ジョージア・外国の代理人法案「国民反発!」
2023.03.09
抗議デモ参加者らは、政府がロシアの影響下にあると主張している


東欧ジョージアで、外国から一定の資金提供を受けている団体を「外国の代理人」として規制する法案をめぐって大規模な抗議行動が起きている。首都トビリシでは8日、デモが2日連続で開かれ、警察が参加者らに放水銃や催涙ガスを使用した。

親ロシア派の与党が「外国の代理人」規制する法案を巡って民衆が反対蜂起した。大規模なデモ隊が国会を包囲、シュプレヒコールが鳴り響いた。

法案は、外国から資金の20%以上を提供されている非政府組織(NGO)やメディアを「外国の代理人」に分類する内容。

隣国ロシアでは同様の法律が、報道の自由を厳しく制限し、市民社会を抑圧するのに使われている。そのためジョージアでデモに参加する人たちは、ロシア式の法律だとして怒りをあらわにしている。法案は国際的にも広く非難されている。

抗議デモは議会の周辺で行われており、8日には数万人が参加した。議会では前日、法案の第1読会で可決された。

群衆は議会前で金属フェンスを引き倒した。現地テレビの映像からは、8日夜にヘルメットをかぶり盾を持った機動隊員数百人が出動したことがわかる。パトカーが少なくとも1台、ひっくり返されたとみられる。

群衆は解散を命じられている。警察による鎮圧行動でデモ参加者に負傷者も出ている。議会周辺では催涙ガスの雲が立ち上った。

当局によると、抗議デモが始まった7日の夜には、警官55人が石や火炎瓶を投げつけられて負傷した。

イラクリ・ガリバシヴィリ首相は、抗議デモを「騒動」として非難。一方、米ニューヨークを訪問中のサロメ・ズラビシュヴィリ大統領は、デモ参加者らへの支持を表明した。

大統領はビデオを通じて、「私は皆さんを応援します。皆さんは今、自由なジョージアの代表です。自分たちの未来はヨーロッパにあると考えるジョージアは、この未来を奪うことを誰にも許さない」と述べた。

大統領はこの法案に拒否権を発動すると言明している。しかし、与党「ジョージアの夢」は、議会で大統領の拒否権を覆すのに十分な票を持っている。同党は欧州評議会に意見を求めている。

同党は今回の法案について、アメリカで1930年代に成立した法律が起源だと説明している。この主張は、ロシアが2012年に同様の法律を成立させた後にも用いられた。

同党については、ジョージアをロシアの影響下に戻そうとしているとの批判が出ている。

■「ジョージアの将来がかかっている」

抗議デモの参加者たちは、新法が成立すれば、ジョージアの欧州連合(EU)加盟を阻害すると懸念している。

「これは個別の1つの事案に関することではなく、ジョージアの将来と、私たちが国としてどう機能するかに関わることだ。だからみんな本気で怒っている」と、デモに参加していたテクラ・テヴドラシュヴィリ氏はBBCに話した。

「みんな本当に反対していて、だから政府はこんなに恐れているのだと思う。だから、あらゆる手段で私たちを黙らせようとしているのだと思う。でも私たちは黙らない」

デモには学生も多数参加している。その1人のリジー氏は、「私たちの政府はロシアの影響下にあり、私たちの将来にとっては非常に悪いことだと思う」と話した。

他の参加者らも、「西側の価値感と自由のために戦う」、「EU加盟への動きを政府が止めることは許さない」などと語った。

■アメリカやEUの反応

アメリカは声明で、デモ参加者への連帯を表明し、ジョージア政府に平和的デモを認めるよう求めた。

国務省のネッド・プライス報道官は、「ジョージア政府に対し、平和的な集会と抗議の自由を尊重するよう求める」、「私たちはジョージア国民とその願いに寄り添っている」と記者団に述べた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、ジョージア国民への支持を表明した。

EUのジョゼップ・ボレル外交安全保障上級代表は、今回の法案について「EUの価値観や基準と相容れない」と警告した。ジョージアはEUに加盟候補国認定を申請しており、北大西洋条約機構(NATO)への加盟も目指している。

■「ロシアの法律」

ジョージアの野党支持のテレビ局は、今回の法案を「ロシアの法律」と呼んでいる。ロシアでは同様の法律が、西側が資金提供するNGO、独立系メディア、ジャーナリスト、ブロガーらを弾圧する目的で拡大された。「外国の代理人」とされた人は現在、刊行物に「外国の代理人」というラベルをはっきり掲げることが義務付けられている。

与党「ジョージアの夢」のイラクリ・コバヒゼ代表は、この法案がロシアの抑圧的な法律と似ているとの批判は誤解を招くと主張。「ゆくゆくは騒動は静まり、国民はNGOの資金調達に透明性をもつことになる」と述べた。

しかし、国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルはBBCに、ジョージアのNGOはすでに10種の法律が適用されており、財務省は口座、資金、その他の情報に完全にアクセスが可能だと説明した。

ジョージアでは、ロシアの本格的なウクライナ侵攻を受けて政治的な緊張が高まっている。多くの国民は侵略戦争だと考えており、ジョージアに逃れてきたロシア人も何千人もいる。しかし、政府は中立的な立場をとっており、公然とウクライナを支持することも、ロシアに制裁を加えることもしていない。

今回の法案が通れば、ロシアの法律をまねて非民主的で権威主義的な体制を敷いているベラルーシ、タジキスタン、アゼルバイジャンなどの旧ソ連構成国に、ジョージアも加わることになる。

