露軍バフムート攻勢で戦力低下クリミヤ奪還される!
2023.03.08
ドイツ製のレオパルト2戦車でフレアを発射、敵戦車上部破壊


ロシア軍バフムート攻勢は大敗北の予兆、被害甚大戦力低下、南部戦線クリミア奪還許す可能性大

 2023年1~2月、米欧がウクライナに、戦車や歩兵戦闘車などを供与することを決定した。そして、2月下旬から国境を越えて続々と運び込まれている。

 4月の初めには、米欧の戦車とロシアの戦車が激突することになる。

 これからの戦いでは、米欧の兵器の技術レベルの差を映像で見ることになるだろう。

 現在、ウクライナ東部のバフムートで、激しい戦闘が続いている。日々、このニュースであふれている。

 この地が、戦いの焦点であるかのようなメディア報道である。

 しかし、戦いの焦点となる地域は、ザポリージャ、へルソンからクリミア半島での戦闘になるはずだ。

 今のところ、この地での戦闘の情報は極めて少ない。私は、その情報の少なさに不気味さを感じている。

 ウクライナ軍としては、ドニエプル川からクリミア半島におけるロシア軍防御部隊を撃破することは容易ではない。

 では、ウクライナ軍はロシア軍の防御組織をどのように破壊しながら攻撃するのか。

 今回は、ドニエプル川からクリミア半島までの範囲の戦闘の一場面である戦闘戦術を考察する。

■ 1.クリミア半島奪還作戦

 クリミア半島は、ウクライナやロシア両国にとって黒海から地中海に通じる交通路を制する重要地点になっている。

 両国とも自国領にしたいという強い思いがある。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2022年8月24日の独立記念日を前に、2014年に併合されたクリミア半島からロシアを排除するとの決意を示した。

 また、2月26日には「クリミアの解放により、人々の生活を破滅させるロシアのあらゆる試みに終止符を打つ」と述べた。

 このように、南部クリミアの奪還を目指す考えをことあるごとに強調している。

 米国の立場はどうか。

 米国国務次官が2023年2月、クリミア半島について最低限でも非軍事化する必要があるとの見解を示し、クリミアの軍事目標に対するウクライナの攻撃を米国は支持すると表明した。

 米国は、ウクライナによるクリミア半島奪還作戦に正当性を示したのだ。

 ウクライナ軍のこれからの反撃に対して、より多くの国家および国際機関の協力を得ようというものだ。

 ロシアにとっては、ドンバス地域とクリミア半島の確保は、必ず達成したい目標だ。そして、クリミア半島は死守したいと考えている。

■ 2.バフムートは反撃準備の戦い

 今、バフムートを含む東部の戦線で両軍が熾烈な戦いを行っている。ウクライナ軍は、劣勢ではあるが、この正面に戦力を増強することなく持ち堪えている。

 ロシア軍は、バフムートを含む東部の戦線で、南部の戦力の一部までも投入して、遮二無二に攻撃して多くの人的損害を出している。

 南部の正面では、クリミア半島を守り抜くことが絶対的目標であるため、ドニエプル川東岸(南岸)からクリミア半島の付け根、およびクリミア半島での防御を周到に準備している。

 ここでは、もともとドニエプル川の河川を使った自然障害、戦車の突進を止める「竜の歯(Dragon's teeth)」と呼ばれる対戦車障害を設置し、深さ1メートル以上の対戦車壕を掘っている。

 ロシア軍部隊の陣地には、兵士・戦車・装甲車・火砲・指揮所・弾薬などの兵站物資のための壕を設置している。

 ウクライナ軍がドニエプル川を越えて攻撃前進してくれば、障害の前に火砲・多連装砲・戦車・ミサイルの火力(弾丸、ロケット、ミサイル)を、短時間に集中的に撃ち込むことを準備している。

 このような防御戦闘の要領は、旧ソ連から受け継がれている。

 ウクライナ軍は、東部のバフムートなどに戦力を増強しないで、押され気味ながら長期間戦っている。

 ウクライナ軍にとって、敵に攻撃させて長期間戦うことの方が戦略的に見て有利な場合がある。

 そこには、3つの狙いがある。

 (1)米欧から供与される機甲戦力がウクライナ軍に届き使えるようになるまでの時間を稼ぐこと。

 (2)ウクライナ軍の最小限の戦力でロシア軍戦力をなるべく多く消耗させること。

 (3)反撃のために必要なロシア地上軍の配備を詳細に調べることだ。

 (1)ウクライナ軍の時間稼ぎについて

 今、米国から「M1エイブラムス」戦車、歩兵戦闘車、ドイツなどNATO(北大西洋条約機構)加盟国からはドイツ製「レオパルト2」戦車および様々な装甲車両などが、ドイツ、ポーランドを通過して、続々とウクライナに入っている。

