ローマ帝国の興隆
2024.06.23
ローマ帝国の興隆は、紀元前8世紀に始まり、イタリア半島を統一した後、地中海沿岸全域や現在のフランスやイギリスの一部を含む広大な領域を支配する大国へと発展しました。

1章、発祥

ローマ帝国の発祥は、紀元前8世紀中ごろにイタリア半島を南下したラテン人の一派がティベリス川(現:テヴェレ川)のほとりに形成した都市国家ローマに遡ります。この都市国家は王政ローマとして知られ、その後共和政へと移行し、最終的には帝政ローマへと発展しました。

都市国家王政ローマから共和政への移行は、紀元前509年に起こった重要な政治的変革です。

紀元前509年、ローマは王政のもとで繁栄していましたが、市民の間には不満が渦巻いていました。王権の乱用と貴族階級の特権に対する反発が高まり、ついには革命の火がついたのです。

ルキウス・ユニウス・ブルトゥスとルキウス・タルクィニウス・コッラティヌスは、王政廃止の先頭に立ち、最後の王タルクィニウス・スペルブスを追放しました。彼らは共和制の樹立を宣言し、執政官(コンスル)という新たな役職を設けました。これにより、元老院と市民の意志が政治に反映されるようになりました。

しかし、この新しい体制はすぐには安定しませんでした。王政復古を望む勢力との間で争いが続き、エトルリアやラテン同盟諸都市との関係も再定義されなければなりませんでした。王政復古を試みたタルクィニウスは失敗し、ローマはエトルリア文化を取り入れつつ独自の道を歩み始めました。

身分闘争もこの時期に始まります。重装歩兵を中心とする平民(プレブス)は、貴族(パトリキ)に対して政治参加を要求しました。長い闘争の末、平民の権利は徐々に認められ、護民官の設置や十二表法の制定により、法の前での平等が保障されるようになりました。

このようにして、ローマは王政から共和政へと移行し、市民による共和政国家としての性格を強めていきました。

その後、ローマは近隣のラテン人やエトルリア人を征服し、その影響力を拡大し始めました。

ローマは内政を安定させつつ、外へと目を向けます。紀元前272年には、イタリア半島南部のマグナ・グレキア(大ギリシア)と呼ばれる地域のタレントゥムを占領し、ギリシア人を征服しました。これにより、ローマはイタリア半島全域を統一することに成功しました。

ローマは占領した地域を統治する方法として、分割統治を採用しました。これは、異なる地域や民族を支配するために、征服都市を植民市、自治市、同盟市という3つに分け、それぞれ権利や義務に差をつけることによって各都市の団結と反乱を防ぐ支配方法でした。

イタリア半島統一後、ローマは地中海征服を目指して各地を征服していきます。ちょうどその頃、地中海はカルタゴの勢力圏でした。カルタゴは紀元前9世紀頃にフェニキア人が北アフリカに作った植民市で、経済的に発展していました。紀元前264年、ローマとカルタゴは地中海の覇権をめぐって開戦し、3回にわたるポエニ戦争が始まります。これらの戦争に勝利することで、ローマは地中海全域の支配を確立しました。

2章、ポエニ戦争

ポエニ戦争は、共和政ローマとカルタゴの間で地中海の覇権を巡って行われた一連の戦争です。紀元前264年から紀元前146年までの約120年間にわたり、3度の大きな戦争が繰り広げられました12。

第一次ポエニ戦争 (紀元前264年 - 紀元前241年) シチリア島の支配を巡る争いでした。ローマとカルタゴはシチリア島で激突し、ローマは海戦で優位に立ちました。最終的にローマが勝利し、シチリア島を獲得しました。

第二次ポエニ戦争 (紀元前218年 - 紀元前201年) カルタゴの将軍ハンニバルがローマ同盟都市サグントゥムを攻撃した。ハンニバルはアルプス山脈を越えてイタリアに侵攻し、カンナエの戦いでローマ軍に大勝しました。しかし、ローマの反撃により、最終的にカルタゴは敗北し、ローマが地中海西部の覇権を握りました。

第三次ポエニ戦争 (紀元前149年 - 紀元前146年) ローマがカルタゴに対して内陸への遷都を要求し、カルタゴがこれを拒否した。それを見たローマはカルタゴを包囲し、最終的にカルタゴを完全に破壊しました。

カルタゴの住民はほとんどが殺されるか奴隷にされ、カルタゴの土地は塩で覆われたと言われています。

ポエニ戦争は、ローマが地中海全域の覇権を確立する重要な転機となりました。






1世紀から2世紀にかけての最盛期には、地中海沿岸全域に加え、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアの広範囲にわたる領土を支配していました。

その成功の背景には、効率的な行政システム、強力な軍事力、法の支配、そしてローマの道路網などのインフラがありました。また、文化的同化政策により、征服された地域の人々がローマ文化を受け入れ、帝国の一部として統合されました。

しかし、帝国の拡大に伴う経済的、社会的、軍事的な問題が積み重なり、やがて帝国は分裂し、西ローマ帝国は476年に滅亡しました3。東ローマ帝国(ビザンチン帝国)はその後も1000年以上続きましたが、1453年にオスマン帝国によって滅ぼされました2。ローマ帝国の興隆と衰退は、歴史上の重要な時期であり、その影響は今日に至るまで続いています。
2024.06.23 19:20 | 固定リンク | 歴史
中国経済が悪化した原因
2024.06.13
中国経済が悪化した原因、中国コロナワクチン効果なし、ゼロコロナロックダウン政策が長期化、

経済の悪化は複数の要因が関係しています。特に以下の点が挙げられます。

不動産市場の低迷

不動産価格の下落と住宅需要の低迷が、経済に大きな影響を与えています。

中国の不動産市場は、確かに最近大きな変動を経験しています。最新の報道によると、中国の新築住宅価格は5月に前月比で0.71%下落し、2014年10月以来の大幅な下げとなりました。中古住宅価格も前月比で1%下落し、少なくとも中国が現在の方法で統計を作成し始めた2011年以来最大の落ち込みとなっています。

この住宅価格の下落は、70都市のうち68都市で観測され、上昇したのは2都市のみでした。不動産開発投資も1~5月の累計で10.1%減少し、不動産不況が長期化していることが示されています。

これらの動向は、中国経済に大きな影響を与えており、不動産市場の低迷が銀行の貸出態度悪化などに波及し、広範な経済活動を抑制する可能性があります。さらに、中国経済の景気減速懸念が国際的な株安などを招く場合、世界的な景気への悪影響も増幅する可能性があります。

中国政府はこの問題に対処するために、住宅ローン規制の緩和や地方政府による売れ残り住宅の買い入れ支援など、不動産市場を下支えする姿勢を強めていますが、目立った効果はまだ表れていないようです。

■中国、不動産不況の底まだ見えず 1~5月の開発投資10・1%減 マイナス幅拡大

中国国家統計局が17日発表した5月の主要統計によると、工業生産は前年同月比5・6%増だった。4月の6・7%増から減速した。不動産開発投資は1~5月の累計で10・1%減で、1~4月の9・8%減からマイナス幅が拡大した。不動産不況はまだ底が見えず、中国政府は在庫住宅の買い取りなど対策を矢継ぎ早に打ち出しているが目立った効果はまだ表れていない。

