エブリシングバブルで大暴落「日本の対策は?」
2024.03.14
エブリシングバブルの影響で、日本の経済状況についての影響は以下の通りです。「日本の対策は?」

日本銀行の政策金利

日本銀行はマイナス金利政策を継続しており、大幅な利上げは予想されていません。エコノミストの半数がマイナス金利の解除は2025年以降になると予測しています。

米国の金融政策

米国の金融政策の変化により、日本の金融政策も影響を受けています。日本は米国の政策に従って動いており、米中対立の影響も受けやすい状況にあります。

インフレと金利

世界中の中央銀行がインフレと戦っている中、日本のマイナス金利と大規模金融緩和政策に対して疑問の声が上がっています。日本はなぜ円安を放置し、金利を上げないのかという疑問があります。

これらの要点は、日本の経済状況を理解する上で重要なポイントです。エブリシングバブルの崩壊が世界経済に与える影響は大きく、日本もその影響から逃れられないでしょう。今後の動向に注目が集まっています。

日本の大幅な利上げはエブリシングバブルを崩壊させる!?

●日銀のマイナス金利の解除は来年の米大統領選挙後!?

●債務上限の引き上げで米国株は上昇していたが、借金の増えすぎでフィッチが米国債を格下げ!

●日銀のマイナス金利の解除は来年の米大統領選挙後!?

日銀のマイナス金利の解除は来年の米大統領選挙後!?

日本銀行のYCCのバンドの変更で大騒ぎしていた先週末の市場だが、以前から申し上げているように、本質は日銀の利上げ(ゼロ金利解除)がいつかであって、YCC(長短金利操作)の変更など枝葉のようなどうでもよい話なのである。

「ブルームバーグがエコノミスト42人を対象に7月31日に緊急に実施した調査によると、次の政策変更は次回の9月会合がゼロとなり、10月と12月を合わせて年内は7%にとどまった。最多は2024年4月の27%となった。7月会合前に実施した調査(50人が回答)では、年内の見方が過半の58%で、最多は今年10月の28%だった。具体的な日銀の次の一手に関しては「YCCの撤廃」が最多の32人(回答数112、複数回答可)となり、「短期金利の引き上げ」が24人で続いた。現行マイナス0.1%となっている短期金利の引き上げは全員が24年以降を想定しており、このうち43%が25年以降を見込むなど依然として距離がある」

『日銀の年内政策変更の予想は1割未満、YCC柔軟化で急減-サーベイ』 (8月1日 ブルームバーグ)

 エコノミスト42人の半分がマイナス金利の解除は2025年以降になると予測している。利上げは気が遠くなるほど先の話となっている。介入以外の理由で円高になるのは難しい状況だ。

「戦略的あいまいさ」などと称されているが、日銀の金融政策は宗主国である米国の都合によって振り回される。この30年、ずっと米国の言うことを聞いて、ゼロ金利、マイナス金利、量的緩和となんでもやってきた結果が、いまの日本経済である。

 一応、日銀に金融政策らしきものはあるのだが、いつも鶴の一声的な米国のご都合主義的介入によって迷走しているのである。

 世界中の中央銀行がインフレファイトしている中、日銀のマイナス金利と大規模金融緩和政策に対して疑問の声が大きくなっている。なぜ、日銀は円安を放置し、金利を上げないのだろうか?

世界の中央銀行の政策金利

公的債務の対GDP(国内総生産)比の限界は250%程度と言われ、1940年代に英国が一度経験しているだけである。「少子高齢化」の日本は金利が上がれば苦しくなる。

インフレをあおり続け、賃金がそれに追いつくことを望むこととは別の明確な目的が日銀にはあるのだろう。それは、インフレを引き起こし、このインフレによって円の購買力を消耗させるということだ。猛烈なインフレが何年も続けば、日本のGDPに対する債務残高の割合は他の先進国程度まで落ち着いてくることも想定される。

 加えて、日本のマイナス金利と大規模金融緩和は、米国株と米国債の買い支え(補完装置)として利用されている。そういう政治的理由からも、日銀は金利を上げられない。日本が金融緩和をやめたら、米国株が暴落するし米金利も上がり債務返済ができなくなる。

 米国の中核的な属国である日本は、(少なくとも来年の米大統領選挙までは)基本的にゼロ金利の解除をしにくいのである。

 巨額の借金を持つ国において、インフレは政府の実質債務を減らすことができるが、金利上昇は利払い負担になるので望ましくない。しかし、金融市場で<国債を買い支える仕組み>をつくれば、インフレ下においても長期金利を低く抑えることが可能となる。政府にとっては実質借金額と利払い負担の両方を減らすことができるのである。

この金融市場で<国債を買い支える仕組み>が日銀のYCCである。

 このような市場が要求する水準よりも政策金利を低く抑えつける政策は、<金融抑圧政策>と呼ばれている。植田和男日銀総裁の一連の発言は、日本国債を買い入れて金融抑圧をやるための方便ではないだろうか?

