MOAB(モアブ)投下「ISIS全滅」
2023.03.12

MOAB(モアブ)は地上から約1.8mの位置で爆発し、その威力は11トンのTNT火薬に匹敵する。アフガン東部でISISが使用するトンネルや洞窟などを標的としたという。北朝鮮核実験強硬なら「MOAB」投下=米

「全ての爆弾の母」が地上1.8mで爆発する 米空軍はISの拠点に向けて、GBU-43 MOAB爆弾を投下した。

米空軍がアフガニスタンにあるISの拠点の爆撃に使用したのは、これまで一度も実戦で使われたことがない爆弾だった。アフガン当局者15日発表「戦闘員少なくとも94人が死亡」

MOABは地面に接触して爆発するのではない。核を含む大型爆弾の多くと同様に、地面に激突する直前にすさまじい爆発を起こす。具体的には、地上から約6フィート(約1.8m)の位置で爆発し、その威力は11トンのTNT火薬に匹敵する。

「全ての爆弾の母」とも呼ばれる大規模爆風爆弾「GBU-43/B Massive Ordnance Air Blast(MOAB)」は、パレットに積まれてC-130輸送機に搭載され、爆撃地点の上空に達すると後部貨物扉からパレットごとパラシュートで引き出されて空中に投下される。

2万1600ポンド(約9800kg)の爆弾は地上をめがけて落下する。

重さで言えば、3万ポンド(約1万3000kg)の大型貫通爆弾「Massive Ordnance Penetrator (MOP)」もあり、MOABは米軍が保有する通常兵器の中で最も重いわけではない。しかし、長さ30フィート(約9m)もある巨大な爆弾で、1発あたりのコストは1570万ドル(約17億円)と言われている。

米空軍はMOABを20発保有しているとされている。

空中に投下されると、MOABはすぐにパレットから切り離され、投下コースを調整するためのグリッドフィンを展開する。コンピュータとGPSによる制御に基づき、グリッドフィンは事前に決められたターゲットへとMOABを導く。国防省によると今回のターゲットはISの地下基地だった。

MOABはなぜ、地上ではなく空中で爆発するのか?

「MOABの威力はその加圧力にある」と、米空軍の高度核抑止力研究校(the US Air Force's School of Advanced Nuclear Deterrence Studies)のアダム・ローサー(Adam Lowther)氏はBusiness Insiderに語った。

「加圧力」とは爆弾が生み出す強烈な爆風のこと。爆発地点から全方向に広がる強烈な爆風に見舞われれば、地下施設も地下道も、もちろん人間も木っ端みじんになる。何も残らない。

MOABがもし地面に激突して爆発したなら、爆風は多量の土砂を巻き上げ、地上に大きな穴を開ける。土砂は空気よりも重いので、空中で爆発させるよりも爆風が広がらず、結果的に威力が削がれることになる。

巨大な爆弾なので、たとえ地上で爆発しても、一定の範囲内に大きなダメージをもたらすだろうが、エンジニアはより高い威力をもたらすために物理法則を利用している。

つまり爆弾が空中で爆発すると、爆風は下方を含めた全ての方向に広がる。だが下方への爆風は地面にあたって跳ね返り、ほんの一瞬前に発生した熱く、薄い空気中に戻ってくる。

熱くて薄い空気の中だと、爆風はより速く伝わる。地面で跳ね返って戻ってきた爆風は、最初の爆発が起こした爆風に追いつき(最初の爆風は通常の空気中を進むため、跳ね返ってきた爆風より広がるスピードが遅い)、2つの爆風が1つにまとまることで「マッハステム(mach stem)」と呼ばれる衝撃波が生まれ、爆発の威力はより大きくなる。

マッハステムは爆弾の殺傷範囲を大きく広げ、地下に向けてより強い力を生み出す。地面に穴を作ってエネルギーを無駄にすることなく、地下施設やトンネルを破壊する。

今回、爆弾が投下された地点は山岳地帯だが、平地で爆発した場合、爆風の範囲は半径1マイル(約1.6km)に達するとみられる。

難解な科学の力が兵器製造に使われているのだ。
 
■北朝鮮への警告

アメリカのトランプ政権は、核兵器を除く通常兵器で最強の爆弾と言われる大規模爆風爆弾(MOAB)を初使用した。

アメリカ空軍の発表によると4月13日午後7時ごろ、アフガニスタン・ナンガハル州のIS (イスラム国)の拠点をMOABで攻撃した。MOABは、「トンネル複合施設」に対して、MC130特殊作戦機から投下されたという。

■ニックネームは「全ての爆弾の母」

MOABの正式名称はGBU-43。Massive Ordnance Air Blast(大規模爆風爆弾)を略してMOABと呼ばれるが、その破壊力から「Mother Of All Bombs(全ての爆弾の母)」とも呼ばれている。