 ウクライナ軍はへルソン奪還後、クリミア半島奪還のために準備を進めているのだ。

 (2)ロシア軍戦力の漸減

 ウクライナ軍は、反撃に先立ってロシア軍地上軍をなるべく多く壕から誘い出して、兵や兵器を破壊しておきたい。

 ロシア軍の無謀な攻撃は、ウクライナ軍にとっては極めて好都合のものだ。

 また、戦力的に見るとロシア軍は東部の戦闘を有利に進めるために、2022年、へルソン撤退後の11月に、南部戦力の一部を引き抜いて東部に転用させた。

 ロシア軍の南部防衛戦力は、少なくなっている。

 ウクライナ軍は、ロシア軍の南部防衛部隊の戦力をなるべく多く撃破しておきたいために、へルソン奪還後も南部部隊の弾薬庫や陣地に対して砲撃を継続している。

 JBpress『「今だ」と塹壕からおびき出されるロシア軍、全滅の危機迫る』(2023.2.21)を参照

 (3)ロシア地上軍の配備を詳細に情報収集

 地形と各種情報から分析すると、ロシア軍はドニエプル川からクリミア半島の付け根までに、ドニエプル川を利用した防御ライン、クリミア半島入り口の湖沼を利用した防御ラインなど、クリミア半島内には何線かの防御ラインがあるようだ。

 米国は偵察衛星を使って、ロシア地上軍の詳細な防御位置を把握し、ウクライナ軍に提供しているに違いない。

■ 3.ロシアの防御陣地を突破する戦闘戦術

 ロシア軍南部の防御陣地に楔を打ち込み、突破して、さらに進撃していくためにはウクライナ軍はどう戦うのか。

 ウクライナ軍は、米欧諸国から、600両を超える戦車や歩兵戦闘車などが供与されている。

 これら大量に供与された戦車や歩兵戦闘車で突進すれば、ロシア軍の防御陣地を破砕することができるのだろうか。

 実は、地上戦闘はそう単純ではない。

 塹壕を掘って守るロシア軍の防御を突破していくには、戦力、戦いの原則および巧妙な戦闘戦術が必要である。

 また、地上軍の各種兵器を統合運用することによって達成できるものである。

 攻撃の場合、ロシア軍がそうであったように、失敗すれば多くの損害を受けることになる。攻撃こそ周到な準備が必要なのだ。

 ウクライナ軍の戦闘戦術を、(1)ロシア軍防御戦闘の仕組み、(2)ロシア軍のキルゾーン戦法、(3)ウクライナ軍の障害処理、(4)ウクライナ軍機動打撃部隊の突進の順で詳細に解説する。

 (1)ウクライナ軍機動部隊の進撃を止める防御陣地の仕組み

 ロシア地上軍の防御陣地の前には、ドニエプル川の自然障害がある。

 また、人工障害として竜の歯という名のコンクリート製ブロック障害や戦車を穴に落とす壕(対戦車壕)を設置している。

 これらの障害には、対戦車地雷も併せて設置されている。

 障害で止まった戦車などを破壊するために、射撃設備や地雷が設置されている。

 ウクライナ軍は、ドニエプル川は渡河作戦を実施しなければならない。

 人工障害の竜の歯ブロックは、処理しなければ、戦車は乗り上げてしまい、キャタピラーが空回りするか、あるいは傾いてしまい動けなくなる。

 対戦車壕では、深さ1メートルであっても這い出せなくなる。

 ロシア軍の陣地前障害とその狙い

 (図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイトでお読みください)

 (2)ロシア地上軍のキルゾーン戦法とウクライナ軍の対策

 ロシア軍は、ウクライナ軍が障害処理をするために停止している間に、あらゆる火力を向けて攻撃する。

 その障害の前で停止するウクライナ軍反撃部隊に対して、戦車砲や火砲の砲弾、対戦車ミサイル、ロケット、弾道ミサイルを短時間に集中的に撃ち込む火力ポケットを準備している。

 この戦法を、キルゾーン戦法とも言う。

 ロシア軍キルゾーン(火力ポケット)戦法

 ウクライナ軍の反撃が始まれば、ロシア軍はあらゆる兵器を使用してその反撃を破砕することに専念するだろう。

 だが、ウクライナ軍は、ロシア軍の兵器をすべて調べ上げているので、HIMARSなどの火器で破壊する。

 (3)ウクライナ軍による障害処理

 ウクライナ軍が、ロシア軍のキルゾーン(火力ポケット)に入っている状況で、障害を事前にどうやって処理するか、また、停止させられた戦車をどのように救出するかが、ウクライナ軍機甲戦力の能力を発揮するために必要なことである。

