う。だからこそしっかりとした手続き論と論理的正当性を担保する方針だ」と語った。

鈴木氏は党が海外渡航のルールとして定めていた申請書を事前に出さないまま、日本を1日に出発してロシアに向かった。届け出は2日だった。鈴木氏はロシア滞在中、ルデンコ外務次官らと会談し、5日に帰国していた。

当初は無断訪露以外の責任を問うことは難しいと目されていた。しかし、インターネット上で動画が拡散されたこともあり、「党員資格停止や除名なども検討すべきだ」(関係者)との声が高まった。吉村洋文共同代表(大阪府知事)も6日、鈴木氏への「厳しい処分」を求めた。

■訪露批判に反論「こんな時だから対話必要」

日本維新の会の鈴木宗男参院議員は3日夜、自身のフェイスブックを更新し、政府が、ウクライナに軍事侵攻したロシアへの渡航中止勧告を出す中でロシアに単独で渡航し、批判を浴びていることについて反論した。

「私のモスクワ訪問について日本国内ではいろいろな発言があるようだが、私は国益の観点から日露関係の重要性を誰よりも考えてきた政治家と自負しており、特にこんな時だからこそ対話が必要と考えている」と持論を展開した。

鈴木氏はロシア外務省で日本担当のルデンコ外務次官らとの面会を重ねており、5日に帰国する。

維新は鈴木氏が海外渡航前に党側に渡航届け出をしていなかったことから、帰国後の処分を検討している。

■処分受け入れる意向

露から帰国の鈴木宗男議員 日本維新の会代表らと会談 手続き経ず渡航したことにつき処分受け入れる意向

訪問先のロシアから帰国した鈴木宗男参議院議員が日本維新の会の馬場代表らと会談し党内の手続きを経ずに渡航したことについて処分を受け入れる意向を示しました。

鈴木宗男参議院議員)
「党としては手続きの問題は問えますが「行く」「行かない」その評価については党としては言及しませんという話でした」。

鈴木宗男参議院議員は今月1日から、日本政府が渡航中止を求めているロシアを訪れました。ロシアでは政府高官らと会談し北方墓参の再開などを求めたということです。
鈴木議員は日本維新の会が海外渡航の際に求める党への届けを出さず、党幹部は処分を検討していました。5日に帰国した鈴木議員は党の馬場代表らと会談し、処分を受け入れる意向を示しました。
鈴木議員は「出発の2日前にセミナーがあり秘書の手が回らなかった」と説明しています。

鈴木宗男参議院議員)

「29日金曜日の私の会合も大きな会合ですから、ウチの秘書もてんてこ舞い。維新の事務局も夕方にはいないわけですから、だから月曜日の9時に持っていっているのか、朝一番で持っていっているんです。
郵便で出しておけばよかったと思ってるんですが」。
日本維新の会は6日に役員会を開催し、鈴木議員への処分の内容を検討するということです。

■「ロシアの勝利信じる」と現地で発言

今月1~5日の日程でロシアを訪問した日本維新の会の鈴木宗男参院議員が、「ロシアの勝利、ウクライナに対して屈することがない」などと現地で発言していたことがわかった。維新は6日の役員会で、除名を含む重い処分とする方針を固め、馬場伸幸代表らに一任した。

ロシア国営通信社「スプートニク」が4日未明、鈴木氏のインタビュー動画を配信した。この動画で、鈴木氏は「特別軍事作戦が継続されているが、ロシアの勝利、ロシアがウクライナに対して屈することがない。ここは何の懸念もなく、100%確信を持って、私はロシアの未来、ロシアの明日を私は信じており、理解をしている」と発言している。

 スプートニクの報道によると、同社の読者へのビデオメッセージとして、動画が撮影されたという。
2023.10.06 22:44 | 固定リンク | 速報
株価・なぜこんなに下がるのか?
2023.10.06
株価急落は投資家のリバランス、正反対の動きに転じる時を待て

足元、東京株式市場は波乱の様相を呈しています。とくに9月28日の3月期決算企業中間配当落ち日以降、「なぜこんなに下がるのか?」と多くの投資家が感じるほどの急な下げです。