「自由市場における活動や、債券や通貨の価格形成に干渉する政府の政策は何であれ、金融抑圧的な行為と見なすことができます。直接的な介入によって、あるいは一定の価格での債券や通貨の需要を変えるという間接的な介入によって、債券や通貨の市場価格を変えるように、政策を設計することができます。金融抑圧のもっとも一般的な動機として、政府が、痛みを伴う財政再編を行うことなく、負債発行による資金調達能力を向上させることがあります。負債調達コストを、自由市場で要求される水準より低く抑えることによって、政府は借り入れコストを軽減し、債務残高の増加ペースを遅らせることができるのです。金融抑圧は、【密やかなデフォルトの一形態】だと見なすこともできます。不換紙幣を発行する現代国家が、表面上は金利と元本を返済しつつも、債権者を割りの合わない目にあわせる紳士的な方法です」




アメリカの株価バブルに関する最近の報告によると、以下の要点が挙げられます。

米国株のピーク

FRBによる急ピッチの利上げにもかかわらず上昇してきた米国株は、日本のバブル崩壊時に似た上昇パターンを示しており、ダウ平均が近くピークをつける可能性があるとされています。

エブリシング・バブル

米国市場においては、株式だけでなく、あらゆる資産でバブルが発生し、崩壊しうる状態が指摘されており、特にテスラの株価の大幅な下落が例として挙げられています。

スーパーバブル

米資産運用会社の共同創業者は、米株価が「スーパーバブル」の状態にあると警告し、主要株価指数が統計上の標準値ないし、それ以下の水準に下がると予想しています。

エブリシング・バブルに関する詳細は以下の通りです。

要点

エブリシング・バブルは、あらゆる資産やセクターがバブル状態にある現象を指します。

米国株は、FRBの緩和政策によるバブルが崩壊する可能性があります。

格差社会の拡大やキャリーバブルとキャリークラッシュについても議論されています。

インフレの高止まりや景気の低迷が予想され、実物資産や株式への投資が推奨されています。

日本株が米国株の次に投資先として注目される可能性があるとされています。

詳細

第1章では、FRBの緩和政策によるバブルとその崩壊について解説されています。

第2章では、格差社会の歴史とその拡大について、またキャリーバブルとキャリークラッシュについて議論されています。

第3章では、インフレの影響と対策について、実物資産や株式への投資が良いとされています。

第4章では、日本経済の今後と日本株への投資の有効性について述べられています。

第5章では、中国経済の現状とその影響について解説されています。

その他、地政学リスクやサイバーセキュリティ、暗号通貨などの現代経済における新しい問題についても議論されています。

これらの情報は、エブリシング・バブルの崩壊に関する理解を深めるための重要なポイントです。投資家はこれらの情報を踏まえ、慎重な投資判断を行う必要があります。

次にキャリーバブルとキャリークラッシュについての要点は以下の通りです。

キャリーバブル

キャリートレードによって生じる資産価格の過剰な上昇現象です。

低金利の通貨を借りて、高金利の通貨や資産に投資することで利益を得る取引が原因です。

この現象は、投資家がリスクを取ることで大きなリターンを期待する心理が背景にあります。

キャリークラッシュ

キャリートレードの反対方向の動きで、資産価格が急激に下落する現象です。

金融市場の不安定性やリスク回避の動きが強まると発生しやすくなります。

投資家が一斉にリスク資産を売却し、低金利通貨に逃避することで加速します。

キャリーバブルとキャリークラッシュは、金融市場のサイクルの一部であり、経済の健全性を損なうリスクがあります。

リスク管理は必要不可欠

リスク管理には様々な種類がありますが、一般的には「純粋リスク」と「投機的リスク」の2つの大きなカテゴリーに分けられます。以下にそれぞれの種類について説明します。

純粋リスク

純粋リスクは、損失のみをもたらす可能性があるリスクです。これには自然災害や事故、盗難などが含まれます。純粋リスクは予測可能であり、保険などを通じてリスクを転嫁することができます。

