SMプレイ結束バンドで拘束「首を複数回刺す」
2023.08.16


■ススキノ首切り遺体 恐怖の動画撮影 田村瑠奈容疑者

後ろ手で拘束し殺害か 札幌ホテルの首切断事件、異常な犯行の様子が明らかに 押収された動画に男性を襲う場面が

札幌・ススキノのホテルで首を切断された男性(62)の遺体がみつかり、田村瑠奈容疑者(29)ら親子3人が殺人の疑いで逮捕された事件で、その異常な犯行の様子が明らかになってきている。

瑠奈容疑者は7月1~2日、ホテルの室内で、男性(62)の首元付近をナイフのような刃物で複数回突き刺し、出血性ショックで死亡させたとされる。

遺体の状況などから、男性はこのとき、後ろ手に拘束されており、抵抗できない状況の中、背後から刺されていたことが判明。押収された動画にも、ホテルの浴室でナイフを持った人物が男性を襲う様子が映っていた。

また、いまだに男性のスマートフォンは発見されていないが、瑠奈容疑者がホテル客室内で男性のスマホを工具で壊したとみられることも分かった。札幌・中央署捜査本部は瑠奈容疑者らが証拠の隠滅を図ったとみている。

■容疑者宅から「頭部発見」

札幌の首切断事件、父母娘が逮捕の異様な展開「人間を象徴する部分、遺棄以外の意味も」

札幌市の繁華街ススキノのホテルで男性の切断遺体が見つかった事件が大きく動いた。死体損壊などの疑いで逮捕された職業不詳、田村瑠奈(るな)容疑者(29)と父親の勤務医、修容疑者(59)の同市内の自宅から、頭部とみられるものが見つかったことが25日、分かった。札幌・中央署捜査本部は被害者のものとみて確認を進める。

捜査本部が自宅を家宅捜索したところ、人の頭部とみられるものが見つかった。瑠奈容疑者が1人で実行し、修容疑者は送迎するなどしていたとみている。捜査本部は25日、同じ男性に対する死体損壊などの疑いで母親のパート従業員、浩子容疑者(60)も逮捕した。娘と父親、母親が共犯で逮捕されるという異様な展開で、動機については謎も残る。

被害男性は北海道恵庭市の会社員、浦仁志さん(62)。死因は刺し傷による出血性ショックで、捜査本部は殺害容疑も視野に捜査する。

瑠奈容疑者について、近所の人たちは「地味な印象」「あまり見かけなかった」と話し、交流が乏しかった様子もうかがえた。「小学校の頃から学校にはあまり行っていないようだった」との証言もある。

修容疑者は札幌市の勤医協中央病院に精神科科長として勤務。身体疾患で入院した患者らの不安を和らげる「リエゾン・コンサルテーション」を担当していた。過労死やうつなど、メンタルヘルスに関する多くのシンポジウムや、講演会など社会的、啓蒙(けいもう)的な活動にも携わっていたという。

東京未来大の出口保行教授(犯罪心理学)は「通常は身内が犯罪を起こした場合は自首を勧めるなどストッパーになることが多い。親子で共犯になるのは珍しい。一般論として父親の犯行を娘が助けるという構図は考えにくく、娘の犯行に父親が介在したと考えられる。何らかの目的で計画段階から関与したか、後始末を手伝った可能性も考えられる」と語る。

自宅は札幌市営地下鉄の駅から歩いて数分の静かな住宅街にある3階建てで、近所の住民らによると、一家は新築された約20年前に住み始めたという。

自宅に頭部を隠していたとみられることについて、出口氏は「外よりも自宅の方が発見されにくいとして遺棄目的だった可能性はある。父親が医師として保存の専門知識を生かしたとも推測できる。ただ、通常は遺体を自分のそばに置いておくことは考えにくい。頭部は人間を象徴する部分なので、他の意味があるのかもしれない」との見方を示した。

■「犯罪心理学者」

札幌ススキノ首切り遺体「切断頭部を動画撮影」の猟奇性、何者かが浴室で触る様子も 「よほど自分の行為に執着か」

事件は一段と猟奇性を帯びてきた。札幌市中央区の繁華街ススキノのホテルで男性(62)の遺体を損壊するなどした疑いで無職、田村瑠奈容疑者(29)=同市厚別区=と両親が逮捕された事件で、切断された頭部を撮影した動画が押収されていたことが分かった。どのような精神状態だったのか。

動画は容疑者親子宅の家宅捜索で見つかり、浴室で撮影されていた。何者かが手袋をして頭部を触っている様子も映っていたといい、札幌・中央署捜査本部は特定を進め、経緯を調べる。

頭部は親子宅の浴室で見つかった。一部傷みが進行しており、歯型から身元を北海道恵庭市の会社員、浦仁志さんと確認した。

犯罪心理学が専門の出口保行・東京未来大教授は、「普通はあり得ない行為だ。多くの犯罪者は自分の犯行に関するものが映像のような証拠に残ることを忌み嫌う。よほど自分の行為に執着していたのかもしれない」と指摘する。

事件は7月1日午後10時50分ごろ、札幌市内のホテルの客室に瑠奈容疑者と浦さんが入り、約3時間後に瑠奈容疑者が1人で退出した。その際に、瑠奈容疑者は切断した首を自宅に持ち帰ったとみられる。

出口氏は「相手の命を奪うという結果だけではなく、死んでいく様子に刺激を受けるなど殺害のプロセスに重きを置く犯罪者もいる。切断された頭部を撮影するのは常軌を逸した行動であるのは確かだが、相手に対する負の感情、恨みが強かった可能性もある」との見方を示した。

瑠奈容疑者は1人で首を切断した可能性が高いが、「海外では捜査機関が犯人を男性だとみていたが、結果的に女性だった事件もある。精神状態次第で人格や顔つき、筋力まで変化するという事例も報告されている。ただ、被害者は瑠奈容疑者の父親と近い年齢で、トラブルがあってもすぐに殺意がわくとは考えにくい。一度トラブルがあった人物となぜ2人でホテルに入室したのかも注目される」と日向野氏は語る。

修容疑者は送迎役を務め、浩子容疑者は自宅に頭部が持ち込まれていたことを認識していた疑いがある。日向野氏は「一般には子供が犯罪に至るレベルの行動をしようとした場合、家族が説得するか裁判に持ち込むのが普通で、共犯者にはなりにくい」としたうえで、こんな見方を示す。

「修容疑者が瑠奈容疑者に対して〝一体感〟に近い強い愛情を抱いていた場合、娘のトラブルの話を聞いて、自らの社会的地位を考慮できなくなるほどの怒りの感情がわいたとも考えられる。母親は日常から父親に従わざるをえない立場だったのではないか」

■田村瑠奈容疑者が男性から「暴力を受けた」と母・浩子容疑者が主張 家族ぐるみの犯行心理

札幌市の繁華街ススキノのホテルで男性(62)の遺体を損壊した疑いで、職業不詳の田村瑠奈容疑者(29)ら親子3人が逮捕された事件で、母親の浩子容疑者(60)が「娘と男性との間でトラブルがあった」と供述していることが分かった。瑠奈容疑者の犯行の動機となった可能性もあるが、父で精神科医の修容疑者(59)が計画段階から関与するなど「家族ぐるみ」で犯行に及ぶのはやはり異様だ。一家の心理状態を精神科医が読み解いた。

浩子容疑者は、瑠奈容疑者が被害男性から暴力を受けたとの趣旨も主張している。札幌・中央署捜査本部は真偽を含め慎重に調べている。

捜査本部は、犯行現場のホテルには瑠奈容疑者だけが立ち入ったとみている。修容疑者は瑠奈容疑者とともに事件で使われたとみられるのこぎりを購入。同じ店でスーツケースも買うなど、計画段階から遺体を切断、持ち去ることを想定していた疑いがある。