EV生産好調も過剰生産問題で不透明感

工業生産では、電気自動車(EV)などからなる新エネルギー車は好調が続いている。5月の主要産品の生産量で新エネルギー車は前年同月比33・6%増だった。中国の過剰生産問題を欧米各国が懸念しており、欧州連合(EU)が中国製EVに追加関税を課す方針を発表するなど先行きには不透明感もある。

消費動向を示す小売売上高は3・7%増だった。4月の2・3%増から加速した。5月に労働節(メーデー)に伴う大型連休があったこともあり飲食店収入は5・0%増と伸びた。

投資動向を示す固定資産投資は1~5月の累計で前年同期比4・0%増で、インフラ投資は5・7%増だった。インフラ投資が牽引している国有企業の投資は7・1%増だったのに対し、民間企業の投資は0・1%増にとどまっている。中国政府の景気対策の恩恵が広く行き渡っていないとみられる。

新築住宅価格指数は9割超の都市で下落

不動産関連は低迷が目立つ。1~5月の新築不動産の販売面積は20・3%減だった。

また、統計局が同日発表した5月の新築住宅価格指数によると、前月比で下落したのは主要70都市のうち68都市だった。下落は4月から4都市増え、全体の9割超に達した。上昇したのは上海と山西省太原のみだった。中古住宅価格は全70都市で下落した。4月は1都市のみ上昇していた。

中国政府「新たな政策措置を検討」

不動産市場の冷え込みを前に中国当局は足元で対策を強化する構えを示している。5月には中国各地で売れ残って在庫となっている住宅を地方政府に買い取らせる方針や、住宅ローン金利の下限撤廃などを相次ぎ表明した。

ただ、不動産市場を底打ちさせるには至っていない。李強首相が6月7日に主宰した国務院(政府)常務会議で「在庫解消、市場安定のための新たな政策措置を引き続き検討しなければならない」と指示した。不動産市況次第で追加措置を打ち出す方針だが、それだけ市場浮揚が難しいという現状もうかがわれる。



■個人消費の回復力欠如

中国の個人消費の回復力に関しては、いくつかの要因が影響しているようです。最新の分析によると、以下の点が指摘されています。

消費者信頼感の低下

上海市のロックダウンを契機に、消費者信頼感指数が急低下し、その後も低い水準で推移しています。

所得増加への期待の低下

雇用環境の厳しさや所得増加の見込みが薄れる中、家計は消費よりも貯蓄を優先する傾向にあります。

住宅価格の低下:住宅価格の下落が逆資産効果を引き起こし、消費意欲を減退させています1。
社会保険制度の脆弱性:年金財政のひっ迫や医療費負担の増大など、社会保障の不安定さが消費を抑制しています。

これらの要因により、中国の個人消費は、経済成長のけん引役としての機能を果たすのが難しい状況にあります。政府は消費主導の経済成長を目指していますが、現在のところ、その移行は進んでいないとの見方が強いです。

今後の中国経済の回復には、これらの問題に対する具体的な対策と改革が必要とされています。個人消費の回復力を高めるためには、消費者の信頼を回復し、所得増加への期待を改善することが重要でしょう。

■「4重苦」にあえぐ中国経済は日本の「バブル崩壊」と何が違うのか

上海にある中国不動産開発大手、中国恒大集団のビル

中国経済の低迷には、輸出の減少、不動産市場の低迷、個人消費の回復力欠如、過剰債務問題という4つの主要因がある。こうした状況を平成期の日本の「バブル崩壊」になぞらえる言説もあるが、当時の日本経済が「中成長から低成長への減速」だったのに対し、現在の中国が経験しているのは「高成長から中成長への移行」であり、「失われた30年」のようなデフレ突入による長期低迷に陥るとは限らない。不良債権処理の方法なども日本とは根本的に異なるが、その反面、共産党管理下の経済に特有のリスクがあるのも事実だ。

中国経済の停滞が長引いている。今年初から春先にかけては、ゼロコロナ政策の解除を受けた感染急拡大が一巡、経済活動が急速に活発化、急回復を見せていたが、4月以降は完全に失速している。実質GDP(国内総生産)成長率は、今年1~3月期の前年同期比+4.5%から4~6月期は+6.3%に伸びを高め、一見すると成長が加速したようであるが、前年の同じ期との比較だと昨年4~5月に上海ロックダウンで景気が冷え込んだ反動で嵩上げされており、実態は前期比の成長率が示す通り、1~3月期の+2.2%から4~6月期は+0.8%へ減速、年間の成長率に換算すると+9.1%もの急回復から+3.2%へ急減速している。

毎月の景気動向を示す代表的な指標である製造業PMIで見ても、1月50.1、2月52.6、3月51.9と好不調の境目である50を超えていたが、4月は49.2、5月48.8、6月49.0、7月49.3と4か月連続で50を下回っており、やはり景気の状態は芳しくない。

デリスキングの動きが輸出の回復を阻害

4月以降の景気が停滞している主な要因を挙げると、①輸出の減少、②不動産市場の低迷、③個人消費の回復力欠如、④過剰債務問題の4点である。輸出は、5月に前年同月比でマイナスに転じ、6月、7月とマイナス幅を拡大させている。不動産市場は、春先にかけて持ち直していた不動産価格が再び下落に転じ、不動産投資の減少も続いている。個人消費は、小売販売が減速、特に自動車や宝飾品、化粧品、衣服など選択的な性格の強いもので増勢が鈍っており、マインドの悪化が示唆されている。過剰債務の問題は、政府が思い切った支出の拡大による景気テコ入れを控えていることが、その端的な悪影響であろう。今後を展望しても、以下に詳述する通り、これら4要因のいずれも改善に時間を要する問題を抱えており、コロナ明けの中国経済は前途多難の状況にある。

 まず、輸出の減少について、その背景を確認すると、欧米景気の減速が主因であることは間違いない。米国向け、EU(欧州連合)向けとも、7月には前年同月比で2割を超える落ち込みであった。ただ、欧米の景気が回復したら戻るのかというと、そう簡単な話でもない。欧米とも経済安全保障の観点から重要物資の輸入が特定の国に偏らないことを目指している。いわゆる「デリスキング」である。さらに米国は中国との対立姿勢を強めており、ドナルド・トランプ大統領時代に引き上げた関税がそのまま維持されていることもあって、輸入における中国の依存度は低下傾向にある。

 実際の数字を見ると、米国の輸入全体に占める中国(含む香港)のシェアは、2017年に21.9%だったが、トランプ関税の影響もあり2020年には18.9%へ低下、2021年1月のバイデン政権発足後も低下傾向が続き、2022年には16.7%へ、2023年は5月までの実績で13.5%へ低下している。品目別には、2018年まで中国依存度が8割以上だった玩具が2023年に7割を切り、同じく5割を超えていた家具は3割を切っている。そのほか、中国からの輸入のうち約3割を占めていた電気機器の中国シェアは2017年の42.2%から2023年は26.0%へ、2割を占めた一般機械は32.2%から19.5%へ、それぞれ大きく依存度を下げている。