10月2日は買い先行で始まり、日経平均は一時500円超上昇したものの、後場に入り急に売られ、大引けでは97円安となりました。その幅はなんと約600円でした。特筆すべきは、とくに売られる材料が見当たらなかったことです。

この動きの背景には「機関投資家によるリバランス売り(調整/銘柄入れ替え)」があると考えられます。機関投資家は保有している銘柄の中で、含み益が出ている銘柄を売るときがあります。年金資金などについては決められた株式保有比率を(株価の値上がりによって)超えると、超過分を売ることになります。

これらの売りは株式市場や個別銘柄の先行きを考えたうえで実行するものではなく、それぞれの運用方針を維持するための調整です(それを株式市場では「リバランス」と表現します)。いわば問答無用で出てくる売りで、当然のように株式市場の上値は強く抑えられ、その様子を見て他の投資家も含み益が出ている銘柄を売る動きに傾きます(追随売り)。

今年9月以降、大きく上昇していた「日本郵船(9101)」などの海運株、「日本製鉄(5401)」などの鉄鋼株、さらには「日立製作所(6501)」、「三菱重工業(7011)」など大型バリュー株が値を崩しているのはそのためです。

ただ、機関投資家によるリバランス売りはあくまでも「運用の都合」によるものです。それによって株式市場内の需給関係が歪み株価が下げたのです。保有銘柄を整理した後、再び買いに動くことは十分に想定されています。

過去においても、リバランス売りによって株価のトレンドが変化した例は思い当たりません。リバランスは保有銘柄調整/入れ替えであり、売り切りというわけではないのです。少しの時間が経過すると、今度は「なぜ反発するのかよくわからない」という、これまでとは正反対のときが到来するでしょう。

この夏低迷していた「アドバンテスト(6857)」、「レーザーテック(6920)」、「ディスコ(6146)」などの半導体製造装置関連株が底打ち気配を見せていることからも、やはり上げていた銘柄が売られていることがわかります。足元の波乱は、どのみち安値買いのチャンスとなる公算です。日経平均の動きを凝視しましょう。
2023.10.06 22:37 | 固定リンク | 経済
プーチン「戦争終結日本に依頼」
2023.10.06
「制裁解除について日本と対話する用意がある」プーチン大統領 ソチで開かれた国際会議で発言

ロシアのプーチン大統領は南部ソチで開かれた国際会議で、日本との関係正常化について「対話する用意はあるが、日本側がイニシアチブを取る必要がある」などと主張しました。

ロシア・プーチン大統領

「ウクライナでのいわゆる戦争を始めたのは我々ではないと私は何度も述べてきた。逆に我々は終わらせようとしている」

プーチン大統領は5日、国内外のロシア専門家を集めて毎年開かれるバルダイ会議で演説し、ウクライナ侵攻をめぐり「ロシアは2014年からウクライナ東部のドンバスで続く紛争を終わらせるために特別軍事作戦を開始した」と改めて持論を展開しました。

「さらなる領土に興味はない」とも述べ、領土拡大のための戦争ではないと主張しました。

プーチン氏は、「射程が数千キロに及ぶ原子力推進式巡航ミサイル『ブレベスニク』の発射実験に初めて成功した」と述べ、「ロシアがもし核攻撃を受ければ敵に生き残る可能性はない」と威嚇しました。

さらに、「だれもロシアの言うことに耳を貸そうとせず、西側諸国の傲慢さは完全に常軌を逸していた」などと冷戦終結以降の西側諸国のロシアへの対応を批判しました。

ウクライナへの侵攻が長期化するなか、プーチン政権は、戦争が西側に起因するものだとするイメージを国民にアピールしています。

また、日本との関係をめぐってプーチン氏は、「我々が日本に制裁を科したわけではなく、窓を閉ざしたのは日本だ」と主張しました。

そのうえで、「制裁解除についてロシアは日本と対話する用意があるが、そのためには日本側がイニシアチブを取る必要がある」などと述べました。

■原子力ミサイル実験成功 プーチン大統領、米国けん制

ロシアのプーチン大統領は5日、南部ソチで開かれた国際討論フォーラム「ワルダイ会議」で、核弾頭を搭載できる原子力推進式巡航ミサイル「ブレベスニク」の実験に成功したとし、開発がほぼ完了したと述べた。多弾頭の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」も近く本格生産に入るとしたほか、核実験の再開も示唆し、米国をけん制した。