ヒガノクリニック院長で精神科医の日向野春総氏は6日の夕刊フジで、犯人像として「女性、医療関係者の可能性」を指摘していた。

■「人間の証明」から 「ゆがんだ愛情はいい結果をもたらさない」

札幌・ススキノのホテルで男性の切断遺体が見つかった事件は、一緒にホテルに同行した女に加え、その両親も逮捕されるという異常な様相を見せています。犯行前には父と娘でのこぎりを購入しており、家族ぐるみの犯行の線が濃厚です。

識者からは、親であれば普通、自首をうながすなどストッパーとなることが多いという指摘も上がっています。

親が子の犯行を手助けするという理解しがたい事件をみて、先日亡くなった作家、森村誠一さんの代表作「人間の証明」を思い出す。

1977年の映画版では、トップデザイナーとして確固たる地位を築いた女が、終戦直後に米兵との間にもうけた息子の突然の来日から犯罪に手を染める物語と並行して、ひき逃げ事件を起こしたもう一人の息子のほうは何とか助けようとする物語が進行します。

息子からひき逃げ事件を告白された女は、息子を守るためにアメリカへ送り出すのです。自身の、そして政治家である夫の地位を守るためでもありますが、すでに一人の息子を殺害して失った女が、もう一人の息子のほうは失いたくないという思いでそうした行動を取ったのです。

映画では、もう一人の息子もアメリカで警察官に射殺されてしまい、女はすべてを失います。

今回の事件で、両親がなぜ犯行を手助けしたのかは、これからの捜査で解明されるでしょう。娘への愛情もあったに違いありませんが、ゆがんだ愛情は決していい結果をもたらしません。
2023.08.16 20:36 | 固定リンク | 事件/事故
円安(輸出増)で「GDP6%増」
2023.08.16
日本の4~6月期GDPが6%増 円安(輸出増)と外国人観光客の回復が後押し

日本の内閣府は15日、4~6月の国内総生産(GDP)の速報値が年率換算で6%増だったと発表した。円安が輸出を後押しした。

GDP成長率は市場予想の約2倍と、過去3年近くで最大の伸び幅となった。

日本円はこのところ、世界の主要通貨に対して大きく下落している。対ドルでは今年に入ってから10%以上下げている。

これにより、日本製品が世界の消費者にとって安くなり、輸出を助けた格好だ。

GDPは、その国の経済の良し悪しを測る最も重要な指標の一つ。企業はこれを元に事業や雇用の拡大を決め、政府は課税額や歳出を算出する。

トヨタ自動車や本田技研工業(ホンダ)、日産自動車などの自動車メーカーはここ数カ月、輸出の需要の高まりから利益を伸ばしている。

4月末に政府が入国制限を解除し、観光客が増えたことも、日本経済の成長につながっている。

観光当局によると、外国人観光客数は6月時点で、新型コロナウイルスのパンデミック前の70%まで回復した。

また、中国が団体旅行を解禁した8月からは、観光客による消費で日本経済がさらに活性化すると期待されている。

パンデミック前、中国からの渡航者は日本の観光消費の3分の1以上を占めていた。

パンデミック後の国内消費の回復は遅れているが、こうした要素がその影響を相殺する効果を示している。

富士通のチーフエコノミスト、マーティン・シュルツ氏は、「日本の下半期の最大の難点は、国内経済が冷え込んでいることだ」と指摘する。

キャピタル・エコノミクスのマルセル・ティリアント氏は、今四半期の経済データの詳細は、「見出しほど印象的ではなかった」と語る。

ティリアント氏は、日本経済の半分以上を占める個人消費の落ち込みなど、多くの問題を強調した。

日本の労働者の賃金は、過去28年間で最も速いペースで上昇している。一方で、インフレ率が40年ぶりの高水準にあるため、賃金は実質ベースで1年以上、下がり続けている。
2023.08.16 11:05 | 固定リンク | 経済
バイデン氏「中国と内通している政治家を排除しろ」
2023.08.14



異例の台湾訪問 麻生副総裁「戦う覚悟」発言の真意 中国の反発も“狙い通り” ワシントン・ポスト「中国と内通している政治家を排除しろ」

「ワシントン・ポストの報道は、米国の岸田首相に対する警告だ。米国と機密情報共有を可能にするサイバー・セキュリティーの強化とともに、『中国への機密情報漏洩を遮断しろ=中国と内通している政治家を排除しろ』という要求だ」

3日間にわたり台湾を訪問した自民党の麻生太郎副総裁。各国の政治家や有識者を相手にした講演にのぞむと、中国を念頭に「戦う覚悟を持つことが抑止力になる」と訴えた。この発言が中国の激しい反発を招くなど波紋を呼んでいる。しかし、こうした反応も“狙い通りだ”と、麻生氏周辺は強調する。
麻生氏はなぜ、このような発言をしたのか。同行した記者が、その真意に迫った。

■異例の訪台の背景 麻生氏のこだわり

自民党の麻生副総裁は、8月7日から台湾を訪問した。自民党によると、党のNO.2である副総裁が訪問するのは、日本が台湾と断交した1972年以降初めてだという。
断交後では、党の最高位となる麻生副総裁の異例の訪台。その背景について、自民党関係者は次のように明かしている。

「麻生氏は、台湾へのこだわりが昔から強い。本当は、もっと早い段階に行きたかったくらいだ」

1972年の日中国交正常化に伴い、日本との国交を断つこととなった台湾。政府間交流には制限があるため、自民党青年局が日台外交の主軸となってきた。青年局長の経験もある麻生氏は、長期的に台湾との人脈を築いてきており、副総裁になってからも訪台を模索していたことが、今回の訪問が実現した背景にある。

もう一つ背景にあるのが、緊迫する東アジアの安全保障環境だ。以前から麻生氏は、軍事的圧力を強める中国を念頭に、台湾海峡での戦争、いわゆる「台湾有事」が始まった場合「日本でも戦争が起きる可能性は十分に考えられる」と公言してきた。台湾海峡の安全保障環境について憂慮しているのだ。
そして、麻生氏に近い別の関係者は、訪台を前に、こう強調した。

「麻生氏が台湾に行くこと自体が、『抑止力』として中国に対するメッセージとなる」

■抑止力の強化「戦う覚悟」発言の経緯

「今ほど、日本・台湾・アメリカをはじめとした有志の国に、強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。こんな時代は無いのではないか。『戦う覚悟』です」(麻生副総裁)

8日、台北市内で開かれた国際フォーラムで講演した麻生氏は、対中国を念頭にこう力強く訴えた。この発言に対して、中国側はすぐさま反発。国内でも、立憲民主党の岡田克也幹事長が同日の記者会見で「台湾有事になったとしてもアメリカははっきりと軍事介入するとは言っていない。非常に軽率だ」と批判するなど、波紋を呼んだ。

なぜ、麻生氏は中国側の反発が予想される中、あのような発言をしたのか。その経緯について、麻生氏の訪台に同行した鈴木馨祐元外務副大臣が、9日、BSフジの番組内で解説した。

「今回、実は麻生太郎衆議院議員個人の発言ということではなくて、自民党副総裁という立場での講演。当然、これは政府の内部も含めて、調整をした結果のことですから。少なくともこのラインというのは『日本政府としてのライン』」(鈴木元外務副大臣)

