朝露結束で「米中に挑戦状」
2023.09.15
ロ朝首脳会談、「米中協調、北露切捨て」 孤立国の結束 米中主導の国際秩序に挑戦状

ロシアに引き渡される予定の北の砲弾を奪ったウクライナ「ほとんどが1980~90年代製」「たまに変な所に飛ぶ」 北の人工衛星ロシアの疑似衛星 ミサイル、戦車も疑似 「ロシア中国へサイバー攻撃で技術奪う」北朝鮮

ウクライナ国防省情報総局のキリル・ブダノフ長官は13日に現地メディア「ニュー・ボイス・オブ・ウクライナ」の取材に「ロシアはすでに1カ月ほど前からロケット弾など北朝鮮製の兵器を使っている」と明らかにした。ブダノフ長官によると、1カ月半ほど前に北朝鮮とロシアは協定を結び、この時から北朝鮮製兵器の輸入が始まったという。これは7月22日にロシアのショイグ国防相が6・25戦争休戦協定70周年に北朝鮮を訪問し、武器や砲弾の供給を要請した時期と合致する。

米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官も昨年末の時点で「ウクライナ東部バフムトを攻撃するロシアの民間軍事会社ワグネルに対し、北朝鮮はロケット砲やミサイルを売りさばいた」と主張していた。

 ロシアにおける砲弾の生産能力は年間100万-200万発だが、ロシア軍は昨年2月末のウクライナ侵攻後、昨年1年間ですでに1000万-1100万発を使ったとみられる。

 これについて西側の軍事専門家は「北朝鮮の武器庫は一部が老朽化し、効率も悪い」と指摘する。英フィナンシャル・タイムズは7月28日、「ウクライナ軍はロシアに引き渡される前の北朝鮮製122ミリ砲弾を友好国を通じて入手し、これを南部ザポリージャ戦線で、旧ソ連時代のグラド多連装ロケット砲で使用しロシア軍を攻撃している」と報じた。

 当時ウクライナ軍のルスランと名乗る砲兵指揮官はフィナンシャル・タイムズの取材に「北朝鮮製の砲弾はほとんどが1980年代か90年代に製造された」「不発の割合が高いのであまり使いたくはない」と述べていた。また別の砲兵も「砲弾は信頼性が非常に低く、たまに変なところに飛ぶので、発射台に近づいてはならない」と注意を呼びかけた。

 グラドは122ミリ砲弾を20秒以内に最大40発撃てる多連装発射システム(MLRS)で、トラックに積んだ状態で使用する自走砲だ。AK47小銃と同じく世界中で使用されており、北朝鮮軍、ロシア軍、ウクライナ軍のいずれもグラドを使っている。

 上記のルスランと名乗る指揮官はフィナンシャル・タイムズに「北朝鮮製の砲弾は信頼性に問題はあるが、これでも使えるのは幸い」「ウクライナ軍は手に入る全ての砲弾を使わねばならない」とも述べた。

 ウクライナ軍が北朝鮮製の砲弾を入手したルートについてウクライナ国防省関係者は「戦車や装甲車と同じくロシア軍から奪った」と説明していたが、これに対して戦場のウクライナ軍指揮官は「ロシアに渡る前に『友好国』を通じて入手した」と明らかにした。

 ロシア軍はウクライナ侵攻以来、これまで戦車2000両、装甲車4000両、航空機100機以上を失ったとみられる。さらに27万人のロシア軍兵士が戦死あるいは負傷した。

■北朝鮮製の砲弾「老朽化でたまに変なところへ飛ぶ」

ロシアの北朝鮮武器購入リスト、6・25戦争で使われた旧型が多数占める

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相が今年7月に北朝鮮を訪れたことで朝ロ間の武器取引の懸念が浮上する中、ロシアの武器購入リストのかなりの部分を70年以上前の旧式兵器が占めていることが明らかになった。

