戦争は終わらせる「その意味は?」
2024.07.23
トランプ前大統領が「戦争を直ぐ終わらせる」と発言した背景には、いくつかの意味が含まれています。

迅速な和平交渉

トランプ氏は、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との間で迅速な和平交渉を行うことで、戦争を終結させると主張しています。

ロシア利せず”ウクライナ側明かす。

アメリカのトランプ前大統領は、秋の大統領選挙で自身が勝利してもロシアを利することはないという趣旨の発言をウクライナのゼレンスキー大統領に伝えたとウクライナ側が明らかにしました。

ゼレンスキー政権は、ロシアと近いとされるトランプ氏の今回の発言を「興味深い」としていて真意を含めて引き続き注視するとみられます。

今月19日に行われたアメリカのトランプ前大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による電話会談について、ウクライナ大統領府の報道官が内容の一部を地元メディアに明らかにしました。

それによりますと電話会談の中でトランプ前大統領は、「私が大統領選挙で勝利するとロシアを利すると伝えるようなフェイクニュースを信じてはならない」と述べ勝利してもロシアを利することはないと伝えたということです。

ゼレンスキー政権は、ロシアに近いとされ、ウクライナ侵攻を24時間で終わらせることができると主張するトランプ氏の動向に警戒しているだけに報道官は「非常に興味深い発言だ」としていて真意も含めて引き続き注視するとみられます。

一方、トランプ氏の戦争終結をめぐる発言についてキーウ市内で人々に話を聞くと「終結の鍵はワシントンではなくモスクワにある」とか「彼は具体的な計画を示していない」と話すなど不信感を抱く人もいました。

ウクライナへの支援停止(力による平和)

トランプ氏の発言には、アメリカがウクライナへの軍事支援を停止することで、戦争を終わらせるという意味も含まれています。

しかしこれは、ウクライナがロシアの要求を受け入れるのでなく、ウクライナがロシア全域を攻撃できる最も強力な兵器を提供することが背景にあることだ。

政治的アピール

トランプ氏の発言は、彼の外交手腕をアピールするための政治的な戦略でもあります。彼は、自分が大統領であれば迅速に問題を解決できるというメッセージを支持者に伝えようとしています。

このように、トランプ氏の発言には複数の意味が含まれており、単なる言葉以上の戦略的な意図があると考えられます。

トランプ氏「力による平和」重視 直接対話と両輪 AFPIフライツ氏

米国のトランプ陣営の政策研究機関「米国第一政策研究所(AFPI)」の外交政策担当代表フレッド・フライツ氏が産経新聞と会見した。記事本文で語った以外の発言の要旨は以下の通り。

安全保障戦略

トランプ氏の安全保障政策は「力による平和」であり、抑止のための軍事力の選別的な行使だといえる。他方、バイデン政権は軍事力を軽視し、気候変動への対処に重点をおく。その結果、アフガニスタンからの撤退の大失態に始まり、ロシアのウクライナ侵略、ハマスのイスラエル攻撃、中国の台湾への軍事威嚇など米国の力の弱化を誘因とする騒乱が起きた。

トランプ政権時代は全世界で新たな戦争は起きず、中東ではイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」を撃滅した。その原因となった「強い米国」の再現を目指し、国防予算を大幅に増加する。しかし、同盟諸国の防衛負担の増加をも求め、とくに北大西洋条約機構(NATO)の西欧諸国の国防費の国内総生産(GDP)比2%以上への増加達成を強く要求する。

対ロシア政策

トランプ氏はロシアのプーチン大統領への警戒も強く、在任時代にはウクライナに攻撃用を含む兵器を供与していた。オバマ政権時代にはロシアが(ウクライナ南部の)クリミアを侵略したが、トランプ政権時代にはなかった。しかしトランプ氏は、バイデン大統領がプーチン氏への直接の働きかけをしない点には批判的で、抗議のための首脳外交を考えている。

アジア太平洋

トランプ次期政権は、バイデン政権で軽視されてきたアジア太平洋への政策を再強化する。バイデン政権はアジア軽視の実態を韓国の尹錫悦大統領の核武装志向発言で突然、覚醒させられた形で昨年8月の米日韓3国首脳会談に踏みきった。この動きは歓迎すべきだが、なおウクライナや中東の紛争に追われすぎている。

北朝鮮の核開発

トランプ次期政権はバイデン政権が放置してきた北朝鮮の核やミサイルの増強に対して、軍事オプションをも含めての強固な措置をとる。ロシアへの兵器供与を止める。その一方、金正恩総書記がトランプ大統領との対面交渉を好んだ点を利用して、同総書記が一時は合意した核開発の停止を履行させる。

北朝鮮による日本人拉致問題には2017~21年の前回在任中、歴代の大統領と比べても熱心に取り組んだことで知られる。盟友だった安倍晋三元首相の求めを受けて拉致被害者家族と面会を重ね、国連総会演説では横田めぐみさん(59)=拉致当時(13)=の解放を訴えた。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記と会談した際は、繰り返し拉致問題の解決を迫っていた。