また、鈴木氏は「岸田総理と極めて密に連携をした。今回もいろいろ訪問前にやっている」とも明らかにしている。

しかし、ある政府関係者は、「戦う覚悟」は政府として公式にすり合わせたラインではないと明言した。さらに、麻生氏の発言を聞いた外務省高官は「『戦う覚悟』といっても、色んな戦い方がある」と火消しに走った。言葉の解釈をうやむやにすることで、事態の鎮静化を図りたい意図が透けて見える。

いずれにせよ、麻生氏は「戦う覚悟」という言葉を使うことを、事前に周辺には伝えていた。「岸田総理の口から言えないからこそ、麻生氏自身の思い入れが強い言葉だった」と、周辺は語っている。

■中国が「台湾有事」で日米壊滅計画 外事警察関係者、米は岸田首相に「中国と内通している政治家を排除しろ」と要求

ジョー・バイデン米大統領が10日、西部ユタ州の選挙イベントで語った「中国は時限爆弾だ」という発言が注目されている。習近平国家主席率いる中国経済への深刻な懸念を伝えたとされる。中国国家外貨管理局も同時期、外国企業による4~6月期の対中直接投資は49億ドル(約7100億円)で、前年同期比87・1%減と過去最大となったと発表した。ただ、岸田文雄政権の動向も含めて、別の見方をする情報当局関係者もいる。ジャーナリスト、加賀孝英氏が最新情報に迫った。

「悪い人たち(=習主席以下、中国共産党幹部)が問題を抱えると、悪いことをする」

バイデン氏は10日の選挙イベントで、冒頭の「時限爆弾」発言に続き、中国をこう激しく批判した。

米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は翌日、「中国国内のあつれきが世界に及ぼす影響を指摘したものだ」と説明した。だが、バイデン氏の本音はまったく違う。

「バイデン氏は、中国のサイバー攻撃などに、ブチ切れている。米国は、中国による『台湾侵攻極秘作戦計画』の詳細を握っている。第1戦闘作戦がサイバー攻撃だ。次が武力総攻撃だ。米中はすでにサイバー戦闘状態に突入している」

中国のサイバー部隊について、防衛省関係者は「最強だ。総員17万人超。中核は約3万人の攻撃専門部隊だ。さらに、政府が司令塔となる民間サイバー部隊があり、日本への攻撃も行っている。中国は『台湾有事』の際、台湾と日本、米国をサイバー攻撃で壊滅状態にする計画を立てている」と語った。

対立激化は、次の事実で明らかだ。

①7月中旬、中国当局とつながりのあるハッカー集団が、米国の国務、商務両省を含む約25組織のメールアカウントに不正侵入していたことが発覚した。ジーナ・レモンド商務長官や、ニコラス・バーンズ駐中米国大使、ダニエル・クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)など、対中政策要人が標的とされていた。

②7月29日、米紙ニューヨーク・タイムズが、米領グアムの米軍基地を支える水道、通信など基幹インフラ深部にマルウェアが仕掛けられていたと報じた。米政府は、中国のハッカー集団の仕業と断定し、撤去に乗り出した。「台湾有事」直前に起動し、米軍の出動を妨害する目的とみられる。

③8月初め、米連邦捜査局(FBI)は、中国の情報機関に軍事機密を提供した疑いで、海軍兵士2人(中国系米国人)を逮捕した。漏洩(ろうえい)した情報は、米海軍艦船の設計図や、兵器システム、「台湾有事」を想定した大規模軍事演習の作戦計画、在沖縄米軍基地のレーダーシステムの電気系統図や設計図…などだった。

こうしたなか、米紙ワシントン・ポスト(電子版)が7日、米国が2020年以降、中国軍のハッカーが日本の防衛機密を扱うネットワークに侵入していたことを複数回通報・警告していたと報道した。

米国側は「近年で最も深刻なハッキング」と日本側に指摘したというが、日本側は情報漏洩を否定している。

何が起きていたのか。この連載「スクープ最前線」は次の事件を報告している。

□20年8月、防衛省は「中国軍が海上民兵の乗る漁船1万隻に『(沖縄県)尖閣諸島へ出撃せよ』と命令を出したという極秘情報を入手した。急遽(きゅうきょ)、米国と協議し、周辺海域で日米軍事演習を実施して、尖閣強奪を阻止した。

□21年4月、警視庁公安部は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など約200の団体・組織がサイバー攻撃を受けた事件で、中国人2人を書類送検した。バックに中国軍サイバー部隊「61419部隊」がいた。

□21年12月、共同通信が「台湾有事で(日米)共同作戦計画の原案策定」というスクープ記事を報じた。台湾有事の際、「米軍は南西諸島に臨時拠点を築く」というものだが、米国は「日本の政府関係者が漏らした」とみている。

前出の外事警察関係者は「ワシントン・ポストの報道は、米国の岸田首相に対する警告だ。米国と機密情報共有を可能にするサイバー・セキュリティーの強化とともに、『中国への機密情報漏洩を遮断しろ=中国と内通している政治家を排除しろ』という要求だ」と語った。

さらに、中国軍が暴走する危険がある。

「軍強硬派の一部が、習氏に『台湾侵攻の早期決断』を進言している。自民党の麻生太郎副総裁が8日、台湾の講演で、台湾有事を念頭に『日本、台湾、米国をはじめとした有志国には戦う覚悟が求められている』『いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使う』と語り、中国側を激怒させた」

事態は深刻だ。岸田首相の「国家と国民を守る」断固たる決意が求められている。機密情報漏洩の放置は同盟国への裏切りだ。米国は、岸田首相の覚悟、決意を疑っている。




■台湾の次の総統が重要 与党候補に注文も

「戦う覚悟」発言の同日、蔡英文総統と会談した麻生氏は、記者団に次のように話した。

「来年の1月に行われる(台湾総統選の)選挙の結果は、日本にとっても極めて大きな影響が出ますから、そういった意味で『次の人を育ててもらいたい』と蔡英文総統に申し上げました」(麻生副総裁)

会談の出席者によると、麻生氏は「来年5月に迫る蔡英文総統の任期中は、台湾有事が起こる可能性が低い」と見ていて、次の総統が台湾有事を起こさせないためには重要であると訴えたというのだ。

また、来年の総統選に立候補する与党民進党の頼清徳副総統との昼食会の冒頭、麻生氏はこう注文をつけた。

「選挙で選ばれて台湾の総統となる方の、この種(台湾有事)の問題に対する見識、いざとなった時に“台湾政府が持っている力”を台湾の自主防衛のために、きっちり使うという決意・覚悟というものが、我々の最大の関心です。」(麻生副総裁)

その後の昼食会の中で、麻生氏と頼氏は、台湾有事が起きた際の対応について認識をすり合わせた。初対面だった2人は「抑止力」を機能させるための議論を深めた。

■中国「内省干渉」と反発も 麻生氏周辺“中国の反応は狙い通り”

9日、在日中国大使館は「身の程知らずで、でたらめを言っている」と、麻生氏の発言に激しく反発した。加えて、こう牽制している。

「日本の一部の人間が執拗に中国の内政と日本の安全保障を結びつけることは、日本を誤った道に連れ込むことになる」

中国外務省も「台湾海峡の緊迫した状況を誇張し、対立をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した」と、同様に批判を強めた。

一方で、“狙い通りの効果が出ている”と麻生氏周辺は強調する。

「中国が反応しているということは『抑止力』になっているということだ。今回の麻生氏の『戦う覚悟』発言で台湾での戦争リスクは下がる」

また、麻生氏自身も講演でこう主張している。

「台湾海峡の安定のために、それ(防衛力)を使うという明確な意思を相手に伝える。それが『抑止力』になる」(麻生副総裁)

「伝える」という意味では、麻生氏の発言は成功したのかもしれない。しかし、中国に一定の刺激を与えたことで「抑止力」に繋がるのかは、いまだ不透明だ。

麻生氏周辺も「2027年の夏までに、台湾有事が起こる可能性がある」と警戒する。

他方、日中両国は、9月上旬のASEAN関連首脳会議に合わせ、岸田総理と中国の李強首相との首脳会談の調整に入った。対話再開に向けた中国側の“シグナル”とも受け取れる。習近平国家主席との会談は予定されていないが、双方の外交当局が模索を続けている最中だ。

「戦う覚悟」発言が、日本・中国・台湾、この3者の関係にどう変化をもたらすのか。揺れ動く台湾をめぐる情勢は、今後も目が離せない。
2023.08.14 10:35 | 固定リンク | 戦争
皇帝を守るため「百万人犠牲」に
2023.08.10



中国・北京の大洪水は「人災」、治水失敗の皇帝・習近平は天から見放された?

