中国の三重苦「処方箋はないのか」
2023.09.10

「三重苦」ゼロコロナ政策、不動産不況、輸出減速が波乱要因

■中国のゼロコロナ政策は失敗

新型コロナウイルスの感染状況や行動制限の度合いに応じた政策の影響が避けられず、振れ幅が大きくなる可能性があります。

習近平国家主席は、その厳格さから物議を醸している「ゼロコロナ」政策を直ちに緩和するつもりはないことを示唆しました。

彼は「ゼロコロナ」政策を「ウイルスのまん延を阻止するための人民の戦争」と表現し、この政策は人命を救ってきたが、それと同時に中国国民と経済に大打撃を与えたと述べました。ロックダウンや移動制限に対する国民の疲労感は高まっていました。

中国のゼロコロナ政策とは、新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込めようとする方針や政策を指す言葉です。中国は2020年の半ばには国内の新型コロナ新規感染者はほぼいなくなったとされるほど、都市封鎖(ロックダウン)などの強権的な措置を取りました。

しかし、2022年12月に突如、ゼロコロナ政策を大きく軌道修正しました。残された主な制限も2023年1月初旬には撤廃される予定であり、中国への渡航者についても入国時の隔離や新型コロナウイルス検査が免除されることになりました。この政策転換の背景には、全国規模の厳しいロックダウン措置に対する抗議行動や経済的自立の観点があったと考えられます。

しかし、ゼロコロナ政策の緩和に伴い、新型コロナウイルスの感染者と死者が急増しています。病院や葬儀場に行列ができたり、混雑した病院の待合室の真ん中に設置されたベッドに患者が収容されたりするなど、医療サービスのひっ迫が深刻化しています。中国で使用されている主なワクチンはオミクロン株に対する有効性に疑問があり、ワクチン接種率も高齢者を中心に低いままです。

以上のことから、中国のゼロコロナ政策は、国際的な摩擦や国内的な課題だけでなく、経済発展段階の変化にも関係していると言えるでしょう。

一方では、中国は2020年の半ばには国内の新型コロナ新規感染者はほぼいなくなったとされるほど、都市封鎖(ロックダウン)などの強権的な措置を取り、感染拡大を抑え込むことに成功しました。

また、ゼロコロナ政策の緩和に伴い、経済活動や社会生活が回復し、国民の不満や不安を和らげることにも成功しました。

しかし、他方では、中国のゼロコロナ政策は多くの問題や課題を残しています。まず、ゼロコロナ政策の緩和に伴い、新型コロナウイルスの感染者と死者が急増しており、医療サービスのひっ迫が深刻化しています 。

中国で使用されている主なワクチンはオミクロン株に対する有効性に疑問があり、ワクチン接種率も高齢者を中心に低いままです。これらの点から見れば、中国のゼロコロナ政策は失敗したと言えるでしょう。

また、中国のゼロコロナ政策は国際的な摩擦や経済発展段階の変化にも関係しています。中国は世界最大の経済大国であり、他国との貿易や交流が重要ですが、ゼロコロナ政策はそれらを制限することになります。

中国は高度成長期から成熟期へと移行しつつありますが、ゼロコロナ政策はその過程で必要な経済構造や産業構造の変革を遅らせる可能性があります。これらの点から見れば、中国のゼロコロナ政策は適切ではないと言えるでしょう。

■不動産市況の低迷

不動産バブル崩壊の影響で、不動産市場が低迷しています。不動産会社の多くは資金不足のため新規投資の余力がなく、市況の改善は期待しにくいとされています。

中国の不動産市況は、いくつかの要因により低迷しています。以下に主な要因を挙げます。

不動産バブルの崩壊

中国の不動産市場は、住宅価格が異常に高騰する「不動産バブル」の様相を呈しています。このバブルが崩壊すると、不動産市場全体が低迷します。

不動産会社の資金繰り問題

中国の不動産大手である中国恒大集団が巨額の負債を抱え、経営危機に陥っていることも影響しています。

政府の規制強化

中国政府は、バブル抑制のために不動産関連の金融規制を強化しています。これにより、新築マンションの販売が低迷しています。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う経済活動の停滞も、不動産市況に影響を与えています。

中国の不動産市場は、米中貿易戦争や新型コロナウイルスの影響により、住宅価格や販売、投資、建設などが大幅に減少しています。

中国政府は、不動産市場を安定させるために、金融規制や地方別の調整策などを強化していますが、効果は限定的であり、地方政府の財政難や開発業者の資金繰り悪化などの問題も深刻化しています。