投機的リスク

投機的リスクは、損失だけでなく利益をもたらす可能性もあるリスクです。市場の変動や新商品の開発、事業戦略の変更などがこれに該当します。投機的リスクはビジネスチャンスとしても捉えられるため、リスクを管理することで利益を最大化することができます。

リスク管理のプロセスには、リスクの特定、分析、評価、対応策の策定、モニタリングと改善が含まれます。これらのプロセスを通じて、リスクを効果的に管理し、企業やプロジェクトの目標達成を支援します。

どのようなリスク管理手法を選択するかは、組織の目的やリスクの性質によって異なります。適切なリスク管理を行うことで、不確実性を減らし、安定した経営を実現することができます。どのリスク管理手法が最適かは、専門家のアドバイスを求めることも一つの方法です。また、ISO31000などの国際規格を参考にすることも有効です。
2024.03.14 20:58 | 固定リンク | 経済
驚異「5万倍の電力制御」
2024.03.14
ダイヤモンド半導体は、非常に大きな電力を制御できる可能性を秘めており、次世代の半導体素材として注目されています。シリコンに比べて理論値で5万倍の電力を制御する力があるとされており、電力損失を大幅に軽減できるため、省エネの重要性が高まる現代において、世界中から熱い視線が向けられています。

ダイヤモンド半導体の開発は30年ほど前から始まりましたが、ダイヤモンドそのものはほとんど電気を通さない絶縁体であるため、半導体にするための技術開発が困難でした。しかし、研究者同士の意外な出会いによって、ダイヤモンドを半導体にする突破口が見つかりました。実用化が進めば、大容量無線通信、医療機器、宇宙空間など、従来の半導体ではカバーできない領域での活用が期待されています。

また、パワー回路が実用化できれば、次世代通信規格「6G」や量子コンピューターなど最新技術への応用も期待されており、ダイヤモンドは高電圧に耐えられ、高速かつ高い周波数で動作できるため、宇宙など放射線量が高い場所でも使用可能です。

これらの特性を活かすためには、さらなる研究開発が必要ですが、ダイヤモンド半導体は将来的に強く期待される分野であり、その進展に注目が集まっています。

ダイヤモンド半導体の要点は以下の通りです:

素材特性: ダイヤモンド半導体は、シリコンなどの従来の半導体に比べて、高い絶縁耐圧と熱伝導率を持ちます。

応用分野: 高温や高電圧の環境での使用が可能で、電気自動車(EV)や宇宙産業などでの需要が期待されています。

市場規模: 2030年にはワイドバンドギャップ半導体市場が3176億1200万円に到達すると予測されています。

日本の研究開発: 佐賀大学を含む研究グループや企業が実用化に向けた開発を進めています。

課題: 大型基板の精密な研磨や加工が難しいなど、実用化に向けた技術的課題があります。

ダイヤモンド半導体の将来性は?

ダイヤモンド半導体は、その優れた特性により、多くの分野での活用が期待されています。特に、以下の点が将来性を示しています。

大電力制御の可能性

ダイヤモンド半導体は、シリコンに比べて5万倍の電力を制御する力があるとされ、大電力を扱う必要がある社会での利用が期待されています。

省エネ性

電力損失を大幅に軽減できるため、省エネの重要性が高まる現代において、ダイヤモンド半導体への注目が集まっています。

実用化への進展

早ければ2025年にはダイヤモンドのパワー素子製品が市場に登場する可能性があり、ウエハー口径も拡大してきています。

これらの点から、ダイヤモンド半導体は、電気自動車、宇宙産業、大容量無線通信、医療機器など、さまざまな分野での実用化が期待されており、今後の技術革新に大きく貢献する可能性があります。私たちの日常生活や産業に革命をもたらす日も遠くないでしょう。どうぞご期待ください。

ダイヤモンド半導体の実用化に関する要点は以下の通りです:

実用化の見通し

産業技術総合研究所によると、ダイヤモンド半導体の原理検証は終了しており、2030年ごろには宇宙などの過酷な環境でも使用可能な高性能な半導体が実現する可能性があるとされています。