中国・北京を襲った記録的な大雨による被害は「人災」との指摘が広がっている。

表面的な開発を優先し十分な治水事業を怠った習近平・国家主席の失策との声も。

皇帝の紋章である竜は治水の象徴で、風水師は天に見放されたと騒ぎ立てている。

■福建省を直撃した台風5号(トクスリ)は、熱帯低気圧に変わった後も、北京で12年ぶりに最高レベルの暴雨警報が出るほどの集中豪雨をもたらした。8月1日までに洪水によって北京、河北ですでに20人以上の死者が出ている。SNSには、北京市西部郊外の門頭溝区は道路が濁流と化し、人が乗ったままの数十台の自動車を押し流す動画などが多くアップされている。

被害は1日までに、北京市だけで4.4万人が被災し、12万人以上が避難。災害救急隊員2人の殉職を含めて11人が死亡し、27人が行方不明だ。台風5号は福建省ですでに被災者266万人以上、直接経済損失147.5億元以上の大被害を出している。中国全土で被災者は300万人を超える。この大災害は、人災の側面もあり、習近平の治水事業の失敗ではないか、という声も上がっている。

台風5号は7月28日に福建省に上陸、その後北上し熱帯低気圧に変わったのちに、北京、天津、河北地域で連日の豪雨災害をもたらした。特に北京市西部の山間地域の門頭溝区の集中豪雨により永定河の水位が急上し氾濫、川沿いの道路は濁流と化し、沿道の店舗が水没した。

北京、天津、河北地域の豪雨は29日から始まって、8月1日午前にようやくやんだ。

SNS上では数十台の自動車が濁流に流される様子や、永定河大橋が水流で破壊される様子、おぼれた少年の蘇生を試みるも間に合わなかった様子などが映された動画が拡散されている。撮影者が悲鳴のように「雨よ、やんで!」「天よ!」と叫ぶ音声なども記録されている。門頭溝賈溝村は洪水で流れてきた土砂や樹木、自動車などで埋もれてしまい村民全員が村を脱出して緊急避難した。

主要な被災地の門頭溝では洪水や土砂崩れによって多くの電線、変圧器が損壊し、電気供給や通信が途絶えるところも多く出た。1日未明、解放軍は4基のヘリを緊急出動させ、車両や建物に閉じ込められた市民に飲食や雨具などの救援物資を届けたり、傷病者の救援を行ったりしたという。

門頭溝豊沙線安家荘駅付近では冠水で、列車が立ち往生していた。列車内は、夏休みで新疆ウルムチ旅行からの帰路にある家族連れが多く、高温と飲料水不足で具合が悪くなる乗客も多く出た。門頭溝は水道、電気、ガス、通信の供給が停止され、公共交通もすべて停止。陸の孤島となったのだった。

門頭溝に近い房山区も洪水で、1万人以上が暮らす社区(コミュニティー)が深さ1.5mの水につかった。永定河大橋から、河面が急上昇して家を押し流す様子が目撃された。永定河の氾濫は50年以上ぶりだという。最新の排水設備が設計されているという触れ込みだった北京大興空港の停機場の大部分が冠水し巨大な湖のようになった。

■天災は今回の大雨だけでは終わらない

北京でこれほどの水害に見舞われたのは2012年7月21日午後から深夜にかけての集中豪雨による大水害以来だ。この時の集中豪雨は10時間以上続き過去60年間で最大の降水量が記録された。当時、79人の死者、直接経済損失100億元と公式発表された。だが今回の豪雨は67時間以上続き、降水量も記録を確認できる1883年以降最大で、2日朝までに744.8mmを記録した。被害の全容はまだ出ていないが、2012年7月を超える規模となるとみられている。
 
台風5号は北京に来る前に福建省で記録的な被害を引き起こしていた。泉州で体育館の屋根が吹き飛び、数十階の高層アパートが暴風によってゆがみ、倒壊した様子が報じられている。道路の自動車や街路樹が洪水に押し流され、橋などを破壊した。台風は厦門、泉州、福州を破壊し、浙江、江蘇、上海にも甚大な被害を出しながら移動し、亜熱帯低気圧になったのちも河北、北京を襲った。

今年は台風5号上陸前から中国各地で豪雨災害が発生しており、異様に水害の多い年と言われている。5月下旬は河南を中心に華中を豪雨が襲い、10年に一度の規模の「爛産雨」(小麦の収穫に甚大な被害をもたらす雨)といわれた。

また、異常高温が続く夏でもあり、北西部では気温50度超えがたびたび発生。広西チワン族自治区や江蘇省では暑さで養殖の魚や家畜の豚が大量死する事案も報告された。新疆北西部の高温と豪雨、雹に襲われ小麦生産に大規模被害をもたらした。

 今年は世界的な異常気象であり、こうした天災被害は何も中国に限ったことではない。だが昨年の河南省の7月21日の大水害といい近年、中国で大規模水害が頻発していることについては「人災」を指摘する人も多い。

■防災などの都市インフラで「手抜き」か

今回、北京の洪水のすさまじさが大きく報道されているが、北京市を守ろうと河北省に対して予告なく行われた永定河などの「泄洪」(水門を開いて河水を放出する)の結果南部にある70万人が暮らす河北省涿州市が水没したのはまさしく「人災」だ。

また過去40年の都市開発の在り方が問題だったという声もある。奇抜な形の高層ビル建設など表面的な繁栄を追うばかりで、防災や排水など目に見えない都市インフラ建設に手抜きをしてきたせいだという批判も起きている。

門頭溝の水害がここまでひどかったのは、単に予期せぬ長時間の集中豪雨のせいだけでなく、近年、郊外観光地として開発が進められていたこの地域が、表面上の景観ほどには地下インフラが整備されていなかった、という地元民の批判の声もSNSなどであがっていた。

ドイツ・日本の植民時代にインフラが整備された青島で、これまで水害が発生したことがないことを例にあげて、中国の都市計画、都市開発の未熟さを指摘する声もあった。

■習近平は「皇帝」としての力不足

人々が人災説を強く感じたもう一つの背景は、7月19日に「習近平の治水に関する重要論術」なる本が出版され、水利部、メディアを挙げて、「習近平がこの10年自ら計画し、配置し、推進し、全国の海綿都市(水害に弱い都市)の治水事業を完成させた」と大々的に喧伝していたこともある。水利部機関紙「中国水利報」(7月19日)は、「長期間解決しがたかった治水問題を(習近平が)解決した」と報じていた。

だが、その1週間後に、福建から上海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没したのだ。これは、宣伝と実情がまったく異なるということであり、何も解決できていないのに、解決できたというウソを浸透させたがために、台風上陸前に準備すべき対応策や泄洪計画に手が抜かれたのではないか、と思われた。

