如何にしてトランプ氏に対応「緊急で勧告する」
2024.07.28
「トランプ再選でこれから日本は《救われる》」...緊急で勧告する「日本が見る栄光」

慧眼の専門家たちと読み解くトランプ再選後の世界と日本

アメリカの政治学者「Gゼロ」(理想のリーダー)というコンセプトを提唱。世界各国の政府・企業に地政学的観点から助言を行う。

第二次トランプ政権は「反省」から始まる

バイデン氏が大統領選から撤退し、カマラ・ハリス副大統領を後継者として指名しました。

民主党内部にはハリス氏以外にも有力な候補者が何人もいますが、現時点で大統領候補に名乗りを上げた人は一人もいません。これで、ますますトランプ氏が有利となりました。

本来は、候補者同士を競わせたうえでハリス氏にバトンタッチすべきでした。そうすれば、民主党の候補者選びそれ自体がショーになり国内の目を民主党に向かせることができたはずです。今回、そうした競争を経ずにハリス氏に交代とな、トランプ再選の可能性が高まったといえます。

それでは、実際にトランプ再選となった場合になにが起きるのかを見ていきましょう。

まず、トランプ氏は前回の「反省」から始めるはずです。前回の反省とはなにか。それは、政権移行の準備が整わず、重要な役職が空席のまま時間だけが過ぎてしまったことです。

1期目のときは、準備が不十分だったために、トランプ氏のビジョンに共感していない人もたくさん政権内部で雇わなければなりませんでした。

そこで、現在トランプ氏は、前政権時代の高官が設立したシンクタンクをベースに、人材補充の準備を進めています。

すなわち、今回のトランプ政権は就任と同時に思い通りの政策を進めることができるのです。

関税と経済制裁で脅す民主党バイデン大統領

では、「トランプ2・0」の世界では、具体的にどんな変化があるでしょうか。

ポイントは「関税」です。トランプ氏はなによりも貿易不均衡を嫌います。バイデン氏も前トランプ政権を踏襲し、中国などに対して高い関税をかけ、貿易障壁を強化してきました。

トランプ再選となれば、こうした政策を続け、アメリカの貿易相手国や競合他社に継続するでしょう。中国に対しては60%の関税を課すとも言っています。

では、日本にはどんな影響があるでしょうか。普通に、日本はトランプ氏に諭されるでしょう。

まずトランプ氏は、中国同様、日本には一次政権政権時の反省から事前に連絡してくるはずです。

そこで、「もし関税をかけてほしくなければ……」とトランプ氏は、在日米軍基地の経費の負担額を求めて来ますが、さらに協議を求めてきます。また、トランプ氏は安倍さんの時のように聞く耳を持っています。

もう一つ、トランプ氏は円安ドル高を嫌っています。経済制裁などを脅し文句に、ドル安へと誘導するよう求めてくる可能性があります。ここでも日本は必要以上の為替介入を強いられてしまうかもしれません。

「円安」が日本にとって有利である「理由」 高橋洋一が解説

数量政策学者の高橋洋一が6月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。東京市場での円・株・債券のトリプル安について解説した。

円相場、1ドル=134円40銭付近で取引

6月13日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価は先週末と比べて876ドル05セント安い3万516ドル74セントで取引を終えた。ハイテク銘柄中心のナスダック総合指数は530.79ポイント下がって10809.23。一方、円相場は1ドル=134円40銭付近で取引されている。

アメリカの場合は、インフレ率をどうするかということが政策課題になってきているのですか?

全体で8%くらいですからね。下がると思っていたら、5月に少し上がってしまった。

円安になるとGDPが上がり、日本にとっては有利なこと

日本で「円安」と盛んに言うではないですか。報道を見ると「とても悪いことなのか」と思いますが、ファクトとしては、円安になると実質国内総生産(GDP)は上がるのです。自国通貨安は自分の国には有利であり、他の国には不利ということで、「近隣窮乏化」などという言い方をします。近隣窮乏化というのは、周りの人には迷惑な話であるということです。

周りの国にとっては。

日本国内で批判が出るということが、私は不思議ですね。普通は海外から批判が出るのです。「日本だけがよくて、他の国は大変だよ」という文句が来るのです。

お前だけよくていいよなと。

中小企業には不利だが超優良企業には有利な円安 ~プラスマイナスを合わせるとプラスが大きいのでGDPが増える。

そういう文句がくるのだけれど、いまのところきていないのはラッキーです。10%くらい円安になるとGDPは1%くらい上がるので、有利な話なのです。こういう話をすると「中小企業は」という話題になりますが、為替というのは、中小企業には円安は不利です。ただし、エクセレントカンパニーには有利です。

超優良企業には。

輸出比率が全然違うためです。輸出は世界市場で行わなければいけないから、比較的エクセレントカンパニーには有利なのです。輸入は誰でもできるのですが、中小企業は輸出比率が低い。そういう意味では、円安の恩恵を得にくいのは間違いありません。それでも、プラスマイナスを合わせるとプラスの方が大きいので、GDPが増えるということです。