日ロ関係について、ウクライナ侵攻後に日本が対ロ制裁を科し「扉を閉ざした」と指摘。「日本が対話する時期だと考えるなら、応じる準備がある」と述べた。笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員の質問に答えた。

プーチン氏は、ロシア国内で核実験の再開を求める声があるとし、ロシアが批准し、米国は批准していない包括的核実験禁止条約(CTBT)の「批准撤回は可能だ」と語った。核を報復にのみ使用できるとするロシアの軍事ドクトリンは「変更不要」とも述べた。

ブレベスニクは、プーチン氏が18年の演説で開発中だと公表した新型兵器。

■ウクライナ東部ハルキウにミサイル攻撃 51人死亡

ウクライナ政府は、東部ハルキウ州でロシア軍の攻撃により51人が死亡したと明らかにしました。

 ウクライナ東部ハルキウ州の村で5日午後1時ごろ、ロシア軍の短距離弾道ミサイルがカフェと食料品店に着弾しました。

 この攻撃で6歳の少年を含む51人が死亡し、少なくとも6人がけがをしたということです。

 ウクライナへの侵攻が始まって以降、民間人の犠牲者が最も多かった攻撃だとみられています。

 地元メディアは当時、カフェにはおよそ60人が集まり追悼式を兼ねた会食をしていたと伝えています。

 ゼレンスキー大統領は今回の攻撃について、「完全に意図的なテロ行為だ」と非難しています。
2023.10.06 08:56 | 固定リンク | 戦争
ノーベル賞次々決まる
2023.10.05
■ノーベル生理学医学賞 カタリン・カリコ博士「考えてもみなかった」

新型コロナウイルスのワクチン開発への貢献で、ノーベル生理学医学賞に選ばれたカタリン・カリコ博士が喜びを語りました。

「大切にしていることは、役立つものを作るということです。ですから、ノーベル賞の受賞は考えてもみなかったことです」(カタリン・カリコ博士)

 ビオンテック社の上級副社長を務めるカリコ博士(68)は、ペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン教授(64)とともに、新型コロナで用いられたmRNA(メッセンジャー・アールエヌエー)ワクチンの開発に貢献しました。

 受賞決定を受け、カリコ博士は会見で「賞や単なる製品開発のためだけに研究しているわけではない」と述べ、ノーベル賞に繋がったことへの喜びと驚きを口にしました。

 カリコ博士はまた「自分がやっていることを楽しめないなら、やるべきではない。でも問題解決が好きなら、科学が向いている」と若い研究者にエールを送りました。

■欧米3氏にノーベル物理学賞 一瞬「アト秒」の光使う新手法

スウェーデンの王立科学アカデミーは3日、2023年のノーベル物理学賞を、「アト秒」(アトは100京分の1)というごく一瞬だけ光るレーザーを使って物質中の電子の動きを捉える手法を開発した欧米の3氏に授与すると発表した。カメラのフラッシュに相当する技術で、電子の動きのように素早くて観測が非常に難しい現象の研究に新たな手段をもたらした。

受賞が決まったのは、米オハイオ州立大のピエール・アゴスティーニ名誉教授、ドイツのミュンヘン大のフェレンツ・クラウス教授、スウェーデンのルンド大学のアンヌ・リュイリエ教授。

半導体の開発などさまざまな材料の性質を知るためには内部の電子の動きを調べることが重要だが、動きが非常に速く捉えることが難しい。極めて短い時間だけ光を当てる技術が求められる。

リュイリエ氏は1980年代後半、強力なレーザー光を希ガスに通すと波長の極めて短い光が発生する現象を発見。アゴスティーニ氏とクラウス氏は、光が当たる時間をアト秒単位まで短くできると証明した。

