日本の10式戦車「あまりにも脆弱」クーラーがない
2023.03.11


投資8000億円!新戦車は陸自弱体化への道 10式戦車は、欠点・弱点があまりにも多い 10式戦車にはクーラーがない

防衛省は本年度予算で10式戦車10両を102億円で要求した。陸上自衛隊は、平成23年(2011年)度末以降、この新しい戦車の配備を始めている。

結論から申し上げると、10式戦車の開発と調達はまったくのムダである。そもそも今日、陸上戦闘における戦車の優先順位はさほど高くない。多額の費用をかけて新しい戦車を導入するより、はるかに安価な既存の戦車の近代化で間に合う。防衛省は既存戦車と大同小異の新型戦車に大きな予算を使うことで陸自を弱体化させている。

当然ながら戦車は戦車だけで戦えるわけではない。戦車とペアを組む89式戦闘装甲車は、高額だったためにわずか68両しかなく、予算が足りず、第7師団すべての普通科連隊に配備されているわけではない。一部の普通中隊は、路上でしか使えない装輪式の96式装甲車などを使用している。当然、ほかの師団・旅団には配備されていない。

もちろん、野戦で戦車に随伴できない。第7師団以外の部隊では戦車に随伴するのは不整地走行ができない96式装甲車と同じく軽装甲機動車、あるいは非装甲の高機動車である。まるで第三世界の軍隊だ。同様に82式指揮通信車も、旧型のうえに近代化もオーバーホールも行なわれていない。これまた装輪式で不整地走行能力が低く、戦車に随伴できない。そもそも陸自では戦車に対して装甲車両の数が圧倒的に少ない。

しかも、80年代にその他多くの装甲車両、装備の調達が開始されているが、30年以上も放置されている。このため、旧式化が著しいうえに稼働率も落ちている。偵察用バイクに至っては、充足率は3割程度だ。戦車を長距離運搬する戦車トランスポーターは戦車1個連隊に数両しかない。これではいくら新型の10式戦車を導入しても戦略機動がほとんどできず、遊兵化するだけだ。

当然というべきか、これらの装甲車両は10式と同様のネットワーク機能を付加する計画もない。たとえるなら、会社の営業所のひとつだけがネットワーク化し、あとの営業所や工場などは音声電話しか持っていないようなものである。このためネットワーク化した10式を導入したメリットは生かされず、投資効率が極めて悪くなる。当然、現代的な戦闘を行う能力はない。ましてネットワーク化が進んでいる米軍との共同作戦は不可能だ。

■10式戦車とはどのようなものか

10式戦車は90式戦車の後継として開発された。開発費は防衛省の平成25年度「ライフサイクルコスト報告書」によると、構想段階から開発費、試験費、生産のための初度費含めて871億円となっているが、主砲や懸架装置などのサブシステムの研究開発は別途であり、これらを加えるとざっと1000億円ほどになる。

調達単価は約10億円で、毎年約13両程度、合計で約130億円かけて調達されている。同報告書では300両を調達する前提と、ライフサイクルコストを約7500億円と算出している。

だが、現大綱の定数を満たすのであれば教育向けの車体も必要になる。このためさらに20両は必要だと考えると、合計はおよそ8000億円になる。後述するように、兵站(へいたん)の複雑化など間接的な経済的負担増などを含めれば、1兆円を超えるはずだ。

対して既存の戦車の近代化であれば、近代化の仕様にもよるが1000億円もあれば十分だ。

現在、陸自は約340両の90式戦車を保有している。現防衛大綱では戦車の定数は300両であり、十分な数の90式が存在する。10式の調達を続けるということは、まだ十分に使える90式戦車を廃棄するということになる。そのような「ぜいたく」をしている「軍隊」は米軍を含めてもほかにない。

必要性が極めて薄い10式戦車の調達は本来必要な陸自の予算をむさぼることになり、情報化・ネットワーク化などの近代化が全般的に遅れる。もっと深刻なのは、兵站が極端に貧弱という陸自長年の弱点を更に悪化させることだ。