暴れる竜のような黄河、長江の大河ほか無数の河が走る中国はもともと水害が多い国であり、治水で国家指導者の能力が試されてきた国でもあった。中国の皇帝が竜の紋章を使うのは、竜が治水の象徴だからだ。ならば、習近平はその治水に失敗しているのだから、果たして「皇帝」としての能力が足りているといえるかどうか。

さらには中国には「易姓革命思想」という伝統的な考えかたがあり、天は己に成り代わって皇帝に地上を支配させるが、その皇帝が徳もなく悪政を行っていると天が判断すると、皇帝の姓、血統を入れ替え、王朝交代が起きるという。天が為政者に徳や能力がないと判断した場合、疫病や天災、飢饉などが続き、人々は皇帝が天に見放されそうだと知ることになる。

これは暴力によってしばしば王朝が簒奪(さんだつ)されてきた中国で、簒奪者が自分の正統性を示すための考え方だ。そういう考えに基づくと、習近平の治水は失敗し、近年、疫病、天災などが続いたのは、天の啓示ではないか、というわけだ。

今回の北京の大水害では、過去600年水没した記録がない故宮紫禁城も冠水した。そのため、迷信を信じる人達や風水師はこれを凶兆だと騒ぎはじめた。

ある風水師動画では「この台風5号はもともと台湾を襲うものだったが、意外なことに台湾を迂回し、上海、北京を襲った。台風と香港の間を通って中国を直撃し、紫禁城を水没させた。これには意味があろう。大凶兆であり、王朝が不安定化する」「天の現象は人間社会の現象を反映している。この数年、異常気象が続き、王権の象徴である紫禁城が600年来初めて、台湾と香港からの風によって水没した」「天が民衆に何かを啓示している」という。

■習近平の威信が崩れ始めている

紫禁城の水系は紫禁城内と太和門前を流れる内金水河が天安門前から外金水河に続き中南海(中海と南海の2つの人口池をもつ紫禁城西側の皇帝の離宮の呼び名。今は共産党中枢の建物群がある場所で、中国共産党政権中枢を指す言葉として使われる)に流れ込むようになっている、という。今回の大雨で、大量の雨水が金水河を通じて中南海に流れこんだが、中南海では水は排水されず、金水河が逆流し、紫禁城が冠水した。

風水師的には「台湾、香港からの風によって、大雨が降り、中南海で排水できない雨水が王権の象徴の紫禁城を水没させた」ということに何がしかの予感を感じるわけだ。

新型コロナが辛亥革命発生の地である武昌(武漢)で最初にアウトブレークし、その打撃から中国経済は回復できず、若者失業率の更新が続き、さらには次々と天災、人災が襲われた。政治においても、外相が突然理由も示されずに解任されたり、解放軍ロケット軍幹部が総入れ替えになったり、政権内部の不安定さも露見しつつある。

風水や天命の話はさておき、習近平は実際、災害時に十分なリーダーシップを発揮できていない。国内の治水事業も口でいうほど成功していない。体制内の人心も掌握しきれておらず、経済回復の処方箋も持たず、米国との外交的緊張も緩和の兆しがみえていない。

こういう状況で、14億の中国人が習近平体制の支配に従順に甘んじ続ける時代が続くのかどうか、という疑問はやはり強まっていくのだ。

■首都・北京を守るために河北省で犠牲者。中国の“仰天”洪水対策

台風5号の影響で集中豪雨に襲われた中国の首都・北京では、7月29日からの約3日で400ミリから700ミリという降水量を記録。北京の街が冠水する映像もありましたが、それほど大きな被害が出なかった理由は、まさかの洪水対策にあったようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂教授が、現地に住む友人の「北京の水を河北省に流した」という証言を紹介。120万人以上が避難しなければならないほどの水が河北省に流れ込んだのは、首都を守るために計画されていたことだと、驚きの事実を伝えています。

首都の大水没という可能性が垣間見えた台風5号の豪雨被害

6月を過ぎた中国では豪雨や洪水のニュースがにわかに増える。政府の頭痛の種だ。香港で民主化デモが激化した2019年にも、李克強総理が関心を示したていたのは、むしろ各地で起きている洪水対策だった。

中国で「出水期」と呼ばれる危険な季節は年々厳しさを増してきている。2022年には〈中国全土の降水量は例年より約3割も多く、増水は例年だけでなく昨年と比べても厳しい状態になりつつある〉と『人民日報』が報じている。

そして洪水の後に中国全土に襲い掛かるのは干ばつである。国内のメディアは大雨から一転して水不足のニュースに振り回される。これも恒例の展開だ。

だから洪水と聞いても驚きはなくなっていた。しかし今年は少し事情が違っていた。首都、北京に被害が及んだからだ。雨が少なく乾燥している。それが一般的な北京のイメージだ。故に大雨の想定はあまりなく、洪水対策は遅れているのではないか、と思われがちだ。だが、そうした思い込みはいろいろな意味で裏切られた。

対策が万全だったという意味ではない。まずは北京を襲った大雨から見てゆこう。党中央機関紙『人民日報』は、北京市水害・干ばつ対策指揮部の劉斌副指揮官の説明として、7月31日、北京市の平均降水量が「2012年7月21日に北京で降った集中豪雨と同じ水準に達した」と報じている。なかでも被害が深刻だったのは房山区と門頭溝区。平均降水量はいずれも400ミリを超え、12年時を大きく上回った。

今回の集中豪雨の原因は中国に上陸した台風5号(トクスリ)だ。北京では7月29日から激しい雨となり、市内の西部、南西部、南部で集中豪雨となった。水はけの悪い地区では道路が冠水する映像も届けられた。記録的な大雨の犠牲者は8月1日の時点で死者20人、行方不明19人と発表された。

これは大変なことになったと、筆者は7月31日から現地と連絡を取り合った。しかし意外なことに北京で暮らしている友人たちはみな落ち着いている。その理由はこうだ。「首都を守るために河北省へと水を流した。
だから北京の洪水被害は、それほど酷い状況じゃない」。

■中国河北省で100万人近く避難、北京守るため「保水地区」へ放流

中国河北省では7月下旬からの豪雨により、100万人近くが避難を余儀なくされた。あふれかえった河川の水を多くの住民が暮らしている幾つかの「保水地区」に誘導せざるを得なくなったからだが、首都北京を守るためのこうした措置の犠牲になって家を失った人々がインターネットで怒りの声を上げている。

豪雨で氾濫したのは海河。流域面積は河北省の大部分と北京市、天津市など、ポーランドに匹敵する広大さがあり、特に河北省では洪水被害が大きい。

中国の法律では、大規模洪水で貯水ダムの容量オーバーとなった場合、一時的に指定された低地の保水地区に水を放流することが定められている。

こうした中で7月31日に河北省は13の保水地区のうち7カ所に水を放流。対象にはタク州市や、習近平国家主席が打ち出した国家プロジェクトの一環として設置された雄安新区なども含まれた。

河北省共産党トップは8月1日、北京の洪水対策を巡る重圧を和らげる上で、これらの措置が必要だと強調した。

ただネットには、自分の住んでいた場所が保水地区に指定され、いざという場合に犠牲にされるとは知らなかったとの投稿も寄せられている。

■北京市の記録的豪雨 

人災を指摘する声も… わずかの雨でも道路が水浸しになってしまう根本原因

猛烈な勢力で沖縄県などにも被害をもたらした台風5号の影響により、中国では7月末から記録的な豪雨が続き、北京市や河北省、天津市、福建省などで300万人以上が被災、20人以上が死亡した。