 欧州(ユーロ圏)においては、米国とは対照的に、中国(含む香港)の輸入シェアは2018年の13.9%から2021年に16.8%まで上昇していた。しかしながら、2022年には16.1%へ、2023年は4月までの実績で15.1%へ低下している。中国からの輸入のうち約2割を占める一般機械が30.0%から24.3%へ、4%程度の家具が39.9%から31.1%へシェアを落としたことが目立つ。欧州委員会は6月20日、EUの経済安全保障戦略を発表、経済的依存・威圧に関するリスクなどを念頭に置き、経済安全保障リスクの特定と評価を実施し、今後のリスク軽減に向けて施策を打ち出す方針を示した。今後、中国への輸入依存度は一段と低下する可能性が高い。そのため、欧米経済がインフレによる停滞から立ち直ったとしても、合計シェア3割強に上る欧米向け輸出は、従来ほどには回復しないと考えておくのが妥当であろう。

 なお、日本における中国への輸入依存度も低下傾向にある。輸入に占める中国(含む香港)のシェアは、2020年の25.9%から2022年に21.1%へ低下、2023年は6月までの累計で21.9%と前年よりやや上昇しているものの、10年ぶりの低水準にとどまっている。中国から見れば、輸出シェア5%弱の日本の重要性は高くはないだろうが、欧米向けの回復が見込めない中では、期待される部分も多少はあろう。

不動産市場の調整は長期化を覚悟すべき

2点目に挙げた不動産市場低迷の原因は、元を正せばバブル潰しである。中国政府は2020年8月、住宅価格の高騰を抑えるため、不動産向け融資の規制を強化した。その結果、「恒大集団」に代表される不動産ディベロッパーの資金繰りが悪化、住宅の引き渡しが遅れたため住宅購入者の不信感が高まり、住宅ローン不払い運動が広がったほか、住宅購入意欲も減退、不動産業者の業績がさらに悪化するという悪循環に陥った。

 最近の住宅価格の動きを主要70都市の前月比を平均したもので見ると、新築は今年1月に下げ止まり、中古も2月にはプラスに転じるなど、不動産市場は今年に入り持ち直しの兆しが見られた。ところが、中古は5月に、新築も6月にマイナスに転じ、住宅価格は再び弱含んでいる。背景には住宅販売の回復が早くも息切れしていることがある。住宅販売面積は今年に入り前年同月比でプラスに転じ伸びを高めていたが、その後失速、6月には大幅なマイナスに陥っている。

 加えて、オフィス用や商業用は今年も大幅なマイナスが続いている。このように需要の回復が息切れし、価格が下落に転じる中では、供給も縮小せざるを得ず、不動産開発投資も減少幅が拡大しつつある。

 不動産市場の悪化は、投資の抑制という経路で景気を下押しするだけでなく、不動産収入、正確には土地使用権の売却収入に多くを依存する地方政府の財政問題にも波及し、インフラ投資の財源不足という形でも景気の回復を阻害する。ただ不動産業界の問題だけではないという点で、中国経済にとって深刻である。

 そうした事情から、政府は昨年来、不動産融資規制の緩和や不動産業者に対する資金繰り支援、住宅ローンの条件緩和、未完成住宅の建設加速、金利の引き下げなど、不動産市場のテコ入れ策を次々と打ち出してきたが、未だ十分な成果が得られていない。

 その原因は、価格の上昇だけを期待する投機的な資金によって嵩上げされた不動産需要と、それによって押し上げられた価格、積み上がった債務と、本来の住むための需要や現実的な価格とのギャップが大き過ぎることであろう。つまり、問題の根底には、貯蓄の選択肢が少ないが故に、不動産保有(投資)が富裕層の有力な貯蓄手段になっていることもある。

 解決方法は、そのギャップの解消以外にないが、その過程では価格の下落が続くことになり、その間、投資家や不動産業者には損失が発生、それでも需要は価格が下がりきるまで戻らない。かといって、ギャップ解消を急ぐと、発生する損失が大き過ぎて破綻する不動産業者も出てきてしまう。実際に、不動産最大手の碧桂園が8月10日、大幅な赤字を発表、資金繰りに窮しているとの報道もあった。

 不動産市場の問題は、かように複合的で根が深く、経済成長によって本来の需要が底上げされることでギャップをある程度吸収しながら時間をかけて調整するしかない。したがって、不動産市場の低迷は長期化すると考えておくべきであろう。

生活不安が個人消費の回復を抑制

3点目の個人消費が回復力に欠ける要因としては、①雇用情勢の悪化、②「強制貯蓄」がないこと、③根強い将来不安、が挙げられる。

国家統計局が発表する都市部の失業率は、今年2月に5.6%まで上昇したが、その後は5.2%まで低下し、直近7月も5.3%への小幅悪化にとどまった。ただ、年齢階層別に見ると、25歳以上で4.8%から4.1%へ改善している一方、16~24歳では18.1%から6月に21.3%へ悪化、7月は発表が見送られている。中国において統計の発表が停止されるのは、一般的に不都合に悪化した場合が多い。仮にそうであれば、かつて日本の「就職氷河期」で見られたように、既存の雇用を守るために新卒採用が抑制されている可能性がある。裏返せば、それだけ企業内に事実上の失業者が存在するということである。






消費者の信頼感の低下と貯蓄傾向の強化が、消費の低迷を招いています。

中国の消費者信頼感の低下と貯蓄傾向の強化は、確かに消費の低迷に大きく影響しています。最新の情報によると、以下の要因が挙げられます

消費者信頼感の低下:消費者信頼感指数が100以下の水準に留まり、経済の先行きへの不安が高まっています。特に上海ロックダウンを契機に信頼感が急落し、その後も回復していない状況です。

貯蓄の増加:国民の貯蓄が増加する一方で、消費余力の低下が見られます。将来への不安から予防的貯蓄が増え、消費意欲の減退につながっています。

消費行動の変化:安価な商品や必要なものへの消費行動の変化が見られ、節約志向が強まっています。ディスカウントストアや超格安旅行など、コストを抑えた消費が増えているとの報告もあります。

これらの要因により、消費の回復力が弱まり、中国経済の成長に影響を与えていると考えられます。政府は消費を刺激するための政策を模索していますが、消費者の信頼感を回復し、貯蓄から消費へのシフトを促すことが重要です。

過剰債務問題

企業や地方政府の債務が増加し、経済の持続可能性に疑問符が投げかけられています。

ゼロコロナ政策の長期化も経済に影響を与えており、特に都市封鎖による生産活動の停滞やサプライチェーンの混乱が指摘されています。一方で、中国コロナワクチンの効果については、具体的なデータや評価が必要ですが、ワクチンの有効性が経済に直接的な影響を与えたという明確な証拠は見つかっていません。

これらの要因は相互に影響し合いながら、中国経済の現状を形成しています。今後の経済政策や国際情勢の変化によって、これらの問題がどのように解決されるかが注目されています。

中国の過剰債務問題は、経済成長の持続性と安定性にとって重要な課題です。最新の分析によると、以下の点が中国の過剰債務問題の核心となっています:

不動産セクターの信用不安:不動産セクターは中国経済において大きな比重を占めており、ここでの信用不安は経済全体に影響を及ぼす可能性があります。特に、恒大集団のような大手不動産企業のデフォルトは、市場に大きな不安を与えています。

政策シフトの影響:中国政府は経済の安定を重視し、債務削減を進めていますが、これが経済成長の下振れリスクを伴う「諸刃の剣」となっています。不動産セクターへの規制強化や住宅ローンの総量規制導入などが、市場に冷え込みをもたらしている可能性があります。

経済成長モデルの転換:中国は長期的な安定と成長の足場固めを目指しており、短期的な経済成長よりも中長期の安定を重視する政策運営へと軸足を移しています。これにより、過剰債務問題への取り組みが強化されていますが、その副作用として経済成長の失速が懸念されています。