その一例が、貧弱な衛生キットという形で表れている。先の「自衛官の『命の値段』は、米軍用犬以下なのか」は筆者の予想以上の反響を呼んだ。多くの読者に、地味だが重要な事実に興味を持っていただいたのは望外の喜びだった。

10式戦車のような不要な装備の調達よりも、衛生など本来の戦力の基盤となるべきものに予算を使うべきだ。そのような地味で重要な基盤を軽視していくら新型戦車を調達しても、陸自の戦力強化にはならない。これらは樹木ならば根に当たる。このようにインフラの整備を極端に軽視して一部の新型兵器を調達するのは、根っこのない植物に無理やり花を咲かせるようなものである。いわば、あだ花に過ぎない。

10式戦車は戦闘重量が44トン(90式は50トン)。最新式のC4IR(Command Control Communications Computers and Intelligence〈指揮・統制・通信・コンピュータ・情報〉)システム、車体に周囲を監視できる状況把握システム、より強力な国産の主砲と砲弾を有し、エンジンを切ったままでも電子システムに電力を供給する補助動力装置を有している。

だが、これらは軽量化を除けば、既存の90式戦車の近代化で済んだ話だ。

■軽量化の目的とは?

防衛省は、90式は車内が狭くてC4IRシステムが搭載できないことを、10式導入の理由のひとつに説明してきたが、これは事実ではない。10式戦車のC4IRシステムの開発は90式をテストベッドにして行なわれた。そして車内容積は軽量化を追求した10式の方が90式よりも狭い。このため将来の近代化への冗長性は低い。

旧ソ連のT-55やT-62といた旧式戦車にC4IRシステムが搭載される近代化パッケージを多くのメーカーが提案している。筆者は何度も試乗しているが、これらのソ連の戦車の車内容積は90式よりもはるかに狭い。それらの近代化が可能であり、90式では不可能だというのは子どもだましだ。この子供だましに日本のメディアや国会議員は簡単にだまされる。

はたして防衛省は10式の採用後、90式のC4IR近代化を言い出した。10式を導入し、かつ戦車部隊をネットワーク化するためには既存戦車の近代化とそのための費用も必要だ。これもまた10式を導入するための間接的なコストとなる。だが、予算の不足でそれは実現しないかもしれない。であれば10式の調達が完了する約30年の間、陸自戦車隊のネットワーク化は実現しない。しかも30年のうちに現行の10式のネットワーク機能は完全に旧式化する。

陸自は過去、74式や90式戦車の近代化をほとんど行っておらず、10式の近代化も同様に放置されるだろう。90式にネットワーク機能を付加し、センサー類を更新するなど最低限の近代化を行うならば、3億円もあれば十分だろう。年に平均15両の10式を調達するとして150億円。その予算があれば50両の90式の近代化が可能となる。それならば、7年も掛からずに陸自の全戦車のネットワーク化が完成する計算になる。

■そもそも近隣諸国は揚陸能力を有していない

90式で唯一不可能なのは、戦闘重量を44トンに抑えることだけだ。全国の主要国道の橋梁1万7920カ所の橋梁通過率は10式戦車が84%、50トンの90式が65%になる。62~65トンの海外主力戦車は約40%とされている。

だが、そもそも防衛大綱でも、我が国本土に対する敵の戦車師団が揚陸してくるような事態は、ほぼ起こりえないとしている。事実、中国、ロシア、北朝鮮などはそのような揚陸能力を有していないし、日本とそのような戦争をする理由もない。そのような戦争をすれば、前世紀のロシアのように経済は崩壊、少数民族の蜂起などが発生し、体制が崩壊するだろう。

脅威とは意思×能力で表されるが、日本における戦車戦については、意思も能力もゼロに近い。そもそも最盛期のソ連軍ですら北海道に揚陸作戦を行う能力はなかったし、そのための作戦も存在しなかった。これは筆者が顧問を務める「Kanwa Information Center」の発行人で、ロシア軍と軍事産業界に太いパイプを持つ、アンドレイ・チャン氏が複数のロシア将官に確認している。

仮に、ある程度の揚陸能力を持っているにしても、周辺諸国に対して圧倒的な米軍と自衛隊の空海軍戦力によって、揚陸艦や輸送機はほとんどが沈められ、撃墜される。我が国に師団単位の敵が揚陸しているということは、すでに日米の空海がせん滅されている状態であり、制空権も制海権も敵の手にあるということだ。日米が制空権を取られれば、いくら優秀な戦車があっても航空攻撃で容易に撃破される。これがどれほど空想的なシナリオだということは、高度な軍事知識を持っていなくとも理解できるだろう。

■90式は北海道限定だった?

