ハマス虐殺許可「何時間にもわたって執拗に」
2023.11.03
半裸状態でハマスに虐殺されたシャニ・ルークさん(22)の発見場所 イスラエルが公開した「犠牲者マップ」が示すこと

「残念ながら、昨日、娘がもう生きていないという情報を聞きました」──イスラム組織ハマスに拘束されたドイツ系イスラエル人女性、シャニ・ルークさん(22)の母親であるリカルダ・ルークさんは、10月30日、ドイツのニュースチャンネル「n-tv」でそう報告した。イスラエル国防軍(IDF)を通じ、娘の死を知ったという。DNA鑑定により、発見された頭がい骨の一部がシャニさんのものであることが確認されたようだ。

シャニさんは、ハマスの攻撃対象となった音楽フェスに参加していた。彼女が裸に近い状態でトラックの荷台に乗せられ、ハマスの戦闘員に連行される映像は、世界中の人々に強いショックを与えた。映像がネット上で拡散されるなか、母親のリカルダさんは、シャニさんがガザ地区の病院に入院しているとの生存情報を得たことを明かしていた。

「しかし、生存情報を得てから進展がなく、リカルダさんは10月20日、『私たちは生存情報を疑い始めています。1週間以上、何も連絡がありません……』とドイツのタブロイド紙『ビルト』で涙ながらに語っていました。

 海外報道によると、シャニさんの死亡が確認された今、両親たちは、“娘は音楽フェスでハマスの戦闘員に頭を撃たれて死亡した”と考えているといいます。シャニさんの妹であるアディ・ルークさんは、追悼の意を込めて、姉の似顔絵をInstagramにアップしていました」(全国紙の国際部記者、以下同)

 イスラエルは、10月7日に行われたハマスの攻撃によって犠牲者1400人以上がどこで亡くなったかを示す地図を公開した。音楽祭が開催されたエリアには、死亡者を表す赤い丸が集まっており、シャニさんが命を落とした場所についても記載されている。さらに“音楽フェス虐殺事件”として、〈何時間にもわたって執拗に狩られ、実弾銃やロケット推進手榴弾ランチャーで撃ち抜かれて人々が殺されたり、武装した捕虜に連れ去られたりするのを無力に見守った〉と、フェス参加者が味わった地獄についても描写されている。

さらにイスラエルが、ハマスによる残虐行為を集めた映像を公開したとの報道もある。

「イギリスのタブロイド紙『デイリー・メール』は、イスラエル国防軍が一部のジャーナリストたちを集め、約45分間の映像を上映したと報じています。ハマスが民間人を殺害する様子をとらえた映像で、ある者は斬首され、ある者は撃たれ、少女が犠牲になる瞬間もあったといいます。

 親子に手榴弾が投げつけられて、父親は即死し、生き残った息子が血まみれで『なぜ自分は生きているの?』と泣く場面もあり、参加したジャーナリストが『もうやめろ』と泣き叫ぶほどの残虐な映像だったという情報です」

 一方で、イスラエル側も民間人を巻き込んだ報復攻撃を行い、国際的批判が集まっている。

ガザ地区北部にあるジャバリア難民キャンプは、11万人を超える難民が登録されており、ガザで最大規模の難民キャンプです。10月31日、イスラエル軍はここに空爆を行い、少なくとも50人以上が死亡したとされています。

 イスラエル軍の報道官は、空爆を認めた上で、『この攻撃によってハマスの指揮官を殺害した』と主張しています。しかし、ハマスの報道官は、『ジャバリアに指揮官はおらず、民間人を攻撃するための口実だ』と反論しています。

 それぞれの思惑のもと、イスラエルもハマスも意図的なメディア露出をしている可能性があり、情報が錯綜している状況が続いていますが、双方の無数の民間人が犠牲になっていることは確かな事実です。

ガザとの境界から約5キロほどのエリアで行われていた野外音楽フェスも、襲撃の場となった。国際ジャーナリストが語る。

「ブラジルで行われている人気音楽フェスのイスラエル版として開催され、アメリカやドイツ、タイなどさまざまな国から若者を中心に最大4000人が集まったとみられています。ガザからも近いイスラエル側の砂漠で行われたため、ハマスの標的となってしまいました」