各地で洪水が発生し、道路が冠水、住宅は浸水、道路が寸断されたり、河川が氾濫したりした。習近平政権は早急な救助活動を指示したが、北京市では過去140年間で最多の降水量を記録するなど、復旧にはかなりの時間がかかりそうだ。

SNSなどでは被害を嘆く声だけでなく、「人災ではないか」といった厳しい声も散見される。

2012年、2021年にも豪雨被害があった

今回の台風被害について、中国のSNSなどを見てみると、政府の対応や、都市・道路インフラの悪さを指摘する声がある。

もちろん、台風による被害はどの国や地域でも起こることとはいえ、中国での被害は同程度の台風が起きた他国の被害よりも大きいのではないか、と感じている人が少なくないからだ。

地形や気象条件、河川などの状況によって異なるので一概に比較することはできないが、北京市では今から13年前の2012年7月21日(721と呼ばれる)に発生した集中豪雨の際も70人以上が死亡し、政府に対する批判の声があがっていた。

これに対し、政府は「海綿都市(スポンジシティー)」建設を提唱、洪水対策に本腰をあげると宣言した。海綿都市とは緑化を進めたり、透水性のある舗装材を使用したりして、豪雨に強い都市にすることだ。

だが、2021年7月にも河南省鄭州市で大規模な洪水が発生、地下鉄が浸水し、3000万人を超える被災者が出た。こうしたことから、現実には中国政府による豪雨対策はあまり進んでいないのではないか、という疑惑が噴出している。

中国メディア「新京報」の2022年の記事でも「北京市の排水システムはいまだに完璧ではない。排水施設がないところや、老朽化した建物で整備が遅れているところ、でこぼこした道路も多く、排水がスムーズではない」と指摘されている。

インフラ整備が遅れているのは政府の責任

読者のコメント欄にはハッとさせられる内容があった。たとえば、「これほどの大都市なのにインフラ整備が遅れているのは政府の責任だ」、「排水システムの問題だけでなく、排水溝をきちんと掃除していないので、そこにゴミが溜まっていて、いざというときに排水溝の役割が果たせていないからだ」、「ふだんの小雨でも、道路の水はけが悪いじゃないか」といった意見だ。

これらのコメントを見て、私も雨の日に中国の街を歩いて、実際に自分が感じたことを思い出した。

北京だけに限らないが、中国のどの都市を訪れても、いったん雨が降れば、すぐに道路には水が溜まり、靴や靴下がビショビショになる。道路の水はけがとても悪いからだ。

もともとでこぼこ道が多く、コンクリートも一部が剥がれていたり、わずかな段差があったり、気をつけて歩かないとつまずいてしまいそうになる道路が多い。その上、いざ雨が降り始めると、さらに大量の雨水が足元にあふれてくるので、大変なことになってしまう。

■ホテルの玄関で見かけた驚きの光景

建物の入り口にも雨水は押し寄せてきて、通常の雨でも玄関先は水浸しとなり、なかなか水が引かない。

7~8年ほど前、北京市内の4つ星ホテルに宿泊していた際、雨が上がってすでに数時間ほど経っているのに、玄関先の雨水がなかなか引かず、なんと、地面にたくさんの毛布が敷いてあった。

雨水を吸収するために置かれた応急処置だったようだが、ホテルを出入りするためには、その毛布を踏まなければならない。水をたっぷり含んだ毛布を靴で踏むことに私は抵抗があり、「ここは本当に経済発展している中国だろうか?」と感じた。

台風や豪雨とは関係ないが、ホテル内のシャワールームの水はけもとても悪い。

安いホテルだけでなく、かなり高級ホテルでも、シャワールームと室内の段差がわずかしかないため、日本人のようにバスタブを使用してたくさんのお湯を一度に使ったり、シャワーを大量に出したりすると、お湯が室内まで溢れ出てきそうになる。

コロナ禍以降、中国に行っていないので、さすがに最近の高級ホテルではそのような設計はされていないだろうと思うが、外観やデザインはすばらしいのに、使い勝手が悪い、残念、と感じることが中国では非常に多い。

これはホテルや一般家庭の排水だけでなく、都市インフラも同様で、ビルや幹線道路、ターミナル駅などの外観や内装はすばらしいのに、使う人の身になって考えていない設計や動線になっている。

見た目だけを重視し、見えないところ、使うときのことまでしっかり考えて作っていないからだ。

中国から一歩も外国に出たことのない人や、無頓着な人は感じないかもしれないが、一度でも日本で生活したことのある中国人ならば、国内のこうした不便さ、インフラの人への不親切さをひしひしと感じるのではないだろうか。豪雨被害でも、都市の脆弱さを嘆いた人は多いはずだ。

台風による豪雨は、自然災害なのでやむを得ない部分もあり、被災した人々には心からお悔やみを伝えたいが、政府のやり方次第で被害を最小限に抑えることができるのではないか。台風6号が接近する中、そうしたことを痛感した。
2023.08.10 17:28 | 固定リンク | 国際
中国共産党指導部「債務とデフレ」で限界・反スパイ法「日本企業丸裸撤退」
2023.08.08



焦点:中国共産党指導部、地方債務「見ぬふり」もう限界 さらにデフレで苦境に 反スパイ法「日本企業丸裸撤退」

中国共産党指導部は7月、地方政府の債務問題を解決するため「一連の措置」を講じると約束した。具体的には特別債の発行、債務交換、国有銀行による借り換え支援などに加え、これまで毛嫌いしてきた共産党指導部が掲げる予算に手を付ける策にも踏み込みそうだ。

中国共産党指導部はかねて、経済の要である省と市に高い成長目標を課してきた。しかし長年にわたる過剰なインフラ投資、土地売却によるリターンの急減、新型コロナウイルス対策費の増大などで膨れ上がった地方の共産党指導部の債務は今や、最大の経済リスクとなっている。

中国共産党指導部は7月、地方政府の債務軽減を支援すると宣言した。詳細こそ示さなかったが、地方債務のデフォルト(不履行)が連鎖して金融セクターを混乱させる恐れを憂慮していることがうかがえる。

中国共産党指導部は4月、地方債務の「厳格な管理」を要求していたが、エコノミストは7月のメッセージは4月よりも建設的だと指摘する。政府は問題解決に向けて早急に資金を投じる必要性に気付いたようだと言う。

中国共産党指導部は長年、地方の共産党指導部が自ら問題を解決するよう求めてきた。今回の姿勢転換は事態打開への大きな突破口となるかもしれない。

中国財経大学のグオ・ティアンヨン教授は、「地方の債務問題は複雑で、責任を取りたくない、と言って済ませられるものではない」と言う。

政策顧問2人によると、中国共産党指導部による関与の詳細は今後の議論で決まる。投資家は、詳細を見て中国共産党指導部の決意のほどを見極めることになるだろう。

■中国共産党指導部のジレンマ

地方の共産党指導部の債務は2022年に92兆元(12兆8000億ドル)と、国内総生産(GDP)の76%に達した。2019年の62.2%から急増している。

この一部は、地方共産党指導部がインフラ整備のために設立する投資会社、融資平台(LGFV)が発行したものだ。国際通貨基金(IMF)は、LGFVの債務が今年9兆ドルに達すると予想している。

中国共産党指導部としては、支援しなければ経済成長と社会の安定が大きく揺るがされる恐れがある一方、支援すればさらに野放図な支出を後押しするリスクがあり、ジレンマを抱えている。

政策顧問の1人はロイターに、「何らかの原則を設ける必要がある。全ての債務を中国共産党指導部が引き受けるわけではない。そんなことをすればモラルハザード(倫理観の欠如)を招きかねない」と語った。

