警察庁長官大号令「トクリュウ」国家反逆罪死刑も!!
2023.11.30
警察のトップが壊滅の大号令をかけた犯罪集団「トクリュウ」 特殊詐欺や闇バイト、悪質ホストクラブも絡んでいるという、その組織の特徴とは?

「トクリュウ」とは、SNSなどで実行役を募集し、特殊詐欺や強盗などの犯罪を指示する匿名・流動型犯罪グループのことです。

ことし1月には、東京・狛江市で「トクリュウ」の指示役「ルフィ」らが関与したとされる強盗殺人事件が発生し、90歳の女性が死亡しました。

警察庁は「トクリュウ」を「治安上の脅威」と捉え、露木康浩長官が「首謀者や指示役検挙のため全国警察が一体となって捜査する必要がある」と大号令をかけました。

警察庁は、ネット上の犯罪実行者募集情報の削除依頼や匿名通報の受付を強化し、犯罪組織の壊滅につながる有力情報に対する情報料を最大100万円に設定しました。

過去最多ペースで増加する特殊詐欺や闇バイト。その特殊詐欺などの犯罪壊滅に向け、警察庁のトップが大号令を発したのが“匿名・流動型犯罪グループ”、通称「トクリュウ」と呼ばれる犯罪集団の壊滅です。果たして「トクリュウ」とは一体どんな組織なのでしょうか?犯罪ジャーナリストの石原行雄氏が解説します。

■国家公安委員長も警告 「トクリュウ」を壊滅せよ!

11月2日、松村祥史国家公安委員長は「特殊詐欺に深く関与する『匿名・流動型犯罪グループ』の取り締まりを強力に推進している」と語りました。この「匿名・流動型犯罪グループ」とは、「自分たちでグループ名を名乗らずに、匿名性の高いSNSで実行役を集めるため、指示役を特定しにくい」、「メンバーが良く入れ替わり、実行役を使い捨てるなど流動性が高い」といった特徴があります。想定するメインターゲットとしては「特殊詐欺グループ」や「“闇バイト”を使った強盗・窃盗」になります。

Q.最近だと、海外を拠点にした“ルフィ”の事件がありましたが、国内でも拠点を転々と移動したりするのですか?
(犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏)
「そうです。その上でこの『トクリュウ』はメンバーが集まった経緯も分かりにくいので、捜査で実態を把握しにくいのです」
Q.メンバーもコロコロ変わるので、実態がわかりにくいのですか?
(石原氏)

「そうです。さらに実行犯に関しては、SNSで素人をかき集めるわけですので、前科がない人間も入っていたりすると、捜査で引っ掛かりにくいという特徴もあります」

警察も新しい対応に乗り出しています。従来、警察の捜査の原則は「発生地主義」でした。例えば九州で事件が起これば九州の警察が捜査をします。ただ、特殊詐欺グループの拠点が東京だった場合、九州の警察が東京に行って捜査をするということになっていました。そのため捜査員に土地鑑が無かったり、人員や予算の負担の問題が指摘されたりしていました。これを改善するために、警察庁が号令をかけて、“嘱託捜査チーム”というものを東京など大都市圏に設けました。これにより九州の事件でも特殊詐欺グループの拠点が東京の場合、九州の捜査員が東京に行かなくても東京の“嘱託捜査チーム”が捜査を行うようになります。

■「ワンクッション置くことで、自分たちの姿を隠している」悪質ホストクラブも「トクリュウ」として対策を強化 バックには反社の存在?