 ハマス戦闘員は逃げ遅れた観客を次々と襲い、会場周辺に残された遺体の数は少なくとも260を超えていると報告されており、そのほか人質として連れ去られた観客もいるという。

 ネット上では現地の惨状をとらえた動画や写真が拡散されている。意識不明と見られる女性が、ほぼ裸体のままトラックに乗せられ運ばれるものや、泣き叫びながらバイクで連行される女性を撮影した映像などが出回っている状況だ。

 イスラエルとハマスの軍事衝突に世界的な注目が集まる中、〈音楽フェスを開催することが、パレスチナへの挑発行為に相当したのではないか〉という憶測がSNSで広がっている。パレスチナでは、多くの人々がイスラム教を信仰している。アフガニスタンで活動するイスラム原理主義組織「タリバン」は音楽を不道徳なものとみなし、同組織が政権を握っていた1996年~2001年は音楽が禁止されていた。そのため“イスラムは音楽禁止”というイメージを持つ人々が多く、上記の憶測に繋がったのだろう。

そのように解釈する信徒も一部いるというだけで、実際のところ、明確に音楽を禁止する記述はコーランにありません。イスラム教徒が多数を占める国にも歌手や音楽イベントは存在し、ほかの宗教と同じように音楽が楽しまれています。

音楽フェスが『ハマス』を刺激してしまったという説は、間違っていると思います。私は、『ハマス』の構成員が自ら公開したBGMつきの動画を見たことだってありますよ。音楽フェスがハマスの標的になった理由としては、ガザの近くで多くの国からの参加者が集まったことが可能性として考えられます。さまざまな国の人質を取ることで国際社会から注目され、ハマスの要求を交換条件として突きつけることができます。自分たちの主張を世界に発信することも、テロリストの目的なんです」

 世界の4人に1人はイスラム教徒といわれている。自身もイスラム教徒であるフィフィは、「イスラムへの誤解が広がっている」と苦言を呈する。

「ハマスのような過激派の主張は、イスラムを代表するものではありません。“イスラムは危険なテロリストだ”というイメージが広がって困るのは、善良に暮らす大半のイスラム教徒です」

 正しい知識を身につけることが大切だという。

「ハマスのやり方が正しいとは思えませんし、彼らを擁護するわけではありません。しかし、今回の攻撃に至るまでに、イスラエルによるパレスチナへの弾圧もありました。物事には必ず背景があり、今だけを切り取って考えても仕方ありません」

イスラエル建国から75年続くパレスチナ問題。世界中がその行方を見守っている──。

■音楽フェス襲撃後に拷問

半裸でハマスに連行されたドイツ人女性シャニ・ルークさんはどのように最期を迎えたのか 両親がコメント「苦しむことはなかった」

ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスに拘束されたドイツ系イスラエル人女性、シャニ・ルークさん(22)の死亡が確認された。シャニさんは、10月7日にハマスに襲撃された音楽フェスに参加していた。

 10月30日、シャニさんの母親のリカルダ・ルークさんは、「残念ながら、昨日、娘がもう生きていないという情報を聞きました」とドイツのニュースチャンネル「n-tv」で報告。イスラエル国防軍(IDF)を通して、娘の死亡を知ったという。頭がい骨の一部が発見され、DNA鑑定でシャニさんのものであることが確認されたようだ。

 シャニさんの両親は、娘は音楽フェスでハマスの戦闘員に頭を撃たれて死亡したと考えているという。父親であるニッシム・ルークさんも、イギリスのタブロイド紙「デイリー・メール」の取材に応え、「(娘は)撃たれて即死した。苦しむことはなかった」と推察した。

■「斬首された」証言も

方で、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、「彼女は斬首された」と語っている。またイスラエル外務省も拉致後にシャニさんが「テロリストらによる拷問を受け、街頭を連れ回された」と報じている。

シャニさんがどのように命を落としたのか、はっきりした経緯は明らかになっていない状況だ。

シャニさんがほぼ裸の状態でトラックの荷台に乗せられ、ハマスの戦闘員に連れ去られる現場をとらえた映像は、世界中に衝撃を与えた。シャニさんの手足は不自然な方向に折れ曲がり、微動だにしないため、すでに彼女は死亡しているものとして受け止めた人々も多かった。