政策顧問はそうしたリスクを避けるため、金融機関、地方の共産党指導部、中国共産党指導部、社会全般が負担を分け合う形を示唆した。

■選択肢

大半のエコノミストの予想では、中国共産党指導部は国有銀行に対し、満期を迎えた融資を、より低金利かつ長期間の融資にロールオーバーするよう指導する見通しだ。この手法は「問題を先送りし、見て見ぬふりをする」策だと言われる。

銀行は、借り換えの緊急性、重要性に鑑みてこうしたロールオーバーに応じるかどうかを選別する必要がある。債務再編は銀行自体のバランスシートを毀損(きそん)し、経済の他の分野に対する貸し出し能力を損なう恐れがあるからだ。

地方の共産党指導部自体も責任を担わなければならない。アナリストによると、地方の共産党指導部は昨年から持ち越した起債枠を使い、バランスシート上で「隠れ債務」を公式の債券とスワップする可能性がある。これによる起債額は最大2兆6000億元に上りそうだという。

地方の共産党指導部は2015年から18年にかけてもこうした措置を講じた前例がある。

また中国共産党指導部は一部の地方共産党指導部に対し、資産の売却や資産をてこにした資金調達を要請する可能性がある。

その後は財布のひもが固い中国共産党指導部の出番になる。中国共産党指導部の債務はGDP対比わずか21%で、最も財政出動の余裕がある。

別の政策顧問は「中国共産党指導部は低コストで債券を発行し、地方債務を肩代わりすることが可能だ」と述べた。

期間10─30年の中国国債利回りは2.7─3.0%と、一部の地方やLGFVが払っている7─10%に比べて大幅に低い。

グオ教授は、効果を発揮するには、中国共産党指導部は今年こうした債務の肩代わりを1兆元以上実施する必要があると言う。

アナリストによると、極めて重要な公共サービスに資金を提供するための、より直接的な中央から地方への財政移転も選択肢に入る可能性がある。こうした措置は過去にも十分な実績があり、今年の財政移転は昨年から3.6%増えて過去最高の10兆元に達する見通しとなっている。

■中国「碧桂園・不履行」

中国の不動産開発大手、碧桂園は8日、今月6日が期日だったドル建て債2本の利払い(総額2250万ドル)を履行できなかったと表明した。

投資家によると、利払いが行われなかったのは2026年2月満期債と30年8月満期債。いずれも30日間の猶予期間がある。

同社は利用可能な現金の減少が続いていると表明。販売環境や借り換え環境の悪化に加え、さまざまな資本規制の影響で「定期的に流動性に圧力」がかかっていると指摘した。

債権者の法的権利を守るため、資本の取り決めを改善しているとも表明した。

同社は先週、1─6月の純損益(未監査)が赤字に転落すると警告。前年同期は19億1000万元(2億6731万ドル)の黒字だった。

■なぜ欧米はインフレなのに中国はデフレなのか

中国でデフレの脅威鮮明、その理由と世界への影響は

中国が今デフレの脅威に直面していることに疑いの余地はなくなった。7月の物価統計で消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が共に前年同月比で下落。2020年以来のことで、中国経済の健全性に対する懸念が強まった。

世界の多くの地域でインフレ圧力が高まっていることを考えると、中国で物価が下落しているというニュースは少し衝撃的かもしれない。だが、世界2位の経済大国が抱える問題はその多くが中国独特のもので、根が深い。その解決は容易ではないかもしれない。

1.なぜ欧米はインフレなのに中国はデフレなのか
  米国や他の主要国では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後の経済再開に伴い、インフレ率が急上昇した。一部のエコノミストは今年初め、厳格なコロナ規制を昨年末に取りやめた中国でも同じことが起こると予想していた。

しかし、実際にはそうなっていない。個人消費の伸びは依然として鈍く、長引く不動産不況が信頼感を低下させ、人々は高額商品の購入を控え、家具や家電製品の価格に影響を与えている。世界的な商品相場の低迷と、中国共産党指導部が長年にわたって電力セクターを抑制してきたことから、エネルギー価格も下落している。

自動車メーカー間の価格競争がデフレ圧力に拍車をかけており、企業もパンデミック期に積み上がった過剰在庫を減らすために値下げを行っている。ただ、全面的に物価が下落しているわけではない。旅行や飲食店などのサービス業への支出はコロナ規制終了後に急増しており、これらの分野では物価上昇が続いている。

2. 安くなるなら、消費者にとっては好ましいのでは

そうでもない。物価が安くなることは一見、消費者にとって良いことのように思えるが、だからといって必ずしも消費者が買い物を始めるとは限らない。さまざまな商品の価格が長期間にわたって下落すると、人々は家電製品のような高額商品はずっと値下がりし続け、購入を先延ばしにするのが最善だと考えるようになる。

そうなると経済活動はさらに抑制され、企業は値下げを余儀なくされる。その影響は消費者にも及び、いずれ所得が減るか職を失うことになり、その結果、支出が減り、危険な縮小スパイラルに陥る。

3. 企業への影響は

物価下落は一般的に売上高や利益の減少を招き、企業は投資や雇用を抑制する。デフレはまた、経済における「実質金利」、つまりインフレ調整後の金利水準を押し上げる。企業向けの融資コストが上昇すれば、企業の投資意欲が減退し、ひいては需要が抑制され、デフレがさらに進行する。

一部のエコノミストは、このような「負債デフレ」が不況や恐慌の引き金になると考えている。日本は1990年代に物価下落が定着し、経済の長期停滞に陥った。持続可能な方法で経済成長を促すにはどうすればいいかという問題に、日本は今も取り組んでいる。日本銀行によるマイナス金利の導入はほとんど効果がなく、今年に入って金融政策に新たな微調整が加えられている。

4. デフレはいつまで続くのか

中国での食料価格などの急落は、7月のCPI押し下げ圧力に大きく寄与したが、これらの物価下落の影響は年内の残り期間に薄れるとみるエコノミストもいる。PPIは2022年10月から前年同月比で下落し続けており、デフレが長期化。それでも7月のPPIは低下率が6月から若干縮小し、生産者物価がある程度落ち着きつつある様子を示唆している。

一般的に中国のインフレ率はこの10年ほど低水準で推移しており、エコノミストはその理由として、家計の高い貯蓄率と工業生産能力の急拡大につながる投資の多さを挙げている。

5. 中国当局はデフレにどう対処するのか

中国人民銀行(中央銀行)がさらに利下げするか、市中銀行の預金準備率を引き下げる可能性がある。問題は人民銀が人民元下落や地方政府の債務残高増加など幾つかの制約に直面していることだ。

景気刺激を狙った財政支援も財政の逼迫(ひっぱく)を踏まえ控えめになっている。つまり、当局がかつてのような大規模な財政出動に頼る傾向は弱まり、代わりに的を絞った刺激策に転換している。中国共産党指導部はまた、地方当局に対しても消費を喚起する方法を見つけるよう促している。

6.外国人投資家はどう動くのか

デフレ下では企業に値下げ圧力がかかるため、企業収益への影響が最も大きいだろう。やや値上がり余地があるのは国債で、トラブル期には比較的安全な投資先だ。成長に対する懸念や投資の抑制は一般的に緩和的な金融政策を促し、その国の国債の魅力を高める。しかし、みずほ銀行のアジア為替担当チーフストラテジスト、張建泰氏は、中国国債が外国人トレーダーにとって魅力的になるには利回りが「主要市場と比べて低過ぎる」と指摘した。

7. 世界経済にとって何を意味するのか

少なくとも短期的には、先進国にとって恩恵があるかもしれない。中国の製造業が過剰供給を解消するために価格を引き下げると、その影響は米国や欧州などにも波及し、インフレ率の上昇を抑えるために中銀が動く際に、いくらかの助けにはなり得る。