自由アジア放送(RFA)は最近、ロシアの人権団体「グラグ・ネット」が,ロシア国防省関係者の話を引用して暴露した,ロシアの北朝鮮武器購入リストを公開した。

関連リストによると、ロシアは北朝鮮に、6・25戦争当時「タバル銃」と呼ばれた,PPSh41サブマシンガンや、RPDデグチャレフ軽機関銃、中国製AK47の56式歩槍(ほそう、小銃)および弾薬などを要求したという。

PPSh41サブマシンガンは旧ソ連が1941年から使用し、50年に生産を終えた。その後、北朝鮮は「49式」という名前で生産し、6・25侵略の際に使用した。老朽化した武器類は現在、韓国の民防衛に相当する「労農赤衛隊」で主に使われている。

またロシアは、北朝鮮軍で主力戦車として使用中の「天馬号」戦車(T62)やT55戦車で用いる戦車砲弾も大量に要求したという。北朝鮮の旧式兵器や弾薬、砲弾は旧ソ連から技術と装備の移転を受けて生産されたもので、ロシア製の兵器と互換が可能だ。

北朝鮮が「ソウルは火の海になる」と脅した際に持ち出してきた170ミリ「主体砲」とその砲弾も、購入リストに含まれている。1970年代以降に生産された北朝鮮の主体砲は、現在のロシア軍の兵器体系とは異なるものだが、その射程故に要求していると伝えられている。北朝鮮の170ミリ主体砲は基本弾で30キロ、射程延長弾を使えば60キロ先まで攻撃できる。

チョ・ハンボム統一研究院先任研究委員は「ロシアの切迫した状況を考慮して、すぐに提供可能な旧式兵器を中心として購入リストを作ったものとみられる」と語った。

■北朝鮮の人工衛星・戦車はロシア製とそっくり、ミサイルは射程距離も同じ

北朝鮮はここ数年ロシアの複数のハイテク武器メーカーにサイバー攻撃を仕掛けていたことが分かった。そのため最近北朝鮮が公開した軍事偵察衛星「万里鏡1号」などにロシアの技術が数多く利用されているとの見方が浮上している。

北朝鮮は食料不足などの経済難にもかかわらず、宇宙発射体や固体燃料の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、原子力潜水艦などの開発で大きく進展したが、その「秘訣(ひけつ)」がまさにサイバー攻撃だったのだ。

韓国国家戦略研究院や国防安保フォーラムなどによると、今年4月に公開された万里鏡1号はロシアの人工衛星スプートニクの技術をサイバー攻撃で奪い製造されたとみられる。ロシアは北朝鮮に対して人工衛星関連技術を正式に移転していないという。

人工衛星の核心技術は国家機密であるため、友好国であってもこれを渡すのは厳しく制限されている。そのため北朝鮮はサイバー攻撃を通じて一連の技術を奪っているようだ。

専門家は「北朝鮮は一連のサイバー攻撃で液体燃料ICBMの開発が大きく進展した」と分析している。

NPOマシノストロエニヤが開発した武器の中には「燃料アンプル化技術」が使われた液体燃料ICBMのUR100N(RS18A)がある。液体燃料ミサイルは発射直前に燃料を注入するため、短時間での発射は難しい。しかし製造段階でエンジンに燃料を注入し密封するアンプル化技術を使えば、固体燃料ミサイルと同じく短時間で発射できる。

実際に北朝鮮がNPOマシノストロエニヤへのサイバー攻撃に成功した2021年、北朝鮮はミサイル燃料のアンプル化に成功したと発表した。

韓国のサイバーセキュリティー会社Geniansのセキュリティーセンターで取締役を務めるムン・ジョンヒョン氏は「北朝鮮は防衛産業や宇宙関連の先端技術を確保するためロシアや中国など友好国にも幅広くサイバー攻撃を続けているようだ」とコメントした。