試作の進展

早ければ2025年にダイヤモンドのパワー素子製品が登場する可能性があり、ウエハー口径は炭化ケイ素(SiC)並みに拡大してきているとの報告があります。

ダイヤモンド半導体、2030年ごろには実用化へ

産業技術総合研究除(産総研)が「薬品処理と低温加熱だけでダイヤモンド基板の原子レベルの接合を可能に」との発表を行った。ダイヤモンド基板をシリコン基板と直接接合する技術を開発したという内容で、これによって比較的低い温度での加熱処理でダイヤモンド基板を接合できるようになり、高品質なダイヤモンド半導体の製造が期待できるという。

人工ダイヤモンドを使ったダイヤモンド半導体は現在主流のシリコンを使った半導体と比べて特性に優れるものの、まだ実用化には至っていない。しかし、研究開発が進んだ結果実用化への道は見えつつあるそうだ(日経新聞)。

ダイヤモンドは熱伝導性が高く、硬くて熱や電気にも強いという特性がある。そのため、たとえば電力制御系の半導体においてはシリコン製の半導体の約30分の1の薄さで同じ電圧に耐えられ、小型化できるという。また、1万アンペア以上の大電流を扱える半導体素子や、温度が上がるほど発光効率が高まるLEDなども期待されている。

産業技術総合研究所によると、すでにダイヤモンド半導体の原理検証は終えており、2030年ごろには小さくて高性能で、宇宙などの過酷な環境でも使える「究極の半導体」が実現する可能性があるという。

これらの情報は、ダイヤモンド半導体の将来性と実用化に向けた進捗を示しています。技術的な進歩により、これらの半導体が実際に市場に登場する日も近いかもしれません。私たちの日常生活や産業に大きな変革をもたらすことが期待されています。

これらのポイントは、ダイヤモンド半導体の現状と将来の可能性を概観する上で重要です。技術的進歩により、これらの課題が解消されることが期待されています。

ダイヤモンド半導体は、合成ダイヤモンドを使用した半導体で、シリコンや炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)などの従来の半導体素材と比べて、絶縁耐圧や熱伝導率が優れています。これにより、高温下や高電圧下でも稼働が可能で、電子機器の小型化・高性能化に貢献することが期待されています。

ダイヤモンド半導体の市場規模はまだ大きくはありませんが、電気自動車(EV)や宇宙産業など、電力需要が増える分野での需要が高まっており、2030年にはワイドバンドギャップ半導体市場が3176億1200万円に到達する見込みです。

日本では、佐賀大学のグループがダイヤモンド半導体デバイスでパワー回路開発に成功したことが報告されており、実用化に向けた研究開発が進んでいます。また、大熊ダイヤモンドデバイスやPower Diamond Systems、ミライズテクノロジーズなどの企業が開発を進めています。

ダイヤモンド半導体は、耐圧や熱伝導性に優れ、高温環境下や放射線量の多い場所でも作動するため、廃炉作業や航空・宇宙産業での活用が期待されています。しかし、実用化にはまだ課題があり、特に大型の基板の精密な研磨や加工が難しい点が挙げられます1。今後の技術的進歩により、これらの課題が解消されることが期待されています。

桁違いの大電力制御の力をもつ「ダイヤモンド半導体」の可能性

ジュエリーとしておなじみのダイヤモンドが、次世代の半導体素材として注目されています。その理由は、「桁違いの大電力を制御できる可能性」を秘めているから。

社会において大きな電力を制御する必要性は、年々高まっています。電気自動車の普及が進み、電気で動く空飛ぶクルマや飛行機も登場。さらに電力需要が増え、変電所が扱う電力も大きくなると考えられています。

そこで、実用化が期待されているのが、現在主流のシリコンに比べて5万倍(理論値)の電力を制御する力があるダイヤモンドの半導体なのです。省エネの重要性も高まる今、電力損失を大幅に軽減できるダイヤモンド半導体には世界から熱い視線が向けられています。

しかし、その開発の道のりは困難の連続。開発を前進させたのは、研究者同士の意外な出会いでした。実現すれば、その活用の場は、大容量無線通信から医療機器、宇宙空間にまで広がります。従来の半導体ではカバーできない領域での実用化を目指す、半導体開発の最前線に迫ります。