また、「トクリュウ」として対策強化している「特殊詐欺」・「強盗・窃盗」などに加えて、最近新たに「悪質ホストクラブ」も取り締まるようになっています。

11月27日、露木康浩警察庁長官が新宿・歌舞伎町を視察して「女性に借金を負わせて売春をさせる卑劣な営業手法を徹底的に取り締まる」「悪質ホストクラブの背景にも、『トクリュウ』の関与があるのではないか」とコメントしています。

Q.悪質ホストクラブにも「トクリュウ」が関わっているのですか?
(石原氏)
「これまでは、モラルの低いホストが独自にやっていると思われていたものが、実はビジネスモデルとしてバックに反社がいることが解明されてきたということです」

“悪質ホスト”と「トクリュウ」の構図ですが、まず女性客とホストがいて、女性は料金が払えないため“売掛金”が発生します。「トクリュウ」はホストに、この売掛金の回収を持ちかけるといいます。ホストが回収を依頼すると「トクリュウ」は女性への取り立てを代行し、回収できた場合はホストから手数料をもらいます。また、女性が売掛金を払えない場合は、「トクリュウ」が女性に風俗店などをあっせんして、その仲介料が「トクリュウ」に入るというシステムです。歌舞伎町で“悪質ホスト”問題などの被害にあった人の相談を受けている玄秀盛氏によると「歌舞伎町の中に『トクリュウ』はあるが、実態はなかなかつかめない。指揮系統や勤務時間などがなく、本名すら知らないことも。ただ利害関係でつながり、みな協調しあう」と話しています。

Q.闇金などほかの犯罪者もからんできているのでは?
(石原氏)

「そうですね。さらに違法薬物などで女性をコントロールするなど、様々な反社の犯罪が関わってきます。結局、ホストからの金銭も“上納金”として吸い上げられるという構図が考えられます」

全てのホストクラブが悪質なのではなく、石原氏によると3つのポイントがあるといいます。一つ目は、「売掛金がたまり困ったホストを『トクリュウ』が捜して取り込む」といいます。二番目に「店の経営に『トクリュウ』が入り込み、事実上店を乗っ取っている形」もあるそうです。三番目として「『トクリュウ』の末端がホストとして業界に送り込まれる」といいます。さらに、「『トクリュウ』の背後には指定暴力団の影も見え隠れし、指示や支援をしているのではないか」と指摘しています。

Q. 「トクリュウ」を操っているのは、指定暴力団ではないかということですか?
(石原氏)

「私が、業界に近い人物に聞いたところ、暴対法などで暴力団は追い詰められていて、姿を隠して活動をしようというときに『トクリュウ』や『半グレ』などでワンクッション置くことで、自分たちの姿を隠しているのではないかということです」

この“売掛金”の流れが“犯罪行為”の資金源になっているという指摘があります。まずこのホストでの支払いの一部が「トクリュウ」に流れ、その金を「トクリュウ」が車の購入や部屋の賃貸料にあてます。その車や部屋が、強盗や特殊詐欺に利用されるケースがあるのではないかということです。

Q.だまし取ったカネをいろんな犯罪に使っているということですか?
(石原氏)

「犯罪構成がピラミッド状になっていますので、カネは上納金として最終的に上に吸い上げられるのですが、例えば、ホストからのアガリが一旦上に行って、そのあと『海外に“掛け子”のアジトを作れ』となったときに、その資金に使ったりしている可能性があるということです」

■日本を震かんさせた「ルフィ」グループ

ことし1月、東京・狛江市の一軒家に強盗が入り、暴行を受けた90歳の女性が死亡した。日本を震かんさせたこの強盗事件では、指示役「ルフィ」らがフィリピンから指示を出したとされ、SNSで募集された実行役が強盗に入っていたとみられている。彼らのようなグループによる凶悪事件が近年相次いでいる。

「ルフィ」グループなどを「トクリュウ」と名付ける



強盗・侵入盗などの事件のうち、SNSで募集した実行役に犯行を指示するというものは、警察庁のまとめによるとおととし9月から先月までに22都道府県で72件にのぼり、171人を検挙したということだ。



「ルフィ」グループだけでなく、自分たちでグループ名を名乗らず、匿名性の高いSNSなどで指示役が実行役を集めるため指示役が誰か特定しづらかったり、実行役などのメンバーを入れ替え「捨て駒」として切り捨てるなど流動性が高かったりする犯罪グループを、警察庁はことし7月、あらたに「匿名・流動型犯罪グループ」、略して「トクリュウ」と名付け、徹底的な取り締まりに乗り出した。

