財界訪中団「本当はどうだったの?」
2024.02.14
財界団の訪中では3点について「見直すよう要望」 しかし完全に無視された

日本財界訪中団は、2024年1月24日から26日まで中国を訪問し、中国政府の幹部や経済界の代表と意見交換を行いました。訪中団は、日本経済団体連合会(経団連)、日本商工会議所、日本貿易会、日中経済協会の4団体から約50人が参加し、経団連会長の中西宏明氏が団長を務めました。訪中団は、中国の経済発展や新型コロナウイルスの対策に評価を示すとともに、日中関係の改善や経済協力の強化を呼びかけました。

訪中団は、中国側に対して、以下の3点について改善を求めました。

中国の改正反スパイ法の運用について、透明性と予測可能性を確保し、日本企業の正常なビジネス活動に影響を与えないようにすること。

日本人のビザなし渡航について、新型コロナウイルスの感染状況に応じて、早期に再開すること。

日本産水産物の輸入禁止措置について、科学的根拠に基づいて、直ちに撤廃すること。

しかし、中国側はこれらの要求に対して、具体的な回答を示しませんでした。中国の国家安全部は、改正反スパイ法は「適時、適切、適度」なものであり、外部勢力による中傷に屈しないとの立場を改めて表明しました。

中国の税関総署は、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に反発し、日本産水産物の輸入を全面的に停止すると発表しました。日本人のビザなし渡航についても、中国側は感染防止の観点から慎重な姿勢を崩しませんでした。

訪中団の活動は、中国共産党機関紙・人民日報にも大きく取り上げられました。人民日報は、1月27日付の3面に「日本財界訪中団との意見交換会が開催される」という見出しで、約半ページにわたって記事を掲載しました。

記事は、中国側の幹部の発言を中心に紹介し、日中関係の発展や経済協力の重要性を強調しました。日本側の要求については、ほとんど触れられませんでした。

以上のことから、日本財界訪中団は、中国との対話を継続することで、日中関係の改善や経済協力の強化に寄与しようとしたと言えます。しかし、中国側は、反スパイ法や処理水放出などの問題について、日本側の懸念に配慮する姿勢を見せませんでした。日中関係は、依然として多くの課題を抱えたままであり、両国の財界は、政治的な障壁を乗り越えて、経済交流を推進する必要があります。

■改正反スパイ法は「適時、適切、適度」と反論

中国の国家安全部は2月1日、メッセンジャーアプリ「微信」上の公式アカウントで「『反スパイ法』の改正は適時、適切、適度なもの」との文章を発表した。一部の外部勢力が中国の正常な反スパイ活動を歪曲(わいきょく)し中傷しているとして、改正反スパイ法の正当性を述べたもの。同文章は英語版も同時に発表されている。

第1に「改正のきっかけが適時」として、現在のスパイ活動の取り締まりは、活動主体の多元化、目的の複雑化、分野の広範化、手段の隠蔽(いんぺい)などにより難しさを増しており、改正反スパイ法は新たな情勢に適応するものだとした。その上で、(改正後に)米国の中央情報局(CIA)や英国の秘密情報部(MI6)の中国に対するスパイ活動を取り締まったとして、改正反スパイ法は、国家安全を守るための法律上の有力な武器を提供したとした。

第2に「立法という形式が適切」として、立法によりスパイ活動を防ぎ、国家の安全を守ることは国際的に広く行われているとした。その上で、米国、英国、フランス、ロシアなどのスパイ関連法案を挙げ、スパイ行為の予防・取り締まりのために法律を制定し、国家秘密漏洩(ろうえい)を防止し国家安全を守ることは「大国としてのスタンダード」だとした。

第3に「法律による権限の付与が適度」として、改正は中国内の法律を厳格に順守し、手続きも規定に沿ったもので、権限と責任が明らかであり、中国の立法活動の公正・透明さと明確さを体現したものだとした。改正手続きにおいて、一般への意見募集のほか、座談会や討論会、第一線の法執行の現場への調査などを通じて広く意見を求め、審議は「立法法」の規定に厳格に沿って行われたとした。

また、改正によりスパイ行為の定義をより明確にし、反スパイ法の執行と監督責任が強化されたとした。同時に、人権の保障と尊重、個人と組織の合法的な権利を保障することが明確に規定され、国による法執行のルールや審査プロセスがより明確となり、国家安全機関による法執行への監督が強化されたとした。

■日本産水産物の輸入を全面停止

日本の経済界の代表団は、1月25日に中国の李強首相と会談し、日本産水産物の輸入停止措置の撤廃を求めました。 この措置は、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に反対する中国が、昨年8月に突然発表したものです。 日本側は、処理水の放出は国際基準に従って行われると説明し、客観的で科学的な根拠に基づく貿易を求めました。

また、日本のビジネス界の懸念を伝えるとともに、ビザなし渡航の再開や、改正反スパイ法の運用の透明化も要請しました。 李首相は、日中関係の改善に向けて協力する姿勢を示し、経済交流の促進やビザ発給の簡素化について検討すると応じました。

しかし、処理水の問題については、中国の立場を変えないとの見方が強いです。 中国は、処理水の放出は環境や人の健康に重大な影響を及ぼすと主張し、国際社会にも反対を呼びかけています。 日本産水産物の輸入停止は、中国の国内世論をなだめるための措置とも見られています。 日本の水産物の輸出額は、2022年に前年比25.1%増の2,782億円で、そのうち中国向けは871億円でした。 中国は日本にとって最大の農林水産物・食品の輸出相手国であり、輸入停止は日本の水産業に大きな打撃を与えています。 日本は、中国に対して、科学的な根拠に基づいた貿易の再開を引き続き働きかける方針です。

人民日報での露骨な軽視

■きれいに無視されました

日本国内の報道によると、中国国家発展改革委員会・商務省幹部との会談では、訪中団は「反スパイ法」運用の「改善」を求め、日本人のビザなし渡航の再開も中国側に求めたという。そして李首相との会談では、訪中団が日本産海産物の禁輸解除を求める提言書を提出したと報じられている。

「反スパイ法の運用改善」、「ビザなし渡航の再開」、そして「日本産海産物の禁輸解除」という三点セットが、訪中にあたっての日本側の基本的要求であることが分かる。この経済訪中団は、まさにこの三つの要求を中国政府に聞き入れてくれるために北京を訪れたはずである。

しかし、日本の訪中団からのこの三つの要求に対し、中国政府の示した反応は全くの無反応、つまり「ゼロ回答」であった。訪中団に関する中国側の公式発表と報道では、日本側が前述の諸要求を出した事実に対する言及すら全くない。つまり日本側の要求が完全に無視されて「なかった」ことにされている。

ゼロ回答に「熱意を感じる」?

