中国住宅価格規制・撤廃で「大暴落か」
2023.10.08
ロイター中国の住宅価格規制、撤廃で底値確認必要 住宅ローン金利下限引き下げ・撤廃

中国の不動産会社は資金難と販売難の双方に見舞われて経営存続に四苦八苦している。ではなぜ、物件を値下げして手元に残る大量の在庫を売り切らないのだろうか。それはやりたくてもできないからだ。2016年に起きた前回の不動産危機後に、住宅価格の一方的な動きを抑えるための規制が導入された。こうした措置がなお残り、中国経済の回復を妨げる要素になっている。

不動産価格の安定を実現させる上で役立ったのは、地方政府が設定した「ガイダンス」だった。そのおかげで、恒大集団(3333.HK)や碧桂園(2007.HK)といった業界最大手クラスの不動産会社が債務再編に苦闘する中でも、主要70都市の新築住宅の平均価格は1年余りにわたって毎月の変動率が2%程度にとどまった。

しかしこのような規制が価格の歪みを覆い隠した。市場が強気ムードに包まれていた局面では、主要都市の上限価格は、人々が喜んで支払おうとした価格よりもずっと低かった。そこで物件募集が始まると多数の買い手が殺到し、運良く住戸を手に入れられた向きは、供給が限られる中古市場で転売して相当な利益を得ることができた。

価格急落は需要を喚起する半面、政府はその大きな副作用に立ち向かう必要が出てくる。現在の住宅所有者は、自宅の価値が見る見る目減りしていくのを喜ばしくは思わないだろう。何しろ中国では持ち家率が2020年までに90%まで高まり、家計資産に占める不動産の割合は7割に達する。実体経済が低調な中で、歪んだ住宅価格の修正がどのように落ち着くか見通せない面もある。それでも市場の底値を見つけだすことこそが、不動産市場復活にとって重要ではないかと思われる。

●背景となるニュース

*財新が12日伝えたところでは、広州市は新築住宅プロジェクトの価格上限を撤廃した。不動産会社は引き続き当局に予定販売価格を知らせる必要はあるが、当局側はもはや価格の「ガイダンス」は提示しないという。

*価格上限は、中央政府が住宅不動産価格の安定化を呼号した2016年以降、多くの都市で導入された。

■南京市でも

中国南京市、住宅購入制限を撤廃 大都市で初

江蘇省南京市は中国の大都市として初めて住宅購入規制を全廃した。中国当局は不動産不況に歯止めをかけようと相次ぎ対策を打ち出している。

ロイターは先週、北京、上海、深センなどの都市が住宅関連規制を緩和する可能性について報じていた。 もっと見る

中国の10大都市の一つである南京は7日、4つの地区で購入要件を満たしたと証明しなくてもアパートを購入できるようにすると発表。これで全ての住宅購入制限が解除された。

易居研究院智庫センターのアナリスト、厳躍進氏は他の都市も追随する可能性が高いと指摘した。

南京市はまた、商業用不動産向けローンについて、1軒目の住宅購入額に占める頭金の最高比率を30%から20%に引き下げた。国営中央テレビ(CCTV)が7日報じた。他の大都市で同比率は30─35%となっている。

■住宅ローン金利下限引き下げも

中国、住宅ローン金利下限引き下げ・撤廃の動き広がる

中国の上海易居(イーハウス)房地産研究院は2日公表の報告書で、国内の多くの都市が過去数週間で相次ぎ、初回の住宅購入者向けに住宅ローン金利の下限を引き下げるか撤廃したと指摘した。当局が住宅需要喚起のために規制を緩和したことを受けた。

中国人民銀行(中央銀行)は先月、新築住宅価格が前月比と前年比で3カ月連続で低下した都市について、初回購入者向けの住宅ローン金利の下限を段階的に引き下げるか廃止することを認めると発表。

イーハウスの報告書によると、天津のようなや大都市や鄭州、福州など一部の省都を含む少なくとも26都市がこのような措置を取った。

同国の不動産部門は政府の一連の支援策や昨年12月の新型コロナウイルス規制の解除を受け、回復の兆しが見えている。しかし、需要が弱いままで、本格回復とはなっていない。

民間不動産調査大手、中国指数研究院(チャイナ・インデックス・アカデミー)が1日公表したデータによると、先月の住宅販売(床面積ベース)は前年比約20%減となった。

ムーディーズのシニアアナリスト、ケリー・チェン氏はリサーチノートで、「今後数カ月で需要喚起のための追加支援が行われる可能性が高く、そのタイミングと効果が販売成約の回復軌道を決定づけるだろう」と分析した。

■不動産市場の落ち込み加速

中国不動産市場の落ち込み加速、景気回復見通しに影

中国不動産セクターは8月も不振が続いた。このところの支援策にもかかわらず、新築住宅価格、不動産投資、販売が一段と落ち込み、経済に圧力をかけている。

中国国家統計局が15日発表したデータによると、8月の新築住宅価格は過去10カ月で最も大幅な下落となった。

統計局のデータを基にロイターが算出した新築住宅価格は前月比0.3%下落。前年比でも0.1%下落した。

7月は前月比0.2%、前年比0.1%、それぞれ下落していた。

8月の不動産投資は前年比19.1%減少。7月は17.8%減だった。減少は1年6カ月連続。データに基づくロイターの算出によると、住宅販売は2年2カ月連続で減少した。

中国はここ数週間、借り入れ規則の緩和や一部都市での住宅購入規制緩和などの支援策を打ち出してきた。

北京など主要都市では新築住宅販売の押し上げにつながっているが、効果が持続しないとの見方や、中小都市の需要を枯渇させる可能性があるとの懸念も浮上している。

オックスフォード・エコノミクスの中国担当エコノミスト、ルイーズ・ルー氏は「われわれは依然として今後数カ月で住宅販売がやや持ち直すと期待しているが、景気刺激策は結局、このセクターをリフレにするには至らないだろう」と語った。

中国人民銀行(中央銀行)は14日、銀行預金準備率(RRR)を0.25%引き下げると発表した。RRR引き下げは今年2回目。 もっと見る

野村は15日のリサーチノートで「短期的に、より重大なリスクは一部の不動産開発業者と金融機関から生じることから、小幅なRRR引き下げはほとんど支援にならないだろう」と指摘。

当局は住宅取引の制限をほぼ全て撤廃し、都市再生計画への投資を増やし、インフラ支出を加速させ、地方政府の債務を再編する可能性があると述べた。

■住宅購入規制を撤廃 大連など主要3都市

中国遼寧省の大連市など複数都市が相次いで住宅購入規制を撤廃している。

大連市と瀋陽市は市内の大半の地域を対象に購入物件の数を制限しないと発表。江蘇省の南京市は市内4地区について、資格証明なしで物件購入が可能になると明らかにした。

中国当局は、不動産セクターを下支えするため、住宅ローン金利の引き下げなど全国的な支援策を打ち出している。

不動産セクターは国内経済の約4分の1を占めるが負債が膨らんでいる。
2023.10.08 08:36 | 固定リンク | 経済

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