しかし、母親のリカルダ・ルークさんは、シャニさんは頭部に重症を負い、ガザ地区にある病院に入院しているとの情報を得たことを明かしていた。ハマスによる人質の解放が始まると、家族たちは、「なぜアメリカはカタールと接触して捕虜を解放できたのに、ドイツは解放できなかったのか?」とドイツのタブロイド紙『ビルト』で自国の対応を批判していた。

「リカルダさんは、10月8日夜にシャニさんのクレジットカードがガザ地区で使われたという報告を銀行から受けたとも伝えていました。ただ、イスラエル側もハマス側もそれぞれの思惑のもとで意図的なメディア露出をしている可能性があり、情報が錯綜している状況が続いています。

 娘の生存情報を得てから進展がなく、10月20日、リカルダさんは『ビルト』に再び登場し、『私たちは生存情報を疑い始めています。1週間以上、何も連絡がありません……』と涙ながらに語っていました」(全国紙の国際部記者)

 イスラエルの都市テルアビブのドイツ大使館前には、横断幕を持った人々が集まり、「ドイツのオラフ・ショルツ首相は、シャニさんを救わなければならない」と訴えていた。

「大使館前に集まった人々の中には、シャニさんの友人たちもおり、タトゥーアーティストだったシャニさんが彫ったタトゥーを入れた若者もいました。シャニさんの友人たちは、『ビルト』の取材に『彼女はとても自由な魂を持っている』や『彼女は自分の芸術を広めたかっただけ』と語っていました」(前出・国際部記者)

「芸術を広める」という夢を抱いた若者は、無惨な最期を迎えた。
2023.11.03 08:47 | 固定リンク | 戦争
ドニプロ川東岸でロシア軍を蹂躙
2023.11.03
ウクライナ軍が「奪還」したドニプロ川東岸でロシア軍を蹂躙

ウクライナ軍が、攻撃型ドローンでロシアの複数の装甲兵員輸送車(APC)を破壊する様子を捉えたとする新たな動画が浮上した。戦火に引き裂かれたウクライナの中で、ロシアが併合を宣言したヘルソン州南部で撮影されたという。

このXの動画は、YouTube画像の一部で、ウクライナ軍がロシア軍の複数のAPCを標的にしている。撮影場所は、ロシアが実効支配するドニプロ川東岸にあるクリンキー村の近くとされている。もしそうだとすれば、ウクライナ軍が今まさにロシアから奪還しようとしている戦場だ。

攻撃型ドローンを駆使する航空偵察部隊「マジャールの鳥」を率いるロベルト・ブロブディ(コールサイン「マジャール」)が10月29日にYouTubeに投稿した動画では、さらに多くのロシア軍車両が、ウクライナのドローンの餌食になっているように見える。

ウクライナが反転攻勢を開始して以降の数カ月、激戦地はおおむね、同国東部ドネツク州および南部ザポリージャ州に集中している。ロシアは2022年9月、ドネツクとザポリージャ、ルハンシク、ヘルソンの4州を公式に「併合」したが、ウクライナ南部および東部に位置するこれらの地域を完全に掌握しているわけではない。

なかでも最近になって注目が集まっているのがヘルソン州だ。アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は10月28日付のレポートで、ドニプロ川東岸の河岸から約2キロのクリンキ村にウクライナ軍が「拠点を維持している」と述べた。ISWによれば、ウクライナ軍は10月中旬にロシア側が支配する東岸への渡河作戦を行った。難しいと言われた渡河が成功した上、対岸に拠点を築きつつあるようだ。

ウクライナ南部ではドニプロ川が、現在の戦闘の最前線だ。ロシア側は川の東側を支配しているが、それも2022年11月にここまで撤退させられた結果だ。

ウクライナ軍は、東岸地域に対する渡河作戦を複数回実施したと考えられている。ロシアが実効支配する村々に、より確実な足がかりを得ることを目指した行動だ。

10月20日付のニューヨーク・タイムズが伝えたところによると、ウクライナ軍が取り返したヘルソン市当局の広報を担当するオレクサンドル・トロコニコウは、ウクライナ軍部隊は、東岸に「海兵隊員などの兵員を上陸させるべく、絶え間なく努力を続けている」と述べたという。