もちろん日本側の報道を見ても、中国政府が日本側の要求に一切応じていなかったことは分かる。例えば1月25日に配信された共同通信の関連記事は、そのタイトルがズバリ、「経済界訪中団、李強首相に提言書、水産物禁輸解除、明確回答なし」である。

そして1月26日に流されたテレ朝ニュースは、「北京を訪れている経済界の代表団は、李強首相のほか商務相らと会談しました。日本側からは、ビザなし渡航の再開や食品輸入規制の緩和を求めるとともに反スパイ法への懸念などを伝えましたが、具体的な進展はなかった」と伝えている。

つまり日本の経済訪中団は、三つの要求をぶら下げて北京へ乗り込んだのに、中国政府からは「ゼロ回答」を食らっただけで成果を何一つ挙げられなかった。


にもかかわらず経団連の十倉会長は北京で開かれた「総括会見」で、「中国側の日本に対する期待や日中経済関係の一層の緊密化に向けた熱意を感じることができた」と語っている。結局、実体のない「熱意」を勝手に感じたことは、日本の経済訪中団が手に入れた唯一の「成果」だったのである。

その一方、日本の経済団体トップが揃っての訪中に対し、中国政府は全体的に冷ややかな態度であった。それは、25日の李強首相と訪中団会談に対する共産党機関紙の人民日報の取り扱いにははっきりと現れている。

李首相と外国からの賓客との会談記事は普段、人民日報の一面に載せられることは多いが、26日の人民日報は何と、李首相と日本訪中団との会談記事を三面に掲載した。文字通りの「三面記事扱い」である。

実は同じ25日、李首相の部下にあたる丁薛祥筆頭副首相が世界銀行の執行理事らと北京で会談したが、この会談の記事は26日の人民日報で一面掲載、三面掲載の李首相会談記事と大差を付けられている。

慣例と格式から大きく外れたこのような取り扱いは明らかに、日本の経済訪中団に対する中国政府の軽視・軽蔑の現れであろうが、その一方、人民日報の関連記事は文中、李首相との会談における「日本経済三団体責任者」の発言をこう伝えている。「中国は世界経済の発展を牽引する重要な原動力。中国経済は健全にして安定なる発展を保っており、日本の経済界は大変鼓舞されている」と。

ここまで尻尾を振ったのに

今の時点で、「中国経済は健全にして安定なる発展を保っている」云々とは、まさに事実無視の戯言というしかないが、それも結局、訪中団の責任者たちが自国の経済難局を認めたくない中国政府に迎合して無責任なお世辞言葉を発しただけのことであろう。

中国の税関総署は8月24日、「日本水産物の輸入全面停止に関する公告」(税関総署公告2023年第103号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、原産地を日本とする水産物(食用水生動物を含む)の輸入を全面的に停止すると発表した。停止は即日有効となる。

輸入停止の理由は、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水(注)の海洋放出による食品への放射線汚染リスクを防ぎ、中国の消費者の健康と輸入食品の安全を確保するためとしている。

2021年以降、日本にとって中国は世界1位の農林水産物・食品の輸出相手国となっている。農林水産省によれば、2022年の日本から中国への農林水産物・食品の輸出額は前年比25.1%増の2,782億円で、全体の20.8%を占めた。中国向け輸出額のうち水産物は871億円、品目別ではホタテ貝が467億円、なまこ(調製)が79億円、かつお・まぐろ類が40億円となっている。

実は習近平政権は昨年年末から、究極の「経済振興策」として「中国経済光明論を大いに唱えよう」とする宣伝工作を進め始めた。上述の経済訪中団トップたちの発言は、捉えるようによってはまさに北京政府の宣伝工作に加担したものであろうと解釈することもできよう。

言ってみれば日本の経済団体の最高幹部たちは北京へ行って、中国政府に馬鹿にされて要求を一蹴されながらも、習近平政権の幇間役を喜んで務め、媚びの限りを尽くして帰ってきている。まさに馬鹿馬鹿しくて情けない限りである。
2024.02.14 22:24 | 固定リンク | 経済
南極に血の滝とは「何なんだ?」
2024.02.14
南極大陸のテイラー氷河から流れ出る赤い水「血の滝」がとうとう解明された。氷からしみ出した鉄塩が空気に触れると赤くなるのだ。 2017年の研究で、テイラー氷河がおよそ200万年前に形成され、その下に塩水の湖が閉じ込められたことが明らかになった。

南極大陸の血の滝の謎を解明

南極大陸の東南極にあるヴィクトリアランドには、テイラー氷河という氷河があります。この氷河の先端部からは、鮮やかな赤い色の水が流れ出しており、その様子はまるで血のように見えます。この現象は「血の滝」と呼ばれており、長年にわたって多くの人々の関心を引いてきました。しかし、なぜこの水が赤いのか、なぜ凍らずに流れることができるのかは、これまで謎とされてきました。

最新のレーダー調査によって明らかになった、血の滝の成因とメカニズムについて紹介します。

血の滝の成因

血の滝の水は、鉄分を豊富に含んだ塩水であることが分かっています。この塩水は、氷河の下に存在する古代の海水が、氷河の影響で塩分が濃縮されたものです。この塩水に含まれる鉄分は、2価の鉄イオン(Fe 2+ )であり、これが氷河の中から地上に湧出すると、大気中の酸素と接することで酸化され、酸化第2鉄(Fe 2 O 3 )となります。Fe 2 O 3 は赤い色をしており、水には溶解せずに沈殿するため、氷の表面に赤い沈殿物が付着します。この沈殿物が血の滝の赤い色の原因です。

血の滝のメカニズム

血の滝の水は、なぜ凍らずに流れることができるのでしょうか。これは、塩水の性質と氷河の構造によって説明できます。塩水は純水よりも凝固点が低く、また凍結するときに熱を放出するために周囲の氷を解かします。これによって、塩水は液状に保たれ、氷河の内部やその下の環境で流れることができます。また、テイラー氷河は基盤岩に凍り付いていないという特徴があります。これは、氷河の下に存在する高い塩分濃度の水が、水の凝固点降下を起こしたためです。

この水は、氷河に走る大小さまざまな亀裂を通じて、氷河に流れ込みます。そして、塩水が凍結し始めると、そこで発生する凝固潜熱によって周囲の氷が温められると同時に、亀裂中央の塩水の濃度が上昇します。このようにして、テイラー氷河は流水を維持する仕組みを有しており、また流水を内包する世界で最も冷たい氷河であると言えます。

血の滝の水は、鉄分を豊富に含んだ塩水であり、その鉄分が酸化されて赤い沈殿物を形成することで、血のような色に見えます。また、塩水は凝固点が低く、凍結するときに熱を放出することで、氷河の内部やその下で液状に保たれ、流れることができます。血の滝は、南極の氷河の下に隠された古代の海水や微生物の生態系など、地球の歴史や生命の多様性に関する貴重な情報を提供してくれる珍しい現象です。