ロシアとジョージアでは「代理人」という言葉は歴史的に、「スパイ」や「裏切り者」といった否定的な意味をもち、外国勢力の利益のために行動しているとの印象を与える。

ジョージアは2008年にロシアの侵攻を受けた。ロシア軍は現在、ジョージアの領土の約2割を占める南オセチアとアブハジアの2地域を占領している。
2023.03.09 21:34 | 固定リンク | 戦争
バフムート「ロシア失速・死者3万人」
2023.03.09
ウクライナにとって、バフムートでの戦いは「多くのロシア人を殺すまたとない機会」だったと、ある当局者は語った。


ウクライナ東部バフムート、ロシアの死傷者は最大3万人=西側当局

西側の複数当局者はこのほど、ウクライナ東部の前線となっているバフムート市で、昨夏に戦闘が始まって以降、2万~3万人のロシア兵が死傷しているとの見解を示した。この戦闘の規模と、同市の戦略的重要性は全く釣り合いが取れていないとしている。

凄惨な戦闘は6カ月以上にわたり続いている。いまも、バフムートの未来がどうなるかは分からないままだ。

戦闘が始まって以降、バフムートの人口の約9割が市外へ逃れた。

東部ドンバス地方にある、この小さな行政の街は、がれきになった建物や木々が広がる荒地と化している。

この街がロシアの手に落ちたとしても(時間がかかる可能性は残っているし、そうなる保証もないが)、ロシア政府が得るものは少なく、むしろ失うものが多いと、西側当局者は指摘する。

ウクライナにとって、バフムートでの戦いは「多くのロシア人を殺すまたとない機会」だったと、ある当局者は語った。

ウクライナ軍も大きな犠牲を払ってきた。ただ、ロシア国防省が7日に言及したウクライナ兵の死者数について、西側当局者は信用できないとした。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相はメッセージアプリ「テレグラム」に投稿された国防会議向けの声明で、ウクライナは2月だけで1万1000人の兵士を失ったとした。

「ウクライナ政権の自国民に対する無関心さは驚くべきものだ」と、ショイグ氏は述べた。おそらく、ロシア政府の人海戦術に対するウクライナの批判を意図的にひっくり返すためだろう。

西側当局者はショイグ氏が挙げた数字を「認めない」としている。

■ロシアが「失速」か

一方で、バフムート制圧に向けたロシアの動きを主導している、ロシアの民間雇い兵組織「ワグネル・グループ」については、人員も装備も不足しているとみている。

ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は、ロシア軍に対する一連の攻撃により、同グループがバフムートを占領するのに必要な弾薬がロシア軍から供給されていないと非難。

これは「ただの官僚主義、あるいは裏切り」の結果だと主張した。

バフムートがどうなるにせよ、ある当局者は、ロシア側の動きが「失速」していると考えていると述べた。ウクライナの同盟国の間では、この戦闘によってロシア政府が近い将来、意味のある前進を遂げる可能性が失われたという、明確な希望が広がっている。

ある西側当局者は、バフムートでの戦闘は「極めて小さな戦術的出来事」であり、「どちらの側にとっても」戦略的意義はないとした。

ロシアのショイグ国防相は「アルチョモフスク(バフムートのロシア語名)の解放に向けた活動は続いている」とし、これが突破口になるだろうと、テレグラムに投稿した。

「この街はドンバス地方にとどまるウクライナ軍にとっての重要な防衛拠点だ」

「この街を制圧すれば、ウクライナ軍の防衛線へのさらなる攻勢が可能になる」

しかし西側当局によると、現在、ロシアが広範囲に攻勢をかける兆候は見られない。

また、ロシアのウクライナ侵攻を統括するワレリー・ゲラシモフ総司令官が「プレッシャーにさらされている」とした。

「彼が主導権を取り戻すのは難しいようにみえる」

ウクライナ政府を支援する西側当局が、ロシア政府の作戦はうまくいっていないと示唆したのは、今回が初めてではない。昨秋にウクライナが電光石火の反攻を実施した際にも、同様の主張がなされた。

今冬にロシアが獲得した領土は極めて小規模だった。

こうした中、ウクライナは西側諸国から、戦車や装甲車といった軍事装備を新たに供与されており、早ければ5月にも実施するであろうロシアに対する攻勢に向け、計画を立てている。

■消耗戦続く

ロシア側は数カ月にわたりバフムートの占領を狙っており、ウクライナとロシアは過酷な消耗戦で大きな損害を被っている。

地元当局者によると、ここ数日は市街戦が起きているという。

しかし、バフムートのオレクサンデル・マルチェンコ副市長は先週末、ロシアはまだ街を掌握していないと、BBCに語っていた。

こうした中、ロシア軍の作戦に加わっている、同国の民間雇い兵組織「ワグネル・グループ」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏は、弾薬が不足していると訴えている。ワグネルの戦闘員とロシア正規軍をめぐっては、両者の間に何らかの摩擦が生じているとみられている。

プリゴジン氏は、自身の代理人がロシア軍の本部への出入りを禁じられたとも主張している。

ウクライナ紙ウクライナ・プラウダは、5日に前線を訪れたウクライナ陸軍部隊司令官オレクサンドル・シルスキー氏が、バフムートでの戦闘が「最高レベルの緊張」に達したと語ったと報じた。

「敵はワグネル部隊を先頭に追加投入している」、「我が部隊は、バフムート北部の我々の陣地を勇敢に守り、街が包囲されるのを阻止しようとしている」と、シルスキー氏は述べたという。

複数のアナリストは、バフムートには戦略的価値はほとんどないものの、ロシア政府に良い知らせを伝えるのに苦労しているロシア軍司令官たちにとって、重要な場所になっていると指摘する。

この街を占領すれば、ロシアは昨年9月に一方的に「編入」を宣言したウクライナ東部と南部の4州のうちのドネツク州について、全体を支配するという目標に少しは近づくことになる。
2023.03.09 08:58 | 固定リンク | 戦争

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