 素晴らしい性能を有するM1エイブラムスやレオパルト2戦車でも、こられの障害を自ら乗り越えることはできない。事前の障害処理が必要なのだ。

 ウクライナ軍の戦車や装甲車の前面に、ブルドーザーと同じブレードが装着されているものがある。

 これらの車両で、竜の歯を取り除き、戦車壕を破壊して埋めてしまう。

 この場合、障害処理車は敵の攻撃の的となってしまうので、脅威となる火砲や対戦車ミサイルを事前に破壊しておく必要がある。

 あるいは、処理中に射撃してくれば、その火器を破壊する。

 処理車が、見えないようにするために、黄燐発煙弾(使用が禁止されていない)を敵の前面に撃ち込むこともする。

 ウクライナ軍の障害処理作戦

 ロシア軍の陣前の障害をいかに取り除き、損害を少なくしていくかが、その後の機甲戦力の攻撃前進を可能にする。

 (4)障害処理に成功し、機動打撃部隊が戦闘展開し前進すれば成功

 ウクライナ軍が障害を処理した後は、米欧から供与された戦車、歩兵戦闘車などが、下車した歩兵とともに、至る所で前進することになる。

 ウクライナ軍の障害通過と戦闘展開

 ウクライナ軍の前進を妨害するのは、予備の機動打撃部隊(逆襲部隊)や砲兵射撃、対戦車ミサイルや戦車の射撃だ。

 抵抗するロシア軍には、予備の機動打撃部隊は、東部方面に転用されたためにクリミア半島には残っていないようだ。

 また、へルソン奪還から常続的に弾薬庫や砲兵陣地が攻撃され破壊されてきた。

 私の計算では、迫撃砲・榴弾砲・多連装砲を合計した場合でも、投入した火砲等でも、損失が侵攻1年後で約75%であり、残っているのは25%しかない。

 反撃を阻止する火砲の数は少ない。

 ウクライナ軍の反撃を受け、火砲の射撃を実施しても、ウクライナ軍に発見され、HIMARSなどで破壊されるだろう。

 ロシア軍の防御線は、へルソンとザポリージャからクリミア半島内部までは、3線以上の防御ラインがあるだろうが、第1線防御ラインが破壊された後は、ロシア軍の抵抗は少ないだろう。

■ 4.ウクライナ軍の反撃の成否

 ウクライナ軍が反撃するための戦力は、米欧から供与されていてほぼ揃いつつある。

 3月末には完了するようだ。

 ついに、ウクライナの平原で米欧の戦車とロシアの戦車が激突することになった。米欧の戦車等に搭乗して戦うウクライナ軍とロシアの戦車で待ち構える戦いだ。

 とはいえ、ウクライナ軍が優れていて十分な戦力が持ったからと、その戦力を過信して、ロシア軍と同様に単純な攻撃を実施すれば、失敗する可能性もある。

 成功するかもしれないが、被害も大きなものになる。

 これまでの戦い方から予測すると、ウクライナ軍は反撃を成功させるために、使える戦力、例えば、戦車部隊、歩兵戦闘車に乗って戦う機械化部隊、砲兵部隊特にHIMARS部隊、自爆型無人機や対戦車兵器を運用する部隊、攻撃ヘリ部隊、空軍戦闘機を総合的に運用するだろう。

 そして、ロシア軍を驚かす攻撃を行うだろう。

 戦車等からなるウクライナ軍部隊は、空からの攻撃、対戦車ミサイル、戦車障害に弱い。

 この弱点を、天敵となる兵器が襲う。これを防ぐために、地上軍兵器や空軍戦力などの総合戦力の発揮が必要だ。

 ロシア軍のウクライナ侵攻も、「まさか」と言うほどの予想を超えるものであったが、米欧(NATO)軍の戦車とロシア軍の戦車の激突がこれから起こることも、「本当に現実なのか」と信じられないくらいだ。

 これから、NATO軍の新型の戦車とロシア軍の旧式戦車の戦い、つまり戦車の技術力の差を見ることになる。
2023.03.08 12:25 | 固定リンク | 戦争
国連グテーレス事務総長ウクライナ到着
2023.03.08
国連グテーレス事務総長ウクライナ「キーウ」訪問

 国連のグテーレス事務総長がウクライナ訪問のためポルトガルのワルシャワに到着したそうです。岸田首相も訪問を検討しています。8月ワルシャワからキーウに鉄道で行ったとき,国境で深夜突然武装した兵士が来て、持ち物をすべて調べられました。その時は怪しいものは何持ってなかったので無事でした。

 国連は、グテーレス事務総長がウクライナの首都キーウを訪れ、8日午前にゼレンスキー大統領と会談を行うと発表しました。

 国連の発表によりますと、グテーレス事務総長はポーランドを経由し、現地時間の8日午前、キーウでゼレンスキー大統領と会 談を行うということです。

 会談では主に、国連とトルコの仲介によって去年8月に再開した黒海沿岸からのウクライナの穀物などの輸出の継続について話し合うとしています。

 ウクライナは世界有数の穀物の輸出大国でしたが、ロシアによる軍事侵攻を受け、去年の輸出量は前の年に比べ4割近く減少し、ことしはさらに下回る見通しとなっています。

 グテーレス事務総長がウクライナを訪れるのは、ロシアの侵攻開始以来、3回目です。
2023.03.08 08:04 | 固定リンク | 戦争

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