「血の滝」とは、南極大陸のテイラー氷河から流れ出る赤い水のことです。この水の色や流れる仕組みは、長年にわたって謎とされてきましたが、最近の研究によってその真相が明らかになりました。

「血の滝」は、1911年にオーストラリアの地質学者トーマス・グリフィス・テイラーによって発見されました1。当時は、水中に生息する紅藻類が水を赤く染めていると考えられていました。

2017年に、アメリカの科学者グループがレーダーを用いて氷河の下の層をスキャンし、血の滝の原因を突き止めました3。彼らは、氷河の下に塩水の湖と河川のネットワークが存在し、その水が氷河の亀裂から流れ出していることを発見しました。

氷河の下の塩水は、約200万年前に氷河が形成されたときに閉じ込められたもので、鉄分を多く含んでいます4。この鉄分が空気に触れると酸化されて赤くなり、水に色を付けています。

塩分

塩水は、塩分の高さと凍結するときに発生する熱(潜熱)によって、液体の状態を保っています4。この熱は周囲の氷を溶かし、水が流れることを可能にしています。テイラー氷河は、水が流れる最も冷たい氷河と言えます。

血の滝の水には、微生物も含まれています。これらの微生物は、氷河の下の暗く寒い環境で、何百万年も生き続けています。彼らは、鉄や硫黄などの無機物を分解してエネルギーを得ています。このような生態系は、地球外の厳しい環境にも存在する可能性があります。

以上が、「血の滝」の謎に関する最新の研究成果です。南極の氷河の下には、まだ知られていない秘密が隠されているかもしれません。血の滝は、地球の驚異的な自然現象の一つと言えるでしょう。

■南極で「血の滝」が発生するメカニズムを科学者が解明

「血の滝」とは、南極大陸のテイラー氷河からにじみ出る鮮やかな赤色の水の滝のことをいう。

その独特の色は、氷からしみ出た鉄塩が酸素に触れて赤くなることによる。

この滝には、光も酸素もない極限状態を生き抜く微生物が生息している。

南極の大きな氷河では、氷からにじみ出るように真っ赤な川ができ、「血の滝」と名付けられている。南極大陸のテイラー氷河からボニー湖へ、なぜ赤みがかった水が流れ出るのか、科学者たちは何十年も頭を悩ませてきた。

この現象は、1911年に地質学者グリフィス・テイラー(Griffith Taylor)によって初めて発見された。当時は、水中に生息する紅藻類がこの鮮やかな赤い色の原因だと考えられていた。

それから100年以上が経ち、科学者たちは血の滝の原因を突き止めた。氷からしみ出した鉄塩が空気に触れると赤くなるのだ。

2017年の研究で、テイラー氷河がおよそ200万年前に形成され、その下に塩水の湖が閉じ込められたことが明らかになった。その後、古代の湖は氷河の端に達し、塩水をしみ出させるようになったのだ。

2015年の研究では、氷透過型レーダーを用い、氷河の割れ目から流れる川のネットワークが発見された。つまり、極寒の氷河の内部に液体の水が存在しうるということだ。

「意外かもしれないが、水は凍る時に熱を放出し、その熱は周囲の冷たい氷を温める」と、アラスカ大学フェアバンクス校の氷河学者で、2017年の研究の共同執筆者であるエリン・ペティット(Erin Pettit)はプレスリリースで述べている。「この熱と、塩分を含んだ水の凝固点が低いことにより、液体のまま流れ出ることが可能になる。テイラー氷河は、現在知られている持続的な水の流れのある氷河の中で、最も冷たい氷河だ」

2009年の研究では、この氷底湖には、光も酸素もない極限状態を生き抜くことができるユニークな微生物群が生息していることが判明した。光も酸素もない極限状態を生き抜くために、鉄と硫酸塩を利用しているのだ。


約200万年前に氷河の下に閉じ込められた湖は、微生物で満ちていたと研究者は考えている。

微生物学者で、2009年の研究の筆頭筆者であるジル・ミクッキ(Jill Mikucki)は、「ここでの大きな疑問は『氷河の下で生態系はどのように機能しているのか』『いかにして数百メートルもの厚さの氷の下の、常に冷たく暗い環境で、長年にわたって(血の滝の場合は200万年以上)生きていけるのだろうか?』ということだ」とプレスリリースで述べている。

科学者たちは、これらの微生物の研究が宇宙生物学も発展させると考えている。同じような凍った水のある別の世界、例えば地球の隣人ともいえる火星などで、生命がどのように生存できるかということに光を当てることができるだろう。

■微生物たちのサバイバルの跡

 南極大陸の氷河からほとばしる血のような色をした水の流れが、先史時代から氷の下に閉じ込められてきた微生物たちのサバイバルの跡であることがわかった。 南極にあるテイラー氷河からは“血の滝”と呼ばれる鉄さび色の水が流れ出しているが、最新の研究によると、この氷河が海に張り出していた150~400万年前に海水とともに閉じ込められた微生物たちが、生きるために数百万年にわたって鉄分を分解してきたという。“血の滝”のショッキングな色合いは、顕微鏡でしか見えないほど小さな微生物の活動の結果であることが明らかになった。

“血の滝”の存在は何十年も前から研究者らの興味を引き付けてきた。というのも、この水の流れはおかしなことに、南極で最も乾燥した「ドライバレー」という地域から流出しているからである。

「ドライバレーは褐色の大地が広がる場所で、白い氷原に青い空という地点もあるが、そこからは真っ赤な滝が流れ出しており、非常に興味深い土地だ」と、研究を率いたダートマス大学のジル・ミクキ氏は語る。

 テイラー氷河から流れ出す水は鉄分を多く含み、非常に塩辛いことから、海水が濃縮したものであると考えられている。研究チームが噴出したばかりの水を少量採取して分析すると、微生物のものと思われるタンパク質が含まれていることがわかった。

 微生物たちは太古の昔に氷の下に閉じ込められて以来、完全に孤立した状態にあったようだ。氷の下400メートルという環境では光合成に必要な太陽の光も届かず、周囲に食料源も存在しない。そのような状況で生き長らえた理由は、微生物に硫黄と鉄分の化学反応でエネルギーを得る能力があったからだと研究では指摘している。

 移動する氷河が鉄分を豊富に含む岩盤を徐々に削り取り、その鉄分を水中の微生物がさらに分解して“血の滝”と呼ぶに相応しい色合いを与えていた。

 採取した水には、硫黄を多く含んだ硫酸塩化合物が混じっていることも明らかになった。これは、この水が海水の一部だったころから含有されていたものであると研究ではまとめられている。

「微生物が獲得したこのようなエネルギーの生成方法は、それ自体は珍しいことではないかもしれない。だが、太古の時代にあった全球凍結(スノーボールアース)という非常に厳しい氷河時代には、このような創造的な方法でエネルギーを得ることが、生存に役立っていたのかもしれない」と、同氏は話す。