グローバルな影響:中国経済の過剰債務問題は、国内だけでなくグローバルな金融・経済にも影響を及ぼす可能性があります。中国発の金融危機が発生すれば、世界経済にも大きな影響を与えることになるでしょう。

中国政府は、過剰債務問題に対処するために、不動産セクターへの規制強化や金融機関の管理強化など、さまざまな手段を講じています。今後も中国経済の成長基盤を固めるために、過剰債務を抱えるセクターの債務削減と、その他のセクターの円滑な資金調達をサポートする必要があるとされています。

中国債務問題の行方

デフォルト認定を受け、恒大集団は債務整理へ

中国不動産大手、恒大集団のデフォルト(債務不履行)認定を受けて債務処理の進め方への関心が高まっている。

恒大集団は、中国の名目GDPの2%に相当する2兆元弱の総負債、5,700億元の有利子負債を抱えているほか、直接・間接の雇用者は400万人に上る。中国当局は、こうした恒大集団のプレゼンスを認識し、秩序だった債務整理を目指している。性急な債権回収による債務削減は、存続価値のある関連会社の倒産や失業者の発生、実勢を下回る価格での所有不動産処分による不動産市況の冷え込みなどをもたらすリスクがあるためだ。

恒大集団の倒産が中国発の世界的な金融危機に発展するリスクを懸念する声もあるが、現段階ではその可能性は低い。恒大集団の経営不安は2020年夏ごろから市場で織り込みが進んでおり、債権者も分散している。さらに、世界金融危機時に信用不安の伝播をもたらした連鎖構造もない。低所得者向けローンを束ねたサブプライム証券を担保に投資家が相互に資金調達を行ったリーマンショックとは明らかに様相が異なるためだ。

「短期成長」よりも「長期安定」に軸足

過剰債務問題は、恒大集団という個別企業の問題にとどまらず、中国経済全体のアキレス腱と指摘されてきた。中国の非金融法人企業の債務残高はGDP比150%超と、日本のバブル期を上回る水準となっている。中国政府も過剰債務のリスクを認識しており、2021年8月の中央財経委員会は「重大金融リスクの防止・解消」が最優先課題であると表明している。

中でも中国の総融資の30%近くを占める不動産セクターに対しては規制を強化していた。2020年夏に、負債規模に応じて資金調達基準を厳格化する「3本のレッドライン(三道紅線)」と呼ばれる規制を、不動産セクターを対象に導入したほか、2021年初頭に住宅ローンの総量規制を導入、不動産保有税の導入も検討している。

習政権は、「重大金融リスクの防止・解消」と並んで格差是正を実現する「共同富裕」も優先課題としている。不動産セクター向けの規制強化は、不動産価格の高騰抑制による格差是正にもつながり、「共同富裕」にも通じる政策となっている。

このように恒大集団の問題は、中長期的な経済の持続性強化に向けた取り組みの結果として表面化したものであり、中国政府としても想定内の結果であろう。

不動産セクター以外でも、中国経済の成長をけん引してきたICTプラットフォーマーなどへの統制も強めている。習政権は、短期の経済成長よりも中長期の政治・経済の安定を重視した政策運営へと軸足をシフトさせているとみられる。

債務問題への取り組みは「諸刃の剣」

ただし、債務問題への取り組み強化は諸刃の剣である。政治・経済の安定に資する一方で、中国経済の失速要因となりかねない。これまで、借り入れを梃子にした不動産投資が経済成長の原動力の一つとなってきたことを踏まえると、債務削減による不動産投資の停滞は、短期的には経済成長の下振れ要因となる。

過剰債務は製造業などの問題でもある。製造業は不動産向け融資の1.6倍、国営鉄道会社が含まれる輸送業は同じく1.4倍の融資残高を有している。拙速な債務削減は不動産価格の急落、不動産セクター以外の健全な企業への貸し渋り発生による連鎖倒産をもたらすリスクがある。

こうしたリスクに対処するため、中国政府は日本の不良債権処理の対応をなぞるかのように、中小企業の融資支援や金融機関の管理強化など危機発生時における信用不安の伝播を防止する手だてを講じた。今後も副作用に目配りをしながら慎重に債務削減を進めていくことが想定される。

一方、2023年にかけて実質GDP成長率が3%を下回る水準まで失速する場合、不良債権比率は日本のピーク時の2002年の8.4%を上回る10%近くまで上昇する(図)。仮に、資本が劣化した銀行への公的資金注入が遅れ、大規模な貸し渋りが発生する場合などには、最悪のケースとして中国経済が長期にわたり低迷する可能性もある。

出所:Wind、中国人民銀行などのデータをもとに三菱総合研究所作成

中国経済の成長基盤を固めることができるか

習政権が世論および党内の支持を固め、2022年秋に開催される中国共産党第20回全国代表大会で3期目入りを確実にするためには、過剰債務を抱えるセクターの債務削減による経済の持続性向上とともに、その他のセクターの円滑な資金調達をサポートし、経済成長を促進する必要がある。

習政権が、「重大金融リスクの防止・解消」および「共同富裕」の実現に向け、経済全体の冷え込みを回避し、淘汰すべき企業を淘汰することで、中国経済の長期的な安定および成長基盤を固めることができるか。2022年は中国の未来を左右する重要な年になる。
2024.06.13 10:32 | 固定リンク | 経済
中国「X(旧ツイッター)アカウント乗っ取り世論操作」
2024.06.11
中国のIT企業が、X(旧ツイッター)のアカウント乗っ取り、世論工作を仕掛けるシステムを開発した疑いが浮上していることがわかりました。

このシステムは、他人のアカウントに不正なURLを送信し、クリックさせることでアカウントを乗っ取り、中国当局の意に沿った意見を投稿することが可能になるとされています。

日本の情報機関もこの問題を認識しており、詳細な分析を進めているようです。また、このシステムに関する資料がインターネット上に流出しており、中国政府と取引関係にある上海のIT企業が関与しているとの指摘があります。

このような世論操作の手法は、国内外の世論形成に影響を与える可能性があり、セキュリティ専門家や研究者からも懸念が示されています。この問題については、引き続き注意が必要です。もし、個人のアカウントの安全に関するご心配があれば、パスワードの強化や二段階認証の設定など、セキュリティ対策を講じることをお勧めします。

このシステムは、外部の世論を監視し、工作を行うために構築されており、他人のXアカウントに不正なURLを送信してアカウントを乗っ取ることができるとされています。日本政府関係者によれば、近年、中国語や日本語で中国の反体制派を批判するケースで他人に乗っ取られたXアカウントが相次いでいるため、このようなシステムが使われている可能性があるとされています。

中国企業が「世論工作システム」開発か、Xアカウントを乗っ取り意見投稿…ネットに資料流出

中国政府と取引関係にあるIT企業(本社・上海)が、X(旧ツイッター)のアカウントを通じて、世論工作を仕掛けるシステムを開発した疑いがあることがわかった。このシステムを紹介する営業用資料とみられる文書がインターネットに流出していた。日本の情報機関も入手して本物とみて分析を進めており、中国の対外世論工作との関連を詳しく調べている。

ネットに流出した文書は約20ページで、上海に拠点を置く「安洵信息技術有限公司」のものとみられる。2月中旬、同社の別の内部資料とされる約580ファイルとともに、IT技術者らがネット上で情報を共有するサービス「ギットハブ」に公開された。