MOABは全長9メートル、直径1メートル、総重量10トンの超大型爆弾。核兵器を除くと、米軍が保有する爆弾の中では最大級で、最強の破壊力を持つとされる。

ベトナム戦争などで使われた「デイジーカッター」の後継として開発され、2003年に実験が行われた。広範囲の衝撃波によりキノコ雲が生じるほどの破壊力を誇る。イラク戦争では1発が実戦配備されたが、実戦で投下された事はなかった。人工衛星を使った誘導システムを搭載しており、命中精度が高くピンポイント爆撃も可能。

北朝鮮が再び核実験やミサイル発射を行うとの懸念が高まっている時期に、MOABを使用したことについて「北朝鮮への警告では?」という見方も出ている。

ブルームバーグによると、アメリカのトランプ大統領は今回の爆弾が北朝鮮への警告になるのかとの問いに対し、「これがメッセージを送ることになるのか分からない。それがどうであるかはどうでもよいことだ。北朝鮮が問題だ。この問題に対処することになる」と答えた。

ワシントン(CNN) 米軍は13日、核を除く通常兵器の中で最強の威力をもつ大規模爆風爆弾(MOAB)の「GBU43/B」を、アフガニスタンで過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の拠点に投下した。米当局者が明らかにした。MOABが実戦に使われたのは初めて。

作戦に詳しい米国防当局者によると、爆弾は現地時間の午後7時32分に投下した。MOABは「全ての爆弾の母」とも呼ばれるGPS誘導式の爆弾で、全長約9メートル、重さは約10トン。

国防総省のスタンプ報道官がCNNに語ったところでは、MOABの投下には、アフガニスタンに配備して米空軍特殊部隊が運用している空軍機「MC130」を使用した。

当局者によると、投下したのはパキスタンとの国境に近い東部ナンガルハル州アチン地区で、ISISが使っている洞窟やトンネルなどの施設および人員を標的とした。

ホワイトハウスのスパイサー報道官は13日、この攻撃について、「ISISの戦闘員が自由な移動に使っているトンネルや洞窟を狙った」と話した。

駐米アフガニスタン大使によると、この地区では1週間ほど前から、米軍特殊部隊とアフガン軍によるISISとの戦闘が激化。ISISが仕掛けた地雷のために米軍とアフガン軍が進攻できなくなったことから、トンネルを除去するために爆弾を投下したとしている。

トランプ大統領は、今回の爆撃を直接的に承認したかどうかについては明言せず、「何が起きるかは誰もが知っている。私の仕事は我が軍を承認することだ」と述べた。

破壊の程度や死傷者については現時点で不明。軍が現在、状況調査を行っている。

MOABはイラク戦争時に開発された爆弾で、着弾する前に空中で弾頭が破裂し、大規模な爆風を全方面に放出する。実験が最終段階に差しかかっていた2003年の時点で、軍当局者はCNNに対し、主に「心理作戦」に使う目的で開発したと話していた。

しかし8トンを超す爆弾を爆発させるMOABの威力も、核爆弾に比べればはるかに小さい。

「MOABの爆発の威力は0.011キロトン。通常の核の威力は10~180キロトン。米国だけでも7000発の核兵器を保有する」。ぺリー元国防長官はツイッターへの投稿でそう指摘した。

■北朝鮮にはおちないふたつの理由

本来はステルス爆撃機B-2において運用するが、今回は通常爆撃機(MC-130による)爆撃だった。

2017年4月13日の米軍による大規模爆風爆弾「MOAB」使用に関し、北朝鮮への示威行為と見る向きもあります。一方で、「MOAB」が北朝鮮に使用されることはないであろう理由もふたつあります。

2017年4月13日(木)、アメリカのトランプ政権はアフガニスタンにおいて、米軍が保有する爆弾としては核兵器を除いて最強の威力を持つGBU-43/B「MOAB(モアブ)」を使用したことを明らかにしました。この事実は世論に非常に大きく受け止められ、日本においても大きく報道されただけではなく、米国では株価を下げるという結果も生じています。

この「MOAB」は「大規模・爆風・爆弾」のそれぞれ頭文字をとって命名された愛称であり、その名の通り航空機搭載用の爆弾としては破格となる総重量およそ10tにも及ぶ超大型爆弾です。内部にはおよそ8.5tにも及ぶ高性能爆薬を内蔵します。

 通常の作戦で使用される航空機用爆弾の中では最大級の「Mk84」でさえ総重量907kg、高性能爆薬430kgですから、総重量はほぼ10倍、爆薬量に至っては20倍にもなり、まさにけた違いの武器であると言えるでしょう。その卓越ぶりから「MOAB」の頭文字をとって「マザー・オブ・オール・ボムズ(すべての爆弾の母)」という非公式愛称でも呼ばれます。

 が、しかし「MOAB」が強力であるのはあくまでも一般的な航空用爆弾との比較での話であって、核兵器とは比べ物になりません。爆発によるエネルギーは広島型原爆のおよそ1000分の1に過ぎず、「MOAB」は既存の爆弾10発か20発程度の「ちょっと強い単なる通常兵器」と言えます。