そもそも50トンの90式は、諸外国の同世代の戦車よりも5~10トンも軽いのだ。90式が運用できない環境では、同クラスの敵戦車も運用できない道理となる。

90式は、富士学校を除けば北海道だけに集中配備されている。北海道限定の銘菓「白い恋人」のような存在だ。この90式のような「軽量な戦車」ですら、北海道限定で開発され内地で使用できないようであれば、それは大問題だろう。

元陸自の機甲科の幹部で著作の多い木元寛明氏は、90式を内地で使うことは問題ないと主張している。シンガポールのような都市国家ですら、90式よりもはるかに重たいレオパルト2A4を運用している。常識的に考えれば防衛省の主張はおかしな話であることがわかるはずだ。

しかも防衛省は90式導入時に、「内地で使えない戦車」という説明は行っていない。今回、内地で使えるように10式を導入するのであれば、かつて、納税者と国会をだまして「欠陥戦車」である90式を導入したことになる。

実際に、防衛大綱では短中期的に想定している脅威は島しょ防衛であり、またゲリラ・コマンドウ対処である。そうであれば、なにも最新式の戦車は必要ない。内地での90式の使い勝手が悪いのであれば、38トンの74式に、ネットワーク機能、増加装甲、センサー類の更新などを行えば済む話なのだ。別に対戦車戦闘を行うわけではないので、これで十分である。74式の主砲は105ミリ砲であり、10式の120ミリ砲よりも威力が低い。このため市街戦などでは、より副次被害を抑制できる。その面では、むしろ74式の近代化のほうがふさわしい。

確かに将来は確実ではなく、機甲部隊とその戦闘能力の維持は必要だ。だが、近代化した90式を北部方面隊隷下の陸自唯一の機甲師団である第7師団に集中配備し、そのほかの方面隊は近代化した74式で十分だ。ゲリラ・コマンドウ対処ならば、敵の最新式の戦車を戦うわけではない。余った90式は法律を改正してモスボール保存すればよい(現在の物品法では不可)。

10式はゲリラ・コマンドウ対処にも有用だと防衛省は説明しているが、それも10式導入のためのセールストークに過ぎない。実際のところ10式はゲリラ・コマンドウ対処を軽視している戦車だ。

■10式は防御力が弱い

また、10式は防御力が弱く、ゲリラ・コマンドウ事態での主たる脅威であるRPG7や対戦車ミサイルなどの携行型対戦車兵器、地雷やIED(即席爆発装置)などに対する防御力が極めて脆弱だ。

10式は諸外国の3.5世代戦車にあたるが、車体および砲塔の正面こそ複合装甲を採用し、自身の装備する主砲に耐えられる防御力を有している。だが、それ以外の部分は鋼鉄製の薄い、せいぜい数センチ程度の圧延装甲板板であり、防御力は90式戦車と大差はない。実際に陸幕の要求は90式に勝るか、同等というものだ。

イラクやアフガニスタンでの戦車の主たる被害は、地雷やIED、それにPRG7(特に2つの弾頭を持ったタンデム弾頭型)などの対戦車兵器だ。昨今の対戦車兵器はタンデム弾頭を有している物が多く、これだと単なる鋼板の装甲はもちろん、反応装甲などの付加装甲があっても貫通する。また戦車の直前で ホップアップして、いちばん装甲の薄い砲塔や車体上部を狙ってトップアタックをかけるタイプの対戦車ミサイルも多い。

このため諸外国の3.5世代戦車は、第3世代の戦車に多くの増加装甲を付加している。

これらは側面や後部はもちろん、上部、車体下部まで文字どおり360度の防御力を強化している。戦車を「動くトーチカ」として使用するためだ。このため戦闘重量は60~70トンほど