警察トップが「縦割り排した戦略的取り締まり」指示

ことし7月の全国の警察本部長を集めた会議で、警察庁の露木康浩長官はこう発言した。「SNSで実行犯を募集する手口は、特殊詐欺のみならず強盗や窃盗にまで拡大しています」「今後は部門の縦割りを排した態勢を構築し、匿名・流動型犯罪グループを部門共通のターゲットとして、戦略的な取り締まりを進めることが必要です」これはどういうことだろうか?

捜査部門の縦割りを排除


捜査においての部門の縦割りというのを具体的に説明する。いままでは、発生した特殊詐欺事件や強盗事件の捜査は刑事部門が担当し、不良少年の捜査や、「トクリュウ」が犯罪で得た資金を使って運営する風俗店、賭博店の捜査は生安部門が、というように捜査部門がわかれていた。そこで、部門を超えて連携して行っていくことで、「トクリュウ」のメンバーとなり得る人物を把握し、全容をつかもうとしている。

県警同士の縦割りを排除

また、そもそも各都道府県の警察は、都道府県知事が所管するそれぞれ独立した捜査機関だ。「トクリュウ」が受け子や出し子を集めて行う特殊詐欺など、事件の捜査は「発生地主義」を原則としてきた。たとえば九州で起きた特殊詐欺の受け子が東京にいた場合、九州の県警の捜査員が上京し、長時間かけて被疑者の捜査、検挙を行っていくのが通常だ。捜査関係者は「いままでは地元の警察官は当直勤務があれば地元に帰ったりしていて、正直非効率なところがあった」と話している。



今回、警察庁は全国の警察に特殊詐欺の嘱託捜査を行うチームの編成を指示した。つまり他県警からの依頼を受けて捜査を行う部隊だ。なかでも受け子や出し子などが多く集まる傾向にある東京や大阪など大都市圏の警察には、警視庁に200人、埼玉県警、千葉県警に70人、神奈川県警に60人、愛知県警に25人、大阪府警に40人、福岡県警に25人という大きな規模のチームを作るよう要請している。

これらの専属チームは来年4月に発足し、受け子などが管轄地にいるとわかった場合、捜査を行い、いざ検挙となった時に発生地の警察の捜査員が出張してくるというような形で、より効率的な捜査を実現する狙いがあり、捜査関係者も期待を寄せる。

ネット上の実行役募集を排除へ


実行役を生まないための対策も打ち出している。警察庁はSNSなどでのパトロールを強化した。ことし9月、警察庁が委託し、ネット上の違法・有害情報の通報を受け付けている窓口の「インターネット・ホットラインセンター」で取り扱う情報の範囲に、いわゆる「闇バイト」などに関する犯罪実行者募集情報を追加。

つまり「闇バイト」などの表現と「受け子」などの表現があった場合、そうした表現の通報を受け付けてサイト管理者に削除を要請していくのだ。さらに、こちらも警察庁からの委託を受けネット上をパトロールするサイバーパトロールセンターが、AIによる犯罪実行者募集情報の検索を開始した。捜査関係者によると、こうした対策によって、すでに多くの投稿に対して削除依頼ができているという。

「トクリュウ」に関する匿名通報を募集


また先月からは、匿名で事件に関する情報を通報してもらい、容疑者の検挙などにつながった場合に情報料を支払う匿名通報事業の対象も拡大。「トクリュウ」を対象に追加し、犯罪組織の壊滅につながった場合、最大100万円の情報料が支払われることに決まった。

実行役の中には指示役に個人情報を握られ、「家族がどうなってもいいのか」などと脅されている場合も多い。捜査関係者は「グループを抜けたくても抜け出せなくなっているメンバーなどから組織幹部のコアな情報などを通報してもらい、検挙につなげたい」と話す。