「電子の世界への扉開いた」 ノーベル物理学賞 医療への応用も期待

アト(100京分の1、京は1兆の1万倍)秒というごく短い時間に変化する電子の動きを追う実験方法の開発に貢献。「電子の世界への扉を開いた」と評価された。

アト秒という短い時間に、原子や電子のように超高速で動くものを観察する場合、レーザー光をストロボのように何度も瞬間的に当てて、見かけ上は静止させる必要がある。

電子はアト秒よりも短い時間に変化しているため、極めて短い時間でレーザー光を光らせる「光パルス」が必要になる。

リュイリエさんは1987年、赤外線レーザー光を希ガスに通すと極端に波長が短い光が出ることを発見した。01年には、アゴスティーニさんが250アト秒の光パルスを、クラウスさんは650アト秒の光パルスを、それぞれ実験で作り出した。

これにより、3人はアト秒光パルスを発生させる方法の確立に貢献し、電子の動きを捉えることを可能にした。アト秒分野の物理学は電子による物理現象の理解につながり、医療分野への応用も期待されるという。

アト秒物理学を研究する新倉弘倫(ひろみち)・早稲田大教授は「3人はアト秒物理学という新分野を開拓した。多くの研究者や企業が研究を進め、イノベーションにつながることを期待したい」と話した。

素早く動くものを見るためには変化の一瞬を切り取る必要がある。ルイエ氏は1987年、赤外レーザー光を貴ガスに通すと、ガスの原子との相互作用により光の波が変化することを発見。アゴスティーニ氏は2001年、持続時間250アト秒の光パルスを連続して作り出すことに成功した。同じ頃、クラウス氏は独自に同650アト秒の光パルスを単離した。

3氏の貢献により、アト秒レーザーで以前は追跡できなかった原子や分子レベルの非常に速い物理過程を観察できるようになり、エレクトロニクスや医療診断に応用が期待される。日本でも東京大学や理化学研究所でアト秒レーザーの開発を進めている。

受賞理由となった「アト秒」とは「0.000000000000000001秒」という極めて短い時間のことで、これほど短い時間に起きる現象は通常の技術では観察することができない。

しかし、リュイリエ教授は特殊な気体を通過したレーザー光の波長が短くなるという現象を発見し、アゴスティーニ名誉教授とクラウス教授はこの現象を応用して数百アト秒だけ光る「アト秒パルス」を発生させる実験に成功した。

「アト秒パルス」をカメラのフラッシュのように使えば、物質中を素早く動き回る電子の動きなどを「写真を撮るように」捉えることができるようになり、新素材の開発や医学など様々な分野での活用が期待されている。

■ノーベル化学賞は、量子ドットの発見と合成に貢献した米国の3人に

受賞が決まったのは、ムンジ・バウェンディ米マサチューセッツ工科大教授とルイス・ブラス・コロンビア大名誉教授、米企業の主任研究員だったアレクセイ・エキモフ氏の3人。

今年のノーベル化学賞の受賞者が発表され、「量子ドット」の分野で功績を挙げた、アメリカのマサチューセッツ工科大学の研究者ら3人が選ばれました。

ノーベル化学賞の受賞が決まったのはアメリカ・マサチューセッツ工科大学のムンギ・バウェンディ教授、アメリカ・コロンビア大学のルイ・ブラス教授、そしてアレクセイ・エキモフ氏の3人です。

受賞の理由については極めて小さい「ナノサイズ」の粒子「量子ドット」の発見、合成に寄与したとしてその功績を称えています。

量子ドットはその大きさによって異なる色で光る性質があり、コンピューターなどのディスプレーに使われているほか、手術の際に切除する腫瘍組織を光って示す染料として使用されています。

■史上初の事態…ノーベル化学賞、事前流出した名簿そのままだった

ノーベル賞受賞者が公式発表数時間前に事前流出する事態が起きたことと関連し、スウェーデン王立科学アカデミーは4日、遺憾を表明した。

この日スウェーデンメディアはノーベル化学賞受賞者3人の名簿が発表予定時間より4時間ほど早い同日朝に流出したと報道した。スウェーデンのSVT放送はノーベル化学賞受賞者を選定する選考委員会がモウンジ・バウェンディ氏、ルイス・ブラス氏、アレクセイ・エキモフ氏の3人の受賞者の名前が記載された報道資料の電子メールをミスで送ったと伝えた。