■北朝鮮とロシアの首脳会談で本当の目的は何だったのか

両国は、米国主導の国際秩序に対抗するために、孤立国としての結束を強めることが狙いだったと思います。

プーチン大統領は、ウクライナ侵攻を支援する米国やその同盟国に対して、北朝鮮との軍事協力を示唆することで、警告を発することができました。

金正恩総書記は、ロシアが後ろ盾になっていることを米国や韓国、日本に示すことで、制裁や圧力を緩和させることが目的でしょう。

両国は、実利的な協力も目指していたと思いますが、北朝鮮は、ロシアから武器や技術の提供を受けることで、核・ミサイル開発や人工衛星計画などを進めることができるとの考えです。一方、ロシアは北朝鮮からウクライナ侵攻に必要な武器や兵器を提供してもらうことで、西側諸国の制裁による影響を緩和することができるとの思惑です。

両国は、中国への過度な依存を回避するためにも、関係を深化させることが必要だったと思います。北朝鮮は、中国が核問題の解決に向けて米国と協調する可能性があることを懸念していました。ロシアは、中国が極東地域での影響力を拡大することを警戒していました。両国は、中国に対抗するためにも、自らの立場を強化する必要がありました。

■孤立した両国の会談では「お互いを同志と呼ぶ」

共に地政学的に孤立するロシアと北朝鮮が、頼れるパートナーがいることを誇示し、ウクライナ戦争や、核・ミサイル開発を巡る米国主導の制裁や圧力を弱めようとしている。

米ワシントンのシンクタンク、新アメリカ安全保障センターのドゥヨン・キム氏は、両氏は会談によって、二国間の取引上の恩恵のみならず、地政学的恩恵も得ると指摘。プーチン氏にしてみれば「核保有国が軍事的に協力しているという印象を与えることで、ウクライナを支援する米国の同盟国や同志国に、潜在的な影響について警告を送る」ことができ、金氏としては「ロシアが後ろ盾になっていることを米国、韓国、日本に示すことになる」と述べた。

会談では、軍事面の協力の深化で合意し、プーチン氏は北朝鮮の人工衛星計画を支援すると述べた。

梨花女子大学(韓国)のレイフエリック・イーズリー教授は、単に秘密裡の武器取引が目的なら、わざわざ首脳が直接会う必要はないとし「プーチン、金両氏の外交的誇示は、米国主導の国際秩序への挑戦、中国への過度の依存の回避、ウクライナや韓国に関するライバル国への圧力強化での成功を主張するためのもの」との見方を示した。

国民大学(韓国)のアンドレイ・ランコフ教授は、今回の首脳会談は北朝鮮に関して言えば核・ミサイルを巡る国連安保理決議が、その他の制裁措置と同様、有名無実化したことを示唆するとみる。「安保理決議が気に入らなければ、それを無視すればいいという重大な前例ができた。ロシアだけでなく、主要な国際的プレーヤーに利用されるだろう」と語った。

さらに、両国の防衛協力を前面に打ち出すことで、韓国に対し、ウクライナに直接軍事支援するなという強いメッセージを韓国に送ることができるとも指摘した。ただ、ロシアが、制御不能になりかねない先端技術を北朝鮮に提供する可能性は低いとみている。

ロシア、北朝鮮、そして中国が米国を中心とする西側の包囲網に脅威を感じているのであれば、対抗軸として同盟などを形成し助け合うのは当然だ。しかし韓国外国語大学のメイソン・リッチー教授は、3カ国には過去にそうした関係をうまく機能させたことがあまりないと指摘する。「プーチン、金、習近平(中国国家主席)の3氏が本当に長期的な同盟関係を築けるほど信頼し合えるとは考えにくい。独裁者同士が協力するのは難しい」と語った。

■両国の思惑通り進んだのか

外遊をほとんどしない金総書記だが、今月下旬にウラジオストクを訪問した。

北朝鮮の金正恩総書記がロシアでウラジーミル・プーチン大統領と会談し、ウクライナ侵攻で使用される武器の提供について協議する見通しだと、米政府関係者が4日に明らかにした。