10式は新規の設計で、その分、第3世代の戦車を近代化した3.5世代戦車に比べて重量軽減という点では多少有利だ。だが、だからといって70トンの戦車と同じ防御力を確保できるわけではない。それは物理的にも価格面からも不可能だ。セラミックやそのほかの複合装甲は、極めて高価であり、これらを多用すればコストがハネ上がる。そのため、そのような装甲を360度には使用していない。

一例を挙げるならばイスラエルの最新戦車であるメルカバIVのサイドスカート(車体側面につける一種の増加装甲)の厚さは、約10センチ。複合装甲と空間装甲を併用していると思われる。対して10式のサイドスカートは90式と同じで、わすか数ミリの鋼鉄製装甲板に過ぎず、単弾頭のRGPなどにしか有効でない。それではタンデム弾頭のRPGが防ぐことはできないだろう。

■なぜ10式の価格は安価なのか

10式は軽量化と廉価を追求した戦車だ。90式ですら当初の調達コストは11億円もしたのに、10式は10億円にすぎない。にもかかわらず、C4IRシステム、補助動力装置、状況把握システムなど第3世代である90式にない装備と、これらを統合するためのソフトウエアが搭載されているのだ。ソフトウエアが戦車の価格に占める割合は少なくない。このため諸外国の3.5世代戦車は、おおむね第3世代の戦車の2倍程度の単価になっている。10式の価格は何らかの事情で安すぎる、と疑いたくなるのが普通だろう。

74式も90式も、諸外国の同世代の戦車に比べて3倍ぐらい高かった。海外の3.5世代の戦車は、おおむね15億円程度であるから、10式は 30億~45億円程度になっても不思議ではない。それがいきなり他国の3.5世代戦車の3分の2程度まで価格を激減させているのだ。価格が極端に安いのには何か訳があると考えるべきだ。

むろん、コスト削減はきわめて大事であり、10式の開発ではコスト削減が徹底的に行なわれた。その努力と成果は筆者も否定しない。10式の開発にあたって民生コンポーネントの採用や、部品点数の削減などが大胆に行なわれた。だからといって10式の防御力やネットワーク機能が諸外国の3.5世代戦車と同等と主張するのは無理がある。

実際に防衛省技術研究本部(以下、技本)はは、かつて筆者のインタビューに対して「性能と価格をトレードオフした設計、機能のソフトウエア化などが盛り込まれた。性能と価格をトレードオフというのは各機能やコンポーネントに関して技本が陸幕に対して、この部分を高性能にするとこれだけコストが上がります、と説明し、コストを削減するためにあえて高性能化をあきらめ、費用の安い既存の技術やコンポーネントを採用した部分もある」と説明している。

■10式戦車にはクーラーがない

その最たる10式戦車はクーラーを装備していない。このため夏場のNBC環境下では、30分も使用できない。防衛省は国産兵器開発に際して、「我が国固有の環境にあったものが海外にないから」ということを開発の言い訳にしているが、「夏場はシンガポール並みに高温多湿になる『我が国固有の環境』に、なぜクーラーを付けないか。それは調達単価と重量の低減のためだろう。クーラーを搭載すれば、クーラー重量とコストがかかるだけではない。電力も余計に消費するので、補助動力装置もより大型(つまり重く、高価になる)にする必要がある。そのぐらい10式の開発と調達は費用と重量の軽減に神経質になっているのだ。

10式戦車の導入は陸自の兵站(へいたん)を圧迫する。現在陸自には約300両の74式、340両の90式、70両の10式が存在するが、先述したように現在の防衛大綱では戦車の定数は300両である。大綱の定数は大綱の最終年までに達成すればいいことになっているので、これから10年近く3種類の戦車が混在することになる。しかも戦車の定数の枠には入らないが、今後、装輪戦車とも言うべき「機動戦闘車」の配備も始まり、事実上、4種類の「戦車」が混在することになる。

90式と10式は同じ120ミリ滑腔砲を使用している。90式用の弾薬は10式で使用できるが、10式の砲弾は威力を高めるために、発射時により高い圧力が砲にかかり、90式では使用できない。

