ハマス奇襲「成功」の裏側「破壊は中国人民解放軍61398部隊」
2023.10.13
ハマス奇襲「成功」の裏側(暗躍するロシア・中国・イラン)「欧米の本当の敵は中国」 世界最高の防空システム「アイアンドーム」を破った主犯は…中国軍のハッキング部隊

イスラエルの防空システム「アイアンドーム」の技術データが、中国人民解放軍によりハッキングされていた疑いがあると報道されている。

アイアンドームは、指揮ユニット、レーダー、ミサイルランチャーによって構成され、いずれも牽引により移動が可能。1台のレーダーと、各20発のタミルミサイルを装填した3台のランチャーが運用の基本単位。

イスラエルが2011年から運用している防空システム「アイアンドーム」の技術が、中国軍所属のハッカーによって盗まれていた疑いが浮上した。

セキュリティー関連ニュースサイト「KerbsOnSecurity」の報道によれば、米国のCyber Engineering Services(CES)社は、サイバー攻撃にさらされた防衛関連企業を、イスラエルのElisra Group社、Israel Aerospace Industries(IAI)社、Rafael Advanced Defence Systems社の3社と特定している。

CES社によれば、問題のハッキングは、アイアンドームの運用開始から約6カ月後の2011年10月に始まり、12年8月まで続いたという。盗まれたのはアイアンドームに関するデータだが、ハッカーはそのほかに、イスラエルの弾道弾迎撃ミサイル「アロー3」や無人機、弾道ロケットの技術などにも狙いをつけていたようだ。

CES社によれば、犯人はここ2、3年で明るみに出た一連のサイバー攻撃と同じで、元をたどればすべて上海を本拠とする中国人民解放軍61398部隊に行き着くという。

2014年5月、米国のエネルギー関連企業などをハッキングした疑いで訴追された5人の中国軍当局者も、同部隊に所属している。

CES社の設立者ジョセフ・ドリッスルはKerbsOnSecurityに対し、標的となった知的財産のほとんどは、実際にはイスラエルの企業に属するものではないと述べている。つまり、それらはBoeing社など米国の軍需企業から提供されたものであり、イスラエル側企業は米国政府の規制に基づき機密の漏洩を防ぐ義務があったということだ。なお、この件に関して、特定されたイスラエル企業は、重要な情報漏洩はなかったと述べている。

アイアンドームは、世界最高の防空システムのひとつとして高く評価され、複数の国がすでに秘密裏にシステムを入手したか、あるいは取得に向けてイスラエルと交渉中とされている(韓国やインド等が交渉している)。

Rafael Advanced Defense Systems社が開発するアイアンドームの後継システム「アイアンビーム」(Iron Beam)の概要も、徐々に明らかになりつつある。アイアンドームは対象を即座に識別するアルゴリズムを用い、人口集中地域へ飛来するロケット弾を撃ち落とすシステムだが、ミサイルの代わりに高エネルギーレーザー砲を用いるアイアンビームは、射程距離内のすべての発射体を熱探知で追跡してマッピングし、対象には限定されずに反応できるという(文末の動画は、アイアンビームのベースになっていると推定されているNorthrop Grumman社の戦術高エネルギーレーザー(The Tactical High-Energy Laser:THEL)技術を紹介している)。

■最新鋭防衛システムをハマスが突破できた原因

イスラエル軍の最新鋭防衛システムをハマスが突破できた原因が判明、色々な意味で格差が大きすぎた。

パレスチナのガザ地区を支配するイスラム組織ハマスが7日、イスラエルに対して過去最大規模の攻撃を仕掛けた。ハマス戦闘員はイスラエル側が境界に設けた防御を突破し、民間人数百人を殺害、多数を人質に取った。この急襲はイスラエル側にとって不意打ちで、旧日本軍による真珠湾攻撃にもなぞらえられている。ハマス側は小型のドローン(無人機)によってイスラエル国防軍の戦車も撃破。小規模で資金力も乏しいハマス軍事部門は、どのようにして世界有数の先進的な軍隊に奇襲をかけたのだろうか。