中国の不動産市場は、高度成長期から成熟期へと移行しつつあり、経済構造や産業構造の変革が必要とされています。

中国は人口構造の変化や環境問題などに対応するために、住宅は住むもので投機の対象ではないという方針を堅持しています。

以上のことから、中国の不動産市況は、国際的な摩擦や国内的な課題だけでなく、経済発展段階の変化にも関係していると言えるでしょう。今後、中国はどのように不動産市場を調整していくかが課題と言えます。

■輸出の減速

世界規模の景気減速が鮮明になると、中国の輸出は成長エンジンとして機能しなくなる可能性があると警告されています。

中国の輸出は、いくつかの要因により減速しています。以下に主な要因を挙げます。

内需の低迷

中国国内の需要が低迷しており、輸出が減少しています。

外需の低迷

世界経済の減速に伴い、中国からの輸出需要が減少しています。

貿易摩擦

米中貿易摩擦など、貿易関係の悪化が輸出に影響を与えています。

これらの要因が相互に影響し合い、中国の輸出が減速しています。

中国の輸出の減速の理由には、いくつかの要因が考えられます。

一つは、米中貿易戦争による対米輸出の低迷です。中国は米国にとって最大の貿易相手国であり、米国からの関税措置や制裁措置により、中国の輸出品の競争力が低下しました。2023年8月の対米輸出額は前年同月比で20.1%減となりました。

もう一つは、中国国内の経済減速です。中国は不動産不況や若年層の失業率の高さなどにより、内需がふるわず、輸入も減少しています。これにより、中国向け輸出を行う他国の経済にも悪影響を及ぼしています。日本は中国にとって最大の輸入国であり、2023年7月の対中輸出額は前年同月比で13.4%減となりました。特に機械類や化学製品などが大きく減少しました。

さらに、中国は高度成長期から成熟期へと移行しつつあります。これは日本が40年前に経験したことと似ています。中国は人口構造の変化や環境問題などに対応するために、経済構造を変革しようとしています。その過程で、労働集約型から技術集約型へと産業構造がシフトし、輸出品の質や価値が向上する可能性があります。

以上のことから、中国の輸出の減速は、国際的な摩擦や国内的な課題だけでなく、経済発展段階の変化にも関係していると言えるでしょう。今後、中国はどのように輸出戦略を調整していくかが注目されます。
2023.09.10 09:31 | 固定リンク | 国際
「江沢民派の巻返しあるのか?」
2023.09.10
■「江沢民派の巻返し」は、中国共産党内部で権力と利益をめぐる対立が続く中で、江沢民元総書記の支持者や派閥が習近平現総書記に対抗し、巻き返しがあるのか? あるとすればどのような動きになるのか...

習近平氏は、自らの権威と思想を強化するために、党内の反対派や腐敗者を粛清する「反腐敗キャンペーン」を展開しています。このキャンペーンによって、江沢民派の重要な人物や利益集団が次々と失脚や逮捕に追い込まれています。

例えば、江沢民派の中でも最も強力な既得権を持っていた周永康元政治局常務委員は、2015年に終身刑に処されました。

また、江沢民派の中でも最も影響力のある人物の一人であった曽慶紅元政治局常務委員は、2019年に無期懲役に処されました。

これらの人物は、江沢民派の中核的な存在であり、その失脚は江沢民派に大きな打撃を与えました。

■習近平氏は、自らの政治理念や政策を「習近平思想」として党規約に盛り込み、毛沢東以来の権威として習氏の地位を確立しました。

また、2018年には国家主席や党中央軍事委員会主席の任期制限を撤廃し、無制限に権力を行使することが可能になりました。これらの措置は、習氏が中国共産党や国家の最高指導者として不可欠であることを示すものであり、江沢民派や他の派閥が習氏に挑戦する余地を奪うものでした。

習近平氏は、中国の経済発展や社会安定、国際的地位の向上などに貢献したとして、自らの指導力と権威を強化することを目指しています。しかし、その過程で、中国は米国や欧州などとの貿易摩擦や人権問題などで対立することが多くなりました。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生や対応に関する批判や不信も受けました。これらの問題は、習氏の指導力や信頼性に疑問を投げかけるものであり、江沢民派や他の派閥が習氏に不満や反発を抱く原因となりました。

以上のように、「江沢民派の巻返し」は、習近平氏が行った粛清や権力集中、政策運営などに対する反発や抵抗として起こっていると考えられます。

しかし、「江沢民派の巻返し」がどの程度の規模や影響力を持っているかは、中国共産党の内部事情が非公開であるために、外部からは正確に判断することが難しいです。

また、「江沢民派の巻返し」が習近平氏の地位や権力に危機をもたらすかどうかは、今後の習氏の行動や政治体制の変化によって判断されるべきでしょう。

■江沢民派VS習近平派の闘争で既得権者の個人既得権を奪取された恨みはどのように継続されるのか?