 およそ7億年前に起こった全球凍結の時代には、地球全体が周期的に厚い氷の層に覆われ、海中には大量の鉄分が供給されたと推定されている。
2024.02.14 16:09 | 固定リンク | 化学
ロシア密告の嵐!!
2024.02.14
ロシアで増える密告……同僚でも他人でも 国のためか怨恨か

密告の動機は様々ですが、以下のようなものがあります。

国のためや勝利のためという愛国心やナショナリズム

経済的な安定や利益の追求

個人的な恨みや不満の解消

自分の身を守るための裏切り

これらの動機は、ロシアの政治的・社会的な状況に影響されています。

例えば、ウクライナとの戦争や新型コロナウイルスの感染拡大などの危機に直面したロシアでは、プーチン大統領の権威を支えるために、反政府的な発言や行動を厳しく取り締まる傾向が強まっています。

このような状況では、密告は国家の敵を排除する手段として正当化されたり、報奨されたりすることがあります。

また、ロシアの経済は不安定で、多くの人々が貧困や失業に苦しんでいます。このような状況では、密告は自分の生活を改善する手段として利用されたり、競争相手を排除する手段として利用されたりすることがあります。

さらに、ロシアの社会は相互不信や分断に満ちています。このような状況では、密告は自分の感情を発散する手段として利用されたり、自分の立場を守る手段として利用されたりすることがあります。


(左から)ロシア人のタティアナ・チェルヴェンコさん、アレクサンドラ・アルヒポワさん、ヤロスラフ・レフチェンコさんはそれぞれ、自分と同じロシア人に密告された

今でも「密告屋」

ソヴィエト連邦時代のロシアでは、隣近所の人や同僚や、赤の他人でさえ、当局に密告するのは普通のことだった。それが今では、ウクライナでの戦争に批判的な国民をロシア当局が厳しく取り締まる中で、誰かが気に食わないとか、自分には政治的な主義主張があるのだなど、様々な理由から、他人を密告するロシア人が増えている。

「うちは、祖父が密告が得意だったので、どうすればいいか私は祖父に教わりました」

「アンナ・コロブコワ」を名乗る女性はこう話す。ロシアの大都市に住んでいるそうだが、具体的にどこかは明らかにしなかった。

そのコロブコワさんの祖父はスターリン時代、ソ連の秘密警察に匿名で情報提供をしていたのだという。当時は、他人を密告したり糾弾したりすることは日常生活の一部だったし、孫娘も今や祖父のあとを継いでいる。

彼女は今では、ウクライナでの戦争に批判的だと思う相手は誰だろうと、片端から通報している。

密告屋を自認

ロシアによるウクライナ全面侵攻が始まって以来、自分は1397通の通報文を書いたと、コロブコワさんは言う。自分の通報によって、大勢が罰金を科せられ、解雇され、「外国の代理人」のレッテルを貼られたという。

「気の毒とは思わない」と、コロブコワさんは明かす。「私が通報したおかげで罰せられたなら、とてもうれしい」。

2022年2月にロシアがウクライナに侵攻してから間もなく、新しい検閲制度が法制化された。それ以来、コロブコワさんは暇を見つけてはオンラインで過ごし、「ロシア軍の信用を傷つけた」と思う人たちを次々と通報している。今の制度では、「ロシア軍の信用を毀損(きそん)」した罪で有罪となれば、最高5万ルーブル(約8万円)の罰金か、2回以上の再犯の場合は最高5年間の禁錮刑の罰を受ける。

コロブコワさんは私の取材に対して非常に慎重で、メールでのやり取りにしか応じなかった。自分の顔を出すのはいやで、自分の身元を証明するものも提示したくないと力説した。なぜかというと、「殺してやる」と脅されることが多く、自分の個人情報がハッキングされたり盗まれたりするのが怖いからだという。

では、なぜ自分と同じロシア市民について、密告するのか。動機は二つあるという。

第一に、ロシアがウクライナに打ち勝つための手助けを、自分はしているのだと。そして第二に、自分の経済的安定の助けにもなるからだと。

コロブコワさんは独り暮らしで、人文系の教授としてパートタイムで働いているという。貯金を取り崩しながらなんとか、やりくりしているのだと。もしも戦争でウクライナが有利になれば、ロシアは賠償金を払う羽目になり、そんなことになれば国全体と国民全員の経済状態が打撃を受けかねないと、心配しているのだと話す。

「特別軍事作戦に反対する全員が、私の安全と生活にとって、敵です」。こう言うコロブコワさんにとって、ウクライナの勝利は自分の敗北を意味する。

「貯金がなくなって、フルタイムの仕事を見つけなくてはならなくなる」

政府から離れて活動するロシアの独立系人権団体「OVD-インフォ」によると、新しい検閲法が制定されて以来、軍を批判した疑いで8000件以上の事案が立件されているという。

密告の標的

コロブコワさんが通報するのは主に、マスコミに話をする人たちだ。特に、BBCなどの外国メディアの取材に応じる人たちを、標的としている。人類学者のアレクサンドラ・アルヒポワさんも、コロブコワさんに通報された一人だ。


アレクサンドラ・アルヒポワさんは人類学者として、ロシアで密告が再燃している現状を研究している

「彼女はもう7回、私のことを通報しています」とアルヒポワさんは話す。「密告文を書くことがあの人にとって、当局とやりとりする手段で、それが自分の使命だと思っている」。

「自分にぴったりな、得意なことを見つけたんでしょう。彼女に糾弾されると、専門家や研究者は往々にして、黙るしかなくなる」

アルヒポワさんは今や亡命中だ。自分が昨年5月にロシア国内法に基づき「外国の代理人」と認定されたことと、コロブコワさんの行動は、無縁ではないかもしれないと思っている。

「彼女に通報された私の友人たちは、もう一切、マスコミに話をしなくなりました。なので、彼女は成功したと言えるでしょう。任務完了です」

もう一人、標的にされたのは、タティアナ・チェルヴェンコさんというモスクワの教師だった。

ロシア政府が2022年9月に愛国教育を導入した際、チェルヴェンコさんは独立系メディア「ドシチ(TV Rain)」で、自分は代わりに数学を教えることにしたと発言した。「ドシチ」はその後、ロシア国内では閉鎖され、今ではオランダを拠点にしている。

「ドシチ」のインタビューを見たコロブコワさんは、チェルヴェンコさんを攻撃し始めた。チェルヴェンコさんの勤務先に苦情を繰り返し、モスクワの教育当局やロシアの子どもの権利当局にもクレームを重ねた。