拉致家族の不安は杞憂に

トランプ氏の次期大統領就任が決まった2016年11月当時は、拉致問題に対する考えが不透明で、被害者家族からは不安げな声も漏れていた。拉致被害者の田口八重子さん(68)=拉致当時(22)=の兄で家族会代表を務めた飯塚繁雄さん(享年83)は「トランプ氏は日本人拉致を知らないだろう」と懐疑的な様子で語っていた。

安倍氏は17年2月、大統領に就任したばかりのトランプ氏と米ワシントンで会談に臨み、拉致問題を切り出した。共同声明に拉致問題の早期解決の重要性が盛り込まれたものの、会談後の共同記者会見では、トランプ氏が自らの言葉で拉致に言及するには至らなかった。

初会談以降、安倍氏はトランプ氏に対し、電話会談を含めて機会があれば拉致問題の深刻さを取り上げ、「日本は絶対に譲歩しない」との決意を伝えた。拉致被害者家族も訪米団を結成し、同年9月にワシントンでトランプ政権幹部に拉致問題解決への協力を訴えた。米政権幹部は「拉致問題は現在進行形のテロだ」と呼応。トランプ氏が安倍氏の説明によって拉致問題に着目し、北朝鮮の人権侵害を調べるように指示したことを明かしたという。

中国への対処

中国に対しても軍事抑止と対話との両面の姿勢をとり、習近平国家主席との対話や中国訪問も前向きに考える。台湾に関しては米側の台湾関係法での規定通り、軍事介入の有無は曖昧のままにする。バイデン大統領が軍事介入すると述べ、それを取り消すという矛盾を繰り返したことを是正する。

フライツ氏によると、トランプ氏の中国政策は中国を米国にとっての最大脅威とみなし、十分な軍事抑止力を保持しながらも、対話を始め、台湾への攻撃を抑制する方針だという。バイデン政権は気候変動への対処を最優先させ、軍事力を軽視するため、中国が攻勢を強めてきた、ともいう。

対日関係

トランプ陣営は日本に対しては防衛面での絆の強化を基本とし、尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対する中国の軍事攻勢にも日本側とともに共同対処する誓約を明確にする。国務長官や駐日大使にも日本重視を認識する人材を当てるだろう。とくに駐日大使は日本の内政に干渉などしない人物を任命するだろう。

対日政策についてトランプ氏もその支持層も、米国第一外交のアジアでの展開で日米同盟の堅持と強化を不可欠だとしていると強調した。

AFPIの国家安全保障部門の副部長で外交政策を統括するフレッド・フライツ氏は、会見でトランプ氏の対外政策について「まず軍事力を強くしながらも、その行使には慎重に同盟諸国と協力するが、同盟国側にも相当の役割を期待する」と述べ、特に「大統領自身の果断な政策決定が特徴でもある」と強調した。

フライツ氏はCIA(中央情報局)で朝鮮半島の核拡散防止などにあたり、トランプ前政権では大統領副補佐官、国家安全保障会議の主任スタッフを務めた。トランプ氏から今も直接、外交政策の協議を求められているという。

フライツ氏はトランプ氏の対日認識について「米国の国益優先という米国第一外交にとっても、アジア全域での経済や安保面の利益保持には日本との絆が決定的に重要だと考えている」と述べ、トランプ前政権の4年間、トランプ氏自身が日本との同盟の重視を貫いたと指摘した。第2次政権でも、その同盟の堅持と強化は主要方針になるだろう、という。

フライツ氏は、とくにトランプ前大統領が任期中に北朝鮮による日本人拉致事件の解決に多様な形で協力した事実をあげて、「敬意を抱いた安倍晋三氏から請われて、日本にとってのこの事件解決の重要性を理解し、硬軟両方の方法で協力した」と述べ、この点もトランプ氏の日本への友好姿勢の表れであり、第2次政権でも続けるだろう、と語った。

フライツ氏によると、トランプ氏の中国政策は中国を米国にとっての最大脅威とみなし、十分な軍事抑止力を保持しながらも、対話を始め、台湾への攻撃を抑制する方針だという。バイデン政権は気候変動への対処を最優先させ、軍事力を軽視するため、中国が攻勢を強めてきた、ともいう。

トランプ陣営はロシアも米国にとっての大きな脅威とみなし、強固な姿勢で対処するが、プーチン大統領との直接の対話をも必要だとみなす、とされる。

フライツ氏は最近の国際社会で話題を集めたトランプ氏の北大西洋条約機構(NATO)に関する言明については「欧州のエリートやグローバリストが最近、トランプ氏の米国内での人気を恐れて、(米国による)NATO離脱などというネガティブな予測を語り始めたが、根拠はない」として、トランプ氏は在任中からNATOの欧州諸国の防衛費の公正な負担を求めているだけだ、と指摘した。
2024.07.23 00:32 | 固定リンク | 防衛

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