ドニプロ川東岸でロシア軍を蹂躙
2023.11.03
ウクライナ軍が「奪還」したドニプロ川東岸でロシア軍を蹂躙

ウクライナ軍が、攻撃型ドローンでロシアの複数の装甲兵員輸送車(APC)を破壊する様子を捉えたとする新たな動画が浮上した。戦火に引き裂かれたウクライナの中で、ロシアが併合を宣言したヘルソン州南部で撮影されたという。

このXの動画は、YouTube画像の一部で、ウクライナ軍がロシア軍の複数のAPCを標的にしている。撮影場所は、ロシアが実効支配するドニプロ川東岸にあるクリンキー村の近くとされている。もしそうだとすれば、ウクライナ軍が今まさにロシアから奪還しようとしている戦場だ。

攻撃型ドローンを駆使する航空偵察部隊「マジャールの鳥」を率いるロベルト・ブロブディ(コールサイン「マジャール」)が10月29日にYouTubeに投稿した動画では、さらに多くのロシア軍車両が、ウクライナのドローンの餌食になっているように見える。

ウクライナが反転攻勢を開始して以降の数カ月、激戦地はおおむね、同国東部ドネツク州および南部ザポリージャ州に集中している。ロシアは2022年9月、ドネツクとザポリージャ、ルハンシク、ヘルソンの4州を公式に「併合」したが、ウクライナ南部および東部に位置するこれらの地域を完全に掌握しているわけではない。

なかでも最近になって注目が集まっているのがヘルソン州だ。アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は10月28日付のレポートで、ドニプロ川東岸の河岸から約2キロのクリンキ村にウクライナ軍が「拠点を維持している」と述べた。ISWによれば、ウクライナ軍は10月中旬にロシア側が支配する東岸への渡河作戦を行った。難しいと言われた渡河が成功した上、対岸に拠点を築きつつあるようだ。

ウクライナ南部ではドニプロ川が、現在の戦闘の最前線だ。ロシア側は川の東側を支配しているが、それも2022年11月にここまで撤退させられた結果だ。

ウクライナ軍は、東岸地域に対する渡河作戦を複数回実施したと考えられている。ロシアが実効支配する村々に、より確実な足がかりを得ることを目指した行動だ。

10月20日付のニューヨーク・タイムズが伝えたところによると、ウクライナ軍が取り返したヘルソン市当局の広報を担当するオレクサンドル・トロコニコウは、ウクライナ軍部隊は、東岸に「海兵隊員などの兵員を上陸させるべく、絶え間なく努力を続けている」と述べたという。

ロシアの軍事ブロガーも、ウクライナが橋頭堡をドニプロ川東岸に築いたことを認めていると、戦争研究所は29日の報告で指摘していた。

ウクライナがロシア軍のT-90戦車をFPV(一人称視点)ドローンで破壊する劇的な瞬間を捉えた新たな動画が公開され、注目を集めている。ウクライナの戦場では、低コストで乗組員不要のドローンを使った攻撃が主流となっている。

開戦から18カ月以上が経つ今も、ロシアとウクライナの間では激しい制空権奪取戦が続いている。その一端をのぞかせる珍しい映像が浮上した。

10月24日にロシアとウクライナの戦争に関する情報を扱っているテレグラムチャンネル「Karymat」に投稿され、ソーシャルメディア上で共有された動画には、ウクライナ空軍の旧ソ連製スホーイSu27らしき戦闘機が標的に向けてミサイルを発射して飛び去る様子が映っている。この戦闘機の標的が何だったかは不明だが、Karymatチャンネルは、「敵の空中目標」に向けて「空対空ミサイル」を発射したと説明している。

ロシアがウクライナに本格侵攻してから18カ月以上が経つが、両国は今も激しい空中戦を繰り広げている。

ロシア軍にとって、侵攻後すぐにウクライナの制空権を掌握できなかったことは、最大の失敗のひとつだ。

ロシア軍の巡航ミサイルやドローンは今も、ウクライナ上空を飛行して各地の標的を攻撃しているが、ロシア空軍の航空機が危険を冒してウクライナ内陸部深くに飛行していくことは滅多にない。米国製の地対空ミサイル「パトリオット」など、西側諸国が供与した防空システムがウクライナに到着していることで、ロシア側にとって危険は増す一方だ。

■ATACMSでロシアの損失拡大

戦争中の兵器類の損失を集計するオランダのオープンソース調査会社「Oryx」によれば、2022年2月24日の本格侵攻以降、ロシア軍の航空機85機が破壊され、さらに8機が損傷を受けた。この中にはスホーイSu25近接支援用攻撃機30機、スホーイSu30SM多用途戦闘機11機とスホーイSu34戦闘爆撃機21機が含まれている。