政策対応としては円安で大変な輸入業者や中小企業への対策をする

GDPが増えるのだから、政策対応は簡単なのです。円安で大変な輸入業者や中小企業への対策をすればいいということです。

大企業の収益が増える、イコール税収も増えるので、その部分を再分配すればいい。

例えば、企業収益が過去最高の企業が多いはずなのです。ということは法人税収も大きくなる。それを再分配すればいいので、政策対応は簡単です。GDPが減るような状況での政策対応は大変だけれど、GDPが増えるときは簡単です。

「円安」により、IMFの経済見通しでは日本だけが昨年より成長率が高い

「円安だ」と大騒ぎしていますが、「GDPが増える」ということはどこも書かないのです。不思議です。内閣府の経済モデルでも言えるし、世界のOECDやIMFの経済モデルでも同じです。

経済モデルは。

IMFの経済見通しだと、今年(2022年)の予想は日本だけが去年より成長率が高くなるのですよ。それは円安だからです。

通常、為替が安くなるときには株は高くなる ~今回の株安はアメリカ要因のため

ニュースの見出しとしては「東京市場で円・株・債券トリプル安」ということを言っていまして、1ドル=135円台前半までいきました。1998年10月以来、およそ24年ぶりです。日経平均株価は昨日(13日)、800円を超す値下がりとなり、2万7000円割れ。長期金利の10年国債利回りが年率で0.255%まで上昇。価格は下落したということですが、日銀の目安を超えてきたではないかというようなことも言われています。産経新聞は悪い円安論という言い方です。

実質国内総生産(GDP)が増えて「悪い」と言われると、どうしていいのかわかりません。株と為替だけの話をすると、エクセレントカンパニーにはプラスだから、エクセレントカンパニーで構成される株価は円安がプラスになるのですよ。過去の例を見ても、為替が安くなるときに株が高くなる場合はかなり多いです。

為替が安くなるときには。

今回どうして株が下がったかと言うと、アメリカの要因があるわけです。株は2つの要因で決まっていて、為替とアメリカです。アメリカの影響が大きいと、こういうことが起こるのです。

今回のように。

債券の方は安くなったと言うけれど、イールドカーブ・コントロールで金利を一定にさせる。はっきり言うと10年金利で0.25%に収まっているから、これ以上にはならないですね。

ここから先は日銀が間に入っていく。

一面だけを見て誤った報道をするマスコミ

それはそれでけっこうなことなのですけれどね。金利が安い状態だから、GDPも増えるということなのです。それなのに、一面だけを見て100円ショップがどうのこうのと言うでしょう? 完全に一面だけのストーリーというやり方で、全体を見誤っている報道です。

全体を見誤る。

これはマクロ経済の話だから、全体の話をしないとダメです。マスコミがストーリーテラーとして、1つの例からすべてを説明したがることはよくあることですが、マクロ経済の説明のときにはほとんど間違いになります。

社会的なドキュメンタリーではよくある手法ですが、経済でやろうとしているのですか?

1つのことで説明してしまって、「GDPが増える」という話は説明しない。それはダメなのです。マクロ経済としては「GDPが増える」ということで説明が終わるのです。もちろんプラスマイナスはありますが、全体では増えるということです。

円安のいまこそ内需対策をすれば景気は上がる ~追い風である「円安」だけでいいと対策しない政府

「10%円安になるとGDPが1%程度増える」ということですが。

大体1%増えます。

円安が始まったのは、当然ながらウクライナ情勢によるところがありました。2月の水準だと、私が記憶しているのは1ドル=110円台ぐらいだったと思うのですが。

そうですね。

そうすると、いま135円ということは、20%ぐらいは円安ということですよね。

日本の経済成長率がこれで持っているようなものです。

GDPが2%増えると考えれば。

そうですね。逆に言うと、内需の話がきちんとできていない。例えば補正予算は全然足りていません。その部分をきちんとやっていないけれど、円安で持っているという感じです。内需への対応をもう少しきちんとやれば、上がるのです。

そうですよね。経済協力開発機構(OECD)の予測を見ると、日本は大体1.8~1.9%の成長と。「あれ?」と思うのは、為替で説明がついてしまうことですね。

大体はそうですよ。逆に言うと、内需対策をサボっているということなのです。だから「こういうときに内需対策をすれば、ダブルパンチでちょうどいい」と私は思いますけれどね。フォローウィンドが吹いているから、「これはチャンス」と思えばいいのですが。

追い風。

だけど、「追い風だけでいい」と思ってしまっているのでしょう。

追い風で進んでいるから、漕がなくていいやと。

そんな感じになってしまっているのですね。

いまこそ、「Go To トラベル」をやるべき ~いまやれば経済に火が点くはず
高橋)いろいろな発言でも強制貯蓄論というものがあって、自然に爆発するということで、景気対策をサボるのです。強制貯蓄論が出たときには、「少しでも火を点けたらすごいよ」と私は言う方なのですけれどね。具体的に言うと、例えばGo To トラベルです。

Go To。

東京都民割が人気なのでしょう?