「究極の材料」を半導体にする偶然見つかった突破口

そもそも半導体とは、電気を通す「導体」(鉄・銅など)と、電気を通さない「絶縁体」(ガラス・ゴムなど)の間の性質を持つ物質のこと。この半導体は、熱を持っているときに導体、冷えると絶縁体になるというように、条件を変えることで電気の通りやすさをコントロールできます。つまり、ON/OFFの「スイッチ」のように働くことができます。

一つの半導体の素材の上には、この「スイッチ」がナノ単位でたくさん(多いもので1センチ角の半導体の中に数十億個)書き込まれていて、これらがさまざまなON/OFFの組み合わせをつくることで、複雑な情報処理をしたり、電気を制御したり、センサーとしての役割を果たしたりしているのです。

そんな半導体をダイヤモンドで作ろうという開発が始まったのは、30年ほど前。これまでにない大きな電力を扱える素材として注目されました。ただ、ダイヤモンドそのものは、ほとんど電気を通さない、ほぼ絶縁体の物質です。

絶縁体のダイヤモンドをどうやって半導体にする?

実は、現在半導体の主流の素材であるシリコンの場合も、電子が強く結合していてそのままでは電気を通さないため、リンやホウ素といった物質を注入し、「自由に動ける電子」を生み出しています。それらの「自由に動ける電子」に電圧をかけると、プラスの電極に引き寄せられ、電流が流れるという仕組みです。

一方ダイヤモンドは、炭素原子の電子どうしがシリコンよりさらに硬くがっちりと結合しているため、特定の物質を注入するのが難しく、その技術は確立していません。

ただ他に一つだけ、ダイヤモンドを半導体にするための糸口がありました。ダイヤモンドの基板を空気にさらしておくと「なぜか電気を通すようになる」、つまり半導体になるということが知られていたのです。当時、大手通信会社の研究員だった嘉数(かすう)誠教授(佐賀大学)は、空気中の何が反応してダイヤモンドに電気を通すようになるのかを、突き止めることにしました。

そして実験をする中で、嘉数さんは奇妙な現象が起きることに気づきます。

「朝の時間帯に電流が流れやすくなって、なぜかまた夕方5時ごろになると電流が流れるというのを毎日繰り返していて、なんか変だなと」(嘉数さん)

空気中の成分が関係していたとしたら、なぜ朝と夕方だけ多く電流が流れるのか。不思議に思いながらも嘉数さんは、空気中の成分である窒素、酸素、二酸化炭素など、思いつく限りの成分を試し、電気の流れやすさに影響を与えているものの正体に迫りました。ところが、電気は思うように流れません。そこで、周囲の研究者に相談することにしました。

すると、たまたま隣の研究室にいた環境汚染が専門の研究者が、思いがけない成分の可能性を指摘してくれました。それは車の排気ガスに含まれる成分、二酸化窒素でした。

早速、二酸化窒素をダイヤモンド基板の表面に吸着させて実験したところ、空気にさらしたときに比べ、約2倍の電流を流すことができたのです。朝と夕方に多くの電流が流れるという謎の現象も、車からの排気量が増える通勤時間帯だったということを考えればつじつまが合います。

「急に電流値がバンッと流れたので、ああ、やった! 見つけた! と思いました。」(嘉数さん)

ダイヤモンド半導体実用化、次なる壁は「大きさ問題」
ダイヤモンドを半導体にする突破口は見えたものの、まだ大きな課題がありました。ダイヤモンド基板の大きさです。長らく研究で使っていた人工ダイヤモンド基板の大きさは、4ミリ角サイズが限界でした。

しかし、半導体製造の工場で使う装置は、通常直径10センチ以上の基板が入るように作られているため、4ミリ角では小さすぎて装置に入れることができません。さらに、基板は大きければ大きいほど、小さなチップにカットして、一度にたくさんのチップを売ることができるため、コストダウンにもなりますが、それもできません。

「とてもとても世の中から認められるような研究にはなりませんでした。今だから言えますが、小さすぎて研究中に落としたり、なくしたりすることもあったほどです」(嘉数さん)

転機が訪れたのは、7年前の夏のこと。嘉数さんの研究室にある男性が訪ねてきました。「これで半導体をつくってほしい」と差し出されたのは、これまで見てきた2倍の大きさのダイヤモンド基板でした。

「ええ⁉ と本当にびっくりしました。不可能だと思っていたものが目の前に突然現れたという感じでした。」(嘉数さん)

「不可能だと思っていたもの」はどうやって?
この基板を作ったのは、人工宝石会社でダイヤモンドの基板開発していた金聖祐(きむ・そんう)さん。半導体用の大きな基板ができれば、将来性のある事業になると考え、取り組んできました。