■ハマス奇襲「成功」の裏側

安物ロケット弾と小型ドローンの合せ技 ハマス奇襲「成功」の裏側

パレスチナのガザ地区を支配するイスラム組織ハマスが7日、イスラエルに対して過去最大規模の攻撃を仕掛けた。ハマス戦闘員はイスラエル側が境界に設けた防御を突破し、民間人数百人を殺害、多数を人質に取った。この急襲はイスラエル側にとって不意打ちで、旧日本軍による真珠湾攻撃にもなぞらえられている。ハマス側は小型のドローン(無人機)によってイスラエル国防軍の戦車も撃破。小規模で資金力も乏しいハマス軍事部門は、どのようにして世界有数の先進的な軍隊に奇襲をかけたのだろうか。

〇ロケット数千発でアイアンドーム破る?

ハマス側が攻撃で主に用いてきたのは、「カッサム」と呼ばれるロケット弾である。これは工業用のパイプに、自家製のロケット燃料と市販の爆薬を詰め込んだ安上がりな兵器だ。ロケット燃料は砂糖と硝酸カリウム肥料をこね合わせて作る。要は粗製の兵器であり、それ自体は効果も高くないのだが、戦闘員2人が発射レールで装填して撃ったあと、イスラエル側に狙われる前に姿を消せるほどにはコンパクトなものである。

カッサムはロシア製の122mmM-21グラート多連装ロケット砲など、より大型の軍用ロケット砲で補完される。これらのロケット砲で使われるロケット弾はカッサムよりもサイズが大きいだけでなく、精度も高く破壊力も格段に上だ。半面、はるかに位置を特定されやすくなり、破壊もされやすい。

カッサムによる攻撃は基本的に擾乱射撃(休息の妨害や移動の阻止、士気の低下などを狙った射撃)だと言える。とりたてて目標を定めず撃ち込むから損害をもたらす可能性は低いものの、致命的になる場合もある。そこで、イスラエルがカッサムなどの攻撃を防ぐために設けたのが、有名な防空システム「アイアンドーム」である。レーダーと迎撃ミサイルで構成されるアイアンドームは、飛来してくる数百発のロケット弾を追跡・撃墜でき、2021年の紛争では4500発のロケット弾を90%という高い成功率で撃ち落としたと言われる。

とはいえ、アイアンドームのような先進的な装備にも限界はあり、ハマス側はこれが対処しきれないほど大量のロケット弾を撃ち込んで飽和させようとした。一部の報道によればハマス側は今回、20分で5000発ものロケット弾を浴びせたといい、その結果、多くがアイアンドーム突き抜けた可能性がある。

〇ドローンから爆弾投下で監視の目つぶす

ロケット弾による大規模な弾幕射撃は、地上での急襲の目くらましが主な目的だったのかもしれない。ガザはCCTVカメラの塔や人感センサーなど監視システムを備えた防護フェンスで囲まれており、何者かがイスラエル側に侵入しようとすれば警報が出される仕組みになっている。検問所のカメラは顔認識システムと連携しており、ガザとヨルダン川西岸地区は、世界でもっと厳重なデジタル監視下に置かれている場所と言われる。

ハマス側は主だった監視システムの位置を事前に特定し、襲撃の開始にあたってそれらをつぶすための兵器を用意していたもようだ。監視システムが破壊されると、イスラエル側はどこで何が起きているのかを正確に把握できなくなる。

ドローンの脅威へのソリューションを手がけるオーストラリア企業ドローンセック(Dronesec)は、ハマスのマルチコプター(複数回転翼)型ドローンがイスラエルの警備塔や検問所、通信塔に爆発物を投下する様子を捉えた映像を集めている。こうした映像の数からも、これが周到な連携作戦だったことがうかがえる。この作戦によって、ハマスの数百人規模の戦闘員は、作戦の次の段階である障壁の爆破や突破を監視の目を気にせず実行できた。センサーを失ったイスラエル側は、どこで主攻撃が行われているかつかめず、効果的な対応が取れなかったと考えられる。