ロシアの軍事ブロガーも、ウクライナが橋頭堡をドニプロ川東岸に築いたことを認めていると、戦争研究所は29日の報告で指摘していた。

ウクライナがロシア軍のT-90戦車をFPV(一人称視点)ドローンで破壊する劇的な瞬間を捉えた新たな動画が公開され、注目を集めている。ウクライナの戦場では、低コストで乗組員不要のドローンを使った攻撃が主流となっている。

開戦から18カ月以上が経つ今も、ロシアとウクライナの間では激しい制空権奪取戦が続いている。その一端をのぞかせる珍しい映像が浮上した。

10月24日にロシアとウクライナの戦争に関する情報を扱っているテレグラムチャンネル「Karymat」に投稿され、ソーシャルメディア上で共有された動画には、ウクライナ空軍の旧ソ連製スホーイSu27らしき戦闘機が標的に向けてミサイルを発射して飛び去る様子が映っている。この戦闘機の標的が何だったかは不明だが、Karymatチャンネルは、「敵の空中目標」に向けて「空対空ミサイル」を発射したと説明している。

ロシアがウクライナに本格侵攻してから18カ月以上が経つが、両国は今も激しい空中戦を繰り広げている。

ロシア軍にとって、侵攻後すぐにウクライナの制空権を掌握できなかったことは、最大の失敗のひとつだ。

ロシア軍の巡航ミサイルやドローンは今も、ウクライナ上空を飛行して各地の標的を攻撃しているが、ロシア空軍の航空機が危険を冒してウクライナ内陸部深くに飛行していくことは滅多にない。米国製の地対空ミサイル「パトリオット」など、西側諸国が供与した防空システムがウクライナに到着していることで、ロシア側にとって危険は増す一方だ。

■ATACMSでロシアの損失拡大

戦争中の兵器類の損失を集計するオランダのオープンソース調査会社「Oryx」によれば、2022年2月24日の本格侵攻以降、ロシア軍の航空機85機が破壊され、さらに8機が損傷を受けた。この中にはスホーイSu25近接支援用攻撃機30機、スホーイSu30SM多用途戦闘機11機とスホーイSu34戦闘爆撃機21機が含まれている。

このほかにもヘリコプター102機が破壊され、28機が損傷し、2機が鹵獲された。この多くが、ウクライナ東部のルハンシクと南部のベルジャンシクにあるロシア軍の拠点に対して、ウクライナ軍が初めて米国製の陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)を使用した際のものだ。

ウクライナ側の報告によれば、ロシア軍の損失はさらに大きく、ウクライナ軍はロシア軍の軍用機320機とヘリコプター324機を破壊したとしている。

18カ月以上にわたる戦闘はウクライナ空軍にも被害をもたらしており、ウクライナ軍が敗北する運命にあるとみられていた侵攻開始当初に、多くの経験豊富なパイロットが犠牲になった。ウクライナ空軍は航空機やパイロットの数でロシア空軍に劣っており、それらを失うことは戦略的により大きな痛手となる。

Oryxによれば、2022年2月以降にウクライナ軍の航空機75機が破壊され、1機が損傷し、1機が捕獲された。この中にはミグ29戦闘機22機、スホーイSu27戦闘機12機とスホーイSu25近接支援用攻撃機17機が含まれている。

ウクライナ空軍が保有する航空機は多くがソビエト時代のものだが、ウクライナは近いうちに、NATOの戦闘機導入による航空隊の強化が実現することを期待している。アメリカ、デンマークなど11カ国による国家連合が、ウクライナに米国製F16戦闘機の訓練を提供。10月からアリゾナ州のモリス州兵空軍基地で訓練を開始した。

■東部でロ軍に多大損害「ゼレンスキー大統領」

ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、ロシア軍が攻勢を仕掛けている東部ドネツク州でロシア側に多大な損害を与えたと明らかにし、南部戦線では攻撃を続けていると主張した。オランダのオロングレン国防相と首都キーウ(キエフ)で会談し、各国が重要兵器の供与を決断する後押しをしたとして、謝意を示した。大統領府などが発表した。

英国防省は2日、ウクライナ軍の攻撃でロシアが先週、長距離地対空ミサイルの発射装置を少なくとも4基失った恐れがあるとの分析を発表。損失により、ロシア側の防空が弱まる可能性があるとの考えを示した。クリミア半島でも地対空ミサイル関連設備が損傷したと指摘。
2023.11.03 08:13 | 固定リンク | 戦争

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