このように警察庁はさまざまな形で「トクリュウ」壊滅に向け取り組んでいる。

■【速報】「山口にたたき案件」「夜中に侵入でやりたい」ルフィやキム名乗り山口県“強盗未遂”も指示か フィリピンから強制送還の渡辺容疑者ら再逮捕 警視庁



指示役「ルフィ」らが関わったとされる全国で相次いだ強盗のうち、去年11月に山口県岩国市で起きた強盗未遂事件で、警視庁はフィリピンから強制送還された特殊詐欺グループのリーダー、渡辺優樹容疑者や幹部の今村磨人容疑者ら3人を事件の指示役として、強盗未遂などの疑いで再逮捕しました。

全国で相次いだ強盗事件では、「ルフィ」「キム」「ミツハシ」などと名乗る指示役がいることがわかっていて、ことし1月、東京・狛江市で90歳の女性が死亡した強盗事件では、フィリピンから強制送還された特殊詐欺グループのリーダー、渡辺優樹容疑者(39)や幹部の今村磨人容疑者(39)、藤田聖也容疑者(39)、小島智信容疑者(45)が、指示役などとして逮捕されています。

警視庁は、その他の事件についても捜査を進めてきましたが、捜査関係者によりますと、実行役らから押収した携帯電話の解析や関係者の証言などから、去年11月、山口県岩国市の住宅で、住人3人がカッターナイフで脅されるなどした強盗未遂事件にも、指示役として関与した疑いが強まったとして、渡辺容疑者、今村容疑者、藤田容疑者の3人を強盗未遂などの容疑で、再逮捕したということです。

この事件では、すでに実行役や運転役として6人の男が逮捕・起訴されていて、「ルフィ」が現場のリーダー格に対して、テレグラムで「1億 山口 夜中に侵入でやりたい」「金額大きいから是非参加してほしい」などと言い、現場の住宅の写真を送るなど犯行の計画を指示していたとみられ、「キム」が別の実行役に対して、「山口にたたき案件」と話を持ちかけ、結束バンドやバールなどの犯行道具を準備するように指示し、現場に向かう車内ではスピーカーモードにして「初めての人もいるけど一人一人が主役となって素早く終わらせたい」などと、実行役らに話したということです。

警視庁は、「ルフィ」らが関わったとされる全国で起きた8つの事件を対象に、特別捜査本部を設置して捜査を進めていて、指示役として逮捕されるのは、今村容疑者が7回目、渡辺容疑者と藤田容疑者が5回目です。警視庁は「ルフィ」は今村容疑者、「キム」は渡辺容疑者と藤田容疑者とみていて、対象とされる8つの事件のうち、残る東京・稲城市で起きた強盗致傷事件との関連も調べる方針です。

■岩国市強盗未遂事件 「ルフィ」らか…3人を指示役として再逮捕 警視庁



指示役「ルフィ」らが関わったとされる事件のうち、山口県岩国市で起きた強盗未遂事件で、警視庁はフィリピンから強制送還された渡辺優樹容疑者ら3人を指示役として再逮捕しました。

警視庁によりますと、渡辺優樹容疑者、今村磨人容疑者、藤田聖也容疑者の3人は、去年11月、実行役らと共謀して岩国市内の住宅に侵入し、住人3人にカッターナイフを突きつけて脅すなどし、強盗しようとした疑いがもたれています。住人の男性が日本刀を持って抵抗したため、実行役は何もとらずに逃走していました。

この事件では「ルフィ」と「キム」が指示を出していたとみられていて、「ルフィ」は下見を終えた実行役らに「後の処理はなんとかするから車で家に突っ込んでガラスを割ってもいい」などと伝えていて、「キム」はイヤホンをして家に入った実行役の1人と通話をしながら指示を出していたとみられています。

警視庁は「ルフィ」は今村容疑者、「キム」は渡辺容疑者と藤田容疑者とみていて、去年10月に東京・稲城市で起きた強盗致傷事件との関連も調べる方針です。
2023.11.30 16:31 | 固定リンク | 事件/事故

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