〇自爆ドローン数十機も投入

ハマスによれば、自爆ドローン「ザワリ」35機もイスラエル側の攻撃目標に向けて発射したという。

ザワリ(またはズアリ)は、ロシアの自爆ドローン「ランセット」と同じくらいの大きさの携帯可能な固定翼ドローンで、名前は2016年に暗殺されたチュニジアのドローン専門家モハメド・ザワリに由来する。もともとは偵察用だったらしいが、現在は攻撃用に改造されている。

ハマスは2021年、開発した小型攻撃ドローン「シェハブ」について、アイアンドームの迎撃ミサイルを回避できると主張していた。地面近くを飛行できるドローンは、高いアーチ状の弾道軌道を描くロケット弾よりもはるかに見つけにくい。


映像によれば、ザワリも複数機が同時に発射されたとみられ、これもおそらく、イスラエル側の防空能力を圧倒して一部が突破する可能性を高める狙いだったのだろう。この新型ドローンは、最も成功した飛行パターンなど、過去のドローンでアイアンドームを試して得られたほかの教訓も取り入れているかもしれない。

ロシア軍は航続距離40km超、弾頭重量約5kgのランセットを使って、ウクライナ軍の防空や大砲、レーダーに対して一定の成功を収めている。ザワリの誘導システムがどうなっているのかは不明だが、おそらく固定目標のGPS座標をあらかじめ入力するのだろう。今回の攻撃の目標は、反撃を阻むために兵舎や指揮所のような高価値の軍事施設に据えた可能性もあるし、単にできるだけ大きな被害や恐怖を引き起こすために民間施設を狙った可能性もある。

〇戦車攻撃用のドローンや爆弾も配備か

ハマスは民間人を殺害しただけではない。攻撃の映像には、イスラエル国防軍の車両が多数撃破されたり損傷したりした様子も映っており、それにはメルカバMk4主力戦車数両も含まれる。イスラエルで開発されたメルカバは、RPG対戦車擲弾や携帯式ミサイルといった武装勢力が使うようなタイプの武器、あるいはもっと高度な脅威を想定して設計されている。とくに、迫り来る対戦車兵器を撃ち落とす「トロフィー・アクティブ・プロテクション・システム」は世界最先端の装備と考えられている。

ハマス側が撮影したある動画では、マルチコプター型ドローンがメルカバに弾薬を投下している。この弾薬は警備塔に対する攻撃で使われたものより一回り大きいようだ。ドローンセックは、ハマスのアルナセル・サラー・アルディーン旅団が、ウクライナ軍で運用されている重無人爆撃機のような大型のヘクサコプター(回転翼6つ)型攻撃ドローンを誇示したことに注目している。爆薬はメルカバに命中し、爆発したように見える。爆発の影響の評価はできないが、数秒後、戦車の右前部で火災が発生したようだ。

初期段階の未確認情報だが、イスラエルはメルカバ6両と装甲兵員輸送車17両を失ったと報告されている。ハマス側は、鹵獲した戦車のうち少なくとも1両はドローンで行動不能にさせたと主張しているが、それが動画に映っているものなのかははっきりしない。

奇襲攻撃後、守勢に回ったハマス側は、圧倒的に強力なイスラエル国防軍の攻撃によって甚大な損害を被る可能性が高い。ハマス側はおそらくロケット弾や自爆ドローンの在庫を使い果たしていて、長期にわたって作戦を続けていくのは無理だろう。だが、備えができていると言われていたイスラエル国防軍にハマスが大きな損害を与えうるという衝撃は、今後何年もの間、多くの疑問を生んでいくことになるに違いない。
2023.10.13 11:43 | 固定リンク | 戦争

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