このほかにもヘリコプター102機が破壊され、28機が損傷し、2機が鹵獲された。この多くが、ウクライナ東部のルハンシクと南部のベルジャンシクにあるロシア軍の拠点に対して、ウクライナ軍が初めて米国製の陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)を使用した際のものだ。

ウクライナ側の報告によれば、ロシア軍の損失はさらに大きく、ウクライナ軍はロシア軍の軍用機320機とヘリコプター324機を破壊したとしている。

18カ月以上にわたる戦闘はウクライナ空軍にも被害をもたらしており、ウクライナ軍が敗北する運命にあるとみられていた侵攻開始当初に、多くの経験豊富なパイロットが犠牲になった。ウクライナ空軍は航空機やパイロットの数でロシア空軍に劣っており、それらを失うことは戦略的により大きな痛手となる。

Oryxによれば、2022年2月以降にウクライナ軍の航空機75機が破壊され、1機が損傷し、1機が捕獲された。この中にはミグ29戦闘機22機、スホーイSu27戦闘機12機とスホーイSu25近接支援用攻撃機17機が含まれている。

ウクライナ空軍が保有する航空機は多くがソビエト時代のものだが、ウクライナは近いうちに、NATOの戦闘機導入による航空隊の強化が実現することを期待している。アメリカ、デンマークなど11カ国による国家連合が、ウクライナに米国製F16戦闘機の訓練を提供。10月からアリゾナ州のモリス州兵空軍基地で訓練を開始した。

■東部でロ軍に多大損害「ゼレンスキー大統領」

ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、ロシア軍が攻勢を仕掛けている東部ドネツク州でロシア側に多大な損害を与えたと明らかにし、南部戦線では攻撃を続けていると主張した。オランダのオロングレン国防相と首都キーウ(キエフ)で会談し、各国が重要兵器の供与を決断する後押しをしたとして、謝意を示した。大統領府などが発表した。

英国防省は2日、ウクライナ軍の攻撃でロシアが先週、長距離地対空ミサイルの発射装置を少なくとも4基失った恐れがあるとの分析を発表。損失により、ロシア側の防空が弱まる可能性があるとの考えを示した。クリミア半島でも地対空ミサイル関連設備が損傷したと指摘。
2023.11.03 08:13 | 固定リンク | 戦争
中国政府「イスラエル人はゴミ!」
2023.11.01
中国ネット上で反ユダヤ主義拡大 イスラムを支援する北京政府の明確な理由 中国政府「イスラエル人はゴミだ。ユダヤ人は世界で最も恐ろしい人種だ!」

今月7日にガザ危機が勃発して以来、中国では露骨な反ユダヤ主義(アンチ・セミティズム)がインフルエンサーらによりインターネットで拡大している。検閲など当局の厳重な管理下にある中国のネットで、そのような活動が黙認されていることは、中国政府の姿勢を反映していると英紙デイリー・テレグラフは指摘。同国がイスラエルを敵に回してもイスラム諸国を支援するには明確な理由があった。

世界地図を前に中国の人気インフルエンサー、スー・リンさんは、ガザ危機が始まって以来、イスラム武装組織ハマスを支援し、反ユダヤ主義を掲げ、イスラエルを糾弾するライブ配信をほぼ連日続けている。

約100万人のフォロワーを持つスーさんは、ある時は「ハマスはまだ甘い、あまりに安直過ぎる」と同武装組織に奮起をうながし、イスラエル人は「植民地主義の手先」と呼び罵った。今月7日のハマスによる奇襲攻撃で人質に取られたイスラエル人らについては、「彼らは捕らえられるべきして捕らえられた」と発言し、「イスラエルは今やナチスや軍国主義のユダヤ版だ」と言い放った。

英紙デイリー・テレグラフ(電子版)によると、このような配信は7日以来、中国のインターネットに現れた反ユダヤ主義の波の一部に過ぎない。当局の厳重な検閲・管理下にある中国のネット上で、このような反ユダヤ主義を共有することが黙認されているということは、中国共産党がイスラエル・パレスチナ紛争に関し、どのような立ち位置にあるのかを示していると指摘。中国はハマスの攻撃を非難せず、イスラエルを怒らせ、両国の関係がこじれることは必至の状況だ。