人工ダイヤモンドは、高温の環境で、メタンガスと水素ガスを流して土台の上にゆっくりと成長させてつくります。それまで4ミリ角のダイヤモンド基板しかなかったのは、4ミリ角のダイヤモンドを土台にして、その上に生成する方法をとってきたから。そこで金さんは、より大きなダイヤモンドを成長させるために、土台をサファイアに変更。金さんの人工宝石会社では長年サファイアを生産していたために、大きな土台を用意することができたのです。

ところが、土台をサファイアに変えたところ、すぐに問題が発生しました。ダイヤモンドを成長させた後に温度を下げていくと、ダイヤモンドとサファイアの熱膨張率が違うため、下地のサファイアが先に縮み、それに引っ張られるようにダイヤモンドが割れてしまったのです。サファイアとダイヤモンドの間に、縮むときの力を吸収してくれる何かが必要だと考えた金さん。

とった策は、成長させたダイヤモンドを剣山のように極細の柱に加工し、その上にダイヤモンドを成長させる方法。すると、ダイヤモンドの柱の下にあるサファイアが縮むときにダイヤモンドにかかる力を柱が吸収し、ダイヤモンドが割れることなく残ったのです。


こうして金さんは8ミリ角のダイヤモンド基板の開発に成功し、ダイヤモンド半導体の研究を長年行っていた嘉数さんに声をかけたのです。

早速、嘉数さんは8ミリ角の基板で半導体をつくりました。そして去年5月、この半導体がどのぐらいの電力を制御できるか調べたところ、ダイヤモンド半導体の世界記録となる875メガワットをたたき出したのです。

大口径化で広がる「ダイヤモンド半導体」の可能性

その後、金さんが開発した基板はさらに進化を遂げ、最新の基板は直径5センチの大きさになっています。嘉数さんは、大口径化によってダイヤモンド半導体の応用先はさらに広がると考えています。

「例えば、太陽光発電の送電。送電に使われる半導体はエネルギーが外に熱になって逃げてしまう、エネルギーロスの問題がありますが、ダイヤモンド半導体であれば効率的に電力を制御できます。

さらに、演算速度が格段に速くなる量子コンピューター。その一部にダイヤモンドを使う研究も進んでいます。実現すれば、演算速度があがるだけでなく、多くの情報を直径5センチの基板に全部記憶させることができます。そのほか、ダイヤモンドは高い周波数の電波を出すことにも長けているため、ビヨンド5Gや6Gといった情報通信でもダイヤモンド半導体が使われるようになると思います」(嘉数さん)

「放射線検出装置」にも向くダイヤモンド半導体

すでに実用化に向けたテスト段階に入っている応用先もあります。放射線を検出する機器の開発を行っている東北大学の人見啓太朗准教授。ダイヤモンド半導体を、放射線を検知するセンサーに応用しようと開発を進めています。福島第一原子力発電所の廃炉作業といった、極めて放射線量が高い場所では放射線に強い半導体が求められているのです。

実は、従来のシリコンでは、放射線がシリコンの原子にあたると、原子を元の位置からはじき出すなどして損傷を与えてしまいます。一方、ダイヤモンドの場合、炭素が強く結合しているため、放射線があたっても損傷が起きにくいのです。

さらに、ダイヤモンドのセンサーは、人体が受ける放射線量の測定にも適しているとして、放射線を使う医療機器での応用も期待されています。

嘉数さんは、シリコンが担うことのできない領域でダイヤモンドが果たしていく役割は大きいと考えています。

「ダイヤモンドは究極の素材としてものすごいポテンシャルがあるので、ダイヤモンドにしかできない領域を極めたい。製品化するためには、ダイヤモンド基板をチップにするためにカットしたりする周辺技術の確立が不可欠。いかに長期間劣化させずに大電力の性能を発揮し続けられるかといった検証も必要です。いま、実用化に向けて7合目あたりまで来ていると思います。4年後ぐらいの実用化を目指したいと考えています。」(嘉数さん)

世界でダイヤモンド半導体の実用化に向けた研究が始まって30年あまり。さまざまな研究者が壁を一つ一つ突破していくことで急速に進歩を遂げているいま、ダイヤモンド半導体が私たち人類の進歩に貢献する日もそう遠くないかもしれません。

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