ただ、限界もある。欧米はここ数年、保護主義に傾き、中国への依存を小さくしようとしている。また、先進国の個人消費に占める中国製商品の割合は比較的小さい。例えば、米国のCPIバスケットは住居費と食料、エネルギー、医療が大半を占めており、中国からの輸入品とは相対的に関係が薄い。

新興国は機械製品の価格下落を歓迎するかもしれない。ただし、アナリストが指摘するように、これらの国々は国内産業を弱体化させる中国との過度な価格競争を警戒する可能性もある。

8. 以前にも同じようなことがあったのか

答えはイエスだ。中国共産党指導部は09年と15年、20年、そのたびに強力な金融緩和と巨額の財政刺激策で対応した。今回は一部のインフラプロジェクトを加速させ、低迷する住宅市場への支援を強化すると表明したが、多くのエコノミストは過去のような大規模な建築ブームを期待していない。というのも、習近平国家主席が自国の経済を先端技術などの新たな成長エンジンにシフトさせることに力を注いでいるためだ。

そうなれば、中国共産党指導部の対応は、今では構造的なものとして記憶されている1998年のデフレ期と近いものになるかもしれない。政府は当時、世界貿易機関(WTO)加盟に先立ち、体力の弱った銀行の資本増強と国有セクターの縮小を進めた。


■中国の駐日大使 “拘束の男性 スパイ容疑が確実に”

中国当局に拘束された大手製薬会社の日本人男性について、中国の呉江浩駐日大使は、即時解放を求める立憲民主党の泉代表に対し「スパイ容疑が確実になっており、中国の法律にのっとって処理していく」と述べました。

先月、新たに就任した中国の呉江浩駐日大使は7日午後、立憲民主党本部を訪れ泉代表と会談しました。

この中で泉代表は、先月、中国で国家安全当局に拘束された大手製薬会社に勤務する50代の日本人男性について「即時解放すべきだ。中国には反スパイ法など、いろいろな法律があると思うが、透明性を高めてほしい。日本人は法令を順守して経済活動を行っている」と述べました。

これに対し、呉大使は「ますますスパイ容疑が確実になっており、中国の関係部署は確固たる証拠を得ている。中国の法律にのっとって粛々と処理していく」と述べました。

■反スパイ法「日本企業丸裸撤退」

日本企業〝中国撤退〟反スパイ法施行1カ月の惨状 日系企業の高度技術「丸裸」「強奪」要求 意的な摘発・拘束の脅威

中国で改正「反スパイ法」が施行されて、1日で1カ月が経過した。スパイ行為の定義が拡大され、恣意(しい)的運用による摘発の強化が懸念されている。日系企業などは社員の拘束におびえながら経済活動を続けているという。習近平国家主席率いる中国は軍事的覇権拡大を進める一方、国内監視を強固にして独裁強化を図っているようだ。日本人複数の長期拘束が続くなか、岸田文雄政権は現地邦人の生命と財産を守り切れるのか。

「共産党の独裁体制死守は、習政権の一丁目一番地だ。外資系企業がいくら対策をしても、リスクから逃れることはできない」

M&Aのプロの立場から「中国事業のリスク」について警鐘を鳴らしている経済安全保障アナリストの平井宏治氏は、こう指摘した。

改正反スパイ法では、従来の「国家機密」に加え、「国家の安全や利益に関わる文献やデータ、資料、物品」の提供、窃取、買い集めなども取り締まり対象とした。

公安関係者は「同法の恐ろしさは『具体性』の乏しさにある」という。「国家の安全」の定義が具体的に示されず、中国当局による恣意的な摘発・拘束がさらに進む可能が高いのだ。

中国では2015年以降、日本人17人が不明確なスパイ容疑で拘束されている。今年3月には、日本の製薬大手「アステラス製薬」の日本人駐在員が反スパイ法違反容疑で北京で拘束された。

北京の日本大使館は、中国政府に「早期解放」を強く求めた。

林芳正外相は4月上旬、「邦人奪還」のために訪中した。「政界屈指の親中派」として長年築いてきた中国人脈の成果が期待されたが、当時の秦剛国務委員兼外相には「(拘束した邦人は)法に基づき処置する」と突き放された。中国メディアには、林氏が笑顔で外交トップの王毅政治局員と握手する映像を流された。完全に舐められたわけだ。

こうしたなか、改正反スパイ法施行を前にした6月下旬ごろ、日本の大手企業や経済団体の関係者ら日中経済交流を支えたベテラン駐在員が相次いで帰国した。関係者によると、米企業でも過去に情報機関などでの勤務経験がある中国駐在員らが次々と離任したという。

日本企業は同法のリスクに対処するため、マニュアルの作成を進めた。

金融機関や商社は、経済分析のための面談調査や市場分析なども「スパイ行為」と断じられる危険性がある。中国の公務員や、国営企業関係者と面会するだけでスパイ行為を疑われる恐れがある。

このため、ある日本企業のマニュアルでは、中国の政府関係者らと面談する際は、中国側の協力を得て場所の提供を受け、面談記録も残すなど、疑いを持たれた場合に備える対策まで検討しているという。


だが、前出の平井氏は「中国の国家安全当局は、全国民、全組織に対して監督・指導する権限を認められている。尋問や拘束の基準は当局が恣意的に決める。マニュアルを作成したところで意味はない」「中国は改正反スパイ法の厳格適用を表明した。経験が長く、深く中国に携わった人ほど『深部を知っている』とみなされるリスクが高い」と分析する。

中国当局の〝暴挙〟は、複合的に広がりつつあるという。

平井氏によると、中国共産党指導部は最近、高度な技術を取り扱う外国メーカーに対し、設計や製造の詳細を開示し、全工程を中国内で行うことを定めた規制の検討に入ったという。外国メーカーが保有する独自技術を事実上、「丸裸」「強奪」するような要求だ。

平井氏は「こうした動きを受けて、日米の複数のメーカーが本格的な中国撤退に踏み切る可能性がある」と明かす。

中国当局の締め付けは、投資の判断に不可欠な企業調査にも及んでいる。スパイ行為の疑いで、リサーチ会社への立ち入り調査や、調査員の不当拘束も始まったという。

日本企業はどう対処すべきか。

平井氏は「習政権の強権独裁は国際社会では通用しない。日本も即刻、中国リスクを極限まで切り離すべきだ。まず、サプライチェーン(供給網)の再編だ。製造・開発の拠点を、中国から日本国内に回帰させる。もしくは、ベトナムやカンボジアに移転し、そこから中国向けに輸出する。中国に足場があることが最大のリスクだ。人材の脱出も重要だ。中国の経験が長い人物を優先して、一刻も早く帰国させる。安全確保のために家族ら関係者の帰国も急ぐべきだ」と語った。

中国共産党指導部は経済回復の遅れを受けて、外資系企業への積極的な投資誘致を進めているが、改正反スパイ法はこれを阻害するものといえる。中国商務省は7月21日、同法の説明会を開き、幹部が「政策の透明性と予見可能性を向上させることに注力する」と説明したが、とても信用できない。

岸田政権の取り組みも急務だ。

平井氏は「安倍晋三政権では2020年、企業の国内回帰を促す『脱中国』のため企業向けの補助金に2000億円超を計上した。同時期、米国政府の『脱中国補助金』は5兆5000億円だった。日本には、スパイ防止法もなく、日本人を守る対策も不十分だ。急がねばならない」と強調した。
2023.08.08 11:02 | 固定リンク | 経済

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