読売新聞が入手した文書には、表紙に中国語で<ツイッター世論誘導統制システム 製品紹介資料>という題名と、2022年の第1版であることが書かれている。システムの目的は中国国外の世論を監視し、工作を仕掛けることとし、冒頭には<好ましくない反動的な世論を検知するニーズに応えるためにシステムを構築した><社会の安定には、公安機関が世論をコントロールすることが極めて重要>などと示している。

文書などによると、このシステムを使って他人のXのアカウントに不正URLを送信し、クリックさせることでアカウントを乗っ取ることができる。その結果、本来は外部から閲覧できないダイレクトメッセージを盗み見たり、中国当局の意に沿った意見を勝手に投稿したりすることが可能になる。

日本政府関係者によると、近年、他人に乗っ取られたとみられるXのアカウントが、中国語や日本語で中国の反体制派を批判するケースが相次いでいる。こうしたシステムが使われている可能性がある。

 同社のホームページ(現在は閉鎖)によると、同社は2010年に設立され、北京や四川、江蘇、浙江省に拠点がある。スパイの摘発などを行う国家安全省にIT製品を納入する業者に選定されたほか、国全体の治安維持にあたる公安省や、地方警察の公安当局を「パートナー」として紹介。各機関から贈られた感謝状も掲載していた。

 流出した約580ファイルには同社の契約台帳も含まれ、利用者の多くが地方都市の公安当局だった。通信アプリ「テレグラム」向けの工作システムとみられる製品を地方の公安当局に販売した記録も残されていた。

読売新聞は同社に電話やメールで問い合わせたが、11日夜までに回答はない。

同社の動向を20年から注視している台湾のサイバーセキュリティー企業「TeamT5」チーフアナリストのチャールズ・リー氏は、資料に記載されている工作の手口などから「本物の流出文書と確信している」との見方を示した。さらに「中国が世論工作のために西側諸国のSNSを利用する意志と能力を持っていることを示す初の証拠だ」と指摘した。

「世論操作」国家が関与する究極の工作とは

中国企業が「世論工作システム」を開発していた疑惑が浮上している。中国政府が公式に認めたものではないが、国内外の世論形成にウェブサイトやSNSなどインターネットを利用していることは、多くの研究者が指摘している。このシステムは、インフルエンサーなどのSNSアカウントを乗っ取り、反政府的な意見を批判するというものだという。だが、そのような書き込みは世論工作としては稚拙と言わざるを得ない。彼らの本格的な世論誘導はもっと巧妙なはずだ。

情報漏えいで判明「ハッキングツール開発」

読売新聞の報道によれば、中国政府や自治体のITシステムを手掛けたことがある上海のIT企業の内部資料が、インターネット(GitHub)で発見されたという。

そこには、Xのアカウントを乗っ取り、ダイレクトメッセージの内容を閲覧したり、なりすまし投稿が可能になったりするというハッキングツールが紹介されていた。さらに、技術力のアピールのためか、この企業がテレグラム向けのハッキングシステムを手掛けた実績に関する情報も含まれていたのだ。

リークに利用されたGitHubのアカウントは、現在閲覧できないようになっている。漏えい元とされる中国のIT企業については、具体的な企業名は明かされていない。

 だが、その内容から、2024年の3月に発覚したI-Soon社(安洵信息技術有限公司)の流出文書のことを指している思われる。この事案については、すでに国内外のセキュリティ専門誌や研究者ブログで取り上げられている。

 I-SoonはイスラエルのNSOのようなスパイウェアの開発、サービス提供を行うセキュリティベンダーだ。NSOといえばWhatsApp向けのスパイウェアを開発し、それを各国政府、法執行機関、ときには各国軍部に販売している。

このようなスパイウェアの会社は、イタリアにも多く、NSOやHacking Team(伊)がスパイウェアでビジネスを行うのは、テロ対策や犯罪捜査のためである(と彼らは主張している)。

 NSOのペガサスを筆頭に、イスラエルおよびイタリア製スパイウェアは、さまざまな国でジャーナリストや活動家の弾圧に使われており、人権への脅威にもなっている。

I-Soonも同様なスパイウェアベンダーと言えるが、スパイウェアはプロパガンダや世論工作に特化したものではなく、監視や諜報活動が主な用途となる。たとえば、中国におけるテロ対策には、新疆ウイグル地区の統制や監視も含まれる。実際、I-Soonは同地区の自治体に監視ソフトの開発・提供も行っているという。

国家支援型の世論操作「2つ」の手法

盗聴や監視が主目的のスパイウェアでも、世論工作が不可能というわけではない。監視の中でパスワードやセッション情報が手に入れば、標的のアカウントになりすますことができる。

 著名人や影響力のあるアカウントを乗っ取ればプロパガンダとして機能しそうだが、このような乗っ取りが本人に認知されるのは時間の問題だ。フェイク情報はすぐにバレてしまう。この方法は世論操作としてはいささか稚拙でもある。

 国家支援型の世論工作やプロパガンダには大きく2つの方法がある。1つは、国家機関および外郭機関のサイトや党のサイトなどを利用した公式なプロパガンダや啓発情報の発信。いわゆる政府広報となる戦略である。もう1つは、民間のサイトやSNSを利用したプロパガンダだ。
2024.06.11 10:49 | 固定リンク | 事件/事故
中国軍は見掛け倒し=不正横行
2024.06.11
中国軍の動向を長年研究してきたラビ・シャンカル元インド陸軍中将が11日までに時事通信のオンラインインタビューに応じた。習近平政権は同日閉幕の全国人民代表大会(全人代)で前年比7.2%増の今年の国防予算を決めるなど、軍拡を進めている。しかし、シャンカル氏は、中国軍で不正が横行し、兵器の管理もずさんだと指摘。「中国軍は見掛けよりもはるかに弱い」との見方を示した。発言要旨は次の通り。

 ―中国は今年も国防予算が大幅増となった。

2024年国防費は7.2%増の34.9兆円-5年ぶりの大幅な伸び

中国の今年の国防費が前年比で7.2%増と、ここ5年で最大の伸びになることが分かった。内部の腐敗が軍の刷新を阻害している兆候がみられる中でも国防費を大幅に増やした。

全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕する5日にブルームバーグが確認した財政省の年次報告によると、2024年の国防費(中央政府分)は1兆6700億元(約34兆9000億円)に増加する見込み。バイデン米大統領が昨年署名した24年度国防権限法(NDAA)案の予算総額は8860億ドル(現在のレートで約133兆3000億円)だった。

中国の習近平国家主席は同国軍が「世界一流の軍隊」になる期限を27年としている。しかし汚職がこの野望の実現を阻んでいるのではないかとの見方が強まっている。

昨年、李尚福国防相のほか、核兵器などを運用するロケット軍の高官2人を理由の説明なく解任。ほかに複数の軍の高官が全人代の代表職を解かれた。中国軍は今年に入って、「汚職との困難な長期戦」を続けると表明した。

2024年の中国の国防予算は前年比で7.2%増加し、約34兆8000億円になると報じられています。これは過去5年間で最大の増加率であり、3年連続で7%を超える増加が続いているとのことです。中国政府は、この予算増加を国家主権や安全、発展の利益を守るため合理的であると説明していますが、一方で内部の腐敗が軍の刷新を阻害しているとの指摘もあります。