現地日刊紙エクスプレッセンはこの日、受賞者発表予定時間は現地時間午前11時45分だが問題の報道資料電子メールは午前7時31分に届いたと報道した。

これと関連し選考委員会の委員長はロイターに「これは王立科学院のミス。われわれの(受賞者最終決定)会議は午前9時30分に始まるのでまだ何の決定も下されていない。受賞者は選ばれていない」と話した。

王立科学アカデミー報道官も「どんな資料が流れたのかコメントすることはできない。知っておくべき重要なことは、王立科学アカデミーはまだ(受賞者最終決定)会議を開いておらず、今年の受賞者がだれになるのか決まっていないという点」とAFPに電子メールで明らかにした。

選考委員会は予定通りこの日午後に今年のノーベル化学賞受賞者を発表した。受賞者3人は量子ドットを発見し研究を発展させたモウンジ・バウェンディ氏、ルイス・ブラス氏、アレクセイ・エキモフ氏の3人だった。これはこれに先立ちスウェーデンメディアを通じて報道された名簿と同じだ。

アカデミーのハンス・エレグレン事務局長は受賞者発表記者会見で「依然としてわからない理由で報道資料が配布された。正確な経緯を把握しようとけさからとても忙しかった」と話した。その上で「名簿の事前流出は非常に不幸なことだ。深刻な遺憾を示す」と明らかにした。

これまでノーベル賞受賞者の選考結果が事前に流出したという議論は何回もあったが、1901年にノーベル賞が制定されたから受賞主体のミスで受賞者名簿が事前に流出した事例は今回が初めてという。

これに伴い、化学賞、物理学賞、生理医学賞の3つの科学部門のノーベル賞選考と授賞を務める王立科学アカデミーは今回の選考発表過程で大きな穴が明らかになり激しい批判は避けられないものとみられる。

■ノルウェー劇作家にノーベル文学賞

今年のノーベル文学賞をノルウェーを代表する劇作家ヨン・フォッセ氏に授与すると発表した。

授賞理由は「革新的な戯曲や散文」。ノルウェーからの文学賞受賞は1928年のシグリ・ウンセット氏以来95年ぶり、4人目となる。

59年、ノルウェーの西海岸ハウゲスンで生まれた。80年代に作家デビューし、小説や詩、児童文学、エッセー集などを刊行。初の戯曲「だれか、来る」を発表した後は、多数の劇作で現代演劇界をリードし、「イプセンの再来」「21世紀のベケット」と呼ばれる。間を生かした詩的、音楽的なせりふで、リアリズムと不条理演劇の間を往来する作風が特徴。

日本でも2004年に「だれか、来る」(太田省吾演出)や「名前」(三浦基演出)、07年に「死のバリエーション」(アントワーヌ・コーベ演出)などが上演されている。

フォッセ氏はノルウェー西岸で生まれた。戯曲約40本のほか、小説や詩、エッセー、児童書、翻訳を多数手掛けている。

アカデミーは「フォッセ・ミニマリズム」の名で知られる同氏のスタイルを称賛した。

フォッセ氏の代表作は七つの作品を1巻にまとめた「セプトロジー」。妻を亡くし1人暮らしをする年老いた画家が、宗教やアイデンティティー、芸術、家族の暮らしについて考察する物語を描く。

約800ページからなる「セプトロジー」は形式面の実験が称賛されてきた。フォッセ氏の思索的な散文は句読点などによる中断がほとんどなく、同氏の哲学的な問いに呪文のような流れを与えている。

アカデミーは「フォッセ氏は言語面でも地理面でも強固な地域的つながりとモダニズムの芸術技法を組み合わせている」と述べ、同氏のスタイルに影響を与えた人物としてアイルランドの劇作家サミュエル・ベケットやオーストリアの詩人ゲオルク・トラークルを挙げた。

フォッセ氏の選出は、アカデミーが他の大陸の作家をないがしろにして欧州の作家を優遇しているとの批判への反論にはならなそうだ。

ノーベル文学賞は歴史的に男性作家が圧倒的多数を占めており、これまでの受賞者120人のうち、女性は17人のみにとどまる。
2023.10.05 21:12 | 固定リンク | 化学

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