そうですね。

参院選のあとでは夏休みの計画に間に合わない
高橋)国の方もやればいいのだけれど、参議院選挙のあとに全部先送りしているのです。すべて検討になっている。いまやれば本当に火が点きますよ。

このタイミングでやると、ちょうど「夏休みはどうする?」という人たちが。

参議院選挙以降だと、夏休みに間に合わないかも知れないという不安が業者にもあるのですよ。参議院選挙以降であれば夏休み直前になりますね。

7月10日だと直前です。そのぐらいの時期には、もう予約を取ってしまっています。

インフレ率が高くなっても、景気対策で所得が上がっていれば問題はない
飯田)仮に経済対策で景気が「ドーン」と上がるとなると、インフレ率も高まるのではないかと思いますが、いかがですか?

高橋)逆に言うと、景気対策を行って所得が上がれば、簡単に転嫁できるという意味で、そちらの方がいいのです。少しインフレ率が高くなっても構いません。インフレ率が高くなっても、景気対策で所得が十分に上がっていれば大丈夫なのです。逆に、インフレ率が高まらないように所得を少なくすると転嫁できないから、企業の方にしわ寄せがいってしまって、最後は雇用に影響するのです。

なるほど。インフレ率は高まるかも知れないけれど、賃金などが……。

賃金も上がるから。

経済成長も高まって、実質部分でプラスになっていれば大丈夫だと。

他の国の方がインフレになっている部分だけ、最終需要があるという意味で、まだまともなのです。日本は最終需要がないけれど、インフレにもなりにくいので、そちらの方がよくない状況です。

需要がないから、今度は「生産を縮小しよう」ということになってしまう。

コストアップが価格転嫁できなかったら、事業を縮めて、最終的には雇用に影響します。ですからインフレになっても「けしからん」ということではなくて、「インフレになっても十分なくらいにお金を景気対策で撒け」というのが正しいのです。

トランプ氏「為替発言」の波紋 1ドル=110~120円まで円高に 日本は今のうちに外貨準備を減らし「円安差益確保」を

ドナルド・トランプ前米大統領が、円安や人民元安を警戒する発言をして話題となった。

トランプ氏は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」だ。重要・基幹産業は国内で完結し整備しようとしている。そのためにはドル高は不都合だ。今のドルが均衡レートより高いことも知っているようだ。

要するに、本コラムで何度も指摘してきた「近隣窮乏化」、つまりドル高は米国経済を弱らせるが、他国を強くすることを理解しているようだ。どこかの政治家や経済メディアのように「円高が日本経済に良く、円安が悪い」と思い込んでいるのと真逆である。トランプ氏からみれば、そうした人々は「日本ファースト」でないのでくみしやすいだろう。日本にとって国益を害する人たちだともいえる。

トランプ氏はもともと不動産業出身で、基本的には金融緩和を好むので、ドル安は居心地が悪くないはずだ。

実はトランプ氏は、前回の大統領当時から、ドル安を指向していた。しばしばドル安に口先で言及したが、実際には介入はなかった。

米国では、実務的に米財務省が米連邦準備制度理事会(FRB)と協議の上、為替介入を決定し、ニューヨーク地区連銀が介入事務を行う。介入金額は、米財務省とFRBが折半し、米財務省は外国為替安定基金から、FRBは自身のバランスシート(貸借対照表)から、それぞれ原資を拠出する。なお、日本では介入主体は財務省で、資金は財務省の外国為替資金特別会計(外為特会)から拠出されている。

為替介入の効果については、一時的であり、継続しないので、欧米では口先で言うことはあっても実際に介入が行われることはまずない。この点、日本の外貨準備は国内総生産(GDP)比で「3割弱」と先進国の「数%」より突出して高く、介入への批判が常にある。

なお、今年2月にブラジルで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、これまでのG20声明の為替に関するコミットメントを再確認した。「通貨の競争的切り下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない」としている。

米国の金利はFRBの所管で、為替は2国間の金融政策の差で決まる。FRB議長は大統領が上院の助言と同意に基づいて任命する。FRBが独立しているといっても、事実上、政府の子会社であるので、政府の方針の下で金融政策をする。それに加えて、大統領の任命権があるので、金利も為替も長い目でみれば、トランプ氏の意向の通りになるだろう。

要するに、インフレ目標の範囲内で低金利、円高・ドル安になるだろう。円ドル相場は、為替が両通貨の交換比率であることから、その理論値は両通貨の比になるが、現状の理論値は1ドル=110~120円だ。そのあたりまで、円高になる可能性がある。

その水準になるまで、日本としては円安メリットを享受し、介入疑惑をなくすためにはできる限り外貨準備を減らして、円安差益を確保するほうがいい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

関税や経済制裁などをちらつかせてくるトランプ流の交渉に日本は立ち向かわなければならない。交渉に失敗すれば、いいようにカネをむしり取られてしまいます。しかし、日本にトランプ氏と対等に渡り合える人物はいますか? 

安倍晋三元首相はもう亡くなりました。あとは誰が残っているのでしょうか。私はトランプ再選後の日本を本当に心配しています。
2024.07.28 08:39 | 固定リンク | 国際

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