2019年と比べると1.4倍の急増だ。米国に匹敵する軍事力の獲得を目指し、宇宙・サイバー・人工知能(AI)など最先端技術の応用に熱心な習国家主席の意向が背景にある。しかし、中国軍の兵器は粗悪だ。不正や怠慢のせいで管理がずさんだからだ。制服組トップの張又侠・中央軍事委員会副主席は昨年8月、装備の管理を抜本的に改めるよう指示した。22年8月に台湾周辺で行われた大規模演習で発射したミサイルには誤作動があったもようだ。パキスタンなどに輸出された中国製兵器もうまく作動しないことがあった。

 ―昨夏以降、多数の中国軍高官が失脚した。

 装備品調達を巡る大規模な汚職が原因だ。失脚した高官は核兵器を扱うロケット軍などの重要部署に関わり、経験が豊富だ。後任選びの基準は、能力ではなく習氏に対する忠誠心だ。中国軍は見掛けよりもはるかに弱い。新しい兵器を使いこなすには知識と経験が必要だが、有能な人材が足りない。1979年以来、中国軍は本格的な実戦を経験しておらず、人事も能力重視ではないからだ。



昨年夏以降、中国軍の高官が相次いで失脚しているとの報道があります。特に、中国の国防相であった李尚福氏が公の場で姿を消しており、軍備の調達を巡る調査を受けているとされています1。また、中国軍の核ミサイルを管理する「ロケット軍」の最高幹部2人と、軍事裁判所の裁判官が解任されたことも報じられています。

これらの失脚は、習近平国家主席による軍内部の粛清と見られており、腐敗の根絶を目的とした措置と分析されています。米情報機関の分析によると、腐敗の広がりが軍近代化の取り組みを損ない、戦争する能力に疑問が生じたことが背景にあるとされています。

中国政府は、軍内の腐敗を一掃するための取り組みとして、これらの措置を実施しているとの見方が強いですが、詳細な情報や最新のニュースについては、信頼できるソースを通じてご確認ください。失脚した高官たちが重要な部署に関わっていたことから、これらの動きは中国軍にとって大きな影響を与えている可能性があります。

【解説】 中国で高官が相次ぎ消息不明 習政権に問題が起きているのか

中国でここ数カ月の間に、習近平国家主席から信頼と好意を得ていた高官が、何人か姿を消した。習氏が軍関係者らを対象に、粛清に乗り出したのではないかとの憶測が飛び交っている。

失脚とみられる直近の例が李尚福国防相だ。ここ数週間、公の場で姿が確認されていない。

当初は問題にされていなかったが、米トップレベルの外交官が指摘したことで注目が集中。ロイター通信は、李氏が軍備の調達をめぐって調べを受けていると報じた。李氏はかつて、人民解放軍(PLA)の武器購入を監督する立場だった。

李氏が「消息不明」になる数週間前には、軍で核ミサイルを管理する「ロケット軍」の最高幹部2人と、軍事裁判所の裁判官が解任された。

そして今、軍を統制する中国共産党の中央軍事委員会の幹部数人について調査が進められているとのうわさが流れている。

これらの解任をめぐっては、「健康上の理由」以外の公式説明はほとんどない。情報がない中、憶測が膨らんでいる。

主要な説になっているのが、軍の腐敗を当局が取り締まっているというものだ。

こうした状況で、軍は警戒を強めている。7月には一般国民に対し、過去5年間の汚職について情報提供を求める、異例の呼びかけをした。BBCモニタリングの調査からは、習氏が4月以降、全国各地の軍基地を5回にわたって訪問する新たな査察に乗り出した様子が浮かび上がった。

シンガポールの南洋理工大学で中国共産党と軍の関係を研究しているジェイムズ・チャー研究員は、中国では1970年代に経済の自由化が始まってから特に、軍において長年、汚職が問題になってきたと指摘する。

中国は毎年1兆元(約20兆円)以上を軍に費やす。一部は物資の調達に充てられるが、安全保障上の理由から完全には明らかにされない。この透明性の欠如は、中国の一党独裁の中央集権体制によってさらに悪化している。

他国の軍が公的に監視されているのとは異なり、中国の軍は共産党によってのみチェックされていると、チャー氏は指摘する。

習氏は軍内部の腐敗を減らし、軍の評価を一定程度回復させた。だがチャー氏は、「腐敗の根絶は不可能ではないにせよ非常に困難だ」と説明。「専制国家が嫌う制度変革」が必要になるからだとした。

「中国共産党政府が、適切な法制度を不当だとするのをやめて導入するようになるまでは、こうした粛清は続くだろう」

李尚福国防相はここ数週間、公の場で姿が確認されていないその後解任

一連の人々の消息不明は、中国がアメリカと微妙な関係にある中で、被害妄想を深めていることも一因となっている可能性がある。

中国では7月、拡大されたスパイ防止法が施行され、当局の捜査の権限と範囲が拡大された。その直後、国家安全省は国民に対し、スパイ活動との闘いに協力するよう公に呼びかけた。

李氏の消息不明は、外相だった秦剛氏のケースと似ている。同氏が7月に解任されると、熱を帯びた憶測が生じた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは今週、秦氏が不倫の末にアメリカで子どもをもったという疑惑で調べられていると報じた。

中国アナリストのビル・ビショップ氏は、「不倫はエリート(共産党)の世界では即失格とはならないが、その相手が外国の情報機関とのつながりが疑われている人物で、敵ではないにしろ地政学上重要なライバルである国のパスポートを持つことになる子どもをつくるのは、もはや失格かもしれない」と指摘する。

中国が新型コロナウイルス後の経済減速と若者の失業率の急上昇に苦しむ中で、共産党内では汚職を一掃するべきとの圧力が高まっており、習氏はそれを受けて行動しているとの見方もある。中国の政治制度では、習氏は国家主席であると同時に軍の最高指導者でもある。




 ―台湾統一に意欲的な習氏が侵攻を命令する可能性は。

 台湾への上陸作戦は極めて難しい。事前の動きは衛星やドローンで察知される。ウクライナ侵攻は2年以上続いているが、ロシアは資源が多く持ちこたえている。中国は資源を輸入に頼っている。台湾侵攻が長期化すれば、中国経済への打撃は非常に大きい。経済が停滞している中、戦争を始めれば、共産党体制は崩壊するだろう。習氏が侵攻を決断することはないと思う。

台湾の統一に関しては、中国の習近平国家主席が強い意欲を示していることは広く知られています。中国政府は台湾統一を「新時代の中華民族の偉大な復興の必然的な要求」と位置づけ、これを「中国の夢」の一環としています。また、中国は台湾を自国の一部と見なし、必要であれば武力行使の可能性も排除していません。

しかし、台湾統一に向けた具体的な軍事行動や侵攻を命令する可能性については、公式な発表や確固たる証拠はありません。このような行動は、国際的な緊張を高め、多大な政治的および経済的影響を及ぼす可能性があるため、慎重に検討されるべき事項です。

台湾問題は複雑で、多くの国際的な要因が絡み合っています。中国と台湾の関係、両国の歴史的背景、そして国際社会の立場など、多角的な視点から理解する必要があります。最新の情報や詳細については、信頼できるニュースソースを通じてご確認ください。台湾の未来に関する決定は、最終的には台湾の人々の手に委ねられているというのが、台湾政府の立場です。