中国政府はこれまでもパレスチナ独立を樹立するため、イスラエルとの「双方による解決」を求めてきたが、新たな紛争が勃発した今回も習近平指導部は同様のメッセージを繰り返し、それが「根本的な解決策」だと主張している。

同紙によると、中国にとってパレスチナ大義への支援は数十年前に遡り、中国政府がイスラム諸国との関係を築く基盤となっていると専門家は指摘する。

中国が初めてパレスチナを支持し、インドネシアのバンドン会議でアジア、アフリカ、中東からの参加29か国とともに「あらゆる植民地主義」を非難したのは1955年だった。当時の毛沢東指導部は、パレスチナ人団体への支援と訓練の提供を開始し、毛主席の死後も80年代まで一部の援助は続けられた。

近年、中国はイラクのインフラプロジェクトや、イランの南部ジャスク港の石油ターミナルなど、地域全体に多額の投資を行い、中東での影響力を拡大。エジプトではカイロ郊外に新首都さえ建設中だ。外交面でも、内戦で荒廃したシリアの復興努力への支援を申し出ており、今年初めには地域の長年のライバルであるイランとサウジアラビアの間の国交再開のために介入し、世界を驚かせた。

テレグラフ紙によると、中国が最終的に望んでいるのは、中東全域の投資を守るため、イスラエルとパレスチナの緊張を緩和し、同地域からの石油輸入が滞りなく継続されるようにすることだという。中国は石油の70%以上を輸入しており、そのほとんどはサウジアラビアとイランから来ている。

中国がイスラム側に立つ、もう一つの理由は単純だ。「それは算数だ」とイスラエル国家安全保障研究所の中国担当・トゥヴィア・ゲーリング研究員は指摘する。

「小さなイスラエルは一つで、支援する国も一つだけ。それは米国」とし、その一方で「イスラム協力機構(OIC)の加盟国は57あり、これは国連総会で多くの票を意味する」と説明。OIC加盟国の多くは、「イスラエルは植民地主義の前哨基地であり、戦争を扇動し、中東での覇権を永続させるために西側によって建国された」との見解を持ち、中国はその考えを共有していると述べた。

OICは1969年に発足し、71年に正式な国際機構として設立。イスラム諸国の政治的協力、連帯を強化すること、イスラム諸国に対する抑圧に反対し、解放運動を支援することを目的とする。

中国国営メディアはこの見解を強調して報じ、イスラエルとパレスチナの紛争を中国と米国の広範な対立の構図として位置付けている。その主張は、米国が「ユダヤに支配され、世界に混乱をもたらしている」というものだ。

中国の反西感情は、中国政府が「屈辱の世紀」と呼ぶ時代、つまり中国が英国を含む西洋列強に支配された1839年から1940年代にまで遡る。ゲーリング氏によると、中国政府の解釈では、当時糸を引いていたのは「カーテンの後ろの黒い手…ユダヤ人だった」というのだ。

それでも中国政府は、反ユダヤ主義と名指しで非難されることに対し、「ナチスに追われた何千人ものユダヤ人はビザなしで上海への入国が許可され、ホロコーストを逃れた」という事実を強調して反論する。だが同紙は、中国政府=中国共産党が政権を取ったのは戦後の1949年で、ユダヤ人受け入れとは無関係だと指摘する。

中国政府はユダヤ教を宗教として認めていない。河南省東部・開封市には、1000年以上前に黄河沿いに定住したユダヤ人たちの子孫が住む小さな村落がある。ユダヤ人の血を引くとされる住民約1000人のうち、信仰を実践しているのはわずか100人程度。しかも、中国政府による広範な宗教弾圧から逃れるため、〝隠れユダヤ〟として暮らしている。

反米国感情と混ざり合った反ユダヤ主義が現在の中国でまん延しているが、パレスチナ問題に関する当局の執拗なプロパガンダを誰もが受け入れるわけではない。

中国北部のある大学生は同紙に、「この紛争は深刻な人道的大惨事だと思う」と語った。続けて、「中国国営メディアは正義や人権について何も話していない」とし、「反西洋的、反民主的、そして中国共産党に有利なものは全て支持されているだけだ」と主張した。

しかし、そんな意見は中国のネット上で増幅され、より扇動的なコメントによってかき消されつつある。ある掲示板の書き込みには、「イスラエル人はゴミだ。ユダヤ人は世界で最も恐ろしい人種だ!」 と事実誤認したものや、「今世紀にはユダヤ人を神の元に送ってくれるヒトラーが必要だ」など、ヘイトコメントがまん延している。
2023.11.01 08:52 | 固定リンク | 国際

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