結果的にチェルヴェンコさんは、2022年12月に解雇された。


タティアナ・チェルヴェンコさんは、自分が教職を追われたのは、通報・糾弾されたからだと言う

コロブコワさんは自分のしたことを、何も後悔していない様子だ。それどころか、自分が通報した人たちのデータベースを作り、その結果どうなったかも記録している。

自分の通報の結果、6人が解雇されたほか、15人が罰金処分を受けたのだという。

コロブコワさんは、ロシア国家の敵だと思う相手しか自分は相手にしていないと力説する。しかし、ロシア国内には個人的な恨みつらみを晴らすために通報している人もいるという話が、BBCに寄せられている。

密告で投獄され、自由を求め

漁師のヤロスラフ・レフチェンコさんは、ロシア極東のカムチャッカ半島出身だ。

半島は火山と珍しい野生動物で有名なだけでなく、ロシア軍が重点配備されていることでも知られる。

この地域に住む人たちの多くは、ウラジーミル・プーチン大統領を支持している。レフチェンコさんの同僚たちもそうだ。


ヤロスラフ・レフチェンコさん

2023年2月のことだ。レフチェンコさんの漁船は1カ月の航海を終えて、カムチャッカの港に戻った。仲間の漁師に酒を勧められたが、断った。相手の男は以前から自分に不満があったらしいと、レフチェンコさんは言う。酒を断ったことから口論になり、レフチェンコさんは頭をびんで殴られ、意識が戻った時には病院にいた。

退院が許され、被害届を出そうと警察署へ行くと、通報されていたのはむしろ自分の方だと知らされた。暴行ではなく、反戦思想を理由に。愕然(がくぜん)とした。

レフチェンコさんに警察は、彼を殴った同僚を訴えられるほどの証拠がないと告げたのだという。

やがて7月13日になり、レフチェンコさんは逮捕された。BBCが確認した裁判資料によると、問われている罪状はテロの正当化だ。そんなことはしていないと否定するレフチェンコさんは、公判開始前という理由で勾留された。

BBCと連絡をとるには、弁護士に手紙を託すしか方法がない。「私が他の船員に暴力をはたらいたと、捜査員たちは言う(中略)そして、ロシア連邦に対して敵対行為をするつもりだと、私がそう話していたことになっている」と、レフチェンコさんは私たちに書いた。


レフチェンコさんはテロを正当化した罪に問われている。本人は否認している

レフチェンコさんの友人たちは、相手の船員が自分の暴力行為をごまかし、警察の目をそらすために、彼が通報したのだろうと、私に話した。漁船内での飲酒は禁止されているのに、酒を勧めたことも、相手の男はごまかそうとしているのだろうと。

「自分はただ家に戻りたい」と、レフチェンコさんは言う。「自分の牢(ろう)では、何重もの鉄格子の向こうにかろうじて、空がぎりぎり少し見えるだけで、こんなことは耐えられない」。彼がこう友人に書き送った手紙を、その友人がBBCに見せてくれた。

「果てしない訴え」

戦争が始まって以来、あまりに大量の通報が次々とくるため対応しきれないのだと、ロシア警察は認めている。「誰かがロシア軍を批判したという訴えが、延々と届く」ため、警察はその捜査と対応に多くの時間を割いているのだと、警察関係者はBBCに匿名で明らかにした。

「特別軍事作戦」をめぐり「何かしら他人を攻撃したい人たちが、常に言いがかりの口実を探している」のだと、引退間もない警官がBBCに話した。

「おかげで、たとえ具体的な中身のある本物の案件がいざ来ても、捜査しようにも人手がない。みんな、ウクライナの旗に見えるカーテンを見たという、どこかのおばあちゃんの話を確認しに、出払ってしまっているので」

プーチン大統領は、「裏切り者を罰せよ」と繰り返している。そして、ウクライナでの戦争に終わりは全く見えない。それだけに、コロブコワさんのような常習的な密告者も、ほかの市民について密告するのを全くやめようとしない。

ロシア、米ロの二重国籍の女性を拘束 ウクライナ支援が「国家反逆」


ロシア中部エカテリンブルクでロシア連邦保安局(FSB)に拘束されたとみられる女性

ロシア連邦保安局(FSB)は20日、ウクライナ軍に資金支援をしたとして、ロシアと米国の二重国籍の女性(33)を拘束した。ロシアの安全保障に反するとして国家反逆罪で捜査するという。米国が反発する可能性がある。

FSBによると、女性は米ロサンゼルス在住で、ロシア中部エカテリンブルクで拘束された。侵攻が始まった2022年2月からウクライナの組織のために資金を集めて送金。FSBは、弾薬や武器などの購入に使われたと主張している。米国でもウクライナを支援する活動に何回も参加したとしている。

エカテリンブルクでは昨年3月、国家機密を収集していたとして、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシュコビッチ記者がFSBに拘束され、いまも勾留が続いている。
2024.02.14 15:59 | 固定リンク | 戦争
二階元幹事長「50億円」どうなってるの?
2024.02.13
二階元幹事長「50億献金」説明責任なしの問題点と今後の展望

はじめに

二階俊博元幹事長は、自民党の政策活動費として、企業団体から約50億円の献金を受け取っていたことが報道されています。

この政策活動費の使い道は不明で、野党からの追及に対しても、二階氏は「適切に使用した」としか答えていません。この問題は、政治と金のスキャンダルとして、国会や世論の注目を集めています。

背景と現状

政策活動費とは、政党が政治家個人に配る政治資金の一種である。政策活動費は、政治資金規正法に基づき、政党が政治家に対して支出することができる。政策活動費の支出額は、政党の収支報告書に記載されるが、受け取った政治家は、使途を政治資金収支報告書に記載する必要がない。そのため、政策活動費の使い道は不透明であり、政治家の裁量に委ねられている。

二階氏は、2016年から2020年までの5年間に、自民党から政策活動費として、約50億円を受け取っていたことが、自民党の収支報告書から判明した。これは、自民党の政策活動費の約3割に相当する。二階氏は、この政策活動費をどのように使ったかを明らかにしていない。また、政策活動費は、使い切らないと課税対象になるため、二階氏が全額を使い切ったかどうかも不明である。

問題点と課題
この問題には、以下のような問題点と課題がある。

政治と金の不正の疑惑

二階氏が受け取った政策活動費は、一般の政治家の数百倍にも及ぶ。このような巨額の政策活動費を、どのような政治活動に使ったのか、具体的な根拠や証拠がない。これは、政治と金の不正の疑惑を招く。二階氏は、政策活費の使途を公開することで、説明責任を果たすべきである。

また、政策活動費は、使い切らないと課税対象になる。二階氏が全額を使い切ったとすれば、1時間あたり約10万円の政治活動を行っていたことになる。これは、現実的に考えにくい。二階氏が使い切らなかった場合、その残額は課税されたのか、どのように処理されたのか、明らかにする必要がある。もし、課税を逃れたり、不正に流用したりした場合、脱税や背任の罪に問われる可能性がある。