この報告に先立ち、ホワイトハウスは先週、ロシアが北朝鮮と秘密裏に活発な協議を繰り返し、戦争を遂行するための様々な軍需物資の入手に動いていると警告していた。

米国家安全保障会議(NSC)のエイドリアン・ワトソン報道官は、北朝鮮の略称を用いて次のように述べた。「我々が公に警告してきたように、ロシアとDPRK(北朝鮮)の間では武器提供をめぐる交渉が活発に進んでいる」

「我々は、金正恩総書記がロシアへの指導者レベルでの外交的関与を含め、これらの議論が継続されることを望んでいる、という情報を得ている」

ニューヨーク・タイムズによると、外遊することがほとんど無い金総書記だが、今月下旬に北朝鮮からそう遠くないロシアの太平洋沿岸にあるウラジオストクに赴き、プーチン大統領と会談すると見られている。

同紙は、金総書記はモスクワを訪れる可能性もあるが、それは定かではないと伝えた。

NSCのジョン・カービー報道官は先週、北朝鮮は否定しているものの、2022年に北朝鮮はロシアに対し、民間軍事会社ワグネルが使用する歩兵用ロケット弾やミサイルを提供したと述べていた。

一方、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相が先月、北朝鮮を訪れ、戦争で使用する追加の軍需物資を入手しようとしていたことを、ワトソン報道官が明らかにした。

そして、「北朝鮮に対し、ロシアとの武器提供をめぐる交渉を中止し、ロシアに武器を提供や売却をしないという公約を守るよう求める」とした。

国連では先週、米国、英国、韓国、日本が共同声明を発表し、ロシアと北朝鮮の二国間協力を拡大する取り決めはすべて、ロシア自身も承認している北朝鮮との武器取引を禁止する安保理決議に違反することになると指摘した。

この4か国からの報告によれば、ショイグ国防相が平壌を訪問した後、別のロシア政府関係者らが北朝鮮に出向き、武器の購入に関するフォローアップ協議を行ったという。

金総書記とプーチン大統領が協議を行う傍ら、ウクライナは同国の南部と東部で綿密に計画された反転攻勢を展開しており、その動きに対してプーチン大統領は4日、失敗していると主張した。

プーチン大統領は「失速しているのではない。失敗だ」とし、「少なくとも今日はそう見える。次の展開を見てみよう」と語った。

■北朝鮮のハッカー集団「ロシアの内部ネットワークに侵入」

ロイター通信によると、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」などは、極超音速ミサイルや人工衛星技術で知られるロシア企業「NPOマシノストロエニヤ」のシステムに情報を抜き取りやすくする「バックドア」を組み込んでいた1。データが盗まれたかどうかは不明だが、ネットワークへの侵入は2021年末ごろから始まり、22年5月まで続いたという。

朝鮮日報によると、北朝鮮のサイバー攻撃部隊は昨年1-3月にロシアの人工衛星メーカー「スプートニクス」の内部ネットワークに侵入し、超小型衛星関連技術などを奪っていたという。北朝鮮はこの企業から超小型衛星の設計図など一部の技術を奪ったとみられる。

北朝鮮は2020年5-8月に地対空ミサイル開発で有名なロシアの「アルマズ・アンティ」社の内部ネットワーク侵入にも成功した。北朝鮮ハッカーはこの会社の内部ネットワークに侵入し、開発者の個人情報やミサイル部品関連情報など多くの資料を奪ったようだ。

北朝鮮は2019年にロシアの第3.5世代主力戦車「T14アルマータ」などを開発・製造する「ウラルヴァゴンザヴォド」の設計図を奪ったこともわかった。北朝鮮は極超音速ミサイルやICBM(大陸間弾道ミサイル)など先端兵器メーカーにも数年にわたり繰り返しサイバー攻撃を仕掛けていたという。
2023.09.15 20:20 | 固定リンク | 戦争

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