 また爆弾の殺傷力は爆風と同時に飛び散る大量の「金属破片」が重要であることから、「MOAB」のように重量のほとんどすべてを高性能爆薬で占めると効果を減じてしまいます。それを承知で爆風を生じさせることに特化しているので、かなり使い方の難しい武器です。

 ではなぜ米軍は「MOAB」を投下したのでしょうか。

「MOAB」は北朝鮮へのメッセージたりうるか
 米軍の公式発表によれば、今回の「MOAB」投下は過激派組織ISIS(イラク・シリア・イスラム国)によって谷間に敷設された、多くのIED(路肩爆弾)やトンネルを一掃するためとされています。殺傷力は低くとも爆風の強い爆弾を地雷原処理などに使用する例は昔からよく見られることなので、この発表には説得力があります。

 今回は初の「MOAB」実戦投入であり、そういう意味では注目すべき出来事ではありますが、メディアや世間の反応はややオーバー過ぎだと言えるのではないでしょうか。

「北朝鮮に与えるメッセージがあるのでは?」という見方も、おそらくは否定できます。なぜならば「MOAB」は北朝鮮に対し、効果的ではないからです。

 まず第一に、「MOAB」の搭載機がMC-130「コンバット タロン」であるという点が挙げられます。MC-130はC-130輸送機を原型とした特殊作戦機で、ISISのような過激派組織とは異なり濃密な地対空ミサイル防空網を持つ北朝鮮の上空を飛ぶには、かなりの危険を伴います。

 第二に「MOAB」自体は爆風を造ることだけに特化した爆弾であり、おり、通常の建造物や弾道ミサイル車両を破壊するならば通常の爆弾のほうが効果的である点が挙げられます。鉄筋コンクリートなどで防護された地下シェルターには、まったく通用しないのです。

爆弾にもある「適材適所」

 北朝鮮に対しては、使用するならば「MOAB」よりも、13.6トン超大型地中貫通爆弾GBU-57/B「MOP(モップ)」のほうが適しているといえるでしょう。「MOP」は「MOAB」とは逆に、重量に対する高性能爆薬の量が小さく(2.4トン)、核実験場など地下施設の内部に打撃を与えることに特化した爆弾です。その貫通力たるや、鉄筋コンクリートを60mも貫きます。

 そして「MOP」は、敵国が警戒する重要施設を破壊するという性格から、レーダーに探知されにくいステルス爆撃機B-2において運用されるので、北朝鮮を相手にするのには最適です。

 しかし、今回はあくまでもMC-130による「MOAB」の投下に過ぎませんから、北朝鮮に対する政治的圧力などは関係なく、アフガニスタンでの作戦における個別の使用とみなすべきです。

■被害受けたISISの死者94人に

カブール(CNN) 米軍がアフガニスタン東部ナンガルハル州で13日に投下した大規模爆風爆弾(MOAB)により、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の戦闘員少なくとも94人が死亡していたことが分かった。アフガン当局者が15日に発表した。

アフガン当局者らは当初、この攻撃で36人が死亡したと発表した。ISISは14日、死傷した戦闘員はいないと主張していた。

死傷者の数についてCNNでは独自の確認はできていない。

ナンガルハル州の報道官はCNNとのインタビューで、ISIS側の死者が「司令官4人を含む94人に急増」したと語った。

アフガン国防省の報道官は「現地のチームが確認作業を続けている」と述べ、今後さらに遺体が発見される可能性を示唆した。

米当局者らによると、この攻撃ではISISの地下トンネル施設や武器、弾薬を破壊したが、民間人にけがはなかったという。

アフガニスタン国防省によると、MOABはISが複数の洞窟やトンネルを使っていたモマンド渓谷にある村の周辺に着弾。保管されていた大量の兵器も破壊されたという。

BBC特派員たちによると、空爆された地域のほとんどは山間部で人口は少ない。地元情報によると、爆発は非常に強力で、周辺の2つの地域でも爆音が聞こえたという。

米政府は空爆の詳細な結果を公表していないが、地元当局によると、多くのIS戦闘員が死亡。幹部のきょうだいも死亡したと言われている。

アチン地区のエスマイル・シンワリ知事はBBCに対して、米空軍の応援を受けてアフガン特殊部隊が13日前からこの地区でIS掃討作戦を開始したと説明。それ以来、ISに対する攻撃は繰り返し実施されてきたが、「ゆうべの爆撃は非常に強力だった。これほど大きい爆発は見たことがない」と話した。

ナンガルハル州のグラブ・マンガル州知事は、ISが洞窟やトンネル網を「殺人を重要会議」のために使っていたと述べ、MOAB攻撃は「隠れていたISの外国人戦闘員を全員殺す」ための、特定の目的のための攻撃だったと話した。
2023.03.12 17:24 | 固定リンク | 戦争

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