政治の信頼の低下

二階氏は、自民党の最高幹部として、政治の中枢にいる。その二階氏が、政策活動費の使い道を明らかにしないことは、国民の政治への信頼を低下させる。特に、コロナ禍で経済や社会に多大な影響を与えている中で、政治家が巨額の政治資金を不透明に使っているという印象は、国民の不満や不安を増幅させる。政治の信頼回復のためには、政策活動費の使い道を公開するだけでなく、政治資金の透明性や公正性を高める改革が必要である。

政治改革の停滞

政策活動費の問題は、政治改革の停滞を示す一例である。政治改革には、政策活動費のほかにも、企業団体献金や政治資金パーティーの全面禁止、調査研究広報滞在費の使途公開、連座制の導入など、多くの課題がある。しかし、政治改革に対する政府や与党の姿勢は、消極的である。岸田文雄首相は、政治改革について具体的な方針や計画を示さず、党内の反発を避ける態度に終始している。政治改革には、国民の声を反映し、政治家の責任や倫理を強化するリーダーシップが求められる。

二階俊博元幹事長が自民党から受け取った政策活動費が約50億円に上ることが明らかになり、野党や世論から説明責任を求められている。

政策活動費は政治資金規正法で使途の公開義務がなく、不透明な部分が多い。

岸田文雄首相は政治改革を掲げているが、具体的な内容や方針は明らかにしていない。

政治改革には、政策活動費の使途公開や連座制の導入、企業団体献金や政治資金パーティーの全面禁止などの論点がある。

二階元幹事長の「50億献金」問題の概要

二階元幹事長は、2016年から2020年までの5年間に、自民党から政策活動費として約50億円を受け取っていたことが判明した。

政策活動費は、政党が政治家個人に配る資金で、政治資金規正法では使途の記載や公開が義務付けられていない。

二階元幹事長は、政策活動費の使途について「政治活動に使っている」と述べたが、具体的な内容や領収書などの証拠は示していない。

野党は、政策活動費の使途を公開するよう求めたほか、脱税の疑いがあるとして、国税庁や検察庁に捜査を要請した。

世論調査では、政策活動費の使途公開を求める声が多く、二階元幹事長の説明責任を問う声も高かった。

政治改革の停滞と課題

岸田首相は、裏金疑惑で失った信頼の回復に向けて「火の玉になる」と決意を述べ、政治改革を掲げた。

しかし、政治改革の具体的な内容や方針は明らかにしておらず、野党や世論からの要求にも消極的に対応している。

政治改革には、政策活動費の使途公開や連座制の導入、企業団体献金や政治資金パーティーの全面禁止などの論点がある。

政策活動費の使途公開は、政治資金の透明性や説明責任を高めるために必要な措置である。

連座制の導入は、政治資金規正法違反をした議員の所属する政党にも罰則を科すことで、政党の監督機能を強化するための措置である。

企業団体献金や政治資金パーティーの全面禁止は、政治と利権の癒着や不正を防ぐための措置である。

これらの措置は、政治改革の基本的な柱として、国際的にも一般的になっている。

しかし、岸田首相は、これらの措置について、党内の反発を恐れて慎重な態度をとっており、政治改革のリーダーシップを発揮していない。

まとめ

二階元幹事長が受け取った政策活動費の使途が不透明であることは、政治資金の透明性や説明責任に欠けることを示している。

岸田首相は政治改革を掲げているが、具体的な内容や方針は明らかにしておらず、野党や世論からの要求にも消極的に対応している。

政治改革には、政策活動費の使途公開や連座制の導入、企業団体献金や政治資金パーティーの全面禁止などの論点があるが、岸田首相は党内の反発を恐れて慎重な態度をとっており、政治改革のリーダーシップを発揮していない。

政治改革の停滞は、日本の政治の信頼性や正当性を損なうだけでなく、経済や社会の発展にも悪影響を及ぼす可能性がある。

政治改革を実現するためには、岸田首相は党内の反発を抑え込んで改革姿勢をアピールするとともに、野党や世論との対話を深める必要がある。
2024.02.13 08:52 | 固定リンク | 政治
ウクライナ戦争どうなってるの?
2024.02.11
ウクライナ軍のザルジニー総司令官の解任について、以下のような情報があります。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、2024年2月8日にザルジニー総司令官の解任を発表しました。

ザルジニー総司令官は、ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まった2022年から、ウクライナ軍を指揮してきました。

ザルジニー総司令官は、首都キーウの防衛や東部ハルキウ州、南部ヘルソン州での反転攻勢などで成果を上げ、国民から高い支持を得ていました。

しかし、2023年に始めた大規模な反転攻勢が思うように進まず、戦況がこう着状態にあるとザルジニー総司令官が発言したことで、ゼレンスキー大統領との確執が生じました。

また、ザルジニー総司令官がゼレンスキー大統領にとって政治的なライバルになる可能性も指摘されていました。

ゼレンスキー大統領は、最高司令部を「刷新」する必要があると述べ、後任には陸軍のシルスキー司令官を任命しました。

シルスキー司令官は、キーウの防衛やハルキウ州での電撃的な反転攻勢を指揮した経験がありますが、兵士たちからの支持は低いと伝えられています。

総司令官の交代が戦況や国民の結束にどのような影響を与えるかは、まだ見通せない状況です。

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月8日、ロシアによる侵攻に対抗するウクライナ軍のザルジニー総司令官を解任し、陸軍のシルスキー司令官を後任に任命しました。この人事は、ザルジニー氏とゼレンスキー氏の間に確執があったことや、ザルジニー氏が国民の人気が高く政治的なライバルになる可能性があったことなどが背景にあるとみられています。

ザルジニー氏は首都キーウの防衛や南部へルソン州での反転攻勢などを成功させ、国民から高い支持を集めていましたが、去年の大規模な反転攻勢が思うように進まない中、戦況が「こう着状態に陥った」と発言したことで、ゼレンスキー氏とのあつれきが生じていました。また、最近では、50万人規模の新たな動員をめぐって、ゼレンスキー氏と意見が対立していると伝えられていました。

後任のシルスキー氏は旧ソビエト式の指揮スタイルで、東部バフムトの戦いで撤退を拒み多くの兵士の命や弾薬を失ったことを兵士から批判されているという報道もあります。シルスキー氏は首都キーウの防衛や東部ハルキウ州の電撃的な反転攻勢で成果を収めた一方、兵士たちからの支持は低いと伝えられています。

欧州連合(EU)やアメリカなどの西側諸国は、ウクライナの軍事的な支援を続けていますが、この総司令官の交代が戦況にどのような影響を与えるかは不透明です。EUは2月1日のサミットで、ウクライナに対する500億ユーロ(約7兆9500億円)相当の支援パッケージを承認しました。アメリカもウクライナに対する武器や弾薬の供給を行っていますが、連邦議会での承認が遅れているという問題もあります。