2013年3月17日、習近平国家主席就任後初めての演説で、「中国の夢を実現させよう」と何度も国民に呼びかけた。

 2019年1月2日、習近平国家主席は「台湾同胞に告げる書」発表40周年を記念する式典において講話を発表した。

 この講和は「習五点」と呼ばれる。

 同講話は、習近平政権発足後、初めての包括的な台湾政策を述べたもので、

①民族復興と平和統一の実現、
②「一国二制度」、
③「一つの中国」原則の堅持と、武力行使放棄の否定、
④中台間の経済融合、
⑤同胞間の心の交流強化、

の5項目(五点)を柱とするものであった。

「習五点」が、中台統一が必然であることの理由として掲げているものは、第1に、台湾海峡両岸の住民はいずれも「中華民族」「中国人」であり、同胞であるということ。

 第2に、台湾は歴史的に中国の一部であったのであり、中台統一は「祖国の統一」にほかならないということである。

「習五点」が特徴的なのは、このような「中華民族」「民族の復興」など民族的紐帯に訴えかけるロジックが、従来よりもいっそう多用されていることである。

「習五点」では、中台統一は「新時代の中華民族の偉大な復興の必然的な要求」であるとされており、「中華民族の偉大な復興」が「中国の夢」であるという、政権のスローガンの一環として台湾問題を位置づけていることがうかがえる。

 中国共産党の第20回党大会(2022年10月16~22日)は、習近平総書記の3期目続投を決め「習一強体制」をいっそう強固にした。

 習氏は大会初日の党活動報告で次のように述べた。

「台湾問題の解決は中国人自身のことであり中国人自身が決めるべきだ」

「我々は最大の誠意と最大の努力を尽くし、平和的統一の未来を勝ち取るが、決して武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必要な措置をとる選択肢を残す」

「その対象は外部勢力の干渉と、ごく少数の“台独”分裂勢力と分裂活動に向けたものであり、広範な台湾同胞に向けたものでは決してない。祖国の完全統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」

 武力行使を否定しない方針は、2005年成立の「反国家分裂法」が武力行使の条件を規定して以来、ことあるごとに言及してきたもので、決して目新しくはない。

2027年に4期目を目指す習近平氏にとっては、台湾統一という偉業達成が絶対条件となっているという見方がある。

 米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は2023年2月2日、ワシントンでの講演で、米側のインテリジェンスとして、中国の習近平国家主席が「2027年までに台湾侵攻を成功させる準備を整えるよう、人民解放軍に指示を出した」との見方を示した(出典:朝日新聞デジタル2023年2月4日)。

 ―習氏が情勢を見誤ることはないか。

 中国軍は台湾、南シナ海、日本、朝鮮半島、インドの各地域で連鎖的に戦争が起きることを恐れている。米国と連携する形で、インドが国境地帯で軍事活動を始めれば、中国はお手上げだ。中国は公表していないが、20年にインドとの国境地帯で起きた衝突で中国側の死者はインド側よりもはるかに多かった。中国軍は戦意が乏しく、訓練も不十分だ。中国軍が近い将来に台湾に侵攻することは不可能だ。習氏も分かっているはずだ。

台湾統一に関して習近平国家主席が情勢を見誤る可能性については、様々な意見や分析が存在します。一部の報道では、習氏が台湾の「再統一」を「不可避」と主張していることが示されています1。また、台湾統一を習氏の個人的野心と見なし、歴代中国主席の考えとは異なるとする意見もあります。

中国政府は台湾を自国の領土と主張し、平和的な「再統一」を目指すと公言していますが、武力行使の可能性も排除していません3。このような状況は、国際的な緊張を高める可能性があり、習氏の判断が国内外の複雑なバランスに影響されることは否定できません。

台湾問題は非常に複雑で、多くの国際的な要因が絡み合っており、習氏が情勢を見誤るかどうかは、これらの要因によって大きく左右されるでしょう。最新の情報や詳細については、信頼できるニュースソースを通じてご確認ください。台湾の未来に関する決定は、最終的には台湾の人々の手に委ねられているというのが、台湾政府の立場です。

台湾は本当に中国のものなのか、台湾の近代史を読み直す

総統に就任早々米下院議員団の表敬訪問を受け、マイケル・マコール下院外交委員長(左)から贈られたカウボーイハットを被る頼清徳総統(5月27日、提供:台湾総統府/AP/アフロ)

台湾の頼清徳新総統が5月20日の就任演説で行った中台関係に関する発言が波紋を呼んでいる。

 頼清徳氏は、蔡英文前総統と同様に「現状を維持する」と述べる一方で、中国が掲げる「一つの中国」原則の完全否定とも受け取れる表現を多用した。

 中国が強く反発している。

 頼清徳氏は就任演説で「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と訴え、台湾と中国の正式名称を用いて双方が対等の関係だと主張した。

 蔡英文氏は2016年の就任演説で、中台を「(台湾海峡の)両岸」と呼び、明確に2国間の関係と位置付けることを避けていた(時事通信2024年05月22日)。

 中国情勢に精通したジャーナリストの福島香織氏は、JBpresss紙上に「台湾・頼清徳の総統就任演説がすごかった! 中国を激怒させた『新二国論』、日本や米国に台湾の民主主義を守る覚悟は」と題する記事を投稿している。福島氏の主張は後述する。

 ところで、中華人民共和国(以下、中国)と中華民国(以下、中華民国または台湾)は、1949年以降、それぞれが正統政府であると主張し、相手の存在を否定してきた。

 中国は、台湾は中国の不可分の領土であり中華民国・国民党政府は不法に支配しているとして、台湾を開放し断固中国の統一を実現するという「台湾解放」を一貫して唱えた。

 台湾側も「大陸反攻」「祖国統一」を主張し、大陸側とは妥協、接触、交渉しないという「三不政策」(1979~1991)を続けた。

 この間1954年と1958年に台湾海峡の沿岸島嶼において2度にわたり軍事衝突が発生した。

 国際社会にあっては1948年以降、中華民国政府(台湾)が国連の代表権を有していたが、1971年に中国側が代表権を獲得してからは立場が逆転した。

 また、これと相前後して米中接近、日中国交回復が進められ、台湾の政治面での国際的孤立は次第に深まった。

 これ以降、台湾は民間関係を主とする経済、文化、技術協力などによる実質外交時代を進めていった。

 中台双方の台湾問題への対応は建国の指導者の逝去等に伴う世代交代によって変化がみられるようになった。

 そして、中台の歴代の指導者は、台湾問題についてそれぞれ自らの考え方を発表してきた。

 中国では、鄧小平の「台湾同胞に告げる書(一国二制度)」と「葉九点」、江沢民の「江八点」、胡錦濤氏の「胡六点」および習近平氏の「習五点」などがそれである。

 一方、台湾では、李登輝の「二国論」、蔡英文氏の「華独」、そして頼清徳氏の「新二国論」などがそれである。

 初めに、頼清徳総統の就任演説の概要について述べる。次に、中国の対台湾政策の変遷について述べる。最後に、台湾の対中国政策の変遷について述べる。

1.頼清徳総統の就任演説の概要

 本項は、福島香織氏の「台湾・頼清徳の総統就任演説がすごかった! 中国を激怒させた『新二国論』、日本や米国に台湾の民主主義を守る覚悟は」(JBpresss5月24日)を参考にしている。