習近平氏の「任期制限撤廃」の理由については、様々な見解がありますが、一般的には以下のようなものが挙げられます。

習近平氏は、中国の経済発展や社会安定、国際的地位の向上などに貢献したとして、自らの指導力と権威を強化することを目指していると考えられます。

任期制限撤廃は、その一環として行われたもので、習氏が党総書記引退後も中国の政治に影響力を行使することに道を開くための措置だと言えます。

習近平氏は、自らの政治理念や政策を「習近平思想」として党規約に盛り込み、毛沢東以来の権威として習氏の地位を確立しました。

任期制限撤廃は、習氏思想を長期的に実践するために必要なもので、習氏が中国共産党や国家の最高指導者として不可欠であることを示すものだと言えます。

習近平氏は、中国には2020年から2035年にかけて「安定し強力で一貫した指導体制」が必要だと主張しています。

任期制限撤廃は、そのために習氏が長期的に権力を握ることを可能にするもので、中国の国内外での課題や危機に対処するために必要なものだと言えます。

以上のように、習近平氏の「任期制限撤廃」は、同氏を権力において守り通すためだけではなく、中国の発展や安全保障などに関わる重要な目的があるという見方もあります。しかし、この改正によって習氏の権力が過度に集中し、民主主義や人権などが侵害されるおそれがあるという批判や懸念も多くあります。

習近平氏が「独裁者」になるかどうかは、今後の彼の行動や政治体制の変化によって判断されるべきでしょう。

■任期制限撤廃に反対する意見は、主に以下のようなものがあります。

任期制限撤廃は、習近平氏の権力を過度に集中させ、民主主義や人権などが侵害されるおそれがあるという批判や懸念があります。

任期制限撤廃は、中国共産党の内部民主主義や集団指導の原則を損ない、習氏の個人崇拝や独裁的な支配を助長するという見方もあります。

任期制限撤廃は、中国の政治体制や政策の安定性や連続性を損なう可能性があるという意見もあります。

任期制限撤廃は、習氏の後継者問題や政権交代のメカニズムを不透明にし、政治的な混乱や対立を招く恐れがあるという指摘もあります。

任期制限撤廃は、中国の国際的な信頼や評価を低下させる可能性があるという見解もあります12。任期制限撤廃は、中国が法治国家や責任ある大国として振る舞うことに疑問を投げかけ、国際社会からの批判や圧力を増加させるという懸念もあります。

江沢民派と習近平派の闘争は、中国共産党の内部で権力と利益をめぐる対立として続いています。既得権者の個人既得権を奪取された恨みは、政治的な報復や粛清、腐敗撲滅キャンペーンなどの形で継続される可能性があります。以下に、いくつかの事例を挙げます。

江沢民派の重鎮であった周永康は、2012年に習近平が党総書記に就任した直後に失脚し、2015年には反革命罪や収賄罪などで終身刑に処されました。

周永康は、江沢民派の中でも最も強力な既得権を持っていたと言われており、その失脚は江沢民派に大きな打撃を与えました。

江沢民派の別の重鎮であった曽慶紅は、2017年に習近平が党総書記に再選された直後に拘束され、2019年には収賄罪などで無期懲役に処されました。

曽慶紅は、江沢民派の中でも最も影響力のある人物の一人であり、その拘束は江沢民派の勢力をさらに弱めました。

習近平派の中でも有力な人物であった孫政才は、2017年に党中央政治局常務委員から解任され、2018年には収賄罪や国家機密漏洩罪などで終身刑に処されました。孫政才は、かつて江沢民派に属していたことがあり、その後習近平派に鞍替えしたと言われています。そのため、孫政才の失脚は、江沢民派からの報復だとも見られています。

以上のように、江沢民派と習近平派の闘争は、既得権者の個人既得権を奪取された恨みが根底にあると考えられます。この闘争が今後どのように展開するかは予測しにくいですが、中国共産党の安定性や統一性に影響を与えることは間違いありません。
2023.09.10 07:44 | 固定リンク | 政治

- -