■ウクライナ、結束にほころび

軍総司令官解任「ロシア利する」―権力闘争の指摘も

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、軍トップのザルジニー総司令官を解任した。長らく続いていた政権と軍トップの反目に終止符を打った形だが、ロシアの軍事侵攻から間もなく2年となる中、ウクライナが誇る結束にほころびが生じつつある実態を露呈した。一部の国民や将兵が解任に反発するのは必至で、「ロシアを利するだけだ」と危惧する声も出ている。

 ◇不信が噴出

 「兵士を増員できないウクライナの国家機関と比べ、ロシアは追加動員で大きな優位性を謳歌(おうか)している」。ザルジニー氏は米CNNテレビ(電子版)に1日掲載された寄稿で、追加動員に後ろ向きな政権をこう批判した。

 ゼレンスキー氏は昨年12月、軍指導部から最大50万人の追加動員を提案されたが、支持しなかったと述べた。ザルジニー氏は「具体的数字を示して要請したことはない」とこれに反論。国民の不評を買う追加動員を巡り、責任の押し付け合いを演じた。

 両者の確執はかなり前から水面下で続いていたとされる。ゼレンスキー氏は特に、国民の人気が高いザルジニー氏の政治的野心を警戒していた。昨年6月に始めた反転攻勢が大きな成果を生まず、戦況が行き詰まったことで、蓄積した互いへの不信が噴き出たもようだ。

■ウクライナのザルジニー軍総司令官解任に市民が反発

ウクライナの首都キーウ(キエフ)中心部の独立広場で9日、軍総司令官だったザルジニー氏の解任に反発する市民ら約100人がデモを実施した。ゼレンスキー大統領との確執が伝えられてきたザルジニー氏は、国民の人気が高い。市民らは「ザルジニーを戻せ」と書かれた国旗を手に抗議した。

ゼレンスキー氏は8日のザルジニー氏解任に続き、9日にはシャプタラ参謀総長の解任も発表した。人事や戦略の見直しにより、戦況膠着(こうちゃく)を打開する考えだ。

この日のデモに参加したミコラ・ポメンチュクさん(40)は「ザルジニー氏は大統領よりも厚い信頼を得ていた。解任は間違いだ」と訴えた。

国防省は9日、新たに軍総司令官となったシルスキー氏が就任後初めてウメロフ国防相と会談したと発表した。

「ザルジニーを戻せ」と書かれた国旗

ウクライナ・キーウで軍総司令官解任に反対する市民デモ

ウクライナの首都キーウ(キエフ)中心部の独立広場で9日、軍総司令官だったザルジニー氏の解任に反発する市民ら約100人がデモを実施した。ゼレンスキー大統領との確執が伝えられてきたザルジニー氏は、国民の人気が高い。市民らは「ザルジニーを戻せ」と書かれた国旗を手に抗議した。

ゼレンスキー氏は8日のザルジニー氏解任に続き、9日にはシャプタラ参謀総長の解任も発表した。人事や戦略の見直しにより、戦況膠着(こうちゃく)を打開する考えだ。

この日のデモに参加したミコラ・ポメンチュクさん(40)は「ザルジニー氏は大統領よりも厚い信頼を得ていた。解任は間違いだ」と訴えた。

国防省は9日、新たに軍総司令官となったシルスキー氏が就任後初めてウメロフ国防相と会談したと発表した。軍の補給などのほか、ゼレンスキー氏が創設を表明した無人兵器に特化した軍部門についても協議した。

■米国の腰砕けが露呈

また米国は2023年5月20日、バイデン大統領は、広島で開かれたG7サミットで、欧州各国によるF16戦闘機のウクライナへの供与と同国軍操縦士の訓練を支持すると表明しました。

2023年8月21日、オランダとデンマークがウクライナにF16戦闘機を供与すると正式に表明しました。オランダは42機、デンマークは19機のF16をウクライナに送る予定です。

2023年10月24日、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、広島市での記者会見で、欧州各国によるウクライナへのF16の供与を容認する方針を明らかにしました。米国は他国と共同でウクライナ軍のパイロットに対し、F16を含む戦闘機の訓練支援も行うとしました。

2023年11月12日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、オランダから最初の6機のF16戦闘機を受け取ったと発表しました。ゼレンスキー大統領は、F16の供与はウクライナの防衛力の強化に貢献すると述べました。

しかしバイデン大統領が宣言したような、米国からのF16直接供与受けてない理由は、以下のようなものが考えられます。

米国は、F16戦闘機を供与すると、ロシアとの対立を激化させる恐れがあると考えています。米国は、ウクライナの主権と領土の保全を支持していますが、直接的な軍事介入は行っていません。

米国は、F16戦闘機を供与するには、機体の調達や訓練などに時間がかかると見ています。米国のカール国防次官は、機体の供与や訓練も含めて実戦配備するまでにはおよそ1年半かかるとの見通しを示しました。また、新しい機体を供与するには最大で6年かかるとも述べました。

米国は、F16戦闘機を供与することが最良の選択だとは言えないと考えています。米国は、F16戦闘機よりも地対空ミサイルや歩兵戦闘車、155ミリりゅう弾砲などの方が合理的だと判断しています。これらの兵器は、ウクライナの防衛力の強化に貢献すると考えられています。米国の腰砕けが露呈した瞬間です。

西側諸国は、ウクライナの主権と領土の保全を支持し、ロシアの侵略を非難していますが、直接的な軍事介入は行っていません。ウクライナは、西側諸国からの支援だけでなく、自国の軍事力や戦略も見直す必要があると言えるでしょう。

■戦局はどう変わった?

ウクライナでの戦いは3年目に入ろうとしている。この数カ月、前線はほとんど動いていないが、2024年に戦争の流れは変わり得るのだろうか。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、今年春からウクライナが開始した反転攻勢が期待したほどの成果を収めていないと認めている。ウクライナ国土の約18%はいまだにロシアの支配下にある。

これからの12カ月間で事態はどう推移するのか。

「戦争は長引くが、延々と続けるのは無理」 

ウクライナでの終戦の見通しは、依然として暗いままだ。昨年のこの時期に比べて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は力を増している。軍事的にというより、政治的に。

戦況は不透明なままだ。最近では、ウクライナの冬の攻勢が止まったようだ。しかし、ロシア側が状況を打開したというわけでもない。これまでにも増して戦いの決着は、紛争の中心から遠く離れたワシントンやブリュッセルでの政治的判断に依存している。

西側諸国が2022年に示した見事な結束は、2023年を耐え抜いた。しかし、揺らぎ始めている。

アメリカの包括的防衛支援パッケージは、ジョー・バイデン米大統領が正しく指摘した通り、ワシントンの「つまらない政局」の人質になっている。そして欧州連合(EU)による経済援助の今後は、ハンガリーの矛盾に満ちた姿勢に左右されている様子だ。