つまり、同じ口径の砲弾を使用する90式とさえ互換性はない。それを解消するためには、90式の主砲を10式と同じものに換装する必要があるが、これまた莫大な投資が必要である。

もっとも重要な点は、4種類の戦車を運用すると、1車種の運用と比べて何倍も高いコストがかかる、ということだ。教育や訓練でも、4種類の戦車とそれぞれの教官が必要で、教育所用の戦車の数と維持費、教官、整備員の人件費も4倍となる。当然ながら兵站も4重に必要であり、部品の生産の効率は単純計算で4分の1となり、生産コストは跳ね上がる。

そもそも、陸自の機甲科の予算で、戦車300両(+機動戦闘車200両)を維持することは不可能だ。諸外国では、旅団規模にすぎない陸自唯一の機甲師団である第7師団を、現状でも予算不足で戦闘可能な状態に維持することさえできていない。

当然ながら戦車は戦車だけで戦えるわけではない。戦車とペアを組む89式戦闘装甲車は、高額だったためにわずか68両しかなく、予算が足りず、第7師団すべての普通科連隊に配備されているわけではない。一部の普通中隊は、路上でしか使えない装輪式の96式装甲車などを使用している。当然、ほかの師団・旅団には配備されていない。

もちろん、野戦で戦車に随伴できない。第7師団以外の部隊では戦車に随伴するのは不整地走行ができない96式装甲車と同じく軽装甲機動車、あるいは非装甲の高機動車である。まるで第三世界の軍隊だ。同様に82式指揮通信車も、旧型のうえに近代化もオーバーホールも行なわれていない。これまた装輪式で不整地走行能力が低く、戦車に随伴できない。そもそも陸自では戦車に対して装甲車両の数が圧倒的に少ない。

しかも、80年代にその他多くの装甲車両、装備の調達が開始されているが、30年以上も放置されている。このため、旧式化が著しいうえに稼働率も落ちている。偵察用バイクに至っては、充足率は3割程度だ。戦車を長距離運搬する戦車トランスポーターは戦車1個連隊に数両しかない。これではいくら新型の10式戦車を導入しても戦略機動がほとんどできず、遊兵化するだけだ。

当然というべきか、これらの装甲車両は10式と同様のネットワーク機能を付加する計画もない。たとえるなら、会社の営業所のひとつだけがネットワーク化し、あとの営業所や工場などは音声電話しか持っていないようなものである。このためネットワーク化した10式を導入したメリットは生かされず、投資効率が極めて悪くなる。当然、現代的な戦闘を行う能力はない。ましてネットワーク化が進んでいる米軍との共同作戦は不可能だ。

■先進国の機甲部隊としては落第点

兵站車両も同様であり、充足率、稼働率が低く中隊規模の演習を支えるのがせいぜいで、師団規模の戦闘は不可能だ。つまり、装備の面から言っても先進国の機甲部隊としては落第点で、博物館の様相を呈している。

先の東日本大震災で明らかになったように、無線機も定数を大幅に割り込み、しかも旧式が多いので、世代が違うと通信ができなかった。さらに言えば、陸自は偵察用UAVや精密誘導砲弾など、情報化、ネットワーク化の面では中国やパキスタンのような途上国にすら後れを取っている。陸自普通科の自動車化が 完了したのも21世紀に入ってからだ。陸自は戦車など一部の装備を除き、朝鮮戦争レベルで先進国の軍隊とは呼べないレベルにある。陸自が先進国の軍隊であると思っているのであれば、それは幻想に過ぎない。

繰り返すが10式を開発・調達せず、既存の戦車の近代化で済ませれば1ケタ少ない予算で済んだはずだ。そうであれば、その予算を情報化、ネットワーク化、諸装甲車やそのほかの装備の近代化、稼働率の向上、あるいは衛生、兵站の向上など、切実に必要な分野に投資することができたはずだ。

現状のような一部の「花形兵器」に資源を偏重していては、まともな戦力整備はおぼつかず、抑止力の整備という面でも落第といえる。税金の無駄使いを看過してはならない。
2023.03.11 13:55 | 固定リンク | 防衛

- -