(1)頼清徳氏の略歴

 現在64歳(1959年10月6日生)。台湾北部の現・新北市の貧しい鉱山労働者の家に生まれた元医師の頼清徳氏は、第3次台湾海峡危機(1995-96年)をきっかけに、白衣を脱ぎ、政界に出馬した。

 立法院議員からスタートして、その後大衆の支持を受けて台南市長を2期務めた。行政院長に就任した後、2020年からは蔡英文政権で副総統を務めた。

 頼清徳氏は行政院長(首相)時代に「実務的な台湾独立工作者」と自称し、中国から敵視されてきた。

(2)総統就任演説の概要

 民進党が政権を奪還した2016年5月の蔡英文総統の就任演説では「一つの中国原則」や「92年コンセンサス」への言及を避け、中国側の要求を完全に拒否も容認もしない比較的無難な表現にとどめていた。

 今回の頼清徳総統の就任演説も、中国を刺激しないようにトーンを抑えた表現の就任演説になるのではないかという予測もあったが、そうした慎重論の予測は完全に外れた。

 頼清徳総統就任演説は、「一つの中国原則」「92年コンセンサス」への言及こそなかったが、国家という言葉を35回繰り返し、台湾が中国と互いに隷属しない主権国家であるという「新二国論」ともいうべきロジックを打ち出した。

 頼清徳演説の主旋律は「卑屈でもなく、傲慢でもなく現状維持」。

 この卑屈でも傲慢でもなくという意味は、「台湾を国際社会に尊敬される壮大な国家にする」という頼清徳の志をごまかすことなく表明するということだろう。

 中国におもねり妥協して、「現状維持」を頼むのではなく、対等な国家同士の立場での現状維持こそが双方にとってもっとも利益になるのだという主張だ。

 中国に対しては「中華民国の存在という事実を直視し、台湾人民の選択を尊重せよ」と直截に呼びかけた。

 さらに頼演説の新鮮さは、中華民国や中華民国憲法に対する民進党政権の新たな解釈を示した点にある。

「中華民国憲法によれば、中華民国の主権は国民全体に属し、中華民国の国籍を有する者は中華民国の国民です。このことからも分かるように、中華民国と中華人民共和国はお互いに隷属しないのです」と中華民国と中華人民共和国が別の国家であるとする根拠に中華民国憲法を持ち出した。

 さらに、台湾の始まりを中華民国ができるはるか以前の1624年のオランダの台南上陸にさかのぼって語った。

 これは中華民国や中華民国憲法を民進党が解釈し直して受け入れたともいえる。

 そして中国の脅威を明確に大胆に指摘した。

「私たちは平和を追求するという理想を持っていますが、幻想を抱くことはできません」

「中国はまだ台湾を侵略するための武力行使を放棄していないため、中国の提案を全面的に受け入れ、主権を放棄したとしても、中国による台湾併合の試みはなくならないことを理解すべきでしょう」

「世界の民主主義国と肩を並べて共通の平和共同体を形成し、抑止力による平和と戦争回避を実現しなければなりません」

 こうはっきりと語った。

 ほかにも台湾が第1列島線の地政学的に重要な場所に位置することや、半導体やAI産業のグローバルサプライチェーンにおける圧倒的優位性があることを挙げて、台湾が国際社会に必要とされている国家であることを強調した。

 さらに、台湾企業を世界に進出させ、台湾を経済において「日の沈まぬ国」にするといった目標を打ち出した。

 そうして「民主台湾は世界の光」「民主台湾は世界平和のかじ取り役」「台湾は世界を必要とし、世界は台湾を必要としています」と述べた。

 当然、中国の反応は強烈だ。

 中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は5月21日夜、頼清徳総統の就任演説についてこう述べている。

「徹頭徹尾、台湾独立派の自白だ」

 頼清徳総統のことを「台湾地区の指導者」と匿名呼びし、次のように強烈に批判した。

「敵意と挑発、ウソと欺瞞に満ちている。台湾独立の立場をさらに過激に危険を冒し、主権独立、両岸は互いに隷属しない、台湾住民の自決など支離滅裂の間違いを語り、外部勢力の支援を乞うて、台湾問題の国際化を推進しようと画策し、外国に頼って独立を企んだり、武力で独立を謀ったりし続けている」

「これはいわゆる徹頭徹尾、台湾独立主義の自白だ。党内主流民意に背き、台湾海峡と地域の平和安定の破壊者だ」

 一方、米国務省報道官は5月20日、「中国は(総統の交代を)挑発的、威圧的な行動の口実に用いるべきではない」と述べ、改めて中国に自制を求めた。

 頼清徳氏の就任演説については「台湾海峡の平和と安定、現状維持への約束があった」とし、歓迎すると述べた(出典:朝日デジタル2024年5月22日)。

(3)筆者コメント

 台湾では総統候補として党の公認を受けると、あたかも「面接試験」を受けるように訪米し、米国政府などの要人と意見交換をするのが慣例となっているとされる。

 今回、頼清徳氏が就任演説で掲げた「新二国論」は、米国の「お墨付き」を得た内容であったかどうかである。

 頼清徳氏は、2023年8月12~18日、南米で唯一、中華民国(台湾)と外交関係を持つパラグアイ訪問のため出発した。

 頼清徳氏は、行き帰りには中国が強く反対するなか米国のニューヨークとサンフランシスコを経由したが、米国滞在中の公開の日程は台湾出身者のパーティーへの出席などが主で、現職の米政府高官や有力議員などとの接触は伝えられていなかった。

 また、2023年中に台湾を訪問した米国の要人がいたかどうかも不明である。

 しかし、頼清徳氏が米国との調整なしで「新二国論」を公言することは考えられない。前述したように米国務省報道官のコメントにも驚いた様子は見られない。
2024.06.11 10:19 | 固定リンク | 国際
クリミア拠点の露ミサイル艦、全滅
2024.06.11
クリミア拠点の露ミサイル艦、全滅か ウクライナ、「最後の1隻」の撃破発表

ウクライナ軍参謀本部は21日、ロシアの実効支配下にあるウクライナ南部クリミア半島南端のセバストポリで、露ミサイル艦「ツィクロン」を撃破したと発表した。ウクライナメディアによると、同国軍のプレテンチュク報道官は「ツィクロンの撃破でクリミアを拠点に活動していた露ミサイル艦はゼロになった」との見方を示した。

セバストポリは露黒海艦隊の本拠地。一部の露メディアもこれに先立ち、セバストポリに係留されていたツィクロンが、米国からウクライナに供与された長射程ミサイル「ATACMS」3発による攻撃を受け、撃沈されたとする消息筋の話を伝えていた。

露国防省は21日時点でツィクロンの状況について言及していない。

同報道官によると、ロシアは黒海海域に最大10隻のミサイル艦をなお保持しているが、いずれもクリミアではなく、露南部ノボロシースクなどに配備しているという。

ウクライナはロシアの侵略以降、ミサイルや水上ドローン(無人艇)攻撃で黒海艦隊旗艦「モスクワ」を含む露軍艦艇を相次いで撃沈。今年2月時点で、侵略開始前に70隻超で編成されていた黒海艦隊の約3分の1を無力化したと報告していた。

ウクライナの艦艇攻撃の狙いは、露海軍による自国へのミサイル攻撃の脅威を減らすとともに、露軍の兵站を困難にして地上部隊を支援することだとみられている。
2024.06.11 10:11 | 固定リンク | 戦争

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