西側諸国がためらいを見せていることで、プーチン氏は大胆さを増している。公の場での最近の様子や強気の発言からは、少なくともプーチン氏に関しては、ロシアは長期戦を戦うつもりでいることが見て取れる。

その場合、プーチン氏本人と彼が体現するすべてのものに対抗し続けるだけの力と体力が、西側にはあるのだろうか。

EUがウクライナやモルドヴァと加盟交渉を開始することにしたのは、象徴的な動きというだけではない。ウクライナ政府を引き続き支援し続けるという意味が、そこには込められている。ロシアが全面勝利を収めた場合に、ウクライナがEUに加盟するなど、あり得ないからだ。

ワシントンで、政策が完全にひっくり返る事態もあり得ない。

ドナルド・トランプ前米大統領の支持率が世論調査で上がり続けるなか、アメリカの支援について破局的なシナリオを想定したくなりがちだが、前大統領は数々の派手な言動とは裏腹に、2016年にNATOを離脱しなかった。そして、75年の歴史を持つアメリカと欧州の協力関係に、前大統領が一人だけで革命を引き起こすのは不可能だ。

だからといって、最近の西側陣営の結束にひびが入っていることは、決して無意味ではない。西側にとって、そしてそれに伴いウクライナにとって、2024年は厳しさを増す年になる。

説明責任のない独裁者と異なり、民主国家においては、長期にわたり戦争を支持し続ける世論形成は、複雑な作業なのだ。

ウクライナでの戦争はおそらく2024年の間はずっと続くだろうが、だからといって果てしなく延々と続くのは無理だ。

西側諸国の逡巡(しゅんじゅん)にロシアが勢いづくなか、クーデターや健康問題などの理由でプーチン氏が失脚しない限り、予測可能な展望といえば、交渉による協定しかない。しかし今のところ両国とも、それは拒み続けている。

「まとめの1年に」

ロシアによる2022年のウクライナ侵攻は、欧州大陸にとって本格な戦争の再来を意味した。2023年の戦況は、工業化時代の戦争の再来をも意味した。

工業化時代の戦争では、国の経済の主要部分、場合によっては経済活動の全てにおいて、軍需品の生産を最優先するようになる。ロシアの防衛予算は2021年から3倍に増えており、来年には政府支出の3割が国防費に充てられる見通しだ。

こうしたことからウクライナでの戦争は、欧州大陸が20世紀半ば以来経験したことのない、長期にわたる、しかも大きいトラウマの伴う取り組みとなる。2024年は、果たしてロシア(ならびに支援国の北朝鮮とイラン)とウクライナ(ならびに支援国の西側諸国)が、工業化時代の戦争の際限ない要求に応え続けられるのか、試されることになる。

ウクライナの前線が手詰まり状態にあると言えば、それは間違いになる。しかし、ウクライナとロシアのどちらも、戦略的な上手(うわて)をとろうと戦い続けて、お互いを膠着状態にまで追い詰めることは可能だ。

ロシア軍は再び前線の全てで総攻撃をかけるかもしれない。少なくとも、ドンバス地方全域を確保するために。

ウクライナはおそらく、黒海の西側部分とボスポラス海峡に至る重要な通商回廊の支配権奪還という戦果を、利用しようとするはずだ。

そして、ウクライナ政府はおそらく今後も侵略者の意表を突いた奇襲攻撃を重ねて、ロシアのバランスをところどころで崩そうとするだろう。

それでも2024年はつまるところ、ウクライナとロシアの両政府にとって、まとめ作業の1年になりそうだ。

装備や訓練された兵員が不足しているロシアは、どれだけ早くても2025年春までは、戦略的な攻勢を仕掛けられそうにない。

他方、ウクライナが2024年も戦い続けるには西側の資金と軍事援助が必要だ。ウクライナはそうやって戦い続けながら、将来的に国土解放につながる連続攻勢の条件整備に向けて、自分たちの本質的な国力を蓄えていくことになるだろう。

工業化時代の戦争は、社会と社会の争いだ。戦場で起きることは究極的に、社会同士の争いの症状にしかならない。

2024年においてこの戦争の軍事的な展開は、アウディイウカやトクマクやクラマトルスクなど、前線に点在する悲惨な戦場の数々よりも、モスクワやキーウ、ワシントン、ブリュッセル、北京、テヘラン、平壌などで決まっていくことになる。

「ウクライナはクリミア周辺でロシアに圧力をかける」

ロシアは、ウクライナを制覇するだけの決定的な突破力を欠いている。そのため、現在占領している地域を維持するため、できる限りのことをするはずだ。西側がウクライナ支援を続ける意欲を失うのを待ちながら、自国の防衛力を強化するだろう。

しかし、ウクライナは戦うのを止めない。ウクライナは自分たちの存亡をかけて戦っているし、もし戦うのを止めればロシアが何をするか、理解しているからだ。アメリカの意志が弱まると懸念されるだけに、欧州では支援拡大の必要性を話し合う国が増えている。

新年早々にもアメリカは戦略的な気骨を再発見し、連邦議会が12月に可決を遅らせた包括支援案を成立させるものと予想している。

それだけに私は、ウクライナが今後数カ月のうちに戦場で上手を取り戻そうと、次の対策をとると予想する。

何カ月もの戦闘で疲弊した部隊を再編し、攻勢再開に備える

ウクライナの兵力を最大限、有効活用するため、国内の募兵制度を改善する

砲弾や兵器を増産する

ロシアの強力な電子戦力(電波妨害、傍受、位置特定)に対抗する能力を向上させる

初夏までにウクライナは、アメリカ製のF16戦闘機が初めて使えるようになる。そうすればロシア戦闘機への対抗力が向上し、防空能力の強化につながると期待されている。

ロシアが占領し続けるウクライナの国土のうち、最も戦略的に重要なのはクリミア半島だ。こうした場所を、私たちは「決定的地形」と呼ぶ。

ウクライナはクリミアで全力を尽くして、ロシアに圧力をかけ続けるだろう。セヴァストポリの海軍拠点も、半島にあるいくらかの空軍基地も、ジャンコイの兵站(へいたん)基地も、いずれもロシアが維持できなくなるよう、追い込んでいくはずだ。

ウクライナ軍はすでに、この考え方を立証している。イギリスが提供した巡航ミサイル「ストームシャドウ」わずか3基で、ウクライナはロシア黒海艦隊司令官に圧力をかけ、艦隊の3割をセヴァストポリから引き上げさせたのだ。

もちろんウクライナの兵力は無限ではない。特に砲弾や長距離の精密兵器の数には限りがある。

それでも、状態が悪いのはロシア兵の方だ。戦争とは意志を試す。そして、兵站を試す。ロシアの兵站体制は脆弱で、ウクライナから絶え間ない圧力をかけられている。
2024.02.11 09:06